(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも圧縮機、熱源側熱交換器、電子膨張弁および利用側熱交換器が冷媒配管を介して接続され、内部に吐出温度TdがR410A冷媒よりも上昇し易い冷媒が充填された冷凍サイクルと、
前記吐出温度Tdが上限値以下のとき、前記電子膨張弁の開度を吸入ガス過熱度SH一定で制御し、前記吐出温度Tdが前記上限値を超えたとき、吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で前記電子膨張弁の開度を制御する膨張弁制御手段と、を備え、
前記膨張弁制御手段は、前記吐出過熱度TdSH一定もしくは前記吐出温度Td一定で制御中、前記吐出過熱度TdSH一定制御を行っている場合、圧縮機回転数の演算から得られた目標吐出過熱度TdSH+高圧圧力飽和温度と、前記吐出温度Tdの上限値とのいずれか低い方を目標値とした前記吐出過熱度TdSH一定制御か前記吐出温度Td一定制御に切替え、前記吐出温度Td一定制御を行っている場合、圧縮機回転数と前記高圧圧力飽和温度との演算から得られた目標吐出温度Tdと、前記上限値とを比較し、いずれか低い方を目標吐出温度Tdに採用する目標値切替え手段を備えていることを特徴とする冷凍・空調装置。
前記膨張弁制御手段は、更に前記圧縮機の回転数に応じて目標吐出過熱度TdSHもしくは目標吐出温度Tdを可変する目標値可変手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍・空調装置。
【背景技術】
【0002】
各種冷凍機、空気調和機、ヒートポンプ等(以下、総称して冷凍・空調装置という。)等では、膨張弁の開度を吸入過熱度SHが一定となるように制御することにより圧縮機への液バックを防止し、信頼性を確保していた。一方、環境負荷を低減するため、昨今、地球温暖化係数(GWP)がR410A冷媒に対比で1/3程度と低く、かつオゾン破壊係数(ODP)が零であるR32冷媒またはR32冷媒リッチの混合冷媒(以下、本願発明においては、単にR32冷媒という。)が用いられている。
【0003】
しかし、R32冷媒は、物性によりR410A冷媒に対して吐出温度Tdが10〜20℃程高く、冷媒の高低圧差が大きくなるほど、吐出温度Tdが高くなる傾向がある。このため、R410A冷媒の場合、
図6のモリエル線図に示すとおり、通常の使用範囲では吐出温度Tdが圧縮機モータの絶縁を破壊しない温度範囲内に制御できるが、R32冷媒を用いた場合、
図7のモリエル線図に示すとおり、吸入過熱度SH一定の制御では、吐出温度Tdが圧縮機モータの絶縁を破壊する温度を超えてしまい、吐出温度Tdが上昇し易い条件下(高低圧差大)において、モータ効率の低下や能力の確保ができなくなる等の虞があった。また、かかる問題を解消して運転範囲を確保しようとすると、モータ巻腺の絶縁グレードを上げる必要があり、コスト高となる等の問題があった。
【0004】
そこで、吸入過熱度SHが所定温度となるように電子膨張弁(EEV)の開度を制御する一方、圧縮機の吐出温度Tdが上限値を超えると、吐出温度Tdに基づいて電子膨張弁(EEV)の開度を制御する構成としたものが特許文献1に示されている。また、特許文献2には、圧縮機入口の冷媒乾き度を0.85以上とすべく、圧縮機の圧縮比が上限値よりも小さくなるように、圧縮機回転数を調節するとともに、吐出過熱度TdSHが目標値に近づくように電子膨張弁(EEV)の開度を調節する構成としたものが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしなから、特許文献1,2に示すものでは、吐出温度Tdの過上昇やそれに伴うモータ効率の低下等を防止することができるものの、運転状況や運転点の変化に伴う吸入過熱度SHの増大、それに起因する運転効率の低下、過剰な液バック発生による安定運転の阻害、あるいは外気温の変化による吐出温度Tdの限界値超え等に対して十分な対応ができないばかりか、電子膨張弁の開度制御に加えて圧縮機の回転数制御をも併用しなければならず、制御系が複雑化する等の課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電子膨張弁の開度制御のみで運転状況や運転点の変化に対し、適切な運転状態を確保することができるとともに、圧縮機を使用制限内で運転し、信頼性を確保することができる冷凍・空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の冷凍・空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる冷凍・空調装置は、少なくとも圧縮機、熱源側熱交換器、電子膨張弁および利用側熱交換器が冷媒配管を介して接続され、内部に吐出温度TdがR410A冷媒よりも上昇し易い冷媒が充填された冷凍サイクルと、前記吐出温度Tdが上限値以下のとき、前記電子膨張弁の開度を吸入ガス過熱度SH一定で制御し、前記吐出温度Tdが前記上限値を超えたとき、吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で前記電子膨張弁の開度を制御する膨張弁制御手段と、を備え、前記膨張弁制御手段は、前記吐出過熱度TdSH一定もしくは前記吐出温度Td一定で制御中、前記吐出過熱度TdSH一定制御を行っている場合、圧縮機回転数の演算から得られた目標吐出過熱度TdSH+高圧圧力飽和温度と、前記吐出温度Tdの上限値とのいずれか低い方を目標値とした前記吐出過熱度TdSH一定制御か前記吐出温度Td一定制御に切替え、前記吐出温度Td一定制御を行っている場合、圧縮機回転数と前記高圧圧力飽和温度との演算から得られた目標吐出温度Tdと、前記上限値とを比較し、いずれか低い方を目標吐出温度Tdに採用する目標値切替え手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、運転中に圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度Tdが予め設定されている上限値以下のとき、電子膨張弁の開度は吸入ガス過熱度SH一定で制御され、吐出温度Tdが上限値を超えたとき、吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で電子膨張弁の開度が制御されるため、吐出温度Tdが上昇し易いR32冷媒を用いた場合においても、吐出温度Tdが使用上限値を超えるのを防止し、圧縮機モータの絶縁グレードをそのままで使用可能とすることでコストアップを回避することができるとともに、吐出温度Tdを上がりにくくすることで冷凍機油の劣化を防ぐことができる。また、吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中、吐出過熱度TdSH一定制御を行っている場合、圧縮機回転数の演算から得られた目標吐出過熱度TdSH+高圧圧力飽和温度と、吐出温度Tdの上限値とのいずれか低い方を目標値とした吐出過熱度TdSH一定制御か吐出温度Td一定制御に切替え、目標吐出温度Td一定制御を行っている場合、圧縮機回転数と高圧圧力飽和温度との演算から得られた目標吐出温度Tdと、上限値とを比較し、いずれか低い方を目標吐出温度Tdに採用するようにしているため、圧縮機回転数が変化せずに運転点が変化した場合でも、許容される吐出温度Tdの使用上限値と目標吐出過熱度TdSH+高圧圧力飽和温度とのいずれか低い方の値を目標値として電子膨張弁の開度を制御することができ、吐出温度Tdを圧縮機の使用上限値以下に抑えて、確実に使用制限を守ることができる。
【0010】
さらに、本発明の冷凍・空調装置は、上記の冷凍・空調装置において、前記膨張弁制御手段は、更に前記圧縮機の回転数に応じて目標吐出過熱度TdSHもしくは目標吐出温度Tdを可変する目標値可変手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、膨張弁制御手段が、更に圧縮機の回転数に応じて目標吐出過熱度TdSHもしくは目標吐出温度Tdを可変する目標値可変手段を備えているため、電子膨張弁の開度を吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中に、圧縮機回転数が低下して圧縮比が小さくなると、電子膨張弁の開度を絞り過ぎる結果、吸入過熱度SHが大きくなり過ぎて熱交換性能が悪化するが、圧縮機回転数に応じて目標吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdを可変することによって、電子膨張弁の絞り過ぎを防止し、適切な運転状態を維持することができる。従って、吸入過熱度SHが大きくなり過ぎることによる熱交換性能の悪化を抑制し、効率のよい運転を行わせることができる。
【0012】
さらに、本発明
の参考例にかかる冷凍・空調装置は、少なくとも圧縮機、熱源側熱交換器、電子膨張弁および利用側熱交換器が冷媒配管を介して接続され、内部に吐出温度TdがR410A冷媒よりも上昇し易い冷媒が充填された冷凍サイクルと、前記吐出温度Tdが上限値以下のとき、前記電子膨張弁の開度を吸入ガス過熱度SH一定で制御し、前記吐出温度Tdが前記上限値を超えたとき、吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で前記電子膨張弁の開度を制御する膨張弁制御手段と、を備え、前記膨張弁制御手段は、更に前記圧縮機の回転数に応じて目標吐出過熱度TdSHもしくは目標吐出温度Tdを可変する目標値可変手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明
の参考例によれば、運転中に圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度Tdが予め設定されている上限値以下のとき、電子膨張弁の開度は吸入ガス過熱度SH一定で制御され、吐出温度Tdが上限値を超えたとき、吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で電子膨張弁の開度が制御されるため、吐出温度Tdが上昇し易いR32冷媒を用いた場合においても、吐出温度Tdが使用上限値を超えるのを防止し、圧縮機モータの絶縁グレードをそのままで使用可能とすることでコストアップを回避することができるとともに、吐出温度Tdを上がりにくくすることで冷凍機油の劣化を防ぐことができる。また、電子膨張弁の開度を吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中に、圧縮機回転数が低下して圧縮比が小さくなると、電子膨張弁の開度を絞り過ぎる結果、吸入過熱度SHが大きくなり過ぎて熱交換性能が悪化するが、圧縮機回転数に応じて目標吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdを可変することにより、電子膨張弁の絞り過ぎを防止し、適切な運転状態を維持することができる。従って、吸入過熱度SHが大きくなり過ぎることによる熱交換性能の悪化を抑制し、効率のよい運転を行わせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、吐出温度Tdが上昇し易いR32冷媒を用いた場合においても、吐出温度Tdが使用上限値を超えるのを防止し、圧縮機モータの絶縁グレードをそのままで使用可能とすることでコストアップを回避することができるとともに、吐出温度Tdを上がりにくくすることで冷凍機油の劣化を防ぐことができる。また、圧縮機回転数が変化せずに運転点が変化した場合でも、許容される吐出温度Tdの使用上限値と目標吐出過熱度TdSH+高圧圧力飽和温度とのいずれか低い方の値を目標値として電子膨張弁の開度を制御することができ、吐出温度Tdを圧縮機の使用上限値以下に抑えて、確実に使用制限を守ることができる。
【0015】
また、本発明によると、電子膨張弁の開度を吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中に、圧縮機回転数が低下して圧縮比が小さくなると、電子膨張弁の開度を絞り過ぎる結果、吸入過熱度SHが大きくなり過ぎて熱交換性能が悪化するが、圧縮機回転数に応じて目標吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdを可変することにより、電子膨張弁の絞り過ぎを防止し、適切な運転状態を維持することができるため、吸入過熱度SHが大きくなり過ぎることによる熱交換性能の悪化を抑制し、効率のよい運転を行わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態について、
図1ないし
図5を用いて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る冷凍・空調装置の冷媒回路図が示されている。
本実施形態に係る冷凍・空調装置1は、屋外に設置される熱源側ユニット(室外ユニット)2と、屋内の被空調空間内に設置される利用側ユニット(室内ユニット)3とを備えており、両ユニット2,3間を液側配管4およびガス側配管5を介して接続した構成とされている。
【0018】
熱源側ユニット(室外ユニット)2は、冷媒を圧縮する圧縮機6、冷媒の循環方向を切換える四方切換弁7、冷媒と外気とを熱交換する熱源側熱交換器(室外熱交換器)8、暖房時、冷媒を減圧する暖房用電子膨張弁(EEVH)9、液冷媒を一時的に貯留するレシーバ10、冷房時、冷媒を減圧する冷房用電子膨張弁(EEVC)11、液側配管4を接続する液側操作弁12、ガス側配管5を接続するガス側操作弁13、液分を分離して圧縮機6にガス冷媒のみを吸入させるアキュームレータ14等を備えており、それらの機器類を冷媒配管15により図示の如く接続し、熱源側冷媒回路16を構成している。
【0019】
この熱源側ユニット2の熱源側冷媒回路16には、圧縮機6からの冷媒吐出配管15Aに対して、圧縮機6から吐出された高圧冷媒ガスの圧力が設定高圧で開閉する高圧圧力開閉器17および圧縮機6から吐出された冷媒ガスの温度を検出する吐出温度センサ(Td温度センサ)18が設けられるとともに、圧縮機6の冷媒吸入配管15Bに対して、圧縮機6に吸入される低圧冷媒ガスの圧力を検出する低圧圧力センサ19および圧縮機6に吸入される冷媒ガスの温度を検出する吸入温度センサ20が設けられている。
【0020】
また、熱源側熱交換器8には、中間部位の温度を検出する熱交温度センサ21および一端部位の温度を検出する熱交温度センサ22が設けられるとともに、熱源側熱交換器8に対して、図示省略した室外送風機を介して通風される外気の温度を検出する外気温センサ23が設けられている。
【0021】
一方、利用側ユニット(室内ユニット)3は、利用側冷媒回路24に設けられ、冷媒と図示省略した室内送風機を介して循環される室内空気とを熱交換し、室内空気を冷却または加熱する利用側熱交換器(室外熱交換器)25を備えており、該利用側熱交換器25で冷却または加熱された空気を室内に吹出すことにより、室内の冷房または暖房に供されるものである。
【0022】
利用側熱交換器25には、中間部位の温度を検出する熱交温度センサ26および一端部位の温度を検出する熱交温度センサ27が設けられているとともに、利用側熱交換器25に室内送風機を介して吸込まれる室内空気の温度を検出する吸込み温度センサ28が設けられている。
【0023】
そして、上記熱源側冷媒回路16と利用側冷媒回路24とを液側操作弁12およびガス側操作弁13を用い、液側配管4およびガス側配管5をフレア接続することにより、閉サイクルの冷凍サイクル29を構成しており、その冷凍サイクル29の内部に、R32冷媒のように吐出温度TdがR410A冷媒よりも上昇し易い冷媒を所要量充填することによって、冷凍・空調装置1を構成している。
【0024】
上記冷凍サイクル29において、圧縮機6で圧縮された冷媒を、四方切換弁7により実線矢印で示すように、熱源側熱交換器8、レシーバ10、冷房用電子膨張弁11、液側配管4、利用側熱交換器25、ガス側配管5、四方切換弁7、アキュームレータ14、圧縮機6の順に循環させることにより冷却・冷房サイクルを形成し、熱源側熱交換器8を凝縮器、利用側熱交換器25を蒸発器として機能させ、その蒸発器での冷媒の吸熱作用で冷却された空気を室内に吹出すことにより、冷却・冷房運転が行えるようにしている。
【0025】
また、圧縮機6で圧縮された冷媒を、四方切換弁7により破線矢印で示すように、ガス側配管5、利用側熱交換器25、液側配管4、レシーバ10、暖房用電子膨張弁9、液側配管4、熱源側熱交換器8、四方切換弁7、アキュームレータ14、圧縮機6の順に循環させることにより加熱・暖房サイクルを形成し、利用側熱交換器25を凝縮器、熱源側熱交換器8を蒸発器として機能させ、その凝縮器での冷媒の放熱作用で加熱された空気を室内に吹出すことにより、加熱・暖房運転が行えるようにしている。
【0026】
熱源側ユニット(室外ユニット)2および利用側ユニット(室内ユニット)3には、各ユニット2,3の運転を制御する熱源側および利用側コントローラ30,31が設けられており、各コントローラ30,31は互いに通信線32を介して接続されている。このコントローラ30,31は、上記各センサ類からの検出信号が入力され、その検出値とリモコン(図示省略)等から入力された運転信号、設定信号等に基づき、記憶部33,34に記憶されている制御プログラムに従い、マイコン等を介して圧縮機6のオンオフおよび回転数、四方切換弁7の切換え、図示省略した室外送風機のオンオフおよび回転数、暖房用電子膨張弁9および冷房用電子膨張弁11の開度、図示省略した室内送風機のオンオフおよび回転数等を適宜制御することにより、冷凍・空調装置1の運転をコントロールするものである。
【0027】
また、本実施形態において、熱源側コントローラ30には、通常の冷房運転時、吸入温度センサ20の検出値と、熱交温度センサ26の検出値または低圧圧力センサ19で検出される圧力の飽和温度との差から求められる一方、暖房運転時、吸入温度センサ20の検出値と熱交温度センサ21の検出値または低圧圧力センサ19で検出される圧力の飽和温度との差から求められる吸入過熱度SHが一定となるように、冷房用電子膨張弁(EEVC)11または暖房用電子膨張弁(EEVH)9の開度を制御する膨張弁制御手段35が設けられている。
【0028】
この膨張弁制御手段35は、通常の冷・暖房運転中に、吐出温度センサ(Td温度センサ)18で検出される圧縮機6から吐出された冷媒の温度(吐出温度)Tdが予め設定された温度(例えば、95℃)を超えたとき、吸入過熱度SH一定制御から吐出過熱度TdSH一定制御もしくは吐出温度Td一定制御に切替える機能を有するものとされている。
なお、吐出過熱度TdSHは、吐出温度センサ18の検出値と冷房時は熱交温度センサ21の検出値、暖房時は熱交温度センサ26の検出値との差(高圧圧力センサを備えているものでは、その検出圧力の飽和温度(高圧圧力飽和温度)を用いてもよい。)から求めることができる。
【0029】
上記切替え制御は、
図2(A)に示されるように、吸入過熱度SH一定制御中に、例えば圧縮機6の回転数が上昇し、圧縮比が白抜き矢印で示すように大きくなった場合、吸入過熱度SH一定をキープしたままだと、吐出温度Tdが使用上限値(太い一点鎖線)を超える場合が発生する。そこで、吐出温度Tdが予め設定されている温度(使用上限値;例えば95℃)を超えた場合、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9の開度制御を吐出過熱度TdSH一定制御もしくは吐出温度Td一定制御に切替えるものである。
【0030】
このように、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9の開度を吐出過熱度TdSH一定制御もしくは吐出温度Td一定制御に切替えることにより、
図2(B)に示すように、圧縮機6による圧縮作用を白抜き矢印の如く制御し、吐出温度Tdを圧縮機6のモータ巻線の絶縁を破壊しない使用制限内の温度に抑制することができる。この場合、
図2(B)に示すように、吸入過熱度SHが0以下(飽和ガス線よりも左側領域)となり、湿りガスが吸入され、若干の液バック気味運転となるが、吐出過熱度TdSHを十分高く保つことにより、信頼性を確保することができる。
【0031】
さらに、上記膨張弁制御手段35により、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9の開度を吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中に、圧縮機回転数が変わらないまま運転点が変化した場合(例えば、冷房運転中に外気温が上昇し、高圧が上昇した場合等)、
図3に破線で示すように運転点が変化することがあり、この場合、吐出過熱度TdSHを一定に制御したとしても、吐出温度Tdが使用上限値を超える可能性がある。
【0032】
かかる事態を回避するため、膨張弁制御手段35に対し目標値切替え手段36を設けている。目標値切替え手段36は、吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中に、吐出過熱度TdSH一定で制御を行っている場合、圧縮機回転数から演算により得られる目標吐出過熱度TdSH+高圧圧力飽和温度と、圧縮機6として許容される吐出温度Tdの使用上限値とを比較し、いずれか低い方の値を目標値として吐出過熱度TdSH一定で制御するか、吐出温度Td一定で制御するかを切替えるものである。
【0033】
また、上記目標値切替え手段36は、吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中に、吐出温度Td一定で制御を行っている場合、圧縮機回転数と高圧圧力飽和温度から演算により得られる目標吐出温度Tdと、圧縮機6として許容される吐出温度Tdの使用上限値とを比較し、いずれか低い方の値を目標値として吐出温度Td一定で制御を行う構成とされている。
【0034】
更に、本実施形態
の参考例においては、膨張弁制御手段35に対して、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9の開度を吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中に、圧縮機6の回転数に応じて吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdの目標値を可変する目標値可変手段37が設けられている。
【0035】
一般的に、圧縮機6の回転数が低下してくると、熱交換器の性能が余ってくることから高圧が低下、低圧が上昇し、圧縮比が小さくなる。このため、
図4に示すように、目標吐出過熱度TdSHもしくは目標吐出温度Tdが一定のままだと、結果として細かい破線で示すように、吸入過熱度SHが吸入過熱度SH一定制御している時の制御値よりも大きくなる可能性がある。そこで、圧縮機6の回転数に応じて吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdの目標値を可変する目標値可変手段37を設け、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9の絞り過ぎを防止するようにしている。
【0036】
この際、圧縮機回転数と吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdとの関係は、
図5に示すように、一定の回転数範囲で吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdの目標値がリニアに変化するように設定すればよく、吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdが小さくなり過ぎると、液バック状態となることから、一定値以上の目標値(吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Td)を確保し、吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdが大きくなり過ぎると、吐出温度Tdが使用上限値を超えることから、或る値で頭打ちとなるように設定している。
【0037】
また、
図4に示すように、吸入過熱度SHが大きくなってきた場合、基本的には吐出過熱度TdSH一定制御もしくは吐出温度Td一定制御から、吸入過熱度SH一定制御に戻すことになるが、頻繁に制御が切替わると安定運転が阻害されることになるので、ヒステリシスを設け、一度制御が切替わったら、ある程度吸入過熱度SHが上昇するか、吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdが規定値以上低下するまで、制御を切替えないようにすればよい。
【0038】
以上に説明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記冷凍・空調装置1において、圧縮機6から吐出された高温高圧の冷媒ガスを、四方切換弁7により実線矢印方向に循環させて冷却・冷房サイクルを形成し、熱源側熱交換器8を凝縮器、利用側熱交換器25を蒸発器として機能させることにより、冷却・冷房運転を行うことができる一方、圧縮機6から吐出された高温高圧の冷媒ガスを、四方切換弁7により破線矢印方向に循環させて加熱・暖房サイクルを形成し、利用側熱交換器25を凝縮器、熱源側熱交換器8を蒸発器として機能させることにより、加熱・暖房運転を行うことができる。
【0039】
これらの冷却・冷房および加熱・暖房運転中、冷房用電子膨張弁(EEVC)11または暖房用電子膨張弁(EEVH)9は、膨張弁制御手段35を介して吸入過熱度SHが一定となるように開度が制御される。そして、かかる運転中に吐出温度センサ18により検出された冷媒の吐出温度Tdが予め設定されている使用上限値(本実施形態の場合、95℃)を超えると、吸入過熱度SH一定から吐出過熱度TdSH一定制御もしくは吐出温度Td一定制御に切替えられる。
【0040】
これによって、R410A冷媒に比べ吐出温度Tdが上昇し易いR32冷媒を用いた場合でも、低圧縮比領域では、吸入過熱度SHを一定に制御することにより、液バックを確実に防止して信頼性の高い運転を行うことができ、また、高圧縮比で吐出温度Tdが上昇し易い領域では、若干液バック気味で運転することにより、吐出温度Tdが使用上限値を超えるのを防止し、圧縮機モータの絶縁グレードをそのままで使用可能とすることでコストアップを回避することができる。しかも、吐出温度Tdを上がりにくくすることで冷凍機油の劣化を防止することができる。
【0041】
また、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9を吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御している場合において、運転中の高圧レベルによって吐出温度Tdが変化することがある。例えば、冷房中に外気温が上昇して高圧が上昇することによって、圧縮機回転数が変わらないまま運転点が変化し、
図3に示すように、吐出過熱度TdSHだけを制御していると、吐出温度Tdが許容されている使用上限値を超える可能性がある。
【0042】
しかし、上記の如く吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中は、目標値切替え手段36により、吐出過熱度TdSH一定で制御を行っている場合、圧縮機回転数から演算により得られる目標吐出過熱度TdSH+高圧圧力飽和温度と、圧縮機6として許容される吐出温度Tdの使用上限値とを比較し、いずれか低い方の値を目標値として吐出過熱度TdSH一定で制御するか、吐出温度Td一定で制御するかを切替える。また、吐出温度Td一定で制御を行っている場合、圧縮機回転数と高圧圧力飽和温度から演算により得られる目標吐出温度Tdと、圧縮機6として許容される吐出温度Tdの使用上限値とを比較し、いずれか低い方の値を目標値として採用し、吐出温度Td一定で制御するようにしている。
【0043】
このため、上記の如く、圧縮機6の回転数が変わらずに運転点が変化した場合でも、許容される吐出温度Tdの上限値と目標吐出過熱度TdSH+高圧圧力飽和温度とのいずれか低い方の値を目標値として、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9の開度を制御することにより、吐出温度Tdを圧縮機6の使用上限値以下に抑え、その使用制限を守ることができる。
【0044】
さらに、本実施形態
の参考例においては、膨張弁制御手段35に対して圧縮機6の回転数に応じて吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdの目標値を可変する目標値可変手段37を設けている。つまり、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9の開度を吐出過熱度TdSH一定もしくは吐出温度Td一定で制御中に、圧縮機6の回転数が低下して圧縮比が小さくなると、目標吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdが一定の場合、冷房用電子膨張弁11または暖房用電子膨張弁9の開度を絞り過ぎる結果、吸入過熱度SHが大きくなり過ぎて熱交換性能が悪化する。
【0045】
しかるに、目標値可変手段37により圧縮機6の回転数に応じて、
図5に示すように目標値の吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdを可変することにより、適切な運転状態を維持して効率のよい運転を行うことができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、制御目標値である吐出過熱度TdSHもしくは吐出温度Tdを圧縮機6の回転数に応じて可変する形態について、吐出過熱度TdSHと吐出温度Tdとを便宜的に同列で扱い、吐出過熱度TdSHを可変とし、吐出温度Tdを一定としている例について説明をしたが、吐出過熱度TdSHを使わずに、高圧圧力飽和温度と目標吐出温度Tdとの関係をマップとして持っている構成としてもよいことはもちろんである。
【0047】
さらに、上記実施形態では、暖房用電子膨張弁(EEVH)9と冷房用電子膨張弁(EEVC)11とを別個に設けた冷凍・空調装置1の例について説明したが、単一の電子膨張弁(EEV)を用いた構成としてもよく、あるいは冷房用電子膨張弁(EEVC)11を利用側ユニット(室内ユニット)3内に配設した構成としてもよい。また、冷凍サイクル29は、圧縮機、熱源側熱交換器、電子膨張弁および利用側熱交換器を備えた基本サイクルを有するものであればよく、上記実施形態の冷凍サイクルに限らず、様々な構成のサイクルに変形可能なことは云うまでもない。