特許第6594704号(P6594704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594704
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ガス警報器
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/14 20060101AFI20191010BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20191010BHJP
   G08B 17/117 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G08B21/14
   G01N27/416 331
   G01N27/416 371G
   G08B17/117
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-166582(P2015-166582)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-45225(P2017-45225A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】中島 唯宣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 巧
【審査官】 山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−309712(JP,A)
【文献】 特開2006−031451(JP,A)
【文献】 特開2011−197800(JP,A)
【文献】 特開2011−085455(JP,A)
【文献】 特開2015−092316(JP,A)
【文献】 特開2014−066530(JP,A)
【文献】 特開2008−014926(JP,A)
【文献】 特開2007−255923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
G08B 17/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ型のセンサ本体を有するガスセンサと、警報を発生する警報手段と、を備えたガス警報器であって、
少なくとも前記ガスセンサに電力を供給する電源部と、
前記電源部と前記ガスセンサとの電気的な接続と遮断とを切換可能なスイッチ部と、
前記センサ本体を充電する充電手段によって前記ガスセンサを点検可能な点検手段と、 少なくとも前記点検手段を制御する制御手段と、
前記ガスセンサの出力を増幅する増幅手段と、をさらに備え、
前記ガスセンサは、前記スイッチ部によって当該ガスセンサと前記電源部とが切り離されている場合に接続されることで前記センサ本体の両端を接続する閉回路を形成する充電防止スイッチを有し、
前記制御手段は、前記スイッチ部によって前記ガスセンサと前記電源部とが接続された際に、前記充電防止スイッチを切断し、
前記スイッチ部によって前記電源部と前記ガスセンサとが電気的に接続されてから所定の安定時間内に、前記ガスセンサの出力が第1閾値よりも低くなった場合に、前記制御手段が、前記点検手段に該ガスセンサの初期点検を開始させることを特徴とするガス警報器。
【請求項2】
前記制御手段が、前記警報手段も制御するように構成され、
前記電源部と前記ガスセンサとが電気的に接続されてから前記安定時間内に、前記ガスセンサの出力が前記第1閾値よりも低くならない場合に、前記制御手段が、前記初期点検に代えて、前記警報手段に警報を発生させることを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
【請求項3】
前記点検手段が、前記初期点検において、前記ガスセンサの電気回路の故障を検出可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス警報器。
【請求項4】
前記充電手段は、前記初期点検と、該初期点検後の通常点検と、で充電時間を可変に構成されていることを特徴とする請求項3に記載のガス警報器。
【請求項5】
前記初期点検の終了後に、前記ガスセンサの出力が前記第1閾値以上となった際に、前記制御手段が前記警報手段に警報を発生させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ型のセンサ本体を有するガスセンサと、警報を発生する警報手段と、を備えたガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池駆動式のガス警報器として、電力の消費量を切換可能なモード設定手段を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなガス警報器では、使用しない場合には節電モードに切り換えられ、使用時には電力消費モードに切り換えられることで、消費電力の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−31451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたガス警報器では、節電モードにおいてもわずかながら電力を消費してしまう。そこで、電源部とガスセンサとを完全に遮断して電力消費を抑制する構成も考えられる。ところで、コンデンサ型のセンサ本体を有するガスセンサ(例えば電気化学式ガスセンサ)に、出力を増幅するための増幅手段(例えばオペアンプ)が接続されることがある。増幅手段の2つの入力端子間には、オフセット電圧が生じる可能性があり、この場合、電源の投入後にオフセット電圧によってセンサ本体が充電されることにより、出力が安定するまでに時間を要する。このようなオフセット電圧は増幅手段によってばらつきがあり、安定化に要する時間を予測することは困難であった。従って、ガス警報器の設置作業時に、出力が安定してから初期点検を実施しようとすると、作業時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、消費電力を低減しつつ設置に要する時間を短縮することができるガス警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、コンデンサ型のセンサ本体を有するガスセンサと、警報を発生する警報手段と、を備えたガス警報器であって、少なくとも前記ガスセンサに電力を供給する電源部と、前記電源部と前記ガスセンサとの電気的な接続と遮断とを切換可能なスイッチ部と、前記センサ本体を充電する充電手段によって前記ガスセンサを点検可能な点検手段と、 少なくとも前記点検手段を制御する制御手段と、前記ガスセンサの出力を増幅する増幅手段と、をさらに備え、前記ガスセンサは、前記スイッチ部によって当該ガスセンサと前記電源部とが切り離されている場合に接続されることで前記センサ本体の両端を接続する閉回路を形成する充電防止スイッチを有し、前記制御手段は、前記スイッチ部によって前記ガスセンサと前記電源部とが接続された際に、前記充電防止スイッチを切断し、前記スイッチ部によって前記電源部と前記ガスセンサとが電気的に接続されてから所定の安定時間内に、前記ガスセンサの出力が第1閾値よりも低くなった場合に、前記制御手段が、前記点検手段に該ガスセンサの初期点検を開始させることを特徴とするガス警報器である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御手段が、前記警報手段も制御するように構成され、前記電源部と前記ガスセンサとが電気的に接続されてから前記安定時間内に、前記ガスセンサの出力が前記第1閾値よりも低くならない場合に、前記制御手段が、前記初期点検に代えて、前記警報手段に警報を発生させることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記点検手段が、前記初期点検において、前記ガスセンサの電気回路の故障を検出可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載の発明において、前記充電手段は、前記初期点検と、該初期点検後の通常点検と、で充電時間を可変に構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記初期点検の終了後に、前記ガスセンサの出力が前記第1閾値以上となった際に、前記制御手段が前記警報手段に警報を発生させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、電源部とガスセンサとの電気的な接続と遮断とを切換可能なスイッチ部を備えることから、ガス警報器を使用しない場合にガスセンサに電力を供給しないことにより、ガス警報器の出荷前の収納時や輸送時等に消費電力を低減することができる。また、ガスセンサの出力が安定時間内に第1閾値よりも低くなった場合にガスセンサの初期点検を開始することにより、ガスセンサの出力が安定するまで待機してから初期点検を開始する構成と比較して、初期点検を早く開始することができ、ガス警報器の設置に要する時間を短縮することができる。
【0012】
このとき、ガスセンサの出力が安定する前に初期点検を開始して充電手段によってセンサ本体を充電した場合でも、安定化後に充電した場合でも、充電完了後のセンサ本体の電極板間の電位差は充電電圧と等しくなり、ガスセンサの出力の安定の前後によらず、充電完了後の電極板間の電位差は一定となる。従って、充電開始時の電極板間の電位差を開始電圧として測定すれば、この開始電圧と充電電圧との間における電極板間の電位差の変化に基づいて、ガスセンサを点検することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、電源部とガスセンサとが電気的に接続されてから安定時間内にガスセンサの出力が第1閾値よりも低くならない場合、即ち、ガスセンサに異常が発生してコンデンサがオフセット電圧によって正常に充電されない場合、又は、ガス漏れが発生している場合に、警報手段に警報を発生させることにより、作業者やユーザーにガスセンサの故障やガス漏れを認識させることができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、初期点検においてガスセンサの電気回路の故障を検出する、即ち、電気回路の短絡や断線を検出することから、センサ本体の充電時のガスセンサの出力に基づいて故障を判定すればよい。具体的には、センサ本体の電極板同士や、各電極板に接続された電線同士が短絡した場合には、センサ本体を充電しようとしても電極板間の電位差(ガスセンサの出力)はほとんど変化しない。一方、センサ本体の周辺の電線が断線してセンサ本体が回路から切り離された場合には、コンデンサは充電されず、充電手段によってセンサ本体に印加した電圧がガスセンサの出力となることがあり、この電圧は瞬間的に変化する。このように、電気回路の短絡時や断線時には、ガスセンサの出力はほとんど変化しなかったり瞬間的に変化したりすることから、短時間で故障検出することができ、初期点検時の充電時間を短縮することができる。従って、初期点検に要する時間を短縮し、ガス警報器の設置に要する時間をさらに短縮することができる。また、ガス警報器の輸送時には、振動や衝撃等によって電気回路に故障が生じる可能性があり、その他の故障は生じにくいことから、出荷前の状態でガス警報器全体の点検を実施し、設置後の初期点検によって前述のように電気回路を点検すれば、点検を効率化することができる。
【0015】
請求項4に記載された発明によれば、初期点検時には上記のように充電時間を短縮して初期点検に要する時間を短縮するとともに、初期点検後の通常点検時には充電時間を長くして検出精度を向上させることができる。即ち、充電時間を長くすることにより、センサ本体の電極板間の電位差の変化を大きくすることができ、出力の変化をより正確に検出することができる。
【0016】
請求項5に記載された発明によれば、初期点検の終了後に、ガスセンサの出力が第1閾値以上となった際に警報手段に警報を発生させる、即ち、警報用の閾値と初期点検開始用の閾値とを一致させることにより、制御を簡単化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るガス警報器を模式的に示すブロック図である。
図2図1のガス警報器の電気回路を示す回路図である。
図3図1のガス警報器の初期点検時における出力変化を示すタイミングチャートである。
図4図1のガス警報器のガスセンサが(A)断線及び(B)短絡した場合の出力変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のガス警報器1は、図1に示すように、ガスセンサ2と、警報手段としてのスピーカ3と、少なくともガスセンサ2に電力を供給する電源部としての電池4と、電池4とガスセンサ2との電気的な接続と遮断とを切換可能なスイッチ部5と、ガスセンサ2を点検可能な点検手段6と、スピーカ3及び点検手段6を制御する制御手段7と、を備えた電池式のガス警報器である。尚、ガス警報器1は、電池式でなくてもよく、例えば家庭用のAC100V電源で動作するものであってもよい。
【0019】
ガスセンサ2は、例えば電気化学式ガスセンサであって、図2に示すように、センサ本体21と、後述するようにセンサ本体21によって生じる電流を増幅することで出力を増幅する増幅手段としての第1オペアンプ22と、第2オペアンプ23と、第1〜第4抵抗R1〜R4と、充電防止スイッチSW1を有する。各抵抗の抵抗値は、例えば、第1抵抗が1kΩであり、第2抵抗が68kΩであり、第3抵抗が300kΩであり、第4抵抗が20kΩであるものとする。
【0020】
センサ本体21は、検知電極(図2の下側の電極)と、対向電極(図2の上側の電極)とで構成されるコンデンサCと、コンデンサCに対して並列に接続される並列抵抗Rpと、コンデンサCに対して直列に接続される直列抵抗Rsと、を有するコンデンサ型のセンサであって、例えば一酸化炭素を検知対象ガスとする。検知対象ガスが検知電極と対向電極との間に存在すると、各電極において酸化還元反応が起こり、電流が流れようとする。この電流と各抵抗とによって、点aと点bとの間に電位差(電圧)が発生し、この電圧がガスセンサ2の出力となる。ガスセンサ2の出力は、信号S1として制御手段7に送信される。尚、検知対象ガスの濃度と、ガスセンサ2の出力とは略比例するものとする。
【0021】
充電防止スイッチSW1は、スイッチ部5によってガスセンサ2と電池4とが切り離されている場合に接続されることで、センサ本体21の両端を接続する閉回路を形成する。ガス警報器が動作していない場合に検知対象ガスが存在した際に、コンデンサCの電極板間の電位差によってこの閉回路に電流が流れ、コンデンサCに電荷が溜まらないようになっている。
【0022】
第1オペアンプ22には、入力端子In1、In2間に、オフセット電圧が生じ得る。オペアンプによって発生するオフセット電圧にはばらつきがあり、予測することは困難である。また第2オペアンプ23にもオフセット電圧が生じ得るものの、第1オペアンプ22のオフセット電圧と比較して、コンデンサCへの充電への寄与割合が充分に小さい。
【0023】
スピーカ3は、制御手段7から送信された警報発生信号S2を受信することによって警報音を発生するように構成されている。尚、警報手段として、スピーカ3に代えてランプ等の表示部を有した表示手段を用いてもよいし、スピーカ3と表示手段とが組み合わされてもよい。
【0024】
電池4は、乾電池であってもよいし二次電池であってもよく、ガスセンサ2だけでなくスピーカ3や点検手段6、制御手段7等にも電力を供給するように構成されていてもよいし、これらの構成に電力を供給する電源部が別体に設けられてもよい。電池4がガスセンサ2以外の構成にも電力を供給する場合、例えばスイッチ部5を主電源用のスイッチとし、スイッチ部5が接続されることでガスセンサ2以外の構成に電力が供給されるようにしてもよい。
【0025】
点検手段6は、充電手段61を有している。充電手段61は、ガスセンサ2に接続され、点aと点dとの間に電圧を印加する図示しない電圧印加部と、点cと点dとの接続と切断とを切り換える充電スイッチ611と、を有する。
【0026】
電圧印加部は、例えば点aの電位を2.2Vにするとともに点dの電位を2.4Vにすることで、点aと点dとの間に0.2Vの電圧を印加するように構成されている。
【0027】
充電スイッチ611は、抵抗を挟んで点cと点dとを接続することにより、センサ本体21に電圧を印加する。充電手段61は、充電スイッチ611の接続時間を調節することにより、充電時間を可変に構成されている。コンデンサCの両電極間には、充電完了時に、点aと点dとの間の電位差に等しい電圧が保持される。
【0028】
以下、ガス警報器1を設置して初期点検を実行する手順及びそのときのガスセンサ2の出力について図3のタイミングチャートも参照して説明する。尚、図3では、ガスセンサ2の出力の大きさに対応した縦軸は、下方ほど値が大きくなることを示している。また、以下においてガスセンサ2の出力の高低は、ガス濃度の高低と対応するものとする。即ち、出力が高いとはガス濃度が高いことを意味し、出力が低いとはガス濃度が低いことを意味する。
【0029】
まず、ガス警報器1は、工場での出荷前に出荷用の初期点検(例えば、ガスセンサ2やスピーカ3が正常に動作するかの点検)が実施された後、スイッチ部5が切断されてガスセンサ2に電力が供給されていない状態で出荷される。また、後述するように第1オペアンプ22のオフセット電圧によってコンデンサCが充電されて出力が安定した際、この出力が0ppmに対応し、工場において0ppmに対応する出力を予め測定しておく。このように出荷されたガス警報器1を設置する際、設置作業者がスイッチ部5を接続状態にする(スイッチON)と、制御手段7は、充電防止スイッチSW1を切断する。これにより、点aと点cとが等電位ではなくなり、第1オペアンプ22のオフセット電圧によってコンデンサCが充電されていく。このときの時定数は、各抵抗値とコンデンサCの容量とによって決まる。コンデンサCの電極板間の電位差がオフセット電圧と等しくなって充電が終了するまでに要する最大時間の例を、各条件について表1に示す。また、条件2及び条件4におけるガスセンサ2の出力(ガス濃度換算値)の変化を図4のタイミングチャートに示す。尚、図4の例では、入力端子In1の方が入力端子In2よりも高電圧となるようなオフセット電圧が生じた例について示すが、この正負は逆転することもある。
【0030】
【表1】
【0031】
充電防止スイッチSW1を切断してから安定時間(例えば30秒)が経過したら、制御手段7は、ガスセンサ2の出力が第1閾値よりも低いか否かを判定する。第1閾値のガス濃度換算値は例えば200ppmとする。ガスセンサ2の出力が第1閾値よりも低い場合、制御手段7は初期点検を開始する。即ち、制御手段7は、充電手段61に充電信号S4を送信し、充電スイッチ611を接続させ、コンデンサCへの充電を開始する。コンデンサCが充電されて電極板間の電位差が大きくなっていく(ガスセンサ2の出力が大きくなっていく)にしたがって、センサ本体21側に電流が流れにくくなっていく。従って、仮に充電を継続した場合、コンデンサCが飽和してガスセンサ2の出力が一定の値となる。充電開始後に所定の時間(例えば1秒)が経過したら、制御手段7が充電スイッチ611を切断させる。即ち、初期点検時の充電時間は例えば1秒となる。
【0032】
初期点検において、コンデンサCの充電時には、次のような判定が実施される。即ち、制御手段7は図4に示すように、充電を開始して所定時間(例えば10ms)経過後に、ガスセンサ2の出力が第1判定値P1以下であるかを判定し、さらに時間が経過した後(例えば0.1秒経過後)に、ガスセンサ2の出力が第2判定値P2以上且つ第3判定値P3以下の値となるか否かを判定する。第2判定値は第1判定値よりも高いものとする。ガスセンサ2の電気回路が正常である場合、図4に二点鎖線で示すように、その出力は時間経過とともに大きくなり、第1判定値P1以下となった後に第2判定値P2以上且つ第3判定値P3以下の値となる。一方、例えば点aと点cとの間において、センサ本体21に断線が生じている場合、コンデンサCは電気回路から切り離されて充電されず、ガスセンサ2の出力である点aと点bとの間の電位差は、点aと点cとの間の電位差が増幅されたものに略等しくなり、図4(A)に実線で示すように、充電スイッチ611の接続後に急激に上昇する。従って、ガスセンサ2の出力が第1判定値P1及び第3判定値P3よりも大きくなる。
【0033】
また、コンデンサCの両電極が短絡している(インピーダンスが0になっている)場合、コンデンサCに電荷が溜まらないため、ガスセンサ2の出力である点aと点bとの間の電位差は、図4(B)に実線で示すようにほとんど変化しない。従って、ガスセンサ2の出力が、第1判定値P1以下となった後に第2判定値P2以上且つ第3判定値P3以下となることはない。
【0034】
尚、判定値P1〜P3は、0ppmに対応する出力と、充電開始時の出力と、充電電圧と、センサ本体21の充電時の時定数と、に応じて適宜な値に設定されていればよい。
【0035】
センサ本体21の充電終了後33秒が経過したら制御手段7は初期点検を終了する。初期点検の終了後、制御手段7は、ガスセンサ2の出力が第1閾値以上となるか否かを繰り返し判定し、ガスセンサ2の出力が第1閾値以上となったらスピーカ3に警報発生信号S2を送信し、警報を発生させる。また、初期点検の終了後、制御手段7は、故障点検(通常点検)を定期的に(例えば24時間毎に)実施する。尚、通常点検時における充電時間は例えば5秒とすればよい。このように通常点検時には充電時間を長くすることにより、センサ本体21の電極板間の電位差の変化を大きくし、出力の変化をより正確に検出することができ、検出精度を向上させることができる。
【0036】
一方、センサ本体21が最初に放電を開始してから(スイッチON後)安定時間が経過してもガスセンサ2の出力が第1閾値よりも低くならない場合、制御手段7は、スピーカ3に警報発生信号S2を送信して警報を発生させるとともに、初期点検を終了する。このとき、制御手段7は、定期的な故障点検の一回目を早く(例えば1時間後に)実施する。
【0037】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、ガス警報器1は、スイッチ部5が切断されてガスセンサ2に電力が供給されていない状態で出荷されることから、輸送時等における消費電力を低減することができる。また、ガスセンサ2の出力が安定時間内に第1閾値よりも低くなった場合にガスセンサ2の初期点検を開始することにより、ガスセンサ2の出力が安定してから初期点検を開始する構成と比較して、初期点検を早く開始することができ、ガス警報器1の設置に要する時間を短縮することができる。
【0038】
さらに、スイッチ部5が接続状態となってセンサ本体21に充電が開始されてから安定時間内にガスセンサ2の出力が第1閾値よりも低くならない場合にスピーカ3に警報を発生させることにより、ガスセンサ2に異常が発生してオフセット電圧によってコンデンサCが正常に充電されない場合や、ガス漏れが発生している場合に警報を発生し、設置作業者やユーザーにガスセンサ2の故障やガス漏れを認識させることができる。
【0039】
また、初期点検において、異なる2回のタイミングで出力と判定値P1〜P3とを比較してガスセンサ2における断線及び短絡を検出することにより、断線時又は短絡時にはガスセンサ2の出力が瞬間的に変化するかほとんど変化しないことから、短時間で故障を検出することができる。従って、充電時間を短縮して初期点検に要する時間を短縮し、ガス警報器の設置に要する時間をさらに短縮することができる。
【0040】
さらに、初期点検の終了後に、ガスセンサ2の出力が第1閾値以上となった際にスピーカ3に警報を発生させる、即ち、警報用の閾値と初期点検開始用の閾値とを一致させることにより、制御を簡単化することができる。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0042】
例えば、前記実施形態では、スイッチ部5が接続状態となってセンサ本体21に充電が開始されてから安定時間内にガスセンサ2の出力が第1閾値よりも低くならない場合にスピーカ3に警報を発生させるものとしたが、このときに発生する警報は、通常使用時のガス警報器1においてガス濃度が高くなった際の警報とは異なるものであってもよく、例えば初期点検に失敗した旨のメッセージを発生してもよいし、ガスセンサ2の故障の可能性とガス漏れの可能性とを伝えるメッセージを発生してもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、初期点検においてガスセンサ2における断線及び短絡を検出するものとしたが、初期点検においてガスセンサ2の動作点検(出力が警報用の閾値を超えられるか否か)やスピーカ3の動作点検(警報音を発生可能か否か)等を実施してもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、初期点検時の方が通常点検時よりも充電手段61による充電時間が短いものとしたが、各点検時の充電時間は必要な検出精度に応じて適宜に設定されていればよく、例えば初期点検時と通常点検時とで充電時間が同等であってもよい。初期点検時と通常点検時とで充電時間が同等である場合、充電手段61が充電時間を可変に構成されていなくてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、初期点検の終了後に、ガスセンサ2の出力が第1閾値以上となった際にスピーカ3に警報を発生させるものとしたが、初期点検用の閾値である第1閾値と、警報用の閾値と、は互いに異なる値に設定されていてもよい。
【0046】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 ガス警報器
2 ガスセンサ
3 スピーカ(警報手段)
4 電池(電源部)
5 スイッチ部
6 点検手段
7 制御手段
21 センサ本体
61 充電手段
図1
図2
図3
図4