(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
約82 mol%のジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、約8 mol%のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン-PEG(5,000)(DPPE-PEG5,000)、および約10 mol%のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を含有している、請求項5の組成物。
さらにDPPE-PEGの二機能性のペグ化脂質を含有しており、そのDPPE-PEGの二機能性のペグ化脂質が総ペグ化脂質の約1〜20 mol%の範囲の量に存在している、請求項1の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明では、図の参照符号を記し、本発明を好適実施例において説明する。同一の参照符号は同一または同様の構成要素を示している。本特許明細書に記載されている「一実施形態」、「ある実施形態」または類似する表記は、実施形態に関連して解説されている特定の機能、構造、または特徴が本発明の実施形態の一つ以上に含まれていることを意味する。従って、この特許明細書に記された「一実施形態における」、「ある実施形態における」、または類似する表記のすべてが、必ずしも同一の実施形態を指しているわけではない。
【0025】
本発明の機能、構造、または特徴は、何らかの適切な方法で1つ以上の実施形態に組み合わせられている場合がある。以下の説明に記した具体的詳細は、本発明の実施形態を完全に理解してもらう目的で列挙している。ただし、当業者は、本発明が具体的詳細の1つ以上を利用せずに、または、他の方法、構成要素、材料などを利用して実施される可能性があることを認識する。
【0026】
上記の他に、既知の構造、材料、または操作に関しては、本発明の観点を分かりにくくすることを避ける目的で、詳細な解説または説明は行わない。
特定の実施形態においては、出願人のリン脂質組成は実質的に電荷中性のリン脂質を1つ以上含有しており、そこでは出願人のリン脂質組成を含む脂質コーティングされたマイクロバブル形成性のエマルジョンが保管時の安定性を向上させており、さらに、出願人のマイクロバブル形成性のエマルジョンにより生成された脂質コーティングされたマイクロバブルが背部痛などの臨床使用時の生物学的作用を減少させている。特定の実施形態においては、出願人のリン脂質の1つ以上が双性イオン性化合物であり、同化合物は全体としては電荷中性である。
【0027】
特定の実施形態においては、出願人のリン脂質組成は、リン脂質
1であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含んでいる。DPPCは双性イオン性化合物であり、実質的に中性のリン脂質である。
【化1】
【0028】
特定の実施形態においては、出願人のリン脂質組成はポリヒドロキシ頭部基および/または何らかの350ダルトンを超える頭部基を含む2つ目のリン脂質2を含んでいる。
これらの頭部基のM
+ は、Na
+、K
+、Li
+、およびNH4
+を含む頭部基から選択されている。
【化2】
【0029】
特定の実施形態においては、出願人のリン脂質
2は、ナトリウム陽イオンとホスホリル部分に結合したグリセリン頭部基含むリン脂質
3を含んでいる。
【化3】
【0030】
リン脂質
4は、ホスホリル部分に結合したアンモニウム対イオンとポリエチレングリコール(“PEG”)の頭部基を含んでいる。特定の実施形態においては、出願人の組成はペグ化脂質を含んでいる。特定の実施形態においては、PEG基の分子量は約1,000〜10,000ダルトンである。特定の実施形態においては、PEG基の分子量は約2,000〜5,000ダルトンである。特定の実施形態においては、PEG基の分子量は約5,000ダルトンである。
【0031】
特定の実施形態においては、出願人の脂質組成は以下のペグ化脂質を1つ以上含んでいる:1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3 phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-1000] (ammonium salt)、1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3- phosphoethanolamine-N-[ methoxy(polyethylene glycol)-1000] (ammonium salt)、1,2- distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [methoxy(polyethylene glycol)-1000] (ammonium salt)、1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-1000] (ammonium salt)、1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [methoxy(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-dipalmitoyl-sn- glycero-3- phosphoethanolamine-N-[ methoxy(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [methoxy(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-dioleoyl-sn-glycero- 3-phosphoethanolamine-N-[ methoxy(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [methoxy(polyethylene glycol)-3000] (ammonium salt)、1,2-dipalmitoyl-sn- glycero-3-phosphoethanolamine-N-[ methoxy(polyethylene glycol)-3000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [methoxy(polyethylene glycol)-3000] (ammonium salt)、1,2-dioleoyl-sn-glycero- 3-phosphoethanolamine-N-[ methoxy(polyethylene glycol)-3000] (ammonium salt)、1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [methoxy(polyethylene glycol)-5000] (ammonium salt)、1,2-dipalmitoyl-sn- glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-5000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [methoxy(polyethylene glycol)-5000] (ammonium salt) and 1,2-dioleoyl-sn- glycero-3-phosphoethanolamine-N-[ methoxy(polyethylene glycol)-5000] (ammonium salt).
【化4】
【化5】
【0032】
上記のリン脂質
5は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を表している。特にDPPEのようなPEは、本発明における好ましい脂質の1つである。
5〜20モルパーセントの濃度における他の脂質との調合が好ましい。最も好ましいのは10モルパーセントである。
【0033】
特定の実施形態においては、出願人のリン脂質組成は、ホスファチジン酸
6(DPPA)を一切含んでいない。
【化6】
【0034】
当業者が理解している通り、DPPAは2つの酸性プロトンを含んでいる。2つ目の酸性プロトンのpKaは約7.9である。
図1はpHの関数としてDPPAのイオン化を示している。Curve 110はモノアニオン
6の含有率、Curve 120はジアニオン
7の含有率を示している。pHが約4以上となると、モノアニオン
7とジアニオン
8の合計比率は100になる。
【化7】
【化8】
【0035】
pHが約7.9では、DPPAは約50%のモノアニオン
7と約50%のジアニオン
8を含んでいる。pHが約7.0では、DPPAは約85%のモノアニオン
7と約15%のジアニオン
8を含んでいる。
【0036】
ホスファチジン酸DPPAは細胞の機能の中で複数の役割を担っており、他の脂質の生合成の前駆体として利用されたり、生物物理学的特性を介して小胞の分裂・融合を促進したり、シグナリング脂質として機能したりする。モノアシル誘導体であるリゾホスファチジン酸(LPA)は、Gタンパク質共役受容体(LPA
1、LPA
2、およびLPA
3(またはEDG
2、EDG
4、およびEDG
7)および最近同定されたLPA
4、LPA
5、およびLPA
6)の活性化により、強力なシグナリング分子として作用する。DPPAを含むリン脂質組成の先行技術(DEFINITYなど)が古くなりDPPAが加水分解を起こすとモノアシル誘導体の発生が増加し、臨床上好ましくない生物学的作用が増加する。
【0037】
表1は、4-8℃での保管時におけるDPPAを含むリン脂質組成の安定性を示している。各脂質成分の比率は先行技術であるDEFINITYにおける利用率である。38ヵ月間にわたる低温保管時に、DPPCは86.4%のリリースレベルを維持している。DPPE-PEG 5,000は81.6%、DPPAは78.4%のリリースレベルである。
【0038】
ただし、48ヵ月時点では、DPPAは仕様を下回り、DPPCとDPPE-PEGは仕様の範囲内である。出願人は、DPPAと結合した多くのリン脂質を含むホスファチジン酸を含むリン脂質組成を低温保管した際の安定性の制限因子がホスファチジン酸DPPAであることを発見している。さらに、出願人は、DPPAを含まない製法では他の脂質の安定性が高いことを発見しており、DPPAが製剤内で脂質の触媒となり、加水分解を促進していると考えている。
【表1】
【0039】
マイクロバブルの凝集を防止するため、先行技術であるリン脂質をベースとする造影剤にDPPAが加えられた。DPPAのジアニオン構造によって、脂質コーティングされたマイクロバブルの静電反発力が増加するため、マイクロバブルの凝集を低下させると考えられた。
【0040】
意外にも、出願人は多くのリン脂質を使用するがDPPAを使用せずに調製した脂質コーティングされたマイクロバブルが望ましくない凝集を生じないことを発見した。さらに、1個以上のリン脂質を使用するがDPPAを使用せずに調製した脂質コーティングされたマイクロバブルはDEFINITYと同様の粒子サイズである。
【0041】
特定の実施形態においては、出願人のリン脂質組成は、輸注可能な懸濁液を含んでいる。出願人の輸注可能な成分に用いるバイアルは、活性化時にリン脂質がコーティングされた高分子微粒子を生じさせ、この微粒子はフッ素化炭素ガスを封入している。このようなリン脂質がコーティングされた高分子微粒子は、特定の心エコー検査の際に造影剤として使用する診断用薬剤となる。
【0042】
出願人のリン脂質組成は、無色透明な滅菌された非発熱性の高浸透圧液を構成しており、同液体は活性化時にフッ素化炭素ガスを封入したリン脂質皮膜を有する高分子微粒子を含む、均質な不透明の乳白色の輸注入可能な懸濁液を生じる。特定の実施形態において、この懸濁液は静注投与される。
【0043】
図2を参照すると、特定の実施形態において、出願人の発明は1個以上の円錐形または六角形のHII形成性脂質を含んでいる。本発明で有益な脂質210などの円錐形脂質には、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)、カルジオリピンとも称されるジホスファチジルグリセロール(DPG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびジアシルグリセロールが含まれる。ホスファチジン酸(PA)も円錐形脂質の1つであるが、加水分解されやすいこと、生物学的作用を生じる可能性があることから、好ましくない。最も好ましい円錐形のリン脂質はホスファチジルエタノールアミン(PE)である。
円錐形脂質210は頭部基212を含んでおり、この頭部基は頭部基212から外側へ伸びているペンダント基214よりも容積が小さい。
【0044】
円筒形脂質220は頭部基222を含んでおり、この頭部基は頭部基222から外側へ伸びているペンダント基224と類似した容積がある。さらに、出願人は、陽イオン性脂質、すなわち、プラスに帯電した脂質の頭部基が尾部よりも小さい場合、陽イオン性脂質が円錐形脂質として利用されることがあることを発見した。
【0045】
潜在的に有用と思われる円錐形陽イオン性脂質には以下の脂質が含まれるが、これらのみに限定されない:1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane (chloride salt)、1,2- dioleoyl-3-trimethylammonium-propane (メチル硫酸塩)、1,2-dimyristoyl-3- trimethylammonium-propane (塩化物塩)、1,2-dipalmitoyl-3- trimethylammonium-propane (塩化物塩)、1,2-distearoyl-3- trimethylammonium-propane (塩化物塩)、1,2-dioleoyl-3-dimethylammonium- propane、1,2-dimyristoyl-3-dimethylammonium-propane、1,2-dipalmitoyl-3- dimethylammonium-propane、1,2-distearoyl-3-dimethylammonium-propane、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、および1,2-di-O-octadecenyl-3-trimethylammonium propane (塩化物塩)、0,0-di-O-octadecenyl-3-tα-trimethylammonioacetyl- diethanolamine。
【0046】
図3を参照すると、円錐形脂質である3つ目の脂質 - 具体的にはDPPE - で調製されたマイクロバブルの気泡数とマイクロバブル安定性が3つ目の脂質を使用せずに調製したマイクロバブルよりも優れていることを発見している。円錐状脂質は、約5〜20モルパーセントの濃度で調製することが望ましく、できれば8〜15モルパーセント、最も望ましいのは製剤に含まれる総脂質の約10%の濃度で調製することである。
【0047】
図3.DPPAを使用しない製法および円錐形脂質を使用しない製法に示す通りである。例えば、脂質濃度0.75 mg/mlの製法では、マイクロバブルがほとんど生成されない。脂質濃度1.50 mg/mlの製法では、Definity同等品と同様のマイクロバブル粒子数を生成できなかった。
【0048】
特定の実施形態においては、出願人のリン脂質組成は、(R) - 4- hydroxy-N,N,N-trimethyl-10-oxo-7-[(l-oxohexadecyl)oxy]-3,4,9-trioxa-4- phosphapentacosan-l-aminium, 4-oxide, inner salt、すなわち、DPPC、および(R)-α-[6- hydroxy-6-oxido-9-[ (1-oxohexadecyl)oxy]5,7, l l-trioxa-2-aza-6-phosphahexacos- l-yl]-ω-methoxypoly(ox-1,2-ethanediyl), monosodium salt、すなわち、DPPE PEG5000、脂質
5を伴うリン脂質
4、DPPEを含む脂質の外殻内にオクタフルオロプロパンが封入されている。DPPE-PEG5000の分子量は約5750ダルトンである。
【0049】
1 mLの透明な液体に、0.75 mgの脂質混合物(0.046 mgのDPPE、0.400 mgのDPPC、および0.304 mgのMPEG5000-DPPE)、103.5 mgのプロピレングリコール、126.2 mgのグリセリン、2.34 mgのリン酸二水素ナトリウム2水和物、2.16 mgのリン酸水素二ナトリウム七水和物、4.87 mgの塩化ナトリウム、および注射用滅菌水が含まれている。pHは6.2-6.8である。
【0050】
出願人のリン脂質でコーティングされフッ素化炭素ガスを封入している微粒子1 mLからは、活性化後に、最大1.2 X 10
10個の脂質コーティングされた高分子微粒子と約150 microL/mL (1.1 mg/mL) のオクタフルオロプロパンを含む乳白色の懸濁液が生じる。この高分子微粒子のサイズパラメータは以下の通りであり、DEFINITYのサイズパラメータと同一である:
平均粒子サイズ 1.1-3.3μm
10μm以下の粒子 98%
最大直径 20μm
【0051】
下記の表2に、出願人のリン脂質組成と先行技術であるDEFINITY製品の定量的組成の比較を示す。
【0052】
特定の実施形態においては、出願人のリン脂質組成はDPPAを含有せず、DPPAに代えて等モル量のDPPEを含有している点を除いては、出願人のリン脂質組成はDEFINITYと同一である。脂質混合物の他の成分(DPPC、DPPE PEG5000、およびDPPE)は、0.75 mgの脂質総量を維持するために同一比率で増量した。
【表2】
【0053】
4 つ目の脂質については、二機能性のペグ化脂質を採用することがある。
二機能性のペグ化脂質に以下の脂質が含まれるが、これらのみに限定されない:DSPE-PEG(2000) Succinyl 1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [succinyl(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、DSPE-PEG(2000)-PDP 1,2-distearoly-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[PDP(polyethylene glycol)- 2000] (ammonium salt)、DSPE-PEG(2000) Maleimide l,2-distearoly-sn-glycero- 3-phosphoethanolamine-N-[ maleimide(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、DSPE-PEG(2000) Biotin 1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine- N-[maleimide(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、DSPE-PEG(2000) Cyanur 1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[cyanur(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、DSPE-PEG(2000) Amine 1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[amino(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、DPPE-PEG(5,000)-maleimide、1,2-distearoyl- sn-glycero-3-phosphoethanoIamine-N-[dibenzocyclooctynyl (polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、l,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[azido(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3- phosphoethanolamine-N-[succinyl(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[ carboxy(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3- phosphoethanolamine-N-[ maleimide(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine- N-[PDP(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3- phosphoethanolamine-N-[amino(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[biotinyl(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3- phosphoethanolamine-N-[cyanur(polyethylene glycol)-2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[ folate(polyethylene glycol)- 2000] (ammonium salt)、1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N- [folate(polyethylene glycol)-5000] (ammonium salt)、 N-palmitoyl-sphingosine-1-
{succinyl[methoxy(polyethylene glycol)2000]} および N-palmitoyl-sphingosine-1-{succinyl[methoxy(polyethylene glycol)5000]}。
【0054】
この二機能性脂質は、抗体、ペプチド、ビタミン、糖ペプチド、および他の標的リガンドをマイクロバブルへ誘導するために使用されることがある。ポリエチレングリコール鎖の分子量は、この3つ目の脂質内では約1,000〜5,000ダルトンである。.特定の実施形態においては、ポリエチレングリコール鎖の分子量は約2,000〜5,000ダルトンである。
【0055】
本発明に使用されている脂質の脂質鎖の鎖長は約14〜20個の炭素で構成されている。最も好ましい鎖長は炭素数16から約18である。鎖は飽和または不飽和状態の場合があるが、飽和状態のほうが好ましい。また、コレステロールおよびコレステロール誘導体は、中性、または負の電荷を帯びている場合に、負の電荷に並置した位置に約350ダルトン以上の分子量の頭部基を有し、生物学的環境から遮蔽していることを条件として、本発明に使用することがある。
【0056】
様々な実施形態において、マイクロバブルコアガスは、窒素、酸素、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、またはこれらの混合物である。画像診断およびドラッグデリバリーの目的では、理想的なマイクロバブルコアガスは、水溶解度が低く沸点が体温を下回っていることである。これにより、血中循環時間が長く、耐用期間が長く、高いエコー輝度を有するマイクロバブルが得られる。
【0057】
出願人の気体の前駆物質には、フッ素炭素、ペルフルオロカーボン、六フッ化硫黄、ペルフルオロエーテル、およびそれらの組み合わせが含まれる。当業者が認識する通り、六フッ化硫黄、ペルフルオロカーボン、またはペルフルオロエーテルなどの特定のフッ素化化合物は、製造した最初の時点では液状で気体の前駆物質として使用される場合がある。フッ素化化合物が液体であるかどうかは、一般にその化合物の気液相転移温度または沸点により異なる。例えば、ペルフルオロカーボンやペルフルオロペンタンなどは、気液相転移温度(沸点)が29.5℃である。このことは、ペルフルオロペンタンが室温(約25℃)では液体であるが、正常温度がペルフルオロペンタンの遷移温度を上回る37℃の人体内では気体に変化することを意味する。従って、通常の状況下ではペルフルオロペンタンは気体の前駆物質である。当業者が理解している通り、ある物質の沸点が効果的な否かは、その物質が暴露される圧力に関連していることがある。この相関性は理想気体の法則「PV=nRT」により示されている(Pは圧力、Vは容積、nは物質の分子量、Rは気体定数、Tはケルビンで表した温度である)。理想気体の法則は、圧力が増大するに従って、沸点も上昇することを表している。逆に、圧力が低下すると、沸点も低下する。
【0058】
本発明の組成において気体性前駆物質として使用するフッ素化炭素には、部分的または完全にフッ素化された炭素が含まれるが、飽和、不飽和、または環状のペルフルオロカーボンが好ましい。好ましいペルフルオロカーボン類の例としては、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロシクロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロヘキサン、およびこれらの混合物がある。さらに好ましいペルフルオロカーボンは、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロプロパン、またはペルフルオロブタンである。
【0059】
好ましいエーテル類には、部分的または完全にフッ素化されたエーテル類が含まれるが、沸点が約36〜60℃のペルフルオロエーテルが望ましい。フフッ素化エーテル類は、 1個以上の水素原子がフッ素原子と入れ替わったエーテルである。フッ素化エーテル類は、 1個以上の水素原子がフッ素原子と入れ替わったエーテルである。本発明で気体の前駆物質として使用する際に好ましいペルフルオロエーテル類の例としては、ペルフルオロテトラヒドロピラン、ペルフルオロメチルテトラヒドロフラン、ペルフルオロブチルメチルエーテル(例・ペルフルオロ t-ブチルメチルエーテル、ペルフルオロイソブチルメチルエーテル、ペルフルオロ n-ブチルメチルエーテルなど)、ペルフルオロプロピルエチルエーテル(例・ペルフルオロイソプロピルエチルエーテル、ペルフルオロ n-プロピルエチルなど)、ペルフルオロシクロブチルメチルエーテル、ペルフルオロシクロプロピレンエチルエーテル、ペルフルオロシクロプロピレンエーテル、ペルフルオロプロピルメチルエーテル(例・ペルフルオロイソプロピルメチルエーテル、ペルフルオロ n-プロピルメチルエーテルなど)、ペルフルオロジエチルエーテル、ペルフルオロシクロプロピルメチルエーテル、ペルフルオロメチルエチルエーテル、ペルフルオロジメチルエーテルが含まれる。
【0060】
その他の好ましいペルフルオロエーテルアナログは、4および6個の炭素原子を含み、オプションで1個のハロゲンを含み、ハロゲンは臭素であることが好ましい。例えば、Cn Fy Hx Obrの化学構造を有する化合物は、nが1から約6の整数、yが0から約13の整数、xが0から約13の整数の場合は、気体の前駆物質として有用である。
【0061】
本発明において気体の前駆物質として使用する他の好ましいフッ素化化合物は、1,1,1,2,3,3,3-heptafluoropropane および その異性体である1,1,2,2,3,3,3-heptafluoropropane を含んでいる六フッ化硫黄およびフヘプタフルオロプロパンである。さまざまなタイプの化合物の混合物(例えば、ペルフルオロカーボンまたはペルフルオロエーテルなどのフッ素化化合物と別のタイプの気体または気体状の前駆物質との混合物)も、本発明の組成において使用することができる。他の気体および気体の前駆物質については、当業者は十分に分かっている。
【0062】
一般的には、好ましい気体状前駆物質は、相転移して気相となる温度が最高約57℃である。できれば約20℃から52℃、好ましいのは約37℃から50℃、さらに好ましいのは約38℃から48℃、約38℃から約46℃、約38℃から44℃であり、より好ましいのは約38℃から42℃である。最も好ましいのは気体状前駆物質が40℃未満で相転移へ進むことである。当業者には明らかなように、特定の用途に使用する気体状前駆物質の至適相転移温度は、例えば、特定の患者、ターゲットとする組織、体温の上昇を招く身体的ストレス状態(例・疾患、感染症、炎症など)、使用する安定化材料、および/または投与する整理活性剤などに関する考慮事項によって異なる。
【0063】
さらに、当業者は、たとえば化合物の相転移温度が局所的な圧力(たとえば、間質圧、界面圧、またはその領域の他の圧力)などの組織内の局所的条件の影響を受けることを理解するであろう。一例をあげると、組織内の圧力が周囲の圧力よりも高いと、相転移温度が上昇すると考えられる。このような影響の程度は、シャルルの法則やボイルの法則などの理想気体の法則を使用して推定することができる。概算で、液相から気相への相転移相温度が約30〜50℃の化合物は、圧力が25 mm Hg増すごとに相転移温度が約1℃上昇すると予測することができる。例えば、ペルフルオロペンタンの液相から気相への相転移温度(沸点)は約760 mm Hgの標準圧力では29.5℃であるが、795 mm Hgの間質圧では沸点は約30.5℃となる。
【0064】
気体状前駆物質の安定化に使用されている材料は、本書で考察している通り、気体状前駆物質の相転移温度にも影響する可能性がある。一般に、気体状前駆物質の安定化に使用されている材料は、気体状前駆物質の相転移温度を上昇させることが分かっている。特に、比較的剛性の高いポリマー材料、例えば、ポリシアノメタクリレートは、気体状前駆物質の相転移温度に顕著な影響を与える可能性がある。気体状前駆物質および安定化材料を選択する際は、このような影響を考察することが必要である。
【0065】
気体状前駆物質および/または気体は、化合物の物理的特性とは関係なく、できれば安定化材料および/または小胞に混ぜ込むことが望ましい。従って、気体状前駆体物質および/または気体を、例えば、安定化材料に混ぜ込んだ場合、安定化材料が無作為に凝集して乳化、分散、懸濁が生じると考えられる。安定化材料ミセルやリポソームなどの脂質から形成された小胞に混ぜ込んだ場合も同様である。気体または気体状前駆体物質を安定化材料および/または小胞への混ぜ込みは、複数の方法のうちの任意の方法を用いることができる。安定化材料が無作為に凝集して乳化、分散、懸濁が生じると考えられる。
【0066】
ここで言う「安定」または「安定化」とは、小胞が分解に対する実質的な抵抗性を有していることである。すなわち、耐用期間内は小胞構造、混ぜ込まれた気体、気体状前駆体物質、および/または生理活性剤の損失がないことである。一般には、本発明で用いられる小胞には望ましい保管期限があり、多くの場合、正常な環境条件下では、少なくとも約2〜3週間は当初の構造体の容積の約90%以上が残っている。好ましい形態では、小胞は、少なくとも約 1 ヶ月間は安定性を維持するのが望ましい。できれば、約 2 ヶ月間以上、さらにできれば、約 6 ヶ月間または18 ヶ月間、あるいは最大約3年間安定性を維持できると良い。本書で解説した小胞は、気体および/または気体状前駆体物質が充填されたものも含み、正常な環境条件下で受ける条件を下回るまたは上回る温度や圧力などの厳しい条件下でも安定性を示すと考えられる。
【0067】
本発明における有用な気体を表3に示す。
【表3】
【0068】
次の例は、当業者に本発明の使用活用法を示すために記している。ただし、これらの例は本発明の範囲の限界を示すものではない。
【0069】
例1
脂質の混合物は、DPPCとDPPE-MPEG-5000を含有する脂質の混合物をプロピレングリコールに懸濁させることにより調製した。脂質懸濁物は65±5℃に加熱し、脂質をプロピレングリコールに完全に溶解させた。この脂質液を、塩化ナトリウム、リン酸緩衝液、およびグリセロールを含有する水溶液に加え、穏やかに撹拌して完全に混合した。この結果得られた脂質混合物には、1 mlあたり総脂質0.75 mg(DPPC 0.43 mgおよびDPPE-MPEG-5000 0.32 mg)が含まれていた。また、この脂質混合物 1 mlには、注射用滅菌水中にプロピレングリコール103.5 mg、グリセリン 126.2 mg、リン酸二水素ナトリウム一水和物 2.34 mg、リン酸水素二ナトリウム七水和物 2.16 mg、および塩化ナトリウム4.87 mgが含まれていた。pHは6.2-6.8であった。この材料は、容器上部の空間にオクタフルオロプロパン(OFP)ガス(80%超)と空気を充填した密封したバイアルで提供した。
【0070】
この申請書の前述部分およびその後の部分に列挙した製法により生成されたマイクロバブルの濃度とサイズ分布の測定は、次の方法で実施した。バイアルは、VialMix改良型歯科用アマルガム機を使用して活性化して4分間放置したあと、適当な容器を使用して少量のマイクロバブル懸濁液を濾過済み生理食塩水で希釈した。マイクロバブル液の活性化と希釈(l x E
-6)を行ったあと、128 チャンネルでサンプリング可能なNicomp 780(粒子サイズ測定システム)を使用してマイクロバブルのサイズ分布を測定した。本申請書に列挙した資質製法で得られたマイクロバブルの粒子サイズ測定結果をDefinity同等標準品と比較した。同等標準品は、パラグラフ[00058]に記載している中性の製法の通り、緩衝化した共溶媒生理食塩水混合液に溶解した約82 mol%のDPPC、10 mol%のDPPAおよび8 mol%のDPPE-MPEG-5000を含有している。
【0071】
例2 - 異なる製法の準備
表4に示す通り、DPPC : DPPE-MPEG-5Kのモルパーセント値の比率は、0.75 mg/mlのときに91.16:8.84〜94.00:6.00になるよう調整し、92.55:7.45の比率が最も安定していた。安定性は、活性化後のバイアルの不透明度に基づいていた。
【表4】
【0072】
さらに、プロピレングリコールとグリセリンとの容積比も2つの脂質混合物が最も安定する0〜20%に調整した。この容積比はマイクロバブルの安定性に全く影響を及ぼさなかった。
【0073】
コレステロールを含有する脂質混合物を表5および
図6に示す。総脂質が0.75および1.50 mg/mlのときに、コレステロール、DPPC、およびDPPE-MPEG-5000 を含有する脂質混合物は、DEFINITY標準品よりも低濃度のマイクロバブルを生産した(
図4)。コレステロールを含有する4種類の製法のうち、81 mol%のDPPC、11 mol%のDPPE- MPEG-5000、および8%のコレステロールを含有する脂質混合物は、最大濃度のマイクロバブルを生産した。
【0074】
図5に示している通り、 パルミチン酸、DPPC、およびDPPE- MPEG-5000を含有する製法は常に、DPPCとDPPE- MPEG-5000のみを含有する製法よりも高濃度のマイクロバブルを生産した。Definity標準品と比較すると、これらの製法は、健康上のリスクを呈する可能性のある大きなサイズのマイクロバブルをより高濃度で生産した。マイクロバブルの濃度とサイズ分布を最適化するため、2種類の脂質混合物に他の成分を添加した。これらの添加剤は、ステアリン酸、Pluronic F68、および 1,2- Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoglycerol (DSPG)を含有していた。DSPGとステアリン酸を含有する製法は、DPPCとDPPE-MPEG-5000を含有する製法よりもマイクロバブルをより高濃度で生産したが、DPPE を含有する製法を超えることはなかった(例3を参照)。この2種類の脂質混合物にPluronic F68を添加しても、マイクロバブルの濃度が大幅に増えることはなかった。
【表5】
【表6】
【0075】
例3
MVT-100の調製(DPPEを含有する製法)
例1に列挙した方法と類似した方法を使用し、DPPC、DPPE、およびDPPE-MPEG-5000を含有する脂質混合物を調製した。プロピレングリコール中に懸濁させた脂質は、溶解するまで 70±50℃に加熱した。この脂質液を、塩化ナトリウム、リン酸緩衝液、およびグリセロールを含有する水溶液に加え、撹拌して完全に混合した。この結果得られた脂質混合物には、1 mlあたり総脂質0.75 mg(DPPC 0.400 mg DPPE 0.046 mg、およびMPEG-5000-DPPE 0.32 mg)が含まれていた。また、この脂質混合物 1 mlには、注射用滅菌水中にプロピレングリコール103.5 mg、グリセリン 126.2 mg、リン酸二水素ナトリウム一水和物 2.34 mg、リン酸水素二ナトリウム七水和物 2.16 mg、および塩化ナトリウム4.87 mgが含まれていた。pHは6.2-6.8であった。この材料は、容器上部の空間にオクタフルオロプロパン(OFP) ガス(80%超)と空気を充填した密封したバイアルで提供した。
【0076】
図6は、DEFINITYと同等の標準品およびMVT-100で生成したマイクロバブルの粒子サイズの分布を図示している。両方の製法の脂質濃度と成分は全く同じであるが、MVT-100ではDPPAの代わりにDPPEが 使用されている。MVT-100の製法で生成されたマイクロバブルは、生理食塩水に懸濁した場合でも濃度とサイズ分布の安定性を長時間にわたり維持する。
図7、8、9、10を参照。DPPC、DPPE、およびDPPE- MPEG-5000の脂質を異なる混合比で含有する脂質混合物は、プロピレングリコール(PGOH)、グリセロール(GLOH)、およびリン酸ナトリウム緩衝液と塩化ナトリウムを含有する水(H20)の共溶媒を異なる割合で使用することにより作成した。上述の共溶媒のパーセント値は、%を単位とする容積比(v/v)である。例えば、10:10:80 は、プロピレングリコール10%(v/v)、グリセロール10% (v/v)、リン酸ナトリウム緩衝液と塩化ナトリウムを含有する水80% (v/v)である。脂質混合物は表7に列挙している。
【表7】
【0077】
82 mol% DPPC、10 mol% DPPE、および8% DPPE- MPEG-5000を含有する脂質混合物は、リン酸ナトリウム緩衝液とヒスチジングルタミン酸緩衝液を用いて調製した。約5および25mMの濃度のリン酸ナトリウム緩衝液を用いて別の脂質混合物も調製した。クエン酸など、pKaが5.8-7.8の範囲の非経口製剤に使用することが承認されている他の緩衝液も使用することができる。最終製品に充填するガスは空気35%とペルフルオロプロパン65%とすることができる。しかし、これらの実験で我々がペルフルオロプロパンを注入するためのマニホールドを使用して充填したバイアルは、全サンプルの 90%超であった。
【0078】
図7は、異なる濃度の共溶媒と同じ濃度の脂質(DPPC 82 mol%、DPPE 10 mol%、DPPE-MPEG-5000 8 mol%)を含有する製法の比較である。
10:10:80%および15:5:80% (v/v) のPGOH:GLOH:H20を含有する2つの製法は、10:10:80%のPGOH:GLOH:H20を含有するDefinityと同等の標準品と類似した濃度のマイクロバブルを生成した。20:80 % (v/v)のPGOH:H20を含有する製法は、10:10:80%および15:5:80% (v/v)のPGOH:GLOH:H20を含有する脂質混合物およびDefinityと同等の標準品よりも低濃度のマイクロバブルを生成した。
【0079】
図8は、異なる濃度の共溶媒と同じ濃度の脂質(DPPC 77 mol%、DPPE 15 mol%、DPPE-MPEG-5000 8 mol%)を含有する製法の比較である。共溶媒の体積分率の変更は、脂質混合物により生成されたマイクロバブルの濃度に有意な影響を及ぼさなかった。
【0080】
図9は、異なる濃度の共溶媒と同じ濃度の脂質(DPPC 72 mol%、DPPE 20 mol%、DPPE-MPEG-5000 8 mol%)を含有する製法の比較である。DPPEの割合を20 mole%に増大させると、DPPEが10-15 mole%のときよりもマイクロバブルの数が減少する。共溶媒の体積分率の変更は、脂質混合物により生成されたマイクロバブルの濃度に有意な影響を及ぼさなかった。
【0081】
図10は、
図7、8、および9に示した情報の要約である。
【0082】
例4
Definity同等品およびMVT-100脂質混合品のサンプルは、例1および3で説明した方法で調製した。HPLCを使用し、DPPC、DPPE-MPEG-5000、DPPA、DPPE、およびパルミチン酸(リン脂質の加水分解による分解生成物)の濃度を明らかにした。サンプルは4℃および40℃で保管し、31日後に検査した。表8および表9を参照すると、Definity同等品に含まれる3種類の脂質(DPPA、DPPC、およびDPPE-MPEG-5K)は、MVT-100の製法に含まれる3種類の脂質 (DPPC, DPPE, DPPE-MPEG-5000)よりも著しく高度に分解していた。表8の下部の表に示す通り、40℃で31日間にわたり保管した後は、Definity同等品の脂質には90%超の力価を有するものは存在せず、88%超の力価が認められた脂質は1種類のみであった。これと比較すると、表9の下部の表に示す通り、MVT-100に含まれるすべての脂質は95%超の力価を示した。この脂質分解率の差を
図11に描写している。
【表8】
【表9】
【0083】
例5
腎皮質における補体媒介性のマイクロバブルの滞留が、Definityの副作用として生じる背部/脇腹の疼痛の原因であるとの仮説を立てた。 野生型マウスにおいてDefinity同等品とMVT-100を用いた研究を実施した。マウスにDefinity同等品(n = 10)またはMVT-100 (n = 10)のマイクロバブル投与量 5 x 10
5を静注した。血液中のマイクロバブルが消失する十分な時間が得られるよう、マイクロバブル投与から8分後に超音波画像診断を実施した。
図17に示されている通り、超音波で腎皮質に残留するマイクロバブルが検出された。Definity同等品は腎皮質にMVT-100の3倍以上蓄積していた。
図17に図示されているデータは、MVT-100がDefinity同等品よりも腎臓への滞留が少ないことを示しており、MVT-100による脇腹/背部の疼痛の発生率はDefinityよりも少ないことを示唆している。
【0084】
図12に示す通り 、 DefinityはMVT-100 (Mb-neutr)よりはるかに遅れて腎機能を強化する。
【0085】
例6
5匹のブタで心エコー検査を実施した。ブタにDefinityまたはMVT-100のいずれかを無作為に投与した。超音波パラメータは、周波数 = 2 MHz、MI
= 0.18 または0.35であった。各バイアルを生理食塩水の100 mlバッグ内で混合した。各バイアルの容量は1.5-1.6mlであった。すべてのバイアルは3.6〜5.0mL/分の速度で輸注した。ブタの体重は27〜30kgであった。
【0086】
マイクロバブル 1.5ml/100ml = マイクロバブル5 uL/ml x 3.6 mL/分 = 54 uL/分と仮定すると、 30 kgで割った値は1.8 uL/kg/分であった。画像はオペレータが評価し、心腔と心筋のコントラストが強化されているか検討した。
ブタの血圧、心拍数、およびpaO
2をモニターした。MVT-100とDefinityの画像のコントラストを比較した。いずれの薬剤の投与後も、心拍、血圧、またはpaO
2に変化は認められなかった。MVT-100とDefinityの画像のコントラストは同等であった。
【0087】
例7
陽イオン性脂質の使用
脂質混合物には例1に解説した通り調製し、陽イオン性脂質 1,2-Distearoyl-3-trimethylammonium-propane chloride
9 (DSTAP)と特に円錐形の中性脂質 MPEG-5K-DPPEが含まれていた。
【化9】
【0088】
表10は、活性化4分後および活性化64分後の2つの時点における3種類の成分の粒子サイズを要約している。
【表10】
【0089】
図12は、表10に列挙されている3つの製法および62 mol% DPPC、10 mol% DPPE、20 mol% DSTAP、および8 mol% DPPE-MPEG-5Kを含有する製法のマイクロバブル総数を図で示している。表10に示されている通り、82 mol%のDPPC、10 mol%のDSTAP、8 mol%のMPEG-5K-DPPEを含む製法では、活性化4分後および活性化64分後のマイクロバブル数が多かった。
【0090】
実験例8
上述の例1に解説された出願人のマイクロバブル組成を数千名の患者に投与する。DEFINITYの臨床使用と比較し、例2に示す出願人のマイクロバブル組成を使用すると背部痛の発生は少ない。
【0091】
実験例9
安定性試験を室温で実施する。HPLCを使用し、脂質の分解をモニターする。サンプルをVialMixで定期的に撹拌してマイクロバブルを生成する。
マイクロバブルの数とサイズを粒子サイズ測定システムで検証する。出願人のマイクロバブル組成の室温での保管期間がDEFINITYよりも長く、例4の解説が確認された。
【0092】
実験例10
DPPC、DPPE-PEG (5000)、およびDPPEを例3と同じ比率で丸底フラスコ内でクロロホルムに溶解し、撹拌し、溶解するまで加熱する。熱と減圧によりクロロホルムが蒸発し、フィルム状の脂質が残る。その脂質をMacrogol 4000を含有する水の混合物中で再水和する。脂質が均一に懸濁するまで材料を撹拌する。懸濁液をバイアルに充填し、凍結乾燥させる。バイアルには脂質とPEGの乾燥物が含まれ、容器上部の空間にはペルフルオロブタン(PFB)ガスと窒素(65%PFB/35% 窒素)が充填されている。バイアルを密閉し、38℃で4時間加熱する。画像診断に使用するため、生理食塩水をバイアル中に注入し、手で撹拌してマイクロバブルを調製する。
【0093】
実験例11
DPPE-PEG(5000)の10分の1をDPPE-PEG(5000)-Folateと置き換えて、例2を再度実施する。その結果得られる脂質懸濁液には1.75 mgの脂質混合物(0.046 mgのDPPE、0.400 mgのDPPC、および0.274 mgのMPEG5000DPPE)と0.30 mgのDPPE (PEG5000) Folateが含まれる。その結果、この脂質懸濁液は癌細胞など葉酸受容体を過剰発現する細胞をターゲティングするためのマイクロバブルの作成に使用できるようになる。ホスファチジン酸を含有するマイクロバブルと比較し、DPPE を含む上記の製法を使用して調製されたマイクロバブルはターゲティング機能と細胞内取込が向上している。
【0094】
実験例12
例2で使用した脂質を使用し、ペルフルオロペンタンを乳化させる。ペルフルオロペンタンの最終濃度は2% w/volで、脂質は3 mg/mlである。冷却した材料をバイアルに移し、容器上部の空間に残った空気は陰圧をかけて除去する。バイアルを密閉する。マイクロバブルを生成するため、例2の解説に従って密閉したバイアルをVialMixで攪拌する。
【0095】
実験例13
ペルフルオロペンタンのエマルジョンは、DPPC/DPPE- PEG(5,000)/DPPEを使用し、4℃の高圧ホモジナイズ法で脂質をDDFPと均質化することにより調製する。この結果得られたエマルジョンは、2% w/volのDDFPおよび0.3% w/volの脂質を含有していた。同様のエマルジョンをDPPEを使用せずにDPPC/DPPE-PEGを用いて調製する。サンプルは室温の密閉バイアル中で保管する。粒子サイズ測定では、DPPEを含有する製法の粒子数の増加および粒子サイズの良好な維持が示されている。
【0096】
本発明の好適実施例は詳細にわたり描写されているが、当業者は本書に解説した本発明の範囲から逸脱することなく好適実施例を変更および適合させても良い。
以下に本発明の実施形態を列挙する。
条項1.
オクタフルオロプロパン、
ホスファチジルコリン、
ホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール(PEG)、および
ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)
を含む、フッ素化炭素のエマルジョンの組成物であって、
前記組成物はジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)を含まず、
前記組成物のpHは6.2-6.8であり、
前記ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)の濃度は前記組成物の約5〜20 mol%である、組成物。
条項2.
前記オクタフルオロプロパンは、リン脂質でコーティングされ、1.1μm-3.3μmの平均粒子サイズを有し、10μm以下の粒子が98%で、最大直径が20μmの微粒子内に封入されている、条項1の組成物。
条項3.
前記ホスファチジルコリン、前記ホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール(PEG)、および前記ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)は約0.75 mg/ml〜約1.5 mg/mlの凝集濃度を形成する、条項2の組成物。
条項4.
約75〜約85 mol% のホスファチジルコリン、
約5〜15 mol%のホスファチジルエタノールアミン-PEG、
および約5〜約15 mol% のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を含有している、条項2の組成物。
条項5.
約82 mol%のホスファチジルコリン、
約8 mol%のホスファチジルエタノールアミン-PEG、および約10 mol%のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を含有している、条項4の組成物。
条項6.
約82 mol%のジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、約8 mol%のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン-PEG(5,000)(DPPE-PEG5,000)、および約10 mol%のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を含有している、条項5の組成物。
条項7.
前記ホスファチジルコリン、前記ホスファチジルエタノールアミン-PEG、および前記ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)が約0.75 mg/ml〜約5 mg/mlの凝集濃度を形成する、条項1の組成物。
条項8.
前記ホスファチジルコリン、前記ホスファチジルエタノールアミン-PEG、および前記ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)が約0.75 mg/ml〜約1.5 mg/mlの凝集濃度を形成する、条項7の組成物。
条項9.
さらにDPPE-PEGの二機能性のペグ化脂質を含有しており、そのDPPE-PEGの二機能性のペグ化脂質が総ペグ化脂質の約1〜20 mol%の範囲の量に存在している、条項1の組成物。
条項10.
さらに水を含有し、前記組成物は水性懸濁液を含有している、条項1の組成物。
条項11.
さらにプロピレングリコール、グリセロール、および生理食塩水を含有する、条項10の組成物。
条項12.
さらに緩衝液を含有する、条項11の組成物。
条項13.
オクタフルオロプロパン、
ホスファチジルコリン、
ホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール(PEG)、および
ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)
を含む、組成物であって、
前記組成物はジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)を含まず、
前記組成物のpHは6.2-6.8であり、
前記ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)の濃度は前記組成物の約5〜20 mol%である、組成物を凍結乾燥する方法。
条項14.
前記組成物は約75〜約85 mol% のホスファチジルコリン、
約5〜15 mol%のホスファチジルエタノールアミン-PEG、
および約5〜約15 mol% のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を含有している、条項13の方法。
条項15.
前記組成物は約82 mol%のホスファチジルコリン、
約8 mol%のホスファチジルエタノールアミン-PEG、および約10 mol%のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を含有している、条項14の方法。
条項16.
オクタフルオロプロパン、
ホスファチジルコリン、
ホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール(PEG)、および
ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)
を含む、組成物であって、
前記組成物はジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)を含まず、
前記組成物のpHは6.2-6.8であり、
前記ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)の濃度は前記組成物の約5〜20 mol%である、組成物の凍結乾燥された組成物。