特許第6594823号(P6594823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594823
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】液体ブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/46 20060101AFI20191010BHJP
   B29C 49/12 20060101ALI20191010BHJP
   B65D 1/00 20060101ALN20191010BHJP
【FI】
   B29C49/46
   B29C49/12
   !B65D1/00 120
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-91805(P2016-91805)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-196872(P2017-196872A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正人
(72)【発明者】
【氏名】塩川 満
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−160432(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/209341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のプリフォームから内容液を収容した液体入り容器を成形する液体ブロー成形方法であって、
供給路を介してポンプに接続されたブローノズルを前記プリフォームの口部に係合させるノズル係合工程と、
前記ポンプから前記供給路と前記ブローノズルとを通して前記プリフォームの内部に加圧した液体を供給して該プリフォームを所定形状の容器に成形する成形工程と、
前記ポンプを逆方向に作動させ、前記成形工程において所定形状に成形された容器の内部から前記供給路に所定量の液体を吸い戻すサックバック工程と、
前記サックバック工程において所定形状に成形された容器の内部から前記供給路に所定量の液体を吸い戻した状態のままシール体により前記ブローノズルを閉塞するノズル閉塞工程と、
前記ノズル閉塞工程の後、前記供給路に連なる排出ポートを開いた状態で前記ポンプを正方向に作動させて前記供給路の内部の液体を所定量だけ前記排出ポートから前記供給路の外に排出する排出工程と、を有することを特徴とする液体ブロー成形方法。
【請求項2】
前記成形工程において、延伸ロッドにより前記プリフォームを軸方向に延伸させるとともに、
前記ノズル閉塞工程の後に、前記成形工程において所定形状に成形された容器から前記延伸ロッドを引き抜く引抜き工程を行う、請求項1に記載の液体ブロー成形方法。
【請求項3】
前記排出工程において前記排出ポートから前記供給路の外に排出された液体を、回収路を通して前記ポンプに液体を供給する供給タンクに回収する、請求項1または2に記載の液体ブロー成形方法。
【請求項4】
前記サックバック工程において前記供給路に吸い戻した液体と同量の液体を前記排出工程において前記排出ポートから前記供給路の外に排出する、請求項1〜3の何れか1項に記載の液体ブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状のプリフォームから内容液を収容した液体入り容器を成形する液体ブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(PP)製のボトルやポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルに代表されるような合成樹脂製の容器は、飲料、化粧品、薬品、洗剤、シャンプー等のトイレタリーなどの様々な液体を内容液として収容する用途に使用されている。このような容器は、上記したような熱可塑性を有する合成樹脂材料によって有底筒状に形成されたプリフォームをブロー成形することにより製造されるのが一般的である。
【0003】
また、プリフォームを容器に成形するブロー成形としては、プリフォームの内部に供給する加圧媒体として、加圧エアーに替えて加圧した液体を用いるようにした液体ブロー成形が知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、予め延伸性を発現する温度にまで加熱しておいたプリフォームをブロー成形用の金型にセットし、このプリフォームを延伸ロッドにより縦方向に延伸させつつ当該プリフォームの内部にブローノズルを通して所定の圧力にまで加圧した液体を供給することにより、プリフォームを金型のキャビティに沿った所定形状の容器に成形するようにした液体ブロー成形方法が記載されている。このような液体ブロー成形方法によれば、プリフォームに供給する液体として飲料等の最終的に製品として容器に収容される内容液を使用することにより、容器の成形と当該容器への内容液の充填とを同時に行って内容液を収容した液体入り容器を容易に成形することができるので、成形後の容器への内容液の充填工程を省略して、その生産工程や生産ライン(装置)の構成を簡略化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−208834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の液体ブロー成形方法では、成形後の容器の内部に所定量のヘッドスペース(液体が充填されない空間)を設けるために、液体ブロー成形の後、ブローノズルをシール体で閉塞した状態で延伸ロッドを容器内から引き抜くことにより、当該延伸ロッドの体積に応じたヘッドスペースを容器内に生じさせるようにしている。
【0007】
また、液体ブロー成形後に、ポンプを逆方向に駆動して成形後の容器の内部から所定量の液体を供給路に向けて吸い戻すサックバックを行うことで、容器内に所定量のヘッドスペースを設ける方法も考えられる。
【0008】
なお、延伸ロッドによる方法とサックバックによる方法を併用することで、シャンプー等を内容液として収容するポンプ付きの容器などの容器内に大きなヘッドスペースが必要となる場合であっても、液体ブロー成形方法により容器内に必要な大きさのヘッドスペースを形成することができる。
【0009】
しかしながら、液体ブロー成形においては、液体はプリフォーム内に存在する空気を巻き込みながら当該プリフォームの内部に供給されるので、サックバックを行うと、気泡を多く含んだ液体が供給路の内部に取り込まれることになる。そのため、次の液体ブロー成形時には、当該供給路からプリフォームの内部に向けて気泡を多く含んだ液体が供給されることになり、当該成形後の容器内への液体の充填量や充填圧力が不安定になって容器の成形性が低下する虞があるという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、容器内にヘッドスペースを有する液体入り容器を繰り返しの液体ブロー成形により精度よく成形可能な液体ブロー成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液体ブロー成形方法は、有底筒状のプリフォームから内容液を収容した液体入り容器を成形する液体ブロー成形方法であって、供給路を介してポンプに接続されたブローノズルを前記プリフォームの口部に係合させるノズル係合工程と、前記ポンプから前記供給路と前記ブローノズルとを通して前記プリフォームの内部に加圧した液体を供給して該プリフォームを所定形状の容器に成形する成形工程と、前記ポンプを逆方向に作動させ、前記成形工程において所定形状に成形された容器の内部から前記供給路に所定量の液体を吸い戻すサックバック工程と、前記サックバック工程において所定形状に成形された容器の内部から前記供給路に所定量の液体を吸い戻した状態のままシール体により前記ブローノズルを閉塞するノズル閉塞工程と、前記ノズル閉塞工程の後、前記供給路に連なる排出ポートを開いた状態で前記ポンプを正方向に作動させて前記供給路の内部の液体を所定量だけ前記排出ポートから前記供給路の外に排出する排出工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の液体ブロー成形方法は、上記構成において、前記成形工程において、延伸ロッドにより前記プリフォームを軸方向に延伸させるとともに、前記ノズル閉塞工程の後に、前記成形工程において所定形状に成形された容器から前記延伸ロッドを引き抜く引抜き工程を行うのが好ましい。
【0013】
本発明の液体ブロー成形方法は、上記構成において、前記排出工程において前記排出ポートから前記供給路の外に排出された液体を、回収路を通して前記ポンプに液体を供給する供給タンクに回収するのが好ましい。
【0014】
本発明の液体ブロー成形方法は、上記構成において、前記サックバック工程において前記供給路に吸い戻した液体と同量の液体を前記排出工程において前記排出ポートから前記供給路の外に排出するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器内にヘッドスペースを有する液体入り容器を繰り返しの液体ブロー成形により精度よく成形可能な液体ブロー成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態である液体ブロー成形方法に用いられる液体ブロー成形装置の一例を示す説明図である。
図2】ポンプに液体が補給された状態の液体ブロー成形装置を示す説明図である。
図3】成形工程を行っている状態の液体ブロー成形装置を示す説明図である。
図4】成形工程が完了した状態の液体ブロー成形装置を示す説明図である。
図5】サックバック工程を行っている状態の液体ブロー成形装置を示す説明図である。
図6】閉塞工程の後、引抜き工程を行っている状態の液体ブロー成形装置を示す説明図である。
図7】排出工程を行っている状態の液体ブロー成形装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に例示説明する。
【0018】
本発明の液体ブロー成形方法は、有底筒状のプリフォームから内容液を収容した液体入り容器を成形する液体ブロー成形方法であって、供給路を介してポンプに接続されたブローノズルをプリフォームの口部に係合させるノズル係合工程と、ポンプから供給路とブローノズルとを通してプリフォームの内部に加圧した液体を供給して該プリフォームを所定形状の容器に成形する成形工程と、ポンプを逆方向に作動させ、成形工程において所定形状に成形された容器の内部から供給路に所定量の液体を吸い戻すサックバック工程と、サックバック工程において所定形状に成形された容器の内部から供給路に所定量の液体を吸い戻した状態でシール体によりブローノズルを閉塞するノズル閉塞工程と、ノズル閉塞工程の後、供給路に連なる排出ポートを開いた状態でポンプを正方向に作動させて供給路の内部の液体を所定量だけ排出ポートから供給路の外に排出する排出工程と、を有することを特徴とするものである。このような本発明の液体ブロー成形方法は、プリフォームから内容液を収容した液体入り容器を製造する方法とも言えるものであり、例えば図1に示す構成の液体ブロー成形装置1を用いて実施することができる。
【0019】
図1に示す液体ブロー成形装置1は、プリフォーム2を液体ブロー成形によって内部に内容液を収容した液体入り容器に成形するものである。なお、液体ブロー成形とは、プリフォーム2に供給する加圧媒体(加圧流体)として、エアブロー成形の際に用いられる加圧エアーに替えて、加圧した液体を用いて行うブロー成形のことである。
【0020】
プリフォーム2に供給される液体L、つまり成形後の液体入り容器に収容される内容液Lとしては、例えば飲料、化粧品、薬品、洗剤、シャンプー等のトイレタリーなどの様々な液体を用いることができる。
【0021】
プリフォーム2としては、例えばポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性を有する合成樹脂材料によって、開口端となる円筒状の口部2aと、口部2aに連なるとともに下端が閉塞された円筒状の胴部2bとを有する有底筒状に形成されたものが用いられる。
【0022】
なお、プリフォーム2としては、上記形状のものに限らず、有底筒状であれば、成形後の容器の形状等に応じて種々の形状のものを用いることができる。
【0023】
詳細は図示しないが、口部2aの外壁面には、成形後の液体入り容器の口部2aに閉塞キャップ(不図示)を打栓(アンダーカット係合)によって装着するための係合突起が設けられている。なお、口部2aの外壁面に係合突起に替えて雄ネジを設けて閉塞キャップを口部2aにねじ結合により装着する構成とすることもできる。
【0024】
液体ブロー成形装置1は、ブロー成形用の金型10を有している。この金型10は、例えばボトル形状などの容器の最終形状に対応した形状のキャビティ11を有している。キャビティ11は金型10の上面において上方に向けて開口している。プリフォーム2は、胴部2bが金型10のキャビティ11の内部に配置されるとともに口部2aが金型10から上方に突出した状態となって金型10に装着される。
【0025】
金型10は左右に型開きすることができるようになっており、プリフォーム2を液体入り容器に成形した後に金型10を左右に開くことで、当該液体入り容器を金型10から取り出すことができる。
【0026】
金型10の上方には、プリフォーム2の内部に液体Lを供給するためのノズルユニット20が設けられている。ノズルユニット20は本体ブロック21を有し、この本体ブロック21は金型10に対して上下方向に相対移動自在となっている。本体ブロック21の下端には支持ブロック22が設けられ、この支持ブロック22により支持されて本体ブロック21の下端にはブローノズル23が装着されている。ブローノズル23は略円筒状に形成されており、本体ブロック21が下方側のストローク端にまで下降したときに金型10に装着されたプリフォーム2の口部2aに上方側から係合する。
【0027】
本体ブロック21の内部には上下方向に延びる供給路24が設けられている。この供給路24はブローノズル23に液体Lを供給するための流路であり、その下端においてブローノズル23に連通している。また、本体ブロック21には、供給路24の上端に連通する供給ポート25及び供給路24の中間部分に連通する排出ポート26が設けられている。
【0028】
供給路24の内部にはブローノズル23を開閉するためのシール体27が配置されている。シール体27はノズルユニット20に上下方向に移動自在に設けられた軸体28の下端に固定され、供給路24の内部で上下方向に移動自在となっている。シール体27は円柱状に形成されており、下方側のストローク端位置である閉位置にまで移動したときに下端面においてブローノズル23の上面に当接してブローノズル23を閉塞する。一方、シール体27が閉位置から上方に向けて移動すると、ブローノズル23は開かれて供給路24と連通される。
【0029】
図示するように、液体ブロー成形装置1は延伸ロッド29を備えた構成とすることもできる。延伸ロッド29は、軸体28の軸心に該軸体28に対して上下方向に相対移動自在に挿入されており、シール体27の軸心を貫通してシール体27の下端から出没可能に設けられている。延伸ロッド29は図示しない駆動源により駆動されて下方に向けて移動することにより、プリフォーム2を軸方向に延伸させることができる。このように、延伸ロッド29を設けた構成とした場合には、液体ブロー成形装置1は、プリフォーム2を延伸ロッド29により軸方向に延伸させつつ口部2aから供給される加圧した液体Lにより径方向に延伸させる二軸延伸ブロー成形を行うことができる。なお、液体ブロー成形装置1は、延伸ロッド29を備えない構成とすることもできる。
【0030】
供給ポート25には、供給路P1によりポンプ30が接続されている。このポンプ30は、例えばシリンダ30aとピストン30bとを備えたプランジャーポンプで構成することができる。
【0031】
ポンプ30には供給タンク31が接続されている。供給タンク31は、液体Lを収容するとともに当該液体Lを所定温度にまで加熱して当該温度に保持する構成とすることができる。ポンプ30と供給タンク31との間の流路には開閉弁V1が設けられ、この開閉弁V1により当該流路を開閉することができるようになっている。なお、符号32は供給路P1に設けられた圧力計である。
【0032】
排出ポート26は、回収路P2により供給タンク31に接続されている。すなわち、供給路24は、排出ポート26及び回収路P2を介して供給タンク31に連通可能となっている。回収路P2には開閉弁V2が設けられ、この開閉弁V2により回収路P2を開閉することができるようになっている。
【0033】
ポンプ30は、ブローノズル23が開かれ、開閉弁V1、V2が閉じられた状態において正方向(加圧方向)に作動することにより、所定圧力にまで加圧した液体Lを供給ポート25、供給路24及びブローノズル23を介してプリフォーム2の内部に供給することができる。また、ポンプ30は、シール体27によってブローノズル23が閉塞され、開閉弁V2が閉じられるとともに開閉弁V1が開かれた状態において逆方向(吸引方向)に作動することにより、供給タンク31に収容されている液体Lを当該ポンプ30の内部に吸引することができる。さらに、ポンプ30は、シール体27によってブローノズル23が閉塞され、開閉弁V1が閉じられるとともに開閉弁V2が開かれた状態において正方向に作動することにより、供給路24の内部の液体Lを所定量だけ排出ポート26から供給路24の外にある回収路P2に排出することができる。
【0034】
ノズルユニット20、シール体27、延伸ロッド29、ポンプ30、開閉弁V1、開閉弁V2等の作動は図示しない制御装置によって統合的に制御される。この制御は、圧力計32の値を参照して行うことができる。なお、開閉弁V1、開閉弁V2は、制御装置によって制御可能な電磁弁に構成されるのが好ましい。
【0035】
次に、このような構成の液体ブロー成形装置1を用いて、有底筒状のプリフォーム2から所定形状の容器の内部に内容液が収容されてなる液体入り容器Cを成形する方法(本発明の液体ブロー成形方法)について説明する。
【0036】
まず、予めヒーター等の加熱手段(不図示)を用いて延伸性を発現する程度の所定の温度(例えば80℃〜150℃)にまで加熱しておいたプリフォーム2をブロー成形用の金型10に装着し、型締めする。
【0037】
プリフォーム2が金型10に装着されると、次に、ノズル係合工程が行われる。ノズル係合工程においては、ノズルユニット20を金型10に向けて下降させ、供給路24を介してポンプ30に接続されたブローノズル23をプリフォーム2の口部2aに係合させる。図1は、ノズル係合工程が完了した状態を示す。なお、ノズル係合工程が完了した状態においては、シール体27、開閉弁V1、開閉弁V2は何れも閉じており、また、延伸ロッド29はブローノズル23から下方に突出しない原位置に保持されている。
【0038】
次に、図2に示すように、シール体27と開閉弁V2を閉じたまま開閉弁V1を開き、その状態でポンプ30を逆方向(吸引方向)に作動させて、供給タンク31に収容されている液体Lをポンプ30の内部に吸引させる。ポンプ30が吸引する液体Lの量は、成形後の液体入り容器Cの容量に合わせて適宜設定される。
【0039】
ポンプ30に所定量の液体Lが吸引されると、次に成形工程が行われる。成形工程においては、図3に示すように、開閉弁V1、開閉弁V2を閉じたままシール体27を開き、その状態でポンプ30を正方向(加圧方向)に作動させる。これにより、ポンプ30から供給路24とブローノズル23とを通してプリフォーム2の内部に所定の圧力にまで加圧した液体Lを供給し、当該プリフォーム2を液体Lの圧力により成形(液体ブロー成形)される。この成形工程においては、図4に示すように、プリフォーム2はキャビティ11に沿った所定形状の液体入り容器Cとなるまで成形される。プリフォーム2が図4に示す液体入り容器Cにまで成形されると、成形工程が完了する。
【0040】
液体ブロー成形装置1に延伸ロッド29を設けた場合には、成形工程において延伸ロッド29を下方に向けて進出移動させ、当該延伸ロッド29によりプリフォーム2を軸方向(縦方向)へ延伸させることができる。これにより、プリフォーム2を液体Lの圧力と延伸ロッド29とで二軸方向に成形する二軸延伸ブロー成形を行うことができる。二軸延伸ブロー成形によれば、プリフォーム2をより精度よく所定形状の液体入り容器Cに成形することができる。
【0041】
成形工程が完了すると、次にサックバック工程が行われる。サックバック工程においては、図5に示すように、開閉弁V1、開閉弁V2が閉じ、シール体27が開いたままポンプ30を逆方向に作動させる。これにより、成形工程で所定形状に成形された液体入り容器Cの内部から供給路24に所定量の液体Lが吸い戻(サックバック)される。サックバック工程において供給路24に吸い戻される液体Lの量は、完成後の液体入り容器Cの内部に設けられるヘッドスペースHSが所定量となるように適宜設定される。サックバック工程が行われると、液体入り容器Cは、サックバック工程により供給路24に吸い戻された液体Lの量だけその内容量が減少し、キャビティ11との間に隙間を生じた減容変形状態となり、その内部は大気圧よりも低い負圧状態となる。
【0042】
サックバック工程において液体入り容器Cから供給路24に所定量の液体Lが吸い戻されると、次に、ノズル閉塞工程が行われる。ノズル閉塞工程においては、図6に示すように、サックバック工程において所定形状に成形された液体入り容器Cの内部から供給路24に所定量の液体Lを吸い戻した状態のままシール体27によりブローノズル23を閉塞する。
【0043】
なお、液体ブロー成形装置1に延伸ロッド29を設けた場合には、ノズル閉塞工程の後に、成形工程により成形された液体入り容器Cから延伸ロッド29を引き抜く引抜き工程を行うことができる。液体入り容器Cから延伸ロッド29を引き抜くことにより、延伸ロッド29の体積分だけさらに液体入り容器Cの内容量を減少させることができる。この場合、サックバック工程において液体入り容器Cの内部から供給路24に吸い戻す液体Lの量は、延伸ロッド29を液体入り容器Cから延伸ロッド29を引き抜くことにより生じる内容量の減少を勘案して設定される。
【0044】
ノズル閉塞工程が完了すると、次に排出工程が行われる。排出工程においては、図7に示すように、シール体27及び開閉弁V1を閉じた状態のまま開閉弁V2を開き、その状態でポンプ30を正方向に作動させる。すなわち、供給路24に連なる排出ポート26を開いた状態でポンプ30を正方向に作動させる。これにより、供給路24の内部の液体Lを所定量だけ排出ポート26から供給路24の外つまり回収路P2に向けて排出する。
【0045】
ここで、プリフォーム2の内部に加圧した液体Lを供給して所定形状の液体入り容器Cを成形する成形工程においては、液体Lはプリフォーム2の内部に存在する空気を巻き込みながら当該プリフォーム2の内部に供給されるので、サックバック工程を行うと、気泡を多く含んだ液体Lが供給路24の内部に取り込まれることになる。しかし、本発明の液体ブロー成形方法では、サックバック工程の後に排出工程を行うようにしたので、サックバック工程において供給路24の内部に吸い戻された気泡を含んだ液体Lを排出ポート26から供給路24の外に排出することができる。これにより、次の成形工程においてプリフォーム2の内部に気泡を多く含んだ液体Lが供給されることを防止して、当該成形後の液体入り容器Cの内部への液体Lの充填量や充填圧力を安定化させ、当該液体入り容器Cを精度よく成形することができる。
【0046】
排出工程においては、サックバック工程において供給路24に吸い戻した液体Lと同量の液体Lを排出ポート26から供給路24の外に排出するのが好ましい。これにより、サックバック工程において供給路24の内部に吸い戻された気泡を含んだ液体Lを確実に供給路24の外に排出して、液体入り容器Cをさらに精度よく成形することが可能となる。
【0047】
排出工程において排出ポート26から供給路24の外に排出された液体Lは、回収路P2を通して供給タンク31に回収される。なお、供給タンク31においては、液体Lに混入した気泡は外部に排出され、ポンプ30に供給される液体Lに混入することが防止される。このような構成とすることにより、排出工程において供給路24の外に排出された液体Lを再利用して、当該液体ブロー成形方法を用いた液体入り容器Cの製造コストを低減することができる。
【0048】
図示する場合では、排出ポート26は供給路24の上下方向の中間位置に設けられているが、その位置は種々変更可能である。例えば、液体Lが水のような比較的粘度が低いものである場合には、液体Lに混入した気泡が供給路24の内部で急激に上方に浮かび上がることから、当該気泡を含んだ液体Lを効果的に供給路24の外に排出するために、排出ポート26を供給路24の上部に設けるのが好ましい。一方、液体Lがシャンプーや液体洗剤のような比較的粘度が高いものである場合には、液体Lに混入した気泡が供給路24の内部でゆっくりと上方に浮かび上がることから、当該気泡を含んだ液体Lを効果的に供給路24の外に排出するために、排出ポート26を供給路24の下部に設けるのが好ましい。
【0049】
図7に示すように、排出工程は、ノズルユニット20を上方に移動させ、成形後の液体入り容器Cの口部2a(プリフォーム2の口部2aと同じ形状であるので同一の符号を付している。)からブローノズル23を引き抜いてから行うことができるが、口部2aにブローノズル23を係合させたまま行うこともできる。
【0050】
成形後の液体入り容器Cの口部2aからブローノズル23が引き抜かれると、その液体入り容器Cの内部には所定量の液体Lが充填されているとともに所定量のヘッドスペースHSが形成される。そして、その状態で図示しない打栓装置により口部2aにキャップが装着され、次いで金型10が開かれて完成した液体入り容器Cが金型10から取り出される。なお、液体入り容器Cを金型から取り出した後にキャップを装着してもよい。
【0051】
以上の通り、本発明の液体ブロー成形方法によれば、サックバック工程において成形後の液体入り容器Cから供給路24に吸い戻された気泡入りの液体Lを排出ポート26から供給路24の外に排出することができるので、次の成形工程においてプリフォーム2の内部に気泡を多く含んだ液体Lが供給されることを防止して、当該液体入り容器Cを精度よく成形することができる。特に、シャンプー等を内容液として収容するポンプ付き容器に用いられる液体入り容器のように、その内部に大きなヘッドスペースを有するものを成形する場合には、サックバック工程において供給路24に多くの気泡が入り込むことになるが、その場合であっても、供給路24に吸い戻された気泡入りの液体Lを排出ポート26から供給路24の外に確実に排出して、当該液体入り容器Cを精度よく成形することができる。
【0052】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0053】
例えば、前記実施の形態では、図1に示す構成の液体ブロー成形装置1を用いて本発明の液体ブロー成形方法を行う場合を示したが、他の構成の液体ブロー成形装置等を用いて本発明の液体ブロー成形方法を行うこともできる。
【0054】
また、前記実施の形態では、成形工程において延伸ロッド29を用いて二軸延伸ブロー成形を行うとともに、液体入り容器Cから延伸ロッド29を引き抜く引抜き工程を行うようにしているが、延伸ロッド29による延伸やヘッドスペースHSを形成するための引抜き工程を行わない(例えば、成形工程からノズル閉塞工程までの間で延伸ロッドを引き抜く)構成とすることもできる。
【0055】
さらに、本発明の液体ブロー成形方法は、シャンプー等を内容液として収容するポンプ付き容器に用いられる液体入り容器のように、その内部に大きなヘッドスペースを有するものを成形する場合に限らず、ヘッドスペースの大小に拘わらず種々の液体入り容器の成形に適用することができる。
【0056】
さらに、前記実施の形態においては、ポンプ30はプランジャーポンプとされているが、これに限らず、液体Lを所定の圧力にまで加圧してプリフォーム2に供給することができるとともに成形後の液体入り容器Cの内部から所定量の液体Lを吸い戻すことができるものであれば種々の構成のポンプを用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 液体ブロー成形装置
2 プリフォーム
2a 口部
2b 胴部
10 金型
11 キャビティ
20 ノズルユニット
21 本体ブロック
22 支持ブロック
23 ブローノズル
24 供給路
25 供給ポート
26 排出ポート
27 シール体
28 軸体
29 延伸ロッド
30 ポンプ
30a シリンダ
30b ピストン
31 供給タンク
32 圧力計
L 液体
P1 供給路
V1 開閉弁
P2 回収路
V2 開閉弁
C 液体入り容器
HS ヘッドスペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7