(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594900
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】内部可動要素と低比誘電率のスリーブとを備えるレーザ切断用ノズル
(51)【国際特許分類】
B23K 26/14 20140101AFI20191010BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20191010BHJP
【FI】
B23K26/14
B23K26/38 A
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-566739(P2016-566739)
(86)(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公表番号】特表2017-514700(P2017-514700A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】FR2015051090
(87)【国際公開番号】WO2015170029
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年4月12日
(31)【優先権主張番号】1454093
(32)【優先日】2014年5月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ルフェーヴル
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−277271(JP,A)
【文献】
実開昭62−6990(JP,U)
【文献】
国際公開第2012/156608(WO,A1)
【文献】
特表2014−518771(JP,A)
【文献】
特開2011−177727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− ノズル本体(1)であって、前記ノズル本体(1)を通って軸方向に延びる第一の軸方向の筐体(3)と、前記第一の軸方向の筐体(3)にアシストガス(23)を供給するための吸込口(9)と、前記ノズル本体(1)の前面(1a)に配置された第一の吐出オリフィス(4)とを含む、ノズル本体(1)と、
− 前記ノズル本体(1)の前記第一の軸方向の筐体(3)内に配置された可動要素(2)であって、スカートを形成する前方部分(2a)と、前記スカートを形成する前方部分(2a)に第二の吐出オリフィス(6)を有する軸方向の通路(5)とを含む、可動要素(2)と、を含み、
前記ノズル本体(1)および前記可動要素(2)が導電材料で製作される、レーザ切断ノズルにおいて、
− 前記ノズル本体(1)が、前記可動要素(2)の周囲に配置された少なくとも1つの第一の部分(11)と、前記第一の軸方向の筐体(3)内の前記アシストガス(23)の流れの方向にしたがって前記第一の部分(11)の上方に位置を定める1つの第二の部分(12)とから製作され、前記ノズル本体(1)が、前記第二の部分(12)を前記第一の部分(11)上に取り付けるようになされ、かつ設計された第一の取付手段(7、8)をさらに含み、および
− 分離スリーブ(14)が前記第一の部分(11)と前記可動要素(2)との間に配置され、かつ前記分離スリーブ(14)は、比誘電率が8未満の電気絶縁材料で製作されることを特徴とする、レーザ切断ノズル。
【請求項2】
前記分離スリーブ(14)は比誘電率が6未満の電気絶縁材料で形成される、請求項1に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項3】
前記分離スリーブ(14)はセラミック材料で形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項4】
前記セラミック材料は窒化ホウ素であることを特徴とする、請求項3に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項5】
前記分離スリーブ(14)が、前記分離スリーブ(14)の前面(14a)にある第三の吐出オリフィス(16)を含む第二の軸方向の筐体(15)を含み、前記可動要素(2)は前記第二の軸方向の筐体(15)内に配置され、かつ前記第三の吐出オリフィス(16)は、前記前方部分(2a)が前記第一の軸方向の筐体(3)の外に突出するときに、前記可動要素(2)の前記軸方向の通路(5)の前記第二の吐出オリフィス(6)の上方で開放することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項6】
前記可動要素(2)は鉛を含む青銅合金で形成されることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項7】
前記第一の取付手段(7、8)は、前記ノズル本体(1)の前記第一および第二の部分(11、12)の少なくとも一部を通って、かつ前記第一の軸方向の筐体(3)の軸に略平行な方向に延びることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項8】
前記ノズル本体(1)の前記第二の部分(12)は、前記第二の部分(12)をレーザ集光ヘッド(20)に固定するようになされ、かつ設計された第二の取付手段(10)を含むことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項9】
前記第一の取付手段(7、8)および前記第二の取付手段(10)は、前記ノズル本体(1)の前記第二の部分(12)を前記レーザ集光ヘッド(20)に、前記第一の部分(11)に対するよりもしっかりと固定するようになされ、かつ設計され、それによって前記ノズル本体(1)の前記第一の部分(11)への衝撃時に、前記ノズル本体(1)は基本的に前記ノズル本体(1)の前記第一の部分(11)と前記第二の部分(12)との間で変形または破断することを特徴とする、請求項8に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項10】
前記可動要素(2)は、前記第一の軸方向の筐体(3)内で、前記前方部分(2a)が前記第一の吐出オリフィス(4)を通って前記第一の軸方向の筐体(3)の外に突出するまで、前記第一の吐出オリフィス(4)の方向に並進移動するようになされ、かつ設計されることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項11】
前記可動要素(2)は、前記第一の軸方向の筐体(3)内において、かつ前記可動要素(2)に付加されるガス圧力の効果によって、前記第一の軸方向の筐体(3)内で、前記第一の吐出オリフィス(4)の前記方向に並進移動されるようになされることを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項12】
前記第一の軸方向の筐体(3)内において、前記ノズル本体(1)と前記可動要素(2)との間に弾性要素(17)をさらに含み、前記弾性要素(17)は前記可動要素(2)に対し、前記第一の軸方向の筐体(3)内で前記第一の吐出オリフィス(4)の方向への移動に対抗しようとする弾性復元力を付加することを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項13】
前記可動要素(2)は、
− 前記可動要素(2)の前記前方部分(2a)が、完全にまたは事実上完全に、前記軸方向の筐体(3)内に引き戻される静止位置と、
− 前記可動要素(2)の前記前方部分(2a)の前記スカートが、完全にまたは事実上完全に、前記第一の吐出オリフィス(4)を通って前記軸方向の筐体(3)の外に突出する作動位置と、
を含む複数の位置間で移動するようになされることを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載のレーザ切断ノズル。
【請求項14】
少なくとも1つの集光光学系を含むレーザ集光ヘッド(20)において、請求項1〜13の何れか一項に記載のレーザ切断ノズルをさらに含むことを特徴とする、レーザ集光ヘッド(20)。
【請求項15】
レーザ発生器と、レーザ集光ヘッドと、前記レーザ発生器および前記レーザ集光ヘッドに接続されたレーザビーム搬送器とを含むレーザ装置において、前記レーザ集光ヘッドは請求項14に記載のレーザ集光ヘッド(20)であることを特徴とする、レーザ装置。
【請求項16】
請求項1〜13の何れか一項に記載のレーザ切断ノズルが使用されるか、請求項14に記載のレーザ集光ヘッドが使用されるか、または請求項15に記載のレーザ装置が使用される、レーザビームを使用して金属部品(30)を切断する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ切断に使用可能なレーザノズルに関し、これはガスを切断部に集中させることを可能にするスカートを含む内部可動要素を備え、このノズルは、工業規模での利用を改善し、かつ前記ノズルが受けうる衝撃の影響から集光ヘッドを保護することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
レーザビーム切断には、一般に銅製であるノズルの使用が必要であり、その効果はガスを誘導し、レーザビームがその中を通過できるようにすることである。
【0003】
ノズルの吐出オリフィスの孔径は典型的に、両端値を含めて0.6〜2mmのワーキングディスタンスで両端値を含めて0.5〜3mmである。
【0004】
切断を可能にするためには、集光ヘッド内で一般に数バールという高圧を使用することにより、ガスが切断部内に入って溶融金属を除去できるようにする必要がある。
【0005】
現在、使用されるガスの多く、典型的には50〜90%が、切断工程、すなわち溶融金属の排出に対していかなる作用もせず、その理由はこれが切断部の外にあるからである。
【0006】
このようなガスの損失は実際、ノズルオリフィスの流出部断面と焦点の大きさとの差が非常に大きいことから生じる。例えば、孔径1.5mmの吐出オリフィスを有するノズルの流出部断面は、そのノズルを通過するレーザビームが作る焦点の断面の25倍の大きさである。
【0007】
ここで、使用されるガスの割合が不十分であると、切断欠陥、特にバリの付着および/または酸化条痕が発生する。
【0008】
ノズルのオリフィスの孔径を小さくすることによってこれを改善しようとする試みは、レーザビームがノズル内側に当たり、それに損傷を与えるリスクがあり、これがさらに切断品質および/または性能を低下させるため、理想的ではない。
【0009】
さらに、切断部へのガスの進入を促進しようとする各種の解決策を提案する文献が数多くあり、例えば、欧州特許出願公開第1669159号明細書、特開昭62006790号公報、特開昭61037393号公報、特開昭63108992号公報、特開昭63040695号公報、および米国特許第4,031,351号明細書がある。
【0010】
ここで、これらの解決策のうちで真に理想的なものはなく、それは、これらの構成が実施するには複雑であることが多く、工業的使用にそぐわず、および/またはその効率が限定的であることによる。
【0011】
特に、米国特許第4,031,351号明細書の文献は、可動要素を含み、その端がばねにより切断対象部品の表面に押し付けられて、切断ガスが切断部内に注入されるのを促進するレーザ切断ノズルを開示している。この解決策の主な欠点は、ばねが板の方向に加える力が、切断ガスの圧力と組み合わされて、可動要素により切断対象の板に強い力が加えられることにつながる点である。これは、一般的に単純に工業用切断機の作業台の上に載せられる板の変形、ひっかき傷、またはさらには巻き込みの原因となる。
【0012】
これを改善するために、国際公開第2012/156608号パンフレットの文献は、ガス圧力の効果によってノズル本体内で軸方向に、および切断対象の板の表面の方向に、それが板と接触するまで移動するようになされた可動要素を備えるレーザノズルを提案している。このノズルは、可動要素に、それを板から離れるように移動させようとする方向の弾性復元力を発する弾性要素をさらに含む。したがって、ガスの供給が停止されると、可動要素をその静止位置へと引き戻すことができ、したがって、スカートはノズル本体内に入ることができる。
【0013】
しかしながら、この解決策では依然としてある問題が生じる。
【0014】
第一に、このノズルの設計には、各種の市販の集光ヘッドと切断対象の様々な厚さとに合わせてその形状を調整する自由度がほとんどない。
【0015】
現在、本発明の発明者は、典型的には3mm未満の小さい厚さを切断するには、国際公開第2012/156608号パンフレットによるノズルで実現可能な最大径より大きい孔径のアシストガス放出オリフィスが必要であることを明らかにしている。実際、可動要素をその中に受けるためにノズル本体内に機械加工される軸方向の筐体の最大径は、ノズルの、集光ヘッドに接続される上側部分の直径により決まる。そのため、可動要素の吐出オリフィスは、ある程度までにのみ、典型的には最大で2mmまで大きくすることができ、これでは、小さい厚さに対して満足できる切断性能を実現することができない。
【0016】
さらに、工業用レーザ切断機とこれに関連する集光ヘッドとは、それ自体既知の方法で容量型距離センサシステムを採用することにより、ヘッドを切断対象の板から一定の距離だけ上の位置で移動させる。
【0017】
現在、今日の容量型センサシステムは、板の表面の上方に延びる横方向の障害物を検出できないことがわかっている。このような障害物は例えば、既に切り取られた部品が板に引っかかって残り、その表面に関して斜めに位置付けられる結果でありうる。板の縁から始める切断では、段差または凸凹、すなわち板の部分ごとの高さの差も生じる可能性があり、これは、切断中に板のある部分が変形または下降することによる。
【0018】
これはノズル本体レベルでの衝撃が発生するリスクにつながり、これはノズルに損傷を与え、その動作を低下させて、それが破断するか、または完全に崩壊するまでに至る可能性がある。最も問題となる点は、ノズル本体内の衝撃により、集光ヘッドがそのノズルとの接続部レベルで損傷を受けることであり、その結果、ヘッドがその支持体上で動き、それがレーザビームのミスアラインメントの原因となる。その後、集光ヘッドに介入して、アラインメントを再調整する必要性が生じ、それが切断機の生産性を損なう。
【0019】
特開第2011−177727号公報の文献は、障害物と衝突した場合の集光ヘッドの損傷を防止するために、2つの部品で形成されるノズル本体を開示している。
【0020】
しかしながら、これは工業的使用に関して国際公開第2012/156608号パンフレットによるノズルが直面する問題のいくつかを解決しない。
【0021】
そのため、容量型距離センサシステムは、容量効果を利用して、コンデンサを形成する2つの導電要素間の距離の小さいばらつきを検出する。2つの導電要素を分離する距離は、コンデンサの電気容量を測定することによって決められ、これは特に、それらを分離する媒体の比誘電率に依存する。
【0022】
一般的には銅等の導電材料で形成される従来のレーザノズルを備える切断機において、容量型センサは、板と、ノズルのうちの板と対向する平面との間の静電容量を測定する。容量型センサは、集光ヘッドの移動を制御する装置に電気的に接続されて、測定された電気容量が変化した場合にヘッドの高さ位置を調整するか、またはノズルと板とが接触した場合にヘッドの移動を停止させる。
【0023】
容量型センサシステムによって、レーザビームの焦点を板の表面に関して一定の位置に保持することによって、切断品質および速度の点で一定の切断性能を確実に得ることが可能となる。また、それによって、板上に障害物があるときに機械の停止をトリガすることも可能となる。
【0024】
したがって、その動作を妨害しないことが重要である。
【0025】
ここで、国際公開第2012/156608号パンフレットに記載されているレーザノズルは、この種のシステムとほとんど適合しない。
【0026】
実際、ノズルの可動要素は、切断対象の板と接触するスカートを形成する。切断工程により放出される熱と溶融金属の飛沫に対する抵抗力とを確保するために、可動要素は一般に、金属(銅、真鍮、またはその他)等の導電材料で形成される。しかしながら、導電性の可動要素は、その後、板と接触し、すなわちそれと同じ電位であるとともに、それ自体も一般的に導電材料で形成されているノズル本体の内壁とも接触する。したがって、切断機の故障を防止するために、容量型センサの動作を停止させる必要がある。
【0027】
機械の容量型センサを機能させることができる1つの解決策は、電気絶縁材料で形成される可動要素の使用であろう。しかしながら、この解決策は、電気絶縁材料が一般に、切断工程により放出される高いレベルの熱、溶融金属の飛沫、および/または熱衝撃に対する抵抗力が高くないため、理想的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
そこで、直面する問題は、上述の欠点のいくつかのまたは全部を、特にその耐久性、使用寿命および工業規模での使用が、既存の解決策と比較して大幅に改善され、工業用切断機に備えられた容量型距離センサシステムの動作を妨害せず、またはそれを妨害する程度が最新技術より明確に低いレーザノズルを提案することによって緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明による解決策は、レーザ切断ノズルであって、ノズル本体であって、前記ノズル本体を通って軸方向に延びる第一の軸方向の筐体と、前記第一の軸方向の筐体にアシストガスを供給するための吸込口と、前記ノズル本体の前面に配置された第一の吐出口とを含む、ノズル本体と、
− ノズル本体の第一の軸方向の筐体内に配置された可動要素であって、スカートを形成する前方部分と、前記スカートを形成する前方部分に第二の吐出オリフィスを有する軸方向の通路とを含む、可動要素と
を含み、
ノズル本体および可動要素が導電材料で製作される、レーザ切断ノズルにおいて
− ノズル本体が、可動要素の周囲に配置された少なくとも1つの第一の部分と、第一の軸方向の筐体内のアシストガスの流れの方向にしたがって前記第一の部分の上方に位置を定める1つの第二の部分とから製作され、ノズル本体が、第二の部分を第一の部分上に取り付けるようになされ、かつ設計された第一の取付手段をさらに含み、および
− 分離スリーブが第一の部分と可動要素との間に配置され、かつ前記分離スリーブは、比誘電率が8未満の電気絶縁材料で製作されることを特徴とする、レーザ切断ノズルである。
【0030】
必要に応じて、本発明によるノズルは、以下の技術的特徴のうちの1つまたは複数を有していてもよい:
− 分離スリーブは比誘電率が6未満の電気絶縁材料で形成される。
− 分離スリーブは、例えばAl
2O
3、AIN、ZrO
2、またはAl
2TiO
5型等の電気絶縁セラミック材料、例えばポリエーテルエーテルケトン(peek)またはベスペル(登録商標)等のポリマ材料、電気絶縁セラミックまたはパイレックス(登録商標)で製作される。
− 分離スリーブは、アルミナ発泡材または多孔質アルミナ、マコール(登録商標)等の結晶化ガラス、または窒化ホウ素、ムライト、ステアタイト、コーディエライト等のテクニカルセラミクスから選択される材料で形成される。
− セラミック材料は窒化ホウ素である。
− 分離スリーブは、前記分離スリーブの前面のレベルにある第三の吐出オリフィスを含む第二の軸方向の筐体を含み、可動要素が前記第二の軸方向の筐体内に配置され、かつ前記第三の吐出オリフィスは、前方部分が前記第一の軸方向の筐体の外に突出するときに、可動要素の軸方向の通路の前記第二の吐出オリフィスの上方で開放する。
− 第一の取付手段は、ノズル本体の第一および第二の部分の少なくとも一部を通って、かつ第一の軸方向の筐体の軸に略平行な方向に延びる。
− ノズル本体の第二の部分は、前記第二の部分をレーザ集光ヘッドに固定するようになされ、かつ設計された第二の取付手段を含む。
− 第一および第二の取付手段は、ノズル本体の第二の部分をレーザ集光ヘッドに、第一の部分に対するよりもしっかりと固定するようになされ、かつ設計され、それによってノズル本体の第一の部分への衝撃時に、ノズル本体は基本的にノズル本体の第一の部分と第二の部分との間で変形または破断する。
− 可動要素は、第一の軸方向の筐体内で、前方部分が第一の吐出オリフィスを通って前記第一の軸方向の筐体の外に突出するまで、第一の吐出オリフィスの方向に並進移動するようになされ、かつ設計される。
− 可動要素は、第一の軸方向の筐体内において、かつ可動要素に付加されるガス圧力の効果によって、第一の軸方向の筐体内で、第一の吐出オリフィスの方向に並進移動されるようになされる。
− ノズルは、第一の軸方向の筐体内において、ノズル本体と可動要素との間に弾性要素をさらに含み、前記弾性要素は可動要素に対し、第一の軸方向の筐体内で第一の吐出オリフィスの方向への並進移動に対抗しようとする弾性復元力を付加する。
− 可動要素は、
・可動要素の前方部分が、完全にまたは事実上完全に、軸方向の筐体内に引き戻される静止位置と、
・可動要素の前方部分のスカートが、完全にまたは事実上完全に、第一の吐出オリフィスを通って軸方向の筐体の外に突出する作動位置と
を含む複数の位置間で移動するようになされる。
− ノズル本体と可動要素との間に、少なくとも1つのシーリング要素、例えば1つまたは複数のOリングがある。
− 前記少なくとも1つのシーリング要素は、可動要素の外周壁の周辺溝内に配置される。
− 可動要素の軸方向の通路は、円錐形、円錐台形、または集束/発散形状を有する。
− ノズル本体は、有利な態様として、鋼鉄、青銅、耐熱鋼、銅、真鍮等の金属または導電性セラミック材料で製作される。
− 可動要素は、有利な態様として、鋼鉄、青銅、耐熱鋼、銅、真鍮等の金属または導電性セラミック材料で製作される。可動要素は、好ましくは、誘導される板上の摩擦を制限することによって板の摩耗を限定するような導電材料から製作される。可動要素は、有利な態様として、鉛を含む青銅合金で形成される。
【0031】
本発明はまた、少なくとも1つの合焦光学系、例えば1つまたは複数のレンズまたはミラー、特に集光レンズとコリメートレンズとを含むレーザ集光ヘッドにも関し、これは本発明によるレーザ切断ノズルをさらに含むことを特徴とする。
【0032】
さらに、本発明はまた、レーザ発生器と、レーザ集光ヘッドと、前記レーザ発生器および前記レーザ集光ヘッドに接続されたレーザビーム搬送器とを含むレーザ装置にも関し、これはレーザ集光ヘッドが本発明によるものであることを特徴とする。
【0033】
レーザ源または発生器は、好ましくは、CO
2、YAG、好ましくはファイバまたはディスク型、特にイッテルビウムファイバを用いるレーザ源である。
【0034】
別の態様によれば、本発明はまた、レーザビームと、本発明によるノズル、レーザ集光ヘッド、または装置とを使って金属部品を切断する方法にも関する。
【0035】
そこで、下記の添付図面を参照しながら以下の説明を読めば、本発明をよりよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】従来のレーザ切断装置の集光ヘッドの図である。
【
図1B】ノズルオリフィスの大きさに関するレーザスポットの大きさを示す図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態によるノズルの、その中に可動要素が配置されていない状態の本体の概略断面図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態によるノズルの概略断面図である。
【
図4A】可動要素が2つの異なる位置にある、本発明によるノズルを示す。
【
図4B】可動要素が2つの異なる位置にある、本発明によるノズルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1Aは、従来のレーザ切断装置の集光ヘッド20を示しており、そこに従来のレーザノズル21が固定され、その中を、集光されたレーザビームと、切断対象の金属部品30、例えば鋼鉄またはステンレス鋼の板にビーム22によって形成された切断部31からビームにより溶融された金属を除去するために使用されるアシストガス(矢印23)とが通過する。
【0038】
アシストガスは、酸素、空気、CO
2、水素等の活性ガス、またはアルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガス、またはこれらの活性および/または不活性ガスの混合物であってもよい。ガスの組成は、特に切断対象部品の性質に応じて選択される。
【0039】
部品に衝突したビームは、その金属を溶融させ、これが後にアシストガスの圧力によって部品の下で除去される。
【0040】
図1Bは、ノズル21のオリフィス24の流出部断面S1を、ビーム22の焦点の大きさS2に関して明瞭に示している。図からわかるように、断面S1は、ビーム22の焦点の大きさS2よりはるかに大きく、これは、従来のノズルにおいて、アシストガスを大量に消費するが、そのうちのわずかな部分のみが切断部31から溶融金属を除去するのに役立っている。
【0041】
切断に必要なガスと圧力の消費量とを大幅に減少させるために、国際公開第2012/156608号パンフレットでは、特定のノズル構成によってより低いガス流速および/またはより低いガス圧力を使ってレーザビームで切断するようになされ、かつ設計され、それによってガスのより大きい部分が切断部31内に入り、溶融金属をそこから効果的に強制的に除去できるレーザノズルが提案されている。
【0042】
国際公開第2012/156608号パンフレットによれば、レーザノズルはノズル本体1を含み、これは、ノズル本体1の内部に配置されて、その中で移動する可動要素2と協働する。
【0043】
しかしながら、このレーザノズルの構成は、既に述べた理由により理想的ではない。
【0044】
これを改善するために、
図2および3に示されるように、本発明が提案するレーザノズルは、可動要素2と、可動要素2の周囲に配置された少なくとも1つの第一の部分11と前記第一の部分11の上方でアシストガスの流れの方向(矢印23)に位置付けられた第二の部分とから形成される本体1とを含む。ノズル本体1は、第二の部分12を第一の部分11に取り付けるようになされ、かつ設計された第一の取付手段7、8をさらに含む。
【0045】
実際、ノズルを組み立てる際、まず可動要素2を第一の部分11内に配置する。次に、第二の部分12をノズル本体1の第一の部分の上に重ね、そこに取り付ける。したがって、ノズル本体1を固定しなければならない集光ヘッドに適するほか、可動要素2を収容するために、第一の部分11の内部で利用可能な空間を増大させるような形状の第二の部分を保持することが可能である。
【0046】
したがって、可動要素2の軸方向の通路5と吐出オリフィス6とを拡張することが可能であり、吐出オリフィス6の孔径は、典型的には最大10mmとすることができ、好ましくは6mmである。これによって、切断部を覆うガスの範囲を拡張し、薄い板について実現される高い切断速度、典型的には3mm未満の厚さに対して3〜30m/分で、特にアシストガス23として窒素を使用してステンレス鋼を切断する際に発生しうる、切断面の酸化現象を防止することが可能となる。
【0047】
さらに、本発明によるノズルによれば、集光ヘッドを板上にありうる障害物の有害な影響から保護することが可能である。実際、板の表面上に障害物があると、衝撃が発生するのは基本的に、板の直上に位置付けられたノズル本体1の第一の部分のレベルである。ノズル本体1を一体部品ではなく、相互に組み立てられる複数の部品から構成することにより、第二の部分12に関する第一の部分11の移動におけるある程度の柔軟性および/または第一の部分11と第二の部分12との間の接続が切断される可能性が提供される。衝撃を受けた場合に、これによって第二の部分12が集光ヘッドに関して動き、および/または集光ヘッドがその支持手段に関して動くリスクを最小限にすることが可能である。
【0048】
ノズル本体1は、有利な態様として、円形部品であり、その中を、本体1の後面1bから前記本体1の前面まで延びる軸AAを有する第一の軸方向の筐体3が完全に通る。
【0049】
第一の軸方向の筐体3は、ノズル本体1の前面1aおよび後面1bの両方で開放している。後面1bは吸込オリフィス9を含み、前面1aはノズル本体1の第一の吐出オリフィス4を含み、第一の吸込オリフィスおよび第一の吐出オリフィス4は軸AAと同軸である。
【0050】
この第一の軸方向の筐体3は実際、第二の部分12を通って延びる第二の部分3bと第一の部分11を通って延びる第一の部分3aとから形成される凹部である。第一および第二の部分3a、3bは、好ましくは円筒形であり、第一の部分3aは、第一の筐体3の中心に向かって半径方向に突出する第一の内側肩部19aを含み、前記第一の内側肩部19aは、第一の軸方向の筐体3の、第一の吐出オリフィス4のレベルでの断面の狭小部により形成される。第一の内側肩部19aは、好ましくは、前記第一の軸方向の筐体3の底のレベルにある。
【0051】
ノズルは可動要素2をさらに含み、これは、
図3からわかるように、ノズル本体1の第一の筐体3内に、好ましくは本体1と同軸に挿入される。可動要素2は、円筒、すなわち管形状のスカートを形成する前方部分2aを含み、第二の吐出オリフィス6を有する軸方向の通路5が、スカートを形成する前方部分2aのレベルで開放する。
【0052】
軸方向の通路5は円錐形の内部形状を有していてもよく、円錐台形の、収束/発散型(すなわち、ドラバルノズル)の、または他の任意の適当な形状の円筒形または非円筒形の吐出路を有する。
【0053】
本発明に関して、可動要素(2)は導電材料から製作される。実際、可動要素は切断領域のすぐ近くに位置付けられ、この種類の材料は、高温および衝撃(可動要素による板への衝撃)ならびに/または熱衝撃(レーザのオン−オフ切換え)に対するより高い耐性を提供する。例えば、可動要素2は、鋼鉄、焼入れ鋼、カーボン、複合材料、その他で製作されてもよい。
【0054】
導電材料は、好ましくは、誘導される板上の摩擦を制限することによって板の摩耗を限定するようなもの、すなわち、研磨性でないまたはあまり研磨性でない材料が選択される。
【0055】
可動要素2は、有利な態様として、鉛を含む青銅合金で形成される。実際、この種類の材料は、良好な摩擦特性、高負荷時の良好な耐摩擦性、および良好な耐腐食性を有するという利点を提供する。その使用は、その自己潤滑性から、潤滑化が難しい状況において特に有利である。これは板の、可動要素がその表面と接触したときのひっかき傷または巻き込みのリスクを大幅に減らし、またはさらには排除する。
【0056】
留意すべき点として、本発明に関しては、電気絶縁材料または誘電材料とは、電気を伝導しない、すなわち、2つの導電要素間の電流の通過を遮断する材料を意味する。逆に、導電材料は、電磁界の作用によって容易に移動できる多数の電荷キャリアを含む。
【0057】
ノズル本体(1)は、導電材料で製作される。換言すれば、ノズル本体1の第一および第二の部分11、12は導電材料で製作される。この材料は、鋼鉄、青銅、耐熱鋼、銅、または真鍮等の金属か導電性セラミック材料とすることができる。
【0058】
ノズル本体1の第一および第二の部分11、12に導電材料を使用することは、それによって容量型センサシステムの使用が可能になるため、有利である。実際、使用中、ノズル本体1はそれ自体既知の容量型センサシステムを含む集光ヘッド20の端に取り付けられる。このシステムは、静電容量効果を利用して、コンデンサを形成する2つの導電要素間の距離の小さい変動を検出する。2つの導電要素を分離する距離は、このコンデンサの電気容量を測定することによって決定され、これは特に、それらを分離する材料の比誘電率に依存する。
【0059】
従来のレーザノズルは一般に、銅等の導電材料で製作される。ノズルがヘッドの端に取り付けられると、これは容量型センサシステムに電気的に接続される。その結果、容量型センサは、板と、ノズルの、位置と対向する平面との間の電気容量を測定することができる。容量型センサは、それ自体が集光ヘッド20の移動を制御する装置に電気的に接続されており、測定された容量が変化すると、ヘッドの高さ位置を調整する。
【0060】
したがって、本発明によるレーザノズルが集光ヘッドに組み付けられる際、導電材料のノズル本体1は、ヘッドが取り付けられている容量型センサシステムに電気的に接続できる。この電気的接続は、有利な態様として、本体1の第二の部分12の少なくとも一部をヘッド20の、導電材料で製作され、容量型センサシステムの一部をなす構成要素と接触させることによって行われる。
【0061】
導電性の可動要素2が板と接触すると、その電位は後者と同じになる。
【0062】
その結果、本発明によるノズルは、第一の部分11と可動要素2との間に導電材料で形成される分離スリーブ14を含む。
【0063】
これによって、容量型センサの故障の原因またはその動作の妨害を回避できる。
【0064】
実際、容量型センサは、したがって、ノズル本体1の前面1aと切断対象部品30の上面との間の1つまたは複数の静電容量の数値を測定する。これらの数値に基づき、センサにより、ノーズコーンと板との間の距離を一定のまたは略一定の数値、典型的には0.1〜5mm、好ましくは0.5〜2mmに調整し、板の平坦さの点での欠陥を修正することが可能となる。
【0065】
本発明に関して、低比誘電率の材料で形成される分離スリーブ14が使用される。
【0066】
実際、標準的なレーザノズル、すなわち可動要素を有さないものの場合、電気容量は、相互に対向する2つの平面間で、すなわち、ノズル本体の前面と切断対象部品の上面との間で測定される。この場合、電気容量C(単位はpF/m)は次式で求められる:
【0068】
式中、ε
0は、真空の誘電率、8.85pF/mであり、ε
rはノズル本体の前面と切断対象部品の上面を分離する材料の比誘電率で、空気の場合は1.004であり、Sは切断対象板と対面するノズルの面積(m
2で表現)であり、dはノズル本体の前面と切断対象部品の上面との間の距離(mで表す)である。
【0069】
本発明による、可動要素を有するレーザノズルの場合、容量型センサシステムは実際、2種類の電気容量測定を実行する。可動要素が板の上面と接触する前に、センサは2つの平面、すなわちノズル本体の前面と切断対象部品の上面との間の第一の測定を実行する。この測定は参照用測定で、ノズル本体1を切断対象部品に関して必要な高さに保持することを可能にする。可動要素2が切断動作を正しく実行するために部品と接触すると、後者は部品と同じ電位となる。その後、センサは、第一の電気容量測定に加えて、可動要素2の外面と本体の第一の部分11の内面との間で行われる複数の測定から得られる全体的電気容量の測定を実行する。実際、これらの表面間の距離は、ノズルの軸AAに沿った関連位置に応じて変化する。
【0070】
ノズルの軸AAに沿ったある点において、電気容量Cは次式で表される(単位はpF/m):
【0072】
式中、r
2は第一の軸方向の筐体3の半径であり、r
1は関係する点における可動要素2の半径(
図3参照)であり、lは第一の軸方向の筐体3と可動要素2がそれぞれの半径r
2およびr
1を有する地点間の軸AAに沿った距離(mで表す)である。
【0073】
ここで、本発明の発明者はこれまでに、低比誘電率の材料で形成される分離スリーブ14を使用した場合、第一の、すなわち参照用測定に加えて全体的電気容量測定を行うことにより生じる干渉を減らすことによって容量型センサの安定性を改善できることを実証している。したがって、切断中、ノズル本体1の位置を切断開始前の参照高さに非常に近い、またはさらには同じ高さに保持することが可能となる。
【0074】
低比誘電率材料とは、比誘電率が8未満、好ましくは6未満の材料を意味する。
【0075】
分離スリーブ14の周辺壁上の何れの点における厚さも、有利な態様としては、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mm、有利な態様としては、両端値を含めて0.5〜10mm、好ましくは両端値を含めて1〜3mmである。
【0076】
また、有利な態様としては、100〜2000℃のオーダ、典型的には500〜1500℃の温度に対して耐性のある材料も選択される。
【0077】
1つの特定の実施形態によれば、分離スリーブ14の外寸は、ノズル本体1の第一の部分11と可動要素2との間にギャップが残るように選択される。このギャップに空気を満たすことによって、全体的電気容量の測定がノズル本体1の高さ位置の安定性に与える有害な影響をさらに大幅に減らすことができる。
【0078】
分離スリーブ14は、好ましくは、アルミナ発泡材もしくは多孔質アルミナ等のセラミック発泡材、例えばマコール(登録商標)等の結晶化ガラス、または窒化ホウ素、ムライト、ステアタイト、もしくはコルディエライト等のテクニカルセラミクスから選択される材料で製作される。下の表1は、上記の材料の比誘電率の数値範囲を示しており、これらは選択される材料の等級と使用される製造工程の種類とによって異なる場合がある。
【0079】
窒化ホウ素等のセラミック材料の使用は、その高温および熱衝撃ならびに摩耗に対する高い耐性から、特に有利である。特に、窒化ホウ素は優れた機械加工性を提供する。
【0081】
分離スリーブ14は、有利な態様として、第二の軸方向の筐体15を含み、これは前記分離スリーブ14の前面14aに位置付けられた第三の吐出オリフィス16を含み、可動要素2は前記第二の軸方向の筐体15内に配置され、前記第三の吐出オリフィス16は、前方部分2aが第一の軸方向の筐体3の外に突出すると、可動要素2の軸方向の通路5の前記第二の吐出オリフィス6の上方で開放する。第二の軸方向の筐体15は、有利な態様として、第二の内側肩部19bを含み、これは前記第二の筐体15の中心に向かって半径方向に突出し、好ましくは前記第二の筐体15の遠端にある。
【0082】
可動要素2の周辺壁は、有利な態様として、外面に第一の当接部18を含む。第一の当接部10は、好ましくは環状であり、可動要素2の周辺の全部または一部に沿って延びる。ノズルが中間スリーブ14を含むか否かによって、第一の当接部18はノズル本体1の第一の肩部19aまたはスリーブ14の第二の肩部19bと対面するように配置される。
【0083】
図2および3に概略的に示されているように、第一の取付手段7、8によって、ノズル本体1の第二の部分12を、有利な態様としては、ノズル本体1の第一および第二の部分の少なくとも一部を通って、かつ第一の軸方向の筐体3の軸AAに略平行な方向に延びる第一の部分11に取り付けることが可能である。この種類の配置により、ノズル本体1の全体的な大きさを縮小でき、さらには、第一の部分11が大きい衝撃を受けた場合に、第一の部分11と第二の部分12との間がきれいに破断しやすくなる。
【0084】
第一の取付手段7、8は、ノズル本体1の第一の部分11を第二の部分12に取り外し可能または取り外し不能に取り付けることを可能にできる。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一の取付手段7、8は、ノズル本体1の第一および第二の部分11、12の少なくとも一部を通る少なくとも1つの第一のねじ穴と、前記第一のねじ穴に螺合される形状のねじ切り円筒形部品(図示せず)とを含む。
図2および3は、第一の取付手段7、8が2つの正反対にあるねじ穴を含む。
【0086】
代替的実施形態によれば、第一の取付手段7、8は、第一の部分11を第二の部分12に取り付けるためのクリップ、バヨネット連結、または圧着手段を含む。
【0087】
ノズル本体1の第二の部分12は、好ましくは、前記第二の部分12をレーザ集光ヘッド20に取り付けるようになされ、かつ設計された第二の取付手段10を含む。
【0088】
図3に示されているように、第二の部分12はしたがって、管形状の端部分を含んでいてもよく、前記端部分は前記端部分の外面の第一のねじ山10または前記端部分の内面の第一のねじ山10を含む。第一の雌ねじまたは雄ねじ10はレーザ集光ヘッド20(図示せず)のそれぞれ第二の雌ねじまたは第二の雄ねじに螺合されるような形状である。
【0089】
第一の取付手段7、8および第二の取付手段10は、有利な態様として、ノズル本体1の第二の部分12をレーザ集光ヘッド20に、第一の部分11に対するよりもしっかりと取り付けるようになされ、かつ設計されており、それによって、ノズル本体1の第一の部分11への衝撃時に、ノズル本体1は基本的にノズル本体1の第一の部分11と第二の部分12との間で変形または破断する。これは、集光ヘッド20のレベルでの破断または変形のリスクを最小限にし、これは切断装置のレベルでの長い保守作業を回避する。
【0090】
1つの特定の実施形態によれば、第二の部分12を集光ヘッド20に取り付ける硬さを、第二の部分12を第一の部分11に取り付ける硬さと比較してこのように制御することは、第一の取付手段7、8および第二の取付手段10の雌ねじまたは雄ねじの直径および/またはピッチの大きさを調整することによって実現できる。第一の取付手段7、8および第二の取付手段10はまた、クイックアクション式取付手段、特にクリックまたはクリップ式、圧着またはバヨネット連結型取付手段であってもよい。
【0091】
ノズルを使用する場合、レーザビーム22とアシストガス23とは可動要素2の軸方向の通路5を通過し、スカートを形成する前方部分2aで開放する第二の吐出オリフィス6を介して外に出る。
【0092】
可動要素2は、有利な態様として、第一の軸方向の筐体3内で軸AAに沿って、第一の吐出オリフィス4の方向へと、前方部分2aが第一の吐出オリフィスを通って前記第一の軸方向の筐体3の外に突出するまで並進移動できる。
【0093】
可動要素2は、好ましくは、前記可動要素2へと加えられ、それを切断対象部品30の方向に押そうとするアシストガス23の圧力によって移動される。
【0094】
軸AAに沿った可動要素2の並進移動により、スカートは切断対象の板の上面30に向かって移動し、これらは
図4Bに示されるように、相互に接触する。したがって、ガスはスカートにより案内されて、レーザスポット、およびしたがって切断部のレベルに集中し、これがレーザビーム22により溶融される金属の排出の効率を大幅に向上させる。
【0095】
ばね等の弾性要素17は、有利な態様として、第一の軸方向の筐体3内で、ノズル本体1と可動要素2との間に、または第二の軸方向の筐体15内で、分離スリーブ14と可動要素2との間に配置される。より正確に言えば、弾性要素は弾性復元力を可動要素2に対し、それを切断対象部品30から反対に移動させようとする方向に加える。切断の終了時に、ガスの供給が切られ、ガス圧力が可動要素2に加えられなくなると、これはしたがって、その静止位置に戻ることができ、スカートは第一の筐体3内に再び入る。弾性要素17は、有利な態様として、第一の当接部18と、第一の軸方向の筐体3内にスリーブがあるかないかに応じて、ノズル本体の1の第一の肩部19aかスリーブ14の第二の肩部19bの何れかとの間に配置される。
【0096】
したがって、弾性要素17により、一般に、切断段階の前に行われる板の穿孔段階中にスカートとの摩耗現象を制限できる。実際、穿孔はほとんどの場合、低いガス圧力、典型的には4バールで行われる。その後、弾性要素はスカートが完全に、または事実上完全に第一の筐体3内に戻るのに十分な復元力を付加し、それによってこれが穿孔から生じる溶融金属の飛沫から保護される。
【0097】
さらに、弾性要素17により、切断ガスまたはビームが供給されないときに切断ヘッドを板から短い距離だけ上方の位置で迅速に移動させやすくなり、これは、そうするとガス圧力が可動要素に加えられなくなり、スカートか第一の筐体3内に再び入るからである。スカートだけが上昇し、ノズルを支える集光ヘッドを上昇させる必要はない。
【0098】
弾性要素1はまた、可動要素2が切断対象部品に、それが切断ガスの効果によって部品の方向に移動している間に加えられる圧力を制限することも可能にする。より正確に言えば、弾性要素8の復元力は、有利な態様として、可動要素2を切断対象部品と接触した状態に保つのと同時に、前記要素が板に付加する圧力を制限するように決定され、それによって部品がそこから切断されるべき板の変形、板の表面のひっかき傷、および板の巻き込みのすべてのリスクを最小化し、さらには除去する。
【0099】
必要に応じて、可動要素2は、円筒形の、すなわち軸AAに沿って一定の外径を有する前方部分2a、または凹凸もしくは障害物の上方を通過して、スカート6が衝撃を受けないか、衝撃が大幅に減少するような形状の端部分を含んでいてもよい。
【0100】
前方部分2aは、有利な態様として、第二の吐出オリフィス12の方向に徐々に減少する外径を有する端部分を含む。その結果、前方部分2aはそれが板の表面上に存在する上昇した領域または障害物の上を通過しやすくする形状である。端部分の外径が徐々に減少することは、スカート6が凹凸または局所的な障害物に遭遇したときにスカート6が筐体5向かって上昇するのに有利であるため、衝撃はよりよく吸収される。
【0101】
端部分とは、前方部分2aのうち、前記前方部分の端にある、すなわち切断対象の板の上面と対向する部分を意味する。
【0102】
少なくとも1つのシーリング要素、例えばエラストマシールが、任意選択により、ノズル本体1と可動要素2との間、または分離スリーブ14と可動要素2との間に配置され、これは特に1つまたは複数のOリングであり、それによって、ノズル本体1または分離スリーブ14と可動挿入物2との間のシールを提供することが可能となる。前記シーリンク要素は、好ましくは、可動要素2の外側周辺壁の周辺溝内に配置される。
【0103】
実際、本発明によるノズルの可動要素2は、少なくとも:
− 前方部分2aが、完全にまたはほとんど完全に、ノズル本体1の第一の軸方向の筐体3の外に第一の吐出オリフィス4を介して突出し、部品30と接触している、
図4Aに示されるような動作位置と、
− 前方部分2aが、完全にまたは事実上完全に、ノズル本体1の第一の軸方向の筐体3内にある、
図4Bに示されるような静止位置と
を含む複数の位置間でも移動できる。
【0104】
当然のことながら、可動要素2は、前方部分2aが部分的にのみノズル本体1の第一の軸方向の筐体3の外に突出する中間位置を占有することもできる。これらの中間位置は、特にガスが可動要素2に加える圧力に応じていてもよい。
【0105】
本発明によるノズルの、標準的なノズル、すなわち可動要素を有さない従来のノズルと比較した場合の効率、およびしたがって、可動要素に取り付けられたスカートの使用によって、切断部内にガスを強制的に送る利点を証明するために、集光光学系、すなわちレンズを含むレーザ集光ヘッドに供給されるレーザビームを発するCO
2レーザを用いる切断装置を使って比較試験を行った。
【実施例】
【0106】
実施例1
必要に応じて、レーサ集光ヘッドに、
− 孔径1.8mmの吐出オリフィスを有する標準的ノズル、または
− 2部式本体と、鋼鉄製の円筒形可動スカートと、孔径1.8mmの円筒形の吐出経路を有する円錐形のスカートの軸方向の通路とを有する、
図3によるノズル
を取り付ける。
【0107】
この試験中、容量型センサのパラメータを、ノーズコーンの前面と切断対象の板の上面との間の距離を1mmに調整するように設定する。
【0108】
使用されるアシストガスは窒素である。
【0109】
切断対象の板は、厚さ5mmの304Lステンレス鋼である。
【0110】
レーザビームの出力は4kW、切断速度は2.6m/分である。
【0111】
得られた結果は、以下を証明している:
− 標準ノズルでは、品質の高い切断部を得るのに14バールのガス圧力では不十分である。実際、14バールでは切断面に多数のバリが付着する。これは、排出されるべき溶融金属へのガスの作用が不十分であるため、溶融金属の排出が良好に行われないからである。これらのバリを除去するには、16バールの圧力が必要であった。
− 本発明のノズルでは、1〜5バールの圧力で実行された試験の結果、良好な切断、すなわちバリの付着のしていない切断面が得られた。ノズルのスカートによって、ガスを切断部に誘導し、溶融金属を効率的に除去することが可能となる。
【0112】
実施例2
必要に応じて、レーザ集光ヘッドに、
− 孔径1.5mmの吐出オリフィスを有する標準ノズル(A)、または
− 国際公開第2012/156608号パンフレットによる一体の本体と、鋼鉄製の円筒形可動スカートと、孔径2mmの円筒形の吐出経路を有する円錐形状のスカートの軸方向の通路とを有するノズル(B)、または
− 2部式本体と、鋼鉄製円筒形可動スカートと、孔径6mmの円筒形の吐出経路を有する円錐形状のスカートの軸方向の通路とを有する、
図3によるノズル(C)
を取り付ける。
【0113】
この試験中、容量型センサのパラメータを、ノーズコーンの前面と切断対象の板の上面との間の距離を1mmに調整するように設定する。
【0114】
使用されるアシストガスは窒素である。
【0115】
切断対象の板は、厚さ2mmの304Lステンレス鋼である。
【0116】
レーザビームの出力は4kWである。
【0117】
下表は、上記の3種類のノズルA、B、Cを備える実施例2の条件の下で得られた切断結果を、切断速度、使用されるアシストガス、および切端面のバリおよび/または酸化条痕の有無の点で示す。
【0118】
試験結果は、本発明によるノズルCの効率を明確に実証しており、これによって、他の条件がすべて同じ場合に、標準ノズルと比較して使用されるガス圧力を大幅に減らすことができ、したがって、ガスの消費量も減少させることができる。さらに、本発明のノズルCにより、アシストガスの吐出オリフィスの直径を拡大することが可能となり、これは、小さい厚さに対しては、切断面の酸化現象を発生させずに、切断速度を高めることが可能であり、これは可動スカートを有する穿孔技術のノズルBでは不可能であった。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] − ノズル本体(1)であって、前記ノズル本体(1)を通って軸方向に延びる第一の軸方向の筐体(3)と、前記第一の軸方向の筐体(3)にアシストガス(23)を供給するための吸込口(9)と、前記ノズル本体(1)の前面(1a)に配置された第一の吐出口(4)とを含む、ノズル本体(1)と、
− 前記ノズル本体(1)の前記第一の軸方向の筐体(3)内に配置された可動要素(2)であって、スカートを形成する前方部分(2a)と、前記スカートを形成する前方部分(2a)に第二の吐出オリフィス(6)を有する軸方向の通路(5)とを含む、可動要素(2)と
を含み、
前記ノズル本体(1)および前記可動要素(2)が導電材料で製作される、レーザ切断ノズルにおいて、
− 前記ノズル本体(1)が、前記可動要素(2)の周囲に配置された少なくとも1つの第一の部分(11)と、前記第一の軸方向の筐体(3)内の前記アシストガス(23)の流れの方向にしたがって前記第一の部分(11)の上方に位置を定める1つの第二の部分(12)とから製作され、前記ノズル本体(1)が、前記第二の部分(12)を前記第一の部分(11)上に取り付けるようになされ、かつ設計された第一の取付手段(7、8)をさらに含み、および
− 分離スリーブ(14)が前記第一の部分(11)と前記可動要素(2)との間に配置され、かつ前記分離スリーブ(14)は、比誘電率が8未満の電気絶縁材料で製作されることを特徴とする、レーザ切断ノズル。
[2] 前記分離スリーブ(14)は比誘電率が6未満の電気絶縁材料で形成される、[1]に記載のノズル。
[3] 前記分離スリーブ(14)はセラミック材料で形成されることを特徴とする、[1]または[2]に記載のノズル。
[4] 前記セラミック材料は窒化ホウ素であることを特徴とする、[3]に記載のノズル。
[5] 前記分離スリーブ(14)が、前記分離スリーブ(14)の前面(14a)にある第三の吐出オリフィス(16)を含む第二の軸方向の筐体(15)を含み、前記可動要素(2)は前記第二の軸方向の筐体(15)内に配置され、かつ前記第三の吐出オリフィス(16)は、前記前方部分(2a)が前記第一の軸方向の筐体(3)の外に突出するときに、前記可動要素(2)の前記軸方向の通路(5)の前記第二の吐出オリフィス(6)の上方で開放することを特徴とする、[1]〜[4]の何れか一項に記載のノズル。
[6] 前記可動要素(2)は鉛を含む真鍮合金で形成されることを特徴とする、[1]〜[5]の何れか一項に記載のノズル。
[7] 前記第一の取付手段(7、8)は、前記ノズル本体(1)の前記第一および第二の部分(11、12)の少なくとも一部を通って、かつ前記第一の軸方向の筐体(3)の軸に略平行な方向に延びることを特徴とする、[1]〜[6]の何れか一項に記載のノズル。
[8] 前記ノズル本体(1)の前記第二の部分(12)は、前記第二の部分(12)をレーザ集光ヘッド(20)に固定するようになされ、かつ設計された第二の取付手段(10)を含むことを特徴とする、[1]〜[7]の何れか一項に記載のノズル。
[9] 前記第一の取付手段(7、8)および前記第二の取付手段(10)は、前記ノズル本体(1)の前記第二の部分(12)を前記レーザ集光ヘッド(20)に、前記第一の部分(11)に対するよりもしっかりと固定するようになされ、かつ設計され、それによって前記ノズル本体(1)の前記第一の部分(11)への衝撃時に、前記ノズル本体(1)は基本的に前記ノズル本体(1)の前記第一の部分(11)と前記第二の部分(12)との間で変形または破断することを特徴とする、[1]〜[8]の何れか一項に記載のノズル。
[10] 前記可動要素(2)は、前記第一の軸方向の筐体(3)内で、前記第一の部分(2a)が前記第一の吐出オリフィス(4)を通って前記第一の軸方向の筐体(3)の外に突出するまで、前記第一の吐出オリフィス(4)の方向に並進移動するようになされ、かつ設計されることを特徴とする、[1]〜[9]の何れか一項に記載のノズル。
[11] 前記可動要素(2)は、前記第一の軸方向の筐体(3)内において、かつ前記可動要素(2)に付加されるガス圧力の効果によって、前記第一の軸方向の筐体(3)内で、前記第一の吐出オリフィス(4)の前記方向に並進移動されるようになされることを特徴とする、[1]〜[10]の何れか一項に記載のノズル。
[12] 前記第一の軸方向の筐体(3)内において、前記ノズル本体(1)と前記可動要素(2)との間に弾性要素(17)をさらに含み、前記弾性要素(17)は前記可動要素(2)に対し、前記第一の軸方向の筐体(3)内で前記第一の吐出オリフィス(4)の前記方向への前記移動に対抗しようとする弾性復元力を付加することを特徴とする、[1]〜[11]の何れか一項に記載のノズル。
[13] 前記可動要素(2)は、
− 前記可動要素(2)の前記前方部分(2a)が、完全にまたは事実上完全に、前記軸方向の筐体(3)内に引き戻される静止位置と、
− 前記可動要素(2)の前記前方部分(2a)の前記スカートが、完全にまたは事実上完全に、前記第一の吐出オリフィス(4)を通って前記軸方向の筐体(3)の外に突出する作動位置と
を含む複数の位置間で移動するようになされることを特徴とする、[1]〜[12]の何れか一項に記載のノズル。
[14] 少なくとも1つの集光光学系を含むレーザ集光ヘッド(20)において、[1]〜[13]の何れか一項に記載のレーザ切断ノズルをさらに含むことを特徴とする、レーザ集光ヘッド(20)。
[15] レーザ発生器と、レーザ集光ヘッドと、前記レーザ発生器および前記レーザ集光ヘッドに接続されたレーザビーム搬送器とを含むレーザ装置において、前記レーザ集光ヘッドは[14]に記載のものであることを特徴とする、レーザ装置。
[16] [1]〜[13]の何れか一項に記載のノズルが使用されるか、[14]に記載のレーザ集光ヘッドが使用されるか、または[15]に記載の装置が使用される、レーザビームを使用して金属部品(30)を切断する方法。
【0119】
【表2】