特許第6594559号(P6594559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6594559制御部およびモバイル制御モジュールから成る装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594559
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】制御部およびモバイル制御モジュールから成る装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/40 20060101AFI20191010BHJP
   B66C 23/90 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B66C13/40 D
   B66C23/90 M
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-538920(P2018-538920)
(86)(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公表番号】特表2018-530494(P2018-530494A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】AT2016060078
(87)【国際公開番号】WO2017063015
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】GM302/2015
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】518129329
【氏名又は名称】パルフィンガー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】PALFINGER AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ハンゲーブル
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−051332(JP,A)
【文献】 特開2008−001453(JP,A)
【文献】 特開平11−278789(JP,A)
【文献】 特開平06−293495(JP,A)
【文献】 特開2011−006178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06
B66C 23/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロリックリフティング装置に配置されたまたは配置されるべき制御部(1)と、前記制御部(1)を遠隔操作することができるモバイル制御モジュール(2)と、から成る装置であって、
前記制御部(1)には、信号入力部(6,7)を介してセンサデータを供給することができ、前記制御部(1)のプロセッサ(8)は、前記センサデータから、および、メモリ(30)に格納されている、前記リフティング装置に特有のデータから、前記リフティング装置の現在の位置に固有の、また必要に応じて、前記リフティング装置によって引き上げられた吊り荷に固有の第1の情報を算出するように構成されている、装置において、
前記制御部(1)は、運転モードを有しており、前記運転モード中に、前記モバイル制御モジュール(2)において、前記リフティング装置の現在の位置とは別の位置に関するパラメータおよび/または前記リフティング装置によって引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷に関するパラメータを入力することができ、かつ、前記パラメータおよび前記格納されているデータから、前記別の位置および/または前記リフティング装置によって引き上げられたもしくは引き上げられるべき前記吊り荷に固有の第2の情報が算出され、前記第1の情報および/または前記特有のデータと比較され、前記算出および前記比較が、前記制御部(1)のプロセッサ(8)によって行われ、かつ、前記モバイル制御モジュール(2)および前記制御部(1)が、無線式(10)および/または有線式(11)に相互に通信することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記モバイル制御モジュール(2)は、ユーザによって操作することができる、前記運転モードをアクティブ化するためのアクティブ化手段(28)を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記比較は、前記ハイドロリックリフティング装置の、前記入力されたパラメータによって特徴付けられた前記別の位置への移動の実行可能性に関する情報および/または引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷に関する情報を含んでいる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記運転モードをアクティブ化した際に、前記第1の情報が前記モバイル制御モジュール(2)に伝送される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記モバイル制御モジュール(2)のプロセッサ(9)は、前記比較および/または前記第1の情報から、表示用のグラフィックデータを算出し、前記グラフィックデータを、表示ユニット(3)を介して、ユーザに表示することができる、請求項1からまでのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記表示を信号表示、ピクトグラム(P1,P2)またはテキスト出力の形態で行う、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記パラメータの入力を、前記モバイル制御モジュール(2)において、入力フィールド(37,38,39)を備えたマスク(33)を介して行う、請求項1からまでのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記パラメータは、吊り上げ高さ、到達距離、および、現在のまたは自由に選択可能な吊り荷重を含んでいる、請求項1からまでのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記制御部(1)は、別の運転モードを有しており、前記別の運転モード中に、前記制御部(1)のプロセッサ(8)によって、前記ハイドロリックリフティング装置を、前記入力されたパラメータによって特徴付けられた位置に移動させるための一連の制御命令が算出される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記モバイル制御モジュール(2)は、ユーザによって操作することができる、前記制御命令の算出をアクティブ化するための別のアクティブ化手段(28)を有している、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記モバイル制御モジュール(2)は、前記ハイドロリックリフティング装置を、前記入力されたパラメータによって特徴付けられた位置に移動させるための前記制御命令の出力を制御するための、ユーザによって操作することができる操作手段(32)を有している、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の情報に従って許容される前記リフティング装置の位置までしか移動を行うことができない、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記操作手段(32)によって、前記ハイドロリックリフティング装置の、前記入力されたパラメータによって特徴付けられた位置への移動の速度を制御することができる、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の装置を備えた、ハイドロリックリフティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の特徴を備えている、ハイドロリックリフティング装置に配置されたまたは配置されるべき制御部およびモバイル制御モジュールから成る装置と、その種の装置を備えたハイドロリックリフティング装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
独国実用新案第202010014310号(DE202010014310U1)からは、例えば、制御部を備えたクレーンが公知であり、このクレーンにおいて、制御部は、作業プロセスをシミュレートするための運転モードを有しており、この運転モード中に、種々の位置へのクレーンの移動をシミュレートすることができる。そのようにしてシミュレートされるテスト運転中に、限界値、例えば負荷トルク限界値に達したことを、制御部に統合された表示部に表示することができる。そのような制御部の欠点は、制御命令の入力およびシミュレーションの表示が、統合された制御部の所在地に拘束されることである。さらに、テスト運転のシミュレーションの実行は時間が掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国実用新案第202010014310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、前述の欠点が生じない、制御部およびモバイル制御モジュールから成る装置、ならびにその種の装置を備えたハイドロリックリフティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を備えた装置、およびその種の装置を備えたハイドロリックリフティング装置によって解決される。本発明の有利な実施の形態は、従属請求項に規定されている。
【0006】
この課題は、本発明によれば、制御部が、運転モードを有しており、この運転モード中に、モバイル制御モジュールにおいて、リフティング装置の別の位置に関するパラメータおよび/またはリフティング装置によって引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷に関するパラメータを入力することができ、かつ、それらのパラメータおよび格納されているデータから、別の位置および/またはリフティング装置によって引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷に固有の第2の情報が算出され、また第1の情報と比較され、この算出および比較が、制御部のプロセッサによって行われ、かつ、モバイル制御モジュールおよび制御部が、無線式および/または有線式に相互に通信する、ことによって解決される。
【0007】
モバイル制御部ないしモバイル制御モジュールとは、独立した(場合によっては携帯可能な)操作ユニットであると解され、この操作ユニットによって、ユーザはクレーンないしハイドロリックリフティング装置のある程度の範囲の周囲において実質的に自由に移動することができる。もちろん、その種のモバイル制御モジュールと(特に固有の制御部を備えている)クレーンないしハイドロリックリフティング装置との間で、データないし情報を交換することができる。
【0008】
ハイドロリックリフティング装置に配置されたまたは配置されるべき据え付けの制御部においてセンサデータを処理および解釈することによって、高い計算能力を有するプロセッサを利用することができ、その際、プロセッサの電力消費量を見掛け上考慮する必要はない。
【0009】
センサデータは、リフティング装置の一部に、例えばハイドロリックシリンダ、回動ジョイント、屈曲ジョイント、フレーム部またはスライディングアームにそれぞれ配置されている、例えば圧力センサ、ロータリエンコーダ、ひずみゲージ、変位センサ、傾斜計またはスイッチに由来するものであってよい。
【0010】
リフティング装置の位置に固有の第1の情報は、例えば、リフティング装置の現在の支持状況、ジオメトリまたは装備、ならびに引き上げられたもしくは引き上げられるべき荷重による負荷を含むことができる。したがって、第1の情報は、現在の位置、現在の吊り荷状況および/またはリフティング装置における作業プロセスの許容性を、所与の現在の吊り荷も含めて特徴付けることができる。第1の情報の算出のために、メモリに格納されている、リフティング装置の詳細な構成に特有のデータ、例えばリフティング装置の運転パラメータに関する限界値も含むデータを考慮することができる。
【0011】
適切な入力手段を介して、モバイル制御モジュールにおいて、リフティング装置の別の位置に関するパラメータおよび/またはリフティング装置によって引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷に関するパラメータを入力することができ、ここで、入力されたパラメータは、ユーザが所望するリフティング装置の位置および/またはリフティング装置によって引き上げられたもしくは引き上げられるべき所望の吊り荷重を表すことができる。
【0012】
制御部のこれに適した運転モードにおいては、モバイル制御モジュールにおいて入力されたパラメータを制御部に伝送することができる。伝送されたそれらのパラメータに基づいて、制御部のプロセッサによって、また制御部のメモリに格納されている、リフティング装置に特有のデータによって、第2の情報を算出することができる。第1の情報と同様に、それらの第2の情報も、入力されたパラメータによって特徴付けられた位置、および/または、リフティング装置によって引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷に固有である。第2の情報を、その許容性に関して、固有のデータに含まれている、リフティング装置に対して有効な限界値の意味において判定することができる。さらに、リフティング装置の第1の位置を起点として、別の位置に到達可能であるか否かを判定するために、この第2の情報を第1の情報と比較することができる。続いて、比較の評価をモバイル制御モジュールに伝送することができる。
【0013】
モバイル制御モジュールと制御部との間のデータの伝送を、その都度、無線式および/または有線式に行うことができる。情報の有線式の伝送は、例えば、ユーザがハイドロリックリフティング装置に配置されたまたは配置されるべき制御部のある程度の範囲の周囲にいるときに行うことができる。特にセキュリティが重要な制御プロセスでは、このことは、ユーザからモバイル制御モジュールを介して出力された制御命令の許容性についての必要条件であってもよい。
【0014】
ここで、リフティング装置は、クレーン、例えば車両に配置することができるローダクレーンであってよく、また、高所作業台であってもよい。
【0015】
モバイル制御モジュールが、ユーザによって操作することができる、運転モードをアクティブ化するためのアクティブ化手段を有していることは有利であると分かった。これによって、運転モードを、例えばユーザによって、所望の時点において、または所望の期間にわたりアクティブ化することができる。
【0016】
さらに、モバイル制御モジュールはエネルギ蓄積部を有することができ、また運転モードのアクティブ化を、エネルギ蓄積部の最小充電状態においてのみ行うことができる。これによって、運転モードへの切り替えによって、また場合によってはその切り替えに関連してエネルギ消費量が高まることによって、例えばエネルギ蓄積部の充電状態が既に低いときに、別の急速な放電によってモバイル制御モジュールが動作不能になることを阻止することができる。
【0017】
さらに有利には、比較が、ハイドロリックリフティング装置の、入力されたパラメータによって特徴付けられた別の位置への移動の実行可能性に関する情報および/または引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷に関する情報を含んでいる。この場合、制御部のプロセッサによって、リフティング装置に対して有効な運転パラメータに関する限界値を順守した場合に、またリフティング装置の装備を考慮して、別の位置に到達できるか否かを求めることができる。このことは、現在の位置を起点として別の位置に到達可能であるか否か、また現在の負荷を基準にしてさらなる負荷を達成できるか否かの判定も含むことができる。
【0018】
さらに、運転モードをアクティブ化した際に、第1の情報がモバイル制御モジュールに伝送されることは有利であると考えられる。その後、この第1の情報は、別の位置に関して入力されるパラメータの基礎として使用することができ、またユーザは、例えば表示部を用いて、この第1の情報にアクセスすることができる。
【0019】
モバイル制御モジュールのプロセッサは、比較および/または第1の情報から、表示用のグラフィックデータを算出することができ、このグラフィックデータを、表示ユニットを介して、ユーザに表示することができる。この算出は、例えば制御モジュールに格納されているシンボルまたはグラフィックのスケーリング、選択および/または作成もしくは算出されたグラフィックデータの、格納されているバックグラウンドグラフィックへの統合を含むことができる。表示ユニットは、例えば液晶ディスプレイ、LEDディスプレイまたはOLEDディスプレイの形態のディスプレイを有することができる。第1の情報を表示する際に、ユーザには、リフティング装置の現在の位置、また場合によっては現在引き上げられた吊り荷重を表示することができる。比較を表示する際に、ユーザには、別の位置の判定および/またはリフティング装置の別の位置への移動の実行可能性の判定を表示することができる。
【0020】
この際、表示を信号表示、ピクトグラムまたはテキスト出力の形態で行うことは有利であると考えられる。つまり、表示を直観的に理解できるように、またわずかな手間で行うことができる。
【0021】
さらに、パラメータの入力を、モバイル制御モジュールにおいて、入力フィールドを備えたマスクを介して行うことができる。つまり、入力を簡単に行うことができ、またパラメータを、時間を節約して入力することができる。
【0022】
パラメータは、吊り上げ高さ、到達距離、および、現在のまたは自由に選択可能な吊り荷重を含むことができる。ここで吊り上げ高さとは、所定の旋回角度での、クレーンの基準面から、例えばクレーンベースの下縁から、クレーンの先端までの、すなわちクレーンアームの最端部またはクレーンアームに配置されている延長部の最端部までの垂直方向の距離、またはクレーンによって引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷までの垂直方向の距離であると解することができる。これとは異なり、吊り上げ高さのパラメータは、現在のクレーン位置または吊り荷の位置に対して相対的な、クレーンの先端または吊り荷の垂直方向の距離を特徴付けることができる。これと同様に、到達距離のパラメータは、所定の旋回角度での、旋回軸線から、より正確にはクレーンベースにおけるクレーン柱の実質的に垂直に支承されている旋回軸線から、クレーンの先端までの水平方向の距離、またはクレーンによって引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷までの水平方向の距離を特徴付けることができるか、またはこれとは異なり、現在のクレーン位置または吊り荷の位置に対して相対的なクレーンの先端または吊り荷の水平方向の距離を特徴付けることができる。またパラメータが空間座標系または平面座標系、例えば球面座標系、円柱座標系またはデカルト座標系での座標セットを含むことも考えられる。到達距離の特徴付けを、吊り上げ高さの特徴付けとは別個に行うこともできる。クレーンの先端または吊り荷のGPS座標の入力および/または検出も同様に考えられる。さらには、パラメータがクレーンの一部ないし構造ユニットの位置、例えばテレスコピック式に伸縮可能なクレーンアーム延長部の伸縮位置またはクレーンアームの回動角度位置ないし屈曲角度位置を特徴付けることが考えられる。そのようなパラメータセットによって、リフティング装置の所望の位置を正確に、またユーザが容易にアクセスできるように特徴付けることができる。
【0023】
さらに好適には、制御部が別の運転モードを有しており、この別の運転モード中に、制御部のプロセッサによって、ハイドロリックリフティング装置を、入力されたパラメータによって特徴付けられた位置に移動させるための一連の制御命令が算出される。この際、プロセッサによって制御命令のセットを作成することができ、また必要に応じてメモリに格納することができ、この制御命令のセットによってリフティング装置を別の位置に動かすことができる。この場合、現在の位置を出発位置として使用することができる。移動は、ジオメトリの変化、吊り上げプロセスまたはそれらの組合せであってよい。
【0024】
有利には、モバイル制御モジュールが、ユーザによって操作することができる、制御命令の算出をアクティブ化するための別のアクティブ化手段を有することができる。つまり、ユーザが所望する時点に算出を行うことができ、またプロセッサの不必要な計算時間を要求しなくてすむ。
【0025】
さらには、モバイル制御モジュールが、ハイドロリックリフティング装置を、入力されたパラメータによって特徴付けられた位置に移動させるための制御命令の出力を制御するための、ユーザによって操作することができる操作手段、特に操作レバーを有することができる。この操作手段を、例えばボタンまたはオートリセット型の操作レバーの形態で実施することができ、その操作時には、リフティング装置の種々の部分に該当することができる一連の制御命令が制御部から出力される。これによって、制御部の操作を大幅に簡略化することができる。
【0026】
第1の情報に従って許容されるリフティング装置の位置までしか移動を行うことができないことは有利であると考えられる。つまり、リフティング装置が移動によって、限界値の枠内では許容されない状態には達しないことを保証することができる。つまり例えば、実際は許容されない別の位置への接近を、運転パラメータに関して有効な限界値の枠内で容認される範囲で行うことができる。
【0027】
ここでさらに有利には、操作手段によって、特に操作レバーによって、ハイドロリックリフティング装置の、入力されたパラメータによって特徴付けられた位置への移動の速度を制御することができる。これによって、ユーザは、制御命令の出力の割合、つまりリフティング装置のジオメトリの変化の速度も制御することができる。
【0028】
上記において述べたような装置を備えた、ハイドロリックリフティング装置、特に車両用のローダクレーン、特に好適にはジブクレーン、または、高所作業台についても保護が望まれる。
【0029】
本発明の実施例を図面に基づき考察する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による装置の実施例の概略図を示す。
図2】車両に配置されたリフティング装置の実施の形態を示す。
図3】リフティング装置および本発明による装置の実施例の概略図を示す。
図4a】入力マスクおよび第2の情報から算出されたグラフィックデータを概略的に示す。
図4b】入力マスクおよび第2の情報から算出されたグラフィックデータを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
制御部1は、信号入力部6,7を介して、リフティング装置のジオメトリ、支持状況、また必要に応じて吊り荷に関するセンサデータを受け取る。制御部1は、プロセッサ8において、それらのデータから、また格納されているリフティング装置に特有のデータから、現在の吊り荷状況、位置に固有の、および/または、場合によっては所与の現在の吊り荷状況での、リフティング装置における作業プロセスの許容性に固有の第1の情報を算出する。
【0032】
制御部1は、さらにメモリ30を有しており、このメモリ30には、リフティング装置に特有のデータを格納することができる。これらのデータは、リフティング装置の装備、機能および運転パラメータの限界値についての情報を含むことができる。現在の位置および負荷に固有の第1の情報の算出を、有利には、メモリ30に格納されているデータを使用して行うことができる。
【0033】
制御部1の送信および受信ユニット4を用いて、データを、無線コネクション10を介して、または有線コネクション11を介して、モバイル制御モジュール2の送信および受信ユニット5に伝送することができる。無線コネクション10を用いる伝送と有線コネクション11を用いる伝送の組合せも考えられる。無線コネクション10は、複数のチャネルを介して、また複数の周波数帯域で、データを送信および受信することができ、また送信および受信を並行して行うこともできる。
【0034】
モバイル制御モジュール2は、メモリ31を有しており、このメモリ31には、伝送された情報を記憶することができ、またプロセッサ9によって算出された、表示ユニット3に表示するためのグラフィックデータを記憶することもできる。ユーザによってデータを入力するために、さらに入力手段13を設けることができる。
【0035】
エネルギ供給のために、モバイル制御モジュール2は、例えば再充電可能な蓄電池の形態のエネルギ蓄積部29を有している。制御部1のエネルギ供給は、リフティング装置の図示していないユニットを介して行うことができる。
【0036】
図2には、車両12に配置されたリフティング装置およびリフティング装置に配置された制御部1の実施の形態を示す。車両12は、ペイロード、またバラストウェイトを収容するための、また搬送するための積載面を有している。クレーン14の形態のリフティング装置は、クレーンベース15を介して車両12に結合されている。クレーンベース15には、垂直方向軸線周りに回動可能なクレーン柱16が支承されている。クレーン柱16には、水平方向軸線周りに、ハイドロリックシリンダ22を用いて旋回可能なリフティングアーム17が配置されている。リフティングアーム17にもまた、水平方向軸線周りに、ハイドロリックシリンダ23を用いて旋回可能であり、かつ、テレスコピック式に伸縮可能な少なくとも1つのクレーンスライディングアーム19を備えたクレーンアーム延長部18が配置されている。図2の実施の形態において示されているように、クレーンアーム延長部18には、同様にハイドロリックシリンダ24を用いて水平方向軸線周りに旋回可能であるフロントアーム20を配置することができる。同様に、フロントアーム20は、テレスコピック式に伸縮可能な少なくとも1つのクレーンスライディングアーム21を有することができる。クレーン14、ないし、リフティング装置が載置された車両12を付加的に支持するために、アウトリガー26,27の形態の支持装置が設けられており、この支持装置は、進出可能かつテレスコピック式に伸縮可能な支持脚を有することができる。
【0037】
図3は、制御部1およびモバイル制御モジュール2から成る本発明による装置ならびにリフティング装置の実施例の概略図を示す。ここで、クレーン14の形態のリフティング装置は、前述のコンポーネントの他にクレーン14の現在の位置および負荷を検出するための種々のセンサを有している。クレーンベース15の両側に形成することができるアウトリガー26に対しては、基盤におけるアウトリガー26の支持状態を検出するためのスイッチS3,S4が設けられている。同様に、ここでは図示していない、車両12の枠部に配置することができるアウトリガー27に対しても、その種のセンサシステムを設けることができる。また、アウトリガー26,27の進出位置が、ここでは図示していない変位センサを介して検出されることも考えられる。クレーンベース15に対して相対的な、クレーン柱16の回動角度ないし旋回角度を検出するために、ロータリエンコーダDG1が設けられている。ロータリエンコーダDG1によって検出された、垂直方向軸線周りのクレーン柱16の回動角度は、極表示では極角に対応すると考えられる。クレーン柱16とリフティングアーム17とが成す、垂直方向の平面における屈曲角度を検出するために、別のロータリエンコーダDG2が設けられている。クレーン負荷に固有の、リフティングアーム17のハイドロリックシリンダ22における液圧を検出するために圧力センサDS1が設けられている。垂直方向の平面における、リフティングアーム17とクレーンアーム延長部18とが成す屈曲角度を検出するために、ロータリエンコーダDG3が設けられている。クレーンアーム延長部18のハイドロリックシリンダ23における液圧を検出するために、圧力センサDS2が設けられている。クレーンアーム延長部18のクレーンスライディングアーム19の移動状態を検出するために、スイッチS1が設けられている。さらに、垂直方向の平面における、クレーンアーム延長部18とフロントアーム20とが成す屈曲角度を検出するために、ロータリエンコーダDG4が設けられている。フロントアーム20のハイドロリックシリンダ24の液圧を検出するために、圧力センサDS3が設けられている。フロントアーム20のクレーンスライディングアーム21の移動状態を検出するために、スイッチS2が設けられている。基本的に、個々のクレーンスライディングアームのスライディング位置を、スライディング位置センサを介して、例えば変位センサを用いて検出されることは排除されるべきではない。つまり、リフティング装置のジオメトリの検出によって、また別の運転パラメータの測定、例えばリフティングシリンダにおける液圧の測定によって、水平方向の移動、吊り上げ高さおよび引き上げられた吊り荷重を特定することができる。
【0038】
センサデータは、各信号入力部を介して制御部1に供給され、それらの信号入力部のうち、圧力センサDS1の信号入力部6およびロータリエンコーダDG2の信号入力部7に例示的に参照番号を付している。続いて制御部1においては、それらのセンサデータから、またメモリ30に格納されている、この例ではクレーン14に特有のデータから、現在のクレーン位置に固有であり、また場合によっては引き上げられた現在の吊り荷に固有である第1の情報が算出される。続いてそれらの情報を、制御部1の送信および受信ユニット4から無線コネクション10および/または有線コネクション11を介して、モバイル制御モジュール2の送信および受信ユニット5に伝送することができる。それらの情報から、適切な運転モード中に、モバイル制御モジュール2において表示用のグラフィックデータを算出することができ、また表示ユニット3を介して、ユーザに表示することができる。必要に応じて、運転モードのアクティブ化を、例えばスイッチまたはボタンの形態の、ユーザによって操作可能なアクティブ化手段28を介して行うことができる。モバイル制御モジュール2における運転モードのアクティブ化を、オプションとして制御部1に通知することができ、この通知に基づいて、制御部1は、第1の情報をモバイル制御モジュール2に伝送する。続いてそれらの第1の情報を、処理された形態で、表示ユニット3に表示することができる。これとは異なり、第1の情報の伝送および表示を、ユーザによって能動的に要求できることも考えられる。例えばクレーン14の吊り上げ高さ、到達距離および現在の吊り荷重を含むことができる第1の情報の表示によって、ユーザに現在のクレーン位置を通知することができる。
【0039】
クレーン14の所望の別の位置を特徴付けるパラメータのようなデータを入力するために、モバイル制御モジュール2は、適切な入力手段13を有することができる。モバイル制御モジュール2を操作するために、また制御命令を入力するために、モバイル制御モジュール2には、種々の操作素子25が設けられている。また、例えば偏向可能な操作レバーの形態の操作手段32を設けることもでき、この操作手段32は、クレーン14の半自動化された運動シーケンスを実行するために、マスタスイッチとして使用することができる。
【0040】
図4aには、表示ユニット3に表示された入力マスク33の概略的な表示が図示されている。ここでは、モバイル制御モジュール2が、吊り上げプロセスの実行可能性を問い合わせるための適切な運転モードにある。表示ユニット3を、例えばグラフィック能力のある液晶ディスプレイによって形成することができ、この液晶ディスプレイがモバイル制御モジュール2内またはモバイル制御モジュール2上に取り付けられるか、または、この液晶ディスプレイをモバイル制御モジュール2内またはモバイル制御モジュール2上に取り付けることができる。図示の実施の形態において、表示ユニット3における表示は、設定、情報または代替的な機能へのアクセスを実現するメニューバー35と、例えばエネルギ蓄積部29の充電状態またデータコネクションの種類および品質も通知することができる状態表示部36を備えたタイトルバー34と、を含んでいる。
【0041】
入力マスク33は、入力フィールド37,38,39を含んでおり、それらの入力フィールド37,38,39において、クレーン14の所望の別の位置が許容されるかを問い合わせるために、その位置を特徴付けるパラメータを入力することができる。この際、引き上げられたもしくは引き上げられるべき吊り荷の所望の吊り上げ高さを、吊り上げ高さ用の入力フィールド37に入力することができる。クレーン14の所望の水平方向の移動を、到達距離の入力フィールド38に入力することができる。吊り上げ高さおよび到達距離を、相互に依存せずに選択することができる。引き上げられるべき所望の吊り荷重を、入力フィールド39に入力することができる。この入力を、ある程度の増分値で、すなわち例えば50キログラム刻みで行うこともできる。吊り荷重用の入力フィールド39がクリアされた場合または値0が入力された場合には、現在、クレーン14において検出された吊り荷の重量を使用することができる。クレーン14の現在の位置に固有の第1の情報を、現在の吊り上げ高さ、到達距離および現在引き上げられた負荷の形態で、所望のパラメータの入力前に、入力フィールド37,38,39において表示することができる。
【0042】
パラメータの入力が行われた後に、それらのパラメータは、無線コネクション10および/または有線コネクション11を介して制御部1に伝送される。制御部1においては、プロセッサ8によって、メモリ30に格納されている、クレーン特有のデータから、また入力されたパラメータから、クレーン14の別の位置に固有の第2の情報が算出される。この第2の情報は、クレーン14のその位置の、クレーン14の許容限界値および能力の枠内での許容性を含むことができる。第2の情報を、プロセッサ8によって、第1の情報と比較することができる。この比較から、クレーン14の現在の位置から、入力されたパラメータによって特徴付けられた、クレーン14の所望の別の位置への吊り上げプロセスの実行可能性を判定することができる。続いて比較の評価を、再び無線コネクション10および/または有線コネクション11を介して、モバイル制御モジュール2に返送することができる。このモバイル制御モジュール2において、モバイル制御モジュール2のプロセッサ9は、比較から、表示用のグラフィックデータを算出することができ、このグラフィックデータを、表示ユニット3を介してユーザに表示することができる。この算出は、ここでは例えば、制御モジュール2に格納されているピクトグラムP1,P2の選択および/または作成ならびに算出されたグラフィックデータの、格納されているバックグラウンドグラフィックへの統合を含むことができる。図4aには、所望の吊り上げプロセスの実行可能性についての評価が肯定的であったことをシンボリックに表すピクトグラムP1が表示されている。これに対して図4bには、吊り上げプロセスの実行可能性についての判定が否定的であったこと、すなわち限界値の枠内では別の位置が許可されないことをシンボリックに表すピクトグラムP2が表示されている。
【0043】
現在の位置から別の位置へのクレーン14の移動可能性の肯定的な判定が行われた後に、または、肯定的な判定が行われた際に、必要に応じて、ユーザによる別のアクティブ化手段28の操作を介して、制御部のプロセッサ8によって、クレーン14を所望の位置に移動させることができる一連の制御命令を算出することができる。この制御命令は、所定の順序での、例えばクレーン14のクレーンアームおよびクレーンスライディングアームの旋回およびテレスコピック式の伸縮および/またはクレーン14による吊り荷の上昇または下降を含むことができる。制御部1によるクレーン14への制御命令の出力を、操作手段32によって、例えばモバイル制御モジュール2におけるマスタスイッチとして使用される操作レバーを動かすことによって行うことができる。クレーン14の別の位置への移動の速度を、操作手段32の操作に、つまり例えばレバーの移動に比例させることができる。もちろん、クレーン14の別の位置への移動が常に、第1の情報に含まれているクレーン14の有効な限界値を順守して行われる場合には有利である。
【符号の説明】
【0044】
1 制御部
2 制御モジュール
3 表示ユニット
4 送信/受信ユニット
5 送信/受信ユニット
6,7 信号入力部
8 プロセッサ
9 プロセッサ
10 無線コネクション
11 有線コネクション
12 車両
13 入力手段
14 クレーン
15 クレーンベース
16 クレーン柱
17 リフティングアーム
18 クレーンアーム延長部
19 クレーンスライディングアーム
20 フロントアーム
21 クレーンスライディングアーム
22,23,24 ハイドロリックシリンダ
25 操作素子
26,27 アウトリガー
28 アクティブ化手段
29 エネルギ蓄積部
30 メモリ
31 メモリ
32 操作手段
33 入力マスク
34 タイトルバー
35 メニューバー
36 状態表示部
37,38,39 入力フィールド
DS1,DS2 圧力センサ
DG1,DG2,DG3,DG4 ロータリエンコーダ
S1,S2,S3,S4 スイッチ
P1,P2 ピクトグラム
図1
図2
図3
図4a
図4b