特許第6594743号(P6594743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594743
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】機能性材保持構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/06 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   E04B9/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-219529(P2015-219529)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-89199(P2017-89199A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
(72)【発明者】
【氏名】西田 和倫
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲一
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−071924(JP,A)
【文献】 特開平05−148942(JP,A)
【文献】 実開昭58−023910(JP,U)
【文献】 米国特許第4375742(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00 − 9/36
E04F 13/08
E04D 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根母屋又は屋根断熱材の室内側に固定される複数の型鋼間に機能性材が配置される機能性材保持構造であって、
機能性材を隣り合う型鋼間に保持する端部支持材は、取付状態において型鋼のウエブに沿う中央縦片部と、型鋼の下フランジに沿う横片部と、該横片部から立ち上がる内側縦片部と、外側縦片部と、該外側縦片部に設けられて型鋼の背面側に配設する機能性材の端部を支持する支持部と、を有し、型鋼の下フランジに対して室内側から取付可能であり、
機能性材の一方の端部を型鋼の下フランジのリップに支持させると共に、他方の端部を前記型鋼の下フランジ側に隣り合う型鋼に取り付けた端部支持材の前記支持部に支持させることにより、機能性材を隣り合う型鋼間に保持し、
前記屋根母屋又は屋根断熱材と前記機能性材との間に浮き上がり防止材を配置してなることを特徴とする機能性材保持構造。
【請求項2】
浮き上がり防止材は、位置規制部を有することを特徴とする請求項1に記載の機能性材保持構造。
【請求項3】
位置規制部は、機能性材の表面に食い込む爪部であることを特徴とする請求項2に記載の機能性材保持構造。
【請求項4】
型鋼を被覆する化粧材を設けていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の機能性材保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の骨組として用いられる鋼材(屋根母屋)などの室内側に配設される断熱材や化粧材、天井板等の機能性材の浮き上がりや変形等を防止し、継続的に天井美観を維持することができる機能性材保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の鉄骨造の建築構造として、勾配を付けて配置したH型鋼等の上に、C型鋼からなる複数の屋根母屋を軒棟方向に平行に固定し、これら屋根母屋の上部に屋根下地材を敷設して取付ける構造が知られている。
一方、特に大型の建築物においては、室内側に屋根母屋を構成する溝形鋼やC型鋼等の屋根下地が、露出することになるため、見栄えが悪くなる。このため、屋根裏の見栄えを向上する目的で、或いは断熱性を向上する目的で、様々な提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、溝形鋼に固定される第1保持部材と、該第1保持部材に取り付ける化粧ホルダーとからなる建材保持部材、及びそれを用いた構造が提案されている。
この特許文献1にて溝形鋼間に保持される建材11a,11bとその上方に配置される野地板6との間には空間が形成されているが、特にその空間に部材は配置されていない。
また、特許文献2には、リップ付き溝型鋼のリップに天井材を引掛け、天井材の端部同士が重合するように配設されている。
この特許文献2にて溝形鋼間に保持される天井板10の上方にも、特に部材は配置されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5561650号公報
【特許文献2】特開2007−239360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように前記特許文献1の構造でも、前記特許文献2の構造でも、建材や天井板の上方空間には、特に部材が配置されていないため、施工当初は平坦状の外観を見せていても、経年の後には、熱や湿度、或いは外力に起因して建材や天井板の浮き上がり(反り返り)が生じ、変形や落下等を引き起こす恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、屋根の骨組として用いられる鋼材(屋根母屋)などを室内側に配設される断熱材や化粧材、天井板等の機能性材の浮き上がりや変形等を防止し、継続的に天井美観を維持することができる機能性材保持構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、屋根母屋又は屋根断熱材の室内側に固定される複数の型鋼間に機能性材が配置される機能性材保持構造であって、機能性材を隣り合う型鋼間に保持する端部支持材は、取付状態において型鋼のウエブに沿う中央縦片部と、型鋼の下フランジに沿う横片部と、該横片部から立ち上がる内側縦片部と、外側縦片部と、該外側縦片部に設けられて型鋼の背面側に配設する機能性材の端部を支持する支持部と、を有し、型鋼の下フランジに対して室内側から取付可能であり、機能性材の一方の端部を型鋼の下フランジのリップに支持させると共に、他方の端部を前記型鋼の下フランジ側に隣り合う型鋼に取り付けた端部支持材の前記支持部に支持させることにより、機能性材を隣り合う型鋼間に保持し、前記屋根母屋又は屋根断熱材と前記機能性材との間に浮き上がり防止材を配置してなることを特徴とする機能性材保持構造(以下、単に保持構造という)を提案するものである
【0008】
また、本発明は、前記保持構造において、浮き上がり防止材は、位置規制部を有することを特徴とする保持構造をも提案する。
特に位置規制部としては、機能性材の表面に食い込む爪部であることが望ましい。
【0010】
また、本発明は、前記保持構造において、型鋼を被覆する化粧材を設けていることを特徴とする保持構造をも提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保持構造は、隣り合う型鋼間に配設される機能性材の経年後の浮き上がりや変形等を防止するものであって、躯体と機能性材との空間に浮き上がり防止材を取り付けたものである。
したがって、この保持構造では、熱や湿度、或いは外力に起因する何らかの応力が加わった際には躯体と機能性材との空間が狭まり、それにより機能性材が外れることがないように浮き上がり防止材を配置するので、機能性材が外れるような浮き上がり(反り返り)を生ずることがない。
また、特定の構成の保持材を用いて機能性材を隣り合う型鋼間に保持しているので、実質的にこの保持材と浮き上がり材とで保持構造を構築でき、部材管理が容易であるし、取付施工もまた極めて容易に行うことができる。
【0012】
また、浮き上がり防止材は位置規制部を有する場合、仮にこの浮き上がり防止材が躯体と機能性材とを隔てる空間の高さ(厚み)より小さくても配設時の傾斜等でずれ動くことがなく、何らかの応力が加わった際には機能性材の所望の位置に上方からの押圧作用を果たすことができる。
特にこの位置規制部が、機能性材の表面に食い込む爪部である場合には、予め容易に機能性材の表面に取り付けておくことができる。
【0014】
また、型鋼を被覆する化粧材を設けている場合には、天井仕上げ材や化粧カバー等の化粧材が下方から型鋼を見えなくすることができるため、天井景観を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)本発明の保持構造の一実施例(第1実施例)を示す断面図、(b)その施工手順を簡略して示す断面図、(c)用いた浮き上がり防止材の拡大正面図である。
図2】(a)本発明の保持構造の他の一実施例(第2実施例)を示す断面図、(b)その施工手順を簡略して示す断面図、(c)用いた浮き上がり防止材の拡大正面図である。
図3】(a)既設のH型鋼を含めた本発明の保持構造の他の一実施例(第3実施例)を示す断面図、(b)既設のH型鋼の長さ方向から見た側面図、(c)より大型のH型鋼の長さ方向から見た側面図である。
図4】(a)保持構造に用いた端部支持材の拡大正面図、(b)化粧材の拡大正面図、(c)押さえ材の拡大正面図、(d)第1実施例のA部の拡大断面図、(e)第3実施例に用いた化粧材(天井支持材)の平面図、(f)その正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、躯体に固定される複数の型鋼間に機能性材が配置される機能性材保持構造であって、前記躯体と前記機能性材との間に浮き上がり防止材を配置してなることを特徴とするものである。
隣り合う型鋼間に機能性材を配置するための構造(構成)については、以下の構成の端部支持材を用いる
前記端部支持材は、取付状態において型鋼のウエブに沿う中央縦片部と、該型鋼の下フランジに沿う横片部と、該横片部から立ち上がる内側縦片部と、外側縦片部と、該外側縦片部に設けられて型鋼の背面側に配設する横片部と、を有する構成であって、それぞれの型鋼に下方から取り付けられるものである。この端部支持材は、型鋼の長さ方向に連続する長尺状でもよいが、後述する図示実施例のようにピース状に形成した部材を適宜間隔にて複数取り付けるようにしてもよい。
なお、この端部支持材は、主として隣り合う型鋼間に配設する機能性材の端部を支持するための部材であるが、後述する図示実施例では、型鋼を被覆する化粧材の型鋼への取付を補助するための部材をも兼ねている。
【0017】
前記浮き上がり防止材は、弾性体であってもなくてもよく、躯体と機能性材とを隔てる空間に配置され、厚み方向に応力が加わった際に厚み方向の幅(高さ)を、機能性材が外れる高さに変化させないものであれば特に限定するものではない。
即ちこの浮き上がり防止材は、前述のように熱や湿度、或いは外力に起因する何らかの応力が加わった際に、躯体と機能性材との空間が狭まり、それにより機能性材が外れることがないように浮き上がり防止材を配置するものであり、この浮き上がり防止材自体は、必ずしも常時躯体と機能性材との間に接する、即ち挟まっていなくてもよい。
したがって、この浮き上がり防止材の厚み方向の寸法は、躯体と機能性材とを隔てる空間の高さ(厚み)より小さくてもよい。
【0018】
このような浮き上がり防止材としては、ピース材が望ましく、例えば塩ビ管等のパイプ材(丸、角)でもよいし、ゴム系外皮や樹脂系外皮の球状体(中空、中実)でもよいし、金属板や硬質樹脂板等を例えば略逆U字状等に成形したものでもよい。また、この浮き上がり防止材は、新たに作成したものに限定されず、異なる用途に生産された製品や端材等を流用するようにしてもよい。なお、従前より、フォーム材等で成形されるバックアップ材が知られているが、このようなバックアップ材を敷設することは実質的に困難であり、また費用面でも、重量面(バックアップ材では機能性材に相当な正荷重が作用する)でも、この浮き上がり防止材は極めて利点が多い。
【0019】
前記浮き上がり防止材をパイプ材や球状体とした場合では、それ自体の高さが、躯体と機能性材とを隔てる空間の高さ(厚み)より小さい場合に転動する等のずれ動きを生じ易いが、異なる用途に生産された製品や端材等を容易に入手できるという利点がある。
前記浮き上がり防止材を板状成形体とした場合は、金属板や硬質樹脂板等の曲げ反発を弾性反発力として利用するものであって、それ自体が比較的軽量であり、また各種の形状への成形を容易に行うことができる。
【0020】
また、前記浮き上がり防止材は、位置規制部を有することが望ましい。特に浮き上がり防止材の厚み方向の寸法が、躯体と機能性材とを隔てる空間の高さ(厚み)より小さい場合には、何らかの位置規制が存在しなければ浮き上がり防止材がずれ動き易い。
この位置規制部は、機能性材の所望の箇所に浮き上がり防止材を保持するための構成であり、例えばくさび状の位置規制部を設け、機能性材の所望の箇所に前記くさび状の位置規制部が嵌合する受部を設けておけばよく、これらの構成は特に限定するものではなくどのように形成してもよい。
なお、同じ位置規制の目的で、両面テープ等を用いるようにしてもよい。
【0022】
前記中央縦片部は、前述のように取付状態において型鋼のウエブに沿うものであり、後述する図示実施例のように鉛直状の縦片に形成されることが多い。
この中央縦片部には、この端部支持材の配設以前に取り付けている押さえ材に係合等により取付可能な係止部を設けていることが望ましい。なお、この係止部としては、後述する図示実施例では、押さえ材に孔状に形成した係止受部に対して外側へ隆起する隆状係止部としたが、特にその構成を限定するものではない。
【0023】
前記横片部は、前述のように中央縦片部の下端から左右に延在するものであり、後述する図示実施例のように水平状の横片に形成されることが多い。この横片部には、下方からビス止めすることにより、型鋼の下フランジにこの端部支持材を強固に固定することができ、この横片部に前記天井仕上げ材の固定用横片部を沿わせて下方からビス止めすることにより、端部支持材の横片部に前記天井支持材を強固に固定することができる。
【0024】
なお、前述のようにこの端部支持材が機能性材を隣り合う型鋼間に保持する場合には、型鋼としてリップを備えるC型鋼、リップZ型鋼を用いることが望ましく、該型鋼のリップの先端に機能性材の一方の端部を支持させることができ、他方の端部を端部支持材(保持材)で支持する構成となる。
【0025】
横片部の下フランジ側への延在部分には内側縦片部が形成されることが望ましく、逆方向の延在部分には型鋼の下フランジの背面側に配設する機能性材の端部を支持する支持部が上端に設けられる外側縦片部が形成されることが望ましい。
【0026】
前記内側縦片部は、前述のように前記横片部の下フランジ側への延在部分から立ち上がる縦片を指し、より具体的には取付状態において型鋼の下フランジのリップに沿う規制片や上端が型鋼の下フランジのリップより低い係止部が含まれるが、これらを必須とするものではなく、何れか一方のみが形成されるものでもよい。
【0027】
前記支持部は、前述のように前記横片部の下フランジ側とは逆方向の延在部分から立ち上がる外側縦片部に設けられて、型鋼の背面側に配設する機能性材の端部を支持するものであって、一方の端部を支持する型鋼の下フランジのリップ上端と支持高さを略同一とすることが望ましい。
この支持部は、後述する図示実施例では、外側への傾斜状縦片の上端に設けられているが、特にその構成を限定するものではない。また、この支持部の下方には、前記天井仕上げ材や化粧カバーを嵌合状に取り付けるための取付部位として、外方が開放する嵌合溝を形成しているが、特にその構成を限定するものではない。
【0028】
前記内側縦片部の一つである規制片は、取付状態において型鋼の下フランジのリップ(の外側)に沿うものであって、前記中央縦片部と前記横片部とこの規制片とで上方が開放する略U字状が形成される。そのため、この端部支持材を、型鋼の下フランジに対して下方から嵌合状に仮止めすることができ、前記横片部の下方からのビス止め作業を安定に行うことができる。
【0029】
前記内側縦片部の一つである係止部は、上端が型鋼の下フランジのリップより低く形成されることが望ましい。
この係止部は、後述する図示実施例では、外側への傾斜状縦片の上端を内側上方へ折り曲げた形状に形成され、前記支持部が形成される傾斜状縦片と左右対称状に形成されているが、特にその構成を限定するものではない。即ちこの係止部は、天井仕上げ材や化粧カバーの取付部位として用いるものであって、上端が型鋼の下フランジのリップより低く形成されために、リップの上端に支持させる機能性材に干渉を受けずに天井仕上げ材や化粧カバーを係止させることができる。
【0030】
次に、前記端部支持材を取り付ける本発明に用いる型鋼について説明する。
前記型鋼は、少なくともウエブ、下フランジを有するものであればよく、具体的には左右両方に下フランジを備えるH型鋼、I型鋼、左右の何れか一方のみに下フランジを備える溝型鋼、Z型鋼、L型鋼、更に下フランジの先端に上向き片を有するC型鋼(=リップ溝型鋼)、リップZ型鋼等が相当する。
上記型鋼の中でも、リップを有するC型鋼、リップZ型鋼が望ましい。なお、これらの型鋼は、下フランジが同一方向に延在するように配設して母屋を形成するが、一部にはこの型鋼同士を背中合わせに接続して用いるようにしてもよい。
【0031】
続いて、前記端部支持材にて型枠間に保持される機能性材について説明する。
前記機能性材は、グラスウール、発泡樹脂等からなるマット状又はボード状等の断熱材、吸音材、防火材、或いは各種素材を用いることができ、単一材質からなるものでも、異材質の積層体であっても良く、さらには硬質でも軟質であっても良く、その厚みについても適宜設定すればよい。
また、この機能性材の端部についても、その表面から略垂直状に断裁したものに限らず、例えば端部を、下面側を切り欠いた段状に形成してもよい。
【0032】
前記機能性材のより安定な保持を目的として押さえ材を用いてもよく、この押さえ材は、型鋼のウエブに沿う縦片部と、該縦片部から下方へ延在する押さえ片とを備える構成である。
この押さえ材としては、前記縦片部の上端に型鋼の上フランジに掛止する掛止部を備えることが望ましい。この掛止部は、側方から前記縦片部にビスを打ち込んでこの押さえ材を型鋼に固定する際の仮止めとして利用することができる。
【0033】
前記縦片部は、型鋼のウエブに沿う略垂直状の縦片であって、前記端部支持材の中央縦片部に設けた係止部を取り付け可能な係止受部を設けていることが望ましい。なお、この係止受部としては、孔状に形成し、前記端部支持材の中央縦片部に設けた隆状係止部を係止できる構成としたが、特にその構成を限定するものではない。
【0034】
前記押さえ片は、前記縦片部から下方へ延在して機能性材の表面に臨むものであって、機能性材の表面を押さえ保持するものである。この押さえ片の形状については特に限定するものではなく、機能性材の表面に当接してもよいし、当接していなくてもよい。即ち常に機能性材の端部表面を上方から圧接している態様に限定されず、何らかの負荷が掛かった際には端部を押さえる態様を含むものであるが、取付安定性を考慮した場合には、機能性材の端部を継続的に且つ弾性的に上方から押さえることが望ましいことは説明するまでもない。
【0035】
また、前記型鋼を下方から被覆する化粧材について説明する。
この化粧材は、型鋼を覆う「化粧カバー」と、型鋼と機能性材を覆う「天井仕上げ材」とがあり、何れも化粧面部を有するものであって、型鋼の長さ方向に連続する長尺状に形成される。化粧カバーを用いる場合には、機能性材としては天井板や化粧板等の建材板を用いることが多く、天井仕上げ材を用いる場合には、機能性材自体を隠すので、前記建材板を含めて各種の断熱材等を用いることができる。また、この化粧材としては、型鋼毎に取り付けるものでもよいし、隣り合う型鋼間に跨るように取り付けるものでもよい。
なお、これらの化粧材には、型鋼と後述する端縁支持材との取付を補助(強化)する構成を具備させてもよい。
【実施例1】
【0036】
図1(a)に示す本発明の第1実施例の保持構造は、躯体6に固定される複数の型鋼4,4間に機能性材5が配置される構造であって、前記躯体6と前記機能性材5との間の略中央に、厚み方向に弾性変形することができる浮き上がり防止材9を配置してなる構成である。
【0037】
この保持構造に用いられる浮き上がり防止材9は、図1(c)に示すように金属板を略逆U字状に成形されたものであり、上方へ凸状の曲面部91の一方(図面では右方)の側端を折返し状に屈曲して当接部92とし、他方(図面では左方)の側端を外方へ略水平状に折曲して固定部93とした構成である。
また、前記固定部93には、機能性材5の表面に食い込む爪部が位置規制部931として設けられ、機能性材5の表面と両面テープ9bにて接着すると共に位置規制部(爪部)931の係止が作用するようにしている。
【0038】
この保持構造に用いた隣り合う型鋼4,4間に機能性材5を配置するための構造については、図4(a)に示す端部支持材1を用いている。
この端部支持材1は、取付状態において型鋼4のウエブ42に沿う中央縦片部11と、該型鋼4の下フランジ41に沿う横片部12と、該横片部12から立ち上がる二片の内側縦片部13と、外側縦片部14と、該外側縦片部14の上端に設けられる支持部141と、を有し、型鋼4の下フランジ41に対して室内側から取付可能である。
【0039】
前記中央縦片部11は、前述のように取付状態において型鋼4のウエブ42に沿うものであって、鉛直状の縦片に形成され、外側(図中の左側)へ隆起する隆状係止部111を備えている。
【0040】
また、前記横片部12は、前述のように取付状態において型鋼4の下フランジ41に沿うものであり、前記中央縦片部11の下端から左右方向へ水平状に延在する横片である。この横片部12には、下方からビス止め(ビス1b)することにより、型鋼4の下フランジ41に強固に固定することができる。
この横片部12の下フランジ41側への延在部分には前記内側縦片部13が形成され、背面側、即ち下フランジ41の逆方向の延在部分には前記支持部141が設けられる外側縦片部14が形成される。
【0041】
前記内側縦片部13は、前述のように前記横片部の下フランジ側への延在部分から立ち上がる二片の縦片を指し、より具体的には取付状態において型鋼の下フランジのリップに沿う規制片13Aと、上端が型鋼4の下フランジ41のリップより低い係止部13Bとを指している。
前記規制片13Aは、前記中央縦片部11と前記横片部12とこの規制片13Aとで上方が開放する略U字状を形成するための構成であり、この略U字状を型鋼4の下フランジ41に対して下方から嵌合状に仮止めすることができ、前記横片部12の下方からのビス止め作業を安定に行うことができる。
また、前記係止部13Bは、外側(図中の右側)への傾斜状縦片の上端を内側上方へ折り曲げた形状に形成されている。
【0042】
また、前記支持部141は、前述のように前記横片部12から立ち上がる外側縦片部14の上端に設けられ、型鋼4の下フランジの背面側に配設する機能性材5の端部51yを支持するものであって、一方の端部51xを支持する型鋼4の下フランジ41のリップ411上端と支持高さを略同一としている。
この支持部141は、図示実施例では外側(図中の左側)への傾斜状縦片である外側縦片部14の上端に設けられ、この支持部141の下方には、前記天井支持材7の係合横片721が係合状に取り付ける取付部位として、外方(図中の左方)が開放する嵌合溝142が設けられている。
【0043】
なお、前記係止部13Bと前記支持部141が形成される外側縦片部14とは、左右対称状に形成されているので、前述のように左右略対称状に形成される天井仕上げ材7を前記端部支持材1の下方から容易に嵌合状に取り付けることができる。
【0044】
また、型鋼4は、縦方向に配されるウエブ42の両端(上下端)にフランジ43,41を有するリップ溝型鋼(C型鋼)であって、先端に上向き片411を備える下フランジ41は図面右方へ延在している。
【0045】
また、前記機能性材5は、隣り合う型鋼4,4間に架け渡されるように配設される断熱、吸音、遮音、防耐火等の建築物に求められる各種機能を備えた部材であって、この第1実施例における両端に位置する端部51x,51yは、その表面から略垂直状に断裁されたものである。なお、便宜的に図面上、左端に位置する端部を51x、右方に位置する端部を51yとした。
【0046】
さらに、前記保持構造には、前記機能性材5のより安定な保持を目的として押さえ材2が用いられており、該押さえ材2は、図4(c)に示すように前記型鋼4のウエブ42に沿う縦片部21と、該縦片部21から下方へ延在する押さえ片22とを備える。
この縦片部21の上端には、略水平状に折曲されて型鋼4の上フランジ43に掛合する掛合片23が設けられ、側方から前記縦片部21にビス2bを打ち込んでこの押さえ材2を型鋼4に固定する際の仮止めとして利用できる。なお、前記押さえ片22は、複数の矩形状の切り込みによる切り起こしにて外側へ突出するように複数箇所に形成され、この押さえ片22の下端は取付状態において機能性材5の表面に近接している。また、前記縦片部21の下方には、孔状に形成した係止受部211を設けている。
【0047】
また、前記保持構造には、型鋼4の下フランジ41を覆う化粧材3が用いられている。この化粧材3は、図4(b)に示すように底面である化粧面31の左右が立ち上がる断面略樋状の長尺材であり、この例では左右略対称状に形成される化粧カバーである。
そして、一方の側面(右側面)32には、前記端部支持材1の係止部13Bの上端に係合する係合片321が内向きに設けられ、他方の側面(左側面)33には、前記端部支持材1の横片部12の端縁から立ち上がる縦片14の外側に沿って前記支持部141の下方に設けられる嵌合溝142に側方から係合する係合片331が内向きに設けられ、前記端部支持材1に下方から嵌合状に取り付けることができる。
この化粧材3は、前記機能性材5の支持に関わっていないため、端部支持材1の施工が終わっていれば随時取り付けを行うことができ、施工に支障を生ずるものでもない。
【0048】
これらの端部支持材1及び押さえ材2を用いて前記型鋼4,4間に機能性材5を保持する施工手順は、図1(b)に簡略して示しているが、まず各型鋼4に対して前記押さえ材2を固定する。
この押さえ材2の取付は、図面右側に示すように前記縦片部21を型鋼4のウエブ42に沿わせると共に前記掛止部23を型鋼4の上フランジ43に掛止させた仮止め状態とし、この状態でビス2bを側方(図面の左方)から打ち込んで固定する。
【0049】
次に、図面左側に位置する型鋼4のリップ411に、機能性材5の一方の端部51xを支持させる。
同図では、図面左側の型鋼4には前記端部支持材1や化粧材3が既に取り付けられているが、取り付けていなくても同様であり、機能性材5の一方の端部51xの裏面を型鋼4のウエブ42に支持させる。また、前記浮き上がり防止材9には位置規制部(爪部)931が設けられているので、予め機能性材5の所定箇所に固定しておいても、施工時の傾斜等でずれ動くことがない。
【0050】
続いて、図面右側の型鋼4に対し、機能性材5の他方の端部51yを端部支持材1の支持部141に支持させつつ、機能性材5が略水平状となるように回動(傾動)させると共に端部支持材1を取り付ける。
この端部支持材1は、前述のように前記中央縦片部11と前記横片部12と前記規制片13Aとで上方が開放する略U字状を形成しているので、図中に白抜き矢印で示すように型鋼4の下フランジ41に対して下方から嵌合状に仮止めできる。また、端部支持材1の中央縦片部11には、押さえ材2の縦片部21に形成した孔状の係止受部211に係止する隆状係止部111を有するので、仮止め状態はより安定なものとなる。そして、その後の前記横片部12の下方からのビス止め(ビス1b)作業を安定に行うことができ、機能性材5も略水平状に保たれるものとなる。
【0051】
なお、機能性材5は、略水平状に保たれる状態で保持されるが、両端面が隣り合う型鋼4,4のウエブ42,42に突き合わせ状に保持される。
また、特に機能性材5の一方側の端部51xは、押さえ材2を固定するために用いたビス2bの先端が型鋼4のウエブ42を貫いて機能性材5の表面側に延在しているので、他端側の端部51yにおける押さえ片22と同様に押さえ保持する役割を果たす。
【0052】
その後、取り付けた隣り合う端部支持材1,1に対し、前記化粧材3を下方から嵌合状に取り付ける。
この化粧材3は、前述のように側面32,33に係合片321,331が内向きに設けられているので、前記端部支持材1の係止部13B、嵌合溝142に下方から嵌合状に取り付けることができる。
【0053】
そのため、この保持構造では、熱や湿度、或いは外力に起因する何らかの応力が加わった際には躯体6と機能性材5との空間が狭まり、それにより機能性材5が外れることがないように浮き上がり防止材9が配置されている。
詳しくは、下方からの応力を受けると、曲面部91の頂部が躯体6に当接すると共に曲面部91を左右に拡開する方向へ変形する力を受ける。その際、固定部93は、位置規制部(爪部)931の係止と両面テープ9bの接着とにより固定されているので、当接部92が外方へ滑る(スライドする)ように変形する。このような変形を受けると、その弾性反発にて上方からの押圧が機能性材5に作用するため、下方からの応力が解除されると共に浮き上がり防止材9は、弾性回復して元の形状に戻る。したがって、機能性材5の浮き上がり(反り返り)を生ずることがなく、それによる変形や落下等を引き起こす恐れもない。
【0054】
しかもこの第1実施例では、前記浮き上がり防止材9の押さえ保持効果に加え、機能性材5の一方側の端部51xも他方側の端部51yもそれぞれビス21b、押さえ片22にて押さえ保持する構成としているので、室内側(下方側)から機能性材5を押し上げるような応力が作用した際に該応力に抗する作用は機能性材5の中央部及び両端部にて果たされ、機能性材5の外れや落下等を防ぐ効果は確実に果たされる。
【0055】
また、当該実施例では、前記端部支持材1は、一方の端部51xを型鋼4の下フランジ41のリップ411に支持させた機能性材5の他方の端部51yを支持することにより、機能性材5を隣り合う型鋼4,4間に保持することができ、実質的にこの端部支持材1の一部材のみで隣り合う型鋼間に機能性材を配置する構造を構築できる。
【0056】
また、この端部支持材1にて保持される機能性材5は、その端面を隣り合う型鋼4,4のウエブ42,42に突き合わせ状に配設できる。そのため、断熱性能の弱点部を生ずることもない。
【0057】
図2(a)に示す第2実施例の保持構造は、前記略逆U字状の浮き上がり防止材9に代えて図2(c)に示すパイプ材(中空)の浮き上がり防止材9Bを用いた例である。それ以外の部材及び構成は、前記第1実施例と全く同様であるから図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
この第2実施例の浮き上がり防止材9Bは、前述のようにパイプ材(中空)であるため、図2(b)に示すような施工時の傾斜等に際して機能性材5の表面を動き回ることを防止する位置規制部を設けることが好ましいが、前記構成の位置規制部931は形成できないので、両面テープに相当するような位置規制(材)を設けることが好ましい。
【0059】
図3(a)に示す第3実施例の保持構造は、前記略逆U字状の浮き上がり防止材9を用いる点では前記第1実施例と同様であるが、化粧カバーである化粧材3に代えて天井仕上げ材である化粧材7を型鋼4,4間に跨がるように配設した点が相違する。
【0060】
ここで用いる天井仕上げ材7は、図4(e),(f)に示すように開口部711を備える化粧面部71と、該化粧面部71の左右から内側へ延在して前記端部支持材1の横片部12に沿う固定用横片部72,73とを有し、隣り合う端部支持材1,1間に亘って取り付けられる構成である。また、この図示実施例では、前記固定用横片72,73には、前記端部支持材1に仮止めするためのL字状片(係合横片721,731、縦片722,732)が設けられ、前記化粧面部71と前記固定用横片部72との間には縦片状の当接部74,74が形成されている。
なお、この天井仕上げ材7は、パンチングメタル製の成形板であって、前記開口部711とは、図3(b)に示すように固定用ビス7bを取り付けるための穴を指している。即ちこの天井仕上げ材7には、無数の穴が形成され、大きく下方へ湾曲する化粧面部71を形成しているが、この化粧面部71における固定用ビス7bを取り付ける穴のみを開口部711とするものである。
【0061】
なお、図3(a)は、既設のH型鋼を含めた前記第3実施例の保持構造を示すものであって、図3(b)は、その既設のH型鋼8の長さ方向から見た側面図である。また、図3(c)は、更に大型のH型鋼8'の長さ方向から見た側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 端部支持材
11 中央縦片部
111 隆状係止部
12 横片部
13 縦状部
13A 規制片
13B 係止部
14 傾斜状縦片
141 支持部
2 押さえ材
2b ビス
21 縦片部
211係止受部
22 押さえ片
23 掛合片
3 化粧材(化粧カバー)
31 化粧面
4 型鋼(C型鋼)
41 下フランジ
411 上向き片(リップ)
42 ウエブ
43 上フランジ
431 下向き片(リップ)
5 機能性材
51x,51bx(一方側の)端部
6 躯体(屋根断熱材)
7 化粧材(天井仕上げ材)
71 化粧面部
8,8' H型鋼
9,9C 浮き上がり防止材
931 位置規制部(爪部)
図1
図2
図3
図4