特許第6594749号(P6594749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594749
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ラジアントチューブバーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/66 20060101AFI20191010BHJP
   F23D 14/12 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   F23D14/66 C
   F23D14/12 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-229003(P2015-229003)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-96551(P2017-96551A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 健司
(72)【発明者】
【氏名】矢川 憲利
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢太
(72)【発明者】
【氏名】秋元 直人
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−050502(JP,A)
【文献】 米国特許第04705022(US,A)
【文献】 実開昭48−079535(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/66
F23D 14/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が閉塞され、基端側が排ガス出口に連通する外管と、
該外管内に配置され先端部が開放されて、基端側が空気入口に連通する内管と、
該内管内に配置され、先端に保炎部を設けたガス供給管と
前記保炎部内に先端の着火部が配置されるスパークロッドとを備え、
前記保炎部は、先端側を開放した有底のカップ形状を有し、
前記保炎部の底部は、前記ガス供給管の内側と連通するガス流通孔を有すると共に、前記ガス供給管の外側と連通する空気流通孔を有し、
前記ガス流通孔は、前記ガス供給管の中心軸周りに複数形成され、先端側が前記中心軸から離れるように前記中心軸に対して傾斜して形成され、前記保炎部の内壁の近傍に前記着火部が配置されていることを特徴とするラジアントチューブバーナ。
【請求項2】
前記中心軸に対する前記ガス流通孔の傾斜角度を10〜30°とし、前記ガス流通孔の傾斜方向の延長が前記保炎部の内壁と交差していることを特徴とする請求項1記載のラジアントチューブバーナ。
【請求項3】
前記ガス流通孔と前記空気流通孔は、それぞれ前記ガス供給管の中心軸周りに軸対称に複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のラジアントチューブバーナ。
【請求項4】
前記保炎部内に先端の着火部が配置されるスパークロッドが、前記ガス供給管と前記内管の間を通して配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のラジアントチューブバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアントチューブバーナ、特に、シングルエンド型のラジアントチューブバーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジアントチューブバーナは、チューブ内でガスを燃焼させることによってチューブを加熱し、チューブからの輻射熱によって対象物を昇温させる加熱装置である。このラジアントチューブバーナは、ガス燃焼方式でありながら、燃焼ガスが対象物に触れることがないため、清浄な雰囲気下で加熱を行うことができ、加熱炉や熱処理炉などで用いられている。
【0003】
ラジアントチューブバーナはチューブの形態により各種のものがあり、直管型のチューブを備えるものを、シングルエンド型ラジアントチューブバーナと呼んでいる。これは、W字型やU字型のチューブを有するラジアントチューブバーナと比較して、炉内でのチューブの配備が省スペース化でき、小型の加熱炉などで利用されている。
【0004】
従来のシングルエンド型ラジアントチューブバーナは、内管と外管の二重管構造を有しており、先端が閉塞された外管の内部に先端が開放された内管を配置して、内管の基端側からガス燃料を供給して内管の内部に燃焼炎を形成し、燃焼ガスを外管と内管との間の排ガス流路を通して、外管の基端側から排気する構造を備えている。
【0005】
また、シングルエンド型ラジアントチューブバーナは、先端に燃焼部が接続されたガス供給管路が内管の内部に配置され、内管とガス供給管路との間を燃焼部に連通する燃焼用空気の通気流路にしている。そして、ガス供給管路の中心にスパークロッド(着火プラグ)を配置してその先端を燃焼部に臨ませ、燃焼部にて、燃焼用空気とガス燃料の混合ガスを形成し、これに着火して燃焼炎を形成している。
【0006】
このようなシングルエンド型ラジアントチューブバーナは、外管と内管との間の排ガス流路を流動する燃焼ガスによって、内管を加熱して、内管とガス供給管路との間に供給される燃焼用空気を予熱することにより、廃熱の回収を行って熱効率の向上を図っている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−217827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなシングルエンド型ラジアントチューブバーナは、省スペース化が可能であると共に高い熱効率で省エネルギー化が可能であり、また低NOxであることから、電気ヒータの代替えとしての用途が求められている。しかしながら、電気ヒータの代替えとして用いるためには、外管の口径を更に小口径化することが求められる。外管の口径を80〜100mm以下の口径にした場合、燃焼ガスの排ガス流路を十分に確保するためには、内管径が小さくならざるを得ない。このため、内管内の細い密閉空間内での燃焼炎が、内管及び外管との熱交換で熱を奪われ、温度が低下することで、安定燃焼を得難くなる問題があった。
【0009】
また、内管内に配置されるスパークロッドなどは、内管の小口径化に応じて細くすることができないものがあるので、従来のシングルエンド型ラジアントチューブバーナをそのまま小口径化すると、ガス供給管内のガス流通を円滑に行うことが困難になり、これによっても安定燃焼を得難くなる問題があった。
【0010】
本発明の課題は、このような問題を解決することにあり、小口径化が可能であると共に安定燃焼を得ることができるシングルエンド型ラジアントチューブバーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
先端部が閉塞され、基端側が排ガス出口に連通する外管と、該外管内に配置され先端部が開放されて、基端側が空気入口に連通する内管と、該内管内に配置され、先端に保炎部を設けたガス供給管と、前記保炎部内に先端の着火部が配置されるスパークロッドとを備え、前記保炎部は、先端側を開放した有底のカップ形状を有し、前記保炎部の底部は、前記ガス供給管の内側と連通するガス流通孔を有すると共に、前記ガス供給管の外側と連通する空気流通孔を有し、前記ガス流通孔は、前記ガス供給管の中心軸周りに複数形成され、先端側が前記中心軸から離れるように前記中心軸に対して傾斜して形成され、前記保炎部の内壁の近傍に前記着火部が配置されていることを特徴とするラジアントチューブバーナ。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴を有するラジアントチューブバーナは、傾斜したガス流通孔から保炎部内に出射されるガスが空気流通孔から保炎部内に流入した空気と混合して混合ガスを形成するので、保炎部にて形成された燃焼炎によって内管の温度低下を効果的に抑制することができる。これによって、外管を小口径にした場合にも安定燃焼を得ることができ、電気ヒーターの代替えとなる小口径のラジアントチューブバーナを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るラジアントチューブバーナの全体構成を示した説明図(縦断面図)である。
図2】本発明の実施形態に係るラジアントチューブバーナの要部(ガス供給管、保炎部、ガス流通孔、空気流通孔、スパークロッドなど)を示した説明図(縦部分断面図)である。
図3】保炎部を備えたガス供給管の正面図である。
図4図3におけるA−A断面図(ガス供給管の内側と保炎部とを連通するガス流通孔の詳細を示す説明図)である。
図5図3におけるB−B断面図(ガス供給管の外側と保炎部とを連通する空気流通孔の詳細を示す説明図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。各図の符号は同一部位には同一符号を付しており、重複説明を一部省略している。図1に示すように、本発明の実施形態に係るラジアントチューブバーナ1は、シングルエンド型と言われるものであり、外管2と内管3とを有する二重管構造を有している。
【0015】
外管2は、その先端部2Aが閉塞された管であり、その基端側が排ガス出口10に連通している。外管2は、例えば炉壁M1,M2内に配置されて炉内に放熱する輻射放熱体となる。外管2は、内部の熱を効果的に外部に放熱する材料が用いられ、例えば、耐熱金属材やセラミック材で形成することができる。
【0016】
内管3は、外管2内に配置され、その先端部3Aが開放された管であり、基端側が空気入口11に連通している。内管3は、内部で燃焼炎Fを形成して、自身が発熱体(燃焼チューブ)となるものであり、これも外管2と同様に耐熱金属材やセラミック材で形成することができる。内管3内を通って先端部3Aから放出される燃焼ガスは、外管2の先端部2Aで方向を換えて、外管2と内管3との間に形成される排ガス流路12を通って排ガス出口10に導かれる。
【0017】
内管3内には、図2に示すように、ガス供給管4が配置されている。内管2の基端側は前述したように空気入口11に連通しているので、内管3とガス供給管4との間には、燃焼用空気流路13が形成される。ガス供給管4の先端には保炎部5が設けられている。内管3とガス供給管4とは同心状に形成されており、保炎部5の外径はガス供給管4の外径より大径になって、保炎部5の外周面が内管3の内面に近接又は接触するように配置されている。
【0018】
図示の例では、ガス供給管4の基端側にガスノズル4Aが挿入され、ガスノズル4Aから噴出したガスがガス供給管4内に供給される。また、ガス供給管4には、空気流通孔(1次空気流通孔)14が形成されており、燃焼用空気流路13から空気流通孔14を介してガス供給管4内に流入した空気とガスノズル4Aから噴出したガスが混合されて、ガス供給管4内で1次混合ガスが形成される。
【0019】
図2図5に示すように、保炎部5は、先端側を開放した有底(底部5Aを有する)カップ形状を有している。保炎部5の底部5Aは、ガス供給管4の内側と連通するガス流通孔6を有すると共に、ガス供給管4の外側と連通する空気流通孔(2次空気流通孔)7を有している。保炎部5内では、ガス供給管4内からガス流通孔6を介して流入したガス(1次混合ガス)と、燃焼用空気流路13から空気流通孔7を介して流入した空気とが混合して2次混合ガスが形成される。
【0020】
図2に示すように、スパークロッド8は、ガス供給管4と内管3の間を通して配置されている。すなわち、スパークロッド8は、ガス供給管4と内管3の間に形成される燃焼用空気流路13のスペースを利用して延設されており、その先端の着火部8Aが、保炎部5の底部5Aに形成されたスパークロッド挿入孔9を介して、保炎部5内に配置されている。スパークロッド8の基端側には、ロッド端子8Bが設けられ、ロッド端子8Bは、内管3の外側に引き出されている。
【0021】
図3図5に示すように、保炎部5の底部5Aに設けられるガス流通孔6と空気流通孔7は、それぞれガス供給管4の中心軸P周りに軸対称に複数形成されている。そして、図3及び図4に示すように、保炎部5の底部5Aに形成されるガス流通孔6は、ガス供給管4の中心軸P周りに複数形成され、先端側が中心軸Pから離れるように中心軸Pに対して傾斜して形成されている。その傾斜角度θは、10〜30°に設定することが好ましい。また、図3及び図5に示すように、保炎部5の底部5Aに形成される空気流通孔7は、ガス流通孔6の外側に配置されている。
【0022】
このようなラジアントチューブバーナ1は、空気入口11から内管3内に空気を流入させると共に、ガスノズル4Aからガス供給管4内にガス燃料を噴射させることで、ガス供給管4の空気流通孔14を介してガス供給管4内に流入した空気とガス燃料が混合して、ガス供給管4内で1次混合ガスが形成され、ガス流通孔6を介して保炎部5内に流入した1次混合ガスと空気流通孔7を介して保炎部5内に流入した空気とが混合して、保炎部5内で2次混合ガスが形成される。
【0023】
保炎部5内で、スパークロッド8の着火部8Aを点火して、形成された2次混合ガスに着火することで、保炎部5に燃焼炎Fを形成する。この際、ガス供給管4内の1次混合ガスは、傾斜配置されたガス流通孔6を介して保炎部5内の外側に向けて出射される。これに対して、燃焼用空気流路13内の空気はガス流通孔6の外側に配置された空気流通孔7を介して保炎部5内に流入する。これにより、ガス流通孔6を介して保炎部5内の外側に向けて出射された1次混合ガスと空気流通孔7を介して保炎部5内に流入する空気とが保炎部5の内壁近傍で混合されて、2次混合ガスが形成されることになる。
【0024】
このように保炎部5内で形成された2次混合ガスに着火して形成される燃焼炎Fは、保炎部5の内壁に沿って放出され、内管3の内面を効果的に加熱する。これによって、外管2の径が小口径で、外管2及び内管3から多くの熱が奪われる状況になったとしても、内管3の温度低下を抑えて、保炎部5にて形成される燃焼炎Fの安定燃焼状態を効果的に維持することができる。
【0025】
この際、スパークロッド8をガス供給管4の外側に配置しているので、スパークロッド8を小径にしなくても、ガス供給管4内の流路を充分に確保することができ、ガス供給管4内での1次混合を円滑に行うことができる。また、ガス供給管4内の1次混合ガスの良好な流通を確保することで、保炎部5内に斜めに出射される1次混合ガスの勢いを高め、内管3の温度低下を抑える燃焼炎Fを効果的に形成することができる。
【0026】
このように本発明の実施形態に係るラジアントチューブバーナ1は、外管2の口径を80〜100mm以下の小口径にした場合にも、安定燃焼を維持することが可能になり、電気ヒーターの代替えとなる、省スペース、省エネルギー、省コスト、高効率のチューブバーナーを実現することができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1:ラジアントチューブバーナ,2:外管,2A:先端部,
3:内管,3A:先端部,4:ガス供給管,4A:ガスノズル,
5:保炎部,5A:底部,6:ガス流通孔,7:空気流通孔(2次空気流通孔),
8:スパークロッド,8A:着火部(先端部),8B:ロッド端子,
9:スパークロッド挿入孔,10:排ガス出口,11:空気入口,
12:排ガス流路,13:燃焼用空気流路,
14:空気流通孔(1次空気流通孔),P:中心軸,
M1,M2:炉壁,F:燃焼炎
図1
図2
図3
図4
図5