特許第6594508号(P6594508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6594508
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20191010BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B60C19/00 B
   B60C15/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-188133(P2018-188133)
(22)【出願日】2018年10月3日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】細見 和正
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−123404(JP,U)
【文献】 特開平05−169931(JP,A)
【文献】 特開2000−108619(JP,A)
【文献】 特開2004−114788(JP,A)
【文献】 特開2000−108621(JP,A)
【文献】 特開2012−240680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−23/20
G06K19/00−19/18
G08C13/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラーとを有する一対のビードと、
一方のビードから他方のビードに延び、前記ビードコアの周りで折り返されたカーカスプライと、を備えたタイヤであって、
前記ビードフィラーが複数のフィラー片により形成され、隣り合う一方のフィラー片と他方のフィラー片の間に電子部品が挟み込まれて、前記電子部品が前記ビードフィラーの内部に埋設されており
前記電子部品は、前記ビードコアから10mm以上離間したタイヤ径方向外側に、その長手方向がタイヤの周方向に対して接線の方向にとなるように配設されている、タイヤ。
【請求項2】
ゴムシートで被覆した前記電子部品が埋設されている、請求項に記載のタイヤ。
【請求項3】
無被覆の前記電子部品が埋設されている、請求項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が埋設されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDタグ等の電子部品を埋設したタイヤが知られている。このようなタイヤは、タイヤに埋設されたRFIDタグと、外部機器としてのリーダとが通信を行うことにより、タイヤの製造管理、使用履歴管理等を行うことができる。
例えば特許文献1には、RFタグを、スティフナーの近傍に埋設したタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−37236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される技術においては、RFタグが、スティフナーとサイドゴムの間に配置されており、RFタグとタイヤ外壁との間に、カーカスプライのような繊維層が存在しない。よって、タイヤが大きく歪んだ場合や、タイヤに衝撃が加わった場合に、RFタグが保護されずに、損傷するおそれがある。
【0005】
また、特許文献1に示される技術においては、RFタグが、金属製のビードコアに隣接するスティフナーの近傍に配置されている。よって、通信機能を有するRFタグのような電子デバイスの通信状態が、金属製のビードコアの影響を受けて不安定となり、電子デバイス本来の機能を発揮できなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その第一の目的は、タイヤが大きく歪んだ場合や、タイヤに衝撃が加わった場合においても、電子部品を保護することが可能なタイヤを提供することにある。
【0007】
また、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その第二の目的は、電子デバイスを金属製の部品から離れた位置に配置することにより、電子部品の性能を保つことができるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のタイヤ(例えば、タイヤ1)は、ビードコア(例えば、ビードコア21)と、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー(例えば、ビードフィラー22)とを有する一対のビード(例えば、ビード11)と、一方のビードから他方のビードに延び、ビードコアの周りで折り返されたカーカスプライ(例えば、カーカスプライ23)とを備えたタイヤであって、ビードフィラーが複数のフィラー片により形成され、隣り合う一方のフィラー片(例えば、一方のフィラー片22B)と他方のフィラー片(例えば、他方のフィラー片22C)の間に電子部品(例えば、RFIDタグ40)が挟み込まれて、電子部品がビードフィラーの内部に埋設されている。
【0009】
(2)(1)において、前記電子部品が、前記ビードコアから10mm以上離間したタイヤ径方向外側に配設されていてもよい。
【0010】
(3)(2)において、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側の10mmの範囲領域に電子部品が埋設されていてもよい。
【0011】
(4)(1)から(3)のいずれかにおいて、ゴムシートで被覆した前記電子部品が埋設されていてもよい。
【0012】
(5)(1)から(3)のいずれかにおいて、無被覆の前記電子部品が埋設されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイヤが大きく歪んだ場合や、タイヤに衝撃が加わった場合においても、電子部品を保護することが可能なタイヤを提供することができる。
【0014】
また、本発明によれば、電子デバイスを金属製の部品から離れた位置に配置することにより、電子部品の性能を保つことができるタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図2図1のタイヤの部分拡大断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤの変更例であり、タイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図4図3のタイヤの部分拡大断面図である。
図5】ビードワイヤとRFIDタグの距離と、通信距離との関係を示す図である。
図6A】本発明の一実施形態に係るタイヤにおける、保護部材によって保護された、RFIDタグを示す図である。
図6B図6Aのb−b断面を示す図である。
図6C図6Aのc−c断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤの基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面下側である。
図2〜4についても同様である。
【0017】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤであり、図1に示すように、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間を延びる一対のサイドウォール13とを備える。
【0018】
ビード11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状のビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出している、先端先細り形状のビードフィラー22とを備える。ビードコア21は、空気が充填されたタイヤを、図示しないホイールのリムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材であり、例えば周囲のゴム部材よりもモジュラスの高い、高モジュラスのゴムにより構成される。
【0019】
タイヤ1の内部には、タイヤの骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延びている。すなわち、一対のビードコア21間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延び、トレッド12とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。
このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。
【0020】
トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側には、スチールベルト26が設けられている。スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤの剛性が確保され、トレッド12と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、2層のスチールベルト261、262が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。
【0021】
スチールベルト26のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層としてのキャッププライ27が設けられている。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成されており、ゴムにより被覆されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0022】
キャッププライ27のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム28が設けられている。トレッドゴム28の外表面には、図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面が、路面と接触する接地面となる。
【0023】
ビード11、サイドウォール13、トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0024】
サイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30が設けられている。このサイドウォールゴム30は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0025】
ビード11のビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、チェーハー31が設けられている。チェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側にも延在しており、そのタイヤ幅方向外側およびタイヤ径方向内側には、リムストリップゴム32が設けられている。このリムストリップゴム32のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム30に連接している。
【0026】
本実施形態のタイヤ1には、電子部品としてのRFIDタグ40が埋設されている。
RFIDタグ40は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、RFIDタグ40は、ビードフィラー22の内部に埋設した形で設けられている。
【0028】
また、本実施形態のRFIDタグ40は、ビードフィラー22の同材質の一方のフィラー片22Bと他方のフィラー片22Cで挟み込んでビードフィラー22の内部に埋設されている。すなわち、本実施形態では、ビードフィラー22が複数に分割され、隣り合うフィラー片22B、22Cの間に挟み込むようにしてRFIDタグ40が設けられている。このとき、高モジュラスのビードフィラー22の内部に埋設されるため、RFIDタグ40は、ゴムシートに被覆された状態であっても、被覆されていない状態であってもよい。
【0029】
さらに、本実施形態では、図1及び図2に示すように、RFIDタグ40がビードコア21からタイヤ径方向外側に10mm以上離間(符号L以上離間)して設けられている。好ましくは20mm以上離間(L)して設けられている。さらに好ましくは、RFIDタグ40は、タイヤ径方向外側端22A付近のビードフィラー22内に埋設されている。
【0030】
すなわち、ビードコア21は、金属製のビードワイヤを積層巻回して環状に形成されていることから、通信に対して悪影響をおよぼす可能性が特に高い金属部材であるため、上記のようにRFIDタグ40を配置することによって、本実施形態では、リーダとの好適な通信性を確保することを可能にしている。
【0031】
ここで、図5は、ビードコア(ビードワイヤ)21とRFIDタグ40の離間距離に対する通信距離の関係を調べた結果を示している。なお、縦軸の通信距離は、最長通信距離を100として通信距離を指数化したものである。
【0032】
この図5に示すように、本願の発明者は、ビードコア(ビードワイヤ)21から10mm離れた位置で通信距離が60以上(60%以上)となることが確認され、20mm離れた位置で通信距離が100となることを確認した。
【0033】
これに基づき、本実施形態では、RFIDタグ40がビードコア21からタイヤ径方向外側に10mm以上離間(符号L以上離間)して設けられている。
また、RFIDタグ40をビードコア21から極力離間して設ける上で、RFIDタグ40は、タイヤ径方向外側端22A付近のビードフィラー22内に埋設されている。例えば、RFIDタグ40をビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側の10mmの範囲領域に配置することで、各種の乗用車用のタイヤなどに対し、十分にビードコア21の通信への影響を排除でき、好適な通信性能を確保することを可能にしている。
【0034】
但し、本発明においては、図3及び図4に示すように、必ずしも、RFIDタグ40がビードコア21からタイヤ径方向外側に10mm以上離間(符号L以上離間:図1図2参照)することに限定しなくてもよい。
【0035】
一方、本実施形態のタイヤ1の製造工程においては、加硫工程の前に、ビードフィラー22の同材質の一方のフィラー片22Bと他方のフィラー片22CでRFIDタグ40を挟み込み、このビードフィラー22を、被覆ゴムが加硫される前のカーカスプライ23のプライ折り返し部25またはプライ本体24に包まれるように取り付ける。そして、RFIDタグ40を含む各構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤを製造する。
【0036】
これにより、本実施形態においては、タイヤ製造時において、剛性を有し、粘着性を有する生ゴムにより被覆されているカーカスプライ23を利用して、ビードフィラー22の内部に埋設させつつRFIDタグ40を所定位置に位置決めして配置することができるため、タイヤの製造工程におけるRFIDタグ40の組み付け作業を容易に行える。
【0037】
ここで、図6Aは、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆された、RFIDタグ40の一例を示す図である。図6Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート431に覆われて隠れている。図6B図6Aのb−b断面図、図6C図6Aのc−c断面図である。
【0038】
本実施形態においては、図6に示されるように、RFIDタグ40は保護部材43により被覆されている。
【0039】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。通信性をおよび柔軟性を考慮すると、コイル状のスプリングアンテナが最も好ましい。
【0040】
保護部材43は、RFIDタグ40を挟み込んで保護する2枚のゴムシート431、432により構成されている。
【0041】
保護部材43は、例えば所定のモジュラスのゴムにより構成されている。
ここで、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0042】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム30よりもモジュラスが高いゴムを用いる。
【0043】
例えば、保護部材43に用いられるゴムとしては、サイドウォールゴム30のモジュラスを基準として、その1.1倍〜2倍のモジュラスのゴムを用いることがより好ましい。
【0044】
また、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
また、保護部材43として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚のゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0045】
このように、保護部材43を、2枚のゴムシートによって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、一方のフィラー片22Bと他方のフィラー片22Cの間に挟み込んで埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。
【0046】
ただし、保護部材43は、2枚のゴムシートによって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成するゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。
また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
なお、本発明に係るRFIDタグ40は必ずしも保護部材43に被覆して構成されていなくてもよい。また、保護部材43は、RFIDタグ40の片面のみに設けてもよい。
【0047】
RFIDタグ40の片面のみに保護部材43を設けた場合は、全体の厚みを薄くすることができる。
【0048】
上記のように構成した本実施形態のタイヤ1においては、RFIDタグ40が、金属製のビードコア21から遠く、且つスチールベルト26からも遠い位置に配置されているため、RFIDタグ40が金属製の部品による悪影響を受けにくく、より好適な通信性能を確保することができる。
【0049】
また、本実施形態のRFIDタグ40は、カーカスプライ23を構成する繊維層によって移動が規制され、加えて、高モジュラスのビードフィラー22内に埋設されることで、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなる。よって、追加の部品を用いることなく、既存の部品によりRFIDタグ40の耐久性を向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態によれば、カーカスプライ23を構成する繊維層で囲繞されたビードフィラー22内にRFIDタグ40が設けられているため、且つタイヤ1の外壁面からRFIDタグ40までの距離が遠いため、加えて、高モジュラスのビードフィラー22内に埋設されているため、サイドウォール13に衝撃が加わったとしても、RFIDタグ40は保護される。すなわち、RFIDタグ40の衝撃保護性が十分に確保することができる。
【0051】
なお、タイヤに埋設するRFIDタグ40は、アンテナを含めると、長手方向を有することが多い。このようなRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち図1〜2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設することが好ましい。このように埋設することで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。
【0052】
また、本実施形態においては、電子部品として、RFIDタグ40がタイヤ1に埋設されているが、タイヤ1に埋設される電子部品は、RFIDタグに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品であってもよい。電子部品は、外部からの衝撃や周囲の応力の影響により性能が低下する可能性がある。よって、種々の電子部品をタイヤ1に埋設する場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0053】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0054】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードフィラー22を分割した形の一方のフィラー片22Bと他方のフィラー片22Cの間にRFIDタグ40が挟み込まれて、RFIDタグ40がビードフィラー22の内部に埋設されている。
これにより、製造時に、一方のフィラー片22Bと他方のフィラー片22Cの間にRFIDタグ40を挟み込んだ状態で加硫工程を行うことで、RFIDタグ40をビードフィラー22の内部に好適に埋設することができる。
また、追加の部品を用いることなく、既存の部品によりRFIDタグ40を保護することができる。
また、ビードフィラー22も高モジュラスであるため、このビードフィラー22によってもRFIDタグ40の動きが抑制され、RFIDタグ40の耐久性が向上する。
よって、ビードフィラー22の内部に設けることで、製造性、通信機能性等を好適に確保してRFIDタグ40をタイヤ1に埋設することが可能になる。
なお、ビードフィラー22は複数に分割された形となっており、隣り合うフィラー片の間に挟み込むようにRFIDタグ40が配設されれば、ビードフィラー22の分割数を限定する必要はない。
なお、本発明は、ビードフィラーが複数のフィラー片により形成され、一方のフィラー片と他方のフィラー片の間に、電子部品が挟み込まれる態様であればよく、複数のフィラー片は、それぞれ別個に製作したものであってもよい。
【0055】
(2)本実施形態に係るタイヤ1は、RFIDタグ40が、ビードコア21から10mm以上離間したタイヤ径方向外側に配設されている。
これにより、RFIDタグ40を、ビードコア21等の金属製の部品から離れた位置に配置することができるため、RFIDタグ40の通信機能等の性能を保つことができる。
【0056】
(3)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側の10mmの範囲領域にRFIDタグ40が埋設されている。
これにより、RFIDタグ40を、確実にビードコア21等の金属製の部品から離れた位置に配置することができるため、より確実にRFIDタグ40の通信機能等の性能を保つことができる。
(4)本実施形態に係るタイヤ1は、ゴムシートで被覆したRFIDタグ40が埋設されている。
これにより、ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40を、生ゴムの粘着性を利用して貼り付けて所定位置に配置することができる。また、ゴムシートも加硫前の生ゴムとすることにより、ゴムシート自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。さらに、ゴムシートによってRFIDタグ40を保護することが可能になる。
【0057】
(5)本実施形態に係るタイヤ1は、無被覆のRFIDタグ40が埋設されていてもよい。
この場合には、RFIDタグ40ひいてはタイヤ1の製造コストを低減することが可能になるとともに、より好感度にすることもできうる。
【0058】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特に乗用車用のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…タイヤ
11…ビード
12…トレッド
13…サイドウォール
21…ビードコア
22…ビードフィラー
22A…ビードフィラーのタイヤ径方向外側端
22B…一方のフィラー片
22C…他方のフィラー片
23…カーカスプライ
24…プライ本体
25…プライ折り返し部
26…スチールベルト
27…キャッププライ
28…トレッドゴム
29…インナーライナー
30…サイドウォールゴム
31…チェーハー
32…リムストリップゴム
40…RFIDタグ
41…RFIDチップ
42…アンテナ
43…保護部材
431、432…ゴムシート
【要約】
【課題】タイヤが大きく歪んだ場合や、タイヤに衝撃が加わった場合においても、電子部品を保護することが可能なタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを有する一対のビード11と、一方のビードから他方のビードに延び、ビードコア21の周りで折り返されたカーカスプライ23と、を備えたタイヤ1であって、ビードフィラー22が複数のフィラー片22B、22Cにより形成され、隣り合う一方のフィラー片22Bと他方のフィラー片22Cの間に電子部品40が挟み込まれて、電子部品40がビードフィラー22の内部に埋設されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C