(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594794
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】エアバッグカバー
(51)【国際特許分類】
B60R 21/203 20060101AFI20191010BHJP
B60R 21/215 20110101ALI20191010BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
B60R21/203
B60R21/215
B60R13/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-33950(P2016-33950)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-149281(P2017-149281A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村松 克弥
(72)【発明者】
【氏名】村松 亮介
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−87577(JP,A)
【文献】
特開2004−142711(JP,A)
【文献】
特開2004−67000(JP,A)
【文献】
実開昭62−141579(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第102009045638(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102012011982(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/00,21/16
B62D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれたエアバッグを覆うカバー本体と、
前記カバー本体の表面に積層される表皮材と、
前記表皮材の表面に配置される装飾体と、
前記装飾体を前記カバー本体に固定する固定材と、を備え、
前記固定材は、前記装飾体の裏面に設けられる挿通体と、前記カバー本体及び前記表皮材に貫通形成され、前記挿通体が挿通される取付孔と、を有し、
前記表皮材の取付孔が前記カバー本体の取付孔よりも小さく形成されることにより、前記表皮材の取付孔の縁部に、前記カバー本体に貼り付けされずに残る余り部分が形成され、
前記挿通体の根元と前記カバー本体の取付孔との間に前記表皮材の余り部分を位置させた状態で、前記装飾体が前記カバー本体に固定される
ことを特徴とするエアバッグカバー。
【請求項2】
前記挿通体の根元と前記カバー本体の取付孔とによって前記表皮材の余り部分を挟み込んだ状態で、前記装飾体が前記カバー本体に固定されることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグカバー。
【請求項3】
前記表皮材の余り部分は、前記カバー本体の取付孔の全周に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグカバー。
【請求項4】
前記カバー本体の取付孔と前記表皮材の取付孔とは、互いに相似する形状に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のエアバッグカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両が衝突した際の衝撃から乗員を保護するエアバッグが公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のエアバッグカバーは、折り畳まれたエアバッグを覆うカバー本体(基材)と、カバー本体の表面に積層されるシート状の表皮材(皮革)と、表皮材の表面に配置される装飾体と、装飾体をカバー本体に固定する固定材と、を備える。この固定材は、装飾体の裏面に設けられる挿通体と、カバー本体及び表皮材に貫通形成され、挿通体が挿通される取付孔と、を有する。このようなエアバッグカバーでは、表皮材の取付孔の孔径が、カバー本体の取付孔の孔径と同じか、カバー本体の取付孔の孔径よりも大きく形成されるのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−87577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表皮材の取付孔の孔径が、カバー本体の取付孔の孔径と同じか、カバー本体の取付孔の孔径よりも大きく形成される場合、装飾体とカバー本体との間に挟まる表皮材の量が少ないので、表皮材を強固に押えるために挿通体をより多く配設することが必要になることがある。表皮材を強固に押えるために挿通体をより多く配設すると、挿通体の数量の増大に伴い、製造コストの増加を招いてしまう。このため、製造コストの増加を抑制しつつ、エアバッグの展開時に装飾体の脱落や表皮材の剥離をさらに確実に防止することが要求されている。
【0006】
そこで、本発明は、製造コストの増加を抑制しつつ、エアバッグの展開時に装飾体の脱落や表皮材の剥離をさらに確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグカバーは、折り畳まれたエアバッグを覆うカバー本体と、カバー本体の表面に積層される表皮材と、表皮材の表面に配置される装飾体と、装飾体をカバー本体に固定する固定材と、を備える。固定材は、装飾体の裏面に設けられる挿通体と、カバー本体及び表皮材に貫通形成され、挿通体が挿通される取付孔と、を有する。表皮材の取付孔がカバー本体の取付孔よりも小さく形成されることにより、表皮材の取付孔の縁部に、カバー本体に貼り付けされずに残る余り部分が形成される。挿通体の根元とカバー本体の取付孔との間に表皮材の余り部分を位置させた状態で、装飾体がカバー本体に固定される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るエアバッグカバーでは、表皮材の取付孔がカバー本体の取付孔よりも小さく形成されることにより、表皮材の取付孔の縁部が、カバー本体に貼り付けされずに残る余り部分(余白)となる。そして、装飾体に設けた挿通体を表皮材の取付孔及びカバー本体の取付孔に挿通して、装飾体をカバー本体に固定する。このようにすると、表皮材の余り部分がカバー本体の取付孔の内部に引き込まれるとともに、挿通体の根元とカバー本体の取付孔との間に表皮材の余り部分を位置させた状態で、装飾体がカバー本体に固定される。
【0009】
このように装飾体を固定することによって、装飾体が表皮材を介してカバー本体と強固に固定されるので、エアバッグの展開時に装飾体の脱落や表皮材の剥離を防止することが可能になる。
【0010】
挿通体の数量を増大させる必要がないので、製造コストの増加を招いてしまうこともない。
【0011】
よって、本発明のエアバッグカバーによれば、製造コストの増加を抑制しつつ、エアバッグの展開時に装飾体の脱落や表皮材の剥離をさらに確実に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアバッグカバーが設けられたステアリングホイールの正面図である。
【
図2】装飾体を取り付けた状態のエアバッグカバーの要部拡大図である。
【
図4】装飾体を取り付ける前の状態のエアバッグカバーの要部拡大図である。
【
図6】(a)は
図3の要部拡大図であり、(b)は
図5の要部拡大図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る、装飾体を取り付ける前の状態のエアバッグカバーの要部拡大図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る、装飾体を取り付ける前の状態のエアバッグカバーの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面とともに詳述する。
【0014】
本実施形態では、自動車のステアリングホイールに設けられるエアバッグカバーを例示する。
【0015】
図1に示すように、ステアリングホイール1は、ステアリングホイール本体2を有する。ステアリングホイール本体2は、円環状に形成されたグリップ部であるリム部3と、リム部3の内方に位置するボス部4と、これらリム部3とボス部4とを連結する複数(本実施形態では、3本)のスポーク部5と、から主に構成される。ステアリングホイール本体2の中央部(ボス部4)に、エアバッグカバー10が設けられる。エアバッグカバー10は、エアバッグリッド等とも称されるものである。
【0016】
図2から
図5に示すように、エアバッグカバー10は、折り畳まれたエアバッグ(図示せず)を覆うカバー本体(基材)11と、カバー本体11の外表面を被覆するシート状の表皮材(皮革)12と、表皮材12の表面に配置される装飾体13と、装飾体13をカバー本体11に固定する固定材14と、を備える。ここで、カバー本体11等におけるエアバッグが配置されているカバー内側の面を「裏面」と称し、エアバッグが配置されているカバー内側の面とは反対側のカバー外側の面を「表面」と称する。
【0017】
カバー本体11は、合成樹脂材料によって構成される。カバー本体11の表面には、装飾体13の配置用の凹部15が形成されている。また、図示は省略しているが、カバー本体11の裏面に、破断予定部及びヒンジ部が形成され、これら破断予定部及びヒンジ部により複数の扉予定部が区画される。破断予定部は、テア溝、テアライン等とも称されるものであり、カバー本体11の裏面に所定の深さに凹設されて、カバー本体11の他の部分よりも脆弱になるように形成される。一方、ヒンジ部は、ヒンジ溝、ヒンジライン等とも称されるものであり、破断予定部よりも浅い所定の深さに凹設されて、扉予定部が外側に展開する際の回動軸となるように構成される。エアバッグの展開時には、カバー本体11がエアバッグによって内側から押圧されることにより、カバー本体11に設けた破断予定部を基点としてカバー本体11が破断し、扉予定部がヒンジ部を回動軸として開くようになっている。
【0018】
表皮材12は、天然皮革、合成皮革、布、木目フィルム等によって構成される。カバー本体11の表面と表皮材12の裏面とは、接着剤を用いて接着される。
【0019】
カバー本体11及び表皮材12にはそれぞれ、取付孔16,17が貫通形成されている。ここで、表皮材12の取付孔17は、カバー本体11の取付孔16よりも小さく形成されており、表皮材12の取付孔17の縁部に、カバー本体11には貼り付けされずに残る余り部分18が形成されている。本実施形態では、表皮材12の余り部分18がカバー本体11の取付孔16の全周に形成されており、エアバッグカバー10の表面側から見たときに、カバー本体11の取付孔16の縁部が全て表皮材12によって覆われている。また、本実施形態では、カバー本体11の取付孔16と表皮材12の取付孔17とは、互いに相似する形状に形成されている。具体的には、
図4から分かるように、カバー本体11の取付孔16及び表皮材12の取付孔17の両方が丸孔形状に形成されている。
【0020】
装飾体13は、表示文字や表示マーク等を表示するためのもの(いわゆるエンブレム)である。装飾体13の裏面に、カバー本体11の取付孔16及び表皮材12の取付孔17に挿通される挿通体(ピン)19が一体に凸設されており、挿通体19の先端に係止凸部20が一体形成されている。
【0021】
固定材14は、カバー本体11の裏面側に配置されるとともに挿通体19に連結され、装飾体13とによってカバー本体11及び表皮材12を挟持した状態で装飾体13をカバー本体11に対して保持するプレート状の保持材21を有する。保持材21は、カバー本体11の裏面に当接する当接部22と、装飾体13の挿通体19が挿通される挿通孔23と、挿通孔23の縁部に沿って複数形成され装飾体13の係止凸部20の根元部分に係合する係合片24と、を有している。このような保持材21が、挿通体19及び取付孔16,17とともに固定材14を構成している。
【0022】
図6に示されるように、カバー本体11の取付孔16の孔径D1は、挿通体19のピン根元径D2以上に設定され、表皮材12の取付孔17の孔径D4は、挿通体19のピン径D3以下に設定される。ここで、挿通体19のピン根元径D2は、装飾体13の裏面におけるR止まり同士の距離を示すものとする。特に、表皮材12の取付孔17の孔径D4が挿通体19のピン径D3よりも小さく設定されることにより、後述するように、装飾体13を組み付けた際には、挿通体19の根元とカバー本体11の取付孔16とによって表皮材12の余り部分18を挟み込んだ状態(強干渉状態)となり得る。なお、本実施形態では、「D1≧D2>D3≧D4」という大小関係が存在するが、挿通体19のピン径D3とピン根元径D2とが同じ径であってもよい。
【0023】
装飾体13のカバー本体11への取り付けは、まず、装飾体13の挿通体19を表皮材12の取付孔17及びカバー本体11の取付孔16に挿通するとともに、装飾体13をカバー本体11の表面に設けた凹部15に配置する。このとき、装飾体13の挿通体19の取付孔16,17への挿通に伴い、表皮材12の余り部分18がカバー本体11の取付孔16の内部に引き込まれるとともに、挿通体19の根元とカバー本体11の取付孔16との間に表皮材12の余り部分18を位置させた状態となる。次いで、この状態で、挿通体19の先端に形成した係止凸部20を保持材21の挿通孔23に挿通するとともに、係止凸部20を係合片24を越えて係合させて、装飾体13をカバー本体11に固定する。これにより、表皮材12の余り部分18がカバー本体11の取付孔16の内部に引き込まれるとともに、挿通体19の根元とカバー本体11の取付孔16との間に表皮材12の余り部分18を位置させた状態で、装飾体13がカバー本体11に固定される。
【0024】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0025】
(1)本実施形態に係るエアバッグカバー10は、折り畳まれたエアバッグを覆うカバー本体11と、カバー本体11の表面に積層される表皮材12と、表皮材12の表面に配置される装飾体13と、装飾体13をカバー本体11に固定する固定材14と、を備える。固定材14は、装飾体13の裏面に設けられる挿通体19と、カバー本体11及び表皮材12に貫通形成され、挿通体19が挿通される取付孔16,17と、を有する。表皮材12の取付孔17がカバー本体11の取付孔16よりも小さく形成されることにより、表皮材12の取付孔17の縁部に、カバー本体11に貼り付けされずに残る余り部分18が形成される。挿通体19の根元とカバー本体11の取付孔16との間に表皮材12の余り部分18を位置させた状態で、装飾体13がカバー本体11に固定される。
【0026】
本実施形態に係るエアバッグカバー10では、表皮材12の取付孔17がカバー本体11の取付孔16よりも小さく形成されることにより、表皮材12の取付孔17の縁部が、カバー本体11に貼り付けされずに残る余り部分18となる。そして、装飾体13に設けた挿通体19を表皮材12の取付孔17及びカバー本体11の取付孔16に挿通して、装飾体13をカバー本体11に固定する。このようにすると、表皮材12の余り部分18がカバー本体11の取付孔16の内部に引き込まれるとともに、挿通体19の根元とカバー本体11の取付孔16との間に表皮材12の余り部分18を位置させた状態で、装飾体13がカバー本体11に固定される。
【0027】
このように装飾体13を固定することによって、装飾体13が表皮材12を介してカバー本体11と強固に固定されるので、エアバッグの展開時に装飾体13の脱落や表皮材12の剥離を防止することが可能になる。
【0028】
挿通体19の数量を増大させる必要がないので、製造コストの増加を招いてしまうこともない。
【0029】
例えば、表皮材12が天然皮革により形成される場合、天然皮革の余り部分がカバー本体11の取付孔16の内部に予め引き込まれているので、天然皮革が熱によって収縮したとしても、カバー本体11の取付孔16が露出することがない。
【0030】
以上要するに、本実施形態に係るエアバッグカバー10によれば、製造コストの増加を抑制しつつ、エアバッグの展開時に装飾体13の脱落や表皮材12の剥離をさらに確実に防止することが可能である。
【0031】
(2)挿通体19の根元とカバー本体11の取付孔16とによって表皮材12の余り部分18を挟み込んだ状態で、装飾体13がカバー本体11に固定される。
【0032】
挿通体19の根元とカバー本体11の取付孔16とによって表皮材12の余り部分18を挟み込んだ状態(強干渉状態)で装飾体13がカバー本体11に固定されることにより、装飾体13がカバー本体11に対してより強固に固定される。
【0033】
(3)表皮材12の余り部分18は、カバー本体11の取付孔16の全周に形成される。
【0034】
表皮材12の余り部分18がカバー本体11の取付孔16の全周に形成されることにより、表皮材12の余り部分18をカバー本体11の取付孔16の内部に全周にわたって引き込むことができ、装飾体13をより強固にカバー本体11に固定することが可能になる。
【0035】
(4)カバー本体11の取付孔16と表皮材12の取付孔17とは、互いに相似する形状に形成される。
【0036】
カバー本体11の取付孔16と表皮材12の取付孔17とが互いに相似する形状に形成されることにより、表皮材12の余り部分18をカバー本体11の取付孔16の内部により確実に引き込むことができ、表皮材12のしわの発生を抑制することが可能になる。
【0037】
ところで、本発明のエアバッグカバーは前述の実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【0038】
前述の実施形態では、ステアリングホイールに設けられたエアバッグカバーを例示したが、本発明はこれに限定されず、助手席前方のインストルメントパネル等に設けられるエアバッグカバーに適用することも可能である。
【0039】
表皮材12の取付孔17は、
図7に示すように、角孔形状(図示例では、四角孔形状)に形成してもよい。また、表皮材12の取付孔17は、
図8に示すように、互いに交差する複数のスリットを有するスリット状の孔(図示例では、X字状のスリット)としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 エアバッグカバー
11 カバー本体
12 表皮材
13 装飾体
14 固定材
16 取付孔
17 取付孔
18 余り部分
19 挿通体