(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594703
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】メッシュフィルタの射出成形方法、射出成形金型、及びメッシュフィルタ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/37 20060101AFI20191010BHJP
B29C 33/44 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
B29C45/37
B29C33/44
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-166394(P2015-166394)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-42984(P2017-42984A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 道
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/025639(WO,A1)
【文献】
特開2011−72910(JP,A)
【文献】
特開2003−251661(JP,A)
【文献】
特開平9−39114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/44
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形金型のキャビティ内で成形されるメッシュフィルタの射出成形方法において、
前記メッシュフィルタを形作るためのキャビティは、前記メッシュフィルタの円筒状の内筒を形作るための第1キャビティ部と、前記内筒を取り囲む前記メッシュフィルタの円筒状の外筒を形作るための第2キャビティ部と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とを接続する前記メッシュフィルタのフィルタ部を形作るための第3キャビティ部と、を有し、
前記第3キャビティ部は、前記第1キャビティ部の中心軸に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記フィルタ部の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の開口部分を形作るための開口部分形成ピンが形成され、
前記開口部分形成ピンは、前記X−Y平面に対して直立し、前記X−Y平面に投影した形状が正八角形であり、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピンの第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピンの第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっており、
前記第1キャビティ部内に射出された溶融樹脂は、前記第3キャビティ部の前記開口部分形成ピン間の隙間を流動した後、前記第2キャビティ部に充填される、
ことを特徴とするメッシュフィルタの射出成形方法。
【請求項2】
前記第1キャビティ部の径方向内方側には、前記メッシュフィルタの内側フィルタ部を形作るための第4キャビティ部を有し、
前記第4キャビティ部は、前記X−Y平面に沿って前記中心軸まで形成されており、前記内側フィルタ部の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の内側開口部分を形作るための内側開口部分形成ピンが前記内側開口部分と同数形成され、
前記内側開口部分形成ピンは、前記X−Y平面に対して直立し、前記X−Y平面に投影した形状が正八角形であり、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記内側開口部分形成ピン間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記内側開口部分形成ピン間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された前記内側開口部分形成ピンの第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された前記内側開口部分形成ピンの第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっており、
前記第1キャビティ部内に射出された溶融樹脂は、前記第4キャビティ部の前記内側開口部分形成ピン間の隙間に充填される、
ことを特徴とする請求項1に記載メッシュフィルタの射出成形方法。
【請求項3】
前記開口部分形成ピンの前記内接円と前記内側開口部分形成ピンの前記内接円の直径が同一である、
ことを特徴とする請求項2に記載のメッシュフィルタの射出成形方法。
【請求項4】
前記開口部分形成ピンの前記内接円と前記内側開口部分形成ピンの前記内接円の直径が異なる、
ことを特徴とする請求項2に記載のメッシュフィルタの射出成形方法。
【請求項5】
射出成形金型のキャビティ内で成形されるメッシュフィルタの射出成形方法において、
前記メッシュフィルタを形作るためのキャビティは、前記メッシュフィルタの円板状又は中実丸棒状の中央部を形作るための第1キャビティ部と、前記中央部を取り囲む前記メッシュフィルタの円筒状の外筒を形作るための第2キャビティ部と、前記中央部の外周面と前記外筒の内周面とを接続する前記メッシュフィルタのフィルタ部を形作るための第3キャビティ部と、を有し、
前記第3キャビティ部は、前記第1キャビティ部の中心軸に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記フィルタ部の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の開口部分を形作るための開口部分形成ピンが形成され、
前記開口部分形成ピンは、前記X−Y平面に対して直立し、前記X−Y平面に投影した形状が正八角形であり、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピンの第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピンの第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっており、
前記第1キャビティ部内に射出された溶融樹脂は、前記第3キャビティ部の前記開口部分形成ピン間の隙間を流動した後、前記第2キャビティ部に充填される、
ことを特徴とするメッシュフィルタの射出成形方法。
【請求項6】
メッシュフィルタの射出成形金型において、
前記メッシュフィルタを形作るためのキャビティは、前記メッシュフィルタの円筒状の内筒を形作るための第1キャビティ部と、前記内筒を取り囲む前記メッシュフィルタの円筒状の外筒を形作るための第2キャビティ部と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とを接続する前記メッシュフィルタのフィルタ部を形作るための第3キャビティ部と、を有し、
前記第3キャビティ部は、前記第1キャビティ部の中心軸に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記フィルタ部の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の開口部分を形作るための開口部分形成ピンが形成され、
前記開口部分形成ピンは、前記X−Y平面に対して直立し、前記X−Y平面に投影した形状が正八角形であり、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピンの第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピンの第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっており、
前記第1キャビティ部内に射出された溶融樹脂が前記第3キャビティ部の前記開口部分形成ピン間の隙間を流動し、第3キャビティ部を流動した溶融樹脂が前記第2キャビティ部に充填されるように、溶融樹脂を射出するゲートが前記第1キャビティ部に配置された、
ことを特徴とするメッシュフィルタの射出成形金型。
【請求項7】
前記第1キャビティ部の径方向内方側には、前記メッシュフィルタの内側フィルタ部を形作るための第4キャビティ部を有し、
前記第4キャビティ部は、前記X−Y平面に沿って前記中心軸まで形成されており、前記内側フィルタ部の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の内側開口部分を形作るための内側開口部分形成ピンが前記内側開口部分と同数形成され、
前記内側開口部分形成ピンは、前記X−Y平面に対して直立し、前記X−Y平面に投影した形状が正八角形であり、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記内側開口部分形成ピン間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記内側開口部分形成ピン間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された前記内側開口部分形成ピンの第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された前記内側開口部分形成ピンの第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっており、
前記第1キャビティ部内に射出された溶融樹脂が前記第4キャビティ部の前記内側開口部分形成ピン間の隙間に充填される、
ことを特徴とする請求項6に記載メッシュフィルタの射出成形金型。
【請求項8】
前記開口部分形成ピンの前記内接円と前記内側開口部分形成ピンの前記内接円の直径が同一である、
ことを特徴とする請求項7に記載のメッシュフィルタの射出成形金型。
【請求項9】
前記開口部分形成ピンの前記内接円と前記内側開口部分形成ピンの前記内接円の直径が異なる、
ことを特徴とする請求項7に記載のメッシュフィルタの射出成形金型。
【請求項10】
メッシュフィルタの射出成形金型において、
前記メッシュフィルタを形作るためのキャビティは、前記メッシュフィルタの円板状又は中実丸棒状の中央部を形作るための第1キャビティ部と、前記中央部を取り囲む前記メッシュフィルタの外筒を形作るための第2キャビティ部と、前記中央部の外周面と前記外筒の内周面とを接続する前記メッシュフィルタのフィルタ部を形作るための第3キャビティ部と、を有し、
前記第3キャビティ部は、前記第1キャビティ部の中心軸に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記フィルタ部の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の開口部分を形作るための開口部分形成ピンが形成され、
前記開口部分形成ピンは、前記X−Y平面に対して直立し、前記X−Y平面に投影した形状が正八角形であり、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピンの第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピンの第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっており、
前記第1キャビティ部内に射出された溶融樹脂が前記第3キャビティ部の前記開口部分形成ピン間の隙間を流動し、前記第3キャビティ部を流動した溶融樹脂が前記第2キャビティ部に充填されるように、溶融樹脂を射出するゲートが前記第1キャビティ部に配置された、
ことを特徴とするメッシュフィルタの射出成形金型。
【請求項11】
円筒状の内筒と、前記内筒を取り囲む円筒状の外筒と、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とを接続するフィルタ部と、を一体に有するメッシュフィルタであって、
前記フィルタ部は、前記内筒の中心軸に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記X−Y平面における開口縁の形状が正八角形であり且つ表裏に開口する貫通孔である開口部分が複数形成され、
前記開口部分は、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっている、
ことを特徴とするメッシュフィルタ。
【請求項12】
前記内筒から前記中心軸まで内側フィルタ部が形成され、
前記内側フィルタ部は、前記X−Y平面における開口縁の形状が正八角形であり且つ表裏に開口する貫通孔である内側開口部分が複数形成され、
前記内側開口部分は、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記内側開口部分間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記内側開口部分間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された前記内側開口部分の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された前記内側開口部分の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっている、
ことを特徴とする請求項11に記載のメッシュフィルタ。
【請求項13】
前記開口部分の前記内接円と前記内側開口部分の前記内接円の直径が同一である、
ことを特徴とする請求項12に記載のメッシュフィルタ。
【請求項14】
前記開口部分の前記内接円と前記内側開口部分の前記内接円の直径が異なる、
ことを特徴とする請求項12に記載のメッシュフィルタ。
【請求項15】
円板状又は中実丸棒状の中央部と、前記中央部を取り囲む外筒と、前記中央部の外周面と前記外筒の内周面とを接続するフィルタ部と、を有するメッシュフィルタであって、
前記フィルタ部は、前記中央部の中心軸に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記X−Y平面における開口縁の形状が正八角形であり且つ表裏に開口する貫通孔である開口部分が複数形成され、
前記開口部分は、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成され、
前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっている、
ことを特徴とするメッシュフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体中の異物を濾し取るために使用するメッシュフィルタの射出成形方法、メッシュフィルタを射出成形するために使用される射出成形金型、及びメッシュフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管や潤滑装置等のオイル配管の途中にはメッシュフィルタが配置され、このメッシュフィルタで燃料やオイル等の流体中の異物を濾し取るようになっている。
【0003】
図10は、従来のメッシュフィルタ100を示す図である。なお、
図10(a)は従来のメッシュフィルタ100の正面図であり、
図10(b)は従来のメッシュフィルタ100の側面図であり、
図10(c)は
図10(a)のA8−A8線に沿って切断して示すメッシュフィルタ100の断面図であり、
図10(d)は
図10(a)のB4部の拡大図である。また、
図10(e)は従来のメッシュフィルタ100の成形方法における第1段階を説明するための金型101の断面図であり、
図10(f)は従来のメッシュフィルタ100の成形方法における第2段階を説明するための金型101の断面図である。
【0004】
この
図10(a)〜(d)に示す従来のメッシュフィルタ100は、オイルが通過でき、且つ、所定の大きさの異物(金属粉、塵埃等)を濾し取ることができる開口部分102が多数形成されたメッシュ部材103と、このメッシュ部材103の内周縁に沿って取り付けられた樹脂製の内筒104と、メッシュ部材103の外周縁に沿って取り付けられた樹脂製の外筒105とを有している。メッシュ部材103は、平面視した形状が中空円板形状であり、ナイロン繊維106を格子状に編み込むようにして形成され、格子状に編み込まれたナイロン繊維106間に四角形状の開口部分102が形成されている。
【0005】
このような従来のメッシュフィルタ100は、
図10(e)〜(f)に示すようにしてインサート成形される。先ず、第1金型107と第2金型108を型開きした状態において、第1金型107のキャビティ110内の台座部111上にメッシュ部材103を配置する(
図10(e)参照)。次いで、第2金型108を第1金型107に押圧し(第1金型107と第2金型108とを型締めし)、第2金型108の押圧部112と第1金型107の台座部111との間にメッシュ部材103を挟持し、第1金型107と第2金型108の型合わせ面113側に内筒104と外筒105を形作るためのキャビティ110を形成した後、このキャビティ110に図示しないゲートから溶融樹脂が射出され、メッシュ部材103の内周縁に樹脂製の内筒104が一体に成形され、メッシュ部材103の外周縁に外筒105が一体に成形される(
図10(f)参照)。このようなメッシュフィルタ100をインサート成形する技術は、従来から一般に広く知られている(特許文献1,2参照)。
【0006】
しかしながら、
図10(a)〜(d)に示す従来のメッシュフィルタ100は、インサート成形により製造されるものであるため、全体を射出成形によって一体成形する場合と比較し、メッシュ部材103をキャビティ110内の所定位置に収容する工程が必要となる分だけ、製造工数が嵩んでいた(
図10(e)参照)。また、
図10(a)〜(d)に示す従来のメッシュフィルタ100は、格子状に編み込まれたナイロン繊維106がずれ易く、開口部分102の形状及び開口部分102の面積(流体が通過する流路の断面積)がばらつき易いため、フィルタ性能(所定粒径以上の異物を除去できる性能)にばらつきを生じ易かった。
【0007】
そこで、本願の出願人は、従来のインサート成形されたメッシュフィルタ100の上述した欠点を改良するため、
図11に示すようなメッシュフィルタ200を開発した(特許文献3参照)。なお、
図11(a)はメッシュフィルタ200の正面図であり、
図11(b)はメッシュフィルタ200の側面図であり、
図11(c)はメッシュフィルタ200の背面図であり、
図11(d)は
図11(a)のA9−A9線に沿って切断して示すメッシュフィルタ200の断面図であり、
図11(e)は
図11(a)のB5部の拡大図(フィルタ部の一部拡大図)であり、
図11(f)は
図11(e)のA10−A10線に沿って切断して示す断面図であり、
図11(g)は
図11(e)のA11−A11線に沿って切断して示す断面図である。
【0008】
この
図11に示すメッシュフィルタ200は、全体が射出成形によって一体成形されており、内筒201と外筒202の間にフィルタ部203が一体に形成されている。そして、フィルタ部203は、隣り合って位置する横桟204,204と、これら横桟204,204と直交し且つ隣り合って位置する縦桟205,205との間に開口部分206が形成されるようになっている。開口部分206は、平面視した形状が正四角形になっている。
【0009】
図12は、このようなメッシュフィルタ200を射出成形する射出成形金型207を示す図である。この
図12に示すように、射出成形金型207は、第1金型208と第2金型210との型合わせ面211側にキャビティ212が形成されている。キャビティ212は、メッシュフィルタ200の内筒201を形作る第1キャビティ部213と、メッシュフィルタ200の外筒202を形作る第2キャビティ部214と、メッシュフィルタ200のフィルタ部203を形作る第3キャビティ部215とを有している。そして、第3キャビティ部215には、開口部分206を形作るための角棒状の開口部分形成ピン216が開口部分206と同数形成されている。そして、開口部分形成ピン216は、先端面216aが正四角形の細長い角棒状に形成されており、基端から先端面216aまでの高さL6がフィルタ部203の厚さL6と同様の0.3mmに形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平5−44204号公報
【特許文献2】特開2007−1232号公報
【特許文献3】特開2015−61742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような射出成形金型207を使用して射出成形されたメッシュフィルタ200は、射出成形金型207のキャビティ212内から取り出される際に、内筒201の周方向の複数箇所及び外筒202の周方向の複数箇所がエジェクタピン217の先端面で押されるが、フィルタ部203の開口部分206を形作る開口部
分形成ピン216が細くなればなる程、フィルタ部203の開口部分206と射出成形金型207の開口部分形成ピン216との離型抵抗が大きくなる傾向にある。このような場合、メッシュフィルタ200は、フィルタ部203がエジェクタピン217の突き出し方向と逆方向に凸となるように撓み変形し、細長い開口部分形成ピン216に大きな応力を生じさせる傾向がある(
図12(d)参照)。そのため、従来のメッシュフィルタ200の射出成形金型207は、メッシュフィルタ200の離型時における作動制御に高度な工夫が施されていた。
【0012】
そこで、本発明は、射出成形品である
フィルタ部の開口部分と射出成形金型の開口部分形成ピンとの離型抵抗を軽減し、開口部分形成ピンに作用する応力を低減し得るメッシュフィルタの射出成形方法、射出成形金型、及びメッシュフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、射出成形金型11のキャビティ14内で成形されるメッシュフィルタ1の射出成形方法に関するものである。本発明において、前記メッシュフィルタ1を形作るためのキャビティ14は、前記メッシュフィルタ1の円筒状の内筒2を形作るための第1キャビティ部15と、前記内筒2を取り囲む前記メッシュフィルタ1の円筒状の外筒3を形作るための第2キャビティ部16と、前記内筒2の外周面2aと前記外筒3の内周面3aとを接続する前記メッシュフィルタ1のフィルタ部4を形作るための第3キャビティ部17と、を有している。前記第3キャビティ部17は、前記第1キャビティ部15の中心軸18に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記フィルタ部4の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21が形成されている。また、前記開口部分形成ピン21は、前記X−Y平面に対して直立し、前記X−Y平面に投影した形状が正八角形であり、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円22の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン21,21間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン21,21間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成されている。また、前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピン21の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピン21の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっている。そして、前記第1キャビティ部15内に射出された溶融樹脂は、前記第3キャビティ部17の前記開口部分形成ピン21,21間の隙間を流動した後、前記第2キャビティ部16に充填されるようになっている。
【0014】
本発明は、メッシュフィルタ1の射出成形金型11に関するものである。この発明において、前記メッシュフィルタ1を形作るためのキャビティ14は、前記メッシュフィルタ1の円筒状の内筒2を形作るための第1キャビティ部15と、前記内筒2を取り囲む前記メッシュフィルタ1の円筒状の外筒3を形作るための第2キャビティ部16と、前記内筒2の外周面2aと前記外筒3の内周面3aとを接続する前記メッシュフィルタ1のフィルタ部4を形作るための第3キャビティ部17と、を有している。前記第3キャビティ部17は、前記第1キャビティ部15の中心軸18に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記フィルタ部4の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21が形成されている。また、前記開口部分形成ピン21は、前記X−Y平面に対して直立し、前記X−Y平面に投影した形状が正八角形であり、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円22の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン21,21間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分形成ピン21,21間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成されている。また、前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピン21の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピン21の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっている。そして、本発明は、前記第1キャビティ部15内に射出された溶融樹脂が前記第3キャビティ部17の前記開口部分形成ピン21,21間の隙間を流動し、第3キャビティ部17を流動した溶融樹脂が前記第2キャビティ部16に充填されるように、溶融樹脂を射出するゲート20が前記第1キャビティ部15に配置されたことを特徴としている。
【0015】
本発明は、円筒状の内筒2と、前記内筒2を取り囲む円筒状の外筒3と、前記内筒2の外周面2aと前記外筒3の内周面3aとを接続するフィルタ部4と、を一体に有するメッシュフィルタ1に関するものである。前記フィルタ部4は、前記内筒2の中心軸5に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、前記X−Y平面における開口縁の形状が正八角形であり且つ表裏に開口する貫通孔である開口部分6が複数形成されている。また、前記開口部分6は、前記X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共に前記X−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、前記正八角形の内接円7の直径が前記X軸方向に沿って隣合う前記開口部分6,6間の寸法と等しく且つ前記Y軸方向に沿って隣合う前記開口部分6,6間の寸法と等しく形成されることにより、前記X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、前記X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成されている。そして、前記45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分6の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔は、前記135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分6の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔と同一になっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、射出成形後のメッシュフィルタの離型時において、メッシュフィルタのフィルタ部の開口部分と開口部分形成ピンとの間に作用する離型抵抗は、フィルタ部の開口部分の形状が四角形の場合と比較して小さくなる。その結果、本発明によれば、射出成形金型の開口部分形成ピンに作用する応力を小さくすることができ、射出成形金型の耐久性を向上させることができると共に、メッシュフィルタの離型時における射出成形金型の作動制御を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るメッシュフィルタを示す図であり、
図1(a)がメッシュフィルタの正面図、
図1(b)がメッシュフィルタの側面図、
図1(c)がメッシュフィルタの背面図、
図1(d)が
図1(a)のA1−A1線に沿って切断して示すメッシュフィルタの断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るメッシュフィルタを示す図であり、
図2(a)が
図1(a)のB1部の拡大図(メッシュフィルタの一部拡大図)、
図2(b)が
図2(a)のA2−A2線に沿って切断して示す断面図(メッシュフィルタの一部拡大断面図)、
図2(c)が
図2(a)のA3−A3線に沿って切断して示す断面図(メッシュフィルタの一部拡大断面図)である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るフィルタ部の正八角形の開口部分と従来例に係るフィルタ部の正四角形の開口部分とを対比して示す図であり、
図3(a)が本実施形態に係る正八角形の開口部分の拡大図、
図3(b)が従来例に係る正四角形の開口部分の拡大図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るメッシュフィルタの射出成形に使用される射出成形金型を示す図であり、図
4(a)が射出成形金型の縦断面図、図
4(b)が図
4(a)のB2部の拡大図、図
4(c)が開口部分を形作る突起の第1変形例を示す図(図
4(b)に対応する図)、図
4(d)が開口部分を形作る突起の第2変形例を示す図(図
4(b)に対応する図)である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るメッシュフィルタの射出成形に使用される射出成形金型を示す図であり、
図5(a)が
図4(b)のF1方向から見た第2金型の一部拡大平面図、
図5(b)が
図5(a)のA4−A4線に沿って切断して示す第2金型の断面図、
図5(c)が
図5(a)のA5−A5線に沿って切断して示す第2金型の断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るメッシュフィルタを示す図であり、
図6(a)がメッシュフィルタの正面図、
図6(b)がメッシュフィルタの側面図、
図6(c)がメッシュフィルタの背面図であり、
図6(d)が
図6(a)のA6−A6線に沿って切断して示すメッシュフィルタの断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るメッシュフィルタの射出成形に使用される射出成形金型を示す図であり、
図4(a)に対応する断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るメッシュフィルタを示す図であり、
図8(a)がメッシュフィルタの正面図、
図8(b)がメッシュフィルタの側面図、
図8(c)がメッシュフィルタの背面図、
図8(d)が
図8(a)のA7−A7線に沿って切断して示すメッシュフィルタの断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るメッシュフィルタの射出成形に使用される射出成形金型を示す図であり、
図9(a)が射出成形金型の断面図、
図9(b)が
図9(a)のB2部の拡大図、
図9(c)が開口部分を形作るための開口部分形成ピンの第1変形例を示す図、
図9(d)が開口部分を形作るための開口部分形成ピンの第2変形例を示す図である。
【
図10】第1の従来例に係るメッシュフィルタを示す図であり、
図10(a)がメッシュフィルタの正面図、
図10(b)がメッシュフィルタの側面図、
図10(c)が
図10(a)のA8−A8線に沿って切断して示すメッシュフィルタの断面図、
図10(d)が
図10(a)のB4部の拡大図、
図10(e)がメッシュフィルタの成形方法における第1段階を説明するための射出成形金型の断面図、
図10(f)がメッシュフィルタの成形方法における第2段階を説明するための射出成形金型の断面図である。
【
図11】第2の従来例に係るメッシュフィルタを示す図であり、
図11(a)がメッシュフィルタの正面図、
図11(b)がメッシュフィルタの側面図、
図11(c)がメッシュフィルタの背面図、
図11(d)が
図11(a)のA9−A9線に沿って切断して示すメッシュフィルタの断面図、
図11(e)が
図11(a)のB5部の拡大図(フィルタ部の一部拡大図)、
図11(f)が
図11(e)のA10−A10線に沿って切断して示す断面図、
図11(g)が
図11(e)のA11−A11線に沿って切断して示す断面図である。
【
図12】第2の従来例に係るメッシュフィルタを射出成形する射出成形金型を示す図であり、
図12(a)が射出成形金型の断面図、
図12(b)が
図12(a)のB6部の拡大図、
図12(c)が
図12(b)のF3方向から見た第2金型の一部拡大平面図、
図12(d)がメッシュフィルタの離型時の変形状態を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0019】
[第1実施形態]
図1乃至
図2は、本発明の第1実施形態に係るメッシュフィルタ1を示す図である。なお、
図1(a)はメッシュフィルタ1の正面図であり、
図1(b)はメッシュフィルタ1の側面図であり、
図1(c)はメッシュフィルタ1の背面図であり、
図1(d)は
図1(a)のA1−A1線に沿って切断して示すメッシュフィルタ1の断面図である。また、
図2(a)は
図1(a)のB1部の拡大図(メッシュフィルタ1の一部拡大図)であり、
図2(b)は
図2(a)のA2−A2線に沿って切断して示す断面図(メッシュフィルタ1の一部拡大断面図)であり、
図2(c)は
図2(a)のA3−A3線に沿って切断して示す断面図(メッシュフィルタ1の一部拡大断面図)である。
【0020】
これらの図に示すように、メッシュフィルタ1は、円筒状の内筒2(内側の枠体)と、この内筒2と同心の円筒状の外筒3(内側の枠体を取り囲む外側の枠体)と、内筒2の外周面2aと外筒3の内周面3aとを径方向に沿って接続するフィルタ部4と、を一体に有している。そして、このメッシュフィルタ1は、全体が合成樹脂材料(66ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等)によって一体に形成されている。なお、このようなメッシュフィルタ1は、例えば、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管に配置されるようになっており、内筒2及び外筒3が燃料供給管路等にシール部材(図示せず)を介して取り付けられ、フィルタ部4を通過する燃料(流体)の漏洩が生じないように使用される。
【0021】
例えば、メッシュフィルタは、内筒2の外径が10mm、外筒3の外径が16mm、内筒2の肉厚が1mm、外筒3の肉厚が1mmとなるように形成される。なお、これら内筒2及び外筒3に関する数値は、本実施形態に係るメッシュフィルタの理解を容易にするための例示であり、使用条件等に応じて適宜変更される。
【0022】
内筒2及び外筒3は、中心軸5に沿った長さ寸法L1が同一であり、中心軸5に沿った方向の一端面2b,3bが共に中心軸5に直交する同一の仮想平面上に位置し、中心軸5に沿った方向の他端面2c,3cが共に中心軸5に直交する同一の仮想平面上に位置するようになっている。なお、内筒2と外筒3の関係は、本実施形態に限定されるものではなく、メッシュフィルタ1の取付状態に応じて変形され、内筒2と外筒3の中心軸5に沿った方向の寸法を異なる寸法としたり、また、内筒2の中心軸5に沿った方向の一端面2bは、外筒3の中心軸5に沿った方向の一端面3bとずれて位置するように構成してもよい。また、内筒2の中心軸5に沿った方向の他端面2cは、外筒3の中心軸5に沿った方向の他端面3cとずれて位置するように構成してもよい。
【0023】
フィルタ部4は、内筒2の中心軸5に沿った方向に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成されている。そして、このフィルタ部4は、X−Y平面における開口縁の形状が正八角形であり且つ表裏に開口する貫通孔である開口部分6が複数形成されている。開口部分6は、X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共にX−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成され、正八角形の内接円の直径D1がX軸方向に沿って隣合う開口部分6,6間の寸法L2と等しく且つY軸方向に沿って隣合う開口部分6,6間の寸法L3と等しく形成されることにより、X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成されている。また、45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分6の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔L4は、135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分6の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔L5と同一になっている。なお、このフィルタ部4は、内筒2と外筒3の中心軸5に沿った方向の中央部を径方向に接続するように形成されているが、これに限られず、内筒2及び外筒3の中心軸5に沿った方向の一端寄りの位置にずらして配置したり、内筒2及び外筒3の中心軸5に沿った方向の他端寄りの位置にずらして配置してもよい。
【0024】
例えば、フィルタ部4は、正八角形の開口部分6の内接円7の直径が0.1mm、X軸方向に沿って隣合う開口部分6,6間の寸法L2が0.1mm、Y軸方向に沿って隣合う開口部分6,6間の寸法L3が0.1mm、45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分6の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔L4が0.04mm、135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分6の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔L5が0.04mmになっている。また、フィルタ部4の厚さ(Z軸方向に沿った寸法)L6は、0.3mmになるように形成されている。なお、これらフィルタ部4に関する数値は、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の理解を容易にするための例示であり、使用条件等に応じて適宜変更される。
【0025】
図3は、本実施形態に係るフィルタ部4の正八角形の開口部分6と従来例に係るフィルタ部203の正四角形の開口部分8(206)とを対比して示す図であり、
図3(a)が本実施形態に係る正八角形の開口部分6の拡大図、
図3(b)が従来例に係る正四角形の開口部分8(206)の拡大図である。
【0026】
この
図3に示すように、正八角形の開口部分6の内接円7の直径D1と正四角形の開口部分8(206)の内接円10の直径D2とが等しい(D1=D2)場合、濾し取れる異物の長さのばらつきは、正八角形の開口部分6が1〜1.08であるのに対し、正四角形の開口部分8(206)が1〜1.41となり、正八角形の開口部分6の方が正四角形の開口部分8(206)よりも濾し取れる異物の長さのばらつきが小さく、異物の濾過性能が優れている。
【0027】
図4乃至
図5は、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の射出成形金型11を示す図である。なお、この
図4において、
図4(a)が射出成形金型11の縦断面図であり、
図4(b)が
図4(a)のB2部の拡大図(射出成形金型11の一部拡大断面図)である。また、
図5(a)が
図4(b)のF1方向から見た第2金型13の一部拡大平面図であり、
図5(b)が
図5(a)のA4−A4線に沿って切断して示す第2金型13の断面図であり、
図5(c)が
図5(a)のA5−A5線に沿って切断して示す第2金型13の断面図である。
【0028】
図4(a)に示すように、射出成形金型11は、第1金型12と第2金型13の型合わせ面側に、メッシュフィルタ1を射出成形するためのキャビティ14が形成されている。キャビティ14は、メッシュフィルタ1の内筒2を形作るための円筒状の第1キャビティ部15と、メッシュフィルタ1の外筒3を形作るための円筒状の第2キャビティ部16と、メッシュフィルタ1のフィルタ部4を形作るための中空円板状の第3キャビティ部17と、を有している。そして、第1金型12は、第1キャビティ部15の中心軸18に沿った方向の一端面15a側に開口するゲート20が第1キャビティ部15の周方向に沿って等間隔で6箇所設けられている(
図1(c)のゲート痕20a参照)。
【0029】
第2金型13の第3キャビティ部17は、第1キャビティ部15の中心軸18に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成され、フィルタ部4の表裏に開口する貫通孔である複数の正八角形の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21が開口部分6と同数形成されている(
図4(b)、
図5参照)。この第3キャビティ部17に形成された開口部分形成ピン21は、X−Y平面に対して直立し、X−Y平面に投影した形状(平面視した形状)が正八角形であり、X−Y平面のX軸方向に沿って等間隔で複数形成されると共にX−Y平面のY軸方向に沿って等間隔で複数形成されている。この開口部分形成ピン21は、正八角形の内接円
22の直径D1がX軸方向に沿って隣合う開口部分形成ピン21,21間の寸法L2と等しく且つY軸方向に沿って隣合う開口部分形成ピン21,21間の寸法L3と等しく形成されることにより、X軸方向とのなす角が45°の方向に沿って等間隔で複数形成されると共に、X軸方向とのなす角が135°の方向に沿って等間隔で複数形成されている。そして、45°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピン21の第1の列とこの第1の列と隣合う第2の列の間隔L4は、135°の方向に沿って等間隔で複数形成された開口部分形成ピン21の第3の列とこの第3の列と隣合う第4の列の間隔L5と同一になっている。また、開口部分形成ピン21は、その高さ寸法L6(
図4(b)、
図5(b)〜
図5(c)のZ軸方向に沿った寸法L6)がフィルタ部4の厚さ寸法L6となるように形成されている。なお、本実施形態において、キャビティ14に開口するゲート20は、第1キャビティ部15の周方向に沿って等間隔で6箇所設けられる態様を例示したが、これに限られず、第1キャビティ部15の外径寸法等に応じて2箇所以上の複数箇所に設けられる。また、複数のゲート20に代えてリングゲートを設けるようにしてもよい。
【0030】
このような形状の第3キャビティ部17の開口部分形成ピン21は、2種類の加工工具を使用して形成される。すなわち、射出成形金型11の第3キャビティ部17は、X軸と平行の横溝23を第1の加工工具(図示せず)によって等間隔で複数形成し、Y軸と平行の縦溝24を第1の加工工具によって等間隔で複数形成する。次に、射出成形金型11の第3キャビティ部17は、X軸に対して45°の方向に延びる第1の斜め溝25を第2の加工工具(図示せず)によって等間隔で複数形成し、X軸に対して135°の方向(第1の斜め溝25と直交する方向)に延びる第2の斜め溝26を第2の加工工具によって等間隔で複数形成する。このように、第3キャビティ部17の開口部分形成ピン21は、第1の加工工具をX軸方向に沿って送り、第1の加工工具をY軸方向に沿って送り、第2の加工工具をX軸方向に対して45°の方向に沿って送り、第2の加工工具をX軸方向に対して135°の方向に沿って送ることにより、容易に形成される。なお、例えば、横溝23及び縦溝24は、溝幅(L2,L3)が0.1mm、溝深さ(L6)が0.3mmになるように第1の加工工具によって加工される。また、第1の斜め溝25及び第2の斜め溝26は、溝幅(L4,L5)が0.04mm、溝深さ(L6)が0.3mmになるように第2の加工工具によって加工される。また、第1の加工工具をX軸方向及びY軸方向に沿って送るとは、射出成形金型11が固定されたテーブルを第1の加工工具に対してX軸方向及びY軸方向に沿って送る(移動させる)ことを含んでいる。また、第2の加工工具をX軸方向に対して45°の方向及び135°の方向に沿って送るとは、射出成形金型11が固定されたテーブルをX軸方向に対して45°及び135°だけ回転させた状態で、第2の加工工具に対してテーブルを送る(移動させる)ことを含んでいる。
【0031】
このような構造の射出成形金型11は、
図4(a)に示すように、第1金型12と第2金型13とを型締めした状態で、溶融状態の合成樹脂材料が複数のゲート20から第1キャビティ部15内に射出される。第1キャビティ部15内に射出された溶融状態の合成樹脂材料は、第1キャビティ部15内に充填された後、第1キャビティ部15から第3キャビティ部17内へ放射状に流動する。第3キャビティ部17内に流入した溶融状態の合成樹脂材料は、開口部分形成ピン21,21間の隙間を流動し、第3キャビティ部17内に充填される。この際、第3キャビティ部17内の溶融状態の合成樹脂材料は、
図5に示すように、横溝23、縦溝24、第1の斜め溝25、及び第2の斜め溝26に沿った方向に迅速に流動する。これに対し、
図12(c)に示すように、開口部分形成ピン216の断面形状が四角形状である従来の射出成形金型207の第3キャビティ部215は、横溝220及び縦溝221方向に溶融状態の合成樹脂材料が迅速に流動するものの、本実施形態に係る射出成形金型11における第3キャビティ部17のような第1の斜め溝25及び第2の斜め溝26に対応する溝が形成されていないため、溶融状態の合成樹脂材料が開口部分形成ピン216の間をジグザグ状に斜め方向へ流動する。その結果、
図4及び
図5に示す本実施形態に係る射出成形金型11は、図
12に示す従来の射出成形金型207と比較し、第3キャビティ部17内における溶融樹脂の流動距離が短くなり、第3キャビティ部17内への溶融状態の合成樹脂材料の充填速度が速くなるため、ショートショットが生じ難く、フィルタ部4の面積が大きなメッシュフィルタ1の射出成形が可能になる。
【0032】
次いで、第3キャビティ部17内に充填された溶融状態の合成樹脂材料は、第2キャビティ部16内に流入し、第2キャビティ部16に充填される。そして、キャビティ14の全体に溶融状態の合成樹脂材料が充填された射出成形金型11は、キャビティ14内の圧力が所定圧に保持された状態で冷却される。その後、第2金型13が第1金型12から−C方向へ離され(型開きされ)、キャビティ14内のメッシュフィルタ1が図示しないエジェクタピンでキャビティ14内から押し出され、射出成形品であるメッシュフィルタ1が射出成形金型11から取り出される(
図1参照)。この際、本実施形態に係る射出成形金型11は、図
12に示す従来の射出成形金型207と比較し、開口部分形成ピン21とメッシュフィルタ1の開口部分6との間に作用する離型抵抗が小さいため、開口部分形成ピン21に生じる応力が小さくなり、耐久性が向上する。
【0033】
その後、本実施形態に係る射出成形金型11は、型開きの状態にある第2金型13が+C方向(第1金型12に近づく方向)に移動させられ、第2金型13が第1金型12に押し付けられ、第1金型12と第2金型13とが型締めされ、メッシュフィルタ1の射出成形の1サイクルが終了する。
【0034】
図4(c)は、フィルタ部4の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21の第1変形例を示す図である。この
図4(c)に示すように、フィルタ部4の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21は、
第2金型13の第3キャビティ
部17を形作る部分に形成せず、
第1金型12の第3キャビティ
部17を形作る部分にのみ形成するよう
にしてもよい。
【0035】
図4(d)は、フィルタ部4の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21の第2変形例を示す図である。この
図4(d)に示すように、フィルタ部4の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21は、第1金型12の第3キャビティ
部17を形作る部分と、第2金型13の第3キャビティ
部17を形作る部分とに分けて形成するようにしてもよい。この第2変形例において、第1金型12と第2金型13の各々の開口部分形成ピン21A,21Bの高さ寸法は、上記実施形態及び上記第1変形例における開口部分形成ピン21の高さ寸法L6の1/2の高さ寸法(L6/2)に形成される。そして、第1金型12と第2金型13の型締め時において、開口部分形成ピン21Aの頂面と開口部分形成ピン21Bの頂面が突き合わされる。
【0036】
以上のような本実施形態によれば、射出成形後のメッシュフィルタ1の離型時において、メッシュフィルタ1のフィルタ部4における正八角形の開口部分6と開口部分形成ピン21との間に作用する離型抵抗は、フィルタ部4の開口部分6の形状が四角形の場合と比較して小さくなる。その結果、本実施形態によれば、射出成形金型11の開口部分形成ピン21に作用する応力を小さくすることができ、射出成形金型11の耐久性を向上させることができると共に、メッシュフィルタの離型時における射出成形金型の作動制御を容易にすることができる。
【0037】
また、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、フィルタ部4の開口部分6の形状が正八角形であるため、フィルタ部4の開口部分6の形状が正四角形である従来例と比較して、濾し取る異物の大きさのばらつきを小さくすることができ、フィルタ性能を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る射出成形金型11は、フィルタ部4を形作る第3キャビティ部17内の溶融状態の合成樹脂材料が横溝23、縦溝24、第1の斜め溝25、及び第2の斜め溝26に沿った方向に迅速に流動するようになっているため(
図5参照)、図
12に示す従来の射出成形金型207と比較し、第3キャビティ部17内における溶融樹脂の流動距離が短くなる。その結果、本実施形態に係る射出成形金型11は、図
12に示す従来の射出成形金型207と比較し、第3キャビティ部17内への溶融状態の合成樹脂材料の充填速度が速く、ショートショットが生じ難くなるため、フィルタ部4の面積が大きなメッシュフィルタ1の射出成形が可能になる。
【0039】
また、本実施形態に係る射出成形金型11の第3キャビティ部17は、X軸と平行の横溝23を第1の加工工具によって等間隔で複数形成し、Y軸と平行の縦溝24を第1の加工工具によって等間隔で複数形成し、X軸に対して45°の方向に延びる第1の斜め溝25を第2の加工工具によって等間隔で複数形成し、X軸に対して135°の方向(第1の斜め溝25と直交する方向)に延びる第2の斜め溝26を第2の加工工具によって等間隔で複数形成するようになっている。その結果、本実施形態に係る射出成形金型11において、第3キャビティ部17の正八角形の開口部分形成ピン21は、第1の加工工具をX軸方向に沿って送り、第1の加工工具をY軸方向に沿って送り、第2の加工工具をX軸方向に対して45°の方向に沿って送り、第2の加工工具をX軸方向に対して135°の方向に沿って送ることにより、容易に形成される。
【0040】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係るメッシュフィルタ1を示す図である。この
図6に示す本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、第1実施形態に係るメッシュフィルタ1と同一部分に同一符号を付し、第1実施形態に係るメッシュフィルタ1の説明と重複する説明を省略する。なお、
図6(a)はメッシュフィルタ1の正面図であり、
図6(b)はメッシュフィルタ1の側面図であり、
図6(c)はメッシュフィルタ1の背面図であり、
図6(d)は
図6(a)のA6−A6線に沿って切断して示すメッシュフィルタ1の断面図である。
【0041】
本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、内筒2の径方向内方側に、内筒2の中心軸5から内筒2の内周面2dに至る内側フィルタ部27が形成されている。この内側フィルタ部27は、上記第1実施形態に係るメッシュフィルタ1のフィルタ部4と同様に形成されている(
図2(a)及び
図3(a)参照)。そして、
図6(a)に示すメッシュフィルタ1のフィルタ部4は、B1部の拡大図が
図2(a)と同様である。また、
図6(a)に示すメッシュフィルタ1の内側フィルタ部27は、B3部の拡大図が
図2(a)と同様である。なお、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、内側フィルタ部27で濾し取るべき異物の粒径とフィルタ部4で濾し取るべき異物の粒径とが異なる場合、その濾し取るべき異物の粒径に応じて、内側フィルタ部27の開口部分
(内側開口部分)6とフィルタ部4の開口部分6の開口面積を変えてもよい。
【0042】
図7は、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の射出成形に使用される射出成形金型11を示す図であり、
図4(a)に対応する断面図である。なお、
図7に示す射出成形金型11は、
図4(a)の射出成形金型11と同一部分には同一符号を付し、
図4(a)の射出成形金型11の説明と重複する説明を省略する。
【0043】
この
図7に示す射出成形金型11は、円筒状の内筒2を形作るための第1キャビティ部15の径方向内方側に、内側フィルタ部27を形作るための第4キャビティ部28が形成されている。そして、第4キャビティ部28には、
図5に示したフィルタ部4の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21と同様に、内側フィルタ部27の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン
(内側開口部分形成ピン)21が複数形成されている。
【0044】
このような本実施形態に係る射出成形金型11によれば、第1キャビティ
部15に開口するゲート20から溶融状態の合成樹脂材料が射出されると、溶融状態の合成樹脂材料が第1キャビティ部15から第3キャビティ部17と第4キャビティ部28へ向けて流動し、全体(円筒状の内筒2、円筒状の外筒3、フィルタ部4、及び内側フィルタ部27)が一体に且つ高精度に射出成形される。
【0045】
[第3実施形態]
図8は、本発明の第3実施形態に係るメッシュフィルタ1を示す図である。なお、
図8(a)はメッシュフィルタ1の正面図であり、
図8(b)はメッシュフィルタ1の側面図であり、
図8(c)はメッシュフィルタ1の背面図であり、
図8(d)は
図8(a)のA7−A7線に沿って切断して示すメッシュフィルタ1の断面図である。
【0046】
この
図8に示すように、メッシュフィルタ1は、円板状又は中実丸棒状の中央部30と、この中央部30の中心軸5と同心で且つ中央部30を取り囲むように位置する円筒状の外筒3(外側の枠体)と、中央部30の外周面30aと外筒3の内周面3aとを径方向に沿って接続するフィルタ部4と、を一体に有している。なお、本実施形態に係るメッシュフィルタ1は、中央部30が第1実施形態に係るメッシュフィルタ1の内筒2に置き換えて構成され、外筒3の形状が第1実施形態に係るメッシュフィルタ1の外筒3と相違するものの、フィルタ部4の構成が第1実施形態に係るメッシュフィルタ1のフィルタ部4と同様である。
【0047】
中央部30は、射出成形用のゲート31が開口する部分であり、外形寸法がゲート31の開口部の内径寸法以上の大きさに設定されている(
図8(c)のゲート痕31a、及び
図9参照)。また、この中央部30は、射出成形が終了し、製品としてのメッシュフィルタ1が射出成形金型11から取り出される前に、射出成形用のゲート31から切り離されるため、このゲート31の切り離し時に作用する力で破損しない肉厚寸法に設定されている(
図9参照)。なお、この中央部30の表面30bは、フィルタ部4の表面4aから中心軸5に沿った方向(+Z軸方向)へ出っ張っている。また、中央部30の裏面30cは、フィルタ部4の裏面4bから中心軸5に沿った方向(−Z軸方向)へ出っ張っている。
【0048】
外筒3は、一端面3bが中央部30の表面30bよりも中心軸5に沿った方向(+Z軸方向)へ出っ張ると共に、他端面3cが中央部30の裏面30cよりも中心軸5に沿った方向(−Z軸方向)へ出っ張っている。そして、この外筒3は、フィルタ部4及び中央部30を径方向内方側に収容している。なお、外筒3の形状は、メッシュフィルタ1が取り付けられる相手部材(油圧制御装置の制御用オイルの供給管路等)の取付部構造に応じて適宜変形(例えば、二面幅形状、六角形状に変形)される。
【0049】
フィルタ部4は、中央部30の中心軸5に沿った方向に直交する仮想平面をX−Y平面とすると、このX−Y平面に沿って形成されており、
図8(a)のB1部が
図1(a)のB1部と同様に形成されている。このフィルタ部4は、
図2で示したように(第1実施形態に係るメッシュフィルタ1のフィルタ部4と同様に)、正八角形の開口部分6が複数形成されている。
【0050】
なお、メッシュフィルタ1は、
図8(b)において、外筒3の幅方向中心線32に対して左右対称の形状になっているが、フィルタ部4及び中央部30を幅方向中心線32に対して中心軸5に沿った方向(+Z軸方向、又は−Z軸方向)にずらしてもよい。また、メッシュフィルタ1は、
図8(b)において、フィルタ部4と中央部30のいずれか一方を外筒3の幅方向中心線32に対して中心軸5に沿った方向(+Z軸方向、又は−Z軸方向)にずらしてもよい。
【0051】
図9は、本実施形態に係るメッシュフィルタ1の射出成形に使用される射出成形金型11を示す図である。なお、
図9(a)は、射出成形金型11の断面図であり、
図4(a)に対応する図である。また、
図9(b)は、
図9(a)のB2部の拡大図であり、
図4(b)に対応する図である。
【0052】
図9に示すように、射出成形金型11は、第1金型12と第2金型13の型合わせ面側に、メッシュフィルタ1を射出成形するためのキャビティ14が形成されている。キャビティ14は、メッシュフィルタ1の中央部30を形作るための円板状の第1キャビティ部15と、メッシュフィルタ1の外筒3を形作るための円筒状の第2キャビティ部16と、メッシュフィルタ1のフィルタ部4を形作るための中空円板状の第3キャビティ部17と、を有している。そして、第1金型12は、第1キャビティ部15の中心軸18に沿った方向の一端面15a側に開口するゲート31が第1キャビティ部15の中央に1箇所設けられている(
図8(c)のゲート痕
31a参照)。また、
第2金型13の第3キャビティ部17を形作る部分は、正八角形の開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21が複数(開口部分6と同数)形成されている(
図5参照)。開口部
分形成ピン21は、
図5に示した第1実施形態に係る射出成形金型11の開口部分形成ピン21と同様に、平面視した形状(
図9(b)のF2方向から見た形状)が正八角形であり、正八角形の開口部分6を形成できる寸法に形成されている。なお、本実施形態において、第3キャビティ部17は、
図5に示すように、第1実施形態に係る射出成形金型11の第3キャビティ部17と同様に形成されており、開口部分形成ピン21も第1実施形態に係る射出成形金型11の開口部分形成ピン21と同様に形成されている。また、本実施形態において、キャビティ14に開口するゲート31は、第1キャビティ部15の中央に1箇所だけ設置する態様を例示したが、これに限られず、第1キャビティ部15の外径寸法等に応じて2箇所以上の複数箇所に設けてもよい。
【0053】
このような構造の射出成形金型11は、
図9(a)に示すように、第1金型12と第2金型13とを型締めした状態で、溶融状態の樹脂がゲート31からキャビティ14内に射出された後、キャビティ14内の圧力が所定圧に保持された状態で冷却される。その後、ゲート31がキャビティ14内の射出成形品(メッシュフィルタ1)から切り離され、第2金型13が第1金型12から−C方向へ離され(型開きされ)、キャビティ14内のメッシュフィルタ1が図示しないエジェクタピンでキャビティ14内から押し出され、射出成形品であるメッシュフィルタ1が射出成形金型11から取り出される(
図8参照)。その後、この射出成形金型11は、型開きの状態にある第2金型13が+C方向(第1金型12に近づく方向)に移動させられ、第2金型13が第1金型12に押し付けられ、第1金型12と第2金型13とが型締めされる。
【0054】
図9(c)は、開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21の第1変形例を示す図である。この
図9(c)に示すように、開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21は、
第2金型13の第3キャビティ部17を形作る部分に形成せず、
第1金型12の第3キャビティ部17を形作る部分にのみ形成するようにしてもよい。
【0055】
図9(d)は、開口部分6を形作るための開口部分形成ピン21の第2変形例を示す図である。この
図9(d)に示すように、開口部分形成ピン21は、第1金型12の第3キャビティ部17を形作る部分と、第2金型13の第3キャビティ部17を形作る部分とに分けて形成するようにしてもよい。この第2変形例において、第1金型12と第2金型13の各々の開口部分形成ピン21A,21Bの高さ寸法は、上記第1変形例における開口部分形成ピン21の高さ寸法の1/2の高さ寸法に形成される。そして、第1金型12と第2金型13の型締め時において、開口部分形成ピン21Aの頂面と開口部分形成ピン21Bの頂面が突き合わされる。このような本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
なお、本発明の各実施形態に係るメッシュフィルタ1は、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管に設置される態様を例示したが、もちろん、自動車の潤滑装置等のオイル管路の途中に設置してもよく、これに限られず、給水管や送風管の管路に設置し、流体(水等の液体や空気等の気体)に混ざった異物を取り除くために広範囲の技術分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1……メッシュフィルタ、2……内筒、2a……外周面、3……外筒、3a……内周面、4……フィルタ部、5,18……中心軸、6……開口部分、7,22……内接円、11……射出成形金型、14……キャビティ、15……第1キャビティ部、16……第2キャビティ部、17……第3キャビティ部、21……開口部分形成ピン