(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594916
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20191010BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20191010BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20191010BHJP
【FI】
G01R15/20 AZHV
H02M1/00 B
H02M7/48 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-3019(P2017-3019)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2018-112472(P2018-112472A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】平尾 高志
(72)【発明者】
【氏名】難波 明博
【審査官】
山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/132785(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/192625(WO,A1)
【文献】
特開2015−132534(JP,A)
【文献】
特開2009−271044(JP,A)
【文献】
特開2010−048809(JP,A)
【文献】
特開2008−039734(JP,A)
【文献】
国際公開第02/066997(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/075623(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0033557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
H02M 1/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体と、
前記第1導体に接続される第2導体と、
前記第1導体に接続される第3導体と、
第1磁界検出素子と、を備え、
前記第1導体に流れる電流が、前記第2導体と前記第3導体に分流され、
前記第3導体は、前記第2導体と対向する対向部を有し、
前記第3導体は、前記対向部が前記第2導体に流れる電流と前記第3導体に流れる電流が逆向きになるように形成され、
前記第1磁界検出素子は、前記第3導体の対向部と前記第2導体の間の空間に配置される電流検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流検出装置において、
前記第1磁界検出素子と前記第3導体を封止する封止材を備え、
前記第3導体の一部は、前記封止材から突出されかつ当該突出した部分において第1導体と接続される電流検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電流検出装置において、
前記第1導体に接続される第4導体と、前記第1導体に接続される第5導体と、第2磁界検出素子と、を備え、
前記第1導体に流れる電流が、前記第4導体と前記第5導体に分流され、
前記第4導体は、前記第5導体と対向する対向部を有し、
前記第5導体は、前記対向部が前記第4導体に流れる電流と前記第5導体に流れる電流が逆向きになるように形成され、
前記第2磁界検出素子は、前記第5導体の対向部と前記第4導体の間の空間に配置され、
前記第1磁界検出素子と、前記第2磁界検出素子の磁界検出面が互いに対向する電流検出装置。
【請求項4】
パワー半導体素子によって電力を変換する電力変換装置において、
請求項1乃至3に記載のいずれかの電流検出装置を電流量の検出に用いられる電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記電流検出装置は他相の電流検出装置に対して、前記第1導体を流れる電流が概平行となるように配置される電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置に関し、特に車両駆動用モータに交流電流を供給する電力変換装置に用いられる電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置等の導体に流れる電流を検出する電流検出装置には、小型化や電流検出精度向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、並列配置された複数の扁平形状の導体(バスバー)の延在方向を設定することで、電流検出の高精度化を可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−175474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような電流検出装置について、本発明者らが電流検出のさらなる高精度化を検討したところ、以下に説明するような課題が見出された。
【0006】
特許文献1では、電力変換装置等の扁平形状の導体に交流電流が流れる場合、交流電流の周波数が高くなると、表皮効果のために、導体の中央部の電流密度が減少し、端部の電流密度が増大する。この結果、交流電流の流れによって生じる磁界に基づいて、交流電流の電流量を検出する場合、電流量の検出精度が低下する恐れがある。
【0007】
したがって、電流検出装置において、高周波電流の電流検出を高精度化する技術を提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の電流検出装置は、同一の導体から分流した電流が流れる2つ以上の導体を備え、分流した電流が流れる導体同士が対向する部分を有し、導体同士の対向部では電流が逆向きに流れ、導体同士の対向部の間に磁界検出素子を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電流検出が高精度な電流検出装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ハイブリッド方式の自動車のシステム構成図を示したものである。
【
図3】実施例1に係る電流検出装置101ないし103の外観斜視図である。
【
図4】実施例1に係る電流検出装置101の分解斜視図である。
【
図5】磁界検出素子115で検出される磁界について説明するための
図3におけるA−A’部の断面図である。
【
図6】対向する導体がない場合の導体内の高周波電流密度分布の計算結果を示す図である。
【
図7】対向する導体がある場合の導体112と導体113の高周波電流密度分布の計算結果を示したものである。
【
図8】実施例2に係る電流検出装置101ないし103の外観斜視図である。
【
図9】
図9は、電流検出装置101ないし103の分解斜視図をそれぞれ示したものである。
【
図10】実施例3に係る電流検出装置401の外観斜視図である。
【
図11】実施例3に係る電流検出装置401の分解斜視図である。
【
図12】
図10におけるB−B’部の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による電流検出装置においては、同一の導体から分流した電流が流れる2つ以上の導体を備え、分流した電流が流れる導体同士が対向する部分を有し、導体同士の対向部では電流が逆向きに流れ、導体同士の対向部の間に磁界検出素子を設ける。
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0013】
本実施形態に係る電流検出装置は、各種の電力変換装置の導体を流れる電流の検出に適用可能であるが、代表例としてハイブリッド自動車に適用した場合について説明する。
【0014】
図1は、ハイブリッド方式の自動車のシステム構成図を示したものである。内燃機関EGNおよびモータジェネレータMGは自動車の走行用トルクを発生する動力源である。また、モータジェネレータMGは回転トルクを発生するだけでなく、モータジェネレータMGに加えられる機械エネルギ(回転力)を電力に変換する機能を有する。モータジェネレータMGは、例えば同期電動/発電機あるいは誘導電動/発電機であり、自動車の運転方法により電動機としても発電機としても動作する。
【0015】
内燃機関EGNの出力側は動力分配機構TSMを介してモータジェネレータMGに伝達され、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいはモータジェネレータMGが発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪WHに伝達される。
【0016】
一方、回生制動の運転時には、車輪WHから回転トルクがモータジェネレータMGに伝達され、伝達された回転トルクに基づいてモータジェネレータMGは交流電力を発生する。発生した交流電力は電力変換装置251により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ252を充電し、充電された電力は再び走行エネルギとして使用される。
【0017】
電力変換装置251は、インバータ回路210と、平滑コンデンサ255と、を備える。インバータ回路210は平滑コンデンサ255を介してバッテリ252と電気的に接続されており、バッテリ252とインバータ回路210との相互において電力の授受が行われる。平滑コンデンサ255は、インバータ回路210に供給される直流電力を平滑化する。直流コネクタ262は、電力変換装置251に設けられ、かつバッテリ252と平滑コンデンサ255を電気的に接続する。交流コネクタ263は、電力変換装置251に設けられ、かつインバータ回路210とモータジェネレータMGを電気的に接続する。
【0018】
電力変換装置251のマイコン回路203は、通信用のコネクタ261を介して上位の制御装置から指令を受けたり、上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりする。マイコン回路203は、入力される指令に基づいて、モータジェネレータMGの制御量を演算し、演算結果に基づいて制御信号を発生してゲート駆動回路204へ制御信号を供給する。この制御信号に基づいてゲート駆動回路204がインバータ回路210を制御するための駆動信号を発生する。
【0019】
モータジェネレータMGを電動機として動作させる場合には、インバータ回路210はバッテリ252から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、モータジェネレータMGに供給する。モータジェネレータMGとインバータ回路210からなる構成は電動/発電ユニットとして動作する。
【0020】
図2は、電力変換装置251の回路構成図である。以下の説明ではパワー半導体素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用した例で説明する。
【0021】
電力変換装置251は、IGBT201及びダイオード202を備えてなる上アームおよび下アームを、交流電力のU相、V相、W相からなる3相に対応して備えている。これらの3相の上下アームはインバータ回路210を構成する。
【0022】
上アームのIGBT201のコレクタ電極は平滑コンデンサ255の正極側のコンデンサ端子に、下アームのIGBT101のエミッタ電極は平滑コンデンサ255の負極側のコンデンサ端子にそれぞれ電気的に接続されている。
【0023】
IGBT201はコレクタ電極、エミッタ電極、ゲート電極を備えている。また、ダイオード202がコレクタ電極とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。なお、パワー半導体素子として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いてもよく、この場合、ダイオード202は不要である。パワー半導体素子の母体となる材料は、シリコンが広く用いられているが、SiCやGaNでもよい。
【0024】
ゲート駆動回路204は、IGBT201のエミッタ電極と、ゲート電極との間に設けられ、IGBT201をオンオフ制御する。マイコン回路203は、ゲート駆動回路204へ制御信号を供給する。
【0025】
電流検出装置101ないし103は、U相、V相、W相それぞれの交流配線の電流量を検出し、マイコン回路203にフィードバックする。
【0026】
上述のように、マイコン回路203は電流検出装置101、102、103からのフィードバック信号を受け、インバータ回路210の上アームあるいは下アームを構成するIGBT201を制御する制御信号を発生し、ゲート駆動回路204に供給する。
【0027】
ゲート駆動回路204は制御信号に基づき各相の上アームあるいは下アームを構成するIGBT201を駆動するための駆動信号を各相のIGBT201に供給する。IGBT201はゲート駆動回路204からの駆動信号に基づき、オンあるいはオフ動作を行い、バッテリ252から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、この変換された電力はモータジェネレータMGに供給される。
【実施例1】
【0028】
図3は、実施例1に係る電流検出装置101の外観斜視図である。
図4は、実施例1に係る電流検出装置101の分解斜視図である。電流検出装置102及び103も、
図3及び
図4で示される電流検出装置101と同様の構成である。
【0029】
導体111には導体112と導体113が接続される。さらに、導体112と導体113は導体114に接続される。配線基板116は、磁界検出素子115の電源線と信号線が配線されている。
【0030】
磁界検出素子115及び配線基板116は、導体112と導体113が互いに対向するように配置される間の空間に設けられる。
【0031】
導体111を流れる電流は、導体112と導体113に分流され、導体114で再び合流する。なお、説明の便宜上、導体111ないし114はそれぞれ別の番号を付しているが、例えば、導体111と導体112と導体114を一体の導体としてもよい。導体同士の接合は、はんだ接合や溶接、ネジ止めを用いることができる。
【0032】
また、組立性を向上するために、導体113、磁界検出素子115、配線基板116をモジュール化してもよい。例えば、磁界検出素子115と導体113を封止する封止材を設け、導体113の一部が封止材から突出されかつこの突出した部分において導体111と接続される
図5は、磁界検出素子115で検出される磁界について説明するための
図3におけるA−A’部の断面図である。
【0033】
導体112は手前から奥に向かって電流が流れ、導体113は奥から手前に向かって電流が流れる。導体112を流れる電流は、時計回りの方向の磁界151を発生させる。導体113を流れる電流は、反時計回りの方向の磁界152を発生させる。
【0034】
その結果、磁界検出素子115では磁界151と磁界152の合計値が左から右の方向(−Y方向)に検出される。導体112と導体113を流れる電流は、導体111から分流した電流なので、磁界151と磁界152の合計値は、導体111を流れる電流量に比例する。よって、磁界検出素子115によって導体111を流れる電流量を検出することが可能となる。
【0035】
続いて、導体を流れる高周波電流の表皮効果の抑制について、計算結果を用いて説明する。
【0036】
図6は、対向する導体がない場合の導体112の高周波電流密度分布の計算結果を示したものである。導体112を流れる電流密度分布は、表皮効果のために、中央部の電流密度が減少し、端部の電流密度が増大している。その結果、磁界検出素子115が検出する磁界が減少する。
【0037】
図7は、対向する導体がある場合の導体112と導体113の高周波電流密度分布の計算結果を示したものである。導体112と導体113の電流はそれぞれ反対方向に流れるため、導体112と導体113の電流密度分布において表皮効果の影響は抑制されている。その結果、磁界検出素子115が検出する磁界の減少を抑制し、電流検出の高精度化が可能となる。
【0038】
このように、本実施例によれば、高周波電流の電流検出を高精度化できる。
【実施例2】
【0039】
図8は、実施例2に係る電流検出装置101ないし103の外観斜視図である。
図9は、電流検出装置101ないし103の分解斜視図をそれぞれ示したものである。
【0040】
本実施例においては、実施例1で説明した電流検出装置101と同様の電流検出装置102及び電流検出装置103を並列に配置することで、複数の配線における電流を検出することが可能となる。
【0041】
例えば、
図2に示した電力変換装置251において、U相、V相、W相それぞれの交流配線の電流を検出できる。さらに、磁界検出素子115と磁界検出素子125と磁界検出素子135の検出する磁界が他相電流のつくる磁界に対して平行になるため、磁界検出素子115と磁界検出素子125と磁界検出素子135の検出値は他相電流の影響を受けにくくなる。
【0042】
本実施例によれば、本発明の実施例1と同様の効果に加えて、他相の電流の影響を抑制することで、電流検出のさらなる高精度化が可能となる。
【実施例3】
【0043】
図10は、実施例3に係る電流検出装置401の外観斜視図である。
図11は、実施例3に係る電流検出装置401の分解斜視図である。
【0044】
導体111には導体112と導体113と導体142と導体143が接続されている。さらに、導体112と導体113と導体142と導体143は、導体114に接続される。
【0045】
導体112と導体113が互いに対向するように配置される間の空間に磁界検出素子115が設けられる。さらに導体142と導体143が互いに対向するように配置される間の空間に磁界検出素子145が設けられる。また、導体112と導体113が互いに対向するように配置される間と導体142と導体143が互いに対向するように配置される間を貫通するように、磁界検出素子115と磁界検出素子145の電源線と信号線が配線されている配線基板116が設けられる。
【0046】
導体111を流れる電流は、導体112と導体113と導体142と導体143に分流され、導体114で再び合流する。
図10におけるA−A’部の断面図は
図5と同様である。
【0047】
図12は、
図3におけるB−B’部の断面図を示したものである。磁界検出素子145では磁界161と磁界162の合計値が右から左の方向(+Y方向)に検出される。よって、磁界検出素子115の−Y方向の磁界検出値と、磁界検出素子145の+Y方向の磁界検出値との合計値は、導体111を流れる電流値に比例する。よって、磁界検出素子115、145によって導体111を流れる電流量を検出することが可能となる。さらに、磁界検出素子115と145とはそれぞれ反対方向の磁界を検出するため、一方向(−Y方向または+Y方向)の外乱磁界は、磁界検出素子115と145の磁界検出値を合計することで相殺される。その結果、外乱を抑制することが可能となる。
【0048】
本実施例によれば、本発明の実施例1と同様の効果に加えて、磁界の外乱を抑制することで、電流検出のさらなる高精度化が可能となる。
【0049】
以上説明したように、本発明は、電流検出装置に関し、特に、ハイブリッド自動車や電気自動車に用いるインバータシステムに適用可能である。また、鉄道車両の駆動システムや一般産業のモータドライブにも使用可能である。
【0050】
なお、本発明の技術的範囲は上記の各実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々の変形例が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
101…電流検出装置、102…電流検出装置、103…電流検出装置、111…導体、112…導体、113…導体、114…導体、115…磁界検出素子、配線基板116、121…導体、122…導体、123…導体、124…導体、131…導体、132…導体、133…導体、134…導体、142…導体、143…導体、125…磁界検出素子、135…磁界検出素子、145…磁界検出素子、151…磁界、152…磁界、161…磁界、162…磁界、201…IGBT、202…ダイオード、203…マイコン回路、204…ゲート駆動回路、210…インバータ回路、251…電力変換装置、252…バッテリ、255…平滑コンデンサ、261…コネクタ、262…直流コネクタ、263…交流コネクタ、DEF…デファレンシャルギア、EGN…内燃機関、MG…モータジェネレータ、TSM…動力分配機構、WH…車輪