(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブロー成形機は、前述したように、大容量容器を成形するときと小容量容器を成形するときとで、金型を交換する必要があるが、全ての金型を大容量用から小容量用に交換するには相当の時間を要する。また、大容量用の金型を、ブロー成形機が有する全てのキャビティの数に対応する数だけ用意する必要があるので、飲料の生産コストを上げるのに加えて、金型を保管する広いスペースが必要になる。
【0008】
以上より、本発明は、上流側の処理装置、例えばブロー成形機と下流側の処理装置、例えば充填機が連結されるシステムにおいて、小容量用金型から大容量用金型への交換に要する時間を軽減できる処理システム及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の処理システムは、第一回転搬送体により連続的に搬送される処理対象物に第一処理を施す第一処理部と、第一処理部より下流側に設けられ、第二回転搬送体により連続的に搬送される、第一処理が施された処理対象物に第二処理を施す第二処理部と、第一処理部で第一処理が施された処理対象物を、回転体である複数の第三回転搬送体で連続的に搬送する搬送部と、を備える。
本発明における処理システムは、第二処理部における第二処理の処理速度が第一処理よりも遅い低能力モードにおいて、第一処理部は、複数の処理対象物の間隔を第一ピッチとして第一処理を施し、第二処理部は複数の処理対象物の間隔を第一ピッチよりも小さい第二ピッチとして、第二処理を施す。
また、本発明における処理システムは、搬送部が、処理対象物を第一処理部から第二処理部に搬送する過程で、第一ピッチから第二ピッチに変換する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明による処理システムは、低能力モードのときに、第一ピッチから第二ピッチに変換するピッチ可変機構を有しているので、上流側の第一処理部を高能力モードのときと同じ速度のままで運転できる。したがって、第一処理部、例えばブロー成形機はこのピッチ変換に合わせて、キャビティの一つおきにプリフォームを供給してプラスチック容器を成形できるので、大容量用金型も一つおきのキャビティに設ければよい。したがって、本発明の処理システムによれば、高能力モードから低能力モードに運転を切り替えるときに、小容量用金型から大容量用金型への交換に要する時間を軽減でき、生産停止時間を短くできる。これは、低能力モードから高能力モードに運転を切り替えるときの大容量用金型から小容量用金型への交換に要する時間も短くできることを示唆している。
【0011】
本発明における処理システムは、第二処理部における第二処理の処理速度が低能力モードよりも速い高能力モードを実行できる。この高能力モードにおいて、第一処理部における複数の処理対象物の間隔を、第二ピッチとし、第二処理部における複数の処理対象物の間隔を、第二ピッチとすることができる。そして、このときの搬送部は、処理対象物を第一処理部から第二処理部に搬送する過程で、第二ピッチを維持する。
【0012】
本発明の処理システムにおいて、第一処理部は、第一処理を施す所定数Nの第一処理要素が取り付け可能とされ、第二処理部は、第二処理を施す所定数Mの第二処理要素を備える。
低能力モードにおいて、第一処理部は、所定数Nの1/n倍(ただし、nは2以上の正の整数)の数の第一処理要素を取り付けて第一処理を施す、ことができる。
高能力モードにおいて、第一処理部は、所定数Nの第一処理要素を取り付けて第一処理を施す、ことができる。
【0013】
本発明の処理システムにおいて、低能力モードにおいて、第一ピッチから第二ピッチに変換するには、少なくとも以下の手段を採用できる。
第一手段は、一つの第三回転搬送体がピッチ変換機構を備える。つまり、第一手段は、搬送部のいずれかの第三回転搬送体が、処理対象物を受け取る側が第一ピッチをなし、処理対象物を受け渡す側が第二ピッチをなす、ピッチ可変機構を備える。
【0014】
第一手段において、いずれかの第三回転搬送体は、処理対象物を把持する複数のグリッパを備え、複数のグリッパのうち、処理対象物を受け取るグリッパは第一ピッチでかつ速度V2移動し、処理対象物を受け渡すグリッパは第二ピッチでかつ速度V2よりも遅い速度V1移動する、ことができる。
【0015】
第二手段は、隣接する上流側第三回転搬送体と下流側第三回転搬送体の間で、第一ピッチから第二ピッチに変更し、上流側第三回転搬送体と下流側第三回転搬送体はそれぞれ処理対象物を把持する複数のグリッパを備える。これらの上流側第三回転搬送体のグリッパと下流側第三回転搬送体のグリッパは、処理対象物の授受の際に、相手側のグリッパへの干渉が回避される。
第二手段は、好ましくは、上流側第三回転搬送体のグリッパと下流側第三回転搬送体のグリッパは、処理対象物の授受の際の開きを大きくすることで、相手側のグリッパへの干渉を回避する。
【0016】
本発明の処理システムは種々の具体的な用途に適用できるが、第一処理部は、容器の前駆体であるプリフォームを容器に成形するブロー成形部であり、第二処理部は、成形された容器に製品液を充填する充填部である、処理システムに適用できる。
【0017】
本発明の処理システムは、典型的には、第一ピッチは第二ピッチの二倍である。
また、本発明の処理システムは、典型的には、低能力モードにおいて、第一処理部は、所定数Nの1/2倍の数設けられており、所定の取り付け位置の一つおきに第一処理要素を取り付けて第一処理を施す。
【発明の効果】
【0018】
本発明の処理システムによれば、低能力モードから高能力モードに運転を切り替えるときに、第一処理部における第一処理要素の交換に要する時間を軽減でき、生産停止時間を短くできる。これは、高能力モードから低能力モードに運転を切り替えるときの第一処理要素の交換に要する時間も軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の処理システムを飲料充填システム1に適用した実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る飲料充填システム1は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製のプラスチック容器100に飲料を充填する一連の工程を実現する。飲料充填システム1は、
図1に示すように、プラスチック容器100の前駆体であるプリフォームをブロー成形することによりプラスチック容器100を成形するブロー成形部10と、成形されたプラスチック容器100に製品液を充填する充填部30と、を備える。この飲料充填システム1の基本構成は、第2実施形態に係る飲料充填システム2においても踏襲される。
なお、ブロー成形部10が本発明の第一処理部に対応し、ブロー成形部10におけるブロー成形が本発明の第一処理に対応する。また、充填部30が本発明の第二処理部に対応し、充填部30における製品液の充填が第二処理に対応する。さらに、プリフォーム及びプラスチック容器100が本発明の処理対象物に対応する。
【0021】
飲料充填システム1は、小容量のプラスチック容器100に製品液を充填する運転する高能力モード(
図2(a))と、大容量のプラスチック容器100に製品液を充填する運転する低能力モード(
図2(b))と、を備えている。飲料充填システム1は、この低能力モードで運転されている間に、ブロー成形部10と充填部30の境界部分で、高能力モードとは異なるピッチでプラスチック容器100の受渡し及び受取り、つまり授受を行うことができる。
【0022】
[ブロー成形部10]
ブロー成形部10は、上流から連続的に搬送される試験管状のプリフォームを延伸ブロー成形してプラスチック容器100を作製する。作製されたプラスチック容器100は、充填部30に搬送される。なお、ブロー成形部10に搬送される前にプリフォームを殺菌処理してもよいし、ブロー成形部10で成形後のプラスチック容器100を殺菌処理してから充填部30に搬送してもよい。また、飲料充填システム1において、ブロー成形部10及び充填部30を除く処理要素を加えることは任意である。
【0023】
ブロー成形部10は、
図1及び
図2に示すように、成形室11と、成形室11の内部に設けられる成形機13と、を備える。また、ブロー成形部10は、成形機13で成形されたプラスチック容器100を充填部30に向けて順に搬送する転送ホイール15,16を備えている。なお、
図1及び
図2において、白抜き矢印がプラスチック容器100の搬送方向を示し、実線矢印が転送ホイール15などの回転方向を示している。他の図面においても同様である。
【0024】
成形機13は、回転体としてのスターホイールSWを備えており、スターホイールSWの円周方向に等分に取り付けられる複数の成形用の金型の内部にプリフォームを挿入した後に、プリフォームの内側にブロー成形用の気体を吹き付けて延伸ブロー成形する。成形機13を構成するスターホイールSWが本発明の第一回転搬送体に対応し、成形機13を構成する金型が本発明の第一処理要素に対応する。なお、円周方向に取り付けられる全ての金型(第一処理要素)の数を所定数Nとする。本実施形態は、ブロー成形部10の具体的な構成を問うものでなく、従来の回転式の延伸ブロー成形装置を用いることができる。この金型が本発明の第一処理要素に対応する。また、本実施形態において、以下も含めてスターホイールの構造は任意である。
【0025】
転送ホイール15,16は、それぞれ回転体としてのスターホイールを基本的な構成としており、転送ホイール15,16の周縁には、周方向に沿って等間隔に、図示を省略する複数のグリッパが配置されている。グリッパに把持されたプラスチック容器100は、転送ホイール15,16の回転に伴って円周上を搬送される。転送ホイール15でグリッパにより把持されるプラスチック容器100は、転送ホイール16のグリッパに受け渡される。このプラスチック容器100の受渡しは、転送ホイール15による円周と転送ホイール16による円周とが接近する部位において行われる。
転送ホイール16で搬送されるプラスチック容器100は、充填部30の転送ホイール35に受け渡される。
【0026】
[充填部30]
次に、充填部30は、
図1及び
図2に示すように、上流のブロー成形部10から受け取ったプラスチック容器100に充填機33により製品液を充填する。また、充填部30は、ブロー成形部10から受け取ったプラスチック容器100を順に搬送する転送ホイール35,36を備えている。なお、転送ホイール15,16,35,36が本発明の搬送部に対応する。
【0027】
充填部30は、充填室31と、充填室31の内部に設けられる充填機33と、を備える。
充填機33は、回転体としてのスターホイールSWを備えており、スターホイールSWの周縁には、周方向に沿って等間隔に、図示を省略する複数の充填バルブと複数のグリッパとが対になって配置されている。グリッパに把持されたプラスチック容器100は、スターホイールの回転に伴って円周上を搬送されながら、充填バルブから製品液が充填される。充填機33を構成するスターホイールSWが本発明の第二回転搬送体に対応し、充填機33を構成する充填バルブが本発明の第二処理要素に対応する。充填機33は、充填バルブ(第二処理要素)を所定数Mだけ備えている。所定数Mは、高能力モード及び低能力モードにおいて同じである。
【0028】
転送ホイール35,36は、転送ホイール15,16と同様に、図示を省略する複数のグリッパを備えている。グリッパに把持されたプラスチック容器100は、転送ホイール35,36の回転に伴って円周上を搬送される。転送ホイール35は、プラスチック容器100の授受に関る際に、グリッパを大きく開くことができる。以下、転送ホイール35の構成について、
図3〜
図5を参照して説明する。
【0029】
[転送ホイール35]
転送ホイール35は、飲料充填システム1が高能力モードで運転されるときに適用される高能力構造(35H)と、飲料充填システム1が低能力モードで運転されるときに適用される低能力構造(35L)と、が用意される。なお、転送ホイール35が本発明の第三回転搬送体に対応する。高能力モードのときには、高能力構造の転送ホイール35H(
図3(b)及び
図4)が充填室31に設置され、低能力モードのときには、転送ホイール35Hに換えて、低能力構造の転送ホイール35L(
図3(c)及び
図5)が設置される。以下、転送ホイール35H、転送ホイール35Lの順に説明する。なお、転送ホイール35Hと転送ホイール35Lは、カム溝59Hとカム溝59Lの形状が相違することを除いて同じ構成を有している。
【0030】
[転送ホイール35H]
転送ホイール35Hは、
図3(a),(b)及び
図4に示すように、軸線が鉛直方向に延びる支柱41と、支柱41の上端から一部が露出する回転軸43と、回転軸43に同軸状に固定される回転円板45と、を備える。回転軸43は、図示を省略する回転電機により回転運動し、この回転運動に伴って回転円板45も回転運動する。
【0031】
転送ホイール35Hは、回転円板45に複数のガイドアーム47が取り付けられている。それぞれのガイドアーム47は、回転円板45の径方向に軸線が沿うように設けられ、この径方向の内側の端部が固定子48を介して回転円板45に固定されているので、ガイドアーム47は片持ち構造をなす。
【0032】
転送ホイール35Hは、ガイドアーム47の軸線方向に沿って往復移動するスライダ49がガイドアーム47に摺動可能に取り付けられている。スライダ49は、ガイドアーム47の内端と外端の間を往復移動する。
スライダ49にはグリッパホルダ51が取り付けられており、このグリッパホルダ51はスライダ49の往復移動に追従してガイドアーム47の軸線方向に沿って往復移動する。グリッパホルダ51は、グリッパ52とカムピン53が取り付けられている。グリッパ52はカムピン53よりも回転円板45の径方向(以下、同様)の外側に取り付けられており、プラスチック容器100を把持する部分が、径方向の外側を向いている。グリッパ52とカムピン53も、スライダ49の往復移動に追従してガイドアーム47の軸線方向に沿って往復移動する。カムピン53は、カム板57Hのカム溝59Hに挿入される。グリッパ52は、プラスチック容器100を把持できる限り、その構造
は任意である。
【0033】
次に、転送ホイール35Hは、支柱41に固定円板55が取り付けられている。固定円板55は、回転円板45よりも下方に間隔をあけて設けられている。
固定円板55には、カム板57Hが取り付けられている。転送ホイール35Hにおけるカム板57Hは、
図4に示すように、カム曲線が円を描くように円形のカム溝59Hが形成されている。カム溝59Hにはカムピン53が挿入される。
【0034】
転送ホイール35Hは、回転軸43の回転運動に追従して回転円板45が回転すると、スライダ49に取り付けられているグリッパホルダ51を介してグリッパ52及びカムピン53も回転運動する。カムピン53がカム板57Hのカム溝59Hに挿入されているが、カム溝59Hは円形であるからカムピン53は単純な円形のカム曲線を描くように回転運動する。したがって、グリッパ52も円周上を回転運動する。
【0035】
高能力モードにおいて、転送ホイール35Hなども含め、ブロー成形部10及び充填部30におけるプラスチック容器100のピッチ及び搬送速度はP2、V2で同じである。
【0036】
[転送ホイール35L]
次に、低能力モードのときに用いる転送ホイール35Lについて、
図3(a),(b)及び
図5を参照して説明する。転送ホイール35Lは、カム板57Lが転送ホイール35Hのカム板57Hと相違することを除くと転送ホイール35Hと同じ構成を有するので、以下ではこの相違点を中心に説明する。
【0037】
カム板57Lのカム溝59Lは、
図5に示すように、第一円弧溝61と、第一円弧溝61よりも曲率半径の
大きい第二円弧溝63と、第一円弧溝61と第二円弧溝63を連結する連結溝65と、から構成され、平面視すると概ね楕円形の外径を有している。第二円弧溝63は、転送ホイール35Hのカム溝59Hと同じ曲率半径を有している。連結溝65は、概ね直線状をなしている。
【0038】
カム板57Lが以上のカム溝59Lを有しているので、回転軸43が回転運動すると、第二円弧溝63及び連結溝65に挿入されるカムピン53の径方向の外側に向けた変位に従ってスライダ49が径方向の外側に向かって変位する。グリッパ52は、
第二円弧溝63に倣って移動するときには、
第一円弧溝61のときに比べて、
図5に示すように、隣接するものとの間隔(ピッチ)が大きくなるのに加えて、搬送速度が速くなる。このように、転送ホイール35Lは、グリッパ52のピッチが変化するピッチ可変機構及び可変速機構を備えている。
【0039】
低能力モードにおいて用いられる転送ホイール35Lは、ピッチが大きく搬送速度の速い
第二円弧溝63に倣ってグリッパ52が移動する領域で転送ホイール16からプラスチック容器100を受け取る。また、転送ホイール35Lは、ピッチが小さく搬送速度の遅い
第一円弧溝61に倣ってグリッパ52が移動する領域で転送ホイール36にプラスチック容器100を受け渡す。
具体的には、転送ホイール35Lは、ピッチP1(第一ピッチ)、搬送速度V2でプラスチック容器100を受け取り、ピッチP2(第二ピッチ)、搬送速度V1でプラスチック容器100を受け渡す。ただし、V1=1/2×V2、P1=2×P2を満たす。
【0040】
転送ホイール35Lは、グリッパ52が径方向の外側に移動することによりピッチが広がるので、転送ホイール35Hと同じ位置にいたのでは、上流側の転送ホイール16からのプラスチック容器100の受け取りを行えなくなる。そこで、低能力モードのときには、
図2(b)に示すように、転送ホイール35Lの中心軸を高能力モードの転送ホイール35Hとは異なる位置に移動させる。こうすることにより、転送ホイール16とのプラスチック容器100の授受を担保する。
【0041】
[飲料充填システム1の動作]
次に、飲料充填システム1の動作について説明する。
飲料充填システム1は、大容量のプラスチック容器100に製品液を充填する高能力モードと、小容量のプラスチック容器100に製品液を充填する低能力モードと、を兼用するので、以下では、高能力モード、低能力モードの順に説明する。
なお、高能力モードは、充填部30に転送ホイール35Hが組み付けられ、また、低能力モードは、充填部30に転送ホイール35Lが組み付けられる。
【0042】
[高能力モード(
図2(a))]
高能力モードは、ブロー成形部10及び充填部30がともに搬送速度が速い高能力で運転する。
高能力モードで運転される飲料充填システム1は、
図2(a)に示すように、ブロー成形部10において、成形室11で成形されたプラスチック容器100を転送ホイール15,16で順に搬送する。このとき、転送ホイール15,16の全てのグリッパでプラスチック容器100を把持して搬送する。なお、グリッパの図示は省略している。このときの転送ホイール15,16で搬送されるプラスチック容器100の間隔はピッチP2であり、搬送速度はV2である。
【0043】
転送ホイール15,16で順に搬送されたプラスチック容器100は、充填部30の転送ホイール35Hに受け渡され、さらに転送ホイール36で搬送され、充填機33に供給される。このとき、転送ホイール35H,36の全てのグリッパでプラスチック容器100を把持して搬送する。なお、グリッパの図示は省略している。このときの転送ホイール35H,36で搬送されるプラスチック容器100のピッチ搬送速度は、P2、V2に維持される。
【0044】
充填機33に供給されたプラスチック容器100は、充填機33において製品液が充填される。製品液が充填されたプラスチック容器100は、充填部30よりも下流に設けられる処理部、例えばプラスチック容器100の開口を封止するキャップを取り付けるキャッパに向けて搬送される。
【0045】
飲料充填システム1が高能力モードで運転されているときには、転送ホイール15,16で搬送されるプラスチック容器100のピッチ及び搬送速度と、転送ホイール35H,36で搬送されるプラスチック容器100のピッチ及び搬送速度は、それぞれP2、V2で一致する。これに従って、
図2(a)には、転送ホイール15,16におけるプラスチック容器100の間隔と転送ホイール35H,36におけるプラスチック容器100の間隔が一致するように描かれている。この転送ホイール35Hは、プラスチック容器100を円周に沿って等間隔で搬送する。
【0046】
[低能力モード(
図2(b))]
低能力モードは、ブロー成形部10が搬送速度の速い高能力で運転し、充填部30が搬送速度の遅い低能力で運転する。先行する運転モードが高能力モードである場合には、充填部30の転送ホイール35Hを転送ホイール35Lに交換する。
【0047】
また、ブロー成形部10は、大容量容器に適合する大容量用金型に交換されている。ただし、本実施形態においては、それまでに取り付けられていた小容量用金型の全てを大容量用金型に交換する必要はなく、小容量用金型の半分の数、つまり1/2Nだけを大容量用金型に交換すれば足りる。しかも交換は、もともと設けられていた小容量用金型の一つおきにする。
【0048】
低能力モードで運転される飲料充填システム1においても、ブロー成形部10の基本的な動作及び搬送速度は高能力モードと同じである。ただし、低能力モードにおいて、成形機13は、持ち得る全ての金型を使ってプリフォームからプラスチック容器100を成形するのではなく、大容量用金型を保持しうる数の1/2の数だけ成形機13に取り付けて成形を行う。しかも、大容量用金型は、一つおきに取り付けられる。
【0049】
したがって、転送ホイール15,16で搬送されるプラスチック容器100のピッチは、高能力モードのP2と異なり、P1(2×P2)となり、転送ホイール15,16が備えるグリッパの一つおき、つまり一ピッチおきに間欠的にプラスチック容器100が保持される。ちなみに、高能力モードは、転送ホイール15,16が備える全てのグリッパで、欠員を設けることなくプラスチック容器100を保持する。
【0050】
転送ホイール15,16で順に搬送されたプラスチック容器100は、充填部30の転送ホイール35に受け渡され、さらに転送ホイール36で搬送され、充填機33に供給される。このとき、転送ホイール35L,36の全てのグリッパでプラスチック容器100を把持して搬送する。なお、グリッパの図示は省略している。
【0051】
ただし、転送ホイール16からプラスチック容器100を受け取る転送ホイール35Lは、転送ホイール16とプラスチック容器100のピッチP1が合うとともに、転送ホイール36とプラスチック容器100のピッチP2が合う必要がある。そこで、転送ホイール35Lは、ピッチ可変機構を採用することで、転送ホイール16からプラスチック容器100の受取りのときにはピッチP1に広がり、転送ホイール36への受渡しのときにはピッチP2に狭くなる。
【0052】
[飲料充填システム1の効果]
第1実施形態に係る飲料充填システム1が奏する効果を説明する。
飲料充填システム1は、低能力モードのときに、ピッチ可変機構を有する転送ホイール35Lを適用するので、充填部30が低速度で運転しても、ブロー成形部10は高能力モードのときと同じ高速度のままで運転ができる。ブロー成形部10はこのピッチ変換に合わせて、1ピッチおきにプリフォームを供給してプラスチック容器100を成形するので、大容量用金型も1ピッチおきに設ければよい。したがって、飲料充填システム1によれば、低能力モードから高能力モードに運転を切り替えるときに、小容量用金型から大容量用金型への交換に要する時間を半分にでき、生産停止時間を短くできる。これは、高能力モードから低能力モードに運転を切り替えるときの大容量用金型から小容量用金型への交換に要する時間も半分にできることを示唆している。
【0053】
また、飲料充填システム1によれば、ブロー成形部10に取り付ける大容量用金型が、ブロー成形部10に取り付け得る数の半分だけ所持していればよい。したがって、飲料充填システム1によれば、大容量用金型に要するコストを抑えることができるのに加えて、大容量用金型を保管するスペースを削減できる。
【0054】
ここで、飲料充填システム1は、高能力モードの運転速度を低能力モードの運転速度の2倍として説明したが、これはあくまで一例にすぎず、3倍、4倍などであってもよい。
また、飲料充填システム1は、充填部30の転送ホイール35Lにピッチ変換する機能を設けたが、ピッチ変換する位置は、ブロー成形部10と充填部30の間であれば任意に定めることができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る飲料充填システム2について、
図6〜
図9を参照して説明する。
飲料充填システム2は、低能力モードにおいて、上流側の転送ホイールの搬送速度と下流側の転送ホイールの搬送速度が相違することを前提とする。ただし、搬送速度が異なる転送ホイールでプラスチック容器100の授受を行うと、搬送速度の速い方のグリッパが、搬送速度の遅い方のグリッパに追いついて衝突する恐れがある。第2実施形態は、このグリッパの衝突を回避した転送ホイールを提案する。
【0056】
飲料充填システム2も、小容量のプラスチック容器100に製品液を充填する運転する高能力モード(
図6(a))と、大容量のプラスチック容器100に製品液を充填する運転する低能力モード(
図6(b))と、の兼用のシステムである。高能力モード及び低能力モードの内容については、第1実施形態と同じである。
飲料充填システム2は、基本的な構成は飲料充填システム1と同様であるから、以下では、その特徴部分である転送ホイール35,36に焦点をあてて説明する。ただし、転送ホイール35と転送ホイール36はグリッパ74の符号を除いて同じ構成を有しているので、以下では転送ホイール35を例にして説明する。
【0057】
転送ホイール35は、
図7に示すように、回転円板71と、回転円板71の外周に周方向に等間隔に、プラスチック容器100を把持する複数のグリッパ72が設けられている。各グリッパ72は、
図8に示すように、回転円板71の外周部に固定されたブラケットプレート73と、ブラケットプレート73に取り付けられた駆動側リンクプレート75A,75B、従動側リンクプレート77A,77Bと、を備えている。駆動側リンクプレート75A,75Bと従動側リンクプレート77A,77Bとは、四節リンク機構をなしている。なお、グリッパ72の構造については、特許文献2により具体的な記載がある。
【0058】
駆動側リンクプレート75A,75Bは、一定長を有した長円形状で、互いに所定角度で交差するように設けられている。駆動側リンクプレート75A,75Bは、交差部分である一端部においてピン止めされ、互いに揺動可能とされている。駆動側リンクプレート75A,75Bは、それぞれの他端部が、従動側リンクプレート77A,77Bとピン止めされる。
【0059】
従動側リンクプレート77A,77Bは、四節リンク機構をなす基端部78A,78Bと、基端部78A,78Bと傾斜する把持部79A,79Bと、が一体的に連なっている。基端部78A,78Bは、それぞれが駆動側リンクプレート75A,75Bとピン止めされる。また、基端部78A,78Bと把持部79A,79Bの境界部分がピン止めされている。
【0060】
グリッパ72は、駆動側リンクプレート75A,75Bがピン止めされている部分に、外力Fを加えると
図8(b),(c)に示すように把持部79A,79Bが開き、外力Fを取り除くと
図8(a)に示すように把持部79A,79Bが閉じる。グリッパ72は、プラスチック容器100の授受に必要とされる(
図8(b))よりも把持部79A,79Bが大きく開く(
図8(c))。
【0061】
転送ホイール35は、
図7及び
図9に示すように、この外力Fを加えるカム81を備えている。カム81は、プラスチック容器100の授受を行う際に、グリッパ72、つまり把持部79A,79Bが開閉されるようにその配置が定められる。詳しくは、グリッパ72がプラスチック容器100を受け渡す手前から開き、受取りが完了すると閉じるようにカム81が配置される。
【0062】
[飲料充填システム2の動作]
次に、飲料充填システム2の動作について説明する。
飲料充填システム2は、高能力モードと低能力モードを行う基本的な動作が飲料充填システム1と同じである。ただし、飲料充填システム2は、転送ホイール35と転送ホイール36を交換することなく、高速で運転されるブロー成形部10と低速で運転される充填部30のピッチ変換、速度調整を行うところが飲料充填システム1と相違する。以下ではこの相違点を中心に飲料充填システム2を説明する。なお、飲料充填システム2において、転送ホイール35が本発明の上流側第三回転搬送体に対応し、転送ホイール36が本発明の下流側第三回転搬送体に対応する。
【0063】
[高能力モード]
高能力モードは、ブロー成形部10及び充填部30がともに搬送速度が速い高能力で運転する。
転送ホイール35,36は、搬送されるプラスチック容器100のピッチ及び搬送速度は、ともにP2,V2である。また、転送ホイール35,36は全てのグリッパ72を用いてプラスチック容器100を搬送する。
【0064】
[低能力モード]
低能力モードは、ブロー成形部10が搬送速度(V2)の速い高能力で運転し、充填部30が搬送速度(V1)の遅い低能力で運転する。先行する運転モードが高能力モードであっても、充填部30の転送ホイール35,36をそのまま使い続ける。
低能力モードにおける成形機13に取り付けられる大容量用金型は、飲料充填システム1と同様に、保持しうる所定数Nの1/2を一つおきに取り付けられる。したがって、転送ホイール35に受け渡されるプラスチック容器100の間隔はP1(=2×P2)となってグリッパ72の一つ置きに保持される。また、転送ホイール35の搬送速度は高能力モードのときと同じでV2である。
【0065】
次に、転送ホイール36は、充填部30が低能力で運転されるのにしたがって、搬送速度はV1(=1/2×V2)であり、かつ、全てのグリッパ74を用いて保持するプラスチック容器100の間隔はP2である。つまり、ピッチP1、搬送速度V2で搬送されてきたプラスチック容器100は、転送ホイール35から転送ホイール36に受け渡される際に、ピッチP2、搬送速度V1に速度及びピッチが変換される。
【0066】
ここで、転送ホイール36に比べて転送ホイール35の搬送速度が速いので、転送ホイール35のグリッパ72が転送ホイール36のグリッパ74に干渉する恐れがある。つまり、グリッパ72の移動する速度がグリッパ74の移動する速度の2倍であるために、先行してプラスチック容器100の授受に関わったグリッパ74に、授受を終えたばかりのグリッパ72が追いついて干渉する恐れがある。この干渉は、授受を始めようとするグリッパ72とグリッパ74の間でも生じうる。
【0067】
以上のグリッパ72とグリッパ74の干渉を避けるために、転送ホイール35のグリッパ72及び転送ホイール36のグリッパ74が、プラスチック容器100の授受の前後に、大きく開くように構成されている。
図9を参照して説明する。
図9は、転送ホイール35で搬送されてきたプラスチック容器100を転送ホイール36に受け渡す際の経過を示している。なお、
図9は、図中の上段の方が下段よりも時間が先行しており、かつ、図中の左側の方が右側の方よりも時間が先行している。
【0068】
転送ホイール35のグリッパ72で把持しているプラスチック容器100を転送ホイール36のグリッパ74に受け渡す前に、グリッパ74が大きく開かれている。転送ホイール35,36の回転が進むと、グリッパ74が徐々に閉じてグリッパ72とグリッパ74の両者でプラスチック容器100を把持する。この様子が、
図9の下段、左端の図に示されている。さらに転送ホイール35,36の回転が進むと、グリッパ72が徐々に開いてグリッパ72からグリッパ74へのプラスチック容器100の掴み換えが終了する。
【0069】
以上の掴み換えの過程において、グリッパ72又はグリッパ74が最も大きく開いている全開の状態において、破線で示される相手側のグリッパ72又はグリッパ74の移動軌跡と干渉しない。したがって、プラスチック容器100の授受の前後において、グリッパ72又はグリッパ74は相手側のグリッパ72又はグリッパ74に干渉することがない。
【0070】
[飲料充填システム2の効果]
第2実施形態に係る飲料充填システム2は、転送ホイール35及び転送ホイール36を交換することなく、前述した飲料充填システム1と同様の効果を奏する。したがって、飲料充填システム2は、高能力モードから低能力モードへの切り替え、又は、その逆のときに要する作業時間を短くできる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、ピッチP1からピッチP2に変換するピッチ可変機構は、第1実施形態及び第2実施形態に限るものではない。また、第1実施形態及び第2実施形態は、本発明の処理はステムとして飲料充填システム1を例にしたが、上流側の処理部と下流側の処理部とで処理速度とが同じ場合と異なる場合があり、特に異なる場合に、上流側の処理速度が速い種々のシステムに適用できる。
また、処理速度、ピッチが異なる例として、V1=1/2×V2、P1=2×P2の関係を満たすものとしてが、本発明はこれに限らず、V1=1/n×V2、P1=n×P2の関係に広く適用できる。ただし、nは2以上の整数である。同様に、低速モードにおいて第一処理部に第一処理要素(金型)を取り付ける数についても、1/2×Nに限るものでなく、所定数Nの1/n倍に適用できる。