特許第6594708号(P6594708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594708
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   B60K20/02 E
   B60K20/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-168237(P2015-168237)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-43258(P2017-43258A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年4月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】牧村 宗年
(72)【発明者】
【氏名】石田 篤史
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522116(JP,A)
【文献】 特開2008−254692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されてシフト位置が変更されるシフト体と、
前記シフト体が回動可能に支持されるハウジングと、
前記シフト体に支持され、前記シフト体に付勢力を作用させると共に、前記シフト体に対し付勢方向に交差する方向に変位可能にされる付勢手段と、
前記ハウジングに移動不能に設けられる保持部材と、
前記保持部材に設けられ、前記付勢手段が配置されることで前記シフト体がシフト位置に保持される保持路と、
前記保持部材に設けられ、前記付勢手段が前記保持路から移動されることで前記シフト体のシフト位置への保持が解除される解除路と、
所定の機会に前記付勢手段を移動させることで前記付勢手段が前記保持路から前記解除路に前記シフト体に対し変位されて前記解除路において前記シフト体と共に移動された後に前記解除路から前記保持路に前記シフト体に対し変位されて前記シフト体のシフト位置が変更される変更手段と、
を備えたシフト装置。
【請求項2】
操作されてシフト位置が変更されるシフト体と、
前記シフト体に付勢力を作用させる付勢手段と、
凹状の保持部が複数設けられ、前記付勢手段が前記保持部に配置されることで前記シフト体がシフト位置に保持される保持路と、
前記保持部の底面と面一にされて前記保持部の底面から滑らかに連続される解除面が設けられ、前記付勢手段が前記保持部から前記解除面に移動されることで前記シフト体のシフト位置への保持が解除される解除路と、
所定の機会に前記付勢手段と前記保持路及び前記解除路との少なくとも一方を移動させることで前記付勢手段が前記保持部から前記解除面に移動されて前記解除面において移動された後に前記解除面から前記保持部に移動されて前記シフト体のシフト位置が変更される変更手段と、
を備えたシフト装置。
【請求項3】
前記変更手段に設けられ、付勢力により前記付勢手段を前記保持路から前記解除路に移動させる解除付勢手段を備えた請求項1又は請求項2記載のシフト装置。
【請求項4】
前記保持路と前記解除路とを隣接させると共に平行に配置する請求項1〜請求項3の何れか1項記載のシフト装置。
【請求項5】
前記保持路及び前記解除路の少なくとも一方によって移動を制限され、前記シフト体に係合されることで前記シフト体の操作が規制されて前記シフト体のシフト位置の変更が規制される規制部材を備えた請求項1〜請求項4の何れか1項記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変更手段によってシフト体のシフト位置が変更されるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の作動装置では、セレクトレバーの係止ピンが係止用案内部材の係止軌道及びチップ軌道の係止凹部に付勢力により配置されて、セレクトレバーのシフト位置が保持される。さらに、所定の機会に、アクチュエータが係止用案内部材を移動させることで、係止ピンが、係止用案内部材の係止凹部から戻り案内軌道に移動されて、戻り案内軌道において移動された後に、戻り案内軌道から他の係止凹部に移動されて、セレクトレバーのシフト位置が変更される。
【0003】
ここで、この作動装置では、アクチュエータが係止用案内部材を移動させる。また、係止軌道及びチップ軌道の底面に係止凹部が凹状に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−522116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、所定の機会にシフト体のシフト位置を容易に変更できるシフト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のシフト装置は、操作されてシフト位置が変更されるシフト体と、前記シフト体に付勢力を作用させる付勢手段と、前記付勢手段が配置されることで前記シフト体がシフト位置に保持される保持路と、前記付勢手段が前記保持路から移動されることで前記シフト体のシフト位置への保持が解除される解除路と、前記付勢手段を移動可能にされ、所定の機会に前記付勢手段が前記保持路から前記解除路に移動されて前記解除路において移動された後に前記解除路から前記保持路に移動されて前記シフト体のシフト位置が変更される変更手段と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載のシフト装置は、操作されてシフト位置が変更されるシフト体と、前記シフト体に付勢力を作用させる付勢手段と、凹状の保持部が複数設けられ、前記付勢手段が前記保持部に配置されることで前記シフト体がシフト位置に保持される保持路と、前記保持部の底面から滑らかに連続される解除面が設けられ、前記付勢手段が前記保持部から前記解除面に移動されることで前記シフト体のシフト位置への保持が解除される解除路と、所定の機会に前記付勢手段と前記保持路及び前記解除路との少なくとも一方を移動させることで前記付勢手段が前記保持部から前記解除面に移動されて前記解除面において移動された後に前記解除面から前記保持部に移動されて前記シフト体のシフト位置が変更される変更手段と、を備えている。
【0008】
請求項3に記載のシフト装置は、請求項1又は請求項2に記載のシフト装置において、前記変更手段に設けられ、付勢力により前記付勢手段を前記保持路から前記解除路に移動させる解除付勢手段を備えている。
【0009】
請求項4に記載のシフト装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のシフト装置において、前記保持路と前記解除路とを隣接させると共に平行に配置する。
【0010】
請求項5に記載のシフト装置は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のシフト装置において、前記保持路及び前記解除路の少なくとも一方によって移動を制限され、前記シフト体に係合されることで前記シフト体の操作が規制されて前記シフト体のシフト位置の変更が規制される規制部材を備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のシフト装置では、シフト体が操作されて、シフト体のシフト位置が変更される。さらに、付勢手段がシフト体に付勢力を作用させており、付勢手段が保持路に配置されることで、シフト体がシフト位置に保持される。
【0012】
また、付勢手段が保持路から解除路に移動されることで、シフト体のシフト位置への保持が解除される。
【0013】
ここで、所定の機会に、変更手段が付勢手段を移動させることで、付勢手段が、保持路から解除路に移動されて、解除路において移動された後に、解除路から保持路に移動されて、シフト体のシフト位置が変更される。
【0014】
このため、変更手段が付勢手段を移動させればよく、シフト体のシフト位置を容易に変更できる。
【0015】
請求項2に記載のシフト装置では、シフト体が操作されて、シフト体のシフト位置が変更される。さらに、付勢手段がシフト体に付勢力を作用させており、付勢手段が保持路の保持部に配置されることで、シフト体がシフト位置に保持される。
【0016】
また、付勢手段が保持部から解除路の解除面に移動されることで、シフト体のシフト位置への保持が解除される。
【0017】
さらに、所定の機会に、変更手段が付勢手段と保持路及び解除路との少なくとも一方を移動させることで、付勢手段が、保持部から解除面に移動されて、解除面において移動された後に、解除面から保持部に移動されて、シフト体のシフト位置が変更される。
【0018】
ここで、解除面が保持部の底面から滑らかに連続されている。このため、付勢手段が保持部から解除面に容易に移動でき、シフト体のシフト位置を容易に変更できる。
【0019】
請求項3に記載のシフト装置では、変更手段に解除付勢手段が設けられており、解除付勢手段が付勢力により付勢手段を保持路から解除路に移動させる。このため、付勢手段を保持路から解除路に移動させる構成を簡単にできる。
【0020】
請求項4に記載のシフト装置では、保持路と解除路とが隣接されると共に平行に配置される。このため、付勢手段の保持路と解除路との間及び解除路での移動量を小さくでき、シフト体のシフト位置を一層容易に変更できる。
【0021】
請求項5に記載のシフト装置では、規制部材がシフト体に係合されることで、シフト体の操作が規制されて、シフト体のシフト位置の変更が規制される。
【0022】
ここで、規制部材が保持路及び解除路の少なくとも一方によって移動を制限される。このため、規制部材がシフト体に係合された際に、シフト体の操作を効果的に規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「P」位置に配置される際を示す右斜め後方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「D」位置に配置される際を示す右斜め後方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「P」位置に復帰される第1段階を示す右斜め後方から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「P」位置に復帰される第2段階を示す右斜め後方から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「P」位置に復帰される第3段階を示す右斜め後方から見た斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「P」位置に配置される際を示す左方から見た側面図である。
図7】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「P」位置に対し回動操作される際を示す左方から見た側面図である。
図8】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「D」位置に対し回動操作される際を示す左方から見た側面図である。
図9】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置においてシフトレバーが「D」位置に配置される際を示す左方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、本発明の実施形態に係るシフト装置としてのシフトレバー装置10が右斜め後方から見た斜視図にて示されており、図6には、シフトレバー装置10が左方から見た側面図にて示されている。なお、図面では、シフトレバー装置10の前方を矢印FRで示し、シフトレバー装置10の右方を矢印RHで示し、シフトレバー装置10の上方を矢印UPで示す。
【0025】
本実施形態に係るシフトレバー装置10は、所謂ストレート式のものにされている。シフトレバー装置10は、フロア式のものにされて、車両(自動車)の運転席(図示省略)の車幅方向内側における車室の床部(車体側)に設置されており、シフトレバー装置10の前方、右方及び上方は、それぞれ車両の前方、右方及び上方に向けられている。
【0026】
図1及び図6に示す如く、シフトレバー装置10には、支持体としての樹脂製で略直方体形箱状のハウジング12(プレート)が設けられており、ハウジング12が車室の床部に固定されて、シフトレバー装置10が車室の床部に設置されている。
【0027】
ハウジング12内には、シフト体としての略長尺棒状のシフトレバー14が配置されており、シフトレバー14の上下方向中間部の左面及び右面には、円柱状の支持軸14Aが同軸上に設けられている。シフトレバー14は、一対の支持軸14Aにおいて、ハウジング12内に回動可能に支持されており、シフトレバー14は、ハウジング12から上側に延出されている。シフトレバー14の上端部(先端部)には、把持部としてのノブ(図示省略)が設けられており、シフトレバー14は、車両の乗員(特に運転手)によってノブが把持された状態で前後方向に回動操作可能にされている。これにより、シフトレバー14が、前側から後側に向けて、シフト位置としての「P」位置(パーキング位置、所定シフト位置)、「R」位置(リバース位置)、「N」位置(ニュートラル位置)、「D」位置(ドライブ位置)及び「L」位置(ロー位置)に回動可能にされている。ノブには、操作部としてのボタン(図示省略)が設けられており、ボタンは、乗員によって操作可能にされている。
【0028】
シフトレバー14の上下方向中間部には、付勢手段としての略正面視逆三角形板状の付勢リンク16の上端が支持されており、付勢リンク16は、シフトレバー14の右側に配置されている。付勢リンク16は、シフトレバー14と一体に前後方向に回動可能にされており、付勢リンク16は、シフトレバー14に対し左右方向に回動可能にされている。シフトレバー14と付勢リンク16との間には、変更手段を構成する解除付勢手段としての変更スプリング(捩りコイルスプリング、図示省略)が掛渡されており、変更スプリングは、付勢リンク16をシフトレバー14に対し右側に付勢している。
【0029】
付勢リンク16の下端部には、付勢部材としての略円柱状の節度ピン16Aが支持されており、節度ピン16Aは、付勢リンク16に対し軸方向(略上下方向)に移動可能にされている。節度ピン16Aは、付勢リンク16から下側に突出されており、節度ピン16Aの下端面は、球面状に湾曲されている。節度ピン16Aと付勢リンク16との間には、保持付勢手段としての節度スプリング(圧縮コイルスプリング、図示省略)が掛渡されており、節度スプリングは、節度ピン16Aを付勢リンク16に対し下側に付勢している。
【0030】
ハウジング12内には、節度ピン16Aの下側において、保持部材としての略直方体状の節度ブロック18が一体に設けられており、節度ブロック18は、前後方向において長尺にされている。節度ブロック18の上面には、左側において、保持路20(節度路)が設けられており、保持路20は、前後方向において長尺にされている。保持路20には、保持部としての断面逆台形状の凹部20Aが複数(本実施形態では5個)設けられており、複数の凹部20Aは、前後方向に並べられると共に、それぞれ上側及び右側に開放されている。節度ブロック18の上面には、右側において、解除路22が設けられており、解除路22は、前後方向において長尺にされると共に、下面(底面)が解除面22Aにされている。解除面22Aは、保持路20の凹部20Aの下面(底面)と面一されて、凹部20Aの下面と滑らかに接続されており、凹部20Aの下面及び解除面22Aは、右方へ向かうに従い上方へ向かう方向に滑らかに傾斜されると共に、後方へ向かうに従い下方へ向かう方向に滑らかに傾斜されている。
【0031】
ハウジング12内には、シフトレバー14及び付勢リンク16の前側において、変更手段を構成する変更機構24が設けられている。変更機構24には、変更駆動手段としての変更モータ26が設けられており、変更モータ26は、ハウジング12内に固定されている。変更モータ26の出力軸には、変更伝達手段を構成する変更ウォーム28が同軸上に固定されており、変更ウォーム28には、変更伝達手段を構成する変更ウォームホイール30が噛合されている。変更ウォームホイール30には、変更伝達手段を構成する変更ネジ32が同軸上に固定されており、変更ネジ32は、ハウジング12内に回転可能に支持されている。変更ネジ32は、変更ウォームホイール30から後方に延出されており、変更ネジ32は、変更部材としての断面L字形板状の変更バー34の前側部分に螺合かつ貫通されている。変更バー34は、ハウジング12内において変更ネジ32を中心とした回動を制限されており、変更バー34は、前後方向に移動可能にされている。変更バー34の後側部分は、前後方向に延伸されると共に、付勢リンク16の右側に配置されており、変更バー34の後側部分は、変更スプリングの付勢力による付勢リンク16の右側への回動を制限している。
【0032】
このため、付勢リンク16の節度ピン16Aが節度ブロック18の保持路20に配置されており、シフトレバー14が各シフト位置に配置される際には、節度ピン16Aが節度スプリングの付勢力により保持路20の凹部20Aに配置されて、シフトレバー14が各シフト位置に保持される。また、シフトレバー14が回動操作される際には、節度ピン16Aが節度スプリングの付勢力に抗して凹部20Aから離脱されると共に、節度ピン16Aが節度スプリングの付勢力により凹部20Aに挿入されることで、シフトレバー14の回動操作に節度感が作用される。
【0033】
シフトレバー14の下端には、規制部としてのディテント溝36が形成されており、ディテント溝36は、前後方向において所定の凹凸が形成されると共に、下側及び左右方向両側に開放されている。
【0034】
ハウジング12内には、シフトレバー14の下側において、規制手段を構成する規制機構38が設けられている。規制機構38には、規制駆動手段としての規制モータ40が設けられており、規制モータ40は、ハウジング12内に固定されている。規制モータ40の出力軸には、規制伝達手段を構成する規制ウォーム42が同軸上に固定されており、規制ウォーム42には、規制伝達手段を構成する規制ウォームホイール44が噛合されている。規制ウォームホイール44には、規制伝達手段を構成する規制ネジ46が同軸上に固定されており、規制ネジ46は、ハウジング12内に回転可能に支持されている。規制ネジ46は、規制ウォームホイール44から上方に延出されており、規制ネジ46は、支持部材としての略筒状の規制筒48内に螺合されている。規制筒48には、規制部材としての略矩形板状のディテントピン50が支持されており、ディテントピン50は、規制筒48から上方に延出されると共に、前後方向に垂直に配置されている。ディテントピン50は、節度ブロック18の左側において、ハウジング12内に前後方向両側から支持されており、これにより、規制筒48及びディテントピン50の規制ネジ46を中心とした回動が制限されている。ディテントピン50は、規制筒48に対し上下方向に移動可能にされており、規制筒48とディテントピン50との間には、規制付勢手段としての規制スプリング52(コイルスプリング)が掛渡されている。ディテントピン50は、圧縮された規制スプリング52の付勢力によりシフトレバー14のディテント溝36に係合されており、これにより、シフトレバー14の「P」位置から「R」位置への回動が規制(ロック)されると共に、シフトレバー14の特定のシフト位置からの特定の回動(「D」位置から「L」位置への回動、「D」位置から「N」位置への回動、「N」位置から「R」位置への回動及び「R」位置から「P」位置への回動)が規制(ロック)される。
【0035】
シフトレバー14は、車両の制御装置54に電気的に接続されており、制御装置54には、車両のトランスミッション56(自動変速機)が電気的に接続されている。これにより、シフトレバー14のシフト位置が「P」位置、「R」位置、「N」位置、「D」位置及び「L」位置に変更されることで、それぞれ制御装置54の制御によりトランスミッション56のシフトレンジが「P」レンジ(パーキングレンジ、所定レンジ)、「R」レンジ(リバースレンジ)、「N」レンジ(ニュートラルレンジ)、「D」レンジ(ドライブレンジ)及び「L」レンジ(ローレンジ)に変更される。
【0036】
制御装置54には、変更モータ26及び規制モータ40が電気的に接続されており、制御装置54には、シフトレバー14のボタンが電気的に接続されている。制御装置54には、車両のブレーキ58が電気的に接続されており、ブレーキ58は、乗員によって操作されることで、車両が制動される。
【0037】
制御装置54には、車両のエンジン60及び変更操作部としてのスイッチ62(エンジンスタートストップスイッチ)が電気的に接続されており、スイッチ62は、乗員によって操作可能にされている。エンジン60が停止された状態で、スイッチ62が操作された際には、制御装置54の制御によりエンジン60が始動される。一方、エンジン60が駆動された状態で、スイッチ62が操作された際には、制御装置54の制御によりエンジン60が停止される。
【0038】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0039】
以上の構成のシフトレバー装置10では、スイッチ62が操作されて、制御装置54の制御によりエンジン60が始動された際に、シフトレバー14が「P」位置に配置されてトランスミッション56が「P」レンジに配置されると共に、付勢リンク16の節度ピン16Aが節度スプリングの付勢力により節度ブロック18の保持路20の凹部20Aに配置されている。
【0040】
シフトレバー14が「P」位置に配置された状態で、ブレーキ58が操作されない際及びシフトレバー14(ノブ)のボタンが操作されない際の少なくとも一方の際には、図1及び図6に示す如く、ディテントピン50が圧縮された規制スプリング52の付勢力によりシフトレバー14のディテント溝36に係合されている。このため、シフトレバー14の「P」位置からの回動操作が規制される。
【0041】
一方、シフトレバー14が「P」位置に配置された状態で、ブレーキ58が操作されると共にシフトレバー14のボタンが操作された際には、図7に示す如く、規制機構38において、制御装置54の制御により規制モータ40が正駆動されて、規制ウォーム42、規制ウォームホイール44及び規制ネジ46が正回転されることで、規制筒48が下側に移動されると共に規制スプリング52の圧縮が解除されて、ディテントピン50が下側に移動される。このため、ディテントピン50のディテント溝36への係合が解除されることで、シフトレバー14の「P」位置からの回動操作が許可される。これにより、例えば図8に示す如く、シフトレバー14が「P」位置から回動操作されることで、シフトレバー14のシフト位置が「P」位置から変更されて、制御装置54の制御によりトランスミッション56のシフトレンジが「P」レンジから変更される。
【0042】
シフトレバー14が回動操作される際には、付勢リンク16の節度ピン16Aが節度スプリングの付勢力に抗して節度ブロック18の保持路20の凹部20Aから離脱されると共に、節度ピン16Aが節度スプリングの付勢力により凹部20Aに挿入されることで、シフトレバー14の回動操作に節度感が作用される。さらに、シフトレバー14が各シフト位置に配置される際には、節度ピン16Aが節度スプリングの付勢力により凹部20Aに配置されて、シフトレバー14が各シフト位置に保持される。
【0043】
また、シフトレバー14が各シフト位置に配置された状態で、シフトレバー14のボタンの操作が解除された際には、制御装置54の制御により規制モータ40が逆駆動されて、規制ウォーム42、規制ウォームホイール44及び規制ネジ46が逆回転されることで、規制筒48及びディテントピン50が上側に移動されて、規制スプリング52が圧縮されつつディテントピン50がディテント溝36に係合される。
【0044】
シフトレバー14が「P」位置以外の特定のシフト位置に配置された状態で、シフトレバー14のボタンが操作されない際には、例えば図2及び図9に示す如く、ディテントピン50が圧縮された規制スプリング52の付勢力によりシフトレバー14のディテント溝36に係合されている。このため、シフトレバー14の特定のシフト位置からの特定の回動操作が規制される。
【0045】
一方、シフトレバー14が「P」位置以外の特定のシフト位置に配置された状態で、シフトレバー14のボタンが操作された際には、例えば図8に示す如く、制御装置54の制御により規制モータ40が正駆動されて、規制ウォーム42、規制ウォームホイール44及び規制ネジ46が正回転されることで、規制筒48が下側に移動されると共に規制スプリング52の圧縮が解除されて、ディテントピン50が下側に移動される。このため、ディテントピン50のディテント溝36への係合が解除されることで、シフトレバー14の特定のシフト位置からの特定の回動操作が許可される。これにより、シフトレバー14が特定のシフト位置から特定の回動操作をされることで、シフトレバー14のシフト位置が特定のシフト位置から変更されて、制御装置54の制御によりトランスミッション56のシフトレンジが特定のシフトレンジから変更される。
【0046】
ところで、シフトレバー14が「P」位置以外のシフト位置に配置された状態で、スイッチ62が操作されて、制御装置54の制御によりエンジン60が停止された際(所定の機会)には、制御装置54の制御によりトランスミッション56のシフトレンジが「P」レンジに変更される。
【0047】
この際には、例えば図3及び図8に示す如く、制御装置54の制御により規制モータ40が正駆動されて、規制ウォーム42、規制ウォームホイール44及び規制ネジ46が正回転されることで、規制筒48が下側に移動されると共に規制スプリング52の圧縮が解除されて、ディテントピン50が下側に移動される。このため、ディテントピン50のディテント溝36への係合が解除されることで、シフトレバー14の「P」位置以外のシフト位置からの回動が許可される。
【0048】
さらに、変更機構24において、制御装置54の制御により変更モータ26が正駆動されて、変更ウォーム28、変更ウォームホイール30及び変更ネジ32が正回転されることで、変更バー34が前側に移動されて、変更バー34の後側部分の付勢リンク16右側への配置が解除される。このため、例えば図4に示す如く、変更スプリングの付勢力により付勢リンク16が右側に回動されることで、付勢リンク16の節度ピン16Aが節度ブロック18の保持路20の凹部20Aから解除路22の解除面22Aに移動される。これにより、図5に示す如く、節度ピン16Aが節度スプリングの付勢力により解除面22Aを後側に移動されることで、付勢リンク16が後側に回動されて、シフトレバー14が付勢リンク16と一体に前側に「P」位置まで回動される。
【0049】
その後、図7に示す如く、制御装置54の制御により変更モータ26が逆駆動されて、変更ウォーム28、変更ウォームホイール30及び変更ネジ32が逆回転されることで、変更バー34が後側に移動されて、変更バー34の後側部分が付勢リンク16の右側に配置される。このため、変更バー34の後側部分により変更スプリングの付勢力に抗して付勢リンク16が左側に回動されることで、付勢リンク16の節度ピン16Aが節度ブロック18の解除路22の解除面22Aから保持路20の凹部20Aに移動される。
【0050】
さらに、図1及び図6に示す如く、制御装置54の制御により規制モータ40が逆駆動されて、規制ウォーム42、規制ウォームホイール44及び規制ネジ46が逆回転されることで、規制筒48及びディテントピン50が上側に移動されて、規制スプリング52が圧縮されつつディテントピン50がディテント溝36に係合される。
【0051】
これにより、シフトレバー14が「P」位置以外のシフト位置に配置された状態で、スイッチ62が操作されて、エンジン60が停止された際(トランスミッション56のシフトレンジが「P」レンジに変更された際)でも、シフトレバー14のシフト位置を自動的に「P」位置に復帰(変更)できて、シフトレバー14のシフト位置とトランスミッション56のシフトレンジとを一致させることができる。
【0052】
ここで、シフトレバー14のシフト位置が自動的に「P」位置に復帰される際には、変更機構24、変更スプリング及び節度スプリングがシフトレバー14及び付勢リンク16を移動させる。このため、節度ブロック18を移動可能にした構成にして節度ブロック18を移動させる場合とは異なり、シフトレバー14のシフト位置を「P」位置に容易に復帰させることができる。しかも、節度ブロック18を移動させるスペースを設ける必要をなくすことができ、シフトレバー装置10を小型化できる。
【0053】
さらに、節度ブロック18では、解除路22の解除面22Aが保持路20の凹部20Aの下面から滑らかに連続されている。このため、シフトレバー14のシフト位置が自動的に「P」位置に復帰される際には、付勢リンク16の節度ピン16Aが凹部20Aの下面から解除面22Aに容易に移動でき、シフトレバー14のシフト位置を「P」位置に一層容易に復帰させることができる。
【0054】
また、シフトレバー14のシフト位置が自動的に「P」位置に復帰される際には、変更スプリングの付勢力により付勢リンク16の節度ピン16Aが凹部20Aの下面から解除面22Aに移動される。このため、節度ピン16Aを凹部20Aの下面から解除面22Aに移動させる構成を簡単にできる。しかも、変更機構24が節度ピン16Aを凹部20Aの下面から解除面22Aに移動させる必要をなくすことができ、変更機構24の構成を簡単にできる。
【0055】
さらに、節度ブロック18では、保持路20と解除路22とが隣接されると共に平行に配置されている。このため、シフトレバー14のシフト位置が自動的に「P」位置に復帰される際には、節度ピン16Aの保持路20(凹部20A)と解除路22(解除面22A)との間及び解除路22(解除面22A)での移動量を小さくでき、シフトレバー14のシフト位置を「P」位置に一層容易に復帰させることができる。しかも、保持路20及び解除路22の配置スペースを小さくでき、節度ブロック18を小型化できて、シフトレバー装置10を一層小型化できる。
【0056】
また、ディテントピン50がハウジング12内に前後方向両側から支持されており、ハウジング12内に節度ブロック18(保持路20及び解除路22)が一体に設けられている。このため、ディテントピン50がシフトレバー14のディテント溝36に係合された状態で、シフトレバー14に前後方向への回動操作力が作用される際でも、ディテント溝36を介してディテントピン50に作用される前後方向への移動力(傾動力)がハウジング12内(節度ブロック18を含む)に支持される。これにより、ディテントピン50の前後方向への移動を効果的に制限でき、シフトレバー14の前後方向への回動操作を効果的に規制できる。
【0057】
さらに、シフトレバー14の支持軸14A(回動中心線)からディテント溝36までの寸法がシフトレバー14の支持軸14A(回動中心線)からノブ(回動操作力の作用位置)までの寸法に応じて大きくされている(例えばシフトレバー14の支持軸14Aからノブまでの寸法に比し大きくされている)。このため、ディテントピン50がシフトレバー14のディテント溝36に係合された状態で、シフトレバー14に回動操作力が作用される際でも、ディテントピン50のディテント溝36との間の摩擦力を小さくできて、ディテントピン50を下側に移動させるための荷重を小さくできる。これにより、制御装置54の制御により規制モータ40が正駆動できて、ディテントピン50が下側に移動できることで、ディテントピン50のディテント溝36への係合を解除できて、シフトレバー14の回動操作を許可できる。
【0058】
また、シフトレバー14のノブのボタンが制御装置54に電気的に接続されている。このため、ボタンとディテント溝36又はディテントピン50とを機械的に接続する必要をなくすことができ、ノブに設ける機構の配置スペースを小さくできると共に、当該機構の部品点数を少なくできてノブの部品費及び組付費を低減できる。
【0059】
なお、本実施形態では、シフトレバー14のシフト位置を自動的に「P」位置に復帰させる際にシフトレバー14及び付勢リンク16を移動させた。しかしながら、シフトレバー14のシフト位置を自動的に「P」位置に復帰させる際に節度ブロック18を移動させてもよい。
【0060】
さらに、本実施形態では、所定の機会にシフトレバー14を自動的に「P」位置に移動させる。しかしながら、所定の機会にシフトレバー14を自動的に「P」位置以外のシフト位置に移動させてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、シフトレバー装置10をフロア式のものにして車室の床部に設置した。しかしながら、シフトレバー装置10を車室のコラムカバーやインストルメントパネルに設置してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 シフトレバー装置(シフト装置)
14 シフトレバー(シフト体)
16 付勢リンク(付勢手段)
20 保持路
20A 凹部(保持部)
22 解除路
22A 解除面
24 変更機構(変更手段)
50 ディテントピン(規制部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9