特許第6594629号(P6594629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6594629閉空間内の発破音低減装置及び発破音低減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594629
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】閉空間内の発破音低減装置及び発破音低減方法
(51)【国際特許分類】
   E21F 17/00 20060101AFI20191010BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20191010BHJP
   E21D 9/14 20060101ALI20191010BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   E21F17/00
   E21D9/00 C
   E21D9/14
   G10K11/16 100
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-13131(P2015-13131)
(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公開番号】特開2016-138384(P2016-138384A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2018年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148346
【氏名又は名称】株式会社錢高組
(73)【特許権者】
【識別番号】591104815
【氏名又は名称】株式会社アイ・エヌ・シー・エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】角田 晋相
(72)【発明者】
【氏名】笠水上 光博
(72)【発明者】
【氏名】安部 剛
(72)【発明者】
【氏名】井上 保雄
(72)【発明者】
【氏名】石橋 知大
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲也
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−256609(JP,A)
【文献】 特開平10−011069(JP,A)
【文献】 特開2010−097148(JP,A)
【文献】 米国特許第04319661(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/00
E21D 9/00
E21D 9/14
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル状に長く、発破が行われる閉空間に設置される、前記閉空間内の発破音を低減する低減装置であって、
両端が開口され、一方の開口部から他方の開口部までの経路長が低減対象となる周波数の1/2波長となる管状部材を、前記トンネル状の長い閉空間における切羽側ではなく坑口に設けられる防音扉側の位置に備え、
前記管状部材の前記一方の開口部と前記他方の開口部とが前記閉空間の軸線方向における同一の断面上に位置している、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の閉空間内の発破音低減装置において、前記閉空間の坑口には防音扉が設置され、
前記坑口から前記閉空間の軸線に沿って前記閉空間の先端側に向けて前記低減対象となる周波数の1/2波長を間隔として少なくとも1つ以上の前記管状部材が設置されている、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の閉空間内の発破音低減装置において、前記一方の開口部と前記他方の開口部とは前記閉空間の軸線方向において同一の方向に向けて開口している、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項4】
請求項3に記載の閉空間内の発破音低減装置において、前記一方の開口部及び前記他方の開口部は、前記閉空間の先端側に向けて開口している、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項5】
請求項3に記載の閉空間内の発破音低減装置において、前記一方の開口部及び前記他方の開口部は、前記閉空間の坑口に向けて開口している、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項6】
請求項3に記載の閉空間内の発破音低減装置において、閉空間の軸線方向における同一の断面上に前記管状部材が複数配置され、
一の管状部材の前記一方の開口部及び前記他方の開口部は、前記閉空間の先端側に向けて開口し、
他の管状部材の前記一方の開口部及び前記他方の開口部は、前記閉空間の坑口に向けて開口している、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の閉空間内の発破音低減装置において、前記閉空間の軸線方向における同一の断面上に前記管状部材が複数配置され、
前記複数の管状部材は、前記同一の断面上において前記閉空間の軸線方向と交差する方向において前記閉空間の中心から所定距離ずらした位置に配置されている、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の閉空間内の発破音低減装置において、前記閉空間の軸線方向における同一の断面上に配置され、前記閉空間の軸線方向と交差する方向において互いに距離をおいて設けられた一対の柱部材と、前記一対の柱部材の上部に橋渡しされた架台部とを備え、
前記架台部の上面には、前記管状部材が配置されている、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の閉空間内の発破音低減装置において、閉空間の断面積に対する前記一方の開口部及び前記他方の開口部の断面積の合計の比が所定値以上である、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の閉空間内の発破音低減装置において、前記管状部材は前記一方の開口部から前記他方の開口部までの経路長を調整可能に構成されている、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の閉空間内の発破音低減装置において、複数の管状部材を備え、
前記複数の管状部材において前記一方の開口部から前記他方の開口部までの経路長がそれぞれ異なる、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の閉空間内の発破音低減装置において、前記一方の開口部及び前記他方の開口部の少なくとも1つの開口部にフィルター部材を設ける、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減装置。
【請求項13】
トンネル状に長く、発破が行われる閉空間に設置される、前記閉空間内の発破音を低減する発破音低減装置による発破音低減方法であって、
両端が開口され、一方の開口部から他方の開口部までの経路長が低減対象となる周波数の1/2波長となる管状部材より成る発破音低減装置を、前記トンネル状の長い閉空間における切羽側ではなく坑口に設けられる防音扉側の位置に設置し、
更に前記管状部材の前記一方の開口部と前記他方の開口部とを前記閉空間の軸線方向における同一の断面上に位置させ、
前記発破が行われる位置から離れた位置に設置された前記管状部材により前記発破音を低減する、
ことを特徴とする閉空間内の発破音低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル状に長い閉空間に設置される、前記閉空間内の発破音を低減する低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネルなど発破作業を伴う工事現場では、発破作業で生じた発破音がトンネル坑外の外部環境にそのまま漏れ出すことを防止すべく、各種防音措置が取られている。トンネル発破音用の防音技術としては、トンネル坑口に鋼鉄製やコンクリート製の剛性や質量が大きい防音扉を設置することにより遮音効果を得る技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、トンネル坑口近傍のトンネル坑内空間を複数に分割する区画構造を備え、各区画には一端が開口され、他端が閉塞され、一端と他端との間の距離が該当音の1/4波長(λ)である管体が設けられている消音器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5454369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この消音器は、トンネルの断面を覆うように構成され、その中央部には開口が設けられ、該開口からトンネルの軸線方向に沿って延びる連絡路が設けられ、前記開口には防音扉が設けられている。前記消音器では、前記連絡路の延びる方向、つまりトンネルの軸線方向に沿って複数の区画に分割されている。そして、各区画に前記管体が設けられている。前記管体の一端は前記連絡路に面して開口している
【0006】
トンネルの切羽側で生じた発破音は、前記連絡路を介して前記管体の一端の開口内に侵入する。そして、前記管内に入った音波は、1/4波長の経路長進んで他端の閉塞部で反射され、1/4波長の経路長を戻る。これにより前記管内に入った音波は1/2波長分の位相が遅れた状態で前記トンネル坑内に戻る。このとき、トンネル坑内の発破音源からの音波と、前記管体から戻った音波とでは逆位相になっており、互いに打ち消しあって消音がなされる。
【0007】
ところで、この消音器では、トンネルの断面を覆うように構成し、トンネルの軸線方向に沿って延びる連絡路に面して区画が分割され、各区画に管体を設けて構成されている。したがって、消音器の構成が複雑化する虞がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、トンネル状に長い閉空間における発破音を低減するとともに装置構成が簡素な発破音低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の閉空間内の発破音低減装置は、トンネル状に長い閉空間に設置される、前記閉空間内の発破音を低減する低減装置であって、両端が開口され、一方の開口部から他方の開口部までの経路長が低減対象となる周波数の1/2波長となる管状部材を備え、前記管状部材の前記一方の開口部と前記他方の開口部とが前記閉空間の軸線方向における同一の断面上に位置していることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、両端が開口され、一方の開口部から他方の開口部までの経路長が低減対象となる周波数の1/2波長となる管状部材を前記管状部材の前記一方の開口部と前記他方の開口部とが閉空間の軸線方向における同一の断面上に位置するように配置することで、前記閉空間内における発破音を低減できる。また、発破音低減装置は、両端が開口され、一方の開口部から他方の開口部までの経路長が低減対象となる周波数の1/2波長となる管状部材から構成されるので、その構成を簡素なものにできる。
【0011】
本発明の第2の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第1の態様において、前記閉空間の坑口には防音扉が設置され、前記坑口から前記閉空間の軸線に沿って前記閉空間の先端側に向けて前記低減対象となる周波数の1/2波長を間隔として少なくとも1つ以上の前記管状部材が設置されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記閉空間の坑口から前記閉空間の軸線に沿って前記閉空間の先端側に向けて前記低減対象となる周波数の1/2波長を間隔として少なくとも1つ以上の前記管状部材が設置されているので、前記低減対象の周波数で最も音圧の高い位置に前記管状部材を設置することとなり、前記発破音に対して高い減音効果を得られる。
【0013】
本発明の第3の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第1の態様または第2の態様において、前記一方の開口部と前記他方の開口部とは前記閉空間の軸線方向において同一の方向に向けて開口していることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第3の態様において、前記一方の開口部及び前記他方の開口部は、前記閉空間の先端側に向けて開口していることを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第3の態様において、前記一方の開口部及び前記他方の開口部は、前記閉空間の坑口に向けて開口していることを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第3の態様において、閉空間の軸線方向における同一の断面上に前記管状部材が複数配置され、一の管状部材の前記一方の開口部及び前記他方の開口部は、前記閉空間の先端側に向けて開口し、他の管状部材の前記一方の開口部及び前記他方の開口部は、前記閉空間の坑口に向けて開口していることを特徴とする。
【0017】
本発明の第7の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第1から第6のいずれか一の態様において、前記閉空間の軸線方向における同一の断面上に前記管状部材が複数配置され、前記複数の管状部材は、前記同一の断面上において前記閉空間の軸線方向と交差する方向において前記閉空間の中心から所定距離ずらした位置に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、複数の管状部材は、前記同一の断面上において前記閉空間の軸線方向と交差する方向において前記閉空間の中心から所定距離ずらした位置に配置されているので、前記閉空間の中央部において前記閉空間工事の工事車両及び作業員の交通を妨げず、前記閉空間工事の作業性を高めることができる。
【0019】
本発明の第8の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第1から第6のいずれか一の態様において、前記閉空間の軸線方向における同一の断面上に配置され、前記閉空間の軸線方向と交差する方向において互いに距離をおいて設けられた一対の柱部材と、前記一対の柱部材の上部に橋渡しされた架台部とを備え、前記架台部の上面には、前記管状部材が配置されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記管状部材は前記閉空間の軸線方向と交差する方向において互いに距離をおいて設けられた一対の柱部材の上部を橋渡す架台部の上面に設置されている。すなわち、前記一対の柱部材の間を前記閉空間工事の工事車両及び作業員が通ることができる。これにより、前記管状部材を前記閉空間工事の工事車両及び作業員の交通を妨げずに前記閉空間の軸線方向における同一の断面上に配置できる。
【0021】
本発明の第9の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第1から第8のいずれか一の態様において、閉空間の断面積に対する前記一方の開口部及び前記他方の開口部の断面積の合計の比が所定値以上であることを特徴とする。
【0022】
尚、本明細書における「閉空間の断面積」とは前記管状部材における開口部が設置された同一断面における断面積のことを意味している。
本態様によれば、前記開口部の断面積を大きくすることにより、低減可能な周波数帯域を広げることができる。
【0023】
本発明の第10の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第1から第9のいずれか一の態様において、前記管状部材は前記一方の開口部から前記他方の開口部までの経路長を調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記管状部材は前記一方の開口部から前記他方の開口部までの経路長を調整可能に構成されているので、前記閉空間内において低減対称の周波数を調整できる。
【0025】
本発明の第11の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第1から第10のいずれか一の態様において、複数の管状部材を備え、前記複数の管状部材において前記一方の開口部から前記他方の開口部までの経路長がそれぞれ異なることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、前記一方の開口部から前記他方の開口部までの経路長がそれぞれ異なる複数の管状部材を閉空間坑内に設置することで、低減対象の周波数帯域を広げることができ、発破音の減音効果を高めることができる。
【0027】
本発明の第12の態様の閉空間内の発破音低減装置は、第1から第11のいずれか一の態様において、前記一方の開口部及び前記他方の開口部の少なくとも1つの開口部にフィルター部材を設けることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、前記一方の開口部及び前記他方の開口部の少なくとも1つの開口部にフィルター部材を設けるので、前記開口部を透過する音圧に抵抗を与えることができ、前記管状部材における共鳴を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施例に係る発破音低減装置が設置されたトンネル坑内の概略図。
図2図1におけるトンネルのA−A断面を示す断面図。
図3】第1の実施例に係る発破音低減装置の斜視図。
図4】第1の実施例に係る発破音低減装置の分解斜視図。
図5】(A)はトンネルの断面積と発破音低減装置の開口部の断面積との比と発破音の平均低減量との関係を示すグラフであり、(B)はトンネルの断面積と発破音低減装置の開口部の断面積との比と低減周波数の幅との関係を示すグラフ。
図6】第1の実施例に係る発破音低減装置の配置レイアウトの一の変更例を示す概略図。
図7】第1の実施例に係る発破音低減装置の配置レイアウトの他の変更例を示す概略図。
図8図7におけるトンネルのB−B断面を示す断面図。
図9】第2の実施例に係る発破音低減装置の斜視図。
図10】第2の実施例に係る発破音低減装置による発破音低減量を示すグラフ。
図11】第3の実施例に係る発破音低減装置の斜視図。
図12】第4の実施例に係る発破音低減装置が設けられたトンネルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
【0031】
<<<第1の実施例>>>
図1ないし図4を参照して発破音低減装置10の構成について説明する。図1には「閉空間」の一例であるトンネル12が示されている。図1において紙面左方が切羽側であり、紙面右方が坑口側である。
【0032】
トンネル12の坑口には、防音扉14が設けられている。防音扉14は、トンネル12に対して開閉可能である。また、防音扉14が閉じた状態(図1参照)において、トンネル12坑内には、換気装置(不図示)により外部空間から新鮮な空気が供給されている。
【0033】
また、切羽側では、地山掘削のために定期的にダイナマイト16が仕掛けられ、爆破作業が行われる。ダイナマイト16を爆破した際、切羽側から発破音が生じる。発破音はトンネルの軸線方向に沿って切羽側からトンネル坑口に向けて伝搬していく。
【0034】
トンネル坑口に到達した発破音は、防音扉14により反射され、今度は切羽側に向けて伝搬する。ここで、発破音は、複数の周波数から成っている。そして、複数周波数の各音はトンネル12の坑内において防音扉14に衝突して反射し、複数周波数の各音の1/2波長(λ)戻った位置で音圧が最大となる。また、防音扉14から切羽側に向けて1/2波長戻った位置からトンネル12の軸線方向に沿って切羽側に向けて1/2波長の間隔で音圧が強くなる。尚、本明細書及び図面において、複数周波数の各音の1/2波長はそれぞれ異なることから、任意の1つの周波数をモデルとして説明する。
【0035】
本実施例では、防音扉14から切羽側に向けて低減対象となる周波数の1/2波長分離れた位置(図1におけるA−A断面)に発破音低減装置10が配置されている。また、図2を参照するに、発破音低減装置10は防音扉14から1/2波長離れた位置において、トンネル12の中心からトンネル12の軸線と交差する方向、すなわちトンネル幅方向において距離L1分ずれて配置されている。本実施例では、2つの発破音低減装置10がトンネル12の中心からそれぞれ距離L1分ずれて配置されている。
【0036】
これにより、トンネル12内において中心からトンネル幅方向において距離2L1分の空間が確保されるので、トンネル12の掘削に従事する作業者や重機18の交通を妨げることを防止できる。
【0037】
図3及び図4を参照して、発破音低減装置10について詳説する。本実施例において発破音低減装置10は、全体としてU字状の管状部材として構成されている。発破音低減装置10において、一方の端部には開口部10aが開口され、他方の端部には、開口部10bが開口され、かつ一方の開口部10aと他方の開口部10bとは連通している。本実施例において、発破音低減装置10の一方の開口部10a及び他方の開口部10bは、同一断面上(図3における二点鎖線で示す断面)に位置するように構成されている。
【0038】
また、発破音低減装置10において一方の開口部10aから他方の開口部10bまでの経路長L2(図3参照)は、低減対象とする周波数の1/2波長と同じ長さに設定されている。つまり、発破音低減装置10の経路長L2を調整することにより、低減対象となる周波数を任意に調整することができる。
【0039】
本実施例では、図4に示すように発破音低減装置10は、一方の開口部10a及び他方の開口部10bをそれぞれ構成する直管部材20、20と、直管部材20と直管部材20とをつなぐ湾曲部材22とを備えている。直管部材20は、円筒状に構成され、湾曲部材22に対して着脱可能に構成されている。また、湾曲部材22は半円状あるいはU字状に形成された管状部材である。
【0040】
発破音低減装置10において、直管部材20の長さL3を調整することにより容易に発破音低減装置10の経路長L2を調整することができる。これにより、発破音低減装置10における低減対象となる周波数を容易に調整することができる。
【0041】
また、本実施例において直管部材20及び湾曲部材22は、樹脂材料で形成されている。本実施例では、一例として塩ビ管として構成されている。また、本実施例において発破音低減装置10は、2つの直管部材20、20と湾曲部材22とを組み立てることにより構成されるので、トンネル12内において容易に組み立てて配置することができる。
【0042】
再度、図1を参照して本実施例において発破音低減装置10は、防音扉14から1/2波長離れた位置に一方の開口部10a及び他方の開口部10bが位置している。また、本実施例において一方の開口部10a及び他方の開口部10bは、切羽側に向けて開口している。
【0043】
切羽側でダイナマイト16が爆破され、発破音がトンネル12の坑口に向けて伝搬すると、発破音の一部が発破音低減装置10の一方の開口部10aから管内に侵入する。管内に侵入した発破音は、他方の開口部10bに達すると他方の開口部10bにおいて自由端反射される。これにより、発破音は他方の開口部10bから一方の開口部10aに向けて反射される。
【0044】
そして、発破音が一方の開口部10aに達すると、一方の開口部10aにおいて自由端反射が生じ、発破音は再度他方の開口部10bに向けて反射される。したがって、発破音低減装置10の管内に入った発破音は、一方の開口部10aと他方の開口部10bとの間を何回も自由端反射しつつ、往復する。この際、一方の開口部10aと他方の開口部10bと往復する発破音は徐々に減衰する。これにより、発破音が低減される。
【0045】
同様に、他方の開口部10bから管内に侵入した発破音も、一方の開口部10aと他方の開口部10bとの間を何回も自由端反射しつつ、往復し、減衰する。これにより、発破音低減装置は、低減対象となる周波数の音を低減することができる。
【0046】
上記説明をまとめると、本実施例における発破音低減装置10は両端が開口され、一方の開口部10aから他方の開口部10bまでの経路長L2が低減対象となる周波数の1/2波長となる直管部材20及び湾曲部材22を備えている。そして、トンネル12坑内において一方の開口部10aと他方の開口部10bとがトンネル12の軸線方向における同一の断面上に位置するように配置することで、トンネル12坑内における発破音を低減できる。また、発破音低減装置10は、両端が開口され、一方の開口部10aから他方の開口部10bまでの経路長が低減対象となる周波数の1/2波長となる直管部材20及び湾曲部材22から構成されるので、その構成を簡素なものにできる。
【0047】
また、本実施例では複数の発破音低減装置10、10は、トンネル12の軸線と交差する同一の断面上においてトンネル12の軸線方向と交差する方向においてトンネル12の中心から所定距離L1ずらした位置に配置されているので、トンネル12の中央部においてトンネル12の工事車両である重機18及び作業員の交通を妨げず、トンネル12の工事の作業性を高めることができる。
【0048】
また、本実施例では、直管部材20の長さL3を変更することにより、発破音低減装置10における一方の開口部10aから他方の開口部10bまでの経路長L2を調整可能に構成されているので、トンネル12坑内において低減対称の周波数を調整できる。
【0049】
次いで、図5(A)及び図5(B)を参照して、発破音低減装置10における一方の開口部10a及び他方の開口部10bの断面積を変化させた場合における発破音の低減効果について説明する。尚、ここで開口面積比とは、一方の開口部10a及び他方の開口部10bの断面積の合計を、トンネル12において一方の開口部10a及び他方の開口部10bが位置する同一断面上のトンネル12の断面積で除した値である。
【0050】
ここで、一方の開口部10a及び他方の開口部10bの断面積が大きくなるにつれて、すなわち、開口面積比を「所定値」である0.05以上に設定することにより、図5(A)に示すように低減対象とする周波数の音圧(dB)の低減量を大きくすることができる。
【0051】
また、図5(B)に示すように、一方の開口部10a及び他方の開口部10bの断面積が大きくなるにつれて、低減対象とする周波数帯域を大きくすることができ、1つの発破音低減装置10で低減可能な周波数帯域を増大させることができる。
【0052】
本実施例では、閉空間の断面積に対する前記一方の開口部及び前記他方の開口部の断面積の合計の比が所定値0.05以上となるように設定することにより、低減対象である周波数における低減量を増大させることができるとともに、低減可能な周波数帯域を広げることができる。
【0053】
<<<第1の実施例の変更例>>>
次いで図6ないし図8を参照して第1の実施例に係る発破音低減装置10のトンネル12内における配置レイアウトの変更例について説明する。
【0054】
図6に示す配置レイアウト案では、防音扉14から切羽側に向けて低減対象となる周波数の1/2波長ごとに発破音低減装置10が配置されている。また、防音扉14から切羽側に1/2波長ずれた位置に配置された発破音低減装置10は、第1の実施例と異なり、一方の開口部10a及び他方の開口部10bが防音扉14側に向けて開口するように配置されている。その他の位置の発破音低減装置10については、一方の開口部10a及び他方の開口部10bが切羽側に向けて開口するように配置されている。尚、本変更例において配置された複数の発破音低減装置10において、一方の開口部10aから他方の開口部10bまでの経路長は同じ長さに設定されている。
【0055】
本変更例では、トンネル12の坑口からトンネル12の軸線に沿ってトンネル12の切羽側に向けて低減対象となる発破音の周波数の1/2波長を間隔として少なくとも1つ以上の発破音低減装置10が設置されているので、低減対象の周波数で最も音圧の高い位置に発破音低減装置10を設置することとなり、発破音に対して高い減音効果を得られる。
【0056】
図7及び図8に示す発破音低減装置10の配置レイアウト案では、防音扉14から切羽側に1/2波長ずれた位置に複数の発破音低減装置10が配置されている。この配置レイアウト案では、4つの発破音低減装置10、すなわち2組の発破音低減装置10が配置され、1組の発破音低減装置10は切羽側に向けて一方の開口部10a及び他方の開口部10bが開口するように配置され、他の1組の発破音低減装置10は防音扉14側に向けて一方の開口部10a及び他方の開口部10bが開口するように配置されている。
【0057】
また、本実施例では、図1に示すように防音扉14から切羽側に1/2波長ずれた位置において切羽側に向けて一方の開口部10a及び他方の開口部10bが開口するように2つの発破音低減装置10を配置する構成としたが、この構成に代えて、一方の発破音低減装置10については切羽側に向けて開口するように配置し、他方の発破音低減装置10については防音扉14側に向けて開口するように配置してもよい。
【0058】
また、本実施例では、同じ経路長L2を有する発破音低減装置10をトンネル12坑内に複数配置する構成としたが、この構成に代えて、異なる経路長L2を有する発破音低減装置10を複数組み合わせてトンネル12坑内に配置する構成としてもよい。このように構成することにより、低減対象の周波数帯域を広げることができ、発破音の減音効果を高めることができる。
【0059】
<<<第2の実施例>>>
図9及び図10を参照して第2の実施例に係る発破音低減装置24について説明する。本実施例において一方の開口部24a及び他方の開口部24bにフィルター部材26を設けた点で第1の実施例と異なる。
【0060】
図9に示すように発破音低減装置24の一方の開口部24a及び他方の開口部24bにフィルター部材26が取り付けられている。フィルター部材26は、通気性のある材料で形成されている。本実施例において、フィルター部材26は一例として布帛で構成されている。
【0061】
本実施例ではフィルター部材26は布帛で構成されているので、フィルター部材26を通り抜ける空気は、フィルター部材26を通り抜ける際、フィルター部材26により抵抗を受ける。つまり、フィルター部材26は、発破音低減装置24の管内と外部空間との空気の流れを規制し、空気抵抗を与える。これにより、発破音がフィルター部材26を通り抜ける際、減衰させられる。
【0062】
また、図10において直線の折れ線は発破音低減装置24において一方の開口部24a及び他方の開口部24bにフィルター部材26を設けない場合における発破音の低減量(dB)を示しており、一点鎖線の折れ線は発破音低減装置24において一方の開口部24a及び他方の開口部24bにフィルター部材26を設けた場合における発破音の低減量(dB)を示している。
【0063】
これによれば、発破音低減装置24において一方の開口部24a及び他方の開口部24bにフィルター部材26を設けた場合、フィルター部材26を設けていない場合よりも音圧を低減することができる。
【0064】
また、フィルター部材26を設けることにより、図10に示すように一例として周波数A(Hz)及び周波数B(Hz)付近の発破音のピークを減少させることができる。このピークは発破音低減装置24の管内に入った発破音が前記管内で共鳴することにより生じるピークである。したがって、フィルター部材26を一方の開口部24a及び他方の開口部24bに設けることで、発破音低減装置24の管内における共鳴を抑制することができる。
【0065】
したがって、本実施例では発破音低減装置24において一方の開口部24a及び他方の開口部24bの少なくとも1つの開口部にフィルター部材26を設けるので、一方の開口部24a及び他方の開口部24bを透過する音圧に抵抗を与えることができ、発破音低減装置24の管内における共鳴を抑制できる。
【0066】
<<<第2の実施例の変更例>>>
本実施例において、フィルター部材26は一方の開口部24a及び他方の開口部24b
の両方に設ける構成としたが、この構成に代えて、一方の開口部24a及び他方の開口部24bのいずれか一方に設ける構成としてもよい。
【0067】
<<<第3の実施例>>>
図11を参照して第3の実施例に係る発破音低減装置28について説明する。本実施例における発破音低減装置28は鋼製の型枠部材を複数組み合わせることで構成されている。具体的には、鋼製の矩形管28aにおいて仕切り板30を取り付けている。これにより矩形管28aは図11に示すように上下方向において第1の空間32と第2の空間34とに仕切られる。
【0068】
そして、仕切り板30は矩形管28aを完全に仕切るわけでなく、第1の空間32と第2の空間34とが矩形管28aの奥側で連通するように仕切っている。これにより、第1の空間32に侵入した発破音は第2の空間34へ侵入することができ、同様に第2の空間34に侵入した発破音は第1の空間32に侵入することができる。また、本実施例においても、第1の空間32の開口部分から矩形管28aを介して第2の空間34の開口部分までの距離は、低減対象となる周波数の1/2波長と同じ長さに設定されている。
【0069】
このように、発破音低減装置28を鋼製の型枠部材から構成することにより、トンネル12の工事現場での発破音低減装置28の組立のための資材調達が容易になるとともにコストダウンを図ることができる。
【0070】
<<<第4の実施例>>>
図12を参照して第4の実施例に係る発破音低減装置36について説明する。トンネル12内において、一対の柱部材38、38がトンネル12の軸線方向と交差する方向において互いに距離を置いて設けられている。また、柱部材38、38の上部には柱部材38、38を橋渡す架台部40が設けられている。本実施例において架台部40の上面には発破音低減装置36が設けられている。
【0071】
本実施例における発破音低減装置36は直線状の管状部材として構成されている。発破音低減装置36において一方の開口部36a及び他方の開口部36bは直線状の管状部材の両端部においてそれぞれ開口されている。また、本実施例において柱部材38、38、架台部40はトンネルの軸線方向における同一断面状に配置されている。そして、発破音低減装置36は、架台部40上において発破音低減装置36の軸線がトンネルの軸線方向と略直交するように配置されている。
【0072】
本実施例において、一対の柱部材38、38は、トンネル12の軸線方向と交差する方向において互いに距離を置いて設けられているので、一対の柱部材38、38と架台部40とに囲まれた空間が形成される。本実施例において、この空間はトンネル工事の重機18や工事車両、作業員が通ることができるサイズに設定されている。したがって、本実施例における発破音低減装置36はトンネル工事の重機18や、工事車両、作業員の交通を妨げずにトンネルの軸線方向における同一の断面上に配置できる。
【0073】
<<<第4の実施例の変更例>>>
本実施例において、架台部40の上面には発破音低減装置36を設ける構成としたが、この構成に代えて、発破音低減装置10、24、28の少なくとも一つを設ける構成としてもよい。
【0074】
<<<第1から第3の実施例の変更例>>>
第1の実施例ないし第3の実施例において発破音低減装置10、24、28は全体としてU字状となるように構成したが、この構成に代えて、例えば、一方の開口部と他方の開口部とが同一断面上に位置しているという条件を満足することができれば、一方の開口部と他方の開口部との間の経路を螺旋状としてもよく、あるいは、一方の開口部及び他方の開口部において開口する方向を反対としてもよい。
【0075】
また、発破音低減装置10、24、28を単なる直管部材として構成し、一方の開口部と他方の開口部とを結ぶ線分がトンネル12の軸線方向と略直交する方向に向いた状態、すなわち、一方の開口部と他方の開口部との開口方向をトンネル幅方向として配置することもできる。
【0076】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
10、24、28、36 発破音低減装置、10a、24a、36a 一方の開口部、
10b、24b、36b 他方の開口部、12 トンネル、14 防音扉、
16 ダイナマイト、18 重機、20 直管部材、22 湾曲部材、
26 フィルター部材、28a 矩形管、30 仕切り板、32 第1の空間、
34 第2の空間、38 柱部材、40 架台部、A 周波数、B 周波数、
L1 所定距離、L2 経路長、L3 直管部材の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12