【実施例】
【0028】
以下に、本発明の第1実施例であるまくらぎ高さ調整型防振装置100について、
図1乃至
図7に基づいて説明する。
ここで、
図1は、本発明の実施例であるまくらぎ高さ調整型防振装置の設置状態を示す説明図であり、
図2は、本実施例であるまくらぎ高さ調整型防振装置の斜視図であり、
図3は、
図1に示すまくらぎ高さ調整型防振装置の分解組立図であり、
図4は、
図3に示すA部分の分解組立図であり、
図5は、本実施例のまくらぎ高さ調整型防振装置に重置されたA部分の断面斜視図であり、
図6は、本実施例のまくらぎ高さ調整型防振装置の高さ調整前と高さ調整後の比較図であり、
図7は、まくらぎ端部の設置状態を示すものであって、(a)は調整前の状態を示す図であり、(b)は調整後の状態を示す図である。
【0029】
本発明の一実施例であるまくらぎ高さ調整型防振装置100は、
図1および
図2に示すように、レールRをレール締結装置Tを用いて支承するコンクリート製のまくらぎMの左右部位にそれぞれ位置するまくらぎ端部M1に装着されている。
なお、
図1は、まくらぎ高さ調整型防振装置100をまくらぎMの左右部位にそれぞれ同一の装着状態を示したものであるが、まくらぎ高さ調整型防振装置100の概要を便宜的に理解し易いように、一方はその側面図を示し、他方はその側断面図を示している。
【0030】
そして、本実施例のまくらぎ高さ調整型防振装置100は、
図3に示すように、方形状のケース底板111とこのケース底板111から直立状態で離間対設した一対のケース直立側壁112、112とこれらのケース直立側壁112、112の左右いずれか一端縁に設けたケース直立端壁113とで上方を開放するように構成してまくらぎMのまくらぎ端部M1を装着状態でコンクリート製の道床(図示しない)に半埋設する有底箱状の防振ケース110と、この防振ケース110のケース直立端壁113とまくらぎMのまくらぎ端部M1との間に介装してまくらぎ端部M1に生じがちなまくらぎ長手方向の振動を抑制する端面パッド120と、防振ケース110のケース直立側壁112とまくらぎMのまくらぎ端部M1との間にそれぞれ介装してまくらぎ端部M1に生じがちなレール長手方向の振動を抑制する側面パッド130と、防振ケース110のケース底板111上に敷設配置してまくらぎMのまくらぎ端部M1に生じがちなまくらぎ上下方向の振動を抑制する矩形板状の底面パッド140と、この底面パッド140を防振ケース110のケース底板111上に位置決め配置するための底面用間隔部材150とを備えている。
【0031】
さらに、本実施例のまくらぎ高さ調整型防振装置100は、抜け止め用締結手段160、すなわち、木ねじにより、端面パッド120が、防振ケース110のケース直立端壁113に螺着して確実に固定されている。
【0032】
また、本実施例のまくらぎ高さ調整型防振装置100に備えられている底面用間隔部材150には、底面パッド装着用矩形状穴部152が設けられている。
そして、
図3および
図4に示すように、まくらぎ端部M1の高さを調整する矩形状のまくらぎ高さ調整手段180が、矩形板状の底面パッド140に被嵌状態で重置され、この底面パッド140が、防振ケース110のケース底板111に敷設した底面用間隔部材150の底面パッド装着用矩形状穴部内に嵌合して装着されている。
このまくらぎ高さ調整手段180により、道床コンクリート打設による防振軌道敷設時に生ずる防振軌道の施工誤差や防振軌道施工後の地震・地盤振動・地盤沈下などの影響で生ずる防振軌道の変状などによって軌道面に不陸が発生した場合に、まくらぎ高さ調整手段自体の高さ方向の厚みを調整してこのまくらぎMを所定の高さレベルに嵩上げ(扛上)する量が確保される。
換言すれば、まくらぎMの沈下量が補充されている。
さらに、底面パッド140が底面パッド装着用矩形状穴部152に囲繞された状態となり、列車通過時の振動によって生じがちな底面パッド140の防振ケース110に対する前後左右の位置ズレが阻止されている。
【0033】
また、まくらぎ高さ調整手段180が、
図4および
図5に示すように、まくらぎ端部M1に対面当接してまくらぎ高さを調整する高さ調整スペーサー部材182とこの高さ調整スペーサー部材182の下面に一体形成して底面パッド140を囲繞するパッド囲繞部材184とから構成されている。
これにより、まくらぎ高さ調整手段180のパッド囲繞部材184が、底面パッド140を囲繞した状態で底面用間隔部材150の底面パッド装着用矩形状穴部内に嵌合して装着される。
そして、列車通過時の振動によって生じがちなまくらぎ高さ調整手段180の位置ズレを確実に阻止している。
さらに、まくらぎ高さ調整手段180の高さ調整スペーサー部材182の厚みが、防振軌道敷設場所や列車通過場所における沈下量の違いに対する複数種類の厚みのものを製造時に準備可能となる。
例えば、厚さ1mm、10mmのような複数種類の高さ調整スペーサー部材182が使用されたまくらぎ高さ調整手段180により、パッド囲繞部材184を変更することなく所望の厚みの高さ調整スペーサー部材182からなるまくらぎ高さ調整手段180を選定してまくらぎMを所定のレール軌道を維持する高さレベルに調整している。
【0034】
また、パッド囲繞部材184が、
図5に示すように、高さ調整スペーサー182を接着剤による接着や熱溶着などを用いて固定するスペーサー固定部184aと、このスペーサー固定部184aの側縁から下方、すなわち、高さ調整スペーサー部材182の下面から矩形板状の底面パッド140の側面に向けて突出して被嵌する被嵌囲繞片184bで構成されている。
この被嵌囲繞片184bにより、まくらぎ高さ調整手段180を重置した底面パッド140が底面用間隔部材150の底面パッド装着用矩形状穴部152に挿入された際、パッド囲繞部材184の被嵌囲繞片184bが底面パッド140と底面用間隔部材150とに挟持されている。
【0035】
底面パッド140にまくらぎ高さ調整手段180を重置する際には、まくらぎMの沈下量を補充する少なくとも1枚以上の高さ調整シム板190が、まくらぎ高さ調整手段180と底面パッド140との間に介装されていてもよい。
ここで、例えば、厚さ1mm、2mm、3mm、5mmなどのような複数種類の高さ調整シム板190により、高さ調整シム板190の厚さおよびその厚さの組み合わせが増減可能とされている。
そして、高さ調整シム板190が、1枚もしくは複数枚を選定されることによって、まくらぎMの高さを所定のレール軌道に合わせて微調整している。
【0036】
まくらぎ高さを調整する際、高さ調整量と高さ調整手段180の厚さ、すなわち、高さ調整スペーサー部材182の厚さおよびパッド囲繞部材184の厚さの和とが等しい場合、高さ調整手段180のみを底面パッド140とまくらぎ底面との間に挿入し、まくらぎ高さを調整している。
さらに、高さ調整量と高さ調整手段180の厚さとが異なる場合、高さ調整手段180のパッド囲繞部材と底面パッド140との間に、所望の高さ調整量となる高さ調整シム板190の厚さを組み合わせて重置し、まくらぎ高さを微調整している。
【0037】
しかし、重置した高さ調整シム板190の合計厚さが、パッド囲繞部材184の被嵌囲繞片184bの高さを越えた場合、高さ調整手段180が底面パッド140に被嵌されず、パッド囲繞部材184の被嵌囲繞片184bによるズレ止め機能が果たせない。
そこで、重置した高さ調整シム板190の合計厚さが、所定の限度厚さ以下、例えば、9mm以下となるようにしている。
また、まくらぎ高さ調整量が、この重置した高さ調整シム板190の合計厚さを越える場合、高さ調整スペーサー部材182の厚さを、例えば、1mmのものから10mmのものに変更し、重置する高さ調整シム板190の合計厚さを薄くして、所定の限度厚さを越えないように調整している。
【0038】
なお、パッド囲繞部材184の被嵌囲繞片184bには、重置した高さ調整シム板190を確認する確認窓、底面パッド140に重置する際の目印、底面パッド140または底面用間隔部材150を位置決めするために防振ケース110のケース底板111に設けられた突起を回避する切欠き凹部184cなどが設けられても良い。
【0039】
さらに、
図3および
図6に示すように、防振ケース110のケース底板111から直立状態で離間対設した一対のケース直立側壁112が、このケース直立側壁112の上端部位に沿って庇状内側突条114を備え、防振ケース110のケース直立側壁112とまくらぎMのまくらぎ端部M1との間に介装する側面パッド130が、この側面パッド130の上端部位に沿って突条係合溝132を備えている。
ここで、側面パッド130の突条係合溝132は、まくらぎ高さ調整手段180と高さ調整シム板190とによるまくらぎMを嵩上げする量、すなわち、補充される沈下量hに見合った余裕代を有している。
この余裕代は、楔状の側面パッド130とまくらぎMとの接触面の傾斜角度、側面パッド130と防振ケース110との接触面の傾斜角度などの諸条件によって決定している。
そして、まくらぎMのまくらぎ端部M1が沈下量hを補充されて側面パッド130の上部が道床面Lから上方に移動した際、側面パッド130の突条係合溝内にケース直立側壁112の庇状内側突条114が係合維持されている。
【0040】
図3および
図7(a)に示すように、防振ケース110のケース底板111から直立したケース直立端壁113とまくらぎMのまくらぎ端部M1との間に端部調整シム板170を介装して端面パッド120が設けられている。
すなわち、まくらぎ端部M1のまくらぎ長手方向の配置を調整する端部調整シム板170が、防振ケース110のケース底板111から直立したケース直立端壁113とまくらぎMのまくらぎ端部M1との間に設けられている。
これにより、端部調整シム板170の厚さおよびその組合せをその介装枚数で増減させることが可能となり、まくらぎ長手方向に沿ってレールRの敷設位置を微修正している。
【0041】
そして、
図7(a)に示すように、まくらぎ端部M1にまくらぎ高さ調整手段180を装着していない調整前の状態から、
図7(b)に示すように、まくらぎ高さ調整手段180と端部調整シム板170とを双方同時に装着して、道床の道床面Lに対するまくらぎ高さ方向と防振ケース110のケース直立端壁113に対するまくらぎ長手方向との双方向を同時に調整した調整後の状態にすることが可能となっている。
すなわち、底面パッド140にまくらぎ高さ調整手段180を装着して道床の道床面Lに対するまくらぎ高さ方向を調整するとともに、一方側の端部調整シム板170への第1端部調整シム板172の重置と他方側の端部調整シム板170の第2端部調整シム板174への変更とを同時に行って防振ケース110のケース直立端壁113に対するまくらぎ長手方向を調整することによって、まくらぎ高さ方向とまくらぎ長手方向との双方向を同時に調整している。
ここで、まくらぎ長手方向を調整する第1端部調整シム板172と第2端部調整シム板174との厚さの合計は、端部調整シム板170の厚さと等しくなっている。
このことにより、
図1および
図7に示すように、道床に半埋設されている防振ケース130を基準とし、まくらぎMに敷設したレールRを所望する敷設位置に確実に調整している。
【0042】
このようにして得られた本発明の一実施例であるまくらぎ高さ調整型防振装置100は、レールRを支承するまくらぎMのまくらぎ端部M1を保持した状態で道床に半埋設する防振ケース110と、まくらぎMのまくらぎ端部M1と防振ケース110のケース底板111との間に介装する矩形板状の底面パッド140とを少なくとも備えていことにより、レールRを支承するまくらぎMの振動を底面パッド140で吸収抑制することができるばかりでなく、まくらぎ端部M1の高さを調整する矩形状のまくらぎ高さ調整手段180が、矩形板状の底面パッド140に被嵌状態で重置されていることにより、道床コンクリート打設による防振軌道敷設時に生ずる防振軌道の施工誤差や防振軌道施工後の地震・地盤振動・地盤沈下などの影響で生ずる防振軌道の変状などによって軌道面に不陸が発生した場合に、まくらぎ高さ調整手段自体の高さ方向の厚みを調整してこのまくらぎMの沈下量が補充された状態で取り付けられ、軌道の不陸を簡便かつ確実に調整することができる。
【0043】
そして、矩形板状の底面パッド140が、防振ケース110のケース底板111に敷設した底面用間隔部材150の底面パッド装着用矩形状穴部内に嵌合して装着されていることにより、位置ズレが阻止されている底面パッド140によってこの底面パッド140に重置されたまくらぎ高さ調整手段180の位置ズレも阻止され、このまくらぎ高さ調整手段180を確実に位置決めした状態でまくらぎ端部M1を安定して支承することができるなど、その効果は、甚大である。