【実施例1】
【0015】
図1(a)は、実施例1に係るインダクタの透視斜視図、
図1(b)は、実施例1に係るインダクタの側面断面図である。
図1(a)及び
図1(b)のように、実施例1のインダクタ100は、絶縁体10と、内部導体30と、外部電極50と、を備える。
【0016】
絶縁体10は、上面12と、下面14と、1対の端面16と、1対の側面18と、を有し、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向の各辺を有する直方体形状をしている。下面14は実装面であり、上面12は下面14に対向する面である。端面16は上面12及び下面14の1対の辺(例えば短辺)に接続された面であり、側面18は上面12及び下面14の1対の辺(例えば長辺)に接続された面である。絶縁体10は、例えば幅寸法が0.05mm〜0.3mm、長さ寸法が0.1mm〜0.6mm、高さ寸法が0.05mm〜0.5mmである。なお、絶縁体10は、完全な直方体形状である場合に限られず、例えば各頂点が丸みを帯びている場合や各面が曲面を有している場合などの略直方体形状でもよい。すなわち、直方体形状には、上述のような略直方体形状も含まれる。なお、各頂点の丸みは、絶縁体10の短辺の長さの
20%未満の曲率半径Rであってもよい。各面の平滑性は、実装基板への実装時の安定性の点から、一平面での凹凸の大きさが30μm以下であってもよい。
【0017】
絶縁体10は、例えばガラスを主成分とした絶縁材料で形成されている。なお、絶縁体10は、フェライト、誘電体セラミックス、軟磁性合金粒子を用いた磁性体、又は磁性体粉を混合した樹脂で形成されていてもよい。また、絶縁体10は、熱、光、化学反応などにより硬化する樹脂を主体とする絶縁材料で形成されていてもよい。このような樹脂としては、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、又は液晶ポリマなどが挙げられる。また、絶縁体10は、フィラーとして酸化アルミニウムなどの金属酸化物及び/又は酸化シリコン(SiO
2)を含んでいてもよい。
【0018】
内部導体30は、絶縁体10の内部に設けられている。内部導体30は複数の柱状導体32と複数の連結導体34とを有し、これら複数の柱状導体32及び複数の連結導体34が接続されることでコイル導体36が形成されている。すなわち、コイル導体36は、複数の柱状導体32と複数の連結導体34とを含んで構成されてスパイラル状を呈しており、所定の周回単位を有すると共に周回単位によって規定される面と略直交するコイル軸を有する。コイル導体36は、内部導体30のうちの電気的性能を発揮する機能部である。
【0019】
複数の柱状導体32は、1対の端面16それぞれの側に設けられた2つの導体群を有する。2つの導体群それぞれを構成する柱状導体32は、Z軸方向に沿って延び、X軸方向に所定の間隔をおいて配列されている。すなわち、複数の柱状導体32は、1対の端面16それぞれに沿って上面12及び下面14に垂直な方向に延びている。複数の連結導体34は、XY平面に平行に形成され、上面12及び下面14それぞれの側に設けられた2つの導体群を有する。上面12側の導体群を構成する連結導体34は、Y軸方向に沿って延び、X軸方向において間隔をおいて配列され、Y軸方向で対向する柱状導体32を接続している。下面14側の導体群を構成する連結導体34は、Y軸から斜めに傾いた方向に延び、X軸方向において間隔をおいて配列され、Y軸から斜めに傾いた方向で対向する柱状導体32を接続している。すなわち、複数の連結導体34は、1対の端面16の一方側から他方側に向かって延びて複数の柱状導体32を接続している。複数の柱状導体32及び複数の連結導体34により、絶縁体10の内部に、ほぼX軸方向にコイル軸を有する開口が矩形形状のコイル導体36が形成されている。すなわち、コイル導体36は、絶縁体10の下面14及び端面16に略平行なコイル軸を有し、縦巻きとなっている。
【0020】
外部電極50は、表面実装用の外部端子であり、Y軸方向に対向して2つ設けられている。外部電極50は、絶縁体10の下面14から端面16を経由して上面12に延在すると共に、端面16から側面18に延在して設けられている。すなわち、外部電極50は、絶縁体10の上面12、下面14、及び側面18のY軸方向両端を被覆し且つ端面16を被覆している。また、絶縁体10の側面18を被覆する外部電極50のY軸方向の長さは、絶縁体10の上面12及び下面14を被覆する外部電極50のY軸方向の長さよりも短くなっている。
【0021】
内部導体30は、複数の柱状導体32及び複数の連結導体34からなる機能部としてのコイル導体36に加えて、非機能部である引き出し導体38をさらに有する。引き出し導体38は、コイル導体36を外部電極50に電気的に接続させる。コイル導体36の端部40及び端部42は共に、引き出し導体38を介して、絶縁体10の上面12で外部電極50に電気的に接続されている。引き出し導体38は、略円形形状で外部電極50に接続されている。なお、略円形形状は、完全な円形形状の場合だけでなく、円の一部が歪んだような形状や楕円形形状などの場合も含むものである。
【0022】
コイル導体36は、端部40及び端部42から連結導体34によって1対の端面16の間を絶縁体10の上面12に沿って延びている。すなわち、コイル導体36は、端部40及び端部42から絶縁体10の端面16に沿って下面14に向かって延びてはいない。
【0023】
内部導体30は、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、白金(Pt)、又はパラジウム(Pd)などの金属材料、又はこれらを含む合金金属材料で形成されている。外部電極50は、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、又はニッケル(Ni)などの金属材料、若しくは銀(Ag)、銅(Cu)又はアルミニウム(Al)とニッケル(Ni)メッキと錫(Sn)メッキとの積層膜、或いはニッケル(Ni)と錫(Sn)メッキとの積層膜で形成されている。
【0024】
絶縁体10は、上面12にマーカー部60を有する。マーカー部60は、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、又はコバルト(Co)などの酸化金属粒子をガラスやエポキシ系やシリコン系などの樹脂中に分散させて構成することができる。なお、マーカー部60は、絶縁体10の上面12以外の面に設けられていてもよい。マーカー部60により絶縁体10の上下方向を明確に認識可能となる。
【0025】
次に、実施例1のインダクタ100の製造方法について説明する。
図2は、実施例1に係るインダクタの製造方法を示す斜視図である。
図2のように、絶縁体10を構成する絶縁体層の前駆体であるグリーンシートG1からG9を用意する。グリーンシートは、ガラスなどを主原料とする絶縁性材料スラリーをドクターブレード法などによりフィルム上に塗布することで形成される。グリーンシートの厚みは特に限定はなく、例えば5μm〜60μmであり、一例として20μmである。
【0026】
グリーンシートG1、G2の所定の位置、すなわち引き出し導体38が形成される位置に、レーザ加工などによってスルーホールを形成する。同様に、グリーンシートG3、G7の所定の位置、すなわち柱状導体32及び連結導体34が形成される位置、並びに、グリーンシートG4〜G6の所定の位置、すなわち柱状導体32が形成される位置に、レーザ加工などによってスルーホールを形成する。そして、グリーンシートG1、G2に形成したスルーホールに印刷法を用いて導電性材料を充填させて引き出し導体38を形成し、且つ、グリーンシートG3〜G7に形成したスルーホールに印刷法を用いて導電性材料を印刷することで柱状導体32及び連結導体34を形成する。導電性材料の主成分としては、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、白金(Pt)、又はパラジウム(Pd)などの金属材料又はこれらを含む合金金属材料が挙げられる。
【0027】
続いて、グリーンシートG1〜G9を所定の順序で積層し、積層方向に圧力を加えてグリーンシートを圧着する。そして、圧着したグリーンシートをチップ単位に切断した後に、所定温度(例えば700℃〜900℃)にて焼成を行い、絶縁体10を形成する。
【0028】
続いて、絶縁体10の所定の位置に外部電極50を形成する。外部電極50は、銀や銅などを主成分とする電極ペーストを塗布し、所定温度(例えば600℃〜900℃程度)で焼付けを行い、さらに電気めっきを施すことなどにより形成される。この電気めっきとしては、例えば銅、ニッケル、又は錫などを用いることができる。これにより、実施例1のインダクタ100が形成される。
【0029】
図3は、比較例1に係るインダクタの透視斜視図である。
図3のように、比較例1のインダクタ500では、コイル導体36は引き出し導体38を介して絶縁体10の端面16のうちの上面12側寄りの位置で外部電極50に電気的に接続されている。引き出し導体38は、矩形形状で外部電極50に接続している。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0030】
図4は、比較例2に係るインダクタの透視斜視図である。
図4のように、比較例2のインダクタ600では、コイル導体36は引き出し導体38を介して絶縁体10の端面16のうちの下面14側寄りの位置で外部電極50に電気的に接続されている。引き出し導体38は、矩形形状で外部電極50に接続している。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0031】
図5は、比較例3に係るインダクタの透視斜視図である。
図5のように、比較例3のインダクタ700では、コイル導体36は引き出し導体38を介して絶縁体10の上面12で外部電極50に電気的に接続されているが、コイル導体36の巻き方向(旋回方向)が実施例1とは逆方向になっている。つまり、コイル導体36は、端部40及び端部42から柱状導体32によって絶縁体10の端面16に沿って延びている。すなわち、コイル導体36は、端部40及び端部42から絶縁体10の上面12に沿って延びてはいない。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0032】
ここで、実施例1、比較例1、比較例2、及び比較例3のインダクタに対して行った電磁界シミュレーションについて説明する。シミュレーションは、以下の寸法をしたインダクタに対して行った。すなわち、実施例1、比較例1、比較例2、及び比較例3のインダクタの外形寸法を、幅0.22mm、長さ0.42mm、高さ0.222mmとした。また、複数の柱状導体32は、直径0.038mmの略円柱形状をしていて、絶縁体10の端面16から0.04mm離れているとした。複数の連結導体34は、幅0.025mm、厚さ0.01mmの矩形形状をしていて、絶縁体10の上面12及び下面14から0.014mm離れているとした。実施例1及び比較例3では、引き出し導体38は、複数の柱状導体32と同じく、直径0.038mmの略円柱形状であるとした。比較例1及び比較例2では、引き出し導体38は、複数の連結導体34と同じく、幅0.025mm、厚さ0.01mmの矩形形状であるとした。
【0033】
図6は、実施例1、比較例1、比較例2、及び比較例3に係るインダクタの電磁界シミュレーションの結果を示す図である。
図6の横軸は500MHzでのインダクタンス値であり、縦軸は1800MHzでのQ値である。
図6のように、実施例1は、比較例1から比較例3に比べて、Q値が高い結果となった。
【0034】
実施例1のインダクタ100において、Q値が高くなったのは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、比較例1のインダクタ500では、コイル導体36は、引き出し導体38を介して、絶縁体10の端面16で外部電極50に電気的に接続されている。この構成では、引き出し導体38と絶縁体10の上面12に設けられた外部電極50とは、それぞれ略平行な位置にあり平行平板を形成するため、比較的大きな寄生容量が発生する。比較例2のインダクタ600においても同様に、引き出し導体38と絶縁体10の下面14に設けられた外部電極50との間に比較的大きな寄生容量が発生する。一方、実施例1では、引き出し導体38は絶縁体10の上面12に設けられた外部電極50に略垂直な方向から接続されているため、比較例1、2よりも寄生容量を小さく抑えることができる。これにより、実施例1は、比較例1及び比較例2に比べて、Q値が高くなったものと考えられる。
【0035】
一方、比較例3のインダクタ700は、実施例1のインダクタ100と同じく、コイル導体36は、引き出し導体38を介して、絶縁体10の上面12で外部電極50に電気的に接続されている。しかしながら、実施例1は、比較例3よりもQ値が高くなった。これは以下の理由によるものと考えられる。
図7(a)は、実施例1に係るインダクタを流れる電流の向きを説明するための透視斜視図であり、
図7(b)は、比較例3に係るインダクタを流れる電流の向きを説明するための透視斜視図である。なお、
図7(a)及び
図7(b)において、入力側の外部電極を外部電極50a、出力側の外部電極を外部電極50bとする。また、絶縁体10の1対の端面16のうちの外部電極50aが設けられた端面を端面16a、外部電極50bが設けられた端面を端面16bとする。
【0036】
図7(a)のように、絶縁体10の下面14が実装面であり、その一方で、コイル導体36の端部40及び端部42は絶縁体10の上面12で外部電極50a及び外部電極50bに電気的に接続されている。このため、外部電極50aにおいては、絶縁体10の下面14側から上面12側に向かって電流A1が流れる。外部電極50bにおいては、絶縁体10の上面12側から下面14側に向かって電流A2が流れる。
【0037】
また、コイル導体36は、端部40及び端部42から連結導体34によって絶縁体10の上面12に沿って延びている。このため、絶縁体10の端面16aに沿って設けられた柱状導体32には、絶縁体10の下面14側から上面12側に向かって電流A3が流れる。絶縁体10の端面16bに沿って設けられた柱状導体32には、絶縁体10の上面12側から下面14側に向かって電流A4が流れる。
【0038】
したがって、絶縁体10の端面16a側においては、外部電極50aを流れる電流A1と柱状導体32を流れる電流A3とが同じ向きになっている。このため、電流A1によって生じる磁界と電流A3によって生じる磁界とが結合する。同様に、絶縁体10の端面16b側においては、外部電極50bを流れる電流A2と柱状導体32を流れる電流A4とが同じ向きになっているため、電流A2によって生じる磁界と電流A4によって生じる磁界とが結合する。
【0039】
一方、比較例3のインダクタ700は、実施例1のインダクタ100と比べて、コイル導体36の巻き方向(旋回方向)が逆方向になっているため、
図7(b)のように、絶縁体10の端面16a側において、外部電極50aを流れる電流A1と柱状導体32を流れる電流A3とが逆向きになっている。絶縁体10の端面16b側において、外部電極50bを流れる電流A2と柱状導体32を流れる電流A4とが逆向きになっている。このため、電流A1によって生じる磁界と電流A3によって生じる磁界とは互いに打ち消し合い、電流A2によって生じる磁界と電流A4によって生じる磁界とは互いに打ち消し合う。これらのことから、実施例1は、比較例3に比べて、Q値が高くなったものと考えられる。
【0040】
なお、比較例2では、引き出し導体38は端面16のうちの下面14側寄りの位置で外部電極50に電気的に接続されているため、インダクタを流れる電流は外部電極50の上面12側の方向には流れ難い。つまり、上述した磁気結合は起こり難い状態にある。このために、比較例2は、比較例1に比べて、Q値が低くなったものと考えられる。
【0041】
以上のように、実施例1によれば、コイル導体36の端部40及び端部42は、引き出し導体38を介して絶縁体10の上面12で外部電極50に電気的に接続されている。コイル導体36は、端部40及び端部42から連結導体34によって絶縁体10の上面12に沿って延びている。このため、上述したように、引き出し導体38による寄生容量を小さくできると共に、コイル導体36及び外部電極50を流れる電流によって生じる磁界を結合させることができる。このため、Q値を改善することができる。
【0042】
また、引き出し導体38は、略円形形状で外部電極50に接続されている。比較例1のように、引き出し導体38が矩形形状で外部電極50に接続される場合、インダクタを作製する際の焼成において、引き出し導体38が潰れて薄くなったり及び/又は絶縁体10と引き出し導体38との収縮率の差によって引き出し導体38が絶縁体10の表面から内側に凹んでしまったりすることがある。この場合、引き出し導体38と外部電極50とが電気的に接続されないことが起こり得る。一方、引き出し導体38が略円形形状で外部電極50に接続する場合は、このようなことが起き難くなるため、引き出し導体38と外部電極50との接続信頼性を向上させることができる。
【0043】
また、外部電極50は、絶縁体10の1対の端面16のうちの複数の柱状導体32に対向する領域に少なくとも設けられている。これにより、外部電極50を流れる電流によって生じる磁界と柱状導体32を流れる電流によって生じる磁界との結合を大きくでき、Q値の改善効果が大きくなる。なお、磁気結合を大きくする点から、外部電極50は、絶縁体10の1対の端面16の全面を覆って設けられている場合が好ましく、1対の端面16の全面を覆い且つ1対の側面18に延在せずに設けられている場合がより好ましい。
【0044】
また、外部電極50は、絶縁体10の下面14から端面16を経由して上面12に延在して設けられている。これにより、実施例1のインダクタ100を実装基板に半田を用いて実装する場合に、半田フィレットが絶縁体10の端面16及び上面12に設けられた外部電極50に濡れ広がり易くなる。このため、半田の接合面積が大きくなり、インダクタ100の実装強度を向上させることができる。なお、半田の接合面積を大きくする点から、外部電極50は、端面16から側面18に延在していてもよい。
【0045】
図8(a)から
図9(c)は、実施例1に係るインダクタの他の製造方法を示す断面図である。
図8(a)のように、例えばシリコン基板、ガラス基板、又はサファイア基板などの支持基板90上に、例えば樹脂材料を印刷又は塗布、或いは樹脂フィルムを粘着させることで、絶縁体層20を形成する。絶縁体層20上に、スパッタリング法により連結導体34を形成すると共に、連結導体34を被覆する絶縁体層21を形成する。絶縁体層21は、樹脂材料を印刷又は塗布、或いは樹脂フィルムを粘着させることで形成する。その後、絶縁体層21に対して研磨処理を施すことで、連結導体34の表面を露出させる。次いで、絶縁体層21上にシード層(不図示)を形成した後、シード層上に開口を有するレジスト膜92を形成する。レジスト膜92の形成後、開口内のレジスト残渣を除去するデスカム処理を行ってもよい。その後、電気めっき法によってレジスト膜92の開口内に柱状導体32の第1部分32aを形成する。
【0046】
図8(b)のように、レジスト膜92及びシード層を除去した後、柱状導体32の第1部分32aを被覆する絶縁体層22を形成する。絶縁体層22は、樹脂材料を印刷又は塗布、或いは樹脂フィルムを粘着させることで形成する。その後、絶縁体層22に対して研磨処理を施すことで、柱状導体32の第1部分32aの表面を露出させる。
【0047】
図8(c)のように、絶縁体層22上に、柱状導体32の第2部分32bと、柱状導体32の第2部分32bを被覆する絶縁体層23と、を形成する。柱状導体32の第2部分32bは、柱状導体32の第1部分32aに接続するように形成される。柱状導体32の第2部分32b及び絶縁体層23は、柱状導体32の第1部分32a及び絶縁体層22と同様の方法によって形成する。
【0048】
図9(a)のように、絶縁体層23上にシード層(不図示)と開口を有するレジスト膜94とを形成し、レジスト膜94の開口内に電気めっき法によって連結導体34を形成する。
【0049】
図9(b)のように、レジスト膜94を除去した後、再度、開口を有するレジスト膜96を形成し、レジスト膜96の開口内に電気めっき法によって引き出し導体38を形成する。
【0050】
図9(c)のように、レジスト膜96及びシード層を除去した後、絶縁体層23上に、連結導体34及び引き出し導体38を被覆する絶縁体層24を形成する。絶縁体10は、絶縁体層20から絶縁体層24が積層されることで形成される。その後、絶縁体10を支持基板90から剥がした後、絶縁体10の表面に外部電極50を形成する。これにより、実施例1のインダクタ100が形成される。
【0051】
なお、実施例1において、実施例1のインダクタ100の構造が得られる製造方法であれば、その製造方法は上述の方法に限定されるものではなく、またいくつかの方法を組み合わせる製造方法であってもよい。
【実施例2】
【0052】
図10は、実施例2に係るインダクタの透視斜視図である。
図10のように、実施例2のインダクタ200は、コイル導体36の端部40及び端部42のうちの一方の端部40は、引き出し導体38を介して、絶縁体10の上面12で外部電極50に電気的に接続されている。他方の端部42は、引き出し導体38を介して、絶縁体10の下面14で外部電極50に電気的に接続されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0053】
図11は、実施例2、比較例1、比較例2、及び比較例3に係るインダクタの電磁界シミュレーションの結果を示す図である。
図11の横軸は500MHzでのインダクタンス値であり、縦軸は1800MHzでのQ値である。なお、シミュレーションは、実施例1の
図6で説明した寸法と同じ寸法を有する実施例2、比較例1、比較例2、及び比較例3のインダクタに対して行った。
図11のように、実施例2は、比較例1から比較例3に比べて、Q値が高くなる結果となった。実施例2のインダクタ200において、Q値が高くなった理由は、実施例1で説明した理由と同じ理由によるものと考えられる。すなわち、引き出し導体38による寄生容量が小さくなり、且つコイル導体36及び外部電極50を流れる電流によって生じる磁界が結合することで、Q値が高くなったものと考えられる。
【0054】
実施例2によれば、コイル導体36の端部40及び端部42のうちの一方の端部40は、引き出し導体38を介して絶縁体10の上面12で外部電極50に接続され、他方の端部42は、引き出し導体38を介して絶縁体10の下面14で外部電極50に電気的に接続されている。コイル導体36は、一方の端部40から連結導体34によって絶縁体10の上面12に沿って延びている。これによっても、引き出し導体38による寄生容量を小さくできると共に、コイル導体36及び外部電極50を流れる電流によって生じる磁界を結合させることができるため、Q値を改善することができる。
【0055】
実施例1及び実施例2から、コイル導体36の端部40及び端部42のうちの少なくとも一方の端部が、引き出し導体38を介して絶縁体10の上面で外部電極50に電気的に接続されていればよい。そして、コイル導体36は、少なくとも一方の端部から連結導体34によって絶縁体10の上面12に沿って延びていればよい。これにより、Q値を改善できる。
【0056】
図12は、実施例2の変形例1に係るインダクタの透視斜視図である。
図12のように、実施例2の変形例1のインダクタ210は、コイル導体36の端部40及び端部42のうちの一方の端部40は、引き出し導体38を介して、絶縁体10の上面12で外部電極50に電気的に接続されている。他方の端部42は、引き出し導体38を介して、絶縁体10の端面16で外部電極50に電気的に接続されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0057】
実施例2及び実施例2の変形例1のように、コイル導体36の一方の端部40が引き出し導体38を介して絶縁体10の上面12で外部電極50に電気的に接続されていれば、他方の端部42は引き出し導体38を介して絶縁体10の下面14で外部電極50に電気的に接続されてもよいし、端面16で外部電極50に電気的に接続されてもよい。また、図示は省略するが、他方の端部42は引き出し導体38を介して側面18で外部電極50に電気的に接続されてもよい。
【0058】
なお、実施例1から実施例2の変形例1において、外部電極50は様々な形状を取ることができる。
図13(a)から
図13(d)は、外部電極の形状の例を示す透視斜視図である。外部電極50は、
図13(a)のように下面から端面を経由して上面に延在して設けられてもよいし、
図13(b)のようにさらに側面に延在していてもよし、
図13(c)、
図13(d)のように上面での長さが下面より短くてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。