【実施例1】
【0010】
図1は本実施例の冷蔵庫1の正面図、
図2は冷蔵庫1のX−X断面図、
図3は制御基板7及び制御基板7の取付構造の分解斜視図である。
冷蔵庫1は食品を保管するための貯蔵室を複数備えており、本実施例では冷蔵室2、野菜室3および冷凍室4を備えている。冷蔵庫1の背面内部には、例えば三相交流電力を印加可能な電動機によって駆動される圧縮機5、冷蔵庫1内の冷気を循環させるファン用電動機6、圧縮機5の電動機やファン用電動機6を駆動及び制御する制御基板7、各貯蔵室の温度を検出する室内温度センサ、及び冷凍サイクル要素などから構成されている。
【0011】
冷凍サイクル要素は周知の通り圧縮機5、凝縮器、膨張弁、蒸発器、及び冷媒配管等から構成されており、これらの構成部品は主に冷蔵庫1の背面側、及び側面側に配置されている。
【0012】
[制御基板収納部10]
冷蔵庫1は、背面側に金属材料で形成された背面板11を有する。背面板11には、制御基板収納部10が設けられている。制御基板収納部10は、背面板11を部分的に正面側に向けて凹ませた領域として形成することができ、後述の制御基板7の面方向と略平行な平面部101と、平面部101に略垂直な側周部102とを有する。平面部101は例えば四角形状であり、側周部102は例えば平面部101よりも小さい寸法の環状にできる。後述するリアクタ8により生じる漏れ磁束の周波数近傍において、平面部101よりも側周部102の方が共振しにくい形状に形成されている。この漏れ磁束の周波数は、リアクタ8に流れる交流電流の周波数領域と同一である。
【0013】
制御基板収納部10を設けた領域には、冷蔵庫1の正面側から順に、制御基板収納部10の平面部101、フレーム9、制御基板7及びリアクタ8、及び制御基板カバー12が取付けられている。このように、リアクタ8の一方側には制御基板収納部10が、他方側には制御基板カバー12が位置している。制御基板収納部10と制御基板カバー12は、金属材料、例えば板金材料にて成形されており、ともに制御基板7に略平行に設けられている。
【0014】
フレーム9は樹脂材料で成形することができ、制御基板7が制御基板配置部91に、リアクタ8がリアクタ配置部92に取り付けられている。リアクタ8は、リアクタ配置部92内であって、制御基板7の面内に一部が重なるように、すなわち制御基板7の横に配されている。また、リアクタ8は、フレーム9が有する爪で係止されている。後述するように、本実施例ではリアクタ8の漏れ磁束が多い方向を側周部102側に設定しているため、リアクタ8から平面部101までの距離より、リアクタ8から側周部102までの距離の方が長いことが好ましい。
【0015】
リアクタ8から制御基板カバー12までの距離と、リアクタ8から平面部101までの距離とは、フレーム9の厚みを調整することで好適に設定することができる。平面部101と制御基板カバー12とを比較すると、平面部101が発砲断熱材や真空断熱材により支持されている一方、制御基板カバー12は比較的自由な状態に配されているため、制御基板カバー12の方が振動しやすい。このことから、本実施例では、リアクタ8から制御基板カバー12までの距離の方が、リアクタ8から平面部101までの距離より長くなるようにしている。これにより、制御基板カバー12への漏れ磁束量を比較的低減することができるので、振動を抑制できる。
【0016】
[電気的システム]
図4は本実施例の制御基板7に設けられた電気的システムを含むブロック図である。
【0017】
制御基板7には、コンバータ回路16、インバータ回路18、制御電源回路19、庫内負荷制御回路22、及び圧縮機制御回路23が設けられている。
【0018】
(コンバータ回路16)
コンバータ回路16は、商用電源13の交流電力を直流電力に変換することができる。コンバータ回路16は、2つのダイオード141,142と、2つのダイオード141,142の間に直列に接続された2つの平滑用電解コンデンサ151,152とを有する。
【0019】
ダイオード141のアノード側には、制御基板7外に配されているリアクタ8の一端が電気的に接続されており、リアクタ8の他端には商用電源13の一端が電気的に接続されている。また、ダイオード141のカソード側には、平滑用電解コンデンサ151の一端が電気的に接続している。
【0020】
平滑用電解コンデンサ151の他端は、商用電源13の他端及び平滑用電解コンデンサ152の一端が電気的に接続している。
【0021】
ダイオード142のアノード側には、平滑用電解コンデンサ152の他端が電気的に接続しており、カソード側にはダイオード141のカソード側及びリアクタ8の一端が電気的に接続している。
【0022】
ダイオード141のカソード側及びアノード側それぞれは、インバータ回路18及び制御電源回路19の入力端子に電気的に接続している。商用電源13は、例えば100V/50Hzの交流波形である。
【0023】
このように構成されたコンバータ回路16によって、商用電源13の交流電力は、高圧直流電圧17に変換される。
【0024】
商用電源13の交流電力を好適に直流化した高圧直流電圧17を形成するために平滑用電解コンデンサ15が用いられている。平滑用電解コンデンサ15へは、平滑用電解コンデンサ151,152それぞれの電圧よりも商用電源13からの印加電圧が大きい期間だけ、平滑用電解コンデンサ15の放電エネルギを補う形で電流が流れるため、高調波を含んだ電流波形となる。そのため高調波成分を抑制させるべく、リアクタ8が平滑用電解コンデンサ15(コンバータ回路16)の前段に配置されている。リアクタ8の取付構造は後述する。
【0025】
(インバータ回路18)
インバータ回路18は、圧縮機5を可変速駆動させる制御信号を発することができる。圧縮機5の電動機を可変速駆動させるためには、回転数に応じた交流電圧波形を印加する必要がある。
【0026】
コンバータ回路16によって成形された高圧直流電圧17は、インバータ回路18によって任意の交流波形に変換される。どのような交流波形を成形するかは、圧縮機制御回路23によって指令される。
【0027】
このように、高圧直流電圧17は、たとえばIGBTなどの半導体パワー素子を6つ用いたインバータ回路18(三相交流生成回路)によって任意の交流波形に変換され、圧縮機5に出力される。
【0028】
(制御電源回路19)
高圧直流電圧17は、インバータ回路18に供給されるだけでなく制御電源回路19に供給される。制御電源回路19は、高圧直流電圧17を降圧して、例えば12Vや5Vの低圧直流電圧20を生成する。低圧直流電圧20はファン用電動機6の駆動、各種温度センサ21、温度センサ21の情報が入力されて各部を制御する庫内負荷制御回路22の電源電圧などに用いられる。
【0029】
(リアクタ8)
図5は本実施例の(a)リアクタ8の斜視図、(b)リアクタ8内部のコア80の斜視図である。
【0030】
リアクタ8は、コア80、コア80に巻回された巻線84及び巻線84を収納するボビン83を有する。コア80は、E字状のEコア81と、I字状のIコア82とを有している。Iコア82は、Eコア81の「E」字状の右側(「≡」部分)に隙間24を介して位置しており、「E」字状の左側部分である棒状部分(「|」部分)の延在方向に略平行な方向を向いている。巻線84は、両端それぞれがリアクタ8外側部分に延出しており、端子によって制御基板7のうち巻線84に接続すべき部分に取り付けることができる。
【0031】
Eコア81及びIコア82の間には、磁気飽和によるインダクタンスの低下を避けるため、隙間24が形成されている。隙間24は、空気やシートで形成することができる。シートとしては絶縁物を採用できる。
【0032】
隙間24により磁気飽和を避けやすくなるが、一方で隙間24から磁束が漏れやすくもなる。
制御基板カバー12や、制御基板収納部10に漏れ磁束が干渉すると、金属材料である制御基板カバー12や制御基板収納部10(特に平面部101)を振動させ、異音発生の要因となる。本実施例のリアクタ8による漏れ磁束には異方性があり、漏れ磁束が多い方向(多漏方向)と少ない方向(少漏方向)とが存在する。すなわち、(多漏方向における漏れ磁束)>(少漏方向における漏れ磁束)の関係が成り立つ。
【0033】
(リアクタ8と、制御基板カバー12及び平面部101との位置関係)
本実施例では、制御基板7から独立させてリアクタ8を配置し、さらに巻線84の端子を以て制御基板7に接続させているため、リアクタ8の向きを比較的自由に調整することができる。
【0034】
図6は比較例であり、(a)リアクタ8の多漏方向が制御基板カバー12及び平面部101の垂線に略平行になるように配した状態を示す図、(b)この状態の各方向に対する漏れ磁束量をプロットしたレーダチャートである。
図7は本実施例であり、(a)リアクタ8の多漏方向が制御基板カバー12及び平面部101に略平行になるように配した状態を示す図、(b)この状態の各方向に対する漏れ磁束量をプロットしたレーダチャートである。
【0035】
比較例及び本実施例で用いているコア形状では、Eコア81の「E」字状の左右側に向かう方向(
図6(b)の1方向及び5方向、
図7(b)の紙面垂直方向)の漏れ磁束量が、「E」字状の上下方向(
図6(b)の3方向及び7方向、
図7(b)の3方向及び7方向)及び紙面垂直方向に向かう方向(
図6の紙面垂直方向、
図7(b)の1方向及び5方向)の漏れ磁束量より多い。
【0036】
よって、比較例のようにリアクタ8を配置した場合は、多漏方向の磁束が制御基板カバー12や平面部101に略垂直に入射する。すなわち、制御基板カバー12や平面部101の垂線の方向に発生する漏れ磁束量は多く、板金部材に対して干渉しやすい配置であることが分かる。
【0037】
一方で、本実施例のようにリアクタ8を配置した場合は、少漏方向の磁束が制御基板カバー12や平面部101に略垂直に入射する。すなわち、制御基板カバー12や平面部101の垂線の方向に発生する漏れ磁束量は少なく、板金部材に対して干渉しにくい配置であることが分かる。
【0038】
なお、多漏方向及び少漏方向は、必ずしも互いに略直交するとは限らず、コアをどのように形成するかなどに依存するが、例えば、少漏方向を、漏れ磁束量が最大となる方向における漏れ磁束量の0.7倍以下となる方向と考えてもよい。
【0039】
このように、本実施例によれば、
図7のようにリアクタ8が発生する漏れ磁束の分布を把握し、その漏れ磁束が周囲の板金部品に干渉しづらい向きにてリアクタを配置することにより、リアクタの漏れ磁束による異音の発生を低減することができる。