特許第6594858号(P6594858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6594858メラトニン分泌調整剤、メラトニン分泌調整方法
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  • 特許6594858-メラトニン分泌調整剤、メラトニン分泌調整方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594858
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】メラトニン分泌調整剤、メラトニン分泌調整方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20191010BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20191010BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   A61K31/198
   A61P25/20
   A61P43/00 111
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-511972(P2016-511972)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2015060283
(87)【国際公開番号】WO2015152311
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72675(P2014-72675)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】308032666
【氏名又は名称】協和発酵バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安尾 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】菱田 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】秋月 さおり
(72)【発明者】
【氏名】根橋 麻実
(72)【発明者】
【氏名】神村 彩子
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−050352(JP,A)
【文献】 松尾陽香他,L-オルニチンの投与時間依存的なホルモン分泌リズム制御,アミノ酸研究,2013年 2月,Vol.6, No.2,p.179
【文献】 日本時間生物学会会誌,1999年,Vol.5, No.1,p.21-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
A61P 25/20
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルニチンまたはその塩を有効成分として含有する、メラトニンの分泌上昇の開始時間を早めるメラトニン分泌調整剤であって、概日リズム睡眠障害の改善剤であるメラトニン分泌調整剤
【請求項2】
前記概日リズム睡眠障害が、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群または 非24時間睡眠覚醒障害である請求項記載のメラトニン分泌調整剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルニチンまたはその塩を含有するメラトニン分泌調整剤、メラトニン分泌調整方法、メラトニンの分泌調整に使用するためのオルニチンまたはその塩、メラトニンの分泌調整剤の製造のためのオルニチンまたはその塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
L−オルニチンは筋肉合成を増強する、または基礎代謝を高め肥満を予防する食品素材として、米国を中心に用いられている。また、L−オルニチンは、欧州では肝臓障害を改善する医薬品としてL−オルニチン・L−アスパラギン酸塩の形態で用いられている。
【0003】
また、オルニチンには寝つきまたは寝起き改善(特許文献1)、冷え症改善(特許文献2)並びに摂食活動および/または消化管活動の促進(特許文献3)の効果が知られている。しかし、オルニチンまたはその塩の摂取により、メラトニンの分泌上昇開始時期が早まることは知られていない。
【0004】
メラトニンは脳の松果腺から分泌されるホルモンであり、昼間は光により抑制されているが、夜になると分泌が高まる。メラトニンが分泌されると、視交叉上核に存在する受容体を介して概日リズムが調整されるとともに、体温低下作用または神経・内分泌機能の調整により、自然な睡眠がもたらされる。
【0005】
メラトニンの分泌は夜間照明により抑制され、概日リズムの乱れまたはそれにともなう睡眠障害の原因となる。また、メラトニンの分泌は加齢に伴って減少し、老齢者の睡眠障害とも関与する。
【0006】
このことから、内因的または外因的要素により生体内メラトニン濃度またはメラトニン受容体活性を調整することで、例えば、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群および非24時間睡眠覚醒障害等の概日リズム睡眠障害(非特許文献1、2および特許文献4)、並びに、例えば、中途覚醒および不眠等の加齢による睡眠障害(非特許文献3)を改善することが期待される。
【0007】
実際、メラトニンまたはその受容体アゴニスト製剤は当該用途で臨床学的に使用されているほか、メラトニンは栄養補助食品サプリメントとして米国で販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特開2006−342148号公報
【特許文献2】日本国特開2007−119348号公報
【特許文献3】国際公開第2013/129642号
【特許文献4】日本国特開2003−335691号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「スリープ・メディスン(Sleep Medicine)」、2004年、5巻、p.523−532
【非特許文献2】「スリープ・メディスン・レビューズ(Sleep Medicine Reviews)」、2007年、11巻、p.485−496
【非特許文献3】「エクスペリメンタル・ゲロントロジー(Experimental Gerontology)」,2005年、40巻、p.911−925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、外因的に摂取するメラトニン製剤には副作用の可能性があり、その安全性が確実に保証されていないため、生体内のメラトニン分泌を調整する方法が希求されている。
【0011】
したがって、本発明は、生体内のメラトニン分泌を調整する方法、より具体的にはメラトニンの分泌上昇の開始時間を早めることができるメラトニン分泌調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、オルニチンまたはその塩を有効成分として含有する剤により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の(1)〜(16)に関する。
(1)オルニチンまたはその塩を有効成分として含有するメラトニン分泌調整剤。
(2)概日リズム睡眠障害および/または加齢による睡眠障害の治療剤である(1)記載のメラトニン分泌調整剤。
(3)前記概日リズム睡眠障害が、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群または非24時間睡眠覚醒障害である(2)記載のメラトニン分泌調整剤。
(4)前記加齢による睡眠障害が、中途覚醒または不眠である(2)記載のメラトニン分泌調整剤。
(5)オルニチンまたはその塩の有効量を必要とする対象に投与する工程を含むメラトニン分泌調整方法。
(6)概日リズム睡眠障害および/または加齢による睡眠障害治療方法である(5)記載のメラトニン分泌調整方法。
(7)前記概日リズム睡眠障害が、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群または非24時間睡眠覚醒障害である(6)記載のメラトニン分泌調整方法。
(8)前記加齢による睡眠障害が、中途覚醒または不眠である(6)記載のメラトニン分泌調整方法。
(9)メラトニンの分泌調整に使用するためのオルニチンまたはその塩。
(10)前記メラトニンの分泌調整が概日リズム睡眠障害および/または加齢による睡眠障害の治療である(9)記載のオルニチンまたはその塩。
(11)前記概日リズム睡眠障害が、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群または非24時間睡眠覚醒障害である(10)記載のオルニチンまたはその塩。
(12)前記加齢による睡眠障害が、中途覚醒または不眠である(10)記載のオルニチンまたはその塩。
(13)メラトニン分泌調整剤の製造のためのオルニチンまたはその塩の使用。
(14)前記メラトニン分泌調整剤が概日リズム睡眠障害および/または加齢による睡眠障害の治療剤である(13)記載の使用。
(15)前記概日リズム睡眠障害が、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群または非24時間睡眠覚醒障害である(14)記載の使用。
(16)前記加齢による睡眠障害が、中途覚醒または不眠である(14)記載の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、オルニチンまたはその塩を含有するメラトニン分泌調整剤を提供することができる。本発明のメラトニン分泌調整剤またはメラトニン調節方法によれば、有効成分として含有するL−オルニチンまたはその塩により、夜間におけるメラトニンの分泌上昇の開始時間を早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1において、横軸は明期開始からの時間(時)を、縦軸は血漿中メラトニン濃度(pg/mL)を表す。黒丸(●)は蒸留水投与群(コントロール群)を表し、白四角(□)はL−オルニチン塩酸塩1000mg/kg投与群を表し、白三角(△)はL−オルニチン塩酸塩3000mg/kg投与群を表す。12時における蒸留水投与群に対してDunnettの多重比較検定により有意差が認められた蒸留水投与群を***(p<0.001)、L−オルニチン塩酸塩1000mg/kg投与群を#(p<0.05)または##(p<0.01)、およびL−オルニチン塩酸塩3000mg/kg投与群を+(p<0.05)で表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、オルニチンまたはその塩を有効成分として含有するメラトニン分泌調整剤を含む。
【0016】
本発明で用いられるオルニチンとしては、L−オルニチンおよびD−オルニチンが挙げられるが、L−オルニチンが好ましい。L−オルニチンが好ましいのは、生体内では、オルニチンはL体として存在しているからである。
【0017】
オルニチンは、化学的に合成する方法または発酵生産する方法等により取得することができる。また、オルニチンは、市販品を購入することにより取得することもできる。
【0018】
L−オルニチンを化学的に合成する方法としては、例えば、Coll.Czechoslov.Chem.Commun.,24,1993(1959)に記載の方法が挙げられる。L−オルニチンを発酵生産する方法としては、例えば、日本国特開昭53−24096号公報および日本国特開昭61−119194号公報に記載の方法が挙げられる。また、L−オルニチンおよびD−オルニチンは、シグマ−アルドリッチ社等より購入することもできる。
【0019】
オルニチンの塩としては、例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩およびアミノ酸付加塩等が挙げられる。
【0020】
酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩およびリン酸塩等の無機酸塩並びに酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩およびカプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0021】
金属塩としては、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩並びに亜鉛塩等が挙げられる。
【0022】
アンモニウム塩としては、例えば、アンモニウムおよびテトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。
【0023】
有機アミン付加塩としては、例えば、モルホリンおよびピペリジン等の塩が挙げられる。
【0024】
アミノ酸付加塩としては、例えば、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸等の塩が挙げられる。
【0025】
上記のオルニチンの塩のうち、塩酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸塩またはアスパラギン酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、または2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明における「メラトニン分泌調整剤」とは、体内に摂取することで、1日のメラトニン分泌の上昇が開始する時間が、非摂取時と比較して早まる剤を表す。
【0027】
本発明のメラトニン分泌調整剤には、オルニチンまたはその塩に加え、適宜、各用途に適した添加剤を含有させることができる。
【0028】
本発明のメラトニン分泌調整剤としては、オルニチンまたはその塩をそのまま投与することも可能であるが、通常各種の製剤として提供するのが好ましい。
【0029】
製剤は、有効成分としてオルニチンまたはその塩を含有するが、更に任意の有効成分を含有していてもよい。また、それら製剤は、有効成分を薬理学的に許容される一種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0030】
製剤の投与形態は、メラトニン分泌の調整に際し最も効果的なものを使用するのが好ましい。経口投与または、例えば、静脈内、腹膜内若しくは皮下投与等の非経口投与を挙げることができるが、経口投与が好ましい。
【0031】
投与する剤形としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤若しくは流エキス剤等の経口剤または注射剤、点滴剤、クリーム剤若しくは坐剤等の非経口剤のいずれでもよいが、経口剤として好ましく用いられる。
【0032】
経口投与に適当な、例えば、シロップ剤のような液体調製物は、水、蔗糖、ソルビトール若しくは果糖等の糖類、ポリエチレングリコール若しくはプロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油若しくは大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体若しくは安息香酸ナトリウム等の保存剤またはストロベリーフレーバー若しくはペパーミント等のフレーバー類などを添加して製剤化することができる。
【0033】
経口投与に適当な、例えば、錠剤、散剤および顆粒剤等は、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール若しくはソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ若しくはトウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム若しくは塩化ナトリウム等の無機物、結晶セルロース、カンゾウ末若しくはゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム若しくはアルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール若しくはシリコーン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン若しくは澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤またはグリセリン等の可塑剤などを添加して製剤化することができる。
【0034】
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば、甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料および香辛料抽出物等が添加されてもよい。
【0035】
経口投与に適当な製剤は、そのまま、または、例えば、粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態として、メラトニン分泌調整用の健康食品、機能性食品、栄養補助食品および特定保健用食品等の飲食品として用いてもよい。
【0036】
非経口投与に適当な、例えば、注射剤は、好ましくは受容者の血液と等張であるオルニチンまたはその塩を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩溶液とブドウ糖溶液との混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。
【0037】
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した防腐剤、保存剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤および可塑剤などから選択される1種またはそれ以上の補助成分を添加することができる。
【0038】
本発明のメラトニン分泌調整剤中のオルニチンまたはその塩の濃度は、製剤の種類または当該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択される。オルニチンまたはその塩として、通常は0.1〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜80重量%、特に好ましくは1〜70重量%である。
【0039】
本発明のメラトニン分泌調整剤をヒトに投与する場合の投与量および投与回数は、投与形態、被投与者の年齢または体重等により異なる。通常、成人一日当り、オルニチンまたはその塩として通常は50mg〜30gであることが好ましく、より好ましくは100mg〜10g、特に好ましくは200mg〜3gとなるように一日一回ないし数回投与する。
【0040】
本発明のメラトニン分泌調整剤の投与対象となるヒトは、例えば、メラトニン分泌開始時間の遅延化等のメラトニン分泌の異常を自覚しているヒトであってもよいし、該メラトニン分泌の異常を自覚していないが、メラトニン分泌が異常となるような生活習慣を送っているヒト、または年齢的に該メラトニン分泌の異常が十分に予期できるヒトであってもよい。
【0041】
前記投与対象としては、該メラトニン分泌の異常を自覚しているヒトが好ましく、具体的には概日リズム睡眠障害および/または加齢による睡眠障害があるヒトである。概日リズム睡眠障害があるヒトとしては、例えば、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群または非24時間睡眠覚醒障害等の症状があるヒトを挙げることができる。
【0042】
加齢による睡眠障害があるヒトとしては、例えば、中途覚醒または不眠等があるヒトを挙げることができる。また加齢による睡眠障害があるヒトとしては、年齢が好ましくは51歳以上、より好ましくは61歳以上、さらに好ましくは71歳以上のヒトを挙げることができる。
【0043】
本発明のメラトニン分泌調整剤の投与時期は、特に限定されないが、ヒトにおいては朝方から昼間が挙げられる。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間であることが好ましく、より好ましくは1週間〜3ヶ月間である。
【0044】
本発明のメラトニン分泌調整剤を非ヒト動物に投与する場合の投与量および投与回数は、投与形態、動物の年齢、種類等により異なるが、体重1kg1日当たり、オルニチンまたはその塩として通常は1〜5000mgであることが好ましく、より好ましくは2〜4000mg、特に好ましくは4〜3000mgとなるように一日一回ないし数回投与する。
【0045】
投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間であることが好ましく、より好ましくは1週間〜3ヶ月間である。
【0046】
また、本発明のメラトニン分泌調整剤を投与または摂取することで、概日リズム睡眠障害および/または加齢による睡眠障害を予防または改善することができる。概日リズム睡眠障害としては、例えば、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群および非24時間睡眠覚醒障害等が挙げられる。加齢による睡眠障害としては、例えば、中途覚醒および不眠等が挙げられる。
【0047】
また、本発明は、オルニチンまたはその塩の有効量を必要とする対象に投与する工程を含むメラトニン分泌調整方法を含む。本発明における「メラトニン分泌調整方法」とは、1日のメラトニン分泌の上昇が開始する時間を早める方法を表す。
【0048】
オルニチンまたはその塩の有効量を、対象であるヒトに投与する場合の投与量および投与回数は、投与形態、投与対象の年齢または体重等により異なる。投与対象が必要とするオルニチンまたはその塩の有効量は、成人一日当り、オルニチンまたはその塩として通常は50mg〜30gであることが好ましく、より好ましくは100mg〜10g、特に好ましくは200mg〜3gであり、当該有効量となるように一日一回ないし数回投与する。
【0049】
オルニチンまたはその塩の投与対象となるヒトは、例えば、メラトニン分泌開始時間の遅延化等のメラトニン分泌の異常を自覚しているヒトであってもよいし、該メラトニン分泌の異常を自覚していないが、メラトニン分泌が異常となるような生活習慣を送っているヒト、または年齢的に該メラトニン分泌の異常が十分に予期できるヒトであってもよい。
【0050】
前記投与対象としては、該メラトニン分泌の異常を自覚しているヒトが好ましく、具体的には概日リズム睡眠障害および/または加齢による睡眠障害があるヒトである。概日リズム睡眠障害があるヒトとしては、例えば、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群または非24時間睡眠覚醒障害等の症状があるヒトを挙げることができる。
【0051】
加齢による睡眠障害があるヒトとしては、例えば、中途覚醒または不眠等があるヒトを挙げることができる。また加齢による睡眠障害があるヒトとしては、年齢が好ましくは51歳以上、より好ましくは61歳以上、さらに好ましくは71歳以上のヒトを挙げることができる。
【0052】
オルニチンまたはその塩の投与時期は、特に限定されないが、ヒトにおいては朝方から昼間が挙げられる。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間であることが好ましく、より好ましくは1週間〜3ヶ月間である。
【0053】
オルニチンまたはその塩の有効量を、対象である非ヒト動物に投与する場合の投与量および投与回数は、投与形態、動物の年齢、種類等により異なる。非ヒト動物が必要とするオルニチンまたはその塩の有効量は、体重1kg1日当たり、オルニチンまたはその塩として通常は1〜5000mgであることが好ましく、より好ましくは2〜4000mg、特に好ましくは4〜3000mgであり、当該有効量となるように一日一回ないし数回投与する。
【0054】
投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間であることが好ましく、より好ましくは1週間〜3ヶ月間である。
【0055】
また、オルニチンまたはその塩の有効量を投与または摂取することで、概日リズム睡眠障害および/または加齢による睡眠障害を予防または改善することができる。概日リズム睡眠障害としては、例えば、時差症候群、交替勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群および非24時間睡眠覚醒障害等が挙げられる。加齢による睡眠障害としては、例えば、中途覚醒および不眠等が挙げられる。
【0056】
または、本発明のメラトニン分泌調整方法は、上記「メラトニン分泌調整剤」としてオルニチンまたはその塩の有効量を対象に投与することによって、メラトニンの分泌を調製することもできる。
【0057】
また、本発明は、メラトニン分泌調整剤の製造のためのオルニチンまたはその塩の使用を含む。
【0058】
オルニチンまたはその塩を使用してメラトニン分泌調整剤を製造する場合、有効成分は使用するオルニチンまたはその塩となるが、更に上記の任意の有効成分を含有していてもよい。また、それらを製剤とする場合、有効成分を薬理学的に許容される一種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0059】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2014年3月31日付で出願された日本特許出願(特願2014−072675)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例および製造例を示すが、本発明は下記実施例および製造例に限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
CBA/Nマウス(雄、7週齢、平均体重20−30g)を試験に使用した。照明条件は12時間明期と12時間暗期の明暗周期とした。室温25±1℃、自由飲水・自由摂食、ケージごとに4匹ずつのグループ飼育の条件で飼育した。各群に投与する溶液または蒸留水は、下記1)〜3)に従って調製した。
【0062】
1)1000mg/kg投与群用溶液
投与量が1000mg/kg体重となる重量のL−オルニチン塩酸塩を、投与するマウス1kgあたり10mLの蒸留水に溶解し、1000mg/kg投与群用の溶液を作製した。
【0063】
2)3000mg/kg投与群用溶液
投与量が3000mg/kg体重となる重量のL−オルニチン塩酸塩を、投与するマウス1kgあたり10mLの蒸留水に溶解し3000mg/kg投与群用の溶液を作製した。
【0064】
3)コントロール群用蒸留水
投与するマウス1kgあたり10mLの蒸留水をコントロール群用に採取した。明期開始後22時に、経口ゾンデを用いて上記1)〜3)の溶液または蒸留水を各群に強制経口投与した。投与時刻は暗期であるため、1ルクス以下の暗い赤色光のもとで投与を行った。同様の経口投与を7日間毎日継続した。7日目の経口投与の翌日において、明期開始後12、14、16、18、20、22時に採血した(各群・各時につき、n=3〜4)。血液を3000rpmで10分間、4℃に冷却した状態で遠心分離し、血漿を採取した。トリチウム標識メラトニンを用いた放射免疫測定法により、血漿中メラトニン濃度を測定した。
【0065】
血漿中メラトニン濃度のグラフを図1に示す。結果は平均値±標準誤差で示し、統計処理にはDunnettの多重比較試験を使用し、コントロール群の基礎レベルである明期開始後12時の値との有意差で示した。図1に示すように、蒸留水を投与したコントロールマウスでは、メラトニン濃度の有意な増加が明期開始後20時から見られた(***:p<0.001)。
【0066】
一方、L−オルニチン(1000または3000mg/kg体重)を投与したマウスでは、メラトニン濃度は明期開始後16時から増加し始め、18時以降に有意な値となった(+および#:p<0.05、##:p<0.01)。
【0067】
これらの結果から、L−オルニチンの投与により、夜間におけるメラトニンの分泌開始が早まることが示された。
【0068】
[製造例1]オルニチンを含有する錠剤の製造
オルニチン塩酸塩10.0g(製品名:L−オルニチン塩酸塩、協和発酵バイオ社製)、乳糖90.0g、乾燥コーンスターチ2.0g、タルク1.8gおよびステアリン酸マグネシウム0.2gの各成分を均一に混合し、この混合物を単発式打錠機にて打錠し、直径5mm、重量15mgの錠剤を得る。
【0069】
[製造例2]オルニチンを含有する顆粒剤の製造
製造例1で得られる錠剤を粉砕、製粒し、篩別して20−50メッシュの顆粒剤を得る。
【0070】
[製造例3]オルニチンを含有するドリンク剤の製造
L−オルニチン塩酸塩5.0g、安息香酸ナトリウム1.0g、果糖10.0g、香料(適量)、色素(適量)および精製水(適量)の各成分を均一に攪拌溶解し、精製水を加えて全量を1000mLとすることによりオルニチンを含有するドリンク剤を製造する。なお、下記成分中の適量とは、香料、色素に関しては、通常の飲料の製造に用いられる量であり、精製水に関しては、他の成分に加え、全量として1000mLにするために必要な量のことをいう。
【0071】
[製造例4]オルニチンを含有する錠剤の製造
オルニチン塩酸塩136.2kg(製品名:L−オルニチン塩酸塩、協和発酵バイオ社製)、微結晶セルロース36.0kg(製品名:アビセルFD101、旭化成ケミカルズ社製)、ショ糖脂肪酸エステル6.6kg(製品名:DKエステルF−20W、第一工業製薬社製)、リン酸カルシウム1.2kg(製品名:リン酸三カルシウム、太平化学産業社製)およびβ−シクロデキストリン20.0kg(製品名:セルデックスB−100、日本食品化工社製)を、コニカルブレンダー(CB−1200ブレンダー、日本乾燥機株式会社製)を用いて混合した。得られた混合物をロータリー圧縮成形機(VIRGO524SS1AY、菊水制作所社製)を用いて、圧縮成形圧10kNで圧縮成形して、直径8mm、250mgの錠剤を製造した。
【0072】
[製造例5]オルニチンを含有する腸溶カプセルの製造
製造例4で調製した混合物20kgと0.2kgの二酸化ケイ素とを混合攪拌して得られた混合物をカプセル充填機に投入し、ゼラチン製2号ハードカプセル20000錠に充填し、ハードカプセルを得た。得られたハードカプセルの表面を、ハイコーターHCT−48型(フロイント産業社製)により、ツェイン溶液を用いてコーティングし、オルニチン塩酸塩を含む腸溶カプセル20000錠を製造した。
【0073】
[製造例6]オルニチンを含有する腸溶錠剤の製造
製造例4で調製した錠剤の表面を、ハイコーターHCT−48型(フロイント産業社製)により、シェラック溶液を用いてコーティングし、腸溶錠剤を製造した。
【0074】
[製造例7]オルニチンを含有するドリンク剤の製造
オルニチン塩酸塩1.28kg(製品名:L−オルニチン塩酸塩、協和発酵バイオ社製)、エリスリトール3kg(日研化学社製)、クエン酸0.05kg(協和ハイフーズ社製)、人工甘味料3kg、香料0.06kgを液温70℃で水50Lに攪拌溶解し、クエン酸でpHを3.3に調整後、プレート殺菌を用いて滅菌して瓶に充填後、パストライザー殺菌し、ドリンク剤を製造した。
図1