【文献】
Adv. Funct. Mater., 2010, Vol.20, p.147-154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の放出可能な薬物部分を含む医薬組成物であって、各薬物部分が少なくとも1つのカルボン酸基と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含み、少なくともいくつかの薬物部分は、1つの薬物部分の該少なくとも1つのヒドロキシル基と別の薬物部分の少なくとも1つのカルボン酸基とを介して、互いに共有結合しており、こうしてポリマーを形成し、ここで薬物部分が、トレプロスチニルである、前記医薬組成物。
該コモノマーが、6−ヒドロキシヘキサン酸、ベータ−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシル−ポリエチレングリコール−カルボン酸、乳酸、及びグリコール酸からなる群から選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
少なくとも1つのカルボン酸基と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含むトレプロスチニルを、カップリング剤と触媒の存在下でエステル化することを含み、少なくともいくつかのトプロスチニルは、1つのトレプロスチニルの該少なくとも1つのヒドロキシル基と別のトレプロスチニルの少なくとも1つのカルボン酸基とを介して、互いに共有結合して、こうしてポリマーを形成する、薬物放出ポリマーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
種々の実施態様が以下に記述される。留意すべきは、具体的な実施態様が、本明細書に検討されるより広い形態に対する網羅的な説明又は制限を目的とするものでないことである。特定の実施態様と併せて記述される1つの形態は、必ずしもこの実施態様に限定されるものではなく、他の任意の実施態様で実施することができる。
【0015】
要素を説明する文脈において(特に下記の請求の範囲の文脈において)「a」及び「an」並びに「the」という用語並びに同様の指示語の使用は、特に明記しない場合は、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を対象に含めると解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、特に明記しない場合は、この範囲に入るそれぞれ別個の値に個々に言及することの省略法とすることを単に目的とし、そしてそれぞれ別個の値は、あたかも個々に本明細書に列挙されたかのように本明細書に取り込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、特に明記しない場合は、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書に提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(例えば、「〜のような(such as)」)の使用は、特に明記しない場合は、単により良く実施態様を説明することを目的とし、そして請求の範囲に制限を掛けるものではない。明細書中のどの言語も、請求の範囲にない任意の要素を不可欠であると示すものとして解釈すべきでない。
【0016】
「含む(comprising)」という表現は、「含む(including)がこれに限定されない」ことを意味する。即ち、他の言及されていない物質、添加物、担体、又は工程が存在してもよい。特に明記しない場合は、「a」又は「an」は、1つ以上を意味する。
【0017】
特に明記しない場合は、本明細書及び請求の範囲に使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、「約」という用語により全ての場合において修飾されると理解すべきである。したがって、特に明記しない場合は、以下の明細書及び添付の請求の範囲に明記される数値パラメーターは、近似値である。各数値パラメーターは、少なくとも報告された有効桁数を踏まえて、普通の丸め手法を適用することにより解釈すべきである。範囲を含む、数値表示、例えば、温度、時間、量、及び濃度の前に使用される「約」という用語は、(+)又は(−)10%、5%又は1%変動してもよい近似値を指す。
【0018】
本明細書に使用されるとき、ある基の前に使用されるC
1-12、C
1-82、又はC
1-6のようなC
m-nは、m〜n個の炭素原子を含有するこの基を意味する。
【0019】
「アルコキシ」という用語は、−O−アルキルを意味する。
【0020】
本明細書に使用されるとき、「ハロ」又は「ハロゲン」又はさらには「ハロゲン化物」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを意味することができる。
【0021】
「アルキル」という用語は、1〜12つの炭素原子(即ち、C
1−C
12アルキル)又は1〜8個の炭素原子(即ち、C
1−C
8アルキル)、又は1〜4個の炭素原子を有する、一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基のことをいう。この用語は、一例として、メチル(CH
3−)、エチル(CH
3CH
2−)、n−プロピル(CH
3CH
2CH
2−)、イソプロピル((CH
3)
2CH−)、n−ブチル(CH
3CH
2CH
2CH
2−)、イソブチル((CH
3)
2CHCH
2−)、sec−ブチル((CH
3)(CH
3CH
2)CH−)、t−ブチル((CH
3)
3C−)、n−ペンチル(CH
3CH
2CH
2CH
2CH
2−)、及びネオペンチル((CH
3)
3CCH
2−)のような、直鎖及び分岐ヒドロカルビル基を含む。
【0022】
「アリール」という用語は、6〜10個の環炭素原子を有する、一価の芳香族単環式又は二環式の環のことをいう。アリールの例は、フェニル及びナフチルを含む。縮合環は、その結合点が芳香族炭素原子にあるならば、芳香族であってもなくともよい。
【0023】
置換基及び可変基の組合せは、安定な化合物の形成が得られるもののみである。「安定な」という用語は、本明細書に使用されるとき、製造を可能にするのに充分な安定性を有し、そして本明細書に詳述される目的に有用であるために充分な時間その化合物の完全性を維持する、化合物のことをいう。
【0024】
本明細書に使用されるとき、「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件(インビトロ又はインビボ)下で加水分解、酸化、さもなければ反応することにより活性化合物を提供できる、化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例は、特に限定されないが、生物加水分解性アミド、生物加水分解性エステル、生物加水分解性カルバメート、生物加水分解性カルボネート、生物加水分解性ウレイド、及び生物加水分解性ホスフェート類似体(例えば、モノホスフェート、ジホスフェート又はトリホスフェート)のような生物加水分解性基を含む、化合物の誘導体を含む。
【0025】
本明細書に使用されるとき、「水和物」は、水分子が、化合物の構造複合体の不可欠の部分として特定比で結合している、化合物の形態である。
【0026】
本明細書に使用されるとき、「溶媒和物」は、溶媒和物分子が、化合物の構造複合体の不可欠の部分として特定比で結合している、化合物の形態である。
【0027】
「薬学的に許容し得る」とは、本説明において、一般的に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の意味でも不適切でない医薬組成物を調製するのに有用であることを意味し、そしてヒトの医薬用途だけでなく獣医学的用途にも有用であることを含む。
【0028】
「薬学的に許容し得る塩」は、上記で定義したように薬学的に許容し得るものであり、そして所望の薬理学的活性を持つ塩を意味する。このような塩は、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、酢酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸などのような、有機及び無機酸と形成される酸付加塩を含む。塩基付加塩は、ナトリウム、アンモニア、カリウム、カルシウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルグルカミン、コリンなどのような、有機及び無機塩基と形成されてもよい。本明細書中の式のいずれかの薬学的に許容し得る塩又は化合物が含まれる。
【0029】
その構造に応じて、「薬学的に許容し得る塩」という用語は、本明細書に使用されるとき、化合物の薬学的に許容し得る有機又は無機酸又は塩基塩のことをいう。代表的な薬学的に許容し得る塩は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩、水溶性及び水不溶性塩[例えば酢酸塩、アムソン酸塩(4,4−ジアミノスチルベン−2,2−ジスルホン酸塩)、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩(clavulanate)、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩(estolate)、エシル酸塩(esylate)、フマル酸塩、グルセプチン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩(glycollylarsanilate)、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩(mesylate)、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(1,1−メテン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩、エンボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩(subacetate)、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、スラマート(suramate)、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩(tosylate)、トリエチオジド、及び吉草酸塩など]を含む。
【0030】
本明細書に使用されるとき、「保護基(protecting group)」又は「保護基(protective group)」は、当該分野で公知のとおり、及びGreene, Protective Groups in Organic Synthesisに示されるとおり使用される。
【0031】
本明細書に使用されるとき、「ヒドロキシル保護基(protective group)」又は「ヒドロキシル保護基(protecting group)」又は「ヒドロキシルブロッキング基(blocking group)」とは、T.W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1991(以降「Greene, Protective Groups in Organic Synthesis」)に定義されるとおりアルコール又はヒドロキシル保護基の一般に理解される定義のことをいう。
【0032】
本明細書に使用されるとき、「酸保護基(protective group)」又は「酸保護基(protecting group)」又は「カルボン酸ブロッキング基(blocking group)」とは、T.W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1991(以降「Greene, Protective Groups in Organic Synthesis」)に定義されるとおりカルボン酸基の保護の一般に理解される定義のことをいう。
【0033】
種々の形態において、血中薬物濃度の最高最低間変動が最小限である望ましい薬物動態を達成するために、薬物ポリマーは、注射又は移植された薬物の徐放用に提供される。この薬物ポリマーは、理想的で連続的な一定の血中濃度プロフィールのより良い近似を達成するために設計され、これは、連続的薬物注入により最も近くまで接近され、そして、これは現在の徐放の方法論では達成が困難であるる。
【0034】
本発明技術は、1つ以上のカルボン酸基、加えて1つ以上のヒドロキシル基(即ち、第1級又は第2級アルコール)を含有する任意の薬物に適応できる。この薬物放出ポリマーにおいて、薬物自体はモノマーとして作用する。したがって、1つの実施態様において、ポリマー中の唯一の成分は、ポリマー形成中のエステル結合の形成において生成した水分子が取り除かれた薬物分子である。準安定であるこのエステル結合は、投与後に体液中の水の存在下で加水分解してポリマーの分解が起こり、その結果、不活性中間体であるオリゴマーを介して段階的に不活性ポリマープロドラッグからのモノマー薬物分子の再生成が起こる。
【0035】
プロスタサイクリン化合物は、1つ以上のカルボン酸基及び1つ以上のヒドロキシル部分を含有する薬物の一例である。これらは、トレプロスチニル及びベラプロスト(及びベラプロストの314d活性異性体)のような安定なプロスタサイクリン化合物と、プロスタサイクリン(プロスタグランジン−I
2)自体のようなあまり安定でないプロスタサイクリン化合物との両方を含む。
【0036】
プロスタサイクリン化合物の場合に、ボーラス注射用の既存の薬物−ポリマー可逆的共有結合体(Pasut, G. and F.M. Veronese, Advanced drug delivery reviews, 61(13): 1177-1188, 2009により記述されたタイプのPEG−薬物結合体など)、並びにAscendis Pharma(WO 2013/024051、WO 2013/024052、WO 2013/024053)による特許及び出願に記述された結合体は、吸収相を延長し、また血流からの薬物の排出相をも延長するため、薬物分子の血中での寿命が向上する。しかし、これらのシステム(血流中の薬物の循環受容器を作り出すために設計された)では、血中の薬物濃度は、最大血中濃度(Cmax)の到達直後に指数関数的減少を受けざるをえない。この指数関数的減衰は、薬物が、真の「0次」放出反応速度(一定の血中濃度が存在する、)を達成するのを妨げている。減衰相中、薬物−ポリマー結合の加水分解は固定速度で起こり、これがポリマー送達薬物を、遊離化合物としてのその短い半減期に基づいて、ポリマー結合体よりも幾分速い(遊離薬物の反応速度よりははるかに遅いが)排出反応速度に従わせる。吸入、摂取、又は注射(ボーラス)であろうと、非徐放製剤中の遊離化合物に当てはまる場合である、「鋸歯状」血中濃度プロフィールに従うよりはむしろ、古典的な共有放出薬物結合体は、もっと滑らかなもっと起伏のある血中濃度プロフィールを有する。それにもかかわらず、依然として残る血中濃度の著しい最高最低間変動は、この遊離化合物の徐放送達の他の代替方式(徐放経口錠剤など)よりは顕著に良好ではないかもしれず、そのため、血中濃度が「最低(トラフ)」又は「最高(ピーク)」ゾーン(それぞれ)にあるとき、薬物の不充分な有効性又は不適切な毒性の期間がもたらされる。本発明技術の新しい薬物ポリマーは、現行の薬物−ポリマー結合体システムに固有の残存する最高最低間変動の問題に解決法を提供する。
【0037】
1つの形態において、薬物放出ポリマーであって、少なくとも1つのカルボン酸基及び少なくとも1つのヒドロキシル基を含む薬物部分を含むポリマーが提供される。いくつかの実施態様において、この薬物部分はプロスタサイクリン化合物である。いくつかの実施態様において、この薬物放出ポリマーは放出制御ポリマーである。いくつかの実施態様において、この薬物部分は、相互に共有結合してポリマー骨格を形成するモノマー単位を形成するが、ここで、この薬物部分は、ポリマー骨格の分解の程度に依存して放出されることが可能である。即ち、この薬物部分は、ポリマー鎖の不可欠の一部であり、組み込まれており、そしてポリマーの基礎構造を含む。この特色は、本発明のポリマーを、ポリマーが薬物の物質とは異なる物質で作られる(例えば、エチレングリコールで作られるPEG)先行技術の薬物ポリマー共有徐放システムと区別している。
【0038】
いくつかの実施態様において、薬物放出ポリマーは、プロスタサイクリン化合物の線状及び分岐のホモポリマー及びヘテロポリマーを含む。1つ以上のカルボン酸基及び1つ以上のヒドロキシル基を有する任意のプロスタサイクリンは、この薬物放出ポリマーに利用することができる。このようなプロスタサイクリン化合物の例は、特に限定されないが、エポプロステノール、トレプロスチニル、ベラプロスト、イロプロスト、シカプロスト、プロスタグランジンI2を含む。1つの実施態様において、このプロスタサイクリン化合物はトレプロスチニルである。別の実施態様において、このプロスタサイクリン化合物はベラプロストである。
【0039】
1つの実施態様において、このプロスタサイクリン化合物は、以下の構造(I):
【化4】
[式中、
【化5】
は、一重結合又は二重結合を表し;
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立にO又はCH
2を表し;
p=0又は1であり;
m=1、2、又は3であり;
R
1は、H又は酸保護基を表し;
R
2及びR
3は、それぞれ独立にH又はヒドロキシル保護基を表し;
R
4は、Hを表し、かつもう一方は、C
1-6アルキルを表し;そして
R
5は、C
1-6アルキル基又はC
2-8アルキニレン基を表す]を有する。
【0040】
いくつかの実施態様において、Z
1はOであり、そしてZ
2はCH
2である。いくつかの実施態様において、Z
1はCH
2であり、そしてZ
2はOである。
【0041】
いくつかの実施態様において、R
1はHである。他の実施態様において、R
1は酸保護基である。適切なカルボン酸保護基R
1は当該分野で公知であり、そして反応が化合物上の他の官能基で実施される間、カルボン酸基をブロック又は保護するのに普通に利用される、カルボン酸基のエステル誘導体を含む。カルボン酸基の保護のための典型的な基は、アリル、メチル、エチル、ニトロベンジル、ジニトロベンジル、テトラヒドロピラニル、メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、トリメトキシベンジル、トリメチルベンジル、ペンタメチルベンジル、メチレンジオキシベンジル、ベンズヒドリル、4,4’−ジメトキシベンズヒドリル、2,2’,4,4’−テトラメトキシベンズヒドリル、t−ブチル、t−アミル、トリチル、4−メトキシトリチル、4,4’−ジメトキシトリチル、4,4’,4”−トリメトキシトリチル、2−フェニル−プロパ−2−イル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェナシル、2,2,2−トリクロロエチル、b−(トリメチルシリル)エチル、b−(ジ(n−ブチル)メチルシリル)エチル、p−トルエンスルホニルエチル、4−ニトロベンジルスルホニルエチル、シンナミル、1−(トリメチルシリルメチル)プロパ−1−エン−3−イル、及び同様の部分を含む。いくつかの実施態様において、R
1は、ベンジル、第3級−ブチル、ジメトキシベンジル、ニトロベンジル又はジニトロベンジル基である。
【0042】
いくつかの実施態様において、R
2及びR
3は、それぞれ独立にHである。他の実施態様において、R
2及びR
3は、それぞれ独立にヒドロキシル保護基である。ヒドロキシル基の保護のための適切な基は、当該分野で公知であり、そして、特に限定されないが、メチル、t−ブチル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、メトキシベンジル、ニトロベンジル、第3級ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリメチルシリル(TMS)、第3級メチルジメチルシリル基、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、アリル、トリチル、エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、テトラヒドロピラニル、又はテトラヒドロチオピラニル基を含む。1つの実施態様において、ヒドロキシ保護基は、テトラヒドロピラニル(THP)である。いくつかの実施態様において、R
2及びR
3は、それぞれ独立にテトラヒドロピラニル、ベンジル、メトキシベンジル、ニトロベンジル、第3級ブチルジメチルシリル又は第3級メチルジメチルシリル基である。
【0043】
いくつかの実施態様において、mは1であり、かつpは1である。他の実施態様において、mは3であり、かつpは0である。
【0044】
プロスタサイクリン化合物は、一方のプロスタサイクリン化合物上のカルボン酸基と、もう一方のプロスタサイクリン化合物上のヒドロキシル基との間のエステル結合の形成を介して、種々の構成の薬物放出ポリマーを形成する。例えば、トレプロスチニルでは、この薬物は、3種の基本形のホモポリマー、又は様々なコモノマーから製造されるいくつかのヘテロポリマー種であるように設計することができる。トレプロスチニルは、リモジュリン(Remodulin)(登録商標)中の活性成分であり、そしてMoriarty, et al., J. Org. Chem. 2004, 69, 1890-1902、米国特許第6,441,245号明細書、6,528,688号明細書、6,700,025号明細書、及び6,809,223号明細書(これらは、その全体が引用例として取り込まれる)に報告されている。トレプロスチニルは、以下の構造(II):
【化6】
を有する。
【0045】
トレプロスチニルは、1つのカルボン酸基及び2つのヒドロキシル基(1つの環ヒドロキシル基及び1つの鎖ヒドロキシル基)を有する。種々のホモポリマー及びヘテロポリマーが、エステルを形成するための、種々のトレプロスチニル部分のカルボン酸基と、環ヒドロキシル又は鎖ヒドロキシル基との間の反応により生じうる。ブロッキング剤は、環ヒドロキシル又は鎖ヒドロキシル基のいずれかを選択的にブロックするために使用することができ、その結果、種々の線状又は分岐ホモポリマーが形成される。
図1は、ポリマー中の反復単位を形成する好ましい薬物部分の構造を示すが、ここで、この式の文字可変基は、段落6に明記されたものと同じ意味を有する。トレプロスチニルの典型的なホモポリマー及びヘテロポリマーは、
図2〜6に記載されるが、ここで全てのモノマー間結合は、エステル結合である。
【0046】
本発明技術の薬物放出ポリマーは、薬物部分の間に形成された一時的なエステル基結合の開裂により薬物部分の薬理学的活性形を放出する、プロドラッグとして機能する。
【0047】
本発明技術の薬物放出ポリマーは、丁度DNA、RNA、及びタンパク質のような重要な生体高分子のような極性を有する。核酸は5’及び3’末端を有しており、そしてタンパク質はN末端及びC末端を有しており、それが生合成の間のそれらの成長方向を決定しており、従って、本発明のポリマーは「カルボン酸末端」及び「ヒドロキシル末端」を有する。ポリマー鎖長は、当該分野で公知の種々の方法により、例えば、種々の量の連鎖停止試薬を取り込むことにより、調節することができる。いくつかの実施態様において、カルボン酸が保護された(メチル、ニトリル)薬物部分は、ポリマーの末端を形成するために使用することができる。重合混合物に取り込まれるこのような連鎖停止剤の量を増大させると、平均して短いポリマー長が生じるであろう。他の実施態様において、2つのブロックされたヒドロキシル及び遊離カルボン酸を持つ薬物部分は、ポリマーの長さを制限するために使用することができる。さらに他の実施態様において、ある時間後の反応混合物へのメタノール又はエタノール(又は他の第1級、第2級若しくは第3級アルコール類)の取り込みは、重合反応を停止させるために利用することができる。反応が停止される時間は、様々な長さのポリマーを作成するために変更することができる。一般に、反応時間が長いほど、長いポリマーが生じる。連鎖停止基を除去することは、適切又は必要であることもそうでないこともある。例えば、カルボン酸上のメチルエステルブロッキング基は、そのままにすることができるが、一方、遊離すると毒性であり得る第3級ブチルジメチルシランは、ヒトへの投与前に除去することができる。「カルボン酸末端」で鎖延長を停止させるもの、及び「ヒドロキシル末端」で鎖延長を停止させるもの、又はこの2種の混合物を含む、種々のタイプの連鎖停止化合物を必要に応じて使用することができる。鎖長はまた、エステル化反応時間を調節することにより調節することができる。
【0048】
薬物放出ポリマーは、望まれる物理化学的特性又は投与方式に応じて、任意の適切な長さを有することができる。ポリマー特性は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)により定義されるパラメーターによって以下に説明されるが、ここで、化学的に類似のポリマー分子の不均一混合物中の分子量の範囲(即ち、「分散度」)は、分子質量又は重合度のいずれかを参照する「D」という符号により表される。これは、式:D
M=M
W/M
n[式中、M
Wは、重量平均分子質量であり、そしてM
nは、数平均分子質量である]を用いて算出できる。典型的なポリマー長は、約n=2(即ち、二量体、全ての分子が2つのモノマー部分を有しており、分散度は存在しない)からM
n=5000(ここではポリマー長の分布又は「分散度」が存在する)までの鎖長を含むことができる。有限分散度を有するポリマーの形には、D
Mは便利には1.1〜1.3の範囲にあってよい。例えば、血流中の循環デポを形成するように設計された加速放出可溶性ポリマーについて、かなり均一なポリマー長の分布を有することが特に重要である場合に、1.01〜1.1の範囲のD
Mの値を達成するために、これは、本明細書に記載されるものなどの適切な停止剤のタイミングよい添加により重合中に調節することができる。
【0049】
さらに別の形態において、薬物放出ポリマーの製造方法が提供される。いくつかの実施態様において、この方法は、1つ以上のカルボン酸基及び1つ以上のヒドロキシル基を有するモノマー薬物部分をエステル化することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、プロスタサイクリン化合物をエステル化することを含む。
【0050】
エステル結合形成によるポリマー形成のための適切な薬物候補は、少なくとも1つのアルコール(ヒドロキシル)基、及び少なくとも1つのカルボン酸基を有する薬物を含む。いくつかの実施態様において、この薬物は、2つ以上のヒドロキシル基を有する。いくつかの実施態様において、この薬物が2つ以上のヒドロキシル基を有するならば、最も好ましくはこの薬物は、2つ以上のカルボン酸を有していない(なぜならこのことで、望まれるポリマー生成物よりも延長不可能な二量体の形成を引き起こす可能性があるため)。いくつかの実施態様において、薬物は、2つ以上のカルボン酸基及び1つのヒドロキシル基を有する。このような場合には、生産的なポリマー形成が可能になるように、追加のカルボン酸基の保護が必要となる。
【0051】
本明細書に記載される種々のポリマータイプは、二量体から三量体及びそれ以上、潜在的には1ポリマー当たり数百のモノマー部分を含有するまでへと、様々な重合度を有することができる。二量体及び三量体のような小オリゴマーを含むこれら全てのポリマーは、薬物送達目的に有用であり得る。唯一のモノマー成分が薬物分子であるその最も単純な形態において、これらのポリマー又はプロドラッグは、元々の薬物物質の他に追加の化学部分を持たないという独自の性質を有する。したがって、その毒性学的性質は、元々の薬物物質から著しく変化することはない。本明細書に記載されるもののようなプロスタサイクリン化合物の場合には、その用量制限毒性はプロスタサイクリン分類の化合物の薬理学的毒性であろう。このような有害作用は、もし存在するなら、ポリマーからの薬物の徐放又は加速放出によりさらに効果的に対処できる。
【0052】
適切なエステル化プロセス条件は、当該分野で公知である。1つの実施態様において、このエステル化プロセスは、Steglichのエステル化反応を用いて行われる。いくつかの実施態様において、本方法は、カップリング剤及び触媒の存在下でプロスタサイクリン化合物をエステル化することを含む。いくつかの実施態様において、このカップリング剤は、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド又はN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドである。いくつかの実施態様において、この触媒は、4−(ジメチルアミノ)ピリジンである。いくつかの実施態様において、この重合反応は、Hoefle, G., W. Steglich, et al., Angewandte Chemie International Edition in English, 1978, 17(8), 569-583に記載されるSteglichのエステル化プロセスを用いて行われる。このような反応は、リンカーと薬物部分の間の確定した準安定エステル結合を達成して、次にこの組立体をポリマーに結合させるために、リンカー部分に保護薬物を結合させることが報告されている(WO2013/3024051、WO2013/3024052、WO2013/3024053)。反対に、本発明の技術の目的は、薬物ポリマーを作成することであって、モノマーが、主として薬物分子であり、ポリマーの骨格の一部を含み、ポリマー鎖の末端上の付属物を含まない(又はほとんど含まない)ポリマーを作成することである。本発明の薬物−ポリマーを達成するのに必要な反応は少ない。ポリマー形成の代替方法は、Sharghi et al.(H. Sharghi, Babak Kaboudin, J. Chem. Research (S), 1998, pp. 628-629)により詳述される、酸性アルミナとメタンスルホン酸(Al
2O
3/MeSO
3H(AMA))を用いる重合性エステル化反応を行うことである。この方法は、カルボン酸化合物及びエチレングリコールのようなジオールからモノエステルを作成するのに特に適している。しかし、本発明においては、カルボン酸及びジオール官能基の両方を同じ分子中に有するトレプロスチニル及びベラプロストのようなプロスタサイクリン薬物は、他の外部のジオール化合物の非存在下で、そしてSharghiにより研究された化合物とは異なって、重合性であることを認識すべきである。室温で行うことができるSteglichエステル化とは異なり、Sharghi法は、約80℃での加熱を必要とする。この方法により、Al
2SO
3(固体)及びMeSO
3H(液体)は、1:5のモル比で80℃で7〜120分間使用されるか、又は許容し得る収量の生成物が得られるまで使用される。
【0053】
薬物部分が、2つ以上のカルボン酸又はヒドロキシル基を含むいくつかの実施態様において、本方法は、1つ以上の追加のカルボン酸及び/又はヒドロキシル基をブロックすることをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、1つ以上の追加のカルボン酸基をブロックすることをさらに含む。他の実施態様において、本方法は、1つ以上の追加のヒドロキシル基をブロックすることをさらに含む。
【0054】
1つのカルボン酸基及び少なくとも1つのアルコール基(第1級又は第2級アルコールなど)を有する薬物では、このポリマーは、当該分野で公知のエステル結合形成法により調製することができる。例えば、この薬物は、例えば、パラ−トルエンスルホン酸又は硫酸のような強酸を用いて水溶液中で酸性化することができ、これはFischerのエステル化を受ける(Emil Fischer, Arthur Speier, Chemische Berichte 1895, 28: 3252-3258)。パラ−トルエンスルホン酸(固体)は硫酸(液体)よりも好ましいが、これは後者が酸化特性を欠如しており、便利に秤量できるためである。いくつかの実施態様において、酸性化は、2.0未満のpH、例えば0.5Mの濃度の水性パラ−トルエンスルホン酸中のpHおよそ1.0で、水性媒体中で行われる。一般に、強酸の存在下での非重合性反応物とのエステル結合形成(例えば、エタノール及び酢酸から酢酸エチルを形成する)では、平衡に到達して、反応は完了まで行かない。しかし本発明では、生じる薬物ホモポリマー(又は6−ヒドロキシ−ヘキサン酸及び薬物から形成されるヘテロポリマー)が不溶性である可能性が高いため、これは、形成すると自然沈降により水性反応混合物から除去され、このため逆反応が阻害され、反応を完了まで推進する傾向がある。沈降したポリマーは、濾過及び水での洗浄により回収して、パラ−トルエンスルホン酸を除去することができる。反応を推進するために約80℃までの加熱が必要であり、許容し得る収量を与えるには1〜8時間を要するだろう。
【0055】
本発明の薬物ポリマーの形成に有用であろうエステル結合形成の達成を容易にするために、種々の触媒を使用することができる。この分野の最近の文献は、
http://www.organic-chemistry.org/namedreactions/fischer-esterification.shtmに要約されており、適用できる方法は本明細書に要約されている。以下のスキームにおいて、OH−R’は、プロスタサイクリン薬物分子の環又は鎖ヒドロキシルのいずれかを表し、R’はこの分子の残りを表す。他の反応物は、第2のプロスタサイクリン分子のカルボン酸末端を表す。「R」は、カルボン酸を除いたプロスタサイクリン分子の部分を表す。
K. Ishihara, S. Nakagawa, A. Sakakura, J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 4168-4169.
【化7】
T. Chen, T.S. Munot, J. Org. Chem., 2005, 70, 8625-8627.
【化8】
A.K. Chakraborti, et al., J. Org. Chem., 2009, 74, 5967-5974.
【化9】
【0056】
いくつかの実施態様において、ポリマー形成エステル化反応は、モノマー及びポリマー材料への損傷を回避するために、室温又はほぼ室温で行うことができる。いくつかの実施態様において、このエステル化反応は、適切な温度で、例えば約100℃以下で、約80℃以下で、約70℃以下で、約60℃以下で、約50℃以下で、約40℃以下で、約30℃以下で、又は約25℃以下で行われる。いくつかの実施態様において、このエステル化反応は、室温で行われる。いくつかの実施態様において、このエステル化反応は、約25℃で行われる。
【0057】
ブロッキング剤の存在下又は非存在下でエステル化を行うと、種々の薬物放出ポリマーが得られる。例えば、1つの実施態様において、例えば、トレプロスチニル分子上のブロッキング剤の非存在下で、Steglichのエステル化反応を介するトレプロスチニルの重合では、分岐ポリマーが生じる(
図2)。この形態のポリマーにおいて、環ヒドロキシル及び鎖ヒドロキシルの両方が、ポリマーの骨格結合に関与して、分岐構造をもたらす。
【0058】
1つの実施態様において、「環ヒドロキシルがブロックされた」形態のプロスタサイクリンを用いて、線状ポリマーを形成することができる。これは、環ヒドロキシルが2つのヒドロキシルの中でより反応性が高いためであり、その選択的遮断は達成が容易であるためである。カルボン酸とヒドロキシルブロッキング試薬との反応を防ぐために、第1にカルボン酸を一時的に保護しなければならない。
図3は、「環ヒドロキシルがブロックされた」形態のトレプロスチニルを利用して、鎖ヒドロキシルだけが関与し、環ヒドロキシルは関与せずに形成された、線状ポリマーを記載する。利用可能な鎖ヒドロキシル基の反応性の低さ(環ヒドロキシル基に比較して)は、このタイプのポリマーの反応速度の遅さをもたらす。
【0059】
別の実施態様において、鎖ヒドロキシル基はカルボン酸基の一時的保護後にブロックされて、
図4に示す別の線状ポリマーの形成をもたらす。この形態の重合速度と程度は、他のホモポリマーよりも大きいことが予想される。
【0060】
ポリマーがトレプロスチニルのブロックされた形態から作られている実施態様では、ブロッキング基又は保護基を除去することができるか、又はポリマー上に保持することができる。いくつかの実施態様において、加水分解しないか又は他のエステル結合を切断する条件下で重合後の、ブロッキング基又は保護基の除去は、通常の(すなわち、線状又は非分枝状)薬物ホモポリマーの異なる形態を生じさせるであろう。保護基が毒性ではない場合には、これは、治療薬として使用される保護された薬物ポリマー上に残すことができる。保護基は、おそらくインビボで、遅い自発的水性加水分解を受けるであろう。保護基が毒性である場合には、これは、ポリマーが治療薬として使用できる前に、まず除去しなければならない。
【0061】
環ヒドロキシル基又は鎖ヒドロキシル基の必要な選択的遮断を達成するための種々のブロッキング剤及びブロッキング戦略は、当該分野で公知である。さらに、ポリマー又はその薬物部分の安定性の維持に寄与する、穏和な条件下での脱保護に適しているブロッキング基又は保護基が望ましい。いくつかの実施態様において、プロスタサイクリン又はプロスタサイクリン−薬物分子内の特定の標的基の反応性を一時的にブロックするために、保護基を使用して線状ポリマーを形成することができる。いくつかの実施態様において、2つのヒドロキシル(アルコール)基(すなわち、環ヒドロキシル基と鎖ヒドロキシル)のうちの1つのみがブロックされたプロスタサイクリンの構造を作成し、単一の反応性カルボン酸及び単一の反応性ヒドロキシルが露出されている分子を残すことにより、線状ポリマーが調製される。
【0062】
いくつかの実施態様において、適切なシリーズの保護及び脱保護反応を可能にして単一のヒドロキシルブロック型を調製するために、カルボン酸基を一時的にブロックすることも必要かも知れない。ヒドロキシル基及びカルボン酸基の保護又はブロッキングのための適切な基は、当該分野で公知であり、本明細書に開示される。さらに、酵素法によるカルボン酸保護基の選択的除去を可能にする特定のエステル基は、当該分野で公知であり、特に限定されないが、ヘプチルエステル(C
7H
150
2CR)、2−N−(モルホリノ)エチルエステル、コリンエステル(Me
3N
+CH
2CH
20
2Br
-)(Sander, J. and H. Waldmann 2000, Chemistry-A European Journal 6(9), 1564-1577)、(メトキシエトキシ)エチルエステル、及びメトキシエチルエステル(CH
30CH
2CH
20
2CR)がある。これらの基は、非常に穏和な条件下で、例えば酵素加水分解(Wuts, P. G. M., and Greene, T.W., 2007, Greene's Protective Groups in Organic Synthesis. New Jersey, John Wiley & Sons, Inc; 以後Wuts 2007)により切断することができる。これらの酵素的に切断可能なカルボン酸ブロッキング戦略は、線状ポリマーを形成するためのプロスタサイクリン薬物のモノヒドロキシ−保護形態の作成に、特に有効であり得る。
【0063】
ポリマーの安定性の維持に寄与する穏和な条件下で除去することができる、プロスタサイクリン薬物のヒドロキシル基のいくつかの適当なブロッキング基又は保護基は、当該分野で公知である(例えば、Wuts 2007; Crouch, R. D., Tetrahedron 2013, 69(1 1): 2383-2417, hereinafter Crouch 2013)。いくつかの実施態様において、ヒドロキシルブロッキング基又は保護基はシリルエーテル基である。適切なシリルエーテルブロッキング基は、例えばトリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)があり、これらは、塩化物TMSCI、TBDMSClとして導入され、ヒドロキシル基に対して自発的かつ選択的に反応性である。塩化物形態は、薬物分子の安定性に寄与する穏和な条件下で反応する(例えば、TBDMSCl、イミダゾール、ジメチルホルムアミド、25℃、10時間)。当業者には明らかなように、化合物中の異なるヒドロキシル基の差動的反応性を利用して、他のヒドロキシル基とは対照的に、1つのヒドロキシルの選択的遮断を達成することができる(Wuts 2007)。いくつかの実施態様において、比較されるより反応性の高い環ヒドロキシルを選択的にブロックするために、ブロッキング基を利用することができる。他の実施態様において、プロスタサイクリン化合物の鎖ヒドロキシルを選択的にブロックするために、ブロッキング基を利用することができる。
【0064】
カルボン酸基をブロック又は保護するための適切な基は当該分野で公知であり、特に限定されないが、アリル、メチル、エチル、ニトロベンジル、ジニトロベンジル、テトラヒドロピラニル、メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、トリメトキシベンジル、トリメチルベンジル、ペンタメチルベンジル、メチレンジオキシベンジル、ベンズヒドリル、4,4’−ジメトキシベンズヒドリル、2,2’,4,4’−テトラメトキシベンズヒドリル、t−ブチル、t−アミル、トリチル、4−メトキシトリチル、4,4’−ジメトキシトリチル、4,4’、4”−トリメトキシトリチル、2−フェニル−プロパ−2−イル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェナシル、2,2,2−トリクロロエチル、b−(トリ−メチルシリル)エチル、b(ジ(n−ブチル)メチルシリル)エチル、p−トルエンスルホニルエチル、4−ニトロベンジルスルホニルエチル、シンナミル、1−(トリメチルシリルメチル)プロパ−1−エン−3−イル、及び同様の部分などが挙げられる。1つの実施態様において、カルボン酸のブロッキング基又は保護基は2−N−(モルホリノ)エチルエステルであり、これは酵素的に除去可能である。
【0065】
例としてトレプロスチニルを使用して、選択的遮断を以下のように達成することができる。化学量論量又はややモル過剰のブロッキング剤を使用して、穏和な条件(例えば、TBDMSCl、DMAP、Et
3N、DMF、25℃、12時間)下で、カルボン酸保護されたトレプロスチニルにTBDMS又はTMSを反応させることにより、環ヒドロキシルの選択的誘導体化を得ることが可能であろう。次にカルボン酸保護の酵素的除去は、遊離の鎖ヒドロキシルを有するがブロックされた環ヒドロキシルを有し、かつ遊離カルボン酸を有するトレプロスチニル誘導体を与えるであろう。このような方法は、骨格エステル結合の形成に鎖ヒドロキシルのみが関与している線状ポリエステルポリマー(又はコポリマー)の製造に寄与するであろう。引き続く脱保護により、保護基の無い線状ポリマーが得られるであろう。
【0066】
1つの実施態様において、TBDMS及びTMSエーテルの塩基不安定性の差を利用することにより、鎖ヒドロキシル基の選択的遮断を達成することができる。例えば、TBDMSエーテル基はTMSエーテル基よりも、塩基性加水分解に対して10
4倍安定であることが知られている。穏和な条件下でのカルボン酸ブロックされたトレプロスチニルとTMSC1との反応は、本明細書で考察されるように、環ヒドロキシル上にTMSエーテルを有するトレプロスチニル分子を与えるであろう。TBDMSとのさらなる反応は、鎖ヒドロキシルがTBDMSでブロックされた2重ブロック分子を生成するであろう。カルボン酸の以後の酵素的脱保護に続いて、穏和な塩基条件下での2重ヒドロキシル保護トレプロスチニルの脱保護により、鎖ヒドロキシルがブロックされているが環ヒドロキシルが遊離であるトレプロスチニル分子を与えるであろう。後者の形態のモノヒドロキシル保護トレプロスチニルの適切なエステル化条件(例えば、Steglichエステル化)下での重合は、環ヒドロキシル基のみがエステル結合形成に参加し、ポリマーの骨格の一部を形成する、ポリマーを生じさせるであろう、残りのTBDMS基のその後の除去は、唯一の成分がトレプロスチニル部分であるポリマーを生じさせるであろう。シリルエーテルを使用する複数のヒドロキシルの選択的保護及び脱保護のための様々な戦略が、当該分野で公知であり(例えば、Crouch, 2013)、その一部は、ポリマーからTBDMS基のような保護基の除去に適している。
【0067】
線状ホモポリマーの脱保護のための適切な穏和な条件は、モノマー間エステル結合の破壊を回避するものを含む。例えば、シリルエーテルを除去するために酸及び塩基加水分解が一般的に使用されるが、そのような条件はまた、望ましいモノマー間エステル結合を加水分解しやすい。従って、いくつかの実施態様において、穏やかな酸加水分解条件又は穏やかな塩基加水分解条件が、ポリマーからの保護基の除去に適しているかも知れない。いくつかの実施態様において、シリルエーテル保護されたヒドロキシルの脱保護方法は、保護基の除去のために酸又は塩基条件を使用していないものであり、その骨格エステル結合を維持しながらポリマーの脱保護に寄与するものである。このような方法の例としては、中性条件下で触媒性フッ化物を利用するものが挙げられる(DiLauro, et ah, Journal of Organic Chemistry, 2011 76(18), 7352-7358)。この方法はモノマー間エステル結合を保持する可能性があるため、ポリマーの脱保護、すなわちTMS又はTDBMSの除去、に特に適しているであろう。他の例としては、モノマー間エステル結合の加水分解の危険性なしに、本明細書に記載のポリマーからのシリルエーテル保護基の除去のための、硫酸化Sn0
2(Bhure et ah Synthetic Communications 2008, 38(3), 346-353)及びSelectflour(Shah, S. T. A., S. Singh, et al. (2009), Journal of Organic Chemistry, 2009, 74(5), 2179-2182)の使用が挙げられる。
【0068】
本発明の薬物ホモポリマー及びブロックされた薬物ホモポリマーのいくつかの実施態様において、所望であれば、ホモポリマーの物理的形態及び特性は、モル換算で過剰量のコモノマーの存在下でポリマーを形成することにより、他の既知のポリマーの特性に類似するように適合させて、ヘテロポリマーを形成することができる。いくつかの実施態様において、薬物成分に加えて、ポリマーはまた1つ以上のコモノマーを含んでよい。いくつかの実施態様において、コモノマーは、1つの薬物部分のカルボン酸基と第2の薬物部分のヒドロキシル基に共有結合している。いくつかの実施態様において、コモノマーは、所望の方法で薬物放出ポリマーの特性を修飾するように選択される。そのようなコモノマーの例としては、特に限定されないが、6−ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシル−ポリエチレングリコール−カルボン酸、乳酸、グリコール酸、及びβ−ヒドロキシ酪酸がある。
【0069】
いくつかの実施態様において、ポリマーは、ポリカプロラクトン含有組成物の特性に適応するように設計される。例えば
図5は、コモノマーとして6−ヒドロキシヘキサン酸の存在下で形成された、トレプロスチニルのヘテロポリマーを示す。6−ヒドロキシヘキサン酸は、触媒開環重合法を用いて、ポリカプロラクトンポリマーを形成するために使用されるカプロラクトンのオープン形(環状エステル)である。1つの実施態様において、6−ヒドロキシヘキサン酸は、非ブロック化トレプロスチニル又はブロック化トレプロスチニルのSteglichエステル化の間に、コモノマーとして取り込まれる。モル過剰(例えば、10×)の6−ヒドロキシヘキサン酸の取り込みは、その主要な特徴がポリカプロラクトンに似ているポリマーを生じさせる。ポリカプロラクトンは、60℃で溶融することができるため、薬物送達のための多様な形状(例えば、皮下送達される固形マクロインプラント用、又はステントとして)に成形することを可能にする。代替の実施態様において、カプロラクトン様のヘテロポリマー(例えば、
図6に示されるように)は、必要に応じて、薬剤物質に損傷を与える有限のリスクを課す熱溶融に頼ることなく、ナノ又はマイクロ粒状懸濁液として、エマルジョンから形成されることができる、例えば、乳酸及び他の本明細書に記載のものなどの他の生物学的に適合性のヒドロキシル含有カルボン酸コモノマーもまた、本目的に適しているであろう。
【0070】
ポリカプロラクトン固体マクロインプラントは、生体内で最大3年の寿命を有し、いくつかのFDA認可製品の基礎である(Woodruff, M. A. and D. W. Hutmacher, Progress in Polymer Science, 2010, 35(10), 1217-1256)。すなわち、ポリカプロラクトン様トレプロスチニルのヘテロポリマー(及びポリ−ラクチド様トレプロスチニルヘテロポリマー)は、その表面積によって決定される非常に安定した放出速度を達成する(古典的なゼロ次薬物動態を達成する)ために使用され得ることが想定される。したがって、1つの実施態様において、ポリカプロラクトン様トレプロスチニルポリマーは、固体インプラントとして投与することができる。ポリカプロラクトン様の薬物ヘテロポリマーの場合には、多くの又は全ての薬物は、プロドラッグ形態で、可溶性6−ヒドロキシヘキサン酸結合体プロドラッグ分子として放出される可能性があり、これは、さらに加水分解を受けて遊離薬物を放出する前に移植部位を逃れることになり、それにより、遊離薬物の早期放出のために、移植又は注射部位反応(例えば、炎症や疼痛)を避けるであろう。この特徴は、プロスタサイクリン薬が、月毎のデポ形態として、ポリラクチド−グリコリド(PLGA)徐放性微粒子に埋め込まれた、以前から知られている組成物から、本発明の技術を区別する(Obata et ah, American journal of respiratory and critical care medicine, 2008, 177(2), 195-20)。
【0071】
いくつかの実施態様において、ポリマーは、PEG含有組成物の特性に適合し、それによって水溶性線状ポリマーが得られるように設計されている。例えば
図6は、ヒドロキシルPEGカルボン酸コモノマーの存在下での、トレプロスチニルの共重合の結果を示す。いくつかの実施態様において、PEGコモノマーは、約500〜約20000ダルトン、約800〜約10000ダルトン、又は約1000〜約5000ダルトンの平均分子量を有する。いくつかの実施態様において、PEGのコモノマーは、約1〜約5kDaの範囲であろう。モル過剰(10×〜50×)のPEG部分の使用は、可溶性ポリマー(これは、注射用生理食塩水中で溶液を形成し、かつ注射部位疼痛反応を引き起こし得る多量の遊離薬物の放出前に注射部位から消失するであろう)を与えるであろう。これは、本発明のプロスタサイクリン−PEGヘテロポリマーの場合、薬物放出が起きるようにするために、エステル結合がトレプロスチニル部分の両端で切断される必要があるためである。そのため放出速度は、連続加水分解事象後に時間とともに増加する、モル豊富な「末端」の加速機能であろう。
【0072】
PEG−ヘテロポリマーは、本明細書で考察される適切な方法を用いて投与することができる。いくつかの実施態様において、PEG−ヘテロポリマーは、注射部位の反応を回避し、血流中の薬物−ポリマー結合体の指数関数的減衰に対抗するための「加速放出」を達成する目的で、皮下注射として投与するのに最も適しているであろう。そのように形成された薬物放出ヘテロポリマーは、約10,000〜約200,000ダルトンの平均分子量を有することができる。いくつかの実施態様において、PEGヘテロポリマーは、約15,000〜150,000、約20,000〜100,000、約25,000〜75,000、約30,000〜50,000の平均分子量を有する。
【0073】
モノメトキシ−PEG−OH又はモノメトキシ−PEG−COOHのような他のポリマーは、個別に又はまとめて鎖末端として、ならびに鎖末端試薬として使用することができる。このようなポリマーは、連鎖停止剤で使用する場合、反応進行の時間調整間隔の後に、過剰に添加することができる。このようにして、1.01〜1.1の範囲の狭い分散度すなわちD
Mを有するポリマーを達成することができる。これらのPEG部分の取り込みは、反応混合物中のそれらの相対濃度に依存し、得られたポリマーに溶解性を付与することができる。鎖末端として使用する場合、PEG部分は、約5,000〜約100,000ダルトン、約10,000〜約60,000ダルトン、約20,000〜約40,000ダルトン、又は約25,000〜約30,000ダルトンの範囲の適切な平均分子量を有する。例えば、Steglichエステル化におけるモノメトキシ−PEG−OHの使用は、ポリマーのカルボン酸末端上にPEGを有する薬物ホモポリマーを与えるであろう。モノメトキシ−PEG−COOHの同様の使用は、他端にPEGを有する薬物ホモポリマーを与えるであろう。これらのポリマーは、薬物モノマーがPEGモノマー中に散在しているモノヒドロキシ−PEG−カルボン酸に基づくポリマーとは異なる。ジヒドロキシPEG形態(すなわち、リンカーPEG鎖の両端にヒドロキシル基を有する)は、保護されたか又は保護されていない基を有するプロスタサイクリン薬物分子と共に、Steglichエステル化反応に供することができる。これは、PEGが中央に配置され、下記のように「カルボン酸−イン」方向で配向した薬物部分の両側でホモポリマーにより隣接された、対称的なポリマー構造体を生成するであろう。
【化10】
【0074】
これらの方法によって調製されたPEG−プロスタサイクリンのポリマーは、最大搭載量がアーム毎に1つの薬物分子であるマルチアームPEGと比較して、異常に高い薬物搭載能力(例えば4つ)を有するであろう。そのような制限は、これらのポリマーフォームに該当しない。
【0075】
本明細書に記載の方法を用いて調製されたポリマーは、適切には当該分野で公知の方法によって適切に特徴づけることができる。本明細書に開示された薬物放出ポリマーの詳細な物理化学的性質、例えば溶解度、インビボでの加水分解速度は、実験的に決定することができる、本発明技術の様々なポリマーの物理的及び化学的特性を特徴づけることによって、ある薬物送達方法(例えば、皮下投与のために、ステントに組み込むために、など)について、適切な品質を選択することができる。さらに固体剤形について、薬物放出速度は、薬物−ポリマー固体の表面積を操作することにより制御することができる。例えば、種々の実施態様において、薬物放出ポリマーは、ナノ粒子、マイクロ粒子、又はマクロ形態であるように設計することができる。薬物放出ポリマーの所定の質量について、薬物がナノ粒子形態(例えば、直径1nm〜999nm)で作製された場合、薬物の放出速度は最大になるであろう。マイクロ粒子の形態(例えば、直径10μm)では、これは少なくとも1オーダー遅く、マクロインプラント形態(例えば、メッシュ、シート、円筒として)では、これはさらに遅いであろう。マクロ形態では、放出速度は、薬物放出速度のニーズに合わせた最適な表面積を達成するために、インプラント(例えば、円筒の代わりにメッシュ又はシート)の形を選択することにより操作することができる。薬物放出の速度は、一般にインプラントの表面積に比例し、インプラントの質量とは無関係である。本明細書に開示された薬物放出ポリマーの場合、これらのマクロ物質中の薬物放出速度は、主に表面積により決定され、エステル結合の水性又は酵素的加水分解の速度によって決定されるのではない。逆に、慣用される薬剤ポリマーは、リバーシブルなコンジュゲートであり、放出速度を決定する結合加水分解の固有の速度は、ポリマー−薬物結合体、すなわち薬物−リンカー要素、の化学組成を変更することにより、計数的方法でのみ調整することができる。従って本発明の薬物放出ポリマーは、より調整がしやすい。
【0076】
連続注入とは異なり、本発明技術の薬物放出ポリマーは、1日以上持続する用量のボーラス注射により、少量で便利に投与することができる。代替的な実施態様では、これは、潜在的に危険な薬物のボーラス放出のリスクなしで、最大3年の作用持続時間を有するインプラントとして行うことができる。この手法は、慢性高用量中のPEGのようなポリマーの毒性に対する懸念を回避するだけでなく、PEG及び適宜類似のポリマーの使用に適している。これは、既存のポリマー系を用いて達成することができるよりも、ポリマーのモル当たりの薬物のモル数の点で、はるかに高い搭載量を可能にする。本発明技術の薬物ポリマーは、1つの形態においてポリエステルであるが、これは、生分解性及び体内に再吸収性であるように設計されており、モノマー性薬物分子及びそれらの重合部分の安定性に寄与する、穏和な条件下で製造することができる。
【0077】
上記ポリマーの物理的特性は、水溶性である親薬物分子のものとは異なる。これは、主要な水素結合要素、すなわちヒドロキシル基が、共有結合エステル結合に関与しており、従って薬剤放出ポリマーが、親薬物分子よりも水溶性が低い可能性があるためである。いくつかの実施態様において、ナノ粒子又はマイクロ粒子の形にすると、薬物放出ポリマーは、皮下注射のために適しているであろう。他の実施態様において、ナノ粒子の形態では、これは静脈内注射にも適しているであろう。注射後、薬物は、体内の水分子によりゆっくり自発的加水分解を受け、これはより多くの結合が破壊されていくと、加速される。モノマー形への開裂は溶解度のために必要とされないため、可溶性オリゴマーは注射部位を避けるため、注射部位の痛みと炎症反応を受けなくてすむであろう。環ヒドロキシルの高い反応性のために、鎖ヒドロキシル基とは対照的に、ポリエステルホモポリマー中の結合の大部分が、環ヒドロキシルを含むことが予測される。
【0078】
別の形態において、本明細書に記載の薬物放出ポリマーのいずれかを含む医薬組成物が提供される。いくつかの形態において、この組成物は薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。薬学的に許容し得る賦形剤は、非毒性であり、投与を助け、本発明の化合物の治療上の利益に悪影響を与えない。このような賦形剤は、任意の固体、液体、半固体であり、又はエアロゾル組成物の場合には、当業者に一般的に利用可能であるガス状賦形剤であってもよい。本発明の医薬組成物は、当該分野で公知の方法を用いて従来の手段によって調製される。
【0079】
薬物放出ポリマーは、モノマー性プロスタサイクリン分子部分が、ポリマーの骨格の全体(本発明の薬物ホモポリマーの場合)を形成するか、又はポリマーの骨格の不可欠な部分(本発明のヘテロポリマーの場合)を形成するようなものである。両方(ホモポリマー又はヘテロポリマー)の場合に、ポリマーの2つの末端薬物部分(すなわち、それぞれカルボン酸末端とヒドロキシル末端を含む部分)を除いて、ポリマーの薬物部分は、ポリマー鎖の末端で付属物部分であるものとは異なり、薬物分子部分の両端で、共有エステル結合によりポリマーにつながれている。ポリマーの構造において、このように薬物分子を配置することにより(すなわち、両端でポリマーにつながれ、PEGなどの担体ポリマーの末端の「付属物」とは異なり、ポリマー骨格の全部又は一部を含む)、
単一の薬物分子が放出される前に、いくつかの加水分解性エステル結合の開裂事象が通常必要とされる。これは、開裂が、最初の又は最後の薬物モノマーをポリマー鎖に結合させる末端エステル結合にある、統計的にありえない事象を除いて、ポリマー鎖中の単一の開裂事象が、任意の遊離薬物分子ではなく、2つの小さな(娘)ポリマー鎖を生じさせる(大部分の例で)ためである。ポリマー鎖が長いほど、末端薬物部分の分子単位をつなぐエステル結合で加水分解開裂事象が起きにくくなり、従って、ポリマーからの薬物放出の速度は、その長さを決定するポリマーの分子量を操作することによって制御することができる。薬物の遅延放出のためのこの議論は、ポリマーの最末端のエステル結合についての加水分解の速度が、内部結合についての速度と同じになることを、ある程度想定している。プロスタサイクリンとPEGコモノマーとの本発明のコポリマーなどの水溶性ポリマーについて、この構成は、ヘテロポリマーの特性を支配する、PEGの非常によく水和されたランダムコイル特性により保証される。(対照的に、6−ヒドロキシヘキサン酸を用いて作製された薬物ホモポリマー又はヘテロポリマーなどの本発明の不溶性ポリマーは、PEG−プロスタヘテロポリマーより少ない溶媒和であるために、PEG−プロスタサイクリンヘテロポリマーの「完全に水和された」構成は得られず、皮下腔の細胞外液、又は他の体の区画及び体液への溶媒露出の表面積が、加水分解及び薬物放出速度の決定要因であろう)。PEG−プロスタサイクリンヘテロポリマーなどの本発明の可溶性ポリマーの加水分解挙動、及び最初の例における薬理学的に不活性な断片のその加水分解促進性放出の確率的性質は、以下の図を参照することにより最もよく理解することができる。
【0081】
上に示されているのは、時間ゼロ(A)で、及び皮下注射後に、細胞外液などの水性環境への曝露後の線形時間間隔(B−H)で、11モノマー単位(白丸)と10のモノマー間結合(A)を有する本発明の薬物ホモポリマーであり、ここで、水性加水分解の確率的過程が続いて起こる。右側の数字は遊離薬物分子の数を示し、左側の数字は末端の数を示す。最初は(A)時間ゼロで、単一の加水分解性水性加水分解事象(「カット」)後、遊離薬物を生じさせることができるポリマー中に、2つのみのモノマー部分がある。これらは、末端部分(太い白丸)である。従って最初のカットが遊離薬物を生じさせる確率は低い(「A」のような短いポリマーの例では1/5)。内部結合で起きる可能性が(従って)最も高い最初のカットに続いて、新しいカットで遊離薬物を生じさせることができる末端基の量は、新しいカットが遊離薬物を生じさせるであろう確率と同様に、2倍になっている(B)。しかし、内部結合で新しいカットが発生する確率は、末端結合で新しいカットが発生する確率よりも高い。次のカット後に、生成物は「C」であるが、それでも(この特定の確率的な例では)放出される遊離薬物は無い。しかし、さらなるカット後に遊離薬物を生じさせる能力を有する末端の量が増加し、従って次のカットはDを生じさせ、ここで、2分子の遊離薬物が放出される。この最初の加水分解事象(すなわち、最初の2つのカット)は、遊離薬物が放出されない「ラグ」相を含む。さらなるカットは、薬学的に不活性である遊離薬物又は娘断片を生じさせることができる。最終的には、両端の量が減少して薬物放出の瞬間速度の低下が生じ、時間の経過とともに累積薬物放出がプラトーに近づく。この種のポリマーからの薬物放出の「加速」特性は、より長いポリマーを考えると、より明白である。例えば、n=101モノマーのポリマーについて、遊離薬物を生じる最初の開裂事象の確率は1/50であり、従ってそのようなポリマーからの遊離薬物の放出におけるラグ期は、ポリマーの単位質量当たり、より多量の末端を有する「A」のような短いポリマーの場合より長い(ポリマーの単位質量当たりの末端として、又はモノマーのモル当たりとして表現)。このようなより大きいポリマーについて、確率論的に言えば、遊離薬物が放出される前に、いくつかの開裂事象が必要である。ポリマーの加水分解が進行すると、薬物放出の速度が加速するであろう。薬物ホモポリマーの挙動は、付属物ポリマー構築物の挙動(上記で引用したAscendis特許で記載された)と対比することができ、後者では、一定速度の薬物放出があり、すべての開裂事象が遊離薬物分子の放出を引き起こす。薬物放出(初期ラグ相を有する)を加速する原理は、本発明のポリマーの可溶性形態、特にコモノマーとしてPEG部分を有するヘテロポリマーとして作製されるものに適用されるであろう。
【0082】
遊離薬物の生成におけるこの「ラグ」(絶対ではないが)は、2つの重要な効果がある。まずこれは、遊離薬物が放出される前に、薬物−ポリマーが注射部位を逃れることを可能にする(PEG−プロスタサイクリンポリマーの場合)。第2に、血流中のポリマーの濃度が低下すると、薬物放出速度が上昇する。注射部位での遊離薬物の作用により、第1に、これらの要因が作用して局所注射部位の反応を回避し、第2に、通常は従来の薬剤−共有−放出ポリマーの投与に従うであろう薬物濃度の指数的低下に対抗する。注射部位での薬物放出の開始を実質的に防止することにより、投与部位での疼痛、炎症、又は他の有害反応を防止又は低減することができる。不活性ポリマー断片は、薬物の所望の効果を誘発するのに十分な、かなりの程度に薬物を放出し始めることができる前に、まず血流に到達しなければならない。
【0083】
薬物放出ポリマー及びそれらの医薬組成物は、異なる投与経路のために処方することができる。これらは、特に限定されないが、経口、経皮、静脈内、動脈内、経肺、経直腸、経鼻、経膣、舌、吸入、注射又は注入(皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、及び腹腔内を含む)を含む。他の持続放出剤形は、例えばデポ、インプラント、ステント、又は経皮パッチの形態を含むことができる。いくつかの実施態様において医薬組成物は、注射、例えば皮下又は筋肉内注射として投与される。他の実施態様において医薬組成物は、インプラントとして投与される。さまざまな剤形を、当該分野で標準的な方法を用いて調製することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., A. Oslo editor, Easton Pa. 1980参照)。
【0084】
別の実施態様において、薬物放出ポリマーを含む再構成又は液体医薬組成物は、第1の投与方法を介して投与され、薬物放出ポリマーを含む第2の再構成された又は液体医薬組成物は、第2の投与方法を介して投与され、同時、又は連続して投与される。上記第1及び第2の投与方法は、局所、経腸投与、非経口投与、吸入、注射、又は点滴、関節内、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、及び腹腔内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳室内、又は胸骨内投与の任意の組合せでもよい。
【0085】
いくつかの実施態様において、ポリマーは注射剤として投与される。遊離薬物分子とは異なり、本発明技術の薬物放出ポリマーは、さらなる水性加水分解により遊離薬物を放出する前に、プロドラッグオリゴマー形態で、注射部位から拡散して、血液及びリンパ系に入るため、注射部位の痛みを引き起こすことなく注入することができる。いくつかの実施態様において、上記ポリマーは吸入を介して投与される。他の実施態様においてポリマーは、経口投与される。吸入又は経口投与されると、オリゴマー形態は、遊離薬物の除放を受け、用量を制限する血中濃度の「スパイク」又は「ピーク」(これは、一般的には、遊離薬物の経口又は吸入送達後に発生する)を回避する。
【0086】
従来の制御放出製剤中の連続注入とは異なり、本発明技術の薬物放出ポリマーは、1日以上持続する用量のボーラス注射により、少量で便利に投与することができる。代替的な実施態様では、これは、潜在的に危険な薬物のボーラス放出のリスクなしで、最大3年の作用持続時間を有するインプラントとして行うことができる。この手法は、慢性高用量使用中のPEGのようなポリマーの毒性に対する懸念を回避するだけでなく、適宜PEG及び類似のポリマーの使用に適している。これは、既存のポリマー系を用いて達成することができるよりも、ポリマーのモル当たりの薬物のモル数の点ではるかに高い搭載量を可能にする。本発明技術の薬物ポリマーは、1つの形態においてポリエステルであるが、これは生分解性及び体内に再吸収性であるように設計されており、モノマー性薬物分子及びそれらの重合部分の安定性に寄与する、穏和な条件下で製造することができる。
【0087】
いくつかの実施態様において、本発明技術の薬物放出ポリマーは、皮下注射として、あるいは吸入送達で投与することができる。他の実施態様において、必要に応じて、ポリマーは、ナノ粒子又は可溶性形態で、静脈内投与することができる。さらに別の実施態様において、ポリエステルであるポリマーは、全身性の副作用を避けながら、標的組織(例えば、肺高血圧の場合)への局所的薬物送達を行う、適切な解剖学的部位(例えば、肺循環の動脈血管内)での薬物の緩徐な持続放出のための、プラスチック製のステントの形成又はコーティングに使用することができるであろう。このようなステントは当該分野で公知であり、例えば、バルーン血管形成後の再狭窄を防止するための、パクリタキセル及びエベロリウムスなどの抗増殖薬の持続放出のための生体吸収性冠動脈ステントがあり、最近Ormiston, J. A. and P. W. Serruys, Circulation. Cardiovascular interventions, 2009, 2(3), 255-260によって概説されている。ヒトでの生体吸収性(生体再吸収性)ステントの使用の最初の例はポリ乳酸(ポリエステル)を使用し、これは、Tamai and colleagues (Onuma, Y., S. Garg, et ah, Eurolntervention journal of EuroPCR in collaboration with the Working Group on Interventional Cardiology of the European Society of Cardiology 5 Suppl F: F 109- 1 11, 2009) により開発された。同様に、本発明技術の原理によれば、ポリラクチド(ポリ乳酸、PLA)及びポリラクチド−グリコリド(PLGA)を形成するための技術は、例えばトレプロスチニル、イロプロスト、シカプロスト、及びベラプロストなどのプロスタサイクリン類のプロ炎症薬の、共有結合的取り込みのために使用することができるであろう。共有結合的取り込みは、ホモポリマー又はヘテロの一部として、一過性の共有プロドラッグ形態として、その部位トからの薬物の脱着を可能にし、これは次に、循環中に活性な形態に加水分解することができる。
【0088】
ステントのようなデポ装置も、その固有の化学的不安定性のために、従来のモードの薬物投与と送達(例えば、静脈内)のための、非常に短い薬物動態を有する薬物を投与するために利用することができる。このような薬物には、例えば天然のプロスタサイクリン分子、すなわちプロスタグランジン−12が含まれる。これらの薬剤は、本発明技術の薬物放出ポリマーとして利用される場合、肺動脈循環に局所的に放出することができ、肺系の外の全体の循環では利用可能性が小さく、従って全身性の副作用を回避し、より高用量を影響を受けた肺の血管(動脈)組織に局所投与して、より良好な治療率を達成することを可能にするであろう。
【0089】
皮下注射による投与は、線状PEG−プロスタサイクリンコポリマーなどの、可溶性形態の薬物放出ポリマーに最も適している。いくつかの実施態様において、ポリマー溶液のバイアルは水から凍結乾燥することができるか、又は真空下での溶媒蒸発により乾燥することができる。次に乾燥した薬物放出ポリマーは、皮下注射に適した媒体中の溶液又は懸濁液として、使用直前に復元することができる。このような媒体には、例えばpHのリン酸緩衝化生理食塩水を含み、又はコハク酸塩又はクエン酸塩などの緩衝液を、ポリマー安定性により寄与するpH(例えば6.0)で緩衝化された食塩水溶液を投与するために使用することができるであろう。皮下注射のために、適切なポリマーの長さは、約n=2〜約n=100、約n=10〜約n=100、約n=15〜約n=80、約n=20〜約n=70、又は約約n=25〜約約n=50までの鎖の長さを含む。
【0090】
吸入投与のために、1つの実施態様において、ポリマーは少なくともホモダイマーである(液体エアロゾル形態での投与のための)。吸入投与のために、適切なポリマーの長さは、約n=25〜約n=200、約n=50〜約n=150、約n=60〜約n=100、又は約n=70〜約n=90を含むことができる。いくつかの実施態様において、ポリマーの長さは、n=50以上である。いくつかの実施態様において、ポリマーは充分な長さと粒子サイズとを有し、従って、これは計量用量で乾燥粉末吸入器で、固体形態として投与することができる。例えば、薬物放出ポリマーは、約3マイクロメートルの平均又はメジアン径を有する粒子を有することができ、肺動脈への最適なアクセスのために肺の肺胞における沈着を促進する。低オリゴマー形態(例えば二量体又は三量体など)は、モノマーの薬物分子よりも取り込みの影響を受けにくく、従って、ポリマー形態の肺投与は、遊離薬物を肺胞から肺動脈に徐々に溶出するであろうる局所的デポを形成するであろう。可溶性であり、急速に肺組織から全身の循環流(ここで、全身性副作用を引き起こす)へ出て行く非重合の遊離薬物とは対照的に、薬剤のポリマー形態(二量体、三量体及びポリマー)は、肺胞中に「捕獲」され、局所的な不活性の徐放性受容器を形成するであろう。さらに、本ポリマーは、吸収が起きる前に加水分解を受ける必要があるため、非重合型薬物の吸入直後に発生する血中濃度のスパイクを避け、こうして吸入した薬物製剤に関連する用量限定性副作用を避ける。さらに、ポリマー製剤は、吸入形態の遊離薬物よりも、肺動脈付近で遊離薬物のより一定のレベルを提供する。
【0091】
本明細書に記載のポリマー及び組成物は、おそらく単独で又は他の化合物と組み合わせて使用できる。他の薬剤とともに投与される場合、同時投与が任意の方法で行われ、この場合、両方の薬理学的効果が患者で同時に明らかになる。すなわち、同時投与は、単一の医薬組成物、同じ剤形、又は同じ投与経路が、本発明の化合物と他の薬剤の両方の投与のために使用されることを、又は二つの薬剤を正確に同時に投与されることを必要としない。しかしながら、同時投与は、同じ剤形と同じ投与経路により、実質的に同時に、最も都合よく達成される。明らかに、このような投与は、最も有利には、本発明による新規な医薬組成物に、両方の活性成分を同時に送達することによって進行する。
【0092】
本発明技術は、当該技術分野で公知の従来の薬物放出溶液とは、多くの点で異なる。まず、多くの持続放出戦略は、共有エステル結合を使用することが知られている。本発明技術では、結合はむしろ、ポリマー担体(古典的薬物−ポリマーの共有放出結合体のように)ではなく、又は置換基(非ポリマー薬物のための古典的なプロドラッグ戦略のように)でもなく、薬物の別の分子自体にである。従って、ポリマーは水性加水分解により溶解して薬物のみを放出するため、これはポリマー又は置換基要素の毒性に関する懸念を払拭し、従って、新しいポリマーの化学毒性は親薬物分子の化学毒性と実質的に同一であり、これは一般的に知られている。さらに、本発明技術の薬物放出ポリマーの開裂は、必ずしも遊離薬物の放出をもたらすものではない。これは、新しいポリマーのランダムな開裂が、主に、まだ不活性であるポリマー断片の放出をもたらすためである。したがって、例えば、貯蔵時、投与前に、ポリマーの時期尚早の開裂は、汚染及び副作用につながる(例えば注射用製剤の場合、注射部位反応を引き起こす)可能性のある多量の遊離薬物を生じない。
【0093】
古典的な高分子プロドラッグ戦略と比較して、本発明の薬物放出ポリマーは、薬物放出特性の制御において柔軟性を示す。薬物の放出速度が、薬物とポリマーとを結合させる結合(例えば、エステル結合したPEG−薬物プロドラッグ結合体)の加水分解の固定速度により支配される、従来の共有結合高分子放出戦略とは異なり、本発明技術の薬物放出ポリマーについて、遊離薬物の放出速度は、エステル結合加水分解とポリマーの長さの複雑な関数である。より短い長さを有し、単位質量当たりより多量の末端を持つ薬物放出ポリマーは、遊離薬物のより迅速な放出を生じさせるであろう。一方、より長い長さを有する薬物放出ポリマーは、遊離薬物のより遅い放出をもたらし、従って、薬物放出速度は、ポリマー合成中に薬物の長さ又は平均長さを制御することによって制御することができる。すなわち、このようなポリマーの薬物の放出速度は、アナログ関数であり、結合の異なる化学間の計数的変化によってはあまり制限されず、最大の効果になるように「調整」することができる。6−ヒドロキシヘキサン酸とのヘテロポリマーによって例示されるように、ポリマーが不溶性「インプラント」又は「ステント」形態で投与される実施態様では、薬物放出速度は、インプラント又はステントの表面積を操作することによって制御することができる。
【0094】
いくつかの実施態様において、末端結合の開裂のみが活性生成物を生じさせる。連続的な開裂が、ポリマーの長さに沿ってランダムに発生すると、末端の濃度は指数関数的に増加し、末端で新しいランダムな開裂が発生する確率も上昇し、すなわち、薬物放出の速度は、「末端」の量に比例する。長さに応じて、ポリマーは水溶液に不溶性であるか又は可溶性であろう。薬物放出ポリマーが不溶性であるいくつかの実施態様において、これは、局所的デポとして(皮下又は乾燥粉末吸入によって)投与することができるか、又はステントに取り込むことができる。短いポリマー鎖の長さ(例えばダイマー及びトリマー)は、おそらく可溶性形態をもたらすであろう。活性薬物の放出速度は、性格が「アナログ」である可能性が高く、ポリマーの長さを調整することによって調整できるであろう。これは、有害反応を避けるのに、例えば吸入後の血中濃度のスパイクを回避して、おそらくは用量限定性の全身性の副作用を避けるのに有利であろう。
【0095】
さらに別の形態において、1つ以上の症状、疾患、又は障害の治療を必要とする哺乳動物患者、例えばヒトにおいて、診断、治療、制御、遅延、又は予防する方法であって、上記患者に、本発明技術の薬物放出ポリマー、又は上記薬物放出ポリマーもしくはその薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、上記方法が提供される。上記症状、疾患、又は障害は、重合されている薬物部分及びその治療活性に依存することが理解されるであろう。例えば、薬剤部分が抗癌活性を有する場合、それは、癌患者に投与されるであろう。薬剤部分が抗炎症活性を有する場合、それは、関節リウマチ、炎症性腸疾患、又はクローン病のような炎症性疾患に罹患している患者に投与されるであろう。神経学的な活性を有する薬物部分は、アルツハイマー病又はパーキンソン病のような神経疾患に罹患している患者に投与されるであろう、など。
【0096】
本発明技術の薬物放出ポリマーを用いて予防及び/又は治療することができる例示的な症状、疾患、又は障害としては、特に限定されないが、肺高血圧症、虚血性疾患(例えば、末梢動脈疾患を含む末梢血管疾患、レイノー病及びレイノー症候群を含むレイノー現象、全身性硬化症を含む強皮症、心筋虚血、虚血性脳卒中、腎不全)、デジタル潰瘍を含む虚血性潰瘍、心不全(うっ血性心不全を含む)、大動脈肺動脈高血圧症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、抗凝固療法を必要とする症状(例えば、MI後、心臓手術後)、血栓性微小血管症、体外循環、網膜中心静脈閉塞症、アテローム性動脈硬化症、炎症性疾患(例えば、COPD、乾癬)、高血圧(例えば、子癇前症)、生殖及び分娩、癌又は無秩序な細胞増殖の他の症状、細胞/組織保存がある。1つの実施態様において、本発明技術は、トレプロスチニルによって治療及び/又は予防することができる疾患又は障害を治療又は予防する方法において使用するための、トレプロスチニル制御放出ポリマー又はその薬学的に許容し得る塩又はその医薬組成物に関する。1つの実施態様において、上記疾患又は障害は肺動脈高血圧である。非小細胞肺癌は、本発明を適用可能な別の適応症であり、ここでトレプロスチニル(又は、イロプロストなどの他のプロスタサイクリン薬)は、Wntシグナル伝達経路のアゴニストとして使用することができ、肺癌細胞の増殖を阻止し、新しい腫瘍形成を阻害する(Tennis, M. A., et al, Neoplasia, 2010, 12(3): 244-253)。
【0097】
一般的に説明した本発明は、例示のために提供され、本発明を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0098】
実施例1:ポリマー化合物(A)の調製
ポリマー形成反応は、
図2の薬物ホモポリマーについて本明細書で記載した公知のSteglich エステル化(H5fle, G., W. Steglich, et al. 1978)の修飾により、最も好適に達成される。0.78mmolのトレプロスチニル30.5mgをジクロロメタン(DCM 25mL)及び脱イオン水(600μL)に溶解する。DCM(10ml)に溶解されたジメチルアミノピリジン(DMAP 760mg,6.24mmol)及びEDC HCl(1.19g,6.24mmol)を加える。反応が完了するか、又はプラトーに達する(遊離トレプロスチニルを測定するHPLC/MSにより判定される)まで室温で、反応混合物を一晩4〜8時間又は16時間攪拌し、この時点では、ポリマー形成中に消費される遊離トレプロスチニルはもう無い。激しく撹拌しながら、DCM溶液を余分な水に追加し、ロータリーエバポレーターでジクロロメタンを蒸発させる。濾過により粒子状ポリマーを回収し、水で洗浄して過剰のEDC、副生成物、及び未反応のトレプロスチニルを除去する。乾燥したポリマーをDCMに溶解し、当該分野で公知の方法に従ってDCM中のゲル浸透クロマトグラフィーを行うことにより、さらなる精製を行うことができる。このようなクロマトグラフィーで溶出する最初の(広い)ピークはトレプロスチニルポリマーであり、後に溶出するピークは、残留汚染物質であり、廃棄してもよい。
【0099】
図2の薬物ホモポリマーを達成するための別の方法は、本明細書に記載したSharghi, Babak et al. 1998のエステル化法を適用することである。MeSO
3H(1.0mL,15mmol)及びAl
2O
3(0.27g,3.0mmol)の混合物に、2.0mmolのトレプロスチニルを添加する。この混合物を80℃の油浴中で7〜120分間攪拌し加熱する。次に混合物を水に注ぎ、この時点でポリマーが沈降し、Al
2O
3とともに濾過し、水で洗浄(遊離トレプロスチニルを除去するため)することにより回収される。次に、回収されたポリマーとAl
2O
3混合物を水に再懸濁し、懸濁物を酢酸エチル又はクロロホルム(20mL)で2回抽出してポリマーを溶解し、アルミナを残す。次に有機層を重炭酸ナトリウムの飽和溶液(20mL)で洗浄する。最後に、有機層を塩化カルシウム(CaCl
2)上で乾燥し、真空下で溶媒を留去して残留物を得ると、これがポリマー生成物である。
【0100】
本発明を上記実施態様とともに説明したが、上記説明及び実施例は本発明の範囲を例示することを意図するものであり、これを限定するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内での他の形態、利点、及び修飾は、本発明の属する当業者には明らかであろう。
【0101】
本明細書で引用したすべての特許、特許出願、刊行物及び文献は、これらが個々に参照により組み込まれたかのような程度まで、その全体が参照のため本明細書に組み込まれる。