特許第6594885号(P6594885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6594885エアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーター組立品およびエアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーターを組み立てるための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594885
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】エアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーター組立品およびエアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーターを組み立てるための方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   A24F47/00
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-546488(P2016-546488)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-505122(P2017-505122A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2014077827
(87)【国際公開番号】WO2015117701
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2017年12月14日
(31)【優先権主張番号】14154554.1
(32)【優先日】2014年2月10日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14154553.3
(32)【優先日】2014年2月10日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14154552.5
(32)【優先日】2014年2月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】バティスタ ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィドマー ジャン−マルク
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン ジェンズ ウルリク
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−512224(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0213419(US,A1)
【文献】 特開平06−315366(JP,A)
【文献】 実開昭54−078944(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーター組立品であって、前記流体透過性ヒーター組立品が、
基体であって前記基体を貫く開口部を含むものと、
前記開口部上に配置された導電性の実質的に平面のフィラメント配置と、
前記フィラメント配置を前記基体に機械的に固定する締付手段とを備え、前記締付手段が導電性であり、かつ前記フィラメント配置を通した加熱用電流を供給するための電気接点の役目をする、流体透過性ヒーター組立品。
【請求項2】
前記フィラメント配置を前記基体に機械的に固定する前記締付手段が前記基体との締りばめまたは圧力ばめを提供する、請求項1に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項3】
前記締付手段が前記基体の横側の部分上に延び、かつ弾力性の脚を備え、前記弾力性の脚が、前記フィラメント配置を前記基体の上面に押しつけ、また前記フィラメント配置および基体が前記弾力性の脚の間に配置される、請求項1〜2のいずれか1項に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項4】
前記基体が、その窪み内に前記フィラメント配置および前記締付手段を受けるための窪みを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項5】
前記締付手段が前記基体の前記窪み内に挿入されたステープル様の要素である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項6】
前記窪みおよび前記ステープル様の要素が対応する非平面の接触面を含む、請求項5に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項7】
前記窪みが、前記基体の上面の少なくとも一部分を横切って延びる長軸方向の窪み、前記基体内の個別の貫通孔、または前記基体の周辺の窪みのどれか1つまたはその組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項8】
前記締付手段が前記長軸方向の窪み内に配置され締め付けられる弾力性の脚部分を備える、請求項7に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項9】
前記フィラメント配置がメッシュを形成する複数のフィラメントを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項10】
前記基体が電気的に分離され、実質的に平面で、好ましくはディスク形の要素である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の流体透過性ヒーター組立品。
【請求項11】
エアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーターを組み立てるための方法であって、前記方法が、
基体を提供し、前記基体を通して開口部を提供する工程と、
導電性フィラメントを前記基体の前記開口部上に配置する工程と、
締付手段によって前記フィラメントを前記基体に機械的に固定する工程と、
前記締付手段によって電気接点を前記フィラメントに提供する工程とを含む、方法。
【請求項12】
窪みを前記基体内に提供し、前記締付手段を前記窪み内に押す工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
締付力が前記基体の上面に対して実質的に直角をなす方向に作用する、請求項11または12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
締付力が前記基体内で上面に対して実質的に横方向に作用する、請求項11または12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
液体エアロゾル形成基体を保持するためのハウジングを含む保管部分であって、前記ハウジングが開放端を持つものと、
前記流体透過性ヒーター組立品の前記フィラメント配置が前記ハウジングの前記開放端上に配置されるように、前記ハウジングの横に配置された請求項1〜10のいずれか1項に記載の流体透過性ヒーター組立品と、
前記流体透過性ヒーター組立品の前記締付手段を前記電源に電気的に接続するための電源コネクターとを含む、エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーター組立品および流体透過性ヒーターを組み立てるための方法に関連する。特に、本発明は、電気的に作動する喫煙システムなど、手持ち式エアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーター組立品に関連する。
【背景技術】
【0002】
電気的に動作する喫煙装置など、一部のエアロゾル発生システムは、電池および制御電子回路、エアロゾル形成基体供給源を含むカートリッジならびに電気的に動作する気化器を備えうる。物質は、例えば発熱体によって、エアロゾル形成基体から気化される。発熱体は、例えばセラミック材料内に平坦なコイルを包埋したものなど、少なくとも部分的に流体透過性ヒーターとしうる。ところが、こうしたヒーターの製造は高価である。
【0003】
作製が安価であり製造が簡単なエアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーター組立品の必要性がある。また、流体透過性ヒーターを組み立てるためのそれに従った方法の必要性もある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様によれば、エアロゾル発生システム用の流体透過性ヒーター組立品、好ましくは電気的に作動する喫煙システムが提供されている。流体透過性ヒーター組立品は、基体、好ましくは電気的に絶縁された基体を含む。基体は基体を通って延びる開口部を含む。ヒーター組立品は、基体内の開口部上に配置された導電性の実質的に平面のフィラメント配置をさらに含む。フィラメント配置は、締付手段を用いて基体に機械的に固定される。締付手段は導電性もあり、フィラメント配置を通して加熱用電流を供給するための、また基体にクランプ留めされたフィラメント配置を安定させるための電気接点としての役目もする。
【0005】
ヒーター組立品は、機械的手段のみによって組み立てられることが好ましい。フィラメント配置および基体の相互への固定、ならびにフィラメント配置と外部電源(例えば電池)の接点との間の電気接点は、機械的締付によって実施される。締付手段は、フィラメント配置の確実な固定、およびフィラメント配置と締付手段の間の信頼できる接触を提供する。機械的締付およびフィラメント配置の電気的な接触を機械的手段によって確立することにより、はんだ付け、溶接または電気接点のエッチングは必要とされない。これは製造を容易にし、ヒーター組立品の製造部品のコストを低減しうる。さらに、これはまた、ヒーター組立品またはその部品の機械加工性を促進する。さらに、機械的固定は、コールドはんだ接続や冷間溶接などのはんだ付けおよび溶接でよくある問題を回避することにより、ヒーター組立品の信頼性を改善しうる。これらは、低強度、応力下での不良および信頼性のない抵抗として知られている。さらに、フィラメント配置は、エアロゾル発生システムの電池のコネクターと直接的には接触せず、従って、ヒーターをシステムに挿入した後でフィラメント配置が引き裂かれることが回避される。
【0006】
本発明によるこうした流体透過性ヒーターを組み立てるための方法では、フィラメント配置の基体への固定、平面内でのフィラメント配置の安定化および電源(例えば電子たばこの電池)への電気コネクターの提供といった3つの目的が1つの単一の経済手段で組み合わされうる。締付手段、フィラメント配置を基体に締め付ける対応する機構、および対応する組立工程は、コスト効果が高く、産業上実証済みであり、機能的に効率が良く、丈夫で、ヒーター組立品の比較的小さな表面と両立しうる。
【0007】
「実質的に平面の」フィラメント配置という用語は、本明細書全体を通して実質的に二次元の位相幾何学的マニホールドの形態であるフィラメント配置を意味するために使用される。従って、実質的に平面のフィラメント配置は、実質的に第三の寸法よりも大きい表面に沿って二次元的に延びる。特に、その表面内での二次元的な実質的に平面のフィラメント配置の寸法は、表面に対して垂直の第三の寸法よりも少なくとも5倍大きい。実質的に平面のフィラメント配置の例は、2つの実質的に平行な架空表面間の構造であって、ここでこれらの2つの架空表面間の距離は、実質的にその表面内の延長部分よりも小さい。一部の実施形態で、実質的に平面のフィラメント配置は平面である。その他の実施形態で、実質的に平面のフィラメント配置は1つ以上の寸法に沿って曲がっており、例えばドーム形状またはブリッジ形状を形成する。
【0008】
「フィラメント」という用語は、本明細書全体を通して、2つの電気接点間に配置された電気的な経路を意味するために使用される。フィラメントは、任意にいくつかの経路またはフィラメントにそれぞれ枝分かれ・分岐させてもよく、またはいくつかの電気的な経路から1つの経路に合流させてもよい。フィラメントは、丸、四角、平坦またはその他の任意の断面形態を持ちうる。フィラメントは、直線的または曲線的に配置されうる。
【0009】
「フィラメント配置」という用語は、本明細書全体で1つのまたは好ましくは複数のフィラメントの配置を意味するために使用される。フィラメント配置は、例えば相互に並列に配置された一連のフィラメントとしうる。フィラメントはメッシュを形成しうることが好ましい。メッシュは、織物または不織布としうる。フィラメント配置は、約0.5マイクロメートル〜500マイクロメートルの間の厚さを持つことが好ましい。
【0010】
原則として、特定の値に関連して「約」という用語が本明細書全体を通して使用される時はいつでも、「約」という用語に続く値は、技術的な考慮事項のため、厳密に正確なその特定の値を持つ必要はないと理解される。ただし、特定の値に関連して使用される「約」という用語は常に、用語「約」に続く特定の値を含み、かつ明示的に開示するものと理解される。
【0011】
例えば、基体の形状および基体にクランプ留めされたフィラメント配置は、エアロゾル形成基体を含むカートリッジの端部の形状に適合されうる。こうしたカートリッジの端部は平面としうるが、曲面でもよく、例えば凸面の形状であってもよい。
【0012】
基体内の開口部は、実質的に任意の形状を持ちうる。開口部は製造が容易である単純な形状、例えば円形、楕円形または長方形の形状、すなわち、基体を通って延びる円形、楕円形または長方形の基部を有する円柱などを持つことが好ましい。基体内の開口部は、少なくとも基体の中央部分を含むことが好ましい。中央部分は基体の仮想重心を含む。別の方法として、または追加的に、中央部分は、例えば回転軸、例えば円形ディスク形基体の回転軸といった長軸方向軸を備えうる。
【0013】
実質的に平面のフィラメント配置は、開口部の少なくとも一部分に締付手段によって配置される。基体は配置面を含み、そこに実質的に平面のフィラメント配置が取り付けられた状態で位置付けられる。配置面は、基体の上面の一部分であることが好ましい。配置面は、開口部と、開口部に隣接した基体の上面の部分とを含みうる。配置面は平面であることが好ましい。締付手段は、引抜き力をフィラメント配置にかける。この引抜き力は、少なくとも配置面と同一平面の方向に方向付けられる。引抜き力は、ヒーターの組立時にかけられることが好ましく、フィラメント配置が取り付けられた状態でフィラメント配置にかけられることが好ましい。引抜き力はフィラメント配置の平面的な配置を保持し、基体の平面内でのフィラメント配置の安定化に役立つ。締付手段は、フィラメント配置、平面内でのフィラメント配置の伸展および安定化に対して反対の引抜き力を提供することが好ましい。
【0014】
締付手段は、いくつかの別々に配置された締付要素を備えうるが、別々に配置された2つの締付要素であることが好ましい。別々の要素がヒーターに電力をかけてフィラメント配置を加熱するための2つの接点を形成するように、別々の締付要素は相互に直に接触しないことが好ましい。複数の締付要素は、フィラメント配置について1つの電気接点としての役割を果たしうる。複数の締付要素は、フィラメント配置について第二の電気接点としての役割を果たしうる。締付手段は、2つの導電性の締付要素であることが好ましく、クランプ、クリップまたはステープルの形状を持つことが好ましい。締付手段は、線に沿って締付作用を提供し、従って単一点での固定によるフィラメントの損傷や引き裂けが阻止されることが好ましい。2つの締付要素は、相互に反対に、例えば基体の反対の横側に配置されることが好ましい。ヒーター組立品は、例えば、基体、フィラメント配置および2つの締付要素のみなど、少数の構成要素を含むことが好ましい。締付手段は、接続を単純化し、外部電気接点を向上させるために、外部コネクターの形態に適合された形状を備えうる。
【0015】
流体透過性ヒーター組立品は、異なる種類のカートリッジの液体の機会に適している。例えば、エアロゾル形成基体として、カートリッジは、液体または液体を含む搬送材料(例えば毛細管材料など)を含みうる。こうした搬送材料および毛細管材料は液体を能動的に運搬するものであり、また液体をヒーター組立品に運搬するようにカートリッジ内で方向付けられていることが好ましい。フィラメント配置は、フィラメント配置による生成された熱により液体が気化されうるように、液体または液体を含む毛細管材料に近接して配置される。フィラメント配置およびエアロゾル形成基体は、液体が毛細管作用によってフィラメント配置の隙間に流れ込みうるように配置されることが好ましい。フィラメント配置はまた、毛細管材料と物理的に接触しうる。
【0016】
導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定でき、隙間の幅は10マイクロメートル〜100マイクロメートルとしうる。フィラメントは、使用時に気化されることになる液体が隙間内に引き出されてヒーター組立品と液体の間の接触面積が増えるように、隙間内に毛細管作用を引き起こさせることが好ましい。導電性フィラメントは、160メッシュUS〜600メッシュUS(±10パーセント(すなわち160〜600フィラメント毎インチ(±10パーセント))のサイズのメッシュを形成しうる。隙間の幅は75マイクロメートル〜25マイクロメートルが好ましい。
【0017】
メッシュの合計面積に対する隙間の面積の比であるメッシュの開口部分の面積率は、25〜60パーセントが好ましい。メッシュは異なるタイプの織物または格子の構造を使用して形成してもよい。
【0018】
フィラメント配置はまた、当業界において周知の通り、液体を保持するその能力によって特性付けられうる。
【0019】
導電性フィラメントは、10マイクロメートル〜100マイクロメートルの直径を持ちうるが、8マイクロメートル〜50マイクロメートルであることが好ましく、8マイクロメートル〜40マイクロメートルであることがより好ましい。フィラメント配置の面積は小さくてもよく、好ましくは25平方ミリメートル以下で、手持ち式のシステムに組み込めるようにすることが好ましい。フィラメント配置は、例えば長方形とし、取り付けられた状態で5ミリメートル×2ミリメートルの寸法を持ちうる。フィラメント配置は、ヒーター組立品の面積の10パーセント〜50パーセントの面積を網羅することが好ましい。フィラメント配置は、ヒーター組立品の面積の15〜25パーセントの面積を網羅することがより好ましい。
【0020】
フィラメント配置は、シート材料(箔など)のエッチングによって形成されうる。これは、ヒーター組立品が一連の平行のフィラメントを含む時、特に有利でありうる。ヒーター組立品がメッシュを含む場合、フィラメントは個別に形成されて、まとめて編まれるかまたは波型が施されうる。
【0021】
ヒーター組立品のフィラメントは、適切な電気的属性を有する任意の材料から形成されうる。適切な材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金およびセラミック材料および金属材料でできた複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含む場合がある。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープシリコン炭化物が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。適切な合金の例としては、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル−、コバルト−、クロミウム−、アルミニウム−チタン−ジルコニウム−、ハフニウム−、ニオビウム−、モリブデン−、タンタル−、タングステン−、スズ−、ガリウム−、マンガン−および鉄を含有する合金、およびニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、鉄−アルミニウム系合金および鉄−マンガン−アルミニウム系合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals Corporationの登録商標である。フィラメントは、1つ以上の絶縁体で被覆されうる。導電性フィラメント用の好ましい材料は、304、316、304L、315Lステンレス鋼、および黒鉛である。
【0022】
フィラメント配置の電気抵抗は、0.3オーム〜4オームであることが好ましい。フィラメント配置の電気抵抗は0.5オーム〜3オームであることがより好ましく、約1オームであることがより好ましい。フィラメント配置の電気抵抗は、接点部分の電気抵抗よりも少なくとも1桁大きいことが好ましく、また少なくとも2桁大きいことがより好ましい。これにより、ヒーター組立品から電流を通過させることにより発生した熱が確実にフィラメント配置に局在化される。システムの電源が電池である場合、ヒーター組立品は全体的に低い抵抗を持つことが有利である。低抵抗で大電流のシステムにより、ヒーター要素に高電力を供給できる。これにより、ヒーター要素が導電性フィラメント配置を素早く望ましい温度にできる。
【0023】
ヒーター組立品は、第一の材料から作製された少なくとも1つのフィラメントと、第一の材料とは異なる第二の材料異なるから作製された少なくとも1つのフィラメントとを備えうる。これは、電気的なまたは機械的な理由から有益でありうる。例えば、1つ以上のフィラメントは、例えば鉄アルミニウム合金など、温度に伴い著しく変動する抵抗を持つ材料から形成されうる。これにより、温度または温度変化を決定するために使用されるフィラメントの抵抗の測定ができる。これは、吸煙検出システムで使用されることができる。別の方法として、または追加的に、これは、ヒーターを望ましい温度範囲内に保つためにヒーター温度の制御に使用されることができる。急激な温度の変化も、電気的に作動する喫煙システムのユーザーの喫煙に起因するヒーター組立品を通過する空気の流れの変化を検出する手段として使用されうる。この種類のフィラメント材料の好ましい実施形態は、例えば、第一の材料の一連の平行なフィラメントが第二の材料の一連の平行なフィラメント上に配置されているものであり、その配列が相互に対して回転し、メッシュを形成する。材料の組み合わせを、実質的に平面のフィラメント配置の抵抗の制御を改善するために使用することもできる。例えば、本質的に高い抵抗の材料を、本質的に低い抵抗の材料と組み合わせてもよい。これは、材料のどれか1つが他の観点、例えば価格、機械加工性またはその他の物理的および化学的パラメータから見てより有益な場合に有用なことがある。例えば、材料の1つはステンレス鋼としうる。
【0024】
ヒーター組立品の基体は、電気的に絶縁されていることが好ましい。電気的に絶縁された基体は、適切な任意の材料を備えうるが、高温(摂氏300度を超える)および急激な温度変化に耐えることができる材料であることが好ましい。適切な材料の一例は、Kapton(登録商標)などのポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはセラミック材料であり、開放気孔のある電気的に絶縁されたセラミック材料であることが好ましい。基体の材料は脆くないことが好ましい。基体材料は、気化される液体について毛細管作用を有しうる。
【0025】
基体は実質的に平面であることが好ましい。基体はディスクであることが好ましく、ここでディスクは、例えば、円形、楕円形または長方形としうる。ディスクは平面または曲面としうる。基体は、ヒーター組立品およびカートリッジ、またはカートリッジのカバーがそれぞれ平面の接触面を持つように、エアロゾル形成基体を含むカートリッジに面して配置される平面の配置面も含むことが好ましい。これにより、カートリッジおよびヒーター組立品の同一平面上の配置が許容される。
【0026】
本発明による流体透過性ヒーター組立品の一態様によれば、フィラメント配置を基体に機械的に固定する締付手段は、基体との締りばめまたは圧力ばめを提供する。締りばめおよび圧力ばめは2つのタイプの機械的固定であり、構成要素を相互に機械的に固定するのに簡単で確実である。2つのタイプの閉合を組み合わせてもよい。締りばめにおいて、締付手段および基体は対応する形状を備える。固定は、主にまたは唯一、接触領域における締付手段と基体の界面の間の摩擦力によるものとしうる。ただし、締りばめは、例えば、締付手段によってフィラメントおよび基体を包むことによっても達成されうる。圧力ばめでは、締付手段または基体、または締付手段および基体の両方は、弾力性のある部分、例えば、柔軟性のある脚またはばね様の要素を備えうる。締付手段または締付手段の部品によってかけられた力は、フィラメント配置を基体に押し付けられた状態に保つ。
【0027】
圧力ばめおよび締りばめはまた、締付手段および基体の締付機構において組み合わせてもよい。例えば、締付手段は弾力性の材料で作製された部品を含みうる。別の方法として、または追加的に、締付手段は基体内の対応する部分の形状から逸脱した形状を備えうる。例えば、円錐状の形態を持つ締付手段の脚は基体の窪みに挿入されうるが、ここで窪みは平行な内部壁を持つ。
【0028】
本発明による流体透過性ヒーター組立品の別の態様によれば、締付手段は、基体の横側の部分上に延び、弾力性の脚部分を備える。弾力性の脚部分は、フィラメント配置を基体の上面に押し付ける。そこで、フィラメント配置および基体は弾力性の脚の間に配置される。フィラメント配置および基体は、締付手段の弾力性の脚部分(例えば、板ばね)の間にクランプ留めされる。弾力性の脚部分のばね力は締付力を画定する。基体の横側上に延びる締付手段の部分は、外部電源への電気接点としての役目をしうる。これにより、ヒーター組立品の電気的な接触が、ヒーター組立品の上部または下部からだけでなく、横側からも、または横側からのみ発生しうる。これは、エアロゾル発生システムの主なハウジングの内部壁に沿って配置される電気コネクターとのヒーター組立品の接触を単純化しうる。接触は、ヒーター組立品の複数の側に接触可能なコネクターによっても改善されうる。
【0029】
本発明による流体透過性ヒーター組立品のさらなる態様によれば、基体はフィラメント配置を受けるための窪みおよびその窪み内の締付手段を含む。窪みは、基体上または基体内での締付手段の接触位置の局在化により、フィラメント配置の締付および接触を改善しうる。窪みはまた、例えば、接触領域の位置またはサイズなど接触領域の画定に役立ちうる。窪みはまた、例えば、組立時または組み立てられた状態での、基体からの、またはフィラメント配置上での締付手段の変位(例えば、滑り)を制限または制止しうる。窪みは、基体の表面内に提供されることができ、基体の上面および下面であることが好ましい。窪みは、基体内に部分的に延びてもよく、または基体を貫通して全体的に延びてもよい。窪みは、例えば、溝、穴またはスリットとしうる。
【0030】
本発明による流体透過性ヒーター組立品の一態様によれば、締付手段は、基体の窪み内に挿入されたステープル様の要素である。ステープル様の要素は基本的に2つの脚および脚の間のブリッジ部分を持つU字型である。ステープル様の要素は、低コストでの製造が簡単である。ステープル様の要素は、例えば直線的な押す作用によって、基体と簡単に組み立てられうる。それによって、ステープル様の要素の脚は、基体内の穴または窪みに挿入されうるが、その一方でフィラメント配置は、基体とステープル様の要素の間に配置される。組立時に、フィラメント配置は、移動するリスクはなく、締付手段と基体の接触時に締め付けられる。ステープル様の要素は、異なる締付機構またはその変形を許容する。例えば、締りばめでは、脚は基体の穴内に挿入されうるが、脚の付き出した端部は基体の下面上に曲がり、基体の締付手段の追加的な固定を提供しうる。また、フィラメント配置の固定、ならびにフィラメントと締付手段の間の電気接点のための表面は、ステープル様の要素を使用する時に、単純な手段によって改善されうる。一部の好ましい実施形態において、これは、窪みと、対応するが非平面の接触面を含むステープル様の要素によって実行される。そこで、「非平面の接触面」は接触面も含むものと理解され、いくつかの部分的接触面から構成され、その部分的な表面は平坦でありうるが、接触面が非平面であるように相互の角度で配置されている。
【0031】
拡大された接触面は、フィラメントと締付手段の間の良好な電気接点を確保する。接触面内の追加的構造によっても、フィラメント配置の固定が改善されうる。フィラメント配置への引抜き力が強化され、フィラメント配置の安定性が改善されうる。基体内の窪みに面したステープル様の要素の側面は、非平面の形態を持ちうる。この非平面の形態も、電池のコネクターによって接触されるステープル様の要素の側面上に存在しうる。従って、締付手段と外部コネクターの間の接触領域も拡大され、改善されうる。
【0032】
本発明による流体透過性ヒーター組立品の別の態様によれば、窪みは、基体の上面の少なくとも一部分を横切って延びる長軸方向の窪み、基体内の個別の貫通孔、または基体の周辺の窪みのどれか1つまたはその組み合わせである。異なる種類の窪みにより、非常に多様な締付機構および異なる実施形態および基体形状および締付手段が許容される。基体の上面内に提供された長軸方向の窪みは、大きな接触領域を提供することが好ましい。長軸方向の窪みは、基体の一部を横切って、または基体の上面全体を横切って延びうる。また、下面には長軸方向の窪みが提供されうる。長軸方向の窪みでは、窪み内の締付手段として埋込みが利用できるため、平坦なヒーター組立品構造が許容される。基体の上面内の長軸方向の窪みは、基体の横側上に延びる締付手段として、また窪み内に完全に挿入される弾力性の脚部分を持つ締付手段として特に好ましい。後者の実施形態において、締付力は基体内に作用する。長軸方向の窪みも締付を改善しうるが、ここで締付手段の長軸方向の端が基体の上面および下面を押しつける。
【0033】
基体の周辺にある穴または窪みにより、締付手段を上面および下面に提供することにより締付手段と基体の締りばめがなされるようになるが、材料をヒーター組立品の横側に追加する必要がない。従って、寸法上の制限、例えば、システムの主要ハウジングの寸法上の制限はヒーター組立品では問題とならない。
【0034】
流体透過性ヒーター組立品の一部の好ましい実施形態において、締付手段は長軸方向の窪み内に配置され締め付けられる弾力性の脚部分を備える。これらの実施形態において、締付力は基体の横方向、および基体の内側に作用する。締付手段、特に窪み内に配置された弾力性の脚部分の締付作用は、外部の要素、例えば、ヒーター組立品の上または下に配置されたシステム要素の影響からよく保護される。従って、例えば、締付手段を押し付けるハウジング壁による場合などの締付作用が緩む効果が回避されうる。締付手段は、基体内への埋込みであることが好ましく、平坦な接触領域を除いて基体内で実質的に完全に埋め込まれることがさらに好ましい。これにより、非常にコンパクトなヒーター組立品の製造時に基体の取り扱いが容易になる。
【0035】
フィラメント配置は、基体内の開口部上を部分的にまたは全体的に延びうる。フィラメント配置は、基体内の開口部の約50パーセント〜約95パーセントを覆うこと、例えば開口部の約70パーセント〜約90パーセントを覆うことが好ましい。
【0036】
フィラメント配置が開口部全体を覆う場合、液体表面の、またはヒーターの横に配置されたエアロゾル形成基体の最大利用可能面積が加熱される。従って、熱が大きな表面に適用されるため、高い度合いの気化が達成可能である。さらに、エアロゾル形成基体の種類に応じて、例えば、液体をヒーターに運ぶ毛細管材料では、広い加熱面積がエアロゾル形成基体の均一の排出を助長しうる。同時に、実質的に平面のフィラメント配置によって覆われていない面積は、エアロゾル発生に対して、流量レートまたは液滴のサイズといった異なる形で貢献しうる。これは、所定の特性を有するエアロゾルの反復的な発生を最適化するために有益な場合がある。例えば、フィラメント配置が開口部全体を覆っていない場合、気化された液体は、フィラメント配置によって覆われていない領域でヒーター組立品をより簡単に通過しうる。これにより、エアロゾル製造がサポートされうる。
【0037】
実質的に平面のフィラメント配置は、液体をヒーターに運ぶ毛細管材料と直かに接触することが好ましい。これにより、エアロゾルを発生させるための実質的に平面のフィラメント配置への液体の連続的な流れが促進される。搬送媒体は均質であることが好ましい。
【0038】
本発明による流体透過性ヒーター組立品の好ましい一部の実施形態において、フィラメント配置はメッシュを形成する複数のフィラメントを含む。
【0039】
メッシュは、安定し丈夫なフィラメント配置を提供する。これはまた、製造時の簡単な取扱いを提供し、例えば、相互に平行に配列された一連のフィラメントよりも簡単である。さらに、メッシュがフィラメント間に液体を保持する能力は、例えば、織物または格子構造のタイプを変化させることで、選択または変化させてもよい。メッシュは構造的な意味で丈夫である。従って、メッシュは、利用可能な電気的経路の冗長性により、優れたフェイルセーフ属性を持つ。メッシュの1つのフィラメントが壊れたり、接触が不完全であったりしても、ヒーターは、フィラメント配置の全体的な電気的および熱的な性能にはほとんど変化なく操作されうる。
【0040】
本発明による流体透過性ヒーター組立品の好ましい一部の実施形態において、基体は、電気的に分離され、実質的に平面で、好ましくはディスク形状の要素である。平坦なヒーター組立品は、空間を節約し、システムの製造および組立において簡単な取扱いを提供する。
【0041】
本発明の別の態様によれば、エアロゾル発生システム用のメッシュヒーターを組み立てるための方法が提供されている。方法は、基体を提供する工程と、基体を通して開口部を提供する工程と、基体の開口部上に導電性フィラメントを配置する工程とを含む。方法のさらなる工程は、締付手段によってフィラメントを基体に機械的に固定し、従って、フィラメントを基体に締め付ける工程と、および締付手段を通して電気接点をフィラメントに提供する工程である。
【0042】
本発明による方法の態様によれば、方法は、基体内に窪みを提供し、締付手段を窪み内に押し込む工程をさらに含む。こうした押込みによって、締付手段は、直線的な動作によって準備されたフィラメント−基体の構成に適用されうる。これにより、単一の締付工程でヒーターの組立が可能となる。押込みは、基体に対して実質的に直角に、または基体に対して実質的に平行に実施されうる。基体に対して実質的に直角の押込みは、基体の上から上面に押し付けることに関連する。実質的に平行の押込みは、基体の横側から締付手段を横方向に適用すること、またはフィラメント−基体の構成上に締付手段をスライドさせて締付手段を適用することに関連する。
【0043】
締付手段を挿入する工程は、実質的に平面のフィラメント配置の平面の方向への伸展力を創出することが好ましい。これによって、有利にも実質的に平面のフィラメント配置が所定の張力に伸展される。これによって、実質的に平面のフィラメント配置と基体の間の接触面が改善される。さらにこれによって、実質的に平面のフィラメント配置と搬送媒体の間の接触面が改善される。
【0044】
本発明による方法の別の態様によれば、締付力は基体の上面に対して実質的に直角をなす方向に作用する。こうした実施形態の典型的な代表は、例えばサンドイッチ型の締付手段で、フィラメント配置と基体が締付手段の部分間に挟まれる。
【0045】
本発明による方法の別の態様によれば、締付力は、上面に対して実質的に横方向に、かつ基体内で作用する。こうした実施形態の代表例は、例えば基体内に配置された締付手段であり、好ましくは、締付手段を受けるために提供された基体内の窪み内、または締付のために提供された締付手段の部品内に配置されたものである。それから、締付手段の電気的な接触のために提供された締付手段の別の部品が、窪みの外側に配置される。
【0046】
本発明による方法の別の態様によれば、フィラメント配置は統合されたフィラメントを形成する第一の部分および第二の部分を含むが、ここで、第二の部分はフィラメント配置の両端に提供され、および第一の部分は第二の部分の間に提供される。本明細書で使用される場合、「統合された」とは、第一の部分および第二の部分が、一方の第二の部分から第一の部分を経由して他方の第二の部分へ電気的な経路を提供する単一体を形成することを意味する。
【0047】
こうした構成において、第二の部分は第一の部分とは異なる材料で、または追加的にまたは別の方法としては、同一だが異なる形態で提供されている材料で形成されうる。例えば、フィラメント配置がメッシュを含む場合、第二の部分は、第一の部分よりも高い密度のメッシュを持つ異なる形態をとりうる。別の方法として、フィラメント配置は、第一の部分および第二の部分内で2つの異なる材料で形成されうるが、ここで、第二の部分を形成する材料は、第一の部分の材料よりも展性があり、簡単に変形する。この場合には、例えば、第一の部分はステンレス鋼で形成され、および第二の部分は銅で形成されうる。別の方法として、第一の部分および第二の部分が統合されたフィラメントを形成するように、第二の部分は、その間に第一の部分が提供される箔で形成されうる。
【0048】
フィラメント配置が第一および第二の部分を含む時、フィラメント配置は、箔様の材料を形成するように、第二の部分が十分な力を受ける追加的な工程の対象となりうる。本明細書で使用される場合、「箔様の」材料とは、材料を平坦化しつつも統合されたフィラメントを維持する力を受ける任意の材料である。
【0049】
本発明による方法のさらなる態様および利点は、流体透過性ヒーター組立品に関連して言及されており、繰り返さない。
【0050】
本発明のさらに別の態様によれば、エアロゾル発生システムが提供されているが、電気的に作動する喫煙システムが好ましい。エアロゾル発生システムは、液体エアロゾル形成基体を保持するためのハウジングを含む貯蔵部分を含むが、ここでハウジングは開放端を持つ。システムは、本発明による、本明細書で説明した流体透過性ヒーター組立品をさらに含む。ヒーター組立品は、流体透過性ヒーター組立品のフィラメント配置が、ハウジングの開放端上に配置されるようにハウジングの横に配置される。システムは、流体透過性ヒーター組立品の締付手段を電源に電気的に接続するための電源コネクターをさらに含む。
【0051】
エアロゾル発生システムの利点および態様は、ヒーター組立品に関連して説明してきたため、繰り返さない。締付手段の利用可能な変形体により、またヒーター組立品の実施形態によれば、ヒーター組立品は、そうしたシステムの既存の主要ハウジングに適切となるように適合され製造されうる。こうした主要ハウジングには既にエアロゾル形成基体を含むカートリッジ、電気回路、電源、およびヒーター組立品と接触するための電気コネクターが含まれる。
【0052】
貯蔵部分は有利なことに毛細管材料を含む。毛細管材料は繊維質または海綿状の構造を有する場合がある。毛細管材料は一束の毛細管を含むことが好ましい。例えば、毛細管材料は複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含む場合がある。繊維または糸は、一般的に液体をヒーターに移動するように整列されたものとしうる。別の方法として、毛細管材料は海綿体様または発泡体様の材料を含む場合がある。毛細管材料の構造は多数の小さな穴またはチューブを形成し、それを通して液体が毛細管作用によって移動できる。毛細管材料は適切な任意の材料または材料の組み合わせを含みうる。適切な材料の例としては、海綿体または発泡体材料、繊維または焼結粉末の形態のセラミック系またはグラファイト系の材料、発泡性の金属またはプラスチックの材料、例えば紡がれたかまたは押し出された繊維(酢酸セルロース、ポリエステル、または結合されたポリオレフィン、ポリエチレン、テリレンまたはポリプロピレン繊維、ナイロン繊維またはセラミックなど)でできた繊維性材料がある。毛細管材料は異なる液体物理特性で使用されるように、適切な任意の毛細管および空隙率を有する場合がある。液体は毛細管作用により毛細管装置を通過して移動できるようにする粘性、表面張力、密度、熱伝導率、沸点および蒸気圧を含むがこれに限定されない物理的特性を持つ。
【0053】
毛細管材料は、導電性フィラメントと接触することが好ましい。毛細管材料は、フィラメント間の隙間に延びうる。ヒーター組立品は、毛細管作用により液体エアロゾル形成基体を隙間に引き込みうる。毛細管材料は、実質的に開口部の全長にわたり、導電性フィラメントと接触しうる。カートリッジは、2つ以上の異なる毛細管材料を含みうるが、ここでヒーター要素と接触している第一の毛細管材料はより高い熱分解温度を持ち、第一の毛細管材料と接触しているが、ヒーター要素とは接触してない第二の毛細管材料はより低い熱分解温度を持つ。第一の毛細管材料は第二の毛細管材料がその熱分解温度を上回る温度に晒されないように、ヒーター要素を第二の毛細管材料から分離するスペーサーとしての役目を効果的に果たす。本明細書で使用される場合、「熱分解温度」とは、材料が分解し始め、ガス状の副産物を発生することにより質量を損失する温度を意味する。第二の毛細管材料は、有利なことに第一の毛細管材料よりも大きな容積を占めうるが、また第一の毛細管材料よりも多くのエアロゾル形成基体を保持しうる。第二の毛細管材料は、第一の毛細管材料よりも優れた芯の性能を持ちうる。第二の毛細管材料は、第一の毛細管材料よりも安価でありうる。第二の毛細管材料はポリプロピレンとしうる。
【0054】
第一の毛細管材料は、ヒーター組立品を第二の毛細管材料から少なくとも1.5ミリメートルの距離だけ分離しうるが、第一の毛細管材料を横切って十分な温度降下を提供するために、1.5ミリメートル〜2ミリメートルであることが好ましい。
【0055】
導電性フィラメントを通過する空気の流れが気化された液体エアロゾル形成基体に混入されるように、貯蔵部分は導電性フィラメントの第一の側に位置し、気流チャネルは導電性フィラメントの反対側から液体貯蔵部分に位置しうる。
【0056】
システムは、ヒーター組立品および電力電源に接続された電気回路をさらに備えうるが、電気回路は、ヒーター組立品の、またはヒーター組立品の1つ以上のフィラメントの電気抵抗をモニターし、ヒーター組立品または1つ以上のフィラメントの電気抵抗に依存してヒーター組立品への動力供給源を制御するよう構成される。
【0057】
電気回路はマイクロプロセッサを備えうるが、これはプログラム可能マイクロプロセッサでもよい。電気回路はさらなる電子構成要素を備えうる。電気回路はヒーター組立品への動力供給源を調節するよう構成しうる。電力はシステムの起動後、ヒーター組立品に連続的に供給することも、毎回の吸煙ごとなど断続的に供給することもできる。
【0058】
電力は、電流パルスの形態でヒーター組立品に供給されうる。
【0059】
システムはハウジングの本体内に電源(一般には電池)を備えることが有利である。別の方法として、電源はコンデンサーなど別の形態の電荷蓄積装置としうる。電源は、およそ6分間にわたってエアロゾルの連続的な発生が許容される十分な容量を持ちうる。別の例で、電源は所定回数、またはヒーター組立品の不連続的な起動を許容する十分な容量を持ちうる。
【0060】
本発明についてはさらに、実施形態に関して説明するが、これを下記の図表によって例示する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、ヒーター組立品の一実施形態を示す。
図2図2は、取り付けられた状態での図1のヒーター組立品を示す。
図3図3a、3bは、締付機構の詳細を示す。
図4図4a〜4dは、さらなる締付手段および締付機構を示す。
図5図5a、5bは、ヒーター組立品の上面図を示す。
図6図6a〜6cは、横方向にスライド可能な締付手段(図6a)、締付機構の詳細(図6b)、および締付手段(図6c)を備えたヒーター組立品を示す。
図7図7a、7bは、締付手段としてステープルを備えたヒーター組立品と、基体の断面部分の詳細を示す。
図8図8は、締付手段としてステープルを備えたヒーター組立品のさらなる実施形態を示す。
図9図9は、ステープルが取り付けられたヒーター組立品を示す。
図10図10は、締付手段としてステープルを備えたヒーター組立品のさらなる実施形態を示す。
図11図11a〜11dは、第一および第二の部分を持つフィラメント配置、および統合されたフィラメントを製造するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図においては、同一の参照番号が同一または類似した要素に使用される。
【0063】
図1および図2には、電気的に絶縁された基体1を含むヒーター組立品と、メッシュ2の形態のヒーター要素およびフィラメント配置と、メッシュを基体に取り付けるための2つのクランプ3が図示されている。基体1は、円形のディスクの形態を持ち、中央に配置された開口部100を含む。基体はまた、相互に平行に、正方形の形態の開口部100の各側面の横に配置された2つのスリット4を含む。帯の形態のメッシュ2は、開口部の上およびスリット4の上に配置される。メッシュの両横側に開口部の開口部分101が形成され、開口部分がメッシュによって覆われないように、メッシュの幅は開口部100の幅よりも小さい。2つのクランプ3は、基体の上面に平行に配置された平坦な接触部分31を備える。接触部分31は、電池からの電気コネクターによって加熱組立品を接触させるためである。2つのクランプ3はまた、基体1内のスリット4に挿入されるための、長軸方向に折り畳まれた締付部分30を備える。
【0064】
クランプ3は、一片の金属、例えば、ステンレス鋼または銅シートから折り畳まれうる。
【0065】
図2は、組み立てられた状態のヒーター組立品を示すもので、上面と直角にクランプ3がスリットに押し込まれた時に、メッシュ2はスリット4に押し込まれている(押す方向は図1の矢印で示す)。クランプ3により、基体1の上面と共平面の方向に作用する引抜き力5がメッシュ2に対して作用する。それぞれのクランプ3は、反対の方向に作用する引抜き力5を引き起こす。この引抜き力5は、メッシュ2の平面の配置を保持し、基体1の平面内でのメッシュの安定化に役立つ。
【0066】
図3aは、スリット4に挿入されたクランプ3の詳細図を示す。メッシュ2の端部20は、クランプの締付部分30によってスリットに押し込まれ、スリット内にしっかりとクランプ留めされる。折り畳まれたクランプ部分30は、スリットの壁に対して基体の上面に平行な方向に、かつ基体内で、締付力50を作用させる。クランプ3の端301は、かかりとしての役目をすることができ、メッシュをスリット内にさらに固定し、メッシュ2とのクランプ3の電気接点を改善する。
【0067】
図3bは、長軸方向のスリット4に挿入されたクランプ3の折り畳まれた締付部分30の代替的な実施形態を示す。スリットは凸面の壁6を持ち、これが挿入された締付部分30のその最も細い折り畳まれた部品7でクランプを押す。この実施形態において、最も細い折り畳まれた部品7は、基体1の高さの約半分である。これにより、スリット4に最も深く挿入された(大きい方の)折り畳まれた部品8がスリットから離れることがさらに阻止される。
【0068】
図4a〜4dは、クランプ3の実施形態を示し、これが基体1を上面および下面にクランプ留めする。上部および下部の締付端9、10は、基体1の上面および下面に押し込まれる。メッシュ2は、少なくとも上部締付端9と基体の上面との間に配置される。この上縁端9は、メッシュ2をこの後向きの方向に対して引いた時により安定した構造を持つようにわずかに後方に向く。
【0069】
クランプ3は、基体1の横方向または周辺の側に配置された横部分32を備える。クランプの横部分32は、基体1の横側を接触させることにより、締付およびメッシュ2の接触をさらにサポートしうる。
【0070】
図4aおよび4bでは、メッシュ2は、基体1の周辺の周りに案内され、基体の両側に固定されている。図4bにおいてクランプ3の締付端9、10は、クランプの長軸方向全長に沿って延びていない。端は、クランプシートをそれぞれ基体1の上面または下面に向くよう曲げた切り抜きによって形成される。
【0071】
図4cにおいてクランプ3の横壁は、なめらかに曲げられ、クランプの弾力性を変化させる。基体1の上面および下面には、クランプ端9、10、およびメッシュ2(この実施形態では上部の窪み9のみ)を受けるためのノッチの形態の長軸方向の窪み12、13が提供されている。
【0072】
図4dのクランプ3の横側32は、基体の横側および基体1の下面の一部と密着する。下面では、クランプは横から見た時に三角形33を形成する。三角形33の長さは適合され変化されて、クランプ3の締付力を変化させうる。
【0073】
図4a〜4dに示すようにクランプが備わったヒーター組立品は、メッシュ2を基体1上に配置することにより、またヒーターの組立時にクランプを曲げることにより組み立ててもよい。こうしてクランプが曲げられると、メッシュに対する引抜き力が与えられる。
【0074】
図5aおよび5bは、例えば図4a〜4dおよび図6a〜6cの実施形態に示すものなど、長軸方向の締付部分を持つクランプを備えたヒーター組立品の上面図を示す。図5aにおけるクランプ3は、上または下から見た時に、実質的に長方形の形態を持つ。こうしたクランプは、例えばシート材料またはワイヤーの長方形の片を曲げることで、製造が簡単である。図5bに示すクランプは、基体の形態に適合した形態を持つ。従って、円形の基体には、基体の周辺の円形の形態に適合したクランプが提供される。こうしたヒーター組立品は、非常にコンパクトで、横方向の寸法でも空間が節約される。
【0075】
図6a〜6cでは、ヒーター組立品およびクリップが図示されており、ここでクリップは準備された基体1およびメッシュ2の構成上にスライドされうる。基体は、上面内および下面内にノッチの形態の長軸方向の窪み12、13を持つ。窪み12、13は、相互に平行に、表面内で開口部100に平行に配置され、基体1の表面全体にわたって延びる。窪み12、13は、メッシュ−基体の構成上へのクリップ3の横方向へのスライドを促進する。メッシュ2は、クリップ3を基体1上にスライドさせる前にしっかりと伸展されることが好ましい。スライド時にメッシュが引き裂かれたり、メッシュに巻き込まれたりするのを阻止するために、クリップの端15は丸みがつけられている。これは、締付手段としての製造前のクリップ3を示す図6cで見ることができる。
【0076】
図7a、7b、8および10では、2つのステープルの形態での締付手段3および基体1内の対応する窪み12が示されている。メッシュ(図示せず)は、基体内にある開口部100の少なくとも一部分上に配置される。ステープルは、基体内の窪み12、120、122に垂直に挿入される。取り付けられた位置で、ステープルのブリッジは、基体1の上面内に提供された長軸方向の窪み12内に来るようになる。脚の長さは、基体1の厚さよりも長い。突き出した足の端部は曲げられ、基体の下面内の対応する窪み19内に埋め込まれうる。脚が基体の周りに曲げられた状態で、メッシュ2はしっかりと締め付けられ、ステープルと接触する。図7aおよび8では、2つのステープルの4本の脚が、ディスク形態の基体の周辺に配置された4つの窪み121に挿入される。図7aにおいて、ステープルのブリッジは、屋根の形態のエンボス形状17を持つ。こうした形態は、電池のコネクターの形態に直接対応する。図7bに示す断面詳細図でわかるとおり、基体内の長軸方向の窪み12も、窪み18の下部と対応する屋根形の形態を持つ。
【0077】
図8において、ステープルのブリッジは、彫り込まれたV字型の形態20を持ち、これが窪み12の対応する彫り込まれたV字型の形態21に対応する。
【0078】
メッシュの伸展は、ステープルの対応する形状17、18;20、21および窪み12によって引き起こされる。
【0079】
図9は、図7aおよび図8の2つの加熱組立品を組み立てた状態で示す。そこで、図7aに示す加熱組立品は図9の下側に示した実施形態に対応し、図8図9の上部に示した実施形態に対応する。
【0080】
図10は、締付手段3としてステープルを備えた加熱組立品のさらなる変形である。基体には、ステープルのブリッジ部分を受けるための2つの長軸方向の窪み12が提供される。基体にはまた、長軸方向の窪み12のそれぞれの端部に1つの穴122が提供される。ステープルの脚は穴122に押し込まれ、メッシュ(図示せず)は窪み12とステープルの間に締め付けられて接触する。ステープル3は、ステープルの脚と穴122との間の締りばめによって基体1に取り付けられうる。ところが、基体の下面には、基体の下部で曲げられた脚の端部を受けるための窪みも提供されうる。
【0081】
図11a〜11dは、第一および第二の部分を有する統合されたフィラメントを提供する方法を図示したものである。図11aにおいて、第一の部分はメッシュ1101として図示され、また第二の部分はより高い密度のメッシュ1103として図示されている。例えば、第一の部分は、第二の部分よりも低い密度のメッシュを含みうるが、第一および第二の両方の部分は、ステンレス鋼などの単一の材料で形成されうる。図11bにおいて、第一の部分は第一の材料を含むメッシュ1101として図示され、第二の部分1105は、第一の材料以外の第二の材料で形成される端部として図示されている。その点で、第二の材料は第一の材料よりも展性が高い。一例として、第一の部分1101はステンレス鋼でよく、第二の部分1105は銅でよい。図11cは、第二の部分1108が変形し、図11dに示すような箔様の材料1109となるように、第二の部分1108に加圧成形要素1107で力をかける工程を図示したものである。
【0082】
第一の1101および第二の部分1103、1105、1109を含む、結果として統合されたフィラメントが形成された後、クランプ3が第二の部分と電気的に接続されるように第二の部分1103、1105、1109を提供することにより、統合されたフィラメントは、上記に説明した方法のうちどれか1つを使用して基体に貼り付けられうる。
【0083】
本発明は、図表に示す実施形態を用いてより詳細に説明してきた。ところが、締付機構および対応する締付手段および基体の形態のさらなる実施形態が予見されうる。例えば、メッシュはねじによって基体に取り付けられうる。そのとき、ねじは導電性であり、かつフィラメント配置のための電気接点として、また電池のためのコネクターとしての役目をする。また、締付手段と基体との間で、例えば、押ボタンまたはスナップファスナーの形態のクリップによる係合がありうる。そこで、締付手段がスナップファスナーの一つの部品を形成し、また基体にはスナップファスナーの対応するその他の部品が提供される。
図1
図2
図3a-3b】
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図11d