特許第6594531号(P6594531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594531
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】変流器モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/30 20060101AFI20191010BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20191010BHJP
   G01R 15/18 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01F38/30
   H01F17/00 B
   G01R15/18 D
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-515600(P2018-515600)
(86)(22)【出願日】2016年8月8日
(65)【公表番号】特表2018-535539(P2018-535539A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2016068847
(87)【国際公開番号】WO2017054972
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2018年5月1日
(31)【優先権主張番号】102015218715.2
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】マイアー、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス、ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ファイル、ヴォルフガング
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−021661(JP,A)
【文献】 特開平08−306296(JP,A)
【文献】 特開2001−289884(JP,A)
【文献】 特開2005−332851(JP,A)
【文献】 特開2001−221814(JP,A)
【文献】 特開平01−209387(JP,A)
【文献】 特開2001−015365(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0133473(US,A1)
【文献】 特開2006−100389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/30
G01R 15/18
H01F 17/00
G01R 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部(6)内に複数の鉄回路(1)が組み込まれているプリント基板(7)を有する変流器モジュールであって、
変流器モジュールの二次回路(8)を成す巻線の複数の巻層(9)が前記プリント基板(7)内もしくはプリント基板(7)上に配置されており
前記二次回路(8)を形成する複数の巻層(9)が、前記プリント基板(7)の複数のプリント基板層(15)に形成されており、
前記二次回路(8)を成す複数の巻層(9)により形成された複数のプリント基板層(15)におけるプリント基板層(15)間の複数の貫通接触部(14)が、前記プリント基板(7)の複数のプリント基板層(15)のそれぞれ直接的に上下に重なっている奇数番目と偶数番目の層間においてのみ形成されており、
前記複数の貫通接触部(14)が、前記二次回路(8)を成す複数の巻層(9)の巻線面の外側に配置されている、変流器モジュール。
【請求項2】
前記鉄回路(1)が、鋼板(2)から、又は切断帯鉄心半体(10)から、又は環状帯(11)から、又は強磁性半殻(12)から形成されていることを特徴とする請求項1記載の変流器モジュール。
【請求項3】
前記鉄回路(1)が、前記プリント基板(7)における1つの開口部(6)内、又は複数の開口部(6)内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の変流器モジュール。
【請求項4】
前記変流器モジュールがモータ保護用に形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の変流器モジュール。
【請求項5】
前記変流器モジュールが線路保護用に形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の変流器モジュール。
【請求項6】
前記変流器モジュールが3相に構成されており、3つの鉄回路(1)と、電気的に互いに接続された3つの二次回路(8)とからなることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の変流器モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の開口部に鉄回路が組み込まれたプリント基板を有する変流器モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
環状鉄心変流器タイプの変流器は公知である。このような変流器の二次回路は環状鉄心とも呼ばれる環状巻線を含む。その変流器の一次回路は、環状巻線を貫通している線材である。法的な要件に基づいて、変流器の設計時には、例えば一次側端子と二次側端子との間の、又は一次側端子と環状巻線との間の予め定められた空間距離および沿面距離を順守しなければならない。環状巻線は通常、法的な指針からは絶縁されているとみなされないエナメル線からなる。これに対して一次回路をなす線材は、通常十分に絶縁されている。環状巻線のための一次回路線材の絶縁を剥いだ両自由端部間の規定の最小間隔を順守するべきである。
【0003】
この環状鉄心変流器のほかに、コイル巻枠を有する互い違いに積み重ねられた鋼板からなる変流器も存在する。このコイル巻枠は、これに簡単かつ迅速なコイル巻装が可能である。しかし、その反面、そのコイル巻枠のために一回限りの工具費用が発生する。全体として、この変流器の場合の精度およびダイナミックレンジは、環状鉄心変流器の場合よりも劣る。
【0004】
変流器に関する上述の例は幾つかの欠点を有する。例えば、二次側の巻層を形成するのに著しい費用がかかる。さらに、接続用のリッツ線が固定されなければならず、他方ではそれらのリッツ線がプリント基板に接触接続されなければならない。さらに、プリント基板から変流器部品を隔離する際に、より多くの占有スペースが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、簡単なやり方で上述の欠点を除去する変流器モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴事項を有する変流器モジュールによって解決される。個別にもしくは互いに組み合わせて使用できる有利な実施形態および発展形態は従属請求項の対象である。
【0007】
本発明によれば、この課題は、プリント基板の開口部内に鉄回路が組み込まれているプリント基板を有する変流器モジュールであって、変流器モジュールの二次回路を成す巻線の巻層がプリント基板内もしくはプリント基板上に配置されている変流器モジュールによって解決される。
【0008】
この特許出願において、変流器なる包括的用語は、一次回路および二次回路と共にプリント基板内又はプリント基板上に組み込まれたモジュール構造に構成された変流器、好ましくは専用のハウジングのない変流器として定義されている。
【0009】
本発明は、プリント基板上もしくはプリント基板内に二次巻線が導体路として形成されているプリント基板を含んでいる。プリント基板には、鉄回路を収容できるように複数の開口部が設けられている。一次巻線は、プリント基板層上又はプリント基板層内の別個の線路として又は導体路として実現することができる。
【0010】
本発明の格別に有利な実施形態では、鉄回路が、鋼板、特にU字形、E字形又はL字形の鋼板から、又は環状帯から、又は強磁性半殻から、又は切断帯鉄心半体から構成されている。積層された個々のU字形鋼板は、交互に互い違いの向きにされている。その構造は、このやり方により殆ど空隙をもたらさない。環状帯は、磁束を最適に案内することができるという利点をもたらす。強磁性半殻は、2つの半殻が簡単な組立を可能にし、部分的に重なった面を介して空隙特性が調整できるという利点を有する。切断帯鉄心半体も、2つの部分からなる構成によって簡単な組立を可能にする。切断帯鉄心半体は、閉じられた鉄回路がもたらされるように互いに接合されるだけでよい。
【0011】
本発明による着想の他の特別な発展形態では、鉄回路がプリント基板における1つの開口部又は複数の開口部に配置されており、二次回路を成す複数の巻層が鉄回路によって貫通されている。プリント基板内の開口部によって鉄回路を安定に固定することができる。各鉄回路は2つの脚部を有し、両脚部は1つの接続部を介して互いに接続されている。両脚部の一方の周りには、プリント基板内およびプリント基板上において二次回路が巻回されている。
【0012】
本発明の特別な実施形態では、二次回路を成す巻複数の層が、プリント基板の複数のプリント基板層上に形成されている。技術的に合理的な巻層数を達成するためには、複数の巻層を1つのプリント基板の複数の層に配分しなければならない。
【0013】
本発明による着想の他の特別な発展形態では、二次回路を成す複数の巻層により形成された複数のプリント基板層のプリント基板層間の複数の貫通接触部が、プリント基板の全体を貫通して形成されている。この技術的解決策は、格別にコスト効率がよい。
【0014】
本発明による着想の他の特別な発展形態では、二次回路を成す複数の巻層により形成された複数のプリント基板層の層間の貫通接触部が、プリント基板の部分範囲においてのみ形成されている。この場合、巻層間隔を増大させないために複数の貫通接触部は本来の巻線面の外側にある。
【0015】
本発明による着想の他の特別な発展形態では、複数の貫通接触部が、二次回路を成す複数の巻層の巻線面の外側に配置されている。それは、巻層間隔を増大させる必要がないという利点につながる。
【0016】
本発明の格別に有利な実施形態では、変流器モジュールをモータ保護用に形成することができる。
【0017】
本発明の格別に有利な実施形態では、変流器モジュールを線路保護用に形成することができる。
【0018】
本発明による着想の他の特別な発展形態では、変流器モジュールが、3相に構成されており、3つの鉄回路と、電気的に互いに接続された3つの二次回路で形成することができる。
【0019】
本発明による変流器モジュールは鉄回路を有し、その鉄回路は、好ましくはU字形鋼板から、切断帯半体から、環状帯から又は強磁性半殻から構成することができる。鉄回路はプリント基板の複数の開口部に配置されている。プリント基板内の複数の開口部は、好ましくは対向配置されている。鉄回路のそれぞれの実施形態は、どの実施形態でも2つの脚部を有し、両脚部は1つの接続部を介して互いに接続されている。各鉄回路の脚部はプリント基板の開口部に配置されている。いずれの場合にも、鉄回路の一方の脚部の周りには、変流器モジュールの二次回路を成す巻線の複数の巻層が、プリント基板内に形成されている。
【0020】
以下において図面を参照して実施例を説明することにより、本発明の更なる詳細および特徴事項を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は鉄回路としてU字形鋼板を有する本発明による変流器モジュールの実施例を示す概略図である。
図2図2は鉄回路として切断帯鉄心半体を有する本発明による変流器モジュールの他の実施例を示す概略図である。
図3図3は鉄回路として環状帯を有する本発明による変流器モジュールの他の実施例を示す概略図である。
図4図4は鉄回路として強磁性半殻を有する本発明による変流器モジュールの他の実施例を示す概略図である。
図5図5は強磁性半殻が積層鋼板から作られている、図4に応じた実施例を示す概略図である。
図6図6は完成したプリント基板を貫通する貫通接触部を有するコイルを示す概略図である。
図7図7はプリント基板の個々の層間に貫通接触部を有するコイルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明による変流器モジュールの実施例を示す。本発明による変流器モジュールは鉄回路1を有し、この鉄回路1は、好ましくはU字形鋼板2から構成されている。U字形鋼板は、2つの好適には対向する脚部3,4を有し、両脚部は接続部5を介して互いに接続されている。鉄回路1は、プリント基板7の開口部6に配置されている。プリント基板7内の開口部6は、好ましくは向かい合わせに配置されている。U字形に形成されている鋼板の脚部3,4は、プリント基板7の開口部6に配置されており、U字形鋼板2は、好ましくは開放側が交互にプリント基板7の上もしくは下に配置されている。図1に示された矢印方向は組立方向に相当する。鉄回路1の一方の脚部の周りには、変流器モジュールの二次回路8を成す巻線がプリント基板7内の複数の巻層9により形成されている。
【0023】
図2に、本発明による変流器モジュールの他の実施例が示されている。ここでは鉄回路1が切断帯鉄心半体10の形で実施されている。切断帯鉄心半体10はU字形に形成されており、2つの対向した脚部3,4と接続部5とを有する。U字形に形成された切断帯鉄心半体10の脚部3,4は、プリント基板7の開口部6に配置されており、切断帯鉄心半体10は一体となって1つの鉄回路1を形成する。その都度鉄回路1の一方の脚部の周りには、変流器モジュールの二次回路8を成す巻線が、プリント基板7内の複数の巻層9により形成されている。
【0024】
図3は、鉄回路1として環状帯11を有する本発明による変流器モジュールの他の実施例を示す。環状帯11は、プリント基板7の開口部6を通して巻回され、それによって円筒体を形成する。脚部3,4ならびに接続部5はこの円筒体の形成によって流れるように相互に移行する。その都度、鉄回路1の一方の脚部の周りには、二次回路8を形成する変流器モジュールの巻線が、プリント基板7内の複数の巻層9により形成されている。
【0025】
図4に、鉄回路1として強磁性半殻12を有する本発明による変流器モジュールの他の実施例が示されている。強磁性半殻12は、U字形に形成されており、2つの対向している脚部3,4および1つの接続部5を有する。U字形に形成されている2つの強磁性半殻12は、プリント基板7の開口部6に位置を合わせられており、両強磁性半殻12は互いに向き合うように配置されているので、プリント基板7の上方にも下方にも、U字形の強磁性半殻12の接続部5が配置されている。その都度鉄回路1の一方の脚部の周りには、二次回路8を成す変流器モジュールの巻線が、プリント基板7内の複数の巻層9により形成されている。
【0026】
図5図4に応じた実施例を示し、強磁性半殻12は積層鋼板から作られている。
【0027】
図6には、複数の巻層9と、完成したプリント基板層15を貫通する複数の貫通接触部14とを有するコイル13が示されている。鉄回路1のできるだけ有利な構造のほかに、プリント基板7上で二次巻線を最適に構成することも重要である。巻層9の技術的に合理的な個数を達成するために、1つのプリント基板の複数層に複数の巻層9が配分されていなければならない。これらのプリント基板層15は、複数の貫通接触部14により互いに接続されていなければならない。個々のプリント基板層15における巻層9は、好ましくは交互に内側から外側へ、それから再び外側から内側へ進行しているので、複数の貫通接触部14は交互に内側と外側とに存在する。その場合に、内側の複数の貫通接触部14は、できるだけ少なく基板面を占めるべきであり、従って積層鋼板の端面に合わせて一列に並んでいるべきである。
【0028】
図7は、複数の巻層9と、プリント基板7の個別層の間にある複数の貫通接触部14とを有するコイル13を示す。この場合、複数の貫通接触部14は、巻層間隔を増大させないために本来の巻線面の外側にあることが好ましい。構造スペースに関する最適な解決策は、それぞれ直接的に上下に重なっている奇数番目と偶数番目の層間に複数の貫通接触部14を配置した場合に得られる。
【0029】
図6および図7に示されている両実施例に関しては、偶数個のプリント基板層15により動作するのが最適である。というのは、貫通接触させられたコイル13の両巻層端部が自動的に外側にあるという結果になるからである。
【0030】
本発明による変流器モジュールの特徴点は、巻層がプリント基板内に組み込まれていることから鉄回路上における二次側巻層の高価な別個の巻装が必要でないことにある。プリント基板内に二次側巻層を組み込むことによって、接続用のリッツ線を取り付ける必要がなく、また接続用のリッツ線をプリント基板に接触させる必要もない。鉄回路をプリント基板内に組み込むことによって、従来技術による実施例に比べて少ない占有スペースにより、本発明による変流器モジュールのための明らかにコンパクトな構造がもたらされる。
【符号の説明】
【0031】
1 鉄回路
2 U字形鋼板
3 脚部
4 脚部
5 接続部
6 開口部
7 プリント基板
8 二次回路
9 巻層
10 切断帯鉄心半体
11 環状帯
12 半殻
13 コイル
14 貫通接触部
15 プリント基板層


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7