特許第6594955号(P6594955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594955
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】シントン形成
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20191010BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20191010BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20191010BHJP
【FI】
   C12N15/10 ZZNA
   C12P19/34 A
   !C12N9/12
【請求項の数】26
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2017-511272(P2017-511272)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公表番号】特表2017-525376(P2017-525376A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】US2015047161
(87)【国際公開番号】WO2016033315
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年8月16日
(31)【優先権主張番号】62/189,599
(32)【優先日】2015年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/042,527
(32)【優先日】2014年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/193,168
(32)【優先日】2015年7月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591021970
【氏名又は名称】ニユー・イングランド・バイオレイブス・インコーポレイテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ペイ−チュン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ルオ
(72)【発明者】
【氏名】エバンス,トーマス・シー,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,セオドア・ビー
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,アンドリュー
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−233096(JP,A)
【文献】 特表2011−512140(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/032837(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/055737(WO,A1)
【文献】 特表2002−506637(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/018213(WO,A1)
【文献】 特開2005−333920(JP,A)
【文献】 特表2003−533979(JP,A)
【文献】 特開平05−130870(JP,A)
【文献】 米国特許第06150111(US,A)
【文献】 国際公開第2007/021944(WO,A1)
【文献】 Methods in Enzymology,2011年,Vol.498,p.349-361
【文献】 Nature Methods,2009年,Vol.6, No.5,p.343-345
【文献】 Science,2008年,Vol.319, No.5867,p.1215-1220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/10
C12P 19/34
C12N 9/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)5’−3’エキソヌクレアーゼ;及び
(ii)ポリメラーゼ融合タンパク質
を含む、シントンを集合させるための組成物であって、
前記ポリメラーゼ融合タンパク質は、
(a)配列番号2又は56〜96のいずれかに少なくとも90%同一であるアミノ酸配列、及び、異種鎖置換ポリメラーゼを含む、又は、
(b)配列番号1、33〜55又は102のいずれかに少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するポリメラーゼドメイン、及び、異種DNA結合ドメインを含む、
組成物。
【請求項2】
ポリメラーゼ融合タンパク質が、(a)に定義されるものであり、配列番号2に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリメラーゼ融合タンパク質が、(a)に定義されるものであり、鎖置換ポリメラーゼが、耐熱性である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリメラーゼ融合タンパク質が、(a)に定義されるものであり、鎖置換ポリメラーゼはファミリーBポリメラーゼである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリメラーゼ融合タンパク質が、(b)に定義されるものであり、配列番号1又は配列番号102に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するポリメラーゼドメインを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ポリメラーゼ融合タンパク質は、配列番号3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
5’−3’エキソヌクレアーゼは、一本鎖エンドヌクレアーゼ活性を有し、及び/又は、5’−3’エキソヌクレアーゼは配列番号98に少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、5’−3’エキソヌクレアーゼはT5エキソヌクレアーゼである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
一本鎖DNA結合タンパク質をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
一本鎖DNA結合タンパク質は、超耐熱性一本鎖DNA結合タンパク質(ET SSB)、E.coli recA、T7遺伝子2.5産物、ファージλRedB、又はRacプロファージRecTである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
リガーゼをさらに含む、請求項1〜9に記載の組成物。
【請求項11】
リガーゼが、耐熱性である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
dNTP及び/又は少なくとも7mMの濃度を有するカリウム塩をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
クラウディング剤及び/又は非鎖置換ポリメラーゼを含まない、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ポリヌクレオチドのセットをさらに含み、前記セット中の少なくとも1つのポリヌクレオチドは、セット中の別のポリヌクレオチドと重複する配列を有し、前記ポリヌクレオチドは、
(i)二本鎖ポリヌクレオチド、
(ii)一本鎖オリゴヌクレオチド、
(iii)少なくとも1つの二本鎖ポリヌクレオチド及び少なくとも1つの一本鎖オリゴヌクレオチド、並びに
(iv)亜集団のメンバー間で異なる配列を除いて相互に同一であるポリヌクレオチドの亜集団
から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
(a)請求項1〜6のいずれか一項に定義されるポリメラーゼ融合タンパク質、
(b)5’−3’エキソヌクレアーゼ、及び
(c)本鎖DNA結合タンパク質
を含む、ポリヌクレオチド集合のためのキットであって、前記(a)〜(c)は、同じ容器中、又は異なる容器中に存在する、キット。
【請求項16】
5’−3’エキソヌクレアーゼは、T5エキソヌクレアーゼであり、及び/又は、一本鎖DNA結合タンパク質は、超耐熱性一本鎖DNA結合タンパク質(ET SSB)、E.coli recA、T7遺伝子2.5産物、ファージλRedB、又はRacプロファージRecTである、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
ガーゼ及び/又はdNTPs及び/又は緩衝剤をさらに含む、請求項15又は16に記載のキット。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物と、ポリヌクレオチドのセットをインキュベートする工程と、ここで、個々のポリヌクレオチドは、他のポリヌクレオチド中の配列と重複する配列を含み、異なるポリヌクレオチドの重複する配列は、適切な反応条件下でクロスハイブリダイジングすることができる、
前記ポリヌクレオチドを結合してシントンを産生する工程と
を含むシントンの産生方法。
【請求項19】
セット中の1つ以上のポリヌクレオチドは、二本鎖である、又は、
ポリヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチドである、又は、
ポリヌクレオチドのセットは、少なくとも1つの二本鎖ポリヌクレオチド及び少なくとも1つの一本鎖オリゴヌクレオチドを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ポリヌクレオチドのセットは、請求項14に定義されるものである、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
一又は複数の二本鎖ポリヌクレオチドは、重複PCR産物若しくは重複制限断片である、又は一本鎖オリゴヌクレオチドから集合している、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
ヌクレオチドのセットの少なくとも1つのメンバーは、定義された配列末端の間にランダム配列を含む、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ゲノムDNAとのハイブリダイズ活性についてランダム配列をスクリーニングする工程と、前記ハイブリダイズ活性によってランダム配列を同定する工程とをさらに含む、及び/又は、
RNAを形成するためにハイブリダイズ活性によるランダム配列の転写によって遺伝子編集を行う工程と、Casタンパク質の存在下で遺伝子編集のために前記RNAを用いる工程とをさらに含む、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
重複している配列は、2キロベース未満の長さである、請求項18〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ポリメラーゼ融合タンパク質が、配列番号3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項18〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
組成物は、リガーゼ及び/又は一本鎖DNA結合タンパク質を含む、請求項18〜25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
合成生物学は構成パーツから新規DNAを構築する能力に頼っている。二本鎖(ds)DNA分子は第1DNA二重鎖の両端に付着末端を作成することにより集合される。これは、制限エンドヌクレアーゼを使用することにより、エキソヌクレアーゼ消化を使用することにより、またはT4 DNAポリメラーゼを使用した後ハイブリダイズし、場合により第1二重鎖に第2DNA二重鎖を結合することにより達成されている。反応混合物中にエキソヌクレアーゼ及びリガーゼを利用する技術は非鎖置換ポリメラーゼの使用も明示している。
【発明の概要】
【0002】
本発明は特に、i.5’エキソヌクレアーゼ;ii.鎖置換ポリメラーゼ;iii.一本鎖(ss)DNA結合タンパク質;及びiv.非天然緩衝剤を含み、クラウディング剤及び/または非鎖置換ポリメラーゼを含まない組成物を提供する。組成物はポリヌクレオチドをシントンに集合させるために使用され得る。組成物の実施形態は、集合をそれ自身のリガーゼを含有している細菌細胞中でのクローニングの目的で実施するか、または集合を細菌中でのクローニングステップを含まない目的で実施するかに応じて場合によりリガーゼを含有している。
【0003】
既報の集合方法は非鎖置換ポリメラーゼを必要とし、更にクラウディング剤を必要とするように展開した(例えば、US 8,968,999を参照されたい)。従来の教示に反して、本実施形態は、5’−3’エキソヌクレアーゼと一緒に使用したときに鎖置換ポリメラーゼは非鎖置換ポリメラーゼに比して優れていることを立証している。この組合せはクラウディング剤よりもss結合タンパク質の配合を好み、これはクラウディング剤の使用が一本鎖結合タンパク質の使用を含む代替方法よりも4倍有効であることを断言している従来技術の教示の逆である。本実施形態は、単一ステップ方法及び/または単一反応容器中でds及び/またはss核酸分子を含めたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドから機能遺伝子及びシントンを高い効率で集合させ、クローニングする組成物、方法及びキットを提供する。これらの実施形態はクラウディング剤に頼らず、2つの分子をアニールした後に存在しているギャップを埋めるために非鎖置換ポリメラーゼも必要としていない。例えば、ds DNAに作用する5’−3’エキソヌクレアーゼが別の分子からの3’ss DNA突出部と効果的にアニールし得る3’ss DNA突出部を生ずる場合、鎖置換ポリメラーゼは分子をアニールした後に残っているギャップを埋めことができる。鎖置換DNAポリメラーゼの活性と5’−3’エキソヌクレアーゼの活性を組み合わせると、ニックを結合部位またはその近くに含んでいる二重鎖シントンが生ずる。このニックは、インビトロではリガーゼにより、インビボでは内因性細胞リガーゼにより閉じられ得る。加えて、反応混合物中にss DNA結合タンパク質を配合すると、比較的低濃度の核酸断片を効率的に集合させることができ、これにより効率のロスまたは結合の精度のロスなしにコストが節約される。
【0004】
組成物の幾つかの実施形態では、鎖置換ポリメラーゼはファミリーBポリメラーゼである。好ましくは、鎖置換ポリメラーゼは、同一反応条件下で(例えば、図1A〜1Eに記載されているようなアッセイを用いて)Phusion(R)ポリメラーゼ(Thermo Fisher,マツチューセッツ州ウォルサム)(通常、非鎖置換と記載されている)で観察されるよりも高い鎖置換活性を有していなければならない。本組成物、方法及びキットでは、鎖置換ポリメラーゼがその鎖置換活性のために主に使用される。幾つかの実施形態では、鎖置換ポリメラーゼは非天然であり得、例えば鎖置換ポリメラーゼは変異体であり得る。変異体の例には、1つ以上のアミノ酸置換を有するポリメラーゼが含まれる。代替的または追加的に、非天然ポリメラーゼは無関係のアミノ酸配列を有する部分を有する融合タンパク質であり得、融合ポリメラーゼは天然では遭遇しない。好ましくは、鎖置換ポリメラーゼは50℃以上で安定であり、よって耐熱性鎖置換ポリメラーゼと称され得る。ある場合には、鎖置換ポリメラーゼは無関係または異種DNA結合ドメインを有する融合ポリメラーゼである。幾つかの実施形態では、ポリメラーゼ部分は配列番号102に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%に対して同一であるアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態では、ポリメラーゼは配列番号1に対して少なくとも90%、95%、98%、99%、または100%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態では、ポリメラーゼは配列番号33〜55に対して少なくとも90%、95%、98%、99%、または100%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有し得る。幾つかの実施形態では、DNA結合ドメイン部分は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態では、ポリメラーゼは配列番号1、3、56〜96、または102のいずれかに対して少なくとも90%、95%、98%、99%、または100%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有し得る。他の実施形態では、本明細書中に記載されているポリメラーゼ部分及び本明細書中に記載されているDNA結合ドメインが異種であるならば、ポリメラーゼドメイン部分をDNA結合ドメインと組み合わせてもよい。例えば、他の実施形態では、融合タンパク質は配列番号1及び配列番号2と少なくとも90%、95%、99%、または100%、好ましくは少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。他の実施形態では、融合タンパク質は配列番号3に対して少なくとも90%、95%、98%、99%、または100%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し得る。鎖置換ポリメラーゼは3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有していてもいなくてもよい。鎖置換ポリメラーゼが3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有している場合、ポリヌクレオチド結合は本明細書中に例示されているものを含めた条件を用いて3’−5’エキソヌクレアーゼ活性、5’−3’重合活性及び鎖置換活性を釣り合わせることにより最適化され得る。集合の効率及び精度は本明細書中に記載されている(例えば、図3A及び3Bを参照されたい)アッセイを用いて確認し得る。幾つかの実施形態では、ポリメラーゼはPhusion、9°N、PfuまたはVent、或いはPhusion、または野生型9°N、PfuまたはVentに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するポリメラーゼではない。幾つかの実施形態では、ポリメラーゼは耐熱性である、すなわち少なくとも40℃、または少なくとも50℃の温度で活性である。鎖置換ポリメラーゼとは対照的に、Taq DNAポリメラーゼのような幾つかのポリメラーゼは5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を介して遭遇する下流鎖を分解する。この活性はニック翻訳プロトコルのために利用される。よって、Taq DNAポリメラーゼは鎖置換ポリメラーゼの定義に含まれない。
【0005】
シントン形成の効率及び精度を調べるためのアッセイは実施例に記載されており、図3A〜Bに示されている。設計された集合断片はlacI及びlacZタンパク質をコードし、DNA断片が正しく集合されたならば青色コロニーが生ずる。よって、一晩プレートからの「青色」コロニーの数は集合の効率及び精度を表す。青色がない場合、効率的な集合が生じ得るが、結合/延長領域でのエラーが発現を妨げる。シントンを集合させた後宿主細胞にクローン化すると、シントン形成の効率及び精度が各クローンが正確に集合させたシントンを含むという信頼に変わる。この信頼で、シントンの存在を確認するためにたった1個または少数の複数のクローンしか配列決定する必要がない。これにより、エラーを含むかもしれないクローンを配列決定するコスト及び不便さが低減する。1つの実施形態では、クローンの少なくとも80%、または少なくとも90%が正確に集合されたシントンを含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、本明細書中に記載されている組成物を使用する方法は最小要件を実質的に超える収率を得ることができる。例えば、5,000または10,000個くらい多くのコロニーが1つの形質転換事象で産生され得る。集合の目的がシントンのライブラリーよりもシントンの1例を産生させることにあるならば、本明細書に記載されている範囲よりも低い出発量の核酸断片及び試薬を使用し得る。集合混合物中に使用するのに適した濃度範囲の例には、DNA断片に対して0.02nM〜100nMが含まれる。例えば、0.2nM〜10nMのDNAを反応容器中の試薬混合物に添加し得る。1つの実施形態では、ベクターDNAをDNA断片に対して1:1の比で配合するが、より高いまたはより低い比率を使用し得る。ds DNAに対して選択される濃度と比較して、より高い濃度のss DNAが好ましいことがある。反応容器中の試薬混合物は、更に0.0004U/μl〜0.064U/μl(例えば、0.0004U/μl〜0.01U/μl)の5’−3’エキソヌクレアーゼ;0.5U/μl〜32U/μl(例えば、1U/μl〜10U/μl)の任意成分のリガーゼ;0.0025U/μl〜0.25U/μl(例えば、0.005U/μl〜0.1U/μl)の鎖置換ポリメラーゼ;及び0.001μg/μl〜0.1μg/μl(例えば、0.01μg/μl〜0.5μg/μl)のss結合タンパク質を含み得る(単位は製造業者(New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)が特定しているものに対応している)。
【0007】
5’−3’エキソヌクレアーゼの量は更に、核酸断片の重複部分の長さ及び各断片のサイズに従って最適化され得る。例えば、5’−3’エキソヌクレアーゼの量は80ヌクレオチド長よりも長い核酸断片の場合範囲内で増加し得る。特定範囲内の鎖置換ポリメラーゼの絶対濃度は臨界的でない。
【0008】
組成物中に使用されるss DNA結合タンパク質はE.colirecA、T7遺伝子2.5産物、RedB(ファージλ由来)、RecT(Racプロファージ由来)、ET SSB(超耐熱性一本鎖DNA結合タンパク質)、または配列番号100に対して90%の配列同一性を有するss結合タンパク質であり得るが、多くの他のss DNA結合タンパク質が公知であり、組成物中に使用され得る。ss結合タンパク質を配合すると、特にss結合タンパク質の非存在下で生ずるであろうよりもより長い重複配列(例えば、少なくとも20ヌクレオチド)を有する核酸断片の場合コロニー数により調べる集合の効率が向上する。
【0009】
任意成分のリガーゼは、NAD依存性リガーゼ(例えば、Taqリガーゼ)、またはATP依存性リガーゼ(例えば、T4リガーゼ)であり得る。しかしながら、PCRの場合、ATPはシントンのその後の増幅において使用されるTaqポリメラーゼを阻害し得るので、NAD依存性リガーゼを使用することが便利である。適当なリガーゼの例には、配列番号101に対して少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質が含まれる。
【0010】
ここで使用される5’−3’エキソヌクレアーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性及びssエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素であり得る(例えば、Garforthら,PNAS,96,38−43(1999)を参照されたい)。エキソヌクレアーゼ及びssエンドヌクレアーゼ活性を有する5’−3’エキソヌクレアーゼの例には、T5エキソヌクレアーゼ、並びにそのホモログ及びバリアントが含まれる。1つの例では、5’−3’エキソヌクレアーゼは配列番号98と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。ポリヌクレオチドを鎖置換ポリメラーゼと結合させる前に5’−3’エキソヌクレアーゼを変性する必要はない。よって、耐熱性5’−3’エキソヌクレアーゼの使用が実施例に記載されている。
【0011】
幾つかの実施形態では、組成物は更にdNTPs(すなわち、dGTP、dATP、dGTP及びdTTPの混合物)を含み得、T5 5’−3’エキソヌクレアーゼを使用している幾つかの実施形態では、組成物は更に(例えば7mM〜150mMの範囲の濃度の)KClのようなカリウム塩を含み得る。
【0012】
一般的に、シントンの産生方法を提供する。幾つかの実施形態では、方法は、本明細書中に記載されている鎖置換ポリメラーゼ、5’−3’エキソヌクレアーゼ、及び場合によりリガーゼ(反応がインビトロ、またはリガーゼを含有しない細胞または生物中でインビボであるならば)を含み、ss結合タンパク質をも含み得る本明細書中に記載されている組成物の実施形態をポリヌクレオチド及び/またはオリゴヌクレオチドのセットと適当な反応条件下でインキュベートすることを含み得、前記セットのメンバーの少なくとも1つまたは幾つかがセットの1つまたは幾つかの他のメンバーと重複する配列を有している。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドはds DNA、例えば重複PCR産物または重複制限断片であり得る。他の実施形態では、ポリヌクレオチドはss DNAまたはRNAであり得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドのセットはss DNAまたはRNAを含み得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドのセットはdsポリヌクレオチドを含み得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドのセットは少なくとも1つのdsポリヌクレオチド及び少なくとも1つのssポリヌクレオチドを含み得る。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドのセットは、亜集団のメンバー間で異なるサブ配列とは別に同一の配列を有するポリヌクレオチドの亜集団を含み得る。他の実施形態では、ポリヌクレオチドのセットはssまたはdsポリヌクレオチド、またはシントンを形成する各種内部配列を結合させるためにその末端に重複領域を有しているポリヌクレオチドを含み得る。よって、本発明の方法の1つの実施形態では、ポリヌクレオチドのセット中のポリヌクレオチドは、dsポリヌクレオチドが重複PCR産物または重複制限断片であるか、またはssポリヌクレオチドから集合されるようにdsである。本発明の方法の代替実施形態では、シントンはssであるポリヌクレオチドのセット中のポリヌクレオチドから集合される。本発明の方法の更なる代替実施形態では、シントンは、少なくとも1つのdsポリヌクレオチド及び少なくとも1つのssオリゴヌクレオチドの混合物からなるポリヌクレオチドのセットから集合される。本発明の方法の実施形態では、シントンは、亜集団のメンバー間で異なるサブ配列を除いて相互に同一であるポリヌクレオチドの亜集団を含むポリヌクレオチドのセットから集合される。
【0013】
方法の実施形態は、コード配列、ベクター、遺伝子工学のためのガイド分子及び発現カセットを含めた各種シントンを産生させるために使用され得る。
【0014】
集合前に、最初のdsポリヌクレオチドは100塩基〜30kbの範囲の長さを有し得るが、ある場合にはこの範囲外のポリヌクレオチドを使用し得る。例えば、幾つかの実施形態では、個々の断片サイズは20kb〜30kb以上くらい長くても、または30塩基〜500塩基くらい短くてもよい。更に、幾つかの実施形態では、異なるサイズの断片を集合反応において結合させ得る。1例では、長ポリヌクレオチド(例えば、5kb〜20kbの長さの断片)を短ポリヌクレオチド(例えば、100塩基〜500塩基の長さの断片)に結合させる。新たに集合されたシントンは単一分子配列決定方法を用いて直接、またはクローニングまたは増幅後配列決定され得る。
【0015】
1つの実施形態では、セットのメンバーは2kb未満、例えば15〜200ヌクレオチド(例えば、20〜100ヌクレオチド)の範囲の長さを有する重複配列を含み得る。
【0016】
1つの実施形態では、5’−3’エキソヌクレアーゼ;鎖置換ポリメラーゼ;及び7mM〜150mM、例えば20mM〜50mMの濃度範囲のカリウム塩、例えばKClを含有する緩衝剤を有する組成物を提供する。カリウム塩に加えて、10mM〜100mMの範囲、例えば20mMのナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)も使用し得る。組成物中にss結合タンパク質を配合してもよい。幾つかの実施形態では、組成物はクラウディング剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)、フィコールまたはデキストランを含有しない。幾つかの実施形態では、組成物は非鎖置換ポリメラーゼを含有しない。別の実施形態では、シントンを形成するための組成物中にポリヌクレオチド及び/またはオリゴヌクレオチド断片を配合し得る。
【0017】
方法の別の実施形態では、非鎖置換ポリメラーゼの非存在下で、ss結合タンパク質及び少なくとも7mM カリウム塩(例えば、KCl)に加えてまたは代えて、クラウディング剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)、フィコールまたはデキストランを鎖置換ポリメラーゼ及び5’−3’エキソヌクレアーゼと一緒に含む組成物を用いてオリゴヌクレオチドのセットを結合させ得る。1つの実施形態では、カリウム塩の濃度は150mM未満、例えば20mM〜50mMである。
【0018】
i.5’−3’エキソヌクレアーゼ;ii.任意成分のリガーゼ;iii.鎖置換ポリメラーゼ;及びss DNA結合タンパク質を含むポリヌクレオチド集合のためのキットも提供される。ある実施形態では、キットは更に、例えばdNTPs及び/または緩衝剤を含み得る。キットの成分は別々の容器(例えば、1つ以上の異なる反応チューブ)中に存在させても、またはキットの成分を単一容器中に存在させてもよい。成分を凍結乾燥または溶解させてもよく、または一部を凍結乾燥させ、一部を溶解させてもよい。成分を部分的にまたは全体的に固体表面、例えばビーズまたは反応チャンバーの表面上に固定化させても、溶解させてもよい。ポリヌクレオチドを標的とするために部分的または全体的に固定化または溶解され得る成分が添加され得る。幾つかの実施形態では、キットはキットの成分の1つ以上の混合物を含有し得る。幾つかの実施形態では、キットは非鎖置換ポリメラーゼもクラウディング剤も含有しない。
【0019】
1つの実施形態では、集合混合物のために配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有するポリメラーゼを提供する。別の実施形態では、集合混合物のために配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する結合ドメインを有するポリメラーゼを提供する。別の実施形態では、集合混合物のために配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有するポリメラーゼを提供する。これらの組成物はポリメラーゼが鎖置換性である反応条件で使用され得る。組成物は、ポリメラーゼ活性と関連する3’エキソヌクレアーゼ活性が活性である反応条件で使用され得る。
【0020】
集合反応はssまたはds核酸を用いて起こり得る。任意の数の断片、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個、またはそれ以上の断片を集合させ得る。化学的に合成したssポリヌクレオチドをds重複断片に集合し、ハイブリダイズし、線形化ベクターの末端に連結して、クローニングに適したシントンを形成する。或いは、二重の断片をシントンに集合させ、クローニング、PCRまたは等温増幅のためのベクターに挿入し得る(例えば、図2A〜2Cを参照されたい)。ss核酸断片は、核酸断片を線形化dsベクターの3’ss末端にハイブリダイズすることによりベクターに直接挿入することもできる(例えば、図7を参照されたい)。ss核酸は、ss核酸断片を線形化ベクターの3’ss末端にハイブリダイズするのと同時に、その前またはその後に重複する相補性末端を介して集合され得る。集合させた断片は、クローニング用ベクターに挿入する前にPCRまたは等温方法により増幅され得る。核酸断片は、可変領域の各ヌクレオチド位置に代表的なバリアントを含むライブラリーを形成することができるランダム化ヌクレオチド配列または縮重コードを含み得る。ランダム配列は各末端の限定配列間に位置し得る。1つの実施形態では、限定配列間に位置するランダム配列は第2核酸断片(例えば、第2ssゲノムポリヌクレオチド)または線形化ベクター末端にハイブリダイズするためであり得る。1例では、遺伝子編集のためにCas9タンパク質を標的核酸にガイドするために標的ゲノム配列にランダム配列をハイブリダイズする(例えば、図9A〜9Cを参照されたい)。よって、本発明のこの態様によれば、方法は、ポリヌクレオチドのセットの少なくとも1つのメンバーを第2核酸断片(例えば、第2ssゲノムポリヌクレオチド)または線形化ベクター末端にハイブリダイズするために使用され得る。例えば、方法は、遺伝子編集の方法においてCasエンドヌクレアーゼ、例えばCas9を標的ゲノム核酸にガイドすべくポリヌクレオチドのセットの少なくとも1つのメンバーを標的ゲノム配列にハイブリダイズするためであり得る。
【0021】
幾つかの実施形態では、複数のポリヌクレオチドをシントンに集合させる方法を提供し、その方法は、単一容器中で場合により等温条件下で複数のポリヌクレオチドを5’−3’エキソヌクレアーゼ、鎖置換ポリメラーゼ、場合によりリガーゼ、ss結合タンパク質及び緩衝剤を含む組成物と組合せることを含み、前記ポリヌクレオチドの各々は第2ポリヌクレオチド上の相補性ss相補配列にハイブリダイズし得、結合して連続二重鎖ポリヌクレオチドを形成し得る3’ss末端ポリヌクレオチド配列を1つの鎖上に有する。シントンは更にその末端で増幅及び/またはクローニング用線形化プラスミドの末端に結合され得る。
【0022】
幾つかの実施形態では、全集合方法は「1ステップ」反応(反応を開始した後反応中ずっと開けておく必要がない1つのチューブ中で)として実施され得る。1例では、成分を反応容器中で一緒に混合し、40℃から60℃の温度で一時期、例えば5分間から12時間インキュベートすると、シントンが産生される。
【0023】
1つの態様において、方法は、配列番号1または配列番号102及び/または配列番号2または配列番号3と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリメラーゼにより結合されるポリヌクレオチドにおける鎖置換のステップを含む。方法の実施形態では、3’−5’エキソヌクレアーゼチューバックの追加ステップを必要としない。別の態様は更に、反応混合物中に7mMの最低濃度でカリウム塩を配合することにより集合反応の効率を高めることを含み、カリウム塩としてKClが例示される。
【0024】
1つの態様において、ポリヌクレオチドが限定配列末端間にランダム配列を含む方法を提供する。別の態様において、方法は更に、ランダム配列をゲノムDNAとのハイブリダイジング活性についてスクリーニングし、ハイブリダイジング活性を有するランダム配列を同定することを含む。別の態様において、方法は、ハイブリダイジング活性を有するランダム配列を転写してRNAを形成し、このRNAをCasエンドヌクレアーゼの存在下で遺伝子編集するために使用することにより遺伝子編集を実施することを含む。
【0025】
本発明の組成物、キットまたは方法の1つの実施形態では、本発明の組成物、キットまたは方法において使用される鎖置換ポリメラーゼは非天然、例えば変異体または融合タンパク質であり得る。本発明の組成物、キットまたは方法において、非天然鎖置換融合ポリメラーゼは、配列番号33〜55、または配列番号1に対して少なくとも90%、95%、99%、または100%同一であるポリメラーゼ部分、または配列番号56〜98、または配列番号2のいずれかに対して少なくとも90%、95%、99%、または100%同一であるDNA結合部分のアミノ酸組成により特徴づけられ得る。1つの実施形態では、ポリメラーゼ部分は、配列番号56〜98のいずれかに対して少なくとも90%、95%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドから選択される異種DNA結合部分に融合される配列番号102と90%、95%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0026】
一般的に、1つの態様において、配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する組成物を含む調製物を提供する。調製物は更に5’−3’エキソヌクレアーゼ、例えばT5エキソヌクレアーゼを含み得る。調製物は更にss DNA結合タンパク質、例えばET SSB、E.colirecA、T7遺伝子2.5産物、ファージλRedB、またはRacプロファージRecT、より特に耐熱性ss結合タンパク質、例えばET SSBを含み得る。調製物は更にリガーゼを含み得る。1つの態様において、前記組成物を含む調製物は更にss結合ドメイン及び5−3’エキソヌクレアーゼを含み得、調製物はクラウディング剤及び/または非鎖置換ポリメラーゼを含まない。調製物は更にカリウム塩を含み得る。
【0027】
1つの態様において、前記組成物を含む調製物は更に、セット中に複数のポリヌクレオチドを含み得、前記セット中の少なくとも1つのポリヌクレオチドはセット中の別のポリヌクレオチドと重複する配列を有し、ポリヌクレオチドは(i)dsポリヌクレオチド、(ii)ssオリゴヌクレオチド、(iii)少なくとも1つのdsポリヌクレオチド及び少なくとも1つのssオリゴヌクレオチド、及び(iv)亜集団のメンバー間で異なる配列を除いて相互に同一であるポリヌクレオチドの亜集団から選択される。1つの態様において、ポリヌクレオチドのセットは少なくとも3つのメンバー、少なくとも4つのメンバー、または少なくとも5つのメンバーを有する。
【0028】
一般的に、シントンの産生方法を提供し、その方法は更に5’−3’エキソヌクレアーゼ、及び場合によりリガーゼ及びss DNA結合タンパク質を含む請求項1に記載の組成物をセットを形成する複数のポリヌクレオチドとインキュベートし、少なくとも2つのポリヌクレオチドを結合してシントンを産生させることを含み、前記セットのメンバーは適当な反応条件下で重複する配列を有する。1つの態様において、ポリヌクレオチドのセットは少なくとも3つのメンバー、少なくとも4つのメンバー、または少なくとも5つのメンバーを含む。1つの態様において、調製物は更にリガーゼを含む。1つの態様において、調製物は更にss DNA結合タンパク質を含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドはdsであり、dsポリヌクレオチドは重複PCR産物、重複制限断片であり、ssオリゴヌクレオチドから集合される。1つの態様において、ポリヌクレオチドはssオリゴヌクレオチドである。1つの態様において、ポリヌクレオチドのセットは少なくとも1つのdsポリヌクレオチド及び少なくとも1つのssオリゴヌクレオチドを含む。
【0029】
一般的に、請求項1に記載の調製物及び5’−3’エキソヌクレアーゼ、例えばT5エキソヌクレアーゼを含むキットを提供する。1つの態様において、キットは更にss結合タンパク質を含み得る。別の態様において、キットはリガーゼを含み得る。別の態様において、キットは緩衝剤を含み得る。1つの態様において、キットはクラウディング剤を含まない。1つの態様において、組成物及び5’−3’エキソヌクレアーゼは同一容器中に存在する。別の態様において、組成物及び5’−3’エキソヌクレアーゼは別々の容器中に存在し、これらは場合により単一容器に合わせるのに適している緩衝剤中にある。
【0030】
一般的に、1つの態様において例えば配列番号98と90%の配列同一性を有するssエンドヌクレアーゼ活性を有する5’−3’エキソヌクレアーゼ;鎖置換ポリメラーゼ、例えば好ましくは天然ポリメラーゼから誘導される変異体または融合タンパク質のような非天然であり、更に耐熱性であり得るファミリーB鎖置換ポリメラーゼ;場合により、ET SSB、E.colirecA、T7遺伝子2.5産物、ファージλRedB、またはRacプロファージRecTのようなss DNA結合タンパク質;及び非天然緩衝剤を含むシントンを集合させるための組成物を提供し、組成物はクラウディング剤及び/または非置換ポリメラーゼを含まない。1つの態様において、組成物は更にリガーゼ及び/またはss結合ドメインを含む。1つの態様において、組成物は少なくとも2つのポリヌクレオチドのセット(複数のポリヌクレオチド)を含む。1つの態様において、組成物は非鎖置換ポリメラーゼを含まない。別の態様において、組成物は9°N、Phusion、Vent、またはPfu DNAポリメラーゼを含まない。
【0031】
1つの態様において、組成物中の鎖置換ポリメラーゼは、ポリメラーゼ部分が配列番号1、配列番号102、または配列番号33〜55のいずれかに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する融合タンパク質である。例えば、融合タンパク質は配列番号1または102及び配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有し得る。例えば、鎖置換ポリメラーゼは配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。1つの態様において、組成物は少なくとも7mMの濃度を有するカリウム塩を含み得る。1つの態様において、組成物はポリヌクレオチドのセットを含み得、前記セット中の少なくとも1つのポリヌクレオチドはセット中の別のポリヌクレオチドと重複する配列を有し、前記ポリヌクレオチドは(i)dsポリヌクレオチド;(ii)ssオリゴヌクレオチド;(iii)少なくとも1つのdsポリヌクレオチド及び少なくとも1つのssオリゴヌクレオチド;及び(iv)亜集団のメンバー間で異なる配列を除いて相互に同一であるポリヌクレオチドの亜集団から選択される。1つの態様において、ポリヌクレオチドのセットの少なくとも1つのメンバーは、第2ssゲノムポリヌクレオチドに対してハイブリダイズするために各末端の限定配列間に位置するランダム配列を含み、例えば前記ランダム配列はssであり、遺伝子編集のためにCasタンパク質を標的ゲノム核酸にガイドすべく標的ゲノム配列にハイブリダイズし得る。
【0032】
一般的に、重複する配列を有するポリヌクレオチドのセットを含む上記した組成物のいずれかを適当な反応条件下でインキュベートし、ポリヌクレオチドの少なくとも幾つかを他のポリヌクレオチドに結合してシントンを産生させることを含むシントンの形成方法を提供する。方法の1つの態様において、セット中のポリヌクレオチドの全部または一部はdsである。別の態様において、dsポリヌクレオチドは重複PCR産物、重複制限断片、または合成装置において作製され得る相補性ssオリゴヌクレオチドから集合される合成ds分子である。1つの態様において、セット中のポリヌクレオチドの全部または一部はssオリゴヌクレオチドである。1つの態様において、ポリヌクレオチドのセットは少なくとも1つのdsポリヌクレオチド及び少なくとも1つのssオリゴヌクレオチドを含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドのセットは亜集団のメンバー間で異なる配列を除いて相互に同一であるポリヌクレオチドの亜集団を含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドの重複配列は2キロベース未満の長さを有する。方法の1つの態様において、鎖置換ポリメラーゼは配列番号1、2、3、33〜96、または102のいずれかに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。方法の1つの態様において、ポリヌクレオチドのセットの少なくとも1つのメンバーは限定配列末端間にランダム配列を含む。方法の別の態様は、ランダム配列をゲノムDNAとのハイブリダイジング活性についてスクリーニングし、ハイブリダイジング活性を有するランダム配列を同定することを含む。方法の別の態様は、ハイブリダイジング活性を有するランダム配列を転写してRNAを形成し、そのRNAをCasタンパク質の存在下で遺伝子編集のために使用することにより遺伝子編集を実施することを含む。
【0033】
一般的に、5’−3’エキソヌクレアーゼ;鎖置換ポリメラーゼ;及び場合によりss DNA結合タンパク質を含むポリヌクレオチド集合のためのキットを提供し、前記キットは場合によりクラウディング剤及び/または非鎖置換ポリメラーゼを含まない。1つの態様において、キットはリガーゼを含む。別の態様において、キットはdNTPsを含む。別の態様において、キットは緩衝剤を含む。別の態様において、キットの個々の成分は同一または別々の容器中、例えば1つ以上の異なるストレージまたは反応容器中に存在し得る。
【0034】
一般的に、配列番号2、56〜96のいずれかに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列及び異種ポリメラーゼドメインを含むポリメラーゼ融合タンパク質を含む組成物を提供する。1つの態様において、ポリメラーゼ融合タンパク質は配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;及び異種ポリメラーゼドメインを含む。
【0035】
一般的に、ポリメラーゼ融合タンパク質を含む組成物を提供し、前記ポリメラーゼ融合タンパク質は配列番号1、33〜55、または102に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するポリメラーゼドメイン;及び異種DNA結合ドメインを含む。1つの態様において、ポリメラーゼ融合タンパク質は配列番号1に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するポリメラーゼドメイン;及び異種DNA結合ドメインを有する。1つの態様において、ポリメラーゼ融合タンパク質は配列番号102に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するポリメラーゼドメイン;及び異種DNA結合ドメインを有する。1つの態様において、ポリメラーゼ融合タンパク質は配列番号3に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0036】
1つの態様において、上記組成物は更に5’−3’エキソヌクレアーゼ、例えばT5エキソヌクレアーゼを含む。1つの態様において、組成物は更に一本鎖DNA結合タンパク質、例えばET SSB、E.colirecA、T7遺伝子2.5産物、ファージλRedB、またはRacプロファージRecTから選択される一本鎖結合タンパク質を含む。1つの態様において、組成物はリガーゼを含み得る。1つの態様において、リガーゼは耐熱性である。1つの態様において、組成物はクラウディング剤及び/または非鎖置換ポリメラーゼを含まない。別の態様において、組成物は更にdNTPsを含む。別の態様において、組成物は更に少なくとも7mMの濃度を有するカリウム塩を含む。組成物の1つの態様はポリヌクレオチドのセットを含み、前記セット中の少なくとも1つのポリヌクレオチドはセット中の別のポリヌクレオチドと重複する配列を有し、前記ポリヌクレオチドは(i)dsポリヌクレオチド;(ii)ssオリゴヌクレオチド;(iii)少なくとも1つのdsポリヌクレオチド及び少なくとも1つのssオリゴヌクレオチド;及び(iv)亜集団のメンバー間で異なる配列を除いて相互に同一であるポリヌクレオチドの亜集団から選択される。
【0037】
一般的に、上に特徴づけられているポリメラーゼを含み、更に5’−3’エキソヌクレアーゼ、及び場合によりリガーゼ及びss DNA結合タンパク質を含む組成物とポリヌクレオチドのセットをインキュベートし;ポリヌクレオチドを結合してシントンを産生させることを含むシントンの産生方法を提供し、個々のポリヌクレオチドは他のポリヌクレオチド中の配列と重複する配列を含み、異なるポリヌクレオチドの重複配列は適当な反応条件下でクロスハイブリダイズし得、例えば重複領域は2キロベース未満である。
【0038】
別の態様において、組成物はリガーゼ;及び/またはss DNA結合タンパク質を含む。別の態様において、セット中の1つ以上のポリヌクレオチドはdsであり、dsポリヌクレオチドはPCR産物、重複制限断片であり、またはssオリゴヌクレオチドから集合され、及び/または1つ以上のポリヌクレオチドはssオリゴヌクレオチドであり、及び/またはポリヌクレオチドのセットは少なくとも1つのdsポリヌクレオチド及び少なくとも1つのssオリゴヌクレオチドを含む。
【0039】
一般的に、上記したポリメラーゼ融合タンパク質及び5’−3’エキソヌクレアーゼ;及びss DNA結合タンパク質を含むポリヌクレオチド集合のためのキットを提供する。1つの態様において、キットはリガーゼ、dNTPs及び緩衝剤のいずれかまたはすべてを含み得、前記キットの成分は同一容器または別々容器中に存在し得る。
【0040】
当業者は、以下に記載する図面が例示の目的のみであると理解するであろう。図面は本教示内容の範囲を決して限定すると意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A図1A〜1Eは、実施例1に記載したアッセイが鎖置換ポリメラーゼと非鎖置換ポリメラーゼをどのように区別するかを示す。このアッセイにより、T4 DNAポリメラーゼは非鎖置換であり、テンプレートDNAの合成を44ヌクレオチド長で遮断オリゴヌクレオチドで停止する(2)(図1C)のに対して、Bstポリメラーゼ(図1D)及び非天然ポリメラーゼ(図1E)は鎖置換であり、遮断オリゴヌクレオチド(27ヌクレオチド長)を置換することによるFAMプライマーのDNA合成を継続し得ること(1)が確認される。図1Aは、以下の酵素に対するアッセイにおいて使用されるDNAテンプレート上のプライマー(1)及び遮断オリゴヌクレオチド(2)の配列及び位置を示す。
図1B図1A〜1Eは、実施例1に記載したアッセイが鎖置換ポリメラーゼと非鎖置換ポリメラーゼをどのように区別するかを示す。このアッセイにより、T4 DNAポリメラーゼは非鎖置換であり、テンプレートDNAの合成を44ヌクレオチド長で遮断オリゴヌクレオチドで停止する(2)(図1C)のに対して、Bstポリメラーゼ(図1D)及び非天然ポリメラーゼ(図1E)は鎖置換であり、遮断オリゴヌクレオチド(27ヌクレオチド長)を置換することによるFAMプライマーのDNA合成を継続し得ること(1)が確認される。図1Bは、キャピラリー電気泳動後に得られた酵素が添加されていなかったサンプル中で観察された蛍光を示し、出発物質はFAMプライマーの24ヌクレオチドに相当する位置にピークを形成した。
図1C図1A〜1Eは、実施例1に記載したアッセイが鎖置換ポリメラーゼと非鎖置換ポリメラーゼをどのように区別するかを示す。このアッセイにより、T4 DNAポリメラーゼは非鎖置換であり、テンプレートDNAの合成を44ヌクレオチド長で遮断オリゴヌクレオチドで停止する(2)(図1C)のに対して、Bstポリメラーゼ(図1D)及び非天然ポリメラーゼ(図1E)は鎖置換であり、遮断オリゴヌクレオチド(27ヌクレオチド長)を置換することによるFAMプライマーのDNA合成を継続し得ること(1)が確認される。図1Cは、T4 DNAポリメラーゼの添加の結果を示す。プライマーは44ヌクレオチド(24ヌクレオチド+20ヌクレオチド)の最終長さまで延長したが、遮断オリゴヌクレオチドにより停止した。
図1D図1A〜1Eは、実施例1に記載したアッセイが鎖置換ポリメラーゼと非鎖置換ポリメラーゼをどのように区別するかを示す。このアッセイにより、T4 DNAポリメラーゼは非鎖置換であり、テンプレートDNAの合成を44ヌクレオチド長で遮断オリゴヌクレオチドで停止する(2)(図1C)のに対して、Bstポリメラーゼ(図1D)及び非天然ポリメラーゼ(図1E)は鎖置換であり、遮断オリゴヌクレオチド(27ヌクレオチド長)を置換することによるFAMプライマーのDNA合成を継続し得ること(1)が確認される。図1Dは、Bst DNAポリメラーゼ(大断片)は遮断オリゴヌクレオチドを鎖置換し、プライマーを72ヌクレオチド(24+20+27+dA)の全長まで延長させることによりテンプレートをコピーすることを示す。
図1E図1A〜1Eは、実施例1に記載したアッセイが鎖置換ポリメラーゼと非鎖置換ポリメラーゼをどのように区別するかを示す。このアッセイにより、T4 DNAポリメラーゼは非鎖置換であり、テンプレートDNAの合成を44ヌクレオチド長で遮断オリゴヌクレオチドで停止する(2)(図1C)のに対して、Bstポリメラーゼ(図1D)及び非天然ポリメラーゼ(図1E)は鎖置換であり、遮断オリゴヌクレオチド(27ヌクレオチド長)を置換することによるFAMプライマーのDNA合成を継続し得ること(1)が確認される。図1Eは、遮断オリゴヌクレオチドを鎖置換し、71ヌクレオチド(24+20+27)によりプライマーを延長させことによりテンプレートをコピーする校正ポリメラーゼであるファミリーB鎖置換DNAポリメラーゼを示す。
図2A図2A〜2CはDNA集合方法におけるステップを示す。図2Aは、5個の断片の各々のアンプリコンの5つのアンピシリン耐性マーカーを有するプラスミドへの取込みを示す。5個の断片をまずプライマーを用いて増幅させると、重複領域を有し、NotI制限部位に隣接しているアンプリコンが産生した。NotI切断は粘着末端を生じる。NotI制限(3)により、ベクターから各アンプリコンを放出できた。制限酵素切断断片は隣接断片と80塩基対重複領域(4)を有する。図2Cでは、便利さ及びコスト軽減のために第1断片と隣接試薬ベクター末端間、及び最後の断片と隣接試薬ベクター末端間の重複は15〜25ヌクレオチド、例えば20ヌクレオチドであるが、これは限定的と意図されない。
図2B図2A〜2CはDNA集合方法におけるステップを示す図2Bは、NotI切断した場合により配列決定した断片(5)(ベクターから回収したアンプリコン)を示し、この断片をその後1つの反応容器中でT5/5’−3’エキソヌクレアーゼ、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、ss結合タンパク質ET SSB(New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)及びDNAリガーゼを含む酵素混合物で処理した(6)〜(8)。ここではNotIを使用しているが、都合に応じて他の制限エンドヌクレアーゼを切断のために使用し得る。2つ以上の制限エンドヌクレアーゼを用いる二重消化を使用し得る。例えば、ベクターDNAを2つの制限エンドヌクレアーゼを用いて二重消化すると、未切断ベクター由来のバックグラウンドを減らすことが判明した。重複ss DNA配列を隣接断片にハイブリダイズした。T5エキソヌクレアーゼは、各末端上で5’から3’にDNA鎖をチューバックして、ss結合タンパク質(7)の存在下で断片を一緒にアニールできる3’ss領域(6)を曝した。2つの塩基フラップの除去は3’−5’エキソヌクレアーゼ活性と鎖置換ポリメラーゼを用いてなされ、その後集合産物中のギャップを埋めるために鎖置換ポリメラーゼにより延長させる(8)。残存ニックまたは5’フラップはリガーゼ及び/またはT5エキソヌクレアーゼにより修復され得る。
図2C図2A〜2CはDNA集合方法におけるステップを示す図2Cは、順に結合されており、細菌細胞への形質転換のためにクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cam)を有する第2遺伝子に挿入した5個の断片(Frag.1〜Frag.5)を示す。
図3A図3A及び図3Bは、クロラムフェニコールプレートをプレート上での増殖のためにコロニーを選択するために使用し、lacIZ遺伝子を含有しているこれらのコロニーはIPTG及びX−Galの存在下で青色コロニーを生じたことを示す。アッセイは、遺伝子が効率的に、機能的形態で集合しているクローンの定量的評価を与える。図3Aはクロラムフェニコールのみを示す。
図3B図3A及び図3Bは、クロラムフェニコールプレートをプレート上での増殖のためにコロニーを選択するために使用し、lacIZ遺伝子を含有しているこれらのコロニーはIPTG及びX−Galの存在下で青色コロニーを生じたことを示す。アッセイは、遺伝子が効率的に、機能的形態で集合しているクローンの定量的評価を与える。図3Bはクロラムフェニコール+IPTG+Xgalを示す。
図4】プラスミドは実際全遺伝子を含んでいたことを示す。形質転換前にすべての断片が結合し、連結していることを確認するために図2Bに示す集合産物のPCRにより増幅を実施した。レーン1及び2は2重PCR結果である。レーンMはマサチューセッツ州イプスウイッチのNew England Biolabsからの2−log DNAラダーである。
図5】コロニーの数で決定した、集合ミックス中のKClの影響を示す。集合ミックス中に鎖置換ポリメラーゼを使用すると集合の精度/効率が上昇することを緩衝液中に高濃度のKClを用いて立証する。左側(T26)のヒストグラムはKClを含有せず、右側の(T26K)のヒストグラムは25mM KClを含有しており、効率の1.5倍増強を示している。この改善は集合条件と無関係に生ずる。ss結合タンパク質の非存在下でPEGまたは他のクラウディング剤を使用しても類似の相対的強化が予測される。
図6】製造業者により提供されるプロトコルに従って、実施例2に記載されている混合物(鎖置換ポリメラーゼ/ss結合タンパク質/5’−3’エキソヌクレアーゼ/リガーゼ)(ミックス1)と市販のGibson Assemby(R)ミックス(GAMM)(非鎖置換ポリメラーゼ及びポリエチレングリコール)(Synthetic Genomics,カリフォルニア州ラホヤ/New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)の比較を示す。ミックス1により、DNA集合及び形質転換の有意により高い効率が生ずる。
図7図7は、ss DNAオリゴヌクレオチドとds DNA断片間のDNA集合の一般的ダイアグラムを示す。ss標的DNAオリゴヌクレオチドをDNAベクターに挿入する。ss標的DNAオリゴヌクレオチドを各末端上に3’ベクター末端と20〜30ヌクレオチドの重複領域を有するように合成した。しかしながら、オリゴヌクレオチドのサイズは20個未満のヌクレオチド、例えば15個未満のヌクレオチド、または10個未満のヌクレオチド、或いは30個以上のヌクレオチド、例えば少なくとも40個、50個、60個またはそれ以上のヌクレオチドの重複領域を有し得る。重複領域を超えて、オリゴヌクレオチドは好ましくは末端間に重複して位置していない1個以上のヌクレオチドを有する。ds DNAベクターの5’末端をチューバックしてss突出部が生じ得るように、5’−3’エキソヌクレアーゼ、鎖置換ポリメラーゼ、リガーゼ及びss結合タンパク質を含有する集合マスターミックスをssオリゴヌクレオチド及びベクターの混合物に添加する(9)。次いで、ss DNAの3’末端をベクターの5’末端にアニーリングすることができ、その後DNAポリメラーゼはssテンプレートを複製してギャップを埋め、平滑末端のds DNAを生成する。ニックをリガーゼにより閉じる(10)。再び、エキソヌクレアーゼ(ここでは、T5エキソヌクレアーゼ)は3’ss領域を生ずる標的DNAの平滑末端上の5’末端をチューバックすると、相補的配列のアニーリング及び標的DNAのDNAベクターへのds組込みの完成ができる(11)。断片をギャップを埋めるDNAポリメラーゼ及びニックを閉じるリガーゼを用いてアニーリングすると(12)、シントンが産生される。
図8A図8A図8Cは、ds DNAを短ssオリゴヌクレオチドにより架橋するためのワークフローを示す(プロトコルは図7に記載されている)。図8Aは、OFPリポーターを有するCRISPRヌクレアーゼベクターとしてここに示すds DNAベクターに組込むための短ssオリゴヌクレオチドの配列の例を示す。
図8B図8A図8Cは、ds DNAを短ssオリゴヌクレオチドにより架橋するためのワークフローを示す(プロトコルは図7に記載されている)。図8Bは、完全ds環状DNAを産生させるために、ssオリゴヌクレオチド及びds CRISPRヌクレアーゼベクター(9424bp)から出発し、5’−3’エキソヌクレアーゼ、鎖置換ポリメラーゼ、リガーゼ及びss結合タンパク質で処理するワークフローを示す(13)。このDNAをコンピテント細胞に形質転換した(14)。一晩インキュベートした後、コロニーをミニプレップにより分析した後、プラスミドを配列決定した(15)。
図8C図8A図8Cは、ds DNAを短ssオリゴヌクレオチドにより架橋するためのワークフローを示す(プロトコルは図7に記載されている)。図8Cは、設計したssオリゴヌクレオチド(71マー)のU6プロモーター配列(ベクター)配列及びスカフォールドテンプレート特異的配列(ベクター)の挿入及び隣接配列の配列を示す。各末端に25ヌクレオチドの重複領域を含むssオリゴヌクレオチド(71マー)(標的DNAの21ヌクレオチド、太字)は宿主細胞においてベクターに正しく組込まれた。
図9A図9A〜9Cは、図8に示したものと類似のワークフローが重複末端間に縮重塩基を有するssオリゴヌクレオチドに対して使用され得ることを示す。図9A中の出発配列も上記ワークフローに示されており(図9B)、集合プールからのコロニーからのサンガー配列決定の結果を以下に示し(図9C)、実線はsgRNA標的化配列のプールを指す。sgRNA標的化配列は421バリアントを与える21個の可変ヌクレオチド位置を含んでいた。プールはすべての考えられるバリアントを含んでおり、各バリアントは重複末端とベクターの間の配列の縮重性を反映するクローニングを受けることができた。図9Aは、縮重塩基を含有しているssオリゴヌクレオチドの配列を示す。図9AのsgRNA標的化配列をベクターのU6プロモーター配列とスカフォールドテンプレート特異的配列の間に挿入し(16)、宿主細胞に形質転換し(17)、上記し、本明細書中に記載されているミニプレップ及び配列決定によりシントンについて分析した(18)。サンガー配列決定を集合プールからのクローンに対して実施した。配列の例を図9Cに示す。
図9B図9A〜9Cは、図8に示したものと類似のワークフローが重複末端間に縮重塩基を有するssオリゴヌクレオチドに対して使用され得ることを示す。図9A中の出発配列も上記ワークフローに示されており(図9B)、集合プールからのコロニーからのサンガー配列決定の結果を以下に示し(図9C)、実線はsgRNA標的化配列のプールを指す。sgRNA標的化配列は421バリアントを与える21個の可変ヌクレオチド位置を含んでいた。プールはすべての考えられるバリアントを含んでおり、各バリアントは重複末端とベクターの間の配列の縮重性を反映するクローニングを受けることができた。図9Aは、縮重塩基を含有しているssオリゴヌクレオチドの配列を示す。図9AのsgRNA標的化配列をベクターのU6プロモーター配列とスカフォールドテンプレート特異的配列の間に挿入し(16)、宿主細胞に形質転換し(17)、上記し、本明細書中に記載されているミニプレップ及び配列決定によりシントンについて分析した(18)。サンガー配列決定を集合プールからのクローンに対して実施した。配列の例を図9Cに示す。
図9C図9A〜9Cは、図8に示したものと類似のワークフローが重複末端間に縮重塩基を有するssオリゴヌクレオチドに対して使用され得ることを示す。図9A中の出発配列も上記ワークフローに示されており(図9B)、集合プールからのコロニーからのサンガー配列決定の結果を以下に示し(図9C)、実線はsgRNA標的化配列のプールを指す。sgRNA標的化配列は421バリアントを与える21個の可変ヌクレオチド位置を含んでいた。プールはすべての考えられるバリアントを含んでおり、各バリアントは重複末端とベクターの間の配列の縮重性を反映するクローニングを受けることができた。図9Aは、縮重塩基を含有しているssオリゴヌクレオチドの配列を示す。図9AのsgRNA標的化配列をベクターのU6プロモーター配列とスカフォールドテンプレート特異的配列の間に挿入し(16)、宿主細胞に形質転換し(17)、上記し、本明細書中に記載されているミニプレップ及び配列決定によりシントンについて分析した(18)。サンガー配列決定を集合プールからのクローンに対して実施した。配列の例を図9Cに示す。
図10図10は、集合反応産物をE.coliに形質転換した後プレートから選択した187個のコロニーの結果を表す。各コロニーをss DNAの挿入を確認するためにPCR増殖し、配列決定し、縮重塩基の分布を分析した。ここに示した結果から、実際各種コロニーが異なる縮重配列を含んでいたことが確認された。バイアスは検出されなかった。分析は、まず配列をfastqファイルに変換後、ギットハブ上のfastxツールキットからのfastx_quality_statsツールを用いて実施した。配列ロゴはバークレーのウェブロゴを用いて作成した。
【発明を実施するための形態】
【0042】
用語の説明
別段の定めがない限り、本明細書中で使用されている技術用語及び科学用語はすべて本発明が属する業界の当業者が一般的に理解しているのと同じ意味を有する。Singletonら,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,第2版,John Wiley and Sons,New York(1994)及びHale & Markham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,N.Y.(1991)は当業者に本明細書中で使用されている多くの用語の一般的意味を定めている。また、言及を明確及び容易にするために特定の用語を以下に定義する。
【0043】
本明細書中で使用されている遺伝子合成の分野で使用されている用語「シントン」はポリヌクレオチド集合体を指す。ポリヌクレオチド集合体は、オリゴヌクレオチド合成装置を用いて製造され得る、現在通常合成ポリ核酸毎に2000〜3000塩基であるサイズの重複断片の集合体を含み得る。或いは、重複断片は重複配列を与えるようにアダプターが付着している天然核酸からPCRにより得られ得る。集合目的のために、各断片のサイズは限定されない。多くの断片は、所望の長さの構築物を正確且つ効率的に作製することができるように末端の重複配列に依存して末端から末端に集合され得る。好ましくは、シントンはより短いポリヌクレオチドの集合から形成されるギャップもニックも含まない連続したより長いポリヌクレオチドである。しかしながら、核酸断片の集合から生ずるシントンの長さは特定サイズに限定されない。
【0044】
本明細書中で使用されている用語「5’−3’エキソヌクレアーゼ」は、5’末端から、すなわち5’から3’方向にDNAを分解するエキソヌクレアーゼを指す。当該5’−3’エキソヌクレアーゼは平滑末端で、ある実施形態では3’及び/または5’突出部で、ds DNAの鎖の5’末端からヌクレオチドを除去し得る。T5エキソヌクレアーゼ、λエキソヌクレアーゼ及びT7エキソヌクレアーゼが5’−3’エキソヌクレアーゼの例である。ある実施形態では、T5エキソヌクレアーゼが好ましい。T5エキソヌクレアーゼは更にssエンドヌクレアーゼ活性を有する。
【0045】
本明細書中で使用されている用語「リガーゼ」は、DNA分子の3’末端を別のDNA分子の5’末端に、特にニックで共有結合し得る酵素を指す。リガーゼの例には、T7リガーゼ、T4 DNAリガーゼ、E.coliDNAリガーゼ及びTaqリガーゼが含まれるが、多くの他のリガーゼが公知であり、本発明において使用され得る。
【0046】
本明細書中で使用されている用語「鎖置換ポリメラーゼ」は、酵素から下流の1個以上のヌクレオチド、例えば少なくとも10個、100個、またはそれ以上のヌクレオチドを置換することができるポリメラーゼを指す。鎖置換ポリメラーゼは、非鎖置換ポリメラーゼと当業界で定義されているPhusionと区別され得る。幾つかの実施形態では、鎖置換ポリメラーゼは少なくとも50℃、または少なくとも55℃の温度で安定であり、活性(鎖置換活性を含む)である。Taqポリメラーゼはニック翻訳ポリメラーゼであり、よって鎖置換ポリメラーゼではない。
【0047】
本明細書中で使用されている用語「一本鎖(ss)DNA結合タンパク質」は、ss DNに結合し、未成熟アニーリングを予防する、ss DNAがヌクレアーゼ及びポリメラーゼにより消化されるのを保護する、及び/またはDNAに対して他の酵素が効果的に機能するようにDNAから二次構造を除去するタンパク質を指す。本明細書中に記載されている組成物にss結合タンパク質を配合することはシントン形成の効率を最適化するために好ましい。ss DNA結合タンパク質の例はT4遺伝子32タンパク質、E.coliSSB、T7 gp2.5 SSB、ファージファイ29 SSB、及びET SSBであるが、多くの他のもの、例えばλファージのRedB、RacプロファージのRecT及び以下にリストする配列が公知であり、本発明において使用され得る。ある場合には、50℃で安定である耐熱性ss DNA結合タンパク質を使用し得る。よって、本発明の組成物、キットまたは方法の1つの実施形態では、ss DNA結合タンパク質はT4遺伝子32タンパク質、E.coliSSB、T7 gp2.5 SSB、ファージファイ29 SSB、ET SSB、λファージのRedB、またはRacプロファージのRecTである。1つの実施形態では、ss DNA結合タンパク質はET SSBである。本発明の組成物、キットまたは方法の1つの実施形態では、ss DNA結合タンパク質は耐熱性(すなわち、40℃〜60℃で安定)である。
【0048】
本明細書中で使用されている用語「緩衝剤」は、酸またはアルカリを溶液に添加したときのpHの変化に溶液が抵抗することができる物質を指す。本発明の組成物、キット及び方法において使用され得る適当な非天然緩衝剤の例には、例えばTris、HEPES、TAPS、MOPS、トリシン、またはMESが含まれる。
【0049】
用語「非天然」は、天然に存在しない組成物を指す。
【0050】
本明細書中に記載されているタンパク質は非天然であり得る。用語「非天然」は、天然状態のタンパク質と異なるアミノ酸配列及び/または翻訳後修飾パターンを有するタンパク質を指す。例えば、非天然タンパク質はタンパク質のN−末端、C末端、及び/またはN末端とC末端の間に1つ以上のアミノ酸置換、欠失、または挿入を有し得る。「非天然」タンパク質は、天然アミノ酸配列とは異なる(すなわち、天然タンパク質のアミノ酸配列に対して100%未満の配列同一性を有する)が、天然アミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有し得る。ある場合には、非天然タンパク質はN末端メチオニンを含有し得、または異なる(例えば、細菌)細胞により産生されるならば1つ以上の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化等)を欠いていてもよい。「変異」タンパク質は野生型タンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有し得、「融合」タンパク質を含み得る。用語「融合タンパク質」は、天然状態では結合されていない複数のポリペプチド成分から構成されるタンパク質を指す。融合タンパク質は2つ、3つ、または4つ以上の異なるタンパク質の組み合わせであり得る。用語「ポリペプチド」には融合タンパク質が含まれ、これらの融合タンパク質には2つ以上の異種アミノ酸配列の融合物、ポリペプチドの異種標的配列、リンカー、免疫学的タグ、検出可能な融合パートナー(例えば、蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等)等との融合物が含まれるが、これらに限定されない。融合タンパク質は、タンパク質のN末端、C末端、及び/または中間部分に付加されている1つ以上の異種ドメインを含み得る。融合タンパク質の2つの部分が「異種」ならば、これらはその天然状態の同一タンパク質の一部ではない。
【0051】
核酸の文脈において、用語「非天然」は、a)天然状態の核酸とは異なる(すなわち、天然の核酸配列に対して100%未満の配列同一性を有する)ヌクレオチドの配列;b)(G、A、TまたはCではない非天然骨格または糖を生じ得る)1つ以上の非天然ヌクレオチドモノマー;及び/またはc)核酸の5’末端、3’末端、及び/または5’末端と3’末端の間に対して1つ以上の他の修飾(例えば、付加した標識または他の部分)を含み得る;を含む核酸を指す。
【0052】
調製物の文脈において、用語「非天然」は、a)例えば異なる場所、異なる細胞中、または異なる細胞コンパートメント中にあるために本来組み合わされない成分の組合せ;b)天然には存在しない相対濃度を有する成分の組合せ;c)天然に存在する成分の1つと通常組み合わされるものを欠く組合せ;d)天然には存在しない形態、例えば乾燥、凍結乾燥、結晶、水性の形態にある組合せ;及び/またはe)天然には存在しない成分を含んでいる組合せ;を指す。例えば、調製物は、「非天然」緩衝剤(例えば、Tris、HEPES、TAPS、MOPS、トリシン、またはMES)、天然には存在しない洗浄剤、染料、反応増強剤または阻害剤、酸化剤、還元剤、溶媒または保存剤を含み得る。
【0053】
3’エキソヌクレアーゼ活性を有する鎖置換ポリメラーゼを使用することが望ましいことがある。理論により限定されることを望まないが、二重鎖の3’末端上のフラップ配列を除去するために3’エキソヌクレアーゼ活性が望ましく、フラップ配列は標的ポリヌクレオチドを該ポリヌクレオチドが置かれているプラスミドから抽出するための酵素切断の結果であり得る。これは、NotIを実施例に記載されているように使用する場合である。しかしながら、切除した断片上に平滑末端を生じさせる制限エンドヌクレアーゼを使用するならば、3’エキソヌクレアーゼ活性を必要としないことがある。
【0054】
3’エキソヌクレアーゼ活性は標準のDNAテンプレート及びプライマーを用いて常套的に決定され得、これらのプライマーはハイブリダイズされていない3’ヌクレオチドを有しているか、または有していない。ポリメラーゼが3’エキソヌクレアーゼ活性を有しているならば、アンプリコンはいずれかのプライマー対を用いて検出されるであろう。ポリメラーゼが3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くならば、アンプリンコンはハイブリダイズされていない3’ヌクレオチドを有するプライマーを用いて検出されないであろう。
【0055】
本明細書中で使用されている用語「カリウム塩」はカリウムの塩を指し、これらにはKClが含まれるが、これに限定されない。用語「ナトリウム塩」はナトリウムの塩を指し、これにはNaClが含まれるが、これに限定されない。
【0056】
本明細書中で使用されている用語「ポリヌクレオチド」はオリゴヌクレオチドを包含し、任意の長さを有する核酸を指す。ポリヌクレオチドはDNAまたはRNAであり得る。特定されていない限り、ポリヌクレオチドはssまたはdsであり得る。ポリヌクレオチドは、例えばDNA合成装置を用いて合成される合成物であっても、例えば天然ソースから抽出されたり、クローン化または増幅材料から誘導される天然物であってもよい。本明細書で言及されているポリヌクレオチドは修飾塩基を含み得る。
【0057】
本明細書中で使用されている用語「ポリヌクレオチドのセット」は、少なくとも2個のポリヌクレオチドの集合物を指す。幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドのセットは少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも12個、または少なくとも15個、またはそれ以上のポリヌクレオチドを含み得る。
【0058】
本明細書中で使用されている用語「重複配列」は、2つのポリヌクレオチドにおいて相補性である配列を指し、重複配列が1つのポリヌクレオチド上でssならば、別のポリヌクレオチド上の別の重複相補性ss領域にハイブリダイズし得る。例えば、重複配列はポリヌクレオチドのセット中の少なくとも5個、10個、15個、またはそれ以上のポリヌクレオチドにおいて相補性であり得る。重複配列は2つの異なる分子の3’末端(例えば、2つのssオリゴヌクレオチドの3’末端、または第1dsポリヌクレオチドの上鎖の3’末端及び第2ds分子の下鎖の3’末端)にあるか、またはその近く(例えば、約5、10、20ヌクレオチドの範囲内)にあり得る。非重複配列が3’末端にあるならば、非重複配列はポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を用いて除去され得る。重複配列の長さは異なり得、ある場合には少なくとも12ヌクレオチドの長さ(例えば、少なくとも15、20、またはそれ以上のヌクレオチドの長さ)であり得、及び/または最高100ヌクレオチドの長さ(例えば、最高50、最高30、最高20、または最高15ヌクレオチドの長さ)であり得る。或いは、ポリヌクレオチドのセット中の重複配列は2kb以下、1kb以下、或いは900塩基、800塩基、700塩基、600塩基、500塩基、400塩基、300塩基、200塩基、または100塩基未満であり得る。好ましくは、重複配列の長さは15ヌクレオチド〜80ヌクレオチドの範囲、例えば最高20、最高25、最高30、最高35、最高40、最高45、最高50、最高55、最高60、最高65、最高70、最高75、または最高80ヌクレオチドである。重複の最小長さはTmにより規定され得、Tmは好ましくは48℃に等しいかまたはそれ以上である。
【0059】
本明細書中で使用されている用語「ポリヌクレオチド集合」は、2個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、12個以上、15個以上のポリヌクレオチド、例えば4個以上のポリヌクレオチドが別に結合してより長いポリヌクレオチドを作製する反応を指す。多くの実施形態においてポリヌクレオチド集合反応の産物、すなわち「集合ポリヌクレオチド」または「シントン」は重複配列の各々の1コピーを含んでいなければならない。
【0060】
本明細書中で使用されている用語「適当な反応条件下でインキュベートする」は、所望の結果、すなわちポリヌクレオチド集合を達成するために適当な温度及び時間で反応を維持することを指す。本方法で使用される酵素及び試薬のために適している反応条件は(例えば、本明細書の実施例に記載されているように)公知であり、よって本方法のための適当な反応条件は容易に決定され得る。これらの反応条件は使用する酵素に応じて(例えば、その最適温度等に応じて)変更し得る。
【0061】
本明細書中で使用されている用語「等温」は、集合を生起させるために温度の積極的調節を必要としない温度条件を指す。水浴または加熱ブロックの温度のわずかな変動は用語「等温」の意味の範囲内である。例として、用語「等温」は、反応を開始した後に熱変性ステップを必要としない反応条件を指し得る。より具体的には、等温方法は熱サイクリング、すなわち90℃を超える変性温度とアニーリング/延長温度の間のサイクリングを伴わない。等温条件は通常90℃を下回る温度で長期間(例えば、5分間〜12時間以上)のインキュベーションを伴う。1つの実施形態では、等温増幅反応は30℃〜75℃、例えば40℃〜60℃の範囲の温度で実施した。
【0062】
本明細書中で使用されている用語「結合」は2つの配列間の共有結合の形成を指す。
【0063】
本明細書中で使用されている用語「組成物」は、リストされている試薬に加えて他の試薬、例えばグリコール、塩、dNTPs等を含み得る試薬の組合せを指す。組成物は任意の形態、例えば水性または凍結乾燥の形態であり得、任意の状態(例えば、凍結または液体形態)であり得る。
【0064】
本明細書中で使用されている「ベクター」は、工学処理したベクターが宿主細胞において複製され得るように断片またはシントンが組み込まれ得る適当なDNAである。線形化ベクターは環状ベクターの制限エンドヌクレアーゼ消化により、またはPCRにより作製され得る。断片及び/または線形化ベクターの濃度はゲル電気泳動または他の手段により決定され得る。
【0065】
本発明で使用されている1つ以上のタンパク質(例えば、リガーゼ、SSBP、5’−3’エキソヌクレアーゼまたはポリメラーゼ等)は温度感受性または耐熱性であり得、本明細書中で使用されている用語「温度感受性」は65℃の温度で10分後にその活性の少なくとも95%を失う酵素を指し、用語「耐熱性」は65℃の温度で10分後にその活性の少なくとも95%を保持している酵素を指す。
【0066】
実施形態の詳細説明
各種実施形態をより詳細に説明する前に、本開示内容の教示は記載されている具体的実施形態に限定されず、よってもちろん変更し得ることを理解すべきである。本教示内容の範囲は添付されている特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書中で使用されている用語は具体的実施形態を説明する目的だけであり、限定的であると意図されないことも理解すべきである。
【0067】
本教示内容を各種実施形態と併せて説明しているが、本教示内容をこれらの実施形態に限定すると意図されない。逆に、本教示内容は、当業者が認識しているように各種代替物、修飾物及び均等物を包含する。
【0068】
数値の範囲が記述されている場合、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り下限の単位の10分の1までの各介在値、その範囲の上限と下限間の各介在値、及び記述されている範囲中の他の記述されているかまたは介在する値は本判明の開示内容の範囲に包含されると理解される。
【0069】
本明細書中に記載されているものに類似または均等の方法及び材料も本教示内容の実施または試験の際に使用され得るが、幾つかの例示的方法及び材料をここに記載する。
【0070】
刊行物は出願日前のその開示内容のために引用されており、本特許請求の範囲は先発明の理由で刊行物に先行する資格がないことを認めるとして解釈すべきではない。更に、記載されている発行日は独立して確認しなければならない実際の発行日と異なり得る。
【0071】
本明細書及び添付の特許請求の範囲中で使用されている単数形“a”、“an”及び“the”は文脈上そうでないとする明確な指示がない限り複数形を含むことに注目すべきである。更に、特許請求の範囲は任意の要素を排除するように草案され得ることに注目すべきである。よって、この記述は、請求項に記載されている要素と関連した「単に」、「のみ」等のような排他的用語の使用、または「否定的」限定の使用に対する先行詞として役立つと意図される。
【0072】
この開示内容を読んだ当業者には自明のように、本明細書中に記載され、例示されている個々の実施形態の各々は、本教示内容の範囲または趣旨から逸脱することなく他の幾つかの実施形態の特徴から容易に分離されるかまたは組み合わされ得る個別の成分及び特徴を有する。記載されている方法は記載されている事象の順序で、または論理的に可能な他の順序で実施され得る。
【0073】
ポリヌクレオチドのセット中で重複する配列は2kb以下、1kb以下、或いは900塩基、800塩基、700塩基、600塩基、500塩基、400塩基、300塩基、200塩基、または100塩基未満のような適当な長さを有し得る。重複領域は8ヌクレオチドほどわずかであり得る。好ましくは、重複配列の長さは15ヌクレオチド〜80ヌクレオチドの範囲、例えば最高20、最高25、最高30、最高35、最高40、最高45、最高50、最高55、最高60、最高65、最高70、最高75、または最高80ヌクレオチドである。例えば、重複部分の最小長さはTmにより規定され得、Tmは好ましくは48℃に等しいかまたはそれ以上である。
【0074】
合成オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドはシントン集合において使用する前にその合成中に生じたエラーを含み得る。集合前にこれらのエラーを正すために、ミスマッチ修復ステップを実施することが望ましい。この目的のために、集合前に合成核酸のミスマッチを修復するための各種方法が記載されている。合成核酸の集団は調製物の変性及び復元がミスマッチを示し得るようにランダムエラーを有し得る。mutHLS、cel−1ヌクレアーゼ、T7 endo 1、uvrD、T4 EndoVII、E.coliEndoVのような自然から単離したタンパク質(US 7,851,192及びUS 8,048,664を参照されたい)はミスマッチを含有するDNA二重鎖に選択的に結合し、ミスマッチ塩基の核酸を切断し、場合によりテンプレートのヌクレオチド配列に基づいて正しい塩基と置換し得る。
【0075】
DNAの断片を集合させるためには非鎖置換ポリメラーゼをss結合タンパク質、5’−3’−エキソヌクレアーゼ及びリガーゼと一緒に使用しなければならないという当業界の教示に関わらず、本発明において鎖置換ポリメラーゼを鎖置換が生ずる条件下で使用し得ること、及びこれは多数の断片から1つの核酸を効果的に作製するために驚くほど低濃度の出発ポリヌクレオチド断片で効率的であることが驚くことに判明した。
【0076】
本発明の集合混合物、組成物、キットまたは方法の実施形態において使用され得る鎖置換ポリメラーゼの例はファミリーBポリメラーゼのメンバー、例えば表1に同定されているもの(配列番号33〜55)(これらに限定されない)を含む。加えて、前記ポリメラーゼの融合物、例えば複数のポリメラーゼ及び/または(表2に示すような)ss結合ドメイン(配列番号56〜97)間の融合物を使用し得る。実施形態では、表1中のポリメラーゼ部分、または表1中のこれらのタンパク質部分に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をN末端またはC末端で表2に記載されているDNA結合ドメイン、または表2中のDNA結合部分に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質部分に融合させて、本発明で使用するための鎖置換融合ポリメラーゼを形成し得る。DNA結合ドメインを場合によりポリメラーゼのN末端またはC末端に融合させてもよい。
【0077】
本明細書中(例えば、図1A〜1E及び実施例1を参照されたい)に記載されているアッセイにより決定して鎖置換性であると分かる他のポリメラーゼのバリアントまたは新規単離物も使用し得る。これらのソース由来のポリメラーゼの配列はGenBankから容易にアクセスすることができる。鎖置換配列の高い保存度のために、野生型ポリメラーゼと80%、85%、90%、または95%のアミノ酸配列同一性を有するバリアントは過度の実験なしに予め選択した緩衝剤中で実施例1に記載したアッセイで迅速に且つ容易に確認し得る鎖置換性を有すると期待される。
【0078】
1つの実施形態では、本発明の反応混合物、組成物、キットまたは方法は配列番号1または配列番号102と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%の配列同一性(例えば、配列番号1または配列番号102と100%の配列同一性)を有する鎖置換ポリメラーゼを含み、または使用する。別の実施形態では、本発明の反応混合物、組成物、キットまたは方法は配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%の配列同一性(例えば、配列番号2と100%の配列同一性)を有する結合ドメインを有するポリメラーゼを含み、または使用する。別の実施形態では、本発明の反応混合物、組成物、キットまたは方法は配列番号1、または配列番号102、及び配列番号2、配列番号3、または配列番号33〜97のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%の配列同一性(例えば、配列番号1または配列番号102、及び配列番号2、配列番号3、または配列番号33〜97のいずれかと100%の配列同一性)を有するポリメラーゼを含み、または使用する。これらの組成物はポリメラーゼが鎖置換である反応条件で使用され得る。組成物は3’−5’エキソヌクレアーゼ活性とポリメラーゼ活性が活性である反応条件で使用され得る。これは、NotIのような制限酵素を使用している場合有用であり得る。この場合、3’−5’エキソヌクレアーゼは二重鎖の3’末端上のフラップ配列を除去し得る。しかしながら、切除した断片上に平滑末端を生成させる制限エンドヌクレアーゼを使用する場合、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を必要としないことがある。集合反応は等温条件下で実施され得る。1つの実施形態では、等温条件は50℃である。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
本発明のある実施形態では、反応混合物、組成物、キットまたは方法は、温度感受性であり、温度を50℃以上に上昇させることにより不活化され得る5’−3’エキソヌクレアーゼ、例えばT5/5’−3’−エキソヌクレアーゼを含み得る。1つの実施形態では、5’−3’エキソヌクレアーゼはエキソヌクレアーゼ活性及びssエンドヌクレアーゼ活性を有する。幾つかの実施形態では、反応混合物は更にリガーゼ、例えばNAD要求性リガーゼ及び/または耐熱性リガーゼ、例えばTaqリガーゼを含み得る。好ましい実施形態では、反応混合物はss結合タンパク質を含み得る。ss結合タンパク質は耐熱性であり、例えばET SSBであり得る。集合反応は等温条件下で実施され得る。
【0082】
ある実施形態で、リガーゼの使用は任意である。例えば、集合断片を宿主細胞を形質転換するためのベクターに直接導入する場合、E.coliのような宿主細胞がインビボでニックを修復でき得るのでリガーゼは必要としない。しかしながら、形質転換前に正しい集合を確認する目的で集合断片を増幅させるならば、ニックを閉じるためにリガーゼを使用し、ポリメラーゼにより全標的DNAを増幅できることが望ましい。
【0083】
個々の断片のクローニングはデータベースまたは刊行物から入手した配列を有する化学合成したポリヌクレオチド断片を使用し得、前記ポリヌクレオチド断片は重複配列を有する。これらは、挿入したポリヌクレオチドの切除に適した制限酵素部位に隣接するプラスミド中の部位にポリヌクレオチドを挿入することによりプラスミドにおいてクローン化され得る。
【0084】
任意のプラスミドを使用し得る。本実施例は選択マーカーとしてクロラムフェニコールを含む市販されているpACYC184を使用している。クロラムフェニコール耐性遺伝子の代わりに選択マーカーを使用し得る。同様に、付着末端または平滑末端を生じさせるべくオリゴヌクレオチドの末端で特異的に切断し得る切断酵素の特異的認識部位を選択し得、特異的切断部位は当該断片の末端に隣接する工学操作した位置に加えて当該断片で生じない。本実施例では、付着末端を生ずる8個の塩基カッターNotI(CGCCGGCG)に対する認識部位をDNA合成により当該ポリヌクレオチドの隣に導入した。しかしながら、この部位は選択したプラスミド中に存在し得、または増幅用プライマーにより当該合成オリゴヌクレオチドに添加され得る。特異的切断酵素の例には、制限エンドヌクレアーゼ及びホーミングエンドヌクレアーゼが含まれる。
【0085】
当該オリゴヌクレオチドまたはDNA断片を化学合成し、クローン化し、或いは既存のDNAから増幅し、選択マーカーを有するベクターにクローン化したら、酵素切断により切除することが好ましい。結合させるつもりの隣接断片またはオリゴヌクレオチドとの重複配列を取り込むように合成または増幅させた断片またはオリゴヌクレオチドをその後集合反応において集合させる。
【0086】
選択したハイブリダイゼーション条件下で、反応混合物中の5’−3’エキソヌクレアーゼ(例えば、0.004〜0.016U/μlの範囲の濃度の)は断片またはオリゴヌクレオチドの5’末端のss領域をチューバックし、重複配列の領域を通ってチューバックし続け、3’ss領域を与えるために限定された距離(例えば、少なくとも100塩基)更に続け得る(例えば、図2A〜2C及び7を参照されたい)。同時に、図1A〜1E及び実施例1のアッセイで規定される鎖置換ポリメラーゼ(例えば、0.005U/μl〜0.5U/μlの範囲の濃度の)はハイブリダイズしたds領域とss領域間に残っているギャップを修復する。ポリメラーゼは鎖置換性であるので、追加の下流配列を置換してssフラップを形成し得る。しかしながら、T5エキソヌクレアーゼssエンドヌクレアーゼ活性はこのフラップを除去し、関連するニックはリガーゼ(例えば、0.001U/μl〜20U/μlの範囲の濃度の)により修復され得る。
【0087】
断片を選択圧下で宿主細胞のコロニーにクローン化されるDNAの大きなピースに集合させたら、これらのコロニー由来のDNAをベクターからレスキューし、再び他の断片と集合させ、宿主細胞に形質転換すると、DNAのサイズを数倍延長し得る。宿主細胞はコンピテント細菌細胞であり得、または酵母細胞または他の真核細胞であり得る。
【0088】
本明細書中に記載されている集合方法は非常に効率的であると分かった。例えば、より大きい断片を集合させるために0.02nM〜100nMのオリゴヌクレオチド(ss)またはDNA断片(ds)を使用し得、反応で使用されるssオリゴヌクレオチド濃度は類似の集合反応において使用されるds DNA断片の量よりも最高約50倍多くてもよい。同様に、等モル濃度の単一断片及び選択マーカーを含有しているプラスミド、及び類似量の集合断片と別の選択マーカーを含有しているベクターを使用し得る。これらの量はガイドとして意図されているが、集合の効率を高めるかどうかにより減らすことができる。例えば、カリウム塩、KClを添加すると、生産的な集合の効率をインジケーターとしてlac1Zの集合を使用してコロニーの数により決定して1.5倍高めることができる(例えば、図5を参照されたい)。
【0089】
ss標的オリゴヌクレオチドを2個のds DNA分子間または線形化ベクターへ集合させる方法も非常に効率的である。本明細書には変更した表現型を調べるべく細胞に導入され得るCRISPR−Cas遺伝子編集プロトコルのためのガイドRNAを同定するために特異的/ランダム配列を用いる例を記載するが、限定的と意図されない。最初、どの配列がこの目的を達成するために適当であり得るかは知られていない。縮重配列を含有しているライブラリーの作製により、このタイプの分析が可能となる。CRISPR/Cas9に基づく遺伝子編集はゲノム編集の分野で急速にはやりつつある。最も一般的に使用されているCas9含有プラスミドのサイズのために、Cas9/sgRNA発現ベクターへのsgRNAまたはsgRNAライブラリーの構築は面倒なことがあり得る。このアプローチはss DNAオリゴヌクレオチドを用いて上記問題を解決する。
【0090】
別の実施形態において、表2のDNA結合ドメインはBstポリメラーゼ、Bst大断片、またはその変異体(例えば、記載されており、特許請求されているすべてのBstバリアントを含めて、US 8,993,298及びUS 2015/0152396を参照されたい)に融合され得る。
【0091】
キット
本発明により、上記した本方法を実施するためのキットをも提供する。ある実施形態では、本キットは、i.5’−3’エキソヌクレアーゼ、ii.任意成分のリガーゼ、iii.鎖置換ポリメラーゼ;及びiv.ss DNA結合タンパク質を含み得る。キットの成分は1つの容器中で組み合わされ得、または各成分がそれ自体の容器中に存在し得る。例えば、キットの成分を1つの反応チューブ中で、または1つ以上の異なる反応チューブ中で組み合わせてもよい。このキットの成分の更なる詳細は上記されている。キットは例えば実行しようとする方法に依存して方法で使用され得る上記した及び下記する他の試薬、ミスマッチ修復酵素、例えばmutHLS、cel−1ヌクレアーゼ、T7エンド1、uvrD、T4 EndoVII、E.coliEndoV、緩衝剤、dNTPs、シントンを挿入するプラスミド及び/またはプラスミドを受け取るためのコンピテント細胞、コントロール等も含み得る。幾つかの実施形態では、キットは非鎖置換ポリメラーゼ及び/またはクラウディング剤を含まない。
【0092】
上記した成分に加えて、本キットは更に本方法を実施するためにキットの成分を使用するための説明書を含む。本方法を実施するための説明書は通常適当な記録媒体に記録されている。例えば、説明書は支持体、例えば紙またはプラスチック等上に印刷され得る。よって、説明書はキット中に添付文書として、(すなわち、包装またはサブ包装と合わされる)キットまたはその成分の容器のラベル等に存在し得る。他の実施形態では、説明書は適当なコンピューター読み取り可能な記録媒体、例えばCD−ROM、ディスケット等に存在する電子記憶データとして存在している。さらに他の実施形態では、キット中に説明書そのものは存在していないが、リモートソースから、例えばインターネットを介して説明書を得る手段が用意されている。この実施形態の例は、説明書を見ることができる及び/またはそこから説明書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。指示により、説明書を得るためのこの手段は適当な支持体に記録されている。
【0093】
本明細書中に記載されている断片を集合させ、シントンを形成するための組成物、キット及び方法により、PCR、RCA、またはコンピテント細菌または真核宿主細胞の直接形質転換またはトランスフェクションを含めた各種の他の分子生物学用途のためのテンプレートとして役立ち得るds完全密封されたDNAである産物が生ずる。
【0094】
本発明を更に説明するために、以下の具体的実施例を本発明を例示するために与えられており、その範囲を限定すると決して解釈されるべきではないとの理解のもとに提示されている。
【0095】
2014年8月27日に出願の米国仮出願番号62/042,527、2015年7月7日に出願の米国仮出願番号62/189,599、及び2015年7月16日に出願の米国仮出願番号62/193,168を含めた本明細書中に挙げられているすべての文献は参照により組み入れられる。
【実施例】
【0096】
実施例1:ポリメラーゼの鎖置換性を確認するためのアッセイ
鎖置換ポリメラーゼと非鎖置換ポリメラーゼを区別するためにアッセイを開発した。10nM FAMプライマー/テンプレート/遮断オリゴヌクレオチド、1×THERMOPOL(R)緩衝液(New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)(図1A)及び0.1mM dNTPを含有する10μlの反応物を調製した。図1Bは、ポリメラーゼを欠くFAM標識プライマーである対照である。反応物に鎖置換DNAポリメラーゼを添加し、1μlの10倍希釈したサンプルと50℃で30分間インキュベートし、キャピラリー電気泳動により分析すると、FAMプライマーが置換された遮断オリゴヌクレオチドを介して延長した。結果を図1D〜1Eに示す。確認された鎖置換ポリメラーゼであるBstポリメラーゼについて図2D中のピークの位置は非天然ポリメラーゼのSPB49Fについて観察されたピークに相当する。Bstポリメラーゼ複製の産物は3’dAを有するように、Bstポリメラーゼ中に存在しない3’−5’エキソヌクレアーゼ活性から生ずるSPB49Fにより生じた平滑末端から、小さいサイズシフトが得られる。図1Cは、合成が遮断プライマーで停止する非鎖置換ポリメラーゼ−T4DNAポリメラーゼの産物を示す。
【0097】
実施例2:6個の断片からの鎖置換ポリメラーゼを用いる大DNA分子の合成、及び集合が鎖置換ポリメラーゼを用いて効率的であったことの確認
プラスミドA、B、C、D及びEは、PCR産物(一緒にLacI遺伝子及びLacZ遺伝子の領域をカバーする断片(Frag.)1、2、3、4、5)からNEB(R)PCRクローニングキット(New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)を用いて別々に構築した。
【0098】
この実験では、別々のプラスミドに組み込んだ5個の異なる断片を50ngの各PCR(「断片」のソース)の濃度で用い、25ngのpMiniT(TM)ベクター(NEB #E1202)はアンピシリンを含有するプラスミドであった。集合のための5個の断片をまずPCRを用いて増幅させた。LacI−lacZ DNA断片集合体システムの作製において次のプライマーを使用した:
【0099】
【表3】
【0100】
増幅させた断片をクローン化し、配列決定して、増幅中にエラーが導入されなかったことを確認した。
【0101】
【化1】
【0102】
【化2】
【0103】
【化3】
【0104】
【化4】
【0105】
【化5】
【0106】
5個の断片の各々は、設計により最終集合体の順に隣接断片(断片1と2、2と3、3と4、4と5の間)と80bpの重複領域を有していた。断片1及び5はベクターの末端と20bp重複部も共有していた。任意の市販されているベクター、例えばpACYC184(New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)を使用し得る。pACYC184ベクターを逆PCRの方法により作製し、これはNotI−HF(R)(New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)を用いて処理し、熱不活化した後、上記集合ミックスの存在下で断片1〜5を集合させた(図2A〜2Cを参照されたい)。
【0107】
集合中、網掛け領域から延長しているヌクレオチドをT5エキソヌクレアーゼにより分解し、グレー領域のヌクレオチドをポリメラーゼにより除去した。断片を集合させ、E.coliに形質転換した後、青色/白色選択により決定した生産性集合体をIPTG及びX−Galを用いてプレート上に記録した。
【0108】
T5エキソヌクレアーゼ、Taqリガーゼ、鎖置換DNAポリメラーゼ及びss結合ドメイン(ET SSB)を緩衝液を含む反応混合物中で合わせて、ミックス1を形成した。これらの酵素はすべてマサチューセッツ州イプスウイッチのNew Englandから入手した。5つの150ngのNotI−HF消化プラスミド(プラスミドA、B、C、D及びE)を105ngのベクター、及びミックス1またはGAMMのいずれかと20μlの全容量で混合した。反応物を50℃で60分間インキュベートした。NEB 5α(New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)コンピテント細胞に形質転換するために2μlの集合産物を使用した。次いで、細胞をクロラムフェニコールを含有している細胞上に広げた。陽性集合体をクロラムフェニコール+IPTG+X−Galを用いてプレート上の青色コロニーとして同定し、37℃で一晩インキュベートした。
【0109】
形質転換前にすべての断片が結合し、連結していることを確認するための集合産物のPCRは以下のステップを含んでいた:1μlの集合産物をPCRにおいて使用して、5個の断片及びベクターが一緒に連結していることを確認した。ベクター上でアニールするPCRプライマーの対を使用して、全集合LacIZ遺伝子(5.3kb)を増幅させた。レーン1及び2は二重PCR結果である。レーンMはマサチューセッツ州イプスウイッチのNew England Biolabsの2−log DNAラダーである(図4を参照されたい)。
【0110】
選んだ8つのコロニーから配列決定結果を得、サンガー配列決定の目的でプラスミドDNAを精製した。6つのプライマーを使用して4.8kbを配列決定した。断片間及び重複領域からの延長領域の接合配列は2%未満の配列エラーを示した。
【0111】
集合DNAを配列決定するために使用したプライマーは:
【0112】
【化6】
である。
【0113】
実施例3:一本鎖オリゴヌクレオチドの線形化ベクターまたは2個の異なるds DNAへの集合
ヒト(H.sapiens)由来の遺伝子を標的化するためにsgRNAに対応するオリゴヌクレオチドを以下のように設計した:
1. PAM配列を所望標的配列についてスキャンした。例えば、
【0114】
【化7】
中のNGG。
【0115】
2. 部分U6プロモーター配列及びスカフォールドRNA配列に隣接する21ヌクレオチド標的配列を含む71塩基ss DNAオリゴヌクレオチドを設計した。
【0116】
例えば、ssオリゴヌクレオチドが
【0117】
【化8】
として規定されている図8A〜C、またはssオリゴヌクレオチドがランダムライブラリー
【0118】
【化9】
を作製するように設計されている図9A〜Cを参照されたい。
【0119】
3. ss DNAオリゴヌクレオチドを1×NEBuffer 2(New England Biolabs,マサチューセッツ州イプスウイッチ)において0.2μMの最終濃度まで作製した。
【0120】
4. 5μlのss DNAオリゴヌクレオチド(0.2μM)、30ngの制限酵素線形化ベクター及びddHOを含有する10μlの反応ミックスを形成した。
【0121】
5. 上記方法に使用するための適当なベクターはLife Technology(OFP Reporter キットカタログ番号:A21174のGeneArt(R)CRISPR Nucleaseベクター)からのdsベクターである。他のベクターはAddgeneプラスミド#42230、pX330−U6−Chimeric_BB−CBh−hSpCas9(詳細については、https://www.addgene.org/42230/を参照されたい)より提供される。或いは、U6プロモーターの制御下でsgRNAスカフォールドを含有しているプラスミドを使用し得る。
【0122】
6. 10μlのss結合タンパク質、リガーゼ、エキソヌクレアーゼ及びポリメラーゼを含有するマスターミックを反応ミックスに添加し、集合反応物を50℃で1時間インキュベートした。
【0123】
7. NEB 10βコンピテントE.coliを2μlの集合産物を用いて、製造業者のプロトコル(New England Biolabs)に従って形質転換した。
【0124】
8. 100μlの形質転換細胞をプレート上でアンピシリン抗生物質と一緒に広げ、37℃で一晩インキュベートした。
【0125】
9. 10個のコロニーを選択し、プラスミドDNAを配列決定のために精製した。
【0126】
2つのオリゴヌクレオチドを合成し、再アニーリングしなければならない従来のクローニング方法とは異なり、本実施例はオリゴヌクレオチドを設計し、所望のベクターを用いて集合させるための簡単な方法を提供し、特に時間の節約、使いやすさ及びコストの点で従来の方法に比して実質的な改善を示す。
【0127】
【化10】
【0128】
【化11】
【0129】
【化12】
【0130】
【化13】
【0131】
【化14】
【0132】
【化15】
【0133】
【化16】
【0134】
【化17】
【0135】
【化18】
【0136】
【化19】
【0137】
【化20】
【0138】
【化21】
【0139】
【化22】
【0140】
【化23】
【0141】
【化24】
【0142】
【化25】
【0143】
【化26】
【0144】
【化27】
【0145】
【化28】
【0146】
【化29】
【0147】
【化30】
【0148】
【化31】
【0149】
【化32】
【0150】
【化33】
【0151】
【化34】
【0152】
【化35】
【0153】
【化36】
【0154】
【化37】
【0155】
【化38】
【0156】
【化39】
【0157】
【化40】
【0158】
【化41】
【0159】
【化42】
【0160】
【化43】
【0161】
【化44】
【0162】
【化45】
【0163】
【化46】
【0164】
【化47】
【0165】
【化48】
【0166】
【化49】
【0167】
【化50】
【0168】
【化51】
【0169】
【化52】
【0170】
【化53】
【0171】
【化54】
【0172】
【化55】
【0173】
【化56】
【0174】
【化57】
【0175】
【化58】
【0176】
【化59】
【0177】
【化60】
【0178】
【化61】
【0179】
【化62】
【0180】
【化63】
【0181】
【化64】
【0182】
【化65】
【0183】
【化66】
【0184】
【化67】
【0185】
【化68】
【0186】
【化69】
【0187】
【化70】
【0188】
【化71】
【0189】
【化72】
【0190】
【化73】
【0191】
【化74】
【0192】
【化75】
【0193】
【化76】
【0194】
【化77】
【0195】
【化78】
【0196】
【化79】
【0197】
【化80】
【0198】
【化81】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]