(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間材は、前記給湯管の長手軸線方向中央部分に設けられた第1部分と、前記給湯管の長手方向両端に設けられた第2部分とを有し、前記第1部分は、前記内管の外周面上に巻き付けられた平板形状の部材であり、前記第2部分は、前記給湯管と同心の円環形状を有する部材である、請求項1記載の給湯管。
非鉄金属合金の溶湯を貯留する炉と、鋳造装置と、前記炉から前記鋳造装置に溶湯を搬送する給湯配管とを備え、前記給湯配管が、請求項6記載の2つの給湯管を連結してなる給湯管組立体を含んでいることを特徴とする非鉄金属鋳造システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0014】
まず、
図1及び
図2を参照して非鉄金属鋳造システムの全体構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、非鉄金属鋳造システムは、鋳造装置として、ダイカストマシン10を有している。ダイカストマシン10としては、従来からコールドチャンバー方式として広く普及している、横型締め横射出方式のものを用いることができる。
【0016】
ダイカストマシン10は、固定型11を保持する固定側ダイプレート12と、可動型13を保持する可動側ダイプレート14とを有する。固定型11と可動型13との間に形成されるキャビティ15に、スリーブ16の内部空間が連通している。スリーブ16内には、スリーブ16内の溶湯をキャビティ15内に射出するためのプランジャ17が設けられている。ダイカストマシン10は、可動型13の駆動機構、プランジャ17の駆動機構などの当業者にとって周知の構成要素を他にも有しているが、このような周知の構成要素の図示及び説明は省略する。
【0017】
スリーブ16の下部には、給湯口16aが設けられている。給湯口16aには、給湯配管18を介して溶解炉または保持炉等の炉19が接続されている。炉19の上面に蓋が設けられており、炉19の内部は周囲環境から実質的に隔離されている。給湯配管18には、炉19内に貯留されている非鉄金属溶湯(例えばアルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金等の溶湯)をスリーブ16まで送るための給湯機20例えば電磁給湯機が設けられている。
【0018】
給湯口16aは鉛直方向下方を向いていること(つまり給湯口16aの中心がスリーブ16の最下部にあること)が好ましいが、これには限定されず、給湯口16aの中心がスリーブの下半部にあればよい。
【0019】
給湯配管18の上流側端は、炉19内に貯留されているアルミニウム溶湯表面より低い高さの位置で炉19に接続されている。このため、給湯機20により、炉19内にあるアルミニウム溶湯を、大気に触れさせることなく給湯配管18を介してスリーブ16まで搬送することができる。
【0020】
上述したような所謂「直接給湯方式」の給湯装置を備えた鋳造システムでは、高品質の溶湯が鋳造装置に供給されるため、高品質の鋳物を鋳造することができる。
【0021】
給湯配管18は、複数の給湯管30を連結することにより構成されている。
図3には、連結された2つの給湯管30の連結部付近の構成が示されており、一点鎖線で示した中心線を境界として下側が給湯管30同士の締結前、上側が締結後の状態を示している。
【0022】
給湯管30は、外管31、中間材32及び内管33を備えた三層構造を有している。
【0023】
外管31は鉄系材料、好ましくは鉄鋼材料により形成されている。鉄鋼材料としては、例えば、高温下での耐酸化性を重視してオーステナイト系ステンレス鋼を採用することが好ましい。外管31は、鋳鉄により形成してもよい。
【0024】
内管33は、溶湯耐性(この給湯管30により搬送されることが予定されている溶湯に対する耐溶損性)がある材料、例えばセラミックス材料により形成されている。このセラミックス材料は、アルミナ、窒化珪素、シリカ及びジルコニアのうちの少なくとも1種類以上を含むものとすることができる。
【0025】
なお、給湯管30によりアルミニウム以外の非鉄金属合金溶湯を搬送する場合には、内管33の材料をその非鉄金属材料に対しての濡れ性や反応性を考慮して変更してもよい。例えば、溶湯がマグネシウム合金溶湯の場合には、内管33の材料をシリカ系以外のセラミックス材料またはステンレス鋼としてもよい。
【0026】
外管31と内管33との間に介装される中間材32は、給湯管30の長手軸線方向中央部に配置される中央部分321と、給湯管30の両端部に配置される2つの端部分322とから構成することができる。
【0027】
中間材32は、繊維質無機材料を、シート状、フェルト状またはブランケット状つまり平板形状に圧縮成型してなる圧縮成形体により形成することができる。中間材32を構成する繊維質無機材料は、アルミナ、窒化珪素及びシリカ(二酸化ケイ素)のうちの少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。このような繊維質無機材料の圧縮成形体はセラミックファイバー工業会会員企業などから商業的に入手可能な周知のものである。
【0028】
繊維質無機材料を構成する繊維の径は、1μm〜500μmとすることが好ましい。繊維径が1μm未満の場合、繊維の強度が低く形状を保っていることが困難となる傾向にある。繊維径が500μmより大きい場合、繊維の靱性が低くなり、鋳造時の衝撃を受けた際に破断しやすくなる傾向にある。
【0029】
給湯管30の製造に際して、中間材32の中央部分312を構成する上記平板形状の圧縮成形体は、内管33の外周面上に巻き付けられる。このとき、内管33の外周面上に1枚の圧縮成形体を巻き付けてもよいし、複数枚の圧縮成形体を巻き付けてもよい。
【0030】
中間材32の中央部分321を巻き付けた内管33を、外管31の内部に締め代をもって(つまり、中間材32を構成する繊維無機質材料からなる圧縮成形体を自由状態から圧縮して密度を増した状態で)嵌め込むことにより、外管31、中央部分321及び内管33を一体化させることができる。締め代を確保するため、内管33の外径と外管31の内径との差の1/2よりも自由状態での厚さが大きい中間材32が用いられる。
【0031】
中間材32の中央部分321を構成する繊維質無機材料の圧縮成形体は、接着性を有していない。しかしながら、上述したように中央部分321は圧縮された状態で外管31の内部に嵌め込まれるため、圧縮に対抗する反発力により中央部分321と外管31及び内管33との接触面圧が生じ、これに相応する大きさの摩擦力により外管31に対する内管33の位置ずれが防止される。
【0032】
中間材32の中央部分321を構成する圧縮成形体の密度は、外管31と内管33との間に介装されている状態で100〜250kg/m
2であることが好ましい。密度が100kg/m
2未満の場合、反発力が小さくなるため、中間材32の中央部分312と外管31及び内管33との間で十分な摩擦力を得ることができないおそれがある。密度が250kg/m
2より大きい場合、性能上の問題は無いが、施工が困難となりコスト増につながるため、好ましくない。
【0033】
中間材32の中央部分321と外管31及び内管33との間に作用する摩擦力は20N/cm
2以上あることが好ましい。摩擦力が20N/cm
2未満の場合、鋳造時のショットの衝撃などにより内管1のずれが発生するおそれがある。
【0034】
中間材32の中央部分321を、上述したような耐熱性と靭性を兼ね備えた繊維質無機材料から形成することにより、外管31と内管33との熱膨張差によって中間材32が損傷するおそれがなくなる。また、中央部分321には、常温時、高温時を問わず、外管31と内管33の位置関係を大きくずらすことなく保持することが求められるが、上述した繊維質無機材料は、700〜800℃(アルミニウム溶湯温度)という高温の使用温度域でもへたることなく(クリープ変形することなく)形状を保つ。また、上述した繊維質無機材料は、加熱されることにより熱膨張する。従って、外管31と内管33との熱膨張差により外管31と内管33との間の隙間が変化しても、それに追従して中間材32がその厚さ方向に膨張または縮小する。このため、給湯管30の温度が変化しても、外管31と内管33との長手軸線方向の位置ずれを防止できる程度に上述した摩擦力を維持することが可能となる。
【0035】
上述のように中間材32の中央部分321を内管33に巻き付けると、中央部分321は周方向に関して不連続となる。つまり、内管33の外周面の周長に相応する幅を有する矩形の中央部分321を内管33に巻き付けると、矩形の反対側の辺同士が突き合わされることになる。この突き合わせ部には隙間が存在するので、この隙間に給湯管30の端部から溶湯が侵入する可能性がある。
【0036】
端部分322は、上記隙間への溶湯の侵入を防止する。端部分322は、平板形状の圧縮成形体を円環(リング)状に打ち抜くか切り抜くことにより製作することができる。このように製造された端部分322は周方向に関して連続しているので、上述した中央部分321の隙間に溶湯が侵入することを防止することができる。
【0037】
端部分322は、上述したように不連続部(切れ目)の無い円環形状であることが好ましいが、中央部分の321の上記隙間と端部分322の上記切れ目の円周方向位置が十分に離れているなら(例えば180度反対方向にあるなら)、端部分322に切れ目が存在していてもよい。
【0038】
端部分322を装着するために、中央部分321の長手軸線方向寸法(全長)を、内管33の長手軸線方向寸法(全長)よりも例えば2〜30mm短く設定する。すると、内管33の両端の外周面に長さ1〜15mm(
図3のX1を参照)の中央部分321により覆われていない部分が生じる。この部分に、外径が外管31の内径と概ね等しく内径が内管33の外径と概ね等しい円環状の端部分322を装着することができる。
【0039】
端部分322の厚さ(すなわち長手軸線方向寸法)は、内管33の両端の外周面の中央部分321により覆われていない部分の長さ(上記例では1〜15mmの範囲の値)と等しいかあるいはそれよりも大きく、かつ、1〜15mmとすることが好ましい。なお、端部分322の厚さに依存して、隣接する給湯管30同士を連結したときの端部分322の軸線方向の圧縮度合いが定まるが、端部分322の軸線方向圧縮度合いは、中央部分321の径方向圧縮度合いあるいは後述するパッキン材34の軸線方向圧縮度合いと同程度に大きくてもよいが、軽く圧縮されている程度でも構わない。端部分322の厚さが1mmよりも小さい場合、パッキン材の強度が低く、施工性も悪く、十分に機能しない。シート状、フェルト状またはブランケット状の商業的に入手可能な繊維質無機材料の圧縮成形体を用いることを考えると、端部分322の厚さは15mm以下であることが好ましい。
【0040】
なお、端部分322の厚さが15mmより大きくても溶湯シール性能上の問題は無いが、端部分322の厚さが大きくなるほど中央部分321の長さが短くなり、中央部分321と外管31及び内管33との接触面積が小さくなり摩擦力が小さくなる。このため、外管31に対する内管33のずれが生じない程度の摩擦力が確保されるような中央部分321の長さが確保されるように、端部分322の厚さを決定することが好ましい。中央部分321は、給湯管30の全長(長手軸線方向長さ)の80%以上の長さを有していることが好ましい。
【0041】
上記中間材32の中央部分321を構成する繊維質無機材料の圧縮成形体に耐熱性接着剤またはモルタル質材料を塗布または含浸して使用することも可能である。例えば、中央部分321を内管33に接着することは、その後に内管33を外管31に嵌め込むときの作業性の向上に寄与する。しかし、圧縮成形体がこのような材料により硬化して変形能が低下すると、給湯管が加熱されて外管31と内管33との隙間が広がったときに中央部分321が十分に追従できず、中央部分321と外管31及び内管33との間の摩擦力がゼロとなるか或いは大幅に低下するおそれがある。このため、接着材やモルタル系の硬質材料は外管31の内周面または内管33の外周面と中央部分321との接着のために、接着面に塗布する程度にとどめておくことが好ましい。
【0042】
内管33の長手軸線方向寸法は、外管1の長手軸線方向寸法よりも0.2〜10mm短い(
図3のX2を参照)。隣接する給湯管の互いに対向する内管33の端面同士の間(及び互いに対向する中間材32の端部分322の端面同士の間)に、パッキン材34を挟み込んだ状態で、隣接する給湯管30の外管31同士を締結具35で締結する。パッキン材34は、上述した中間材32と同じ材料により形成することができる。パッキン材34を構成する圧縮成形体の積層方向は、パッキン材34の厚さ方向つまり給湯管30の長手軸線方向とすることが好ましい。
【0043】
なお、外管31の長手軸線方向寸法と内管33の長手軸線方向寸法の差が0.2mm未満(つまり片側で外管31の端面と内管33の端面との間に生じる段差が0.1mm未満)の場合、鋳造装置のショットの時の衝撃を外管31と内管33が同時に受けてしまい、脆いセラミックス材料からなる内管33は損傷してしまう可能性がある。一方、外管31の長手軸線方向寸法と内管33の長手軸線方向寸法の差が10mmより大きいと、上記段差を埋めるためのパッキン材34が厚くなり、非鉄金属溶湯と接触する面積が増えることで劣化、摩耗が激しくなるおそれがある。
【0044】
中間材32またはパッキン材34を構成する繊維質無機材料に窒化ホウ素粉末等のセラミックス質粉末を混合することが好ましい。そうすることにより、非鉄金属溶湯に対する中間材32の濡れ性の低下ひいては耐溶損性の向上が達成される。セラミックス質粉末を繊維質無機材料に混合したとしても、得られる圧縮成形体の弾力性の低下は少ないため、性能に問題が生じることはない。
【0045】
中間材32またはパッキン材34は、シート状の繊維質無機材料の圧縮成形体を複数層積層することにより形成することもできる。なおこの場合、シート状の繊維質無機材料の圧縮成形体の層間に、窒化ホウ素粉末等のセラミックス質粉末を配置してもよい。
【0046】
図示例では、締結具35は、複数組のボルト35a/ナット35bからなる。外管31の端に設けられたフランジ31aには、円周方向に等間隔で複数の穴が設けられ、各穴にボルト35aが通され、各ボルト35aに螺合するナット35bを締め付けることにより、互いに対面するフランジ31a同士が密接して強固に結合される。このとき互いに対面する内管33の端面の間に弾性を有するパッキン材34が介設され、内管33の端面同士が直接接触しないので、内管33が破損するおそれはない。外管31は鉄系材料好ましくは鉄鋼材料で形成されているので、締結具35が発生する締結力(この場合ボルト35aの軸力)が負荷されても損傷することはない。
【0047】
締結具(ボルト35a)は、熱膨張率が外管31と同じか若しくは小さい材料から形成することが好ましい。締結具を構成する材料の熱膨張率が外管31を形成する材料の熱膨張率より大きいと、使用温度に加熱した際に締結力が低下して緩みが発生し、互いに対面するフランジ31a同士の隙間から溶湯が漏れるおそれがある。
【0048】
締結具は、ボルト35a/ナット35bに限定されず、隣接する給湯管30の外管31に作用して当該外管31の互いに対向する接触面(パッキンを介さずに直接接触する面)同士が押しつけ合うように締結力を印加できるものであれば、形式は任意である。例えば、互いに対向するフランジ31a同士が互いに押しつけ合うような力を発生させるクランプまたはバネのようなものであってもよい。
【0049】
パッキン材34の厚さすなわち長手軸線方向寸法は、給湯管同士の締結力(例えばボルト締結による軸力)により圧縮されたときのパッキン材34の厚さが、内管33と外管31の長手軸線方向寸法(全長)の差(これは隣接する給湯管30の内管33の端面間距離X3に等しい)と等しくなるようにする。パッキン材34は潰すこと(圧縮すること)で密度が上がり、非鉄金属溶湯の染み込みをより確実に防止する。パッキン材34の潰した後の密度が100〜250kg/m
2となるように、パッキン材34の厚さ及び上記端面間距離X3を定めることが好ましい。パッキン材34の圧縮が不十分であると、無機材料繊維の隙間に非金属溶湯が入り込みやすい状況になる。非鉄金属溶湯がパッキン材34内に染み込んでしまうとパッキン材34の弾性は低下し、溶湯漏出の原因となる。
【0050】
上記実施形態によれば、圧縮状態で外管31と内管33との間に挿入された繊維質無機材料の圧縮成形体からなる中間材32の中央部分321の反発力に起因する摩擦力により外管31と内管33とが相対的に移動することを防止することができる。また、上述した繊維質無機材料の圧縮成形体は耐熱性も高いため、上記の相対移動防止機能を長期間にわたって維持することができる。また、繊維質無機材料の圧縮成形体を圧縮状態で用いることにより、給湯管30の長手軸線方向の両端部から溶湯が中央部分321に向かって侵入しようとしたとしても、高密度の圧縮成形体には侵入し難い。
【0051】
また、繊維質無機材料の圧縮成形体からなる中間材32の端部分322により、製造上避けることが困難な中央部分321の周方向端部間の隙間に、溶湯が侵入することをより確実に防止することができる。
【0052】
また、給湯管30同士を連結する際に、互いに対向する内管33の端面同士の間にも繊維質無機材料の圧縮成形体からなるパッキン34が圧縮状態で挿入されるため、内管33の端面同士の隙間から、溶湯が中間材32側に向けて侵入することを防止することができる。
【0053】
外管31または内管33に特殊な保護層を設ける場合と比較して、繊維質無機材料の圧縮成形体は低コストで施工することができる。つまり、すなわち、上記実施形態によれば、給湯管30の製造コストの増大を抑制しつつ、鉄系材料からなるからなる外管を十分に保護することができ、かつ、外管31と内管33との間の相対的移動を防止することができる。
【0054】
図1及び
図2に記載した鋳造システムでは、給湯管30内に常時溶湯が存在しているので、給湯管30内の溶湯を保温するヒータ(図示せず)を設けることが好ましい。この場合、給湯管30内部にヒータを設けると、給湯管30の製造コスト及びメンテナンスコストが増大し、また、構造の複雑化により給湯管30の汎用性が低下する。従って、ヒータを設ける場合には、例えば、マントルヒータ、ジャケットヒータ等の給湯管30に対して容易に着脱することができるものが好ましい。
【0055】
なお、給湯管30とスリーブ16及び炉19に対する接続は、スリーブ16及び炉19に給湯管30の端部と同様の輪郭を有する溶湯耐性を有する材料からなる連結継手(図示せず)を設けることにより行うことができる。この図示しない連結継手と端の給湯管30との間はパッキン34によりシールすればよい。
【0056】
次に、中間材32の中央部分321が巻き付けられた内管33を、外管31に嵌め込む方法について説明する。
【0057】
まず、中間材32の中央部分321を構成する繊維無機質材料からなる圧縮成形体を、圧縮することにより厚みを減じた状態で、
図4(a)→
図4(b)に示すように内管33上に巻き付ける。このとき、内管33または中央部分321の表面に接着剤を塗布し、内管33と中央部分321とを接着してもよい。次いで
図4(c)に示すように、汎用のマスキングテープ40を、中央部分321の上に例えば螺旋状に巻き付ける。マスキングテープ40に強い張力を与えながら巻き付けることにより、中央部分321の圧縮状態を維持する助けとなる。
【0058】
次に、内管33、中央部分321及びマスキングテープ40の組立体(以下、「組立体33+321+40」)の一方の端に金属板41を当て、また、外管31の一端のフランジ部31aに設けられたボルト35a用の穴を利用したボルト/ナットによるねじ締結によって、金属板42をフランジ部31aに固定する。金属板41の中央部に形成された貫通穴に長尺ボルト43を差し込み、この長尺ボルト43に形成された雄ねじを金属板42の中央部に形成された雌ねじに螺合させる。この状態で長尺ボルト43を締め込むことにより、組立体33+321+40を外管31内に嵌め込むことができる。滑りやすいマスキングテープ40を用いること、あるいは外管31を暖めておくことが、容易な嵌め込みを行う上で有効である。なお、マスキングテープ40(内管33と中央部分321とを接着した場合には接着剤も)給湯管30使用時の熱により灰化して消失する。
【0059】
上記の嵌め込み方法は、廉価な治具(金属板41,42、長尺ボルト43等)により簡単に実行することができる。しかしながら、嵌め込み方法は上記のものに限定されるものではなく、他の方法、例えばプレス圧入機を用いてもよい。
【0060】
給湯管30が曲がり管の場合には、中間材32の中央部分321は、所謂エビ管を形成するときのように管軸方向に複数のピース(概ね裁頭扇形の)に分割される。中央部分321の各ピースは内管31上に圧縮した状態で接着剤により貼り付けられ、中央部分321の圧縮状態が維持されるように、張力を与えた状態で汎用のマスキングテープ40を中央部分321の上に例えば螺旋状に巻き付ける。これにより、内管33、中央部分321及びマスキングテープ40の組立体33+321+40が形成される。この組立体33+321+40が外管31の中に嵌め込まれる。
【0061】
嵌め込みは、例えば
図5に概略的に示す嵌め込み装置60を用いて行うことができる。嵌め込み装置60は、中心角が概ね270度の円弧状のアーム61を有し、アーム61の両端には円板形の内管固定プレート62が設けられている。アーム61は、軸受け63により、水平方向及び上下方向に不動に、かつ、鉛直軸線(
図5の紙面垂直方向)周りに回転可能に支持されている。アーム61の外周面の一部には、歯64が形成されている。歯64には図示しない駆動モータにより駆動される歯車65が噛み合っている。
【0062】
嵌め込み装置60は、外管31を保持するための複数の保持部材66を有している。外管31は、外管31の両端のフランジ部31aに設けられたボルト35a用の穴を利用してボルト/ナットによるねじ締結によって、保持部材66に固定することができる。
【0063】
上記組立体33+321+40の内管31内に、内管31の内径よりもやや小さな外径を有する芯金67が挿入される。この状態で、内管固定プレート62に設けられた貫通穴にボルト68が通され、このボルト68は芯金67の両端面に形成された雌ねじに螺合させられる。これにより、内管固定プレート62に内管31が固定される。この状態で、歯車65を駆動することにより、組立体33+321+40が外管31の中に嵌め込まれる。その後、ボルト68が取り外され、外管31が保持部材66から取り外される。以上により、外管31、中間材32の中央部分321及び内管33が結合された組立体が完成する。
【実施例】
【0064】
以下に本発明の一実施例についての試験結果について説明する。鋳造システムの構成は
図1及び
図2に示した通りであり、給湯管30の構造は
図3に示した通りである。外管31はオーステナイト系ステンレス鋼により形成した。中間材32及びパッキン34として、ムライト繊維のシートを、層間に蛭石(バーミキュライト)を配置して多層に積層させたもの(シート積層体)を用いた。内管31はサイアロンセラミックスにより形成した。
【0065】
内管33の外径を外管31の内径よりも3mm(半径で1.5mm)小さくした。内管33の長手軸線方向長さは、外管31の長手軸線方向長さよりも4mm(片側で2mm)小さくした。
図4(a)(b)に示すように、内管33の長手軸線方向長さよりも10mm短く切断した矩形の厚さ3.2mmの上記シート積層体からなる中間材32の中央部分321を、内管33の両端面からそれぞれ5mm離れた位置に中央部分321の両端が位置するように、内管33の上に巻き付けた。中央部分321を構成するシート積層体のシートの積層方向は中央部分321の厚さ方向(つまり給湯管30の径方向)である。次いで、
図4(c)に示すように、巻き付けた中間材32の中央部分321の外周全面に汎用マスキングテープ40を貼り、
図4(d)に示した治具を使用して、内管33の端面が外管31の端面よりも長手軸線方向に2mm入り込んだ位置にくるように外管31に嵌め込んだ。
【0066】
また、リング状に切断した厚さ5mmの上記シート積層体からなる中間材32の端部分322を、中央部分321が存在していない内管33と外管31との間の隙間に嵌め込んだ。端部分322を構成するシート積層体のシートの積層方向は、端部分322の厚さ方向(つまり給湯管の長手軸線方向)である。なお、詳細説明は省略するが、90度曲管としての給湯管30は、
図5の方法を用いて製造した。
【0067】
アルミニウム合金溶湯の保持炉19と鋳造装置(ダイカストマシン)のスリーブ16とを上記構成を有する4本の給湯管30を用いて接続した。外管31のフランジ部31aに通された複数本のボルト35aと各ボルト35aに螺合するナット35bにより外管31同士を強固に連結することにより、隣接する給湯管30同士を連結した。
図3に示されるように、隣接する給湯管31の間(内管33の対向面の間)に、リング状に切断した厚さ6mmの上記シート積層体からなるパッキン34を挿入した。従って、パッキン34の締め代は2mmである。パッキン34をシート積層体のシートの積層方向は、パッキン34の厚さ方向(つまり給湯管の長手軸線方向)とした。
【0068】
外管31の外周に、図示しないヒータ線を巻き付け、その周囲を図示しない断熱材で覆った。鋳造中、このヒータ線により給湯管30を加熱することにより、アルミニウム合金溶湯の温度低下を防止した。
【0069】
一般的なAl−Si−Cu系アルミニウム合金(ADC12相当材)を用いて300ショットの鋳造を行った。300ショットの鋳造の間、鋳造装置の振動とアルミニウム溶湯の熱を受けたにもかかわらず、給湯管30同士の連結部からアルミニウム溶湯の漏出は認められなかった。