(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤの基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
図2、6〜9についても同様である。
【0014】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間を延びる一対のサイドウォール13とを備える。
【0015】
ビード11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状のビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出している、先端先細り形状のビードフィラー22とを備える。ビードコア21は、空気が充填されたタイヤを、図示しないホイールのリムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材であり、例えば周囲のゴム部材よりもモジュラスの高いゴムにより構成される。
【0016】
タイヤ1の内部には、タイヤの骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延びている。すなわち、一対のビードコア21間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
図1に示されるように、カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延び、トレッド12とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。本実施形態においては、プライ折り返し部25は、プライ本体24に重ね合わされている。
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。
このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。
【0017】
カーカスプライ23のプライ巻き返し部25と、ビードフィラー22との間には、金属補強層としてのスチールサイドプライ33が配置されている。このスチールサイドプライ33は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されており、カーカスプライ23を補強するために設けられている。本実施形態においては、スチールサイドプライ33の端部33Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側であって、プライ巻き返し部25の端部25Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
【0018】
トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側には、スチールベルト26が設けられている。スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤの剛性が確保され、トレッド12と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、2層のスチールベルト261、262が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。
【0019】
スチールベルト26のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層としてのキャッププライ27が設けられてる。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成されており、ゴムにより被覆されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0020】
キャッププライ27のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム28が設けられている。トレッドゴム28の外表面には、図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面が、路面と接触する接地面となる。
【0021】
ビード11、サイドウォール13、トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0022】
サイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30が設けられている。このサイドウォールゴム30は、タイヤがクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0023】
ビード11のビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、チェーハー31が設けられている。チェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側にも延在しており、そのタイヤ幅方向外側およびタイヤ径方向内側には、リムストリップゴム32が設けられている。このリムストリップゴム32のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム30に連接している。
【0024】
本実施形態のタイヤ1には、電子部品としての、RFIDタグ40が埋設されている。
RFIDタグ40は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0025】
図2は、
図1のタイヤ1における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
図1、
図2に示されるように、本実施形態においては、RFIDタグ40は、スチールサイドプライ33とプライ折り返し部25との間に挟まれた状態で配置されている。また、RFIDタグ40とスチールサイドプライ33との間には、後述の絶縁層が配置されている。
【0026】
このように、RFIDタグ40がスチールサイドプライ33とプライ折り返し部25との間に挟まれていることから、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナがタイヤ1のゴム構造体であるサイドウォールゴム30やインナーライナー29を直接押圧することを防ぐことができる。
【0027】
ここで、RFIDタグ40は、タイヤの製造工程において、加硫工程の前に取り付けられている。本実施形態においては、被覆ゴムが加硫される前のスチールサイドプライ33またはカーカスプライ23のプライ折り返し部25に、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40の間に後述の絶縁層34が挟まる態様となるように、RFIDタグ40を取り付ける。
このとき、スチールサイドプライ33およびカーカスプライ23の被覆ゴムは加硫前の生ゴムの状態であるため、その粘着性を利用して、絶縁層34やRFIDタグ40を貼り付けることができる。あるいは、粘着性が低い場合などにおいては、接着剤等を用いて貼り付けてもよい。その後、絶縁層34およびRFIDタグ40をスチールサイドプライ33とカーカスプライ23によって挟み込む。挟み込んだ後、RFIDタグ40を含む各構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤを製造する。
【0028】
このように、本実施形態においては、タイヤ製造時において、剛性を有し、粘着性を有する生ゴムにより被覆されているスチールサイドプライ33またはカーカスプライ23に絶縁層34やRFIDタグ40を貼り付けることができるため、タイヤの製造工程におけるRFIDタグ40の組み付け作業が容易である。特に、スチールサイドプライ33は剛性が非常に高いため、RFIDタグ40の取り付け作業が極めて容易である。
【0029】
ここで、
図3〜5を用いて、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間に絶縁層34を設ける構成およびその理由について説明する。
まず、
図3〜4を用いて、比較例として、絶縁層34を設けない場合における、RFIDタグ40周辺の加硫工程前後の挙動について説明する。
図3は、RFIDタグ40周辺の加硫工程前の状態を模式的に示す図であり、スチールサイドプライ33の断面と、RFIDタグ40のアンテナ42の断面を示す図である。加硫工程前において、スチールサイドプライ33のスチールコード33Bは、生ゴムである被覆ゴム33Cによって覆われている。RFIDタグ40は、生ゴムである被覆ゴム33Cの粘着性を利用して、スチールサイドプライ33に貼り付けられている。
【0030】
図4は、RFIDタグ40周辺の加硫工程後の状態を模式的に示す図である。タイヤを構成する各部材は、加硫工程において、膨張・伸縮等の様々な挙動を示す。このとき、スチールサイドプライ33とカーカスプライ23の間に挟まれているRFIDタグ40が位置する部分においては、RFIDタグ40が存在していることも影響して、被覆ゴム33Cがつぶされ、破損することがある。そしてこのとき、RFIDタグ40のアンテナ42と金属製のスチールコード33Bが直接接触するおそれがある。このようにRFIDタグ40のアンテナ42と金属製のスチールコード33Bが直接接触すると、アンテナの実質的な長さが変化し、その結果、通信品質が低下してしまう。
【0031】
そこで、本実施形態においては、
図5に示されるように、加硫前において、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間に絶縁層34を配置している。これにより、加硫工程後においても、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を効果的に阻止することができる。
【0032】
絶縁層34としては、加硫後においてもRFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を防止することができる、絶縁性の各種材料を用いることができる。例えば、フィルム状のシートや、繊維層を用いてもよい。また、絶縁性を有する加硫前の生ゴムであってもよい。
絶縁層34として繊維層を用いる場合は、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を用いることができる。繊維層を用いることにより、加硫後においてもスチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間を、繊維層の厚み分、確実に離間させておくことが可能となる。また、ゴムシートに繊維層を埋設させて、これを絶縁層34として用いてもよい。
【0033】
また、絶縁層34を、短繊維フィラーを練り込んだゴム等の材料により構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
【0034】
また、絶縁層34として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、加硫前の生ゴムのようの塑性変形はしないため、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を効果的に阻止することができる。すなわち、タイヤを構成する各構成部材がまだ加硫前の状態において、加硫後の状態のゴムシートを、スチールサイドプライ33の被覆ゴム33CとRFIDタグ40の間に配置する。その後、各構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫してもよい。
【0035】
なお、タイヤに埋設するRFIDタグ40は、後述する
図9においてRFIDタグ40として示されるように、アンテナを含めると、長手方向を有することが多い。このようなRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち
図1〜2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設することが好ましい。このように埋設することで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。
【0036】
なお、本実施形態においては、電子部品として、RFIDタグ40がタイヤに埋設されているが、タイヤに埋設される電子部品は、RFIDタグに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品であってもよい。また、電子部品は、導電性の部材と電気接触すると、電子部品の性能変化が生じ、電子部品の特性を維持することが困難となる可能性がある。よって、種々の電子部品をタイヤに埋設する場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0037】
図6は、本実施形態の変形例におけるタイヤ2のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図7は、
図6のタイヤ2における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
RFIDタグ40は、本変形例に示されるように、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aの近傍に配置されていてもよい。なお、本変形例においても、RFIDタグ40は、スチールサイドプライ33とプライ折り返し部25との間に挟まれた状態で配置されている。また、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間に前述の絶縁層34が配置されている。
【0038】
この場合であっても、
図5に示される絶縁層34が設けれていることにより、RFIDタグ40のアンテナ42と金属製のスチールコード33Bとが接触して通信品質が低下するようなことがない。
さらに、RFIDタグ40が高モジュラスのゴムであるビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aの近傍に設けられているため、RFIDタグ40周辺は変形が少なく、応力が集中しにくい。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。
【0039】
本実施形態のタイヤ1、2によれば、以下の効果を奏する。
【0040】
(1)本実施形態に係るタイヤ1、2は、一方のビードコアから他方のビードコアに延びるカーカスプライ23と、カーカスプライを補強するスチールサイドプライ33と、を備えるタイヤであって、スチールサイドプライ33の近傍に配置されたRFIDタグ40と、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間に配置された絶縁層34と、を備える。また、本実施形態に係るタイヤ1の製造方法は、生タイヤを加硫する加硫工程の前に、絶縁層34を、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間に配置する配置工程を備える。
これにより、加硫工程時においても、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を効果的に阻止することができる。
【0041】
(2)本実施形態に係るタイヤ1、2は、RFIDタグ40が、スチールサイドプライ33とプライ折り返し部25との間に設けられている。
これにより、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナがタイヤ1のゴム構造体であるサイドウォールゴム30やインナーライナー29を直接押圧することを防ぐことができる。
【0042】
(3)本実施形態に係るタイヤ1、2は、絶縁層34が、繊維層を含んで構成されている。
これにより、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間を、繊維層の厚み分、確実に離間させておくことが可能となり、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を効果的に阻止することができる。
【0043】
(4)本実施形態に係るタイヤ1、2は、絶縁層34が、短繊維を練り込んだ層により構成されている。
これにより、絶縁層の強度を高め、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を効果的に阻止することができる。
【0044】
(5)本実施形態に係るタイヤ1、2は、短繊維が、有機短繊維または無機短繊維である。
これにより、絶縁層の強度を高め、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を効果的に阻止することができる。
【0045】
(6)本実施形態に係るタイヤ1、2は、絶縁層34が、フィルム状のシートである。
これにより、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を効果的に阻止することができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤ3について、
図8、9を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0047】
図8は、本実施形態におけるタイヤ3のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図9は、
図8のタイヤ3における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
本実施形態においては、電子部品としてのRFIDタグ40が、スチールサイドプライ33とビードフィラー22との間に配置されている。
そして、第1実施形態と同様に、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間には、
図5に示される絶縁層34を配置されている。すなわち、RFIDタグ40のタイヤ幅方向外側であって、スチールサイドプライ33のタイヤ幅方向内側に、絶縁層34が配置されている。
【0048】
この場合であっても、絶縁層34が設けれていることにより、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bが接触して通信品質が低下するようなことがない。
さらに、RFIDタグ40がスチールサイドプライ33と高モジュラスのゴムであるビードフィラー22との間に設けられているため、RFIDタグ40周辺は変形が少なく、応力が集中しにくい。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。
【0049】
また、本実施形態によれば、RFIDタグ40は、スチールサイドプライ33によって移動が規制されるため、走行時のタイヤ3の歪み等の影響を受けにくくなる。よって、追加の部品を用いることなく、既存の部品によりRFIDタグ40の耐久性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、衝撃保護性も向上する。すなわち、サイドウォール13において衝撃が加わったとしても、タイヤ3の外壁面からRFIDタグ40までの距離が遠いため、また、タイヤ3の外壁面とRFIDタグ40との間にカーカスプライ23およびスチールサイドプライ33が存在するため、RFIDタグ40は保護される。
なお、RFIDタグ40を配置する位置は、
図8、9に示される位置に限らない。例えば、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22A付近であってもよい。
【0050】
本実施形態に係るタイヤ3によれば、上記(1)〜(6)に加えて以下の効果を奏する。
【0051】
(7)本実施形態においては、RFIDタグ40が、スチールサイドプライ33とビードフィラー22との間に配置されている。
よって、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなり、RFIDタグ40の耐久性を向上させることができる。また、タイヤ3の外壁面からRFIDタグ40までの距離が遠くなるため、衝撃保護性を向上させることができる。
【0052】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るタイヤについて、
図10A〜10Cを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1〜第2実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0053】
図10Aは、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆された、RFIDタグ40を示す図である。
図10Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート431に覆われて隠れている。
図10Bは
図10Aのb−b断面図、
図10Cは
図10Aのc−c断面図である。
本実施形態においては、
図10A〜10Cに示されるように、RFIDタグ40は保護部材43により被覆されている。本実施形態においては、保護部材43によって保護されたRFIDタグ40と、スチールサイドプライ33との間に、絶縁層34を配置する。このような、保護部材43によって保護されたRFIDタグ40を用いる構成は、第1〜第2実施形態のいずれの実施形態のタイヤにも適用可能である。
【0054】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。通信性をおよび柔軟性を考慮すると、コイル状のスプリングアンテナが最も好ましい。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。
【0055】
保護部材43は、RFIDタグ40を挟み込んで保護する2枚のゴムシート431、432により構成されている。
【0056】
保護部材43は、例えば所定のモジュラスのゴムにより構成されている。
ここで、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0057】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム30よりもモジュラスが高いゴムを用いる。
例えば、保護部材43に用いられるゴムとしては、サイドウォールゴム30のモジュラスを基準として、その1.1倍〜2倍のモジュラスのゴムを用いることがより好ましい。
【0058】
なお、
図8〜9に示される実施形態においては、RFIDタグ40は、タイヤ幅方向で見たときに、外表面を構成するゴム部材としてのサイドウォールゴム30またはリムストリップゴム32と、ビードフィラー22の間の領域に配置されている。そこで、保護部材43のモジュラスを、外表面を構成するゴム部材よりもモジュラスが高く、かつビードフィラー22よりもモジュラスが低い値に設定することにより、タイヤが変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。すなわち、応力の発生を抑制することができる。
【0059】
また、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
また、保護部材43として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0060】
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚のゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0061】
このように、保護部材43を、2枚のゴムシートによって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、タイヤ1〜3に埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1〜3の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。
例えば、加硫前のスチールサイドプライ33、カーカスプライ23、ビードフィラー22といった部材の所望の位置に、ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40や、絶縁層34を、生ゴムの粘着性を利用して適切に貼り付けることができる。また、ゴムシートおよび絶縁層34も加硫前の生ゴムとすることにより、ゴムシートおよび絶縁層34自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。
【0062】
ただし、保護部材43は、2枚のゴムシートによって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成するゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。
また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0063】
例えば第1実施形態において、保護部材43によってRFIDタグ40を保護する構成を採用した場合、RFIDタグ40は、保護部材43により被覆されている状態で、絶縁層34と共に、スチールサイドプライ33とプライ折り返し部25との間に挟まれることになる。この場合、スチールサイドプライ33とプライ折り返し部25とが相対的に移動することによりRFIDタグ40が応力を受ける状況下においても、保護部材43および絶縁層34の存在によって、RFIDタグ40が保護される。よって、RFIDタグ40の耐久性がさらに向上する。
また、保護部材43および絶縁層34によってRFIDタグ40を保護することにより、タイヤ変形時において比較的大きく屈曲する部分にRFIDタグ40を埋め込んだ場合であっても、RFIDタグ40の耐久性を上げることができる。
【0064】
また、前述のとおり、第2実施形態において、保護部材43によって保護されているRFIDタグ40をタイヤに埋設する構成を採用することも可能である。この場合においても、RFIDタグ40の耐久性が向上する。
【0065】
なお、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち
図1〜2、6〜9の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤに埋設されている。また、ゴムシート431、432は、タイヤ幅方向に並ぶような態様で、タイヤに埋設される。すなわち、製造工程において、ゴムシート431、432のいずれか一方の一面が、絶縁層34を介して、加硫前のタイヤの構成部材としての、例えばスチールサイドプライ33に貼り付けられる。
このような態様とすることで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。また、製造工程において、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を取り付ける作業が簡便となる。
【0066】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(7)に加えて以下の効果を奏する。
【0067】
(8)本実施形態においては、RFIDタグ40の周辺に、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆うゴムシート431、432が設けられている。
これにより、例えばタイヤ変形時において比較的大きく屈曲する部分にRFIDタグ40を配置する場合であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0068】
(9)本実施形態においては、保護部材43が、サイドウォールゴム30よりも高いモジュラスのゴム、または短繊維フィラー混合ゴムから構成されており、この保護部材43により被覆されたRFIDタグ40が、タイヤに埋設されている。
よって、RFIDタグを適切に保護することができる。
【0069】
(10)本実施形態においては、保護部材43が、サイドウォールゴム30またはリムストリップゴム32よりも高いモジュラスで構成されており、この保護部材43により被覆されたRFIDタグ40が、タイヤに埋設されている。
よって、タイヤが変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。
【0070】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係るタイヤについて、
図11A〜11Cを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第3実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
図11Aは、保護部材44によって保護された、RFIDタグ40を示す図である。
図11Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート441に覆われて隠れている。
図11Bは
図11Aのb−b断面図、
図11Cは
図11Aのc−c断面図である。
【0071】
本実施形態においては、RFIDタグ40は、第3実施形態と同様、2枚のゴムシートにより構成されている保護部材により被覆されている。しかしながら、本実施形態においては、保護部材44を構成する2枚のゴムシートの厚みが異なっている。
具体的には、スチールサイドプライ33側のゴムシート441が、その反対側のゴムシート442よりも厚く形成されている。
【0072】
これにより、スチールサイドプライ33側が、ゴムシート441および絶縁層34により強固に保護されるため、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナ42がスチールサイドプライ33のスチールコードと接触することを防止することができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、スチールサイドプライ33側をより強固に保護するために、スチールサイドプライ33側のゴムシート441の厚みを厚く形成しているが、スチールサイドプライ33側をより強固に保護するための、その他の構成を採用することも可能である。
【0074】
例えば、スチールサイドプライ33側のゴムシート441のモジュラスを、その反対側のゴムシート442のモジュラスよりも高いモジュラスに設定してもよい。この場合、
図1〜2に示される実施形態に適用する際には、タイヤの変形時における応力の吸収を考慮すれば、各部材のモジュラスの大きさの関係が「ゴムシート441」(スチールサイドプライと接触する側)>「ゴムシート442」>「サイドウォールゴム30」となっていることが好ましい。
【0075】
なお、
図8〜9に示される実施形態に適用する場合には、RFIDタグ40は、タイヤ幅方向で見たときに、外表面を構成するゴム部材としてのサイドウォールゴム30またはリムストリップゴム32と、ビードフィラー22の間の領域に配置されている。そこで、タイヤの変形時における応力の吸収を考慮すれば、各部材のモジュラスの大きさの関係が、「ビードフィラー22」>「ゴムシート442」>「ゴムシート441」(スチールサイドプライ33と接触する側)>「外表面を構成するゴム部材」(「サイドウォールゴム30」または「リムストリップゴム32」)となっていることが好ましい。
【0076】
また、ゴムシート441を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
【0077】
また、ゴムシート441として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40のアンテナ42とスチールコード33Bの接触を効果的に阻止することができる。
また、ゴムシート441にポリエステル繊維やポリアミド繊維等の有機繊維層を設けてもよい。これらの場合は、ゴムシート441と442の厚みを同じ厚みとすることも可能である。
【0078】
これらの構成によっても、スチールサイドプライ33側がより強固に保護されているため、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナ42がスチールサイドプライ33のスチールコードと接触することを防止することができる。
【0079】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(10)に加えて以下の効果を奏する。
【0080】
(11)本実施形態においては、保護部材44を構成するゴムシートについて、スチールサイドプライ33側のゴムシート441を、その反対側のゴムシート442よりも厚く形成している。
これにより、スチールサイドプライ33側がより強固に保護されるため、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナ42がスチールサイドプライ33のスチールコードと接触することを防止することができる。
【0081】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態に係るタイヤについて、
図12〜18を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第3実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
本実施形態は、RFIDタグ40のアンテナが、コイル状のスプリングアンテナである場合に特に好適な実施形態である。
【0082】
本実施形態のRFIDタグ40は、アンテナとして、通信性および柔軟性の高いコイル状のスプリングアンテナ421が用いられている。スプリングアンテナ421は、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。
【0083】
本実施形態においては、保護部材43を構成する2枚のゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。
図12〜18を用いて、その工程およびその工程を採用する理由を説明する。
【0084】
まず、
図12〜
図14を用いて、参考例として、スプリングアンテナ421内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグ40周辺の状態について説明する。
図12は、RFIDタグ40をゴムシート431、432で挟み込む前の、スプリングアンテナ421、ゴムシート431、432の断面を示す図である。
図13は、RFIDタグ40をゴムシート431、432で挟み込んだ後の、スプリングアンテナ421、ゴムシート431、432の断面を示す図である。
【0085】
図13に示されるように、この参考例においては、スプリングアンテナ421内に予めゴムが充填されていないため、ゴムシート431、432で挟み込んだ後において、スプリングアンテナ421内に空気45がある程度残ってしまう場合がある。このように空気が残ってしまうと、ゴムシート431、432とスプリングアンテナ421との一体性が不十分となり、タイヤが変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従せず、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40が破損するおそれがある。
【0086】
なお、ここではゴムシート431、432として、加硫前の生ゴムを使用している。よって、ゴムシート431、432を両側から押しつけることにより、
図13に示されるように、スプリングアンテナ内にゴムシート431、432がある程度はめり込んでいる。しかしながら、スプリングアンテナ内が完全に埋まるまでゴムシート431、432をめり込ませるためには、非常に多くの時間と手間がかかる。
【0087】
そして、仮に時間をかけてスプリングアンテナ内が埋まるまでゴムシートをめり込ませた場合であっても、
図14に示されるように、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが非常に短くなる。また、その距離Lを安定させることは困難であり、局所的に薄い部分が発生し得る。よって、ゴムシート431、432によるRFIDタグ40の保護が不十分となり、加硫時において、ゴムシート431、432が破損する可能性がある。
例えば、加硫時において、ゴムシート431、432が破損し、スプリングアンテナ421とスチールサイドプライ33のスチールコード33Bが接触する可能性がある。この場合、アンテナの長さが実質的に変化するため、通信品質が低下する。
【0088】
そこで、本実施形態においては、
図15〜18に示されるように、ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。なお、
図15〜18の右側に示す図は、スプリングアンテナ421およびその周囲の断面を示す図である。
【0089】
図15は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填する前の状態を示す図、
図16は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填した後の状態を示す図である。
ゴム46は、スプリングアンテナ421の外周面と略同じ外径となるように埋め込まれる。そして、スプリングアンテナ421の外周面からゴム46がはみ出ている場合には、その部分を拭き取って除去することが好ましい。すなわち、ゴム46の外周面は、スプリングアンテナ421の外周面と略同一面となるように成形されることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填すると共に、スプリングアンテナ421の外周をゴム46で薄く包み込んでもよい。一方、スプリングアンテナ421をゴム46によって厚く包み込んでしまうと、スプリングアンテナ421の柔軟性が損なわれる上に、RFIDタグ40を挟み込んだ後のゴムシート431、432により形成される幅方向の寸法が大きくなってしまうため、好ましくない。
なお、スプリングアンテナ421の内周面と略同じ外径となるように、ゴム46を埋め込んでもよい。ゴム46の外周部は、スプリングアンテナ421の内周面〜外周面の範囲内に位置していることが望ましい。
【0090】
ここで、スプリングアンテナ421の柔軟性を確保するために、ゴム46としては、柔軟性を有するゴムを用いる。但し、作業性等を考慮して、ゴム46として、ゴムシート431、432よりも高いモジュラスのゴムを用いることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46としては、好ましくは未加硫のゴムを用いる。ゴム46、ゴムシート431、432を未加硫のゴムとし、同時に加硫することにより、ゴム46、ゴムシート431、432、スプリングアンテナ421の一体性が高まる。また、ゴム46、ゴムシート431、432は、同種のゴムとすることがより好ましい。
なお、スプリングアンテナ421の柔軟性を重視して、ゴム46として、ゴムシート431、432よりも低いモジュラスのゴムを用いてもよい。また、略同一のモジュラスのゴム、同じ材質のゴムを用いてもよい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46として、加硫後のゴムを用いてもよい。また、ゴム系接着剤、ゴム系充填剤などを用いることも可能である。柔軟性を確保しつつ、スプリングアンテナ421内に空気をなるべく残らないようにすることを考慮して、各種のゴム系材料を採用することができる。
ゴム46の配置作業としては、各種の方法が採用可能であるが、例えば、注射器を用いてスプリングアンテナ421内にゴムを注入することも可能である。この場合、注射器を用いて、設定された適切な量のゴム46を充填してもよい。また、ゴム46を多めに充填後、スプリングアンテナ421の外周からはみ出た部分を拭き取ってもよい。
【0091】
図17は、スプリングアンテナ421にゴム46が充填されたRFIDタグ40を、ゴムシート431、432で挟み込む前の状態を示す図、
図18は、ゴムシート431、432で挟み込んだ後の状態を示す図である。
【0092】
図18に示されるように、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されていたため、ゴムシート431、432の間に空気溜まりが存在していない。よって、空気溜まりを気にしなくてもよいため、ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む工程も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421内にゴム46が配置されていることにより、スプリングアンテナ421、ゴム46、ゴムシート431、432の一体性が高まり、タイヤが変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従する。よって、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40の耐久性も向上する。
【0093】
また、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定する。すなわち、この距離Lとして、ゴムシート431、432の肉厚に近い距離が概ね確保される。よって、RFIDタグ40は、ゴムシート431、432によって十分保護される。例えば、ゴムシート431、432のいずれかの一面が、スチールサイドプライ33と接触するように配置されることになるが、加硫時において、スチールサイドプライ33と接触しているゴムシートが破損して、スプリングアンテナ421とスチールサイドプライ33のスチールコード33Bが接触することもない。
本実施形態においてゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40は、生タイヤ内に配設され、その後生タイヤは加硫される。
【0094】
なお、本実施形態は、第1実施形態、第2実施形態に示されるような、RFIDタグ40が、カーカスプライ23またはスチールサイドプライ33よりもタイヤ幅方向内側に配置されている場合において、特に効果的である。
生タイヤの加硫工程における温度上昇時は、インナーライナー29等のゴム部材の膨張量が、カーカスプライ23やスチールサイドプライ33の膨張量を上回る。よって、
図14に示されるように、距離Lが短くなっている場合は、RFIDタグ40が、そのタイヤ幅方向外側に配置されているカーカスプライ23やスチールサイドプライ33に押しつけられることにより、RFIDタグ40のタイヤ幅方向外側のゴムシート431または432が破損する可能性が高くなる。
したがって、RFIDタグ40が、カーカスプライ23またはスチールサイドプライ33よりもタイヤ幅方向内側に配置されている場合において、本実施形態を採用すれば、このような状況下においても、より効果的にRFIDタグ40を保護することができる。
【0095】
なお、本実施形態のスプリングアンテナ421内にゴムを充填する態様は、第4実施形態の保護部材44を用いる際に適用することも可能である。
【0096】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(11)に加えて以下の効果を奏する。
【0097】
(12)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40のスプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程と、ゴム46が配置されたスプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40を、ゴムシート431、432で挟み込む工程と、ゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40を、タイヤ1に配設する配設工程と、を備える。
これにより、スプリングアンテナ421内に空気45が残ってしまうことがない。また、空気溜まりを気にしなくてもよいため、ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む作業も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定するため、RFIDタグ40は、ゴムシート431、432によって十分保護される。例えば、加硫時においてゴムシート431、432が破損して、スプリングアンテナ421とスチールサイドプライ33のスチールコード33Bが接触することもない。
【0098】
(13)本実施形態においては、ゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40が、カーカスプライ23またはスチールサイドプライ33よりもタイヤ幅方向内側に配置されている。
このような構成においても、加硫工程時において、RFIDタグ40は、ゴムシート431、432によって十分保護される。
【0099】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特に乗用車用のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【課題】電子部品をスチールサイドプライのような導電性の部材の近くに配置しても、電子部品と導電性の部材とが接触することによる電子部品の性能変化が生じさせることなく、電子部品の特性を維持することができるタイヤを提供する。
【解決手段】カーカスプライ23と、カーカスプライ23を補強するスチールサイドプライ33と、を備えるタイヤであって、スチールサイドプライ33の近傍に配置されたRFIDタグ40と、スチールサイドプライ33とRFIDタグ40との間に配置された絶縁層34と、を備えるタイヤ。