特許第6594547号(P6594547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594547
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】噴射穴ディスクおよびバルブ
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   F02M61/18 310C
   F02M61/18 340D
   F02M61/18 330Z
   F02M61/18 320Z
   F02M61/18 360J
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-527897(P2018-527897)
(86)(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公表番号】特表2018-536112(P2018-536112A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016075058
(87)【国際公開番号】WO2017102139
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年5月29日
(31)【優先権主張番号】102015225338.4
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100175743
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 周作
(72)【発明者】
【氏名】シュタルケルト,ティロ
(72)【発明者】
【氏名】テーメス,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンネル,ローラン
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/025114(WO,A1)
【文献】 特開2013−185522(JP,A)
【文献】 特開2008−255912(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0141385(US,A1)
【文献】 特開2014−031758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関および/または排ガス後処理のための調量弁または噴射弁のための噴射穴ディスク(10)において、
ディスク本体(20)と、供給される流体(11)をスプレー(12)として放出するための複数の噴射穴(31)およびそれぞれの前記噴射穴(31)へ流体(11)を供給するための通路(33)を有するように構成された前記ディスク本体(20)に構成されている噴射穴構造(30)とを有し、
前記通路(33)と前記噴射穴(31)との移行部に、スワール室(32)が形成され、
前記スワール室(32)の中心は、該スワール室(32)に連通する前記通路(33)の長手方向の中心軸からオフセットして配置され、
前記複数の噴射穴(31)は、前記噴射穴ディスク(10)の側面中心(15)を中心とする、第1の円(38)上および前記第1の円(38)よりも直径の小さな第2の円(39)上それぞれに複数個ずつ形成され、かつ、隣合う噴射穴(31)が、異なる円上に形成される様に配置され、
前記スワール室(32)のオフセット方向は、前記第1の円(38)上に形成された噴射穴(31)へ連通する通路(33)と、前記第2の円(39)上に形成された噴射穴(31)へ連通する通路(33)とがなす鋭角の内側となるように構成されている
噴射穴ディスク。
【請求項2】
記スプレー(12)の卵形線の横断面像が、
(i)約3・105Pa(3バール)から約10・105Pa(10バール)の範囲内の低い圧力のとき、
(ii)前記スプレー(12)における前記流体(11)の均一な分布をもって、および/または
(iii)80μm未満のSMD値を有する前記スプレー(12)の低減された液滴サイズをもって、
生成可能であるように構成される
請求項1に記載の噴射穴ディスク(10)。
【請求項3】
前記複数の噴射穴(31)それぞれに連通する前記通路(33)は、前記スワール室(32)から、弁開口部(6)に向けて形成されている
請求項1または2に記載の噴射穴ディスク(10)。
【請求項4】
前記複数の噴射穴(31)は、前記第1の円(38)および前記第2の円(39)それぞれに2個ずつ形成されている
請求項1〜のいずれか1項に記載の噴射穴ディスク(10)。
【請求項5】
前記鋭角をなす前記通路(33)に連通する噴射穴(31)から噴射される前記流体(11)が互いに反対向きのスワール方向を有している
請求項1〜のいずれか1項に記載の噴射穴ディスク(10)。
【請求項6】
内燃機関および/または排ガス後処理のための調量弁または噴射弁において、
弁室(3)を閉鎖する弁開口部(6)を備えた弁座体(4)と、
前記弁座体(4)の下流側に位置する噴射穴ディスク(10)とを有し、
前記噴射穴ディスク(10)は請求項1からのいずれか1項に基づいて構成されているバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射穴ディスクおよびバルブに関する。本発明は、特に、流動する流体のためのバルブのための、特に内燃機関および/または排ガス後処理のための調量弁または噴射弁のための、噴射穴ディスクに関し、ならびに、流動する流体のためのバルブ、特に内燃機関および/または排ガス後処理のための調量弁または噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流動する流体のためのバルブでは、特に、内燃機関のための調量弁または噴射弁では、特定の施工形態において、弁室から放出室へ、たとえば燃焼室などへ、流体を放出する役目をする少なくとも1つの噴射穴を有するいわゆる噴射穴ディスクが、流体の流動方向で見て、弁室を閉鎖する弁座体に後置される。
【0003】
このとき、しばしば前処理のために、噴射穴ディスクの噴射穴から流体の放出室への移行部で、流動する流体のいわゆる乱流噴霧化が利用される。特に比較的低い圧力の場合、このことは不均一な噴出流分布をもたらし、および/または比較的大きい液滴をもたらし、このことは多くの用途において望ましくなく、もしくは不都合でさえある。
【発明の概要】
【0004】
それに対して、独立請求項1の構成要件を有する本発明の噴射穴ディスクは、バルブで使用されたときに、噴霧コーンにおける比較的均一な液滴の分布を、液滴サイズを低減しながら実現することができるという利点を有する。このことは、本発明では独立請求項1の構成要件により、流動する流体のためのバルブのための、特に内燃機関のための調量弁または噴射弁のための、噴射穴ディスクが提供されることによって実現され、ディスク本体と、供給される流体をスプレーとして放出するための少なくとも1つの噴射穴および噴射穴へ流体を供給するためのそれぞれ少なくとも1つの通路を有するように構成された、ディスク本体に構成されている噴射穴構造とを有し、噴射穴、通路、および/または通路と噴射穴との間の移行部は、作動時に噴射穴から出ていく流体の1つまたは複数の噴出流の相互作用によって噴霧化のときにスプレーの卵形線の横断面像が特にフラットスプレーの形式で成形されるように、噴射穴ディスクのスワールジオメトリーをなすように構成されている。すなわち本発明によると、噴射穴ディスクのスワールジオメトリーは、噴射穴、供給をする通路、および/または通路と噴射穴との間の移行部の組み合わせの相応の適合化を通じて、噴射穴構造から出ていく流体の単一の噴出流の内在的な相互作用を通じて、または複数の噴出流の相互作用を通じて、噴霧化のときにスプレーの噴霧コーンの卵形線の横断面像が成形されるように選択される。特に、それによって噴霧コーンのフラットな形態を、均一なスプレー分布を有するフラットスプレーの意味で実現することができる。
【0005】
本発明の技術的な関連においては、噴霧コーン、スプレーコーン、およびスプレーの各用語は同義語として使用する。
【0006】
従属請求項は本発明の好ましい発展例を示している。
【0007】
本発明による噴射穴ディスクの好ましい実施形態では、スワールジオメトリーは、噴霧コーンまたはスプレーの卵形線の横断面像は、(i)約3・10Pa(3バール)から約10・10Pa(10バール)の範囲内の低い圧力のとき、(ii)スプレーにおける流体の均一な分布をもって、および/または(iii)80μm未満のSMD値を有するスプレーの低減された液滴サイズをもって生成可能であるように構成される。このようにして、たとえば噴霧コーンの均一性および/または液滴サイズの分布の観点からして従来は比較的不良な結果しか実現できていない、本発明による噴射穴ディスクおよび噴射穴ディスクを装備するバルブの利用分野も可能となる。
【0008】
それぞれの通路とそれぞれの噴射穴との間の移行部にスワール室が構成されていると、または、この移行部が少なくとも部分的にスワール室により形成されると、特別に好ましい特性が噴霧コーンまたはスプレーで実現される。
【0009】
相互の組み合わせにおける複数の噴出流の相互作用も、特に、噴霧コーンの全体形状、その方向、および/またはその横断面形態の観点から利点を提供する。たとえば本発明による噴射穴ディスクの1つの好ましい実施形態では、複数の−特に偶数の−噴射穴がそれぞれ1つの通路とともに構成されることが意図される。
【0010】
このとき特に、特に噴射穴ディスクの側面中心に関する噴射穴および/または通路の相互の角度間隔の適合化によって噴射穴の各ペアにより作動時に噴出流ペアを構成可能であり、個々の噴出流の結合によりスプレーの卵形線の横断面像を特に約30°から約70°の範囲内で生成可能であると好ましい。
【0011】
噴霧コーンの対称の形態が生じるのは、特に、本発明による噴射穴ディスクの別の好ましい発展例に基づき、特に1つの円周の上に、またはグループごとに分割されて複数の円周の上に、特に噴射穴ディスクの中心の周りに同心的に配置された複数の噴射穴が構成されるときである。
【0012】
特に卵形線の、長く引き伸ばされているがそれ以外では対称の形状を実現するために、噴射穴は複数の円周の上にグループごとに配置されていてよい。
【0013】
本発明による噴射穴ディスクの実施形態では、流動する流体を供給する通路に関しても、用途に応じてさまざまに異なるジオメトリーが適している。
【0014】
本発明による噴射穴ディスクの1つの発展例では、設けられる各通路は互いに平行に構成されていてよく、および/または同一の長さを有することができ、互いにすぐ隣接して噴射穴ディスクの中心に関して第1の小さいほうの角度または第2の大きいほうの角度を交互になすことができ、および/または互いにすぐ隣接して第1の小さいほうの長さまたは第2の大きいほうの長さを交互に有することができる。
【0015】
特定の用途での要求事項を満たせるようにするために、これらの特性を場合により相互に組み合わせることもできる。
【0016】
噴出流スワールに影響を与えることで、噴霧コーンの特性をさらに発展させることもできる。たとえば、本発明による噴射穴ディスクの別の実施形態では、すぐ隣接する噴射穴のスワール室が互いに反対向きのスワール方向を有することが意図されていてよい。
【0017】
横断面での、すなわち特に流体の流動方向に対して垂直方向での、それぞれの噴射穴の形状の適合化も、噴霧コーンの形態やその他の特性に、たとえば噴霧コーン内の液滴サイズ分布に影響を及ぼす可能性を提供する。たとえば、本発明による噴射穴ディスクの1つの発展例では、それぞれの噴射穴が円形または非円形の、特に卵形線もしくは楕円形の横断面を有することが意図されていてよい。
【0018】
本発明による噴射穴ディスクのさらに別の幾何学上および/または設計上の特性も、発生する1つまたは複数の噴霧コーンをその特性に関してそのつどの用途に合わせて構成するために、適合化の可能性を提供する。
【0019】
たとえば、本発明による噴射穴ディスクのさまざまな実施形態において、作動時に噴霧コーンまたはスプレーおよび特にフラットスプレーもしくはフラットに構成された噴霧コーンの卵形線の横断面像が発展形として構成されることが意図されていてよく、それは、(i)噴射穴の個数および/または配置の、(ii)噴射穴の傾斜角および/または形状の、(iii)通路の個数および/または配置の、(iv)噴射穴および/または通路の相互の相対的な配置の、および/または(v)スワール強度の適合化によって、特に設けられるスワール室とその配置、形状、およびそれぞれの通路および/または噴射穴に対するアライメント関連においても、作動時にスプレーおよび特にフラットスプレーの卵形線の横断面像を成形可能であることによる。
【0020】
さらに本発明は、流動する流体のためのバルブ、特に内燃機関のための調量弁または噴射弁に関する。本発明によるとこのバルブは、弁開口部を有する、弁室を閉鎖する弁座体と、弁座体に対して下流側に位置する噴射穴ディスクとを有するように構成される。噴射穴ディスクは本発明に記載された形態を有しており、それにより、本発明によるバルブの使用時に、比較的均一な分布および場合により低減された平均液滴サイズを有する噴霧コーンまたはスプレーが、特にフラットに構成された噴霧コーン形式で、またはフラットスプレーの形式で生じる。
【0021】
添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明によるバルブの一部を示す模式的な断面の側面図である。
図2】本発明による噴射穴ディスクの実施形態を示す模式的な断面の側面図である。
図3-1】本発明による噴射穴ディスクの実施形態を示す模式的な断面の平面図である。
図3-2】本発明による噴射穴ディスクの実施形態を示す模式的な断面の平面図である。
図4】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクの実施形態である。
図5】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクの実施形態である。
図6】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクの実施形態である。
図7】2穴2通路ジオメトリーと2つの衝突する噴出流との組み合わせ有する本発明の噴射穴ディスクの実施形態を示す模式的な断面の平面図である。
図8】2穴2通路ジオメトリーと2つの衝突する噴出流との組み合わせ有する本発明の噴射穴ディスクの実施形態を示す模式的な断面の平面図である。
図9】1穴2通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクの実施形態を示す模式的な断面の平面図である。
図10】1穴2通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクの実施形態を示す模式的な断面の平面図である。
図11】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図12】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図13】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図14】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図15】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図16】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図17】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図18】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図19】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
図20】4穴4通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスクのさまざまな実施形態、および噴射穴、噴霧コーン、およびその横断面の対応する構成である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下において、図1から図20を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。同一および等価の、ならびに同一または等価の作用をする部材やコンポーネントには同じ符号が付されている。符号が付された部材やコンポーネントの詳細な説明を、それが出てくるたびに繰り返すわけではない。
【0024】
記載されている構成要件およびその他の特性は、本発明の要部から外れることなく、任意の形で互いに切り離したり、任意に相互に組み合わせたりすることができる。
【0025】
図1は、本発明による噴射穴ディスク10を適用した本発明によるバルブ1の実施形態の一部分を、模式的な断面の側面図で示している。
【0026】
バルブ1は弁座支持体2を含んでいて、その下側領域に弁座7が構成され、第1の取付手段9−1を介して弁座支持体2に取り付けられている。弁体8はその下側端部に、弁座7の上に制御式に着座することができる、ここでは球形に構成された閉止ヘッド5を有しており、それにより弁開口部6を制御式に閉止または開放する。弁座7は弁座本体4のテーパ状の面により形成されており、その下側端部に弁開口部6を有している。弁座本体4の端面には、弁開口部6と反対を向くほうに、ディスク本体20と噴射穴構造30とを有する本発明の噴射穴ディスク10が、2つの取付手段9−2を介して弁座本体4の外面に取り付けられている。
【0027】
噴射穴ディスク10はさまざまな切欠きを有しており、これらの切欠きを通じて、一方では、噴射穴構造の1つまたは複数の噴射穴31が構成される。他方では、流動する流体11が弁室3から弁開口部6を介して、噴射穴31へと通じる通路33によって案内され、および、場合により通路33とそれぞれの噴射穴31との間の移行部に構成されるスワール室32を介して、流動する流体11が噴射穴31へと案内される。
【0028】
流動する流体11は、それぞれの噴射穴31を介して、同義語としてスプレーまたはスプレーコーンとも呼ぶ1つまたは複数の噴霧コーン12の形態でバルブ1から出ていく。
【0029】
図2および図3−1は、2つの噴射穴31を有する本発明による噴射穴ディスク10の実施形態を模式的な断面の側面図で、ないしは模式的な断面の平面図で示している。噴射穴31は、垂直方向の噴射穴31としてディスク本体20に構成されている。使用時にこれらの噴射穴は、それぞれの通路33を介して、および通路33と噴射穴31との間の移行部のスワール室32を介して、噴射穴31と反対を向いているほうの噴射穴ディスク10の側と、およびそこで図1に示す相応の弁開口部6と、流体工学的に接続される。
【0030】
図3−1の実施形態では2つの噴射穴31が構成されている。噴射穴31の個数とジオメトリーは、スプレーコーン12のジオメトリー、その均一性、ならびに液滴サイズ分布に関して本発明に基づいて惹起される利点を適合化するために、変更することができる。
【0031】
図3−1の実施形態では、流動する流体11を供給する通路33は直線状であり、噴射穴ジオメトリーに関して偏心的に取り付けられている。通路33の形状や偏心性の度合いも同じく変更することができる。
【0032】
同じことはスワール室32とそのサイズ、向き、形状についても当てはまる。
【0033】
図2および図3−1では、噴射穴ディスクは、側面中心15と中心軸16とを有する円板の形状を実質的に有している。
【0034】
図3−2は、本発明による噴射穴ディスク10の実施形態の、図3−1の図に匹敵する模式的な部分断面の平面図を示すが、4穴4通路コンフィギュレーションを有している。すなわちこの噴射穴ディスク10は、(i)噴射穴ディスク10の側面中心15の周りで同心的に円周38上に位置する4つの噴射穴31を有する噴射穴構造30、(ii)側面中心15の周りでベアごとに角度36をなす、供給をする4つの通路33、および(iii)通路33と噴射穴31との間のそれぞれ1つのスワール室32を有するように構成されている。作動時には、通路33、スワール室32、および噴射穴31の構成、ジオメトリー、および相対的な配置を通じて、流動する流体11について、および噴射穴の出口で生じる噴霧コーン12について、相応のインパルス40が生起される。
【0035】
図4から図6は、4穴4通路コンフィギュレーションを有する本発明による噴射穴ディスク10の別の構成を、図3−2に類似する形態で、模式的な部分断面の平面図として示している。
【0036】
図4の実施形態では、長さの等しい互いに平行な4つの通路33を有する4穴4通路ジオメトリーが成立しており、これらの通路を介して流動する流体11が、スワール室32を間に介在させる4つの噴射穴31に供給される。通路間隔34と通路長さ35は、1つの噴霧コーン12または複数の噴霧コーン12を構成するために変更することができ、通路33、スワール室32、および噴射穴31そのもののジオメトリーと配置も同様である。
【0037】
図5は、4つの通路33がペアごとに特定の第1の通路角度36をなす4穴4通路ジオメトリーを同じく示している。この通路角度も、1つの噴霧コーン12または複数の噴霧コーン12の特性を適合化するために、噴射穴ディスク10の側面中心35からの中心間隔37と同様に変更することができる。
【0038】
図6の実施形態では、噴射穴ペアのうち第1の噴射穴31が大きいほうの円直径をもつ第1の円38の上に配置されるとともに、噴射穴ペアのうち第2の噴射穴31が小さいほうの直径の第2の円39の上に配置された4穴4通路ジオメトリーが構成されている。噴射穴31のペアおよびそれらの通路33は、同じく相互の間で角度36を形成する。配置円38および39は、噴射穴ディスク10の側面中心15に対して同心的に位置する。
【0039】
1つの噴霧コーン12または複数の噴霧コーン12の特定の特性を得るために、角度36のほか、ここでは円38および39の直径も相応に適合化することができる。
【0040】
図7および図8は、2穴2通路のコンフィギュレーションもしくはジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスク10の2つの実施形態を示している。
【0041】
図9および図10は、卵形線の噴射穴31を備えた1穴2通路ジオメトリーを有する本発明の噴射穴ディスク10の実施形態を示している。
【0042】
図10の実施形態では、通路33と本来の噴射穴31との間の移行部にスワール室32が追加的に構成されている。
【0043】
図11から図20は、4穴4通路ジオメトリーとスワール室32とを有する本発明の噴射穴ディスク10を示している。これらの実施形態では、それぞれ2つの通路33が互いに平行にアライメントされている。スワール室32の回転方向は各ペアの噴射穴31について反対向きであり、その結果、それによって流動する流体11が噴射穴31から出た後に大気の空気が噴出流中心へと引き込まれて、個別噴出流12−1,12−2が共通の卵形線の噴霧コーン12をなすように成形される。このときインパルス方向は、通路33の配置によって規定されている。
【0044】
図12から図14図17および図20は、組み合わされたスプレーコーン12の相応の構成を示している。
【0045】
本発明の上記およびその他の構成要件や特性について、以下の記述によって詳しく説明する。
【0046】
本発明の目標設定は従来の噴霧化コンセプトの改良にある。
【0047】
たとえば乱流噴霧化による従来の前処理コンセプトは、3バールから10バールの低い圧力の場合、不均一な噴出流分布および/またはたとえば約80μmから150μmのSMD値をもつ比較的大きい液滴サイズをもたらす。
【0048】
本発明によるコンセプトは、スプレーコーン12の内部でのいっそう均一な分布、およびスプレーにおける液滴サイズの明らかな低減をもたらすことを意図する。
【0049】
本発明による取組みは、均一なスプレー分布を最小の液滴サイズで実現することに依拠する。その際の基本的思想は、噴射穴31から出た後の噴出流の相互反応によってスプレー像が特に横断面で見て卵形線に成形されるように、噴射穴ディスク10のスワールジオメトリーを配置、適合化することにある。
【0050】
適用分野としては、卵形線のスプレー12が壁の湿潤を回避するAdBlue−調量(DNOX)、水噴射、およびガソリン噴射が適している。それにより、たとえばDNOXシステムでエンジン近傍に組み付けたときの変換率の向上や、水噴射およびガソリン噴射での改善されたダイナミクスを実現可能である。
【0051】
たとえば1つの出発点は、通路ジオメトリーのさまざまに異なる配置によって(たとえば通路33により形成される角度36の態様の変更によって)、特に個々の噴出流の結合により、断面で見て卵形線の形状をスプレー12全体でもたらす噴出流ペアを形成することにある。さまざまに異なる穴傾斜角との組み合わせで、スプレー12の噴出流を相応の位置へと向かわせるために、流体11の流動のインパルスを利用することができる。
【0052】
所望のスプレー形状を実現するために、スワール強度や穴傾斜角を変更することができる。
【0053】
穴数や通路構造も、フラットスプレーの実現のために変更することができる。
【0054】
次のような利点が本発明に基づいて得られる。
(i)均一で微噴霧化されたスプレー、
(ii)低い圧力のときでさえ、たとえば乱流噴霧化と比べたときの良好な噴霧化、
(iii)卵形線の形状をもつ排ガス管のためのスプレー12の利用、
(iv)排ガス管または吸込管における壁の湿潤の低減、
(v)打抜きやレーザ穿孔によって製作することができる噴射穴ディスク10のいっそう低コストなデザイン。
【0055】
4穴ジオメトリーを有する本発明による噴射穴ディスクの特定の例では、通路33のうちそれぞれ2つが互いに平行に配置されていてよい。このときスワール室32における回転方向は、2つのペアについて反対向きに構成されていてよい。それにより、大気の空気がスプレー12の中心に引き込まれる。個別噴出流が結合されることで卵形線のスプレー12が生じる。インパルス方向は、通路33の配置によって規定することができる。
【0056】
スプレー12の形状は、通路33の各ペアの配置の変更、スワール強度および/または穴傾斜角の変更によって影響を及ぼすことができる。
【0057】
次のような幾何学的、設計的な側面を、本発明に基づき、均一なスプレー分布を有するフラットスプレーの意味における噴霧コーンのフラットな形態を実現するために、単独で、または任意の組み合わせで適用することができる。
【0058】
(I)(a)噴射穴31に関して噴射穴直径をd0、噴射穴面積をA0と表し、(b)スワール室32に関してスワール室直径をDsと表し、(c)通路33に関して通路幅をkn、通路深さをkt、通路面積をAp、ならびに図16に示すように符号50が付された通路偏心度をkdで表すと、本発明について次のような関係および寸法設定を単独で、または任意の組み合わせで適用可能である。
【数1】
【0059】
図16では符号50で表されている)通路偏心度kdは、矢印51の方向に正の値、矢印52の方向に負の値をとることができる。正の値はスワールの強化をもたらし、負の値は噴射穴31から出ていく噴出流のスワールの減衰をもたらす。
【0060】
(II)図3−2および図5に示すコンフィギュレーションでは、スワール方向または回転方向が反対向きであり穴ペアが生じるスワールジオメトリーを構成するために、角度36を約70°から約120°の範囲内とすることができる。
【0061】
(III)図7および図8の実施形態との関連では、さらに次のことに留意する。
【0062】
噴射穴31のそれぞれの位置は、さまざまに異なる大きさの部分円直径の上に位置することができる。それにより、噴射穴31の傾斜との組み合わせで噴霧コーンまたはスプレーコーン12の形状を調整することができる。
【0063】
均一性を向上させるために、スワール前処理との組み合わせで、噴出流衝突を利用した工程を行うことができる。その際に利用される噴射穴31は、部分円直径の上で相互に向かい合うように位置する。噴射穴31の形状は円筒状であってもテーパ状であってもよく、すなわち流動方向で先細になっていてもよい。噴射穴は内方に向かって傾けることができる。一次噴出流の衝突の後、噴霧コーンまたはスプレーコーン12は噴出流平面に対して直交するように開裂する。噴霧コーンまたはスプレーコーン12の成形を噴射穴の傾斜で調整することができる。
【0064】
(IV)図12から図14図17および図20に示す本発明のコンフィギュレーションでは、噴霧コーンまたはスプレーコーン12の基礎となる噴射穴31および噴射穴ディスク10と噴射穴構造30のジオメトリーは、噴霧コーンまたはスプレーコーン12が均一な質量分布を有するように構成されていてよく、このとき噴霧コーンまたはスプレーコーンの形状はフラットから卵形線に構成されていてよい。
【符号の説明】
【0065】
1 バルブ
3 弁室
4 弁座体
6 弁開口部
10 噴射穴ディスク
11 流体
12 スプレー
15 側面中心
20 ディスク本体
30 噴射穴構造
31 噴射穴
32 スワール室
33 通路
36 角度間隔
38,39 円周
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
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図8
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図20