【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題は、請求項1に定義される薬物送達デバイスによって解決される。
【0010】
前述した種類の薬物送達デバイスは、一次薬物送達アセンブリに含まれる一次薬剤の用量を設定するための一次用量設定機構を備える、一次薬剤を送達するための一次薬物送達アセンブリと、二次薬剤を送達するための二次薬物送達アセンブリとを含む。本発明によれば、選択要素が設けられ、この選択要素は、第1の方向および第2の方向へ可動であり、第1の方向および第2の方向への選択要素の動きにより、一次用量設定機構内の増加用量を設定するように構成される。
【0011】
好ましくは、設定要素が作動されるときに、2つの用量単位が一次薬物送達アセンブリにおいて設定される。
【0012】
一次用量設定機構を、一次用量設定用量投薬機構として構成してもよい。二次薬物送達アセンブリは、同じく二次用量設定用量投薬機構として構成可能な二次用量設定機構を含んでもよい。一次および二次という用語は、構成要素をそれぞれの薬物送達アセンブリと関連付けるために実質的に使用される。
【0013】
本発明は、許可されたユーザ動作を拘束して、注射に危険な影響を与え得る用量設定中の誤調整を防止するための効果的な機構を提供する。ユーザが選択要素を動かす方向とは無関係に、一次薬物送達アセンブリ内の正の用量が設定される。これは、組合せ薬物送達デバイス内の用量設定のためにユーザが有する自由度を効率的に制限する。ユーザが選択要素を作動させるときに、一次薬物送達アセンブリ内の用量が常に設定される。これにより、本発明は、正確に制御された併用療法を有効にする。同時に、ユーザが単一医薬品または組合せ医薬品を選択する技術的な枠組みが設定される。
【0014】
薬物送達デバイスは、長手方向軸に沿って近位端から遠位端へ延び、かつ一次薬物送達アセンブリおよび二次薬物送達アセンブリを収容する薬物送達デバイスハウジングを含んでもよい。通常、遠位端は投薬端と呼ばれ、薬物送達デバイスは、注射針を有するニードルハブなどの単一の投薬インターフェースをここに備えることができる。近位端は、設定端と呼ばれることがあり、ユーザはここで用量ダイヤルグリップなどを操作して薬剤用量を設定する。
【0015】
ハウジングは、一次薬物送達アセンブリハウジングを含んでよく、二次薬物送達アセンブリハウジングを含んでよく、これらは好ましくは互いに解放可能に取り付けられて、単一部材が交換可能であるようにしてもよい。
【0016】
一次薬物送達アセンブリハウジングおよび二次薬物送達アセンブリハウジングを、薬剤カートリッジまたはカートリッジハウジングのそれぞれに取り付けられるように構成してもよい。カートリッジは各々薬剤リザーバを含んでよい。一次薬剤、たとえば長時間作用型インスリンが、一次薬物送達アセンブリハウジングに連結されるように構成された一次リザーバ内に含まれ、二次薬剤、たとえばGLP−1が、二次薬物送達アセンブリハウジングに連結されるように構成された二次リザーバ内に含まれる。したがって、2つのカートリッジを薬物送達デバイスに連結することができる。
【0017】
選択要素を、選択スイッチまたは選択レバーとして形成してもよい。選択要素は、好ましくは二次薬物送達アセンブリの軸方向に延びる長手方向軸の周りで両方向に回転可能であってもよい。二次用量設定および二次用量投薬機構の部材を、前記軸に対して略同心に配置してもよい。
【0018】
本発明のさらなる実施形態によれば、選択要素は、第1の位置と第2の位置と第3の位置との間で可動であり、選択要素は第1の位置から第2の位置へ第1の方向に、かつ第1の位置から第3の位置へ第2の方向に可動である。第1の方向は、第2の方向と異なっていてよい。好ましくは、第1の方向は、第2の方向の反対である。選択要素を、デバイスの近位端からデバイスの遠位端を見たときに、第1の位置から第2の位置へ反時計方向に、かつデバイスの第1の位置から第3の位置へ時計方向に回転させることができる。
【0019】
第1の位置は、第2の位置と第3の位置の間の中間または中心位置であってよく、「静止」状態を構成してもよい。これは、ユーザが後の注射用に薬物送達デバイスを準備するために行う任意の設定動作前の状態に対応し得る。
【0020】
好ましくは、選択要素は二次薬物送達アセンブリの用量設定要素である。選択要素の作動が二次用量設定機構に伝えられ、二次薬物送達アセンブリ内の二次薬剤の用量を設定するように、選択要素を二次薬物送達アセンブリ、特に二次薬物送達アセンブリの二次用量設定機構に連結してもよい。
【0021】
本発明のさらなる実施形態によれば、選択要素は、第1の方向または第1の位置から第2の位置への選択要素の動きにより、二次用量設定機構内の好ましくは一定または所定用量を設定するように二次用量設定機構に連結される。
【0022】
好ましくは、一次薬物送達アセンブリは、一次薬物送達アセンブリにより投薬予定の一次薬剤の可変用量を設定するように構成され、二次薬物送達アセンブリは、二次薬物送達アセンブリにより投薬予定の二次薬剤の一定用量を設定するように構成される。したがって、一次薬物送達アセンブリは可変用量設定機構を含んでよく、二次薬物送達アセンブリは一定用量設定機構を含んでよい。機構の各々を投薬のために構成してもよい。
【0023】
本明細書で使用される「一定用量」という用語は、薬物送達アセンブリまたは薬物送達デバイスの構成により定義される用量値として特徴付けることができ、ユーザは特定の用量のみを注射することができる。ユーザは、薬剤のより小さいもしくは大きい用量を設定する、かつ/または薬剤のより小さいもしくは大きい用量を注射する立場にはない。ユーザが有効に設定および注射できる用量は、ある値に制限される。したがって、設定要素を使用して、二次薬物送達アセンブリにより投薬予定の二次薬剤の一定用量を設定することができる。
【0024】
逆に、「可変用量」という用語は、ユーザが注射したい薬剤の量を実質的に自由に選択する用量として特徴付けることができる。用量は、通常、上限と下限との間で可変に調整可能である。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によれば、第2の方向または第1の位置から第3の位置へ選択要素の動きにより、二次用量設定機構が用量を設定することを防止し、または二次薬物送達アセンブリ内の用量を設定しない。これは、設定要素の回転運動を二次用量設定機構に伝えることを防止する、二次用量設定機構内のラチェット機構により達成することができる。選択要素を用いて、ユーザは一次薬物送達アセンブリ内の一次薬剤の用量のみを設定するか、または二次薬剤の用量と組み合わせて一次薬剤の用量を設定するかを容易に選択することができる。
【0026】
本発明のさらなる実施形態によれば、一次薬物送達アセンブリは、用量設定中に回転するように構成された一次用量ダイヤルスリーブを含む。選択要素を、一次用量ダイヤルスリーブに連結されるように構成して、第1の位置から第2の位置および/または第3の位置への選択要素の動きにより、一次用量ダイヤルスリーブを回転させ、一次用量設定機構内の増加用量をダイヤル設定するようにしてもよい。
【0027】
さらなる実施形態によれば、一次薬物送達アセンブリは、ばねなどの付勢部材を含み、この付勢部材は、一次薬物送達アセンブリの用量設定中にプレストレスを受け、かつ用量投薬中に弛緩して一次親ねじを遠位方向へ駆動するように構成される。これにより、一次薬剤を後で投薬するための機械的エネルギーを、二次薬剤の用量設定中に確立することができる。
【0028】
ユーザ動作の順序を効率的に拘束し調節するために、本発明のさらなる実施形態はロック機構を含み、このロック機構は、選択要素がユーザにより作動され、または動かされるときに、一次薬物送達アセンブリの一次用量投薬機構または一次用量設定投薬機構を投薬に対してロックするように構成される。ロック機構は、一次用量投薬機構または少なくとも機構の要素を動きに対してロックして、一次親ねじの遠位方向への動きを妨げ、一次薬剤を投薬できないようにしてもよい。
【0029】
二次用量設定機構内の用量が設定されたときに、ロック機構が一次用量投薬機構に係合すると効果的であることが証明されている。ロック機構を設定要素に連結して、設定要素が第1の位置から第2の位置へ動かされたときに、または二次薬物送達アセンブリ内の用量が設定されたときに、ロック機構が、一次薬剤の投薬が可能なロック解除状態から一次薬剤の投薬が防止されるロック状態へ動く、または切り替えられる、または設定されるようにしてもよい。
【0030】
ロック機構を設けることにより、第2の用量投薬機構が投薬を終了する前に一次用量投薬機構が投薬することを防止できる。このインタロックにより、たとえば、二次薬物送達アセンブリ内で設定された一定用量が、一次薬物送達アセンブリ内で設定された可変用量よりも前に確実に投薬される。そのようなインタロック機能により、ユーザによる誤操作を効率的に防止して、用量設定中の明確な手順に従わなければならないようにする。
【0031】
さらなる実施形態によれば、ロック機構はラチェットとクラッチとを含み、ロック状態で、クラッチはラチェットに回転ロックする。ロック解除状態では、クラッチはラチェットに回転ロックしない。ロック状態では、ラチェットはクラッチに係合して、クラッチの回転が防止されるようにする。ロック解除状態では、ラチェットをクラッチから係合解除することができる。
【0032】
ラチェットは、二次薬物送達アセンブリの長手方向軸に対して回転拘束されるが、軸方向に、または薬物送達デバイスハウジングに対して可動であってよい。これは、軸方向へ延びる薬物送達デバイスハウジングとのスプラインインターフェースにより達成することができる。ラチェットは、近位位置と遠位位置との間で可動であってよく、近位位置から遠位位置へ動くときにクラッチに係合してもよい。
【0033】
さらなる実施形態によれば、ラチェットは、二次薬物送達アセンブリ内の用量が設定されたときにクラッチに係合するように構成される。ラチェットを設定要素に連結して、設定要素の第1の位置から第2の位置への動きにより、ラチェットを動かしてクラッチに係合させるようにしてもよい。これにより、ラチェットの軸方向位置は、一定用量設定機構の状態に依存し得る。
【0034】
一次用量投薬機構は、用量投薬中に遠位方向へ動くように構成された一次親ねじ、ピストンロッドなどを含んでよい。クラッチを、一次薬物送達デバイスの一次親ねじに回転拘束してもよい。一次親ねじを、用量投薬中に回転するように構成してもよい。一次親ねじは、一次薬物送達アセンブリハウジングとねじ係合して、一次親ねじの回転により一次親ねじの遠位への動きが生じるようにしてもよい。一次親ねじをスプラインインターフェースによりクラッチに回転拘束してもよい。クラッチを回転に対してロックすることにより、一次親ねじが回転することおよび遠位方向へ前進することを防止できる。
【0035】
さらなる実施形態によれば、二次薬物送達アセンブリは、用量設定中に遠位へ動いてラチェットがクラッチに係合するように構成された二次駆動スリーブを含む。好ましくは、二次駆動スリーブは、用量設定中に純粋な軸方向運動で遠位へ動き、ラチェットを駆動してクラッチに係合させる。
【0036】
二次駆動スリーブを、連結機構を介して選択要素に連結してもよく、この連結機構は、選択要素の第1の方向への回転運動を二次駆動スリーブの遠位方向への好ましくは純粋な軸方向運動に変えるように構成される。設定要素の第2の方向への回転により二次駆動スリーブをその軸方向位置で維持するように、連結機構を構成してもよい
【0037】
さらなる実施形態によれば、二次薬物送達アセンブリは、ラチェットを近位方向へ付勢するように構成された、ばねなどの付勢要素を含む。付勢要素を、ラチェットから遠位に位置させてもよい。これにより、ラチェットをクラッチから係合解除するため、およびインタロック機構を無効にするためのエネルギーを蓄積することができる。
【0038】
さらなる実施形態によれば、付勢要素は、ラチェットがクラッチに係合する動きによって付勢要素を圧縮するように配置される。好ましくは、二次駆動スリーブの遠位への動きにより、ラチェットが遠位へ動いてクラッチに係合し、付勢要素が圧縮される。これは、二次薬物送達アセンブリの設定動作とロック機構のロック状態との明確な関係をもたらす。さらに、付勢要素は、後の投薬のための機械的エネルギーを蓄積してもよい。したがって、付勢要素を二次投薬ばねとして構成してもよい。
【0039】
ラチェットを、二次薬剤の用量投薬中および/または二次用量設定機構がリセットされたときに、クラッチから係合解除されるように構成してもよい。二次駆動スリーブを、二次薬物送達アセンブリの用量投薬中に近位方向へ動くように構成して、弛緩する付勢要素の力によりラチェットが二次駆動スリーブを近位方向へ付勢するようにしてもよい。
【0040】
二次駆動スリーブを、二次薬物送達アセンブリの用量投薬中に近位方向へ螺旋運動で動くように構成してもよい。さらに、二次駆動スリーブを、二次薬物送達アセンブリハウジングとねじ係合する二次親ねじに回転拘束して、駆動スリーブの回転を二次親ねじに伝えることにより、二次親ねじが遠位方向へ動くようにしてもよい。二次駆動スリーブは、スプライン連結により二次親ねじとインターフェース連結して、二次親ねじに対する二次駆動スリーブの遠位方向への動きが、二次薬物送達アセンブリの用量の設定に対応するようにしてもよい。
【0041】
螺旋運動を、並進運動の軸の周りの回転と組み合わせた軸方向の並進運動と定義してもよい。
【0042】
本発明のさらなる実施形態によれば、二次薬物送達アセンブリは、二次駆動スリーブの近位方向への軸方向運動を、二次投薬ばねの力によって螺旋運動に変えるように構成された二次内側本体を含む。用量設定中に二次駆動スリーブの軸方向運動を有効にするために、二次駆動スリーブは、1組の嵌合する軸方向ラチェット歯を介して二次内側本体とインターフェース連結して、軸方向ラチェット歯が完全に係合する用量設定中に、二次駆動スリーブの回転を防止するようにしてもよい。
【0043】
薬物送達デバイスは、好ましくは、薬物送達デバイスの投薬を開始するために軸方向に可動な、トリガなどの作動要素を含んでよい。レンズまたは任意の他の適切な可動要素を、二次薬物送達アセンブリ内の用量設定中に近位方向へ動かしてもよく、トリガが作動されたときに遠位方向へ動かしてもよい。前記遠位への動きを二次駆動スリーブに伝えて、二次薬物送達アセンブリの投薬が開始されるようにしてもよい。
【0044】
連結機構は、いずれもラチェット機構を通して互いに係合するように構成された選択スリーブおよび設定スリーブを含んでよい。選択スリーブの第1の方向への回転を設定スリーブに伝え、選択スリーブの第2の方向への回転により選択スリーブを設定スリーブに対して回転させるように、ラチェット機構を構成してもよい。選択スリーブを選択軸に回転拘束してもよく、選択スリーブは選択軸に対して軸方向に可動であってもよい。選択スリーブは、選択スリーブを設定スリーブに係合させるように作用する一体型ばね付要素を備えてもよい。選択軸を、薬物送達デバイスハウジング内で軸方向に拘束してもよい。さらに、選択軸を選択要素に回転拘束してもよい。
【0045】
二次内側本体は、二次薬物送達アセンブリの共通の主軸を提供してもよく、その主軸の周りに、二次用量設定機構の他のすべての部材を同心に位置させてもよい。設定スリーブは、二次内側本体に沿って軸方向に自由に動いてよい。設定スリーブの回転を、二次内側本体との当接により拘束してもよい。
【0046】
二次駆動スリーブは、1組の対向する軸方向ラチェット歯または傾斜面を介して設定スリーブとインターフェース連結して、設定スリーブの第1の方向への回転により、駆動スリーブをデバイスの遠位端に向かって軸方向に動かすようにしてもよい。さらに、二次駆動スリーブは、回転一方向連結により、たとえば嵌合する軸方向ラチェット歯によりラチェットに係合して、用量設定中に二次駆動スリーブの回転を防止するようにしてもよい。
【0047】
設定スリーブを、用量投薬中に二次駆動スリーブから係合解除されるように構成して、二次駆動スリーブが付勢要素の力により近位方向へ自由に動いて二次内側本体に係合し、二次内側本体との係合により回転するようにしてもよい。
【0048】
さらなる実施形態によれば、選択要素の動きを一次用量設定機構に伝えて、一次薬物送達アセンブリの用量が設定されるように構成された伝達要素が設けられる。好ましくは、伝達要素は、第1の位置と第2の位置との間で可動である。
【0049】
伝達要素は、薬物送達デバイスハウジング内で摺動可能に案内される摺動要素であってよく、一次用量ダイヤルスリーブに係合して、伝達要素の横方向運動により一次用量ダイヤルスリーブを回転させるように構成される。伝達要素を、選択要素により移動されて一次用量ダイヤルスリーブに係合することにより、一次用量ダイヤルスリーブが回転するように配置してしてもよい。伝達要素を、選択要素との当接により起動してもよい。
【0050】
選択要素は、伝達要素を一次用量ダイヤルスリーブに係合させるプロファイルド当接部を備えてもよく、当接部を設定要素および/または選択軸に配置して、設定要素の第1の位置から第2の位置へ、または第1の位置から第3の位置への回転により、伝達要素が一次用量ダイヤルスリーブに係合して、一次用量ダイヤルスリーブが回転し、投薬予定の一次薬剤の用量が一次薬物送達アセンブリ内で設定されるようにしてもよい。選択要素が第1の位置から第2の位置へ回転すると、選択要素の回転が一次用量ダイヤルスリーブに伝えられ、二次駆動スリーブにも伝えられて、二次駆動スリーブが遠位方向へ動く。
【0051】
選択要素を第1の位置から第2の位置へ動かすことにより、一次薬剤の所定用量と二次薬剤の所定用量とが設定される。逆に、選択スイッチを第1の位置から第3の位置へ動かすと、選択要素の動きのみが一次用量ダイヤルスリーブに伝えられ、二次薬剤の用量は設定されない。各々の場合に、選択要素の第1の位置から第2の位置へ、または第3の位置への選択運動により、一次薬物送達アセンブリ内の用量を設定する。
【0052】
これにより、ユーザが注射用に自分のデバイスを準備するために行うことのできる可能な設定動作が効率的に限定される。ユーザが一次薬剤の用量なしで二次薬剤の用量を設定することが効率的に防止される。さらに、機構により、ユーザが二次薬物送達アセンブリ内の一定用量を止めて用量を「分割」することが可能になる。一次薬物送達アセンブリ内の一次薬剤の所定単位を自動でダイヤル設定することにより、ユーザが一次薬剤の用量のみを注射したいか、または一次薬剤および二次薬剤の組合せ用量を注射したいかの選択に関して、効果的なユーザ選択が有効になる。
【0053】
選択要素および/または薬物送達デバイスハウジングは、動きまたは回転の可能な程度を定義する手段を備えてもよい。たとえば、回転の可能な程度を、選択要素および/または選択軸と薬物送達デバイスハウジングの対向当接部などとの係合により定義してもよい。これにより、一定用量の値を効率的に設定することができる。
【0054】
さらなる実施形態によれば、掛止機構として機能し、第2の位置および/または第3の位置で選択要素および/または選択軸にロックするように構成されたさらなるインタロック機構が設けられる。この機構は、薬剤の順次送達を効率的に実現するための追加または代わりの方法であってよい。特にラチェットおよびクラッチを含むロック機構と組み合わせて、薬剤送達の順序を制御する効率的な方法が提供される。
【0055】
この目的で、遠位位置と近位位置との間で選択軸に対して軸方向に可動なラッチを設けることができ、ラッチは、選択軸を遠位位置で回転に対してロックする。付勢部材は、一次用量ダイヤルスリーブに対してラッチを遠位方向に付勢し、一次用量ダイヤルスリーブの回転により、ラッチがその遠位位置へ動く。ラッチは、ラッチが遠位位置にあるときに選択軸のプロファイルドボスに係合するように構成された半径方向当接部を備えて、選択軸が第3の位置または第2の位置から第1の位置へ回転して戻るのを防止するようにしてもよい。
【0056】
一次用量ダイヤルスリーブは、用量ダイヤルスリーブに配置された当接部を備えて、一次用量ダイヤルスリーブがゼロ単位の設定用量に対応する位置にあるときに、ラッチの遠位への動きを防止するようにしてもよい。この機構は効率的なインタロックをもたらして、一次用量ダイヤルスリーブがゼロ用量位置に戻るまで、選択要素をその回転位置のいずれかに維持する。
【0057】
本発明のさらなる実施形態によれば、さらなるインタロック機構が限定手段として構成され、この限定手段は、選択要素が第1の位置にあるときに一次薬物送達アセンブリ内の用量の設定を所定値に限定し、選択要素が第2の位置または第3の位置にあるときにより大きい用量の設定を可能にする。
【0058】
限定機構は、摺動要素、たとえば2単位インタロックスライダを含んでよい。設定要素が第1の位置にあるときに摺動要素を一次用量ダイヤルスリーブに係合させるように、選択軸を構成してもよい。好ましくは、選択軸は、選択軸に配置されたカム機能を備えて、選択要素が第1の位置にあるときに、インタロックスライダが一次用量ダイヤルスリーブから係合解除されるのを防止するようにする。したがって、選択要素が第2の位置および/または第3の位置にあるときに、インタロックスライダは、好ましくは一次用量ダイヤルスリーブの回転により、自由に一次用量ダイヤルスリーブから係合解除される。インタロックスライダは、一次用量ダイヤルスリーブの回転を所定の単位数、たとえば2単位に効果的に限定してもよい。このため、摺動要素を2単位インタロックスライダと呼ぶことができ、これは、一次用量ダイヤルスリーブが2単位まで回転された後の一次用量ダイヤルスリーブのさらなる回転を防止する。このインタロック機構は、一次薬物送達アセンブリの選択可能な用量を、主な用量に等しい2単位に効果的に限定する。選択要素を第2の位置または第3の位置に動かすことにより二次薬物送達アセンブリ内の一定用量を設定するかまたは設定しないかをユーザが選択しない限り、一次薬物送達アセンブリ内のさらなる用量を設定することはできない。デバイスの使用前にユーザに選択を行わせることにより、ユーザが動作を意識するように効率的に促し、間違える危険を効果的に減らす。
【0059】
さらなる実施形態によれば、薬物送達デバイスは、一次薬物送達アセンブリに連結された一次薬剤カートリッジと、二次薬物送達アセンブリに連結された二次薬剤カートリッジとを含む。
【0060】
一定用量設定投薬機構と、可変用量設定投薬機構とは、分離可能に構成されて、一次薬物送達アセンブリまたは二次薬物送達アセンブリからの単一の使用済みカートリッジを廃棄および交換できるようにしてもよい。二次薬物送達アセンブリを選択スリーブと設定スリーブとの間で分離してもよいことが提案される。これにより、薬物廃液を効率的に最小限にすることができる。
【0061】
薬物送達デバイスは使い捨て注射デバイスであってよい。そのようなデバイスを、薬剤の内容物を使い果たした後に処分または再利用することができる。しかしながら、本発明はまた、前のカートリッジの内容物がすべて投与された後に、空のカートリッジを充填済みカートリッジと交換するように設計された再利用可能なデバイスと共に適用可能である。
【0062】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0063】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0064】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0065】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0066】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0067】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0068】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0069】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0070】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各アンチハウジングの基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0071】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0072】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類によりアンチハウジングのアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0073】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0074】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各アンチハウジングは、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各アンチハウジングにつき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0075】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与のアンチハウジングの固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0076】
「アンチハウジングフラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全アンチハウジングと本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0077】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0078】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0079】
以下で、添付図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態について説明する。