(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、図面は、説明をより明確にするために模式的に表されている。このため、実際の態様と各部の幅、厚さ、形状等が異なる場合があるが、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明を適宜省略する場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1乃至
図9を用い、第1実施形態に係るアクティブマトリクス基板に適用される半導体装置について説明する。
【0011】
[1.構成]
1−1.断面構成
図1を用い、第1実施形態に係るアクティブマトリクス基板に適用される半導体装置1Aについて説明する。
図1は、第1実施形態に係るアクティブマトリクス基板に適用される半導体装置1Aの一例を概略的に示す断面図である。
図1において、絶縁基板10の基板面と平行な水平方向をX方向とし、X方向とほぼ直角に交差する方向をY方向として示す。尚、ここでは、半導体装置1Aは、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置を一例に挙げて説明するが、後述するように、これに限定されることはない。
【0012】
図1に示すように、半導体装置1Aは、絶縁基板10を含む基板上に設けられた第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrBを備える。
【0013】
基板は、絶縁基板10と、絶縁基板10上に設けられ絶縁基板10内の不純物の拡散を防止するための下地層(アンダーコート層)19と、により構成される。
【0014】
絶縁基板10は、画素領域DAと画素領域DAの周辺の周辺回路領域PAとを含む。絶縁基板10は、例えばガラス、樹脂等の絶縁材料により形成される。
【0015】
下地層(アンダーコート層)19は、画素領域DAに設けられる下地層19Aと、周辺回路領域PAに設けられる下地層19Bとを含む。画素領域DAの下地層19Aは、絶縁基板10上に設けられる第1絶縁層11と、第1絶縁層11上に設けられる第2絶縁層12Aとを備える。周辺回路領域PAの下地層19Bは、絶縁基板10上に設けられる第1絶縁層11と、第1絶縁層11上に設けられる第2絶縁層12Bとを備える。
【0016】
第1絶縁層11は、少なくとも窒素(N)を含む絶縁材料で形成される。第1絶縁層11は、例えばシリコン窒化(Si
3N
4)膜またはシリコン酸窒化(SiON)膜等により形成される。また、第1絶縁層11の膜厚T11は、例えば200nm程度であり、画素領域DAおよび周辺回路領域PAにおいて、実質的に等しい(共通の)膜厚となるように設けられる。
【0017】
第2絶縁層12A,12Bは、少なくとも酸素(O)を含む絶縁材料で形成される。第2絶縁層12A,12Bは、例えばシリコン酸化膜(SiO
2)等により形成される。画素領域DAの第2絶縁層12Aの膜厚T12Aは、例えば50nmから100nm程度である。周辺回路領域PAの第2絶縁層12Bの膜厚T12Bは、例えば200nm程度である。従って、周辺回路領域PAの第2絶縁層12Bの膜厚T12Bは、画素領域DAの第2絶縁層12Aの膜厚T12Aよりも厚くなるように構成(T12B>T12A)される。その結果、周辺回路領域PAの下地層19Bの膜厚TBは、画素領域DAの下地層19Aの膜厚TAよりも厚くなるように構成(TB>TA)される。
【0018】
(第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrB)
第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrBは、例えばn型のトップゲート型の薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)である。第1薄膜トランジスタTrAは、第2半導体層12A上に設けられる酸化物半導体層13Aを備える。第2薄膜トランジスタTrBは、第2半導体層12B上に設けられる酸化物半導体層13Bを備える。
【0019】
酸化物半導体層13A、13Bは、図示しないソース/ドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域との間に設けられたチャネル領域とを含む。酸化物半導体層13A、13Bは、例えば酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の透明アモルファス半導体(TAOS;Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)により形成される。尚、酸化物半導体層13A、13Bを形成する材料は、例えばインジウム(In)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)の少なくとも1つを含んでいればよく、例えば酸化インジウムガリウム(IGO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛スズ(ZnSnO)、酸化亜鉛(ZnO)等でもよい。
【0020】
後述するように、画素領域DAの酸化物半導体層13Aは、周辺回路領域PAの酸化物半導体層13Bに比べて、キャリア密度が高く、より低抵抗化されている。そのため、第1薄膜トランジスタTrAのしきい値電圧VthAは、第2薄膜トランジスタTrBのしきい値電圧VthBよりも低くなるように構成(VthA<VthB)される。
【0021】
酸化物半導体層13A,13Bのチャネル領域上には、例えばシリコン酸化(SiO)膜等により形成されたゲート絶縁膜14が設けられる。
【0022】
ゲート絶縁膜14上には、例えばチタン、アルミニウム、および窒化モリブデンの層構造等の金属膜により形成される、ゲート電極15が設けられる。ゲート電極15は、例えばアルミニウム(Al)の合金、銅(Cu)、銅(Cu)のその他、これらの合金等であってもよい。
【0023】
第1、第2トランジスタTrA、TrB上を覆うように、例えばシリコン酸化膜等により形成された層間絶縁膜16、18が設けられる。層間絶縁膜16、18中に、酸化物半導体層13A,13Bの各ソース/ドレイン領域上にソース/ドレインコンタクト配線17がそれぞれ設けられる。
【0024】
尚、ここでは図示しないが、半導体装置1Aは、層間絶縁膜18上に更に対応基板等を備えてもよい。
【0025】
1−2.しきい値電圧
図2を用い、上記構成の第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrBのしきい値電圧について説明する。
図2は、第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrBのしきい値電圧を説明するための図であって、第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrBのゲート電圧Vgとドレイン電流Idとの関係をそれぞれ示している。
【0026】
図2に示すように、第1薄膜トランジスタTrAのしきい値電圧VthAは、第2薄膜トランジスタTrBのしきい値電圧VthBよりも低くなるように構成(VthA<VthB)される。これは、上述の通り、画素領域DAの酸化物半導体層13Aは、周辺回路領域PAの酸化物半導体層13Bに比べて、キャリア密度が高く、より低抵抗化されているからである。
【0027】
上記構成によれば、例えば
図2に示すように、各ゲート電極にゲート電圧Vg1が印加された場合、第1薄膜トランジスタTrAでは、ゲート電圧Vg1がしきい値電圧VthAよりも十分に大きい。そのため、第1薄膜トランジスタTrAの電流経路は導通状態となり、酸化物半導体装置13Aのチャネル領域には十分に大きいドレイン電流IdAが流れる。一方、この場合、第2薄膜トランジスタTrBでは、ゲート電圧Vg1がしきい値電圧VthBよりも小さい。そのため、第2薄膜トランジスタTrBの電流経路は非導通状態となり、酸化物半導体装置13Bのチャネル領域には十分に小さいドレイン電流IdBしか流れない。
【0028】
その結果、同じゲート電圧Vg1を与えた場合であっても、画素領域DAではより大きなドレイン電流IdAを得ることで画質の向上に寄与でき、周辺領域PAではわずかなドレイン電流IdBに抑えることでリーク電流を小さく抑えることができ、消費電力を低減することができる。
【0029】
[2.製造方法]
次に、
図3乃至
図9を用い、第1実施形態に係る半導体装置1Aの製造方法について説明する。
【0030】
図3に示すように、画素領域DAおよび周辺回路領域PAの絶縁基板10上に、例えばプラズマ化学的気相成長法(プラズマCVD法)を用いて、200nm程度の膜厚T11のシリコン窒化膜を堆積し、第1絶縁層11を形成する。上記プラズマCVD法により第1絶縁層11を形成する際、成膜温度は300℃から400℃程度であって、例えばシラン(SiH
4),アンモニア(NH
3)等の水素(H)を含む反応ガスを用いて発生させたプラズマを利用する。そのため、第1絶縁層11は、上記反応ガス中の水素(H)の一部を含んだ状態で形成される。
【0031】
続いて、
図4に示すように、画素領域DAおよび周辺回路領域PAの第1絶縁層11上に、例えばプラズマCVD法を用いて、200nm程度の膜厚T12Bのシリコン酸化膜を堆積し、第2絶縁層12を形成する。同様に、プラズマCVD法により第2絶縁層12を形成する際、例えばシラン(SiH
4)、一酸化二窒素(N
2O)等の水素(H)を含む反応ガスを用いて発生させたプラズマを利用する。そのため、第2絶縁層12を形成する際でも同様に、第1絶縁層11は、上記反応ガス中の水素(H)の一部を含む。
【0032】
続いて、第2絶縁層12上の全面上にフォトレジスト20を塗布し、画素領域DAの第2絶縁層12Aの表面上が露出するように、フォトレジスト20をパターニングする。続いて、パターニングされたフォトレジスト20をマスクとして、例えばRIE法のドライエッチングや所定のウェットエッチング等のエッチングを行い、画素領域DAの第2絶縁層12Aの膜厚T12Aを、Y方向に例えば50nmから100nm程度となるまで薄膜化する。その結果、周辺回路領域PAの第2絶縁層12Bの膜厚T12Bは、画素領域DAの第2絶縁層12Aの膜厚T12Aの膜厚よりも、厚く(T12B>T12A)形成される。
【0033】
続いて、
図5に示すように、周辺回路領域PAのフォトレジスト20を除去し、画素領域DAの第1、第2絶縁層11、12Aにより構成される下地層19Aと、周辺回路領域PAの第1、第2絶縁層11、12Bにより構成される下地層19Bとを形成する。その結果、周辺回路領域PAの下地層19Bの膜厚TBは、画素領域DAの下地層19Aの膜厚TAよりも、厚く(TB>TA)形成される。
【0034】
続いて、
図6に示すように、第2絶縁層12A、12B上に、例えばスパッタ法を用いてインジウム(In)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)の少なくとも1つを含み、所望の形状にパターニングされた酸化物半導体層13A、13Bを形成する。
【0035】
この工程の際の第1絶縁層11の温度は、成膜温度である300℃から400℃程度となる。そのため、第1絶縁層11に含まれていた水素(H)が、第1絶縁層11から周囲に拡散する。ここで、周辺回路領域PAの第2絶縁層12Bの膜厚T12Bは、画素領域DAの第2絶縁層12Aの膜厚T12Aの膜厚よりも、厚く(T12B>T12A)形成されている。そのため、周辺回路領域PAでは、第2絶縁層12Bが拡散された水素のバリアとして働き、拡散された水素が酸化物半導体層13Bへ拡散することを防止する。
【0036】
一方、画素領域DAでは、第1絶縁層11Aの膜厚が薄いため、拡散された水素が酸化物半導体層13Aに到達する。そのため、酸化物半導体層13Aに到達した水素により、酸化物半導体層13Aは、酸化物半導体層13Bと比較して、その水素の密度がより増大される。
【0037】
尚、酸化物半導体層13Aへの水素拡散は、第1、第2の薄膜トランジスタTrA、TrBのしきい値電圧を制御するためであり、水素は、酸化物半導体層13Aの下面に限らず、酸化物半導体層13A内の全体的に拡散し得る。また、上記第1絶縁層11からの水素の拡散は、酸化物半導体層13A、13Bの形成工程に限定されるものではない。第1絶縁層11の温度が成膜温度である300℃から400℃程度となる工程であれば、同様に第1絶縁層11から水素が拡散し得る。例えば、後述するように、第1、第2の薄膜トランジスタTrA、TrBを形成した後のアニール処理を利用することにより、第1、第2の薄膜トランジスタTrA、TrBのしきい値電圧を制御してもよい。
【0038】
続いて、全面上に、例えばCVD法を用いて、酸化物半導体層13A、13B上を覆うゲート絶縁膜となるためのシリコン酸化膜を形成する。続いて、形成したシリコン酸化膜上に、例えばスパッタ法を用いて、ゲート電極となるための金属膜を形成する。金属膜は、例えばチタン、アルミニウム、および窒化モリブデンの層構造により形成される。
【0039】
続いて、
図7に示すように、金属膜上に、酸化物半導体層13A、13Bのほぼ中央と対応してパターニングされたフォトレジスト(図示せず)をマスクとして、例えば所定のエッチング処理を行い、各ゲート電極15を形成する。続いて、所定のドライエッチング等を用い、シリコン酸化膜をエッチングし、各ゲート絶縁膜14を形成する。このエッチング工程の際、ゲート電極15およびゲート絶縁膜14が形成されない領域では、酸化物半導体層13A、13Bがオーバーエッチされる。酸化物半導体層13A、13Bのオーバーエッチされた領域では、酸素欠損が生成され、nチャネルMOSトランジスタのキャリア密度が高く、低抵抗化されたソース/ドレイン領域が形成される。また、酸化物半導体層13A、13Bのうちオーバーエッチされない領域、すなわちゲート絶縁膜14に覆われた領域は、ソース/ドレイン領域よりキャリア密度が低いチャネル領域が形成される。酸化物半導体層13A、13Bのチャネル領域内のキャリア密度は、前述した水素密度に従って制御され、酸化物半導体層13Aのキャリア密度は、酸化物半導体層13Bのキャリア密度より増大している。
【0040】
続いて、
図8に示すように、全面上に、例えばCVD法を用いて、ゲート電極15上を覆うようにシリコン酸化膜を形成し、層間絶縁膜16を形成する。続いて、層間絶縁膜16中に、例えばRIE法等を用いて、酸化物半導体層13A、13Bの各ソース/ドレイン領域上まで達するコンタクトホール161をそれぞれ形成する。
【0041】
続いて、
図9に示すように、各コンタクトホール161中に、例えばスパッタ法等を用いて、モリブデン、アルミニウム、および窒化モリブデン等の積層構造からなる金属膜を埋め込み、ソース/ドレイン領域のコンタクト配線17をそれぞれ形成する。続いて、全面上に、例えば同様の工程により、シリコン酸化膜を形成し、図示しない層間絶縁膜18を形成する。
【0042】
以上の製造方法により、
図1に示す第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrBを備える半導体装置1Aを製造する。
【0043】
[作用効果]
以上説明したように、第1実施形態に係る周辺回路領域PAの第2絶縁層12Bの膜厚T12Bは、画素領域DAの第2絶縁層12Aの膜厚T12Aよりも厚くなるように(T12B>T12A)構成される。その結果、周辺回路領域PAの下地層19Bの膜厚TBは、画素領域DAの下地層19Aの膜厚TAよりも厚くなるように(TB>TA)構成される。
【0044】
上記構成において、
図6に示した酸化物半導体層13の形成工程の際、周辺回路領域PAでは、第2絶縁層12Bが第1絶縁層11から拡散された水素のバリアとして働き、酸化物半導体層13Bへ水素が拡散することを防止する。一方、画素領域DAでは、第2絶縁層12Aの膜厚が薄いため、第1絶縁層11から拡散された水素が酸化物半導体層13Aに到達する。酸化物半導体層13Aに到達した水素により、酸化物半導体層13Aのキャリア密度を増大化させ、酸化物半導体層13Aをより低抵抗化させる。
【0045】
このようにすることで、画素領域DAおよび周辺回路領域PAにおいて、互いに隣接して配置される第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrBのしきい値電圧VthA、VthBを作り分けることができる。例えば、第1薄膜トランジスタTrAのしきい値電圧VthAは、第2薄膜トランジスタTrBのしきい値電圧VthBよりも低くなるように構成(VthA<VthB)される。
【0046】
上記構成によれば、例えば
図2に示したように、同じゲート電圧Vg1を与えた場合であっても、画素領域DAではより大きなドレイン電流IdAを得ることで画質の向上に寄与できる。一方、周辺回路領域PAではわずかなドレイン電流IdBに抑えることでリーク電流を小さく抑えることができるので、消費電力を低減することができる点で有利である。
【0047】
しかも、上記しきい値電圧VthA、VthBを作り分けることに際しては、
図4に示したエッチング処理において、例えばエッチング時間等を制御することにより、画素領域DAの第2絶縁層12Aの膜厚T12Aの薄膜化を制御するだけでよい。例えば、エッチング時間をより長く制御することにより、膜厚T12Aを50nm程度まで薄膜化すれば、しきい値電圧VthAをより低く形成することができる。そのため、製造コストの低減に対しても有利である。
【0048】
(変形例1)
図10乃至
図12を用いて、第1実施形態に係る半導体装置1Aの他の製造方法について説明する。構成に関しては、第1実施形態と実質的に同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0049】
[製造方法]
図10に示すように、画素領域DAおよび周辺回路領域PAの絶縁基板10上に、例えばプラズマCVD法を用いて、200nm程度の膜厚T11のシリコン窒化膜を堆積し、第1絶縁層11を形成する。
【0050】
続いて、画素領域DAおよび周辺回路領域PAの第1絶縁層11上に、例えばプラズマCVD法を用いて、100nm程度の膜厚T121のシリコン酸化膜を堆積し、絶縁層121を形成する。
【0051】
続いて、
図11に示すように、全面上にフォトレジスト21を塗布し、画素領域DAの絶縁層121の表面上が露出するように、フォトレジスト21をパターニングする。続いて、パターニングしたフォトレジスト21をマスクとして、Y方向に例えばRIE法等のエッチングを第1絶縁層11の表面上まで行い、画素領域DAの絶縁層121を除去する。
【0052】
続いて、
図12に示すように、周辺回路領域PAのフォトレジスト21を除去し、画素領域DAおよび周辺回路領域PAの全面上に、例えばプラズマCVD法を用いて、100nm程度の膜厚T122のシリコン酸化膜を堆積し、絶縁層122を形成する。
【0053】
その結果、画素領域DAでは、第1絶縁層11と、第2絶縁層122(12A)とにより構成される下地層19Aを形成する。周辺回路領域PAでは、第1絶縁層11と、第2絶縁層121,122(12B)とにより構成される下地層19Bを形成する。そのため、周辺回路領域PAの下地層19Bの膜厚TBは、画素領域DAの下地層19Aの膜厚TAよりも、厚く(TB>TA)形成される。
【0054】
その後、上述した第1実施形態の製造方法と同様の製造方法を用い、半導体装置1Aを製造する。
【0055】
[作用効果]
変形例1の構成およびその製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、変形例1では、画素領域DAの絶縁層121を除去した後、画素領域DAおよび周辺回路領域PAの全面上に絶縁層122を形成する(
図11、
図12)。このように、画素領域DAの絶縁層121を除去し、第2絶縁層121,122を形成することで、より確実に画素領域DAと周辺回路領域PAとの膜厚差(TB>TA)を形成することができる。そのため、より確実にしきい値電圧VthA、VthBの差(VthB>VthA)を設けることができる点で有利である。
【0056】
(変形例2(画素領域の下地層が第2絶縁層を備えない一例))
図13を用い、第1実施形態の変形例2に係る半導体装置1Bについて説明する。変形例2に係る半導体装置1Bは、画素領域DAの下地層19Aが第2絶縁層12を備えない一例に関する。
図13は、変形例2に係るアクティブマトリクス基板に適用される半導体装置1Bの一例を概略的に示す断面図である。
【0057】
[構成]
図13に示すように、変形例2に係る半導体装置1Bは、第1実施形態および変形例1と比較し、画素領域DAの下地層19Aが第2絶縁層12Aを備えておらず、下地層19Aが第1絶縁層11のみで構成される。換言すると、変形例2に係る画素領域DAの下地層19Aの第2絶縁層12Aの膜厚は、実質的に0である。
【0058】
その他の構成は、第1実施形態および変形例1と実施的に同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0059】
[製造方法]
製造方法に関しては、第1実施形態と比較し、
図4に示したエッチング工程において、例えばエッチング時間を第1実施形態よりもより長く制御し、第1絶縁層11の表面上が露出するまで、画素領域DAの第2絶縁層12Aをエッチングする点で相違する。換言すると、このエッチング工程において、第2絶縁層12Aの膜厚T12Aが、実質的に0となるまでエッチングを継続する。
【0060】
その他の構成は、第1実施形態および変形例1と実質的に同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0061】
[作用効果]
変形例2に係る半導体装置1Bは、画素領域DAの下地層19Aが第2絶縁層12Aを備えておらず、下地層19Aが第1絶縁層11のみで構成される。
【0062】
そのため、画素領域DAの下地層19Aは、第1絶縁層11から拡散する水素を防止するためのバリアとして働く第2絶縁層12を備えていない。従って、第1絶縁層11から拡散した水素は、直接的に酸化物半導体層13Aに拡散する。その結果、変形例2に係る酸化物半導体層13Aは、第1実施形態および変形例1と比較して、よりキャリア密度が増大され、より低抵抗化される。このように、変形例2では、より直接的かつ確実にしきい値電圧VthA、VthBの差(VthB>VthA)を設けることができる点で有利である。
【0063】
また、画素領域DAの第2絶縁層を全て除去するため、第1の実施形態に比べて、薄い第2絶縁層12Aを残す制御が不要である。したがって、第1の実施形態に比べて製造を容易化することが可能である。
【0064】
(第2実施形態(水素の発生源としての第1絶縁層の膜厚を制御する一例))
図14乃至
図17を用い、第2実施形態に係る半導体装置1Cの構成およびその製造方法について説明する。第2実施形態は、水素(H)の発生源としての第1絶縁層11の膜厚を制御する一例に関する。この説明に関し、第1実施形態と実質的に重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0065】
[構成]
ここで、第1実施形態では、画素領域DAおよび周辺回路領域PAにおいて、水素の発生源としての第1絶縁層11の膜厚T11は等しい(共通である)一方、水素の拡散を防止するためのバリア層としての第2絶縁層12の膜厚に差を設けていた。
【0066】
これに対して、
図14に示す第2実施形態では、画素領域DAの第1絶縁層11Aの膜厚T11Aは、周辺回路領域PAの第1絶縁層11Bの膜厚T11Bよりも、厚くなるように構成(T11A>T11B)される。一方、第2絶縁層12の膜厚T12は、画素領域DAおよび周辺回路領域PAにおいて実質的に等しく同一である。その結果、第2実施形態では、周辺回路領域PAの下地層19Bの膜厚TBは、画素領域DAの下地層19Aの膜厚TAよりも、薄くなるように構成(TB<TA)される。
【0067】
上記のように下地層19A,19Bが構成されることで、画素領域DAの第1絶縁層11Aから発生する水素(H)の量は、周辺回路領域PAの第1絶縁層11Bから発生する水素(H)の量よりも多くなる。一方、当該水素(H)の拡散を防止するバリア層としての第2絶縁層12の膜厚T12は、画素領域DAおよび周辺回路領域PAで一定である。
【0068】
そのため、画素領域DAの酸化物半導体層13Aは、周辺回路領域PAの酸化物半導体層13Bに比べ、キャリア密度が増大し、低抵抗化される。その結果、同様に、第1薄膜トランジスタTrAのしきい値電圧VthAは、第2薄膜トランジスタTrBのしきい値電圧VthBよりも低くなるように構成(VthA<VthB)される。
【0069】
その他の構成については、実質的に第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0070】
[製造方法]
次に、
図15乃至
図17を用い、第2実施形態に係る半導体装置1Cの製造方法について説明する。
【0071】
図15に示すように、画素領域DAおよび周辺回路領域PAの絶縁基板10上に、例えばプラズマCVD法を用いて、200nm程度の膜厚T11Aのシリコン窒化(SiN)膜を堆積し、第1絶縁層11を形成する。同様に、第1絶縁層11を形成する際、成膜温度は300℃から400℃程度であって、プラズマCVDの反応ガスとして水素(H)を用いる。そのため、第1絶縁層11は、上記水素(H)を含んだ状態で形成される。
【0072】
続いて、全面上にフォトレジスト22を塗布し、周辺回路領域PAの第1絶縁層11の表面上が露出するように、フォトレジスト22をパターニングする。続いて、パターニングしたフォトレジスト22をマスクとして、例えばRIE法等のエッチングを行い、エッチング時間等を制御し、周辺回路領域PAの第1絶縁層11の膜厚T11Bを、Y方向に例えば100nm程度まで薄膜化する。
【0073】
続いて、
図16に示すように、フォトレジスト22を除去する。その結果、周辺回路領域PAの第1絶縁層11Bの膜厚T11Bを、画素領域DAの第1絶縁層11Aの膜厚T11Aよりも、薄くなるように(T11B<T11A)形成する。
【0074】
続いて、
図17に示すように、同様に、画素領域DAおよび周辺回路領域PAの第1絶縁層11A,11B上に、例えばプラズマCVD法を用いて、200nm程度の膜厚T12のシリコン酸化膜を堆積し、第2絶縁層12を形成する。その結果、画素領域DAの第1、第2絶縁層11A、12により構成される下地層19Aと、周辺回路領域PAの第1、第2絶縁層11B、12により構成される下地層19Bとを形成する。従って、周辺回路領域PAの下地層19Bの膜厚TBは、画素領域DAの下地層19Aの膜厚TAよりも、薄くなるように(TB<TA)形成される。
【0075】
以後、上記と同様の製造方法を用い、第2実施形態に係る半導体装置1Cを製造する。
【0076】
[作用効果]
第2実施形態の構成および製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、必要に応じて、第2実施形態を適用することが可能である。
【0077】
(適用例(有機EL表示装置))
図18および
図19を用い、第1、第2実施形態および変形例1、2に係る半導体装置1Aから1Cが適用され得る表示装置の一例を説明する。
図18に示す表示装置1は、例えば有機EL素子を有するアクティブマトリクス型の有機EL表示装置である。尚、ここで説明する有機EL表示装置1は、一例であって、これに限定されない。
【0078】
[表示装置の全体構成]
図18を用い、表示装置1の全体構成について説明する。
図18は、第1、第2実施形態および変形例1に係るアクティブマトリクス基板が適用される表示装置1の一例を概略的に示すブロック図である。図示するように、表示装置1は、画素領域DAと、画素領域DAの周辺の周辺回路領域PAに配置される駆動部とを備える。駆動部は、第1走査線駆動回路3、第2走査線駆動回路4、データ線駆動回路5、制御回路6、電源回路7を含む。
【0079】
第1走査線駆動回路3と第2走査線駆動回路4は、例えば画素領域DAの行方向両側近傍に配置され、データ線駆動回路5、制御回路6、電源回路7は、画素領域DAの列方向の片側近傍に配置されている。第1走査線駆動回路3、第2走査線駆動回路4、データ線駆動回路5は、少なくとも一部が、表示装置1を構成する図示せぬパネル上に形成される。
【0080】
画素領域DAは、マトリクス状(行列状)に配置された複数の画素PXを備える。画素領域DAには、これらの画素PXに対応して、行方向に配置された複数の第1走査線WLおよび複数の第2走査線RL、行方向と交わる列方向に配置された複数のデータ線DL等が配置される。
【0081】
第1、第2実施形態および変形例1、2に係る第1薄膜トランジスタTrAは、後述するように、画素領域DAの画素PXに含まれるスイッチング素子に適用される。第2薄膜トランジスタTrBは、周辺回路領域PAにおける保護回路等の周辺回路に配置される周辺トランジスタに適用される。
【0082】
各第1走査線WLは、画素領域DAの外部に延出され、第1走査線駆動回路3と電気的に接続される。各第2走査線RLは、画素領域DAの外部に延出され、第2走査線駆動回路4と電気的に接続される。各データ線DLは、画素領域DAの外部に延出され、データ線駆動回路5と電気的に接続される。
【0083】
第1走査線駆動回路3は、各第1走査線WLに対して、書き込み走査信号WSを順次供給する。これにより、行方向に配置された複数の画素PXが順次選択される。
【0084】
第2走査線駆動回路4は、第1走査線駆動回路3により供給される書き込み走査信号WSと同期して、第2走査線RLに駆動走査信号AZを供給する。これにより、画素PXの発光動作および消光動作が制御される。
【0085】
データ線駆動回路5は、データ線DLに対して、例えば信号電圧Vsigと、基準電圧Vofsとを選択的に供給する。信号電圧Vsigは、映像信号の輝度に応じた信号の電圧である。基準電圧Vofsは、信号電圧の基準となる電圧であり、例えば黒レベルを示す信号の電圧に相当する。基準電圧Vofsは、後述する有機EL素子を駆動する駆動トランジスタのしきい値電圧のばらつきを補正するためにも用いられる。
【0086】
制御回路6は、外部信号源から供給される外部信号に基づいて、画素領域DAに画像を表示するために必要な各種信号を生成する。制御回路6は、生成した各種信号を、第1走査線駆動回路3、第2走査線駆動回路4、データ線駆動回路5にそれぞれ出力するとともに、第1走査線駆動回路3、第2走査線駆動回路4、データ線駆動回路5が互いに同期して動作するように制御する。
【0087】
[画素領域および周辺回路領域の詳細構成]
次に、
図19を用い、表示装置1の画素領域DAおよび周辺回路領域PAの構成について詳細に説明する。
図19は、画素領域DAの画素PXおよび周辺回路領域PAの構成の一例を概略的に示す等価回路図である。
【0088】
(画素PX)
図示するように、画素PXは、書き込みトランジスタTr1、駆動トランジスタTr2、リセットトランジスタTr3、容量素子Cs、発光素子ELを備える。書き込みトランジスタTr1、駆動トランジスタTr2、リセットトランジスタTr3は、第1薄膜トランジスタTrAである。
【0089】
書き込みトランジスタTr1はゲート電極が第1走査線WLに接続され、ソース/ドレイン電極の一方がデータ線DLに接続され、他方が容量素子Csの第1電極と駆動トランジスタTr2のゲート電極とに接続される。
【0090】
駆動トランジスタTr2のソース/ドレイン電極の一方は電源電圧Vccが供給される配線に接続され、他方は発光素子ELのアノード電極、容量素子Csの第2電極、およびリセットトランジスタTr3のソース/ドレイン電極の一方に接続される。発光素子ELのカソード電極には、カソード電圧Vcathが供給される。
【0091】
リセットトランジスタTr3のゲート電極は、第2走査線RLに接続され、ソース/ドレイン電極の他方は固定電圧Viniが供給される配線に接続される。
【0092】
上記構成の画素PXにおいて、書き込みトランジスタTr1は、第1走査線WLに書き込み走査信号WSが供給された場合、導通状態となる。導通状態において、書き込みトランジスタTr1は、データ線DLを介して供給される信号電圧Vsigまたは基準電圧Vofsを、駆動トランジスタTr2のゲート電極に供給する。容量素子Csは、信号電圧Vsigまたは基準電圧Vofsを保持する。駆動トランジスタTr2は、容量素子Csに保持された電圧がしきい値電圧を超えると導通し、容量素子Csに保持された電圧に基づく電流を発光素子ELに供給する。発光素子ELは、駆動トランジスタTr2から供給される電流に対応した輝度で発光する。
【0093】
リセットトランジスタTr3は、第2走査線RLに駆動走査信号AZが供給された場合、導通状態となる。導通状態において、リセットトランジスタTr3は、固定電圧Viniを、駆動トランジスタTr2のソース電極及び発光素子ELのアノード電極に供給し、これらの電極の電圧を固定電圧Viniにリセット(初期化)する。ここで、発光素子ELのしきい値電圧をVthとした場合、しきい値電圧Vthとカソード電圧Vcath、及び固定電圧Viniの関係は、次式で表される。
【0094】
Vini<Vth+Vcath
(周辺回路)
次に、周辺回路領域PAに配置される周辺回路について説明する。ここでは、周辺回路の一例として、静電気放電(ESD;electro-static discharge)から画素領域DAに配置される画素PXを保護するための保護回路ESDを説明する。
【0095】
保護回路ESDは、2つの保護トランジスタTr4、Tr5を備える。これら2つの保護トランジスタTr4、Tr5は、第2薄膜トランジスタTrBである。
【0096】
保護トランジスタTr4のゲート電極は第1走査線WLおよび配線L1を介してソース/ドレイン電極の一方に接続され、ソース/ドレイン電極の他方は配線L2を介して保護トランジスタTr5のゲート電極およびデータ線DLに接続される。
【0097】
保護トランジスタTr5のゲート電極は配線L2を介してソース/ドレイン電極の一方に接続され、ソース/ドレイン電極の他方は保護トランジスタTr4のソース/ドレイン電極の一方、配線L1を介して保護トランジスタTr4のゲート電極および第1走査線WLに接続される。
【0098】
上記保護回路ESDの構成において、例えば静電気放電等によって第1走査線WLに、保護トランジスタTr4、Tr5のしきい値電圧VthBよりも高電圧である電圧Vesdが印加された場合を考える。この場合、電圧Vesdがしきい値電圧VthBよりも大きいため、保護トランジスタTr4、Tr5の電流経路が導通状態となり、ドレイン電流を流せる状態となる。そのため、高電圧であるVesdは、導通状態となった保護トランジスタTr4、Tr5の電流経路および配線L1、L2を介して、画素領域DAの画素PXに印加されることなく、データ線DLを介して周辺回路領域PAに印加される。
【0099】
このように、上記保護動作によって、静電気放電による高電圧Vesdから、画素領域DAの画素PXを保護することができる。
【0100】
[作用効果]
上記構成の表示装置1に、第1、第2実施形態および変形例1、2に係るアクティブマトリクス基板および第1、第2薄膜トランジスタTrA、TrBを適用することにより、表示装置1の画質および信頼性を向上でき、リーク電流および消費電力を低減できる。
【0101】
(その他の適用例)
表示装置は、上記適用例で説明した有機EL表示装置1に限らず、例えば液晶層を有する液晶表示装置等のその他の表示装置であってもよい。
【0102】
さらに、半導体装置1Aから1Cは、表示装置に限定されず、例えば撮像装置等にも適用可能である。当該撮像装置では、画素領域PAに配置された複数の画素を構成する各トランジスタに第1薄膜トランジスタTrAを適用し、画素領域DAの周辺の周辺回路領域PAに配置された周辺回路を構成する周辺トランジスタ等に第2薄膜トランジスタTrBを適用することが可能である。
【0103】
また、第2薄膜トランジスタTrBが適用可能な周辺回路は、保護回路ESDに限定されない。第2薄膜トランジスタTrBは、例えば、周辺回路領域PAに配置された画素PXの画質を検査するための検査トランジスタ等にも適用可能である。当該検査トランジスタのソース/ドレイン電極の一端は、画素領域DAの画素PXに接続されたデータバス線に電気的に接続される。検査トランジスタのオン/オフに応じて電気的に接続された画素PXが正常な輝度にて発行するか否かに基づいて、画素領域PAを検査する。
【0104】
尚、第1、第2実施形態および変形例1、2の開示された内容を組み合わせた構成および製造方法等についても同様に適用可能であることは勿論である。
【0105】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。