【実施例1】
【0036】
図1(a)に示す本発明の第1実施例の保持構造は、躯体6に固定される複数の型鋼4,4間に機能性材5が配置される構造であって、前記躯体6と前記機能性材5との間の略中央に、厚み方向に弾性変形することができる浮き上がり防止材9を配置してなる構成である。
【0037】
この保持構造に用いられる浮き上がり防止材9は、
図1(c)に示すように金属板を略逆U字状に成形されたものであり、上方へ凸状の曲面部91の一方(図面では右方)の側端を折返し状に屈曲して当接部92とし、他方(図面では左方)の側端を外方へ略水平状に折曲して固定部93とした構成である。
また、前記固定部93には、機能性材5の表面に食い込む爪部が位置規制部931として設けられ、機能性材5の表面と両面テープ9bにて接着すると共に位置規制部(爪部)931の係止が作用するようにしている。
【0038】
この保持構造に用いた隣り合う型鋼4,4間に機能性材5を配置するための構造については、
図4(a)に示す端部支持材1を用いている。
この端部支持材1は、取付状態において型鋼4のウエブ42に沿う中央縦片部11と、該型鋼4の下フランジ41に沿う横片部12と、該横片部12から立ち上がる二片の内側縦片部13と、外側縦片部14と、該外側縦片部14の上端に設けられる支持部141と、を有し、型鋼4の下フランジ41に対して室内側から取付可能である。
【0039】
前記中央縦片部11は、前述のように取付状態において型鋼4のウエブ42に沿うものであって、鉛直状の縦片に形成され、外側(図中の左側)へ隆起する隆状係止部111を備えている。
【0040】
また、前記横片部12は、前述のように取付状態において型鋼4の下フランジ41に沿うものであり、前記中央縦片部11の下端から左右方向へ水平状に延在する横片である。この横片部12には、下方からビス止め(ビス1b)することにより、型鋼4の下フランジ41に強固に固定することができる。
この横片部12の下フランジ41側への延在部分には前記内側縦片部13が形成され、背面側、即ち下フランジ41の逆方向の延在部分には前記支持部141が設けられる外側縦片部14が形成される。
【0041】
前記内側縦片部13は、前述のように前記横片部の下フランジ側への延在部分から立ち上がる二片の縦片を指し、より具体的には取付状態において型鋼の下フランジのリップに沿う規制片13Aと、上端が型鋼4の下フランジ41のリップより低い係止部13Bとを指している。
前記規制片13Aは、前記中央縦片部11と前記横片部12とこの規制片13Aとで上方が開放する略U字状を形成するための構成であり、この略U字状を型鋼4の下フランジ41に対して下方から嵌合状に仮止めすることができ、前記横片部12の下方からのビス止め作業を安定に行うことができる。
また、前記係止部13Bは、外側(図中の右側)への傾斜状縦片の上端を内側上方へ折り曲げた形状に形成されている。
【0042】
また、前記支持部141は、前述のように前記横片部12から立ち上がる外側縦片部14の上端に設けられ、型鋼4の下フランジの背面側に配設する機能性材5の端部51yを支持するものであって、一方の端部51xを支持する型鋼4の下フランジ41のリップ411上端と支持高さを略同一としている。
この支持部141は、図示実施例では外側(図中の左側)への傾斜状縦片である外側縦片部14の上端に設けられ、この支持部141の下方には、前記天井支持材7の係合横片721が係合状に取り付ける取付部位として、外方(図中の左方)が開放する嵌合溝142が設けられている。
【0043】
なお、前記係止部13Bと前記支持部141が形成される外側縦片部14とは、左右対称状に形成されているので、前述のように左右略対称状に形成される天井仕上げ材7を前記端部支持材1の下方から容易に嵌合状に取り付けることができる。
【0044】
また、型鋼4は、縦方向に配されるウエブ42の両端(上下端)にフランジ43,41を有するリップ溝型鋼(C型鋼)であって、先端に上向き片411を備える下フランジ41は図面右方へ延在している。
【0045】
また、前記機能性材5は、隣り合う型鋼4,4間に架け渡されるように配設される断熱、吸音、遮音、防耐火等の建築物に求められる各種機能を備えた部材であって、この第1実施例における両端に位置する端部51x,51yは、その表面から略垂直状に断裁されたものである。なお、便宜的に図面上、左端に位置する端部を51x、右方に位置する端部を51yとした。
【0046】
さらに、前記保持構造には、前記機能性材5のより安定な保持を目的として押さえ材2が用いられており、該押さえ材2は、
図4(c)に示すように前記型鋼4のウエブ42に沿う縦片部21と、該縦片部21から下方へ延在する押さえ片22とを備える。
この縦片部21の上端には、略水平状に折曲されて型鋼4の上フランジ43に掛合する掛合片23が設けられ、側方から前記縦片部21にビス2bを打ち込んでこの押さえ材2を型鋼4に固定する際の仮止めとして利用できる。なお、前記押さえ片22は、複数の矩形状の切り込みによる切り起こしにて外側へ突出するように複数箇所に形成され、この押さえ片22の下端は取付状態において機能性材5の表面に近接している。また、前記縦片部21の下方には、孔状に形成した係止受部211を設けている。
【0047】
また、前記保持構造には、型鋼4の下フランジ41を覆う化粧材3が用いられている。この化粧材3は、
図4(b)に示すように底面である化粧面31の左右が立ち上がる断面略樋状の長尺材であり、この例では左右略対称状に形成される化粧カバーである。
そして、一方の側面(右側面)32には、前記端部支持材1の係止部13Bの上端に係合する係合片321が内向きに設けられ、他方の側面(左側面)33には、前記端部支持材1の横片部12の端縁から立ち上がる縦片14の外側に沿って前記支持部141の下方に設けられる嵌合溝142に側方から係合する係合片331が内向きに設けられ、前記端部支持材1に下方から嵌合状に取り付けることができる。
この化粧材3は、前記機能性材5の支持に関わっていないため、端部支持材1の施工が終わっていれば随時取り付けを行うことができ、施工に支障を生ずるものでもない。
【0048】
これらの端部支持材1及び押さえ材2を用いて前記型鋼4,4間に機能性材5を保持する施工手順は、
図1(b)に簡略して示しているが、まず各型鋼4に対して前記押さえ材2を固定する。
この押さえ材2の取付は、図面右側に示すように前記縦片部21を型鋼4のウエブ42に沿わせると共に前記掛止部23を型鋼4の上フランジ43に掛止させた仮止め状態とし、この状態でビス2bを側方(図面の左方)から打ち込んで固定する。
【0049】
次に、図面左側に位置する型鋼4のリップ411に、機能性材5の一方の端部51xを支持させる。
同図では、図面左側の型鋼4には前記端部支持材1や化粧材3が既に取り付けられているが、取り付けていなくても同様であり、機能性材5の一方の端部51xの裏面を型鋼4のウエブ42に支持させる。また、前記浮き上がり防止材9には位置規制部(爪部)931が設けられているので、予め機能性材5の所定箇所に固定しておいても、施工時の傾斜等でずれ動くことがない。
【0050】
続いて、図面右側の型鋼4に対し、機能性材5の他方の端部51yを端部支持材1の支持部141に支持させつつ、機能性材5が略水平状となるように回動(傾動)させると共に端部支持材1を取り付ける。
この端部支持材1は、前述のように前記中央縦片部11と前記横片部12と前記規制片13Aとで上方が開放する略U字状を形成しているので、図中に白抜き矢印で示すように型鋼4の下フランジ41に対して下方から嵌合状に仮止めできる。また、端部支持材1の中央縦片部11には、押さえ材2の縦片部21に形成した孔状の係止受部211に係止する隆状係止部111を有するので、仮止め状態はより安定なものとなる。そして、その後の前記横片部12の下方からのビス止め(ビス1b)作業を安定に行うことができ、機能性材5も略水平状に保たれるものとなる。
【0051】
なお、機能性材5は、略水平状に保たれる状態で保持されるが、両端面が隣り合う型鋼4,4のウエブ42,42に突き合わせ状に保持される。
また、特に機能性材5の一方側の端部51xは、押さえ材2を固定するために用いたビス2bの先端が型鋼4のウエブ42を貫いて機能性材5の表面側に延在しているので、他端側の端部51yにおける押さえ片22と同様に押さえ保持する役割を果たす。
【0052】
その後、取り付けた隣り合う端部支持材1,1に対し、前記化粧材3を下方から嵌合状に取り付ける。
この化粧材3は、前述のように側面32,33に係合片321,331が内向きに設けられているので、前記端部支持材1の係止部13B、嵌合溝142に下方から嵌合状に取り付けることができる。
【0053】
そのため、この保持構造では、熱や湿度、或いは外力に起因する何らかの応力が加わった際には躯体6と機能性材5との空間が狭まり、それにより機能性材5が外れることがないように浮き上がり防止材9が配置されている。
詳しくは、下方からの応力を受けると、曲面部91の頂部が躯体6に当接すると共に曲面部91を左右に拡開する方向へ変形する力を受ける。その際、固定部93は、位置規制部(爪部)931の係止と両面テープ9bの接着とにより固定されているので、当接部92が外方へ滑る(スライドする)ように変形する。このような変形を受けると、その弾性反発にて上方からの押圧が機能性材5に作用するため、下方からの応力が解除されると共に浮き上がり防止材9は、弾性回復して元の形状に戻る。したがって、機能性材5の浮き上がり(反り返り)を生ずることがなく、それによる変形や落下等を引き起こす恐れもない。
【0054】
しかもこの第1実施例では、前記浮き上がり防止材9の押さえ保持効果に加え、機能性材5の一方側の端部51xも他方側の端部51yもそれぞれビス21b、押さえ片22にて押さえ保持する構成としているので、室内側(下方側)から機能性材5を押し上げるような応力が作用した際に該応力に抗する作用は機能性材5の中央部及び両端部にて果たされ、機能性材5の外れや落下等を防ぐ効果は確実に果たされる。
【0055】
また、当該実施例では、前記端部支持材1は、一方の端部51xを型鋼4の下フランジ41のリップ411に支持させた機能性材5の他方の端部51yを支持することにより、機能性材5を隣り合う型鋼4,4間に保持することができ、実質的にこの端部支持材1の一部材のみで隣り合う型鋼間に機能性材を配置する構造を構築できる。
【0056】
また、この端部支持材1にて保持される機能性材5は、その端面を隣り合う型鋼4,4のウエブ42,42に突き合わせ状に配設できる。そのため、断熱性能の弱点部を生ずることもない。
【0057】
図2(a)に示す第2実施例の保持構造は、前記略逆U字状の浮き上がり防止材9に代えて
図2(c)に示すパイプ材(中空)の浮き上がり防止材9Bを用いた例である。それ以外の部材及び構成は、前記第1実施例と全く同様であるから図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
この第2実施例の浮き上がり防止材9Bは、前述のようにパイプ材(中空)であるため、
図2(b)に示すような施工時の傾斜等に際して機能性材5の表面を動き回ることを防止する位置規制部を設けることが好ましいが、前記構成の位置規制部931は形成できないので、両面テープに相当するような位置規制(材)を設けることが好ましい。
【0059】
図3(a)に示す第3実施例の保持構造は、前記略逆U字状の浮き上がり防止材9を用いる点では前記第1実施例と同様であるが、化粧カバーである化粧材3に代えて天井仕上げ材である化粧材7を型鋼4,4間に跨がるように配設した点が相違する。
【0060】
ここで用いる天井仕上げ材7は、
図4(e),(f)に示すように開口部711を備える化粧面部71と、該化粧面部71の左右から内側へ延在して前記端部支持材1の横片部12に沿う固定用横片部72,73とを有し、隣り合う端部支持材1,1間に亘って取り付けられる構成である。また、この図示実施例では、前記固定用横片72,73には、前記端部支持材1に仮止めするためのL字状片(係合横片721,731、縦片722,732)が設けられ、前記化粧面部71と前記固定用横片部72との間には縦片状の当接部74,74が形成されている。
なお、この天井仕上げ材7は、パンチングメタル製の成形板であって、前記開口部711とは、
図3(b)に示すように固定用ビス7bを取り付けるための穴を指している。即ちこの天井仕上げ材7には、無数の穴が形成され、大きく下方へ湾曲する化粧面部71を形成しているが、この化粧面部71における固定用ビス7bを取り付ける穴のみを開口部711とするものである。
【0061】
なお、
図3(a)は、既設のH型鋼を含めた前記第3実施例の保持構造を示すものであって、
図3(b)は、その既設のH型鋼8の長さ方向から見た側面図である。また、
図3(c)は、更に大型のH型鋼8'の長さ方向から見た側面図である。