特許第6594976号(P6594976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594976
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】車両用ディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/226 20060101AFI20191010BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20191010BHJP
   F16D 55/2265 20060101ALI20191010BHJP
   F16D 55/227 20060101ALI20191010BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20191010BHJP
   F16D 65/095 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   F16D55/226 104F
   F16D65/02 A
   F16D55/2265 108
   F16D55/227 106B
   F16D65/02 M
   F16D65/092 D
   F16D65/095 G
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-523707(P2017-523707)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2016067310
(87)【国際公開番号】WO2016199880
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2018年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-118833(P2015-118833)
(32)【優先日】2015年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】熱田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−132449(JP,A)
【文献】 実開昭63−146232(JP,U)
【文献】 実開昭63−059229(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 55/226
F16D 65/02
F16D 55/2265
F16D 55/227
F16D 65/092
F16D 65/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータの一側部に配置され、ピストンを備えた作用部と、前記ディスクロータの他側部に配置され、反力爪を備えた反作用部とをブリッジ部で連結してキャリパボディを形成し、該キャリパボディを、前記ディスクロータの一側部で車体に固設されるキャリパブラケットに一対のスライドピンを介してディスク軸方向にスライド可能に支持し、前記作用部と反作用部との間に前記ディスクロータを挟んで一対の摩擦パッドを対向配置し、該摩擦パッドに設けた吊下げ部を、前記作用部と反作用部とに亘ってディスク軸方向に架け渡されるハンガーピンに吊持させた車両用ディスクブレーキにおいて、
前記摩擦パッドは、車両前進時におけるディスク回入側で、且つ、ディスク半径方向外側に前記パッド吊下げ部が形成されるとともに、ディスク回出側に、前記キャリパボディ又は前記キャリパブラケットのいずれか一方に設けたトルク受部に当接して制動トルクを伝達させるトルク伝達部を備え、
前記キャリパボディは、前記ブリッジ部のディスクロータ側面に、前記パッド吊下げ部をディスク軸方向に移動可能に収容する収容凹部が形成され
前記ブリッジ部と前記摩擦パッドの間に縮設されるパッドスプリングが、ディスク回出側に偏って設けられていることを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記摩擦パッドはディスク回入側の外面に、前記キャリパボディよりも外方に突出する摘まみ片を備えていることを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記摩擦パッドは、前記ハンガーピンを前記キャリパボディから取り外し、前記摩擦パッドのディスク回入側をディスク半径方向内側に回動させることにより、前記キャリパボディを前記キャリパブラケットに組み付けた状態で、前記キャリパボディから取り外し可能となることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二輪車等の車両に用いられる車両用ディスクブレーキに関し、詳しくは、ディスクロータを跨いでディスク軸方向に懸架されるハンガーピンで一対の摩擦パッドを吊持した車両用ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピンスライド型のキャリパボディを用いた車両用ディスクブレーキにあっては、キャリパボディの作用部と反作用部との間に、一対の摩擦パッドをディスクロータを挟んで対向配置し、該摩擦パッドの裏板のディスク外周側に一対の吊下げ部を突設し、この吊下げ部を作用部と反作用部とに亘ってディスク軸方向に架け渡される一対のハンガーピンにそれぞれ吊持させたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。しかし、特許文献1のようなものでは、2本のハンガーピンがキャリパボディの内側に配置されていることから、摩擦パッド及びキャリパボディを車体に組み付けた状態で、摩擦パッドの交換を行うことができず、摩擦パッドの交換に手間が掛かっていた。
【0003】
このため、摩擦パッドの吊下げ片を、キャリパボディのブリッジ部のディスク回入側へ突出させて、前記吊下げ片を、作用部と反作用部とに亘ってディスク軸方向に架け渡される1本のハンガーピンに吊持させたものがあった(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−16836号公報
【特許文献2】特開2004−132449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献2のものでは、摩擦パッド及びキャリパボディをキャリパブラケットに組み付けた状態でも、ハンガーピンを取り外して摩擦パッドを交換することが可能となるものの、キャリパボディの作用部と反作用部とを、ブリッジ部のディスク回出側へ突出させてハンガーピンを架け渡すことから、キャリパボディが大型化し、重量も嵩んでいた。
【0006】
そこで本発明は、キャリパボディの小型化を図りながら、摩擦パッドを良好に交換することができる車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキは、ディスクロータの一側部に配置され、ピストンを備えた作用部と、前記ディスクロータの他側部に配置され、反力爪を備えた反作用部とをブリッジ部で連結してキャリパボディを形成し、該キャリパボディを、前記ディスクロータの一側部で車体に固設されるキャリパブラケットに一対のスライドピンを介してディスク軸方向にスライド可能に支持し、前記作用部と反作用部との間に前記ディスクロータを挟んで一対の摩擦パッドを対向配置し、該摩擦パッドに設けた吊下げ部を、前記作用部と反作用部とに亘ってディスク軸方向に架け渡されるハンガーピンに吊持させた車両用ディスクブレーキにおいて、前記摩擦パッドは、車両前進時におけるディスク回入側で、且つ、ディスク半径方向外側に前記パッド吊下げ部が形成されるとともに、ディスク回出側に、前記キャリパボディ又は前記キャリパブラケットのいずれか一方に設けたトルク受部に当接して制動トルクを伝達させるトルク伝達部を備え、前記キャリパボディは、前記ブリッジ部のディスクロータ側面に、前記パッド吊下げ部をディスク軸方向に移動可能に収容する収容凹部が形成され、前記ブリッジ部と前記摩擦パッドの間に縮設されるパッドスプリングが、ディスク回出側に偏って設けられていることを特徴としている。
【0008】
また、前記摩擦パッドはディスク回入側の外面に、前記キャリパボディよりも外方に突出する摘まみ片を備えていると好ましい。さらに、前記摩擦パッドは、前記ハンガーピンを前記キャリパボディから取り外し、前記摩擦パッドのディスク回入側をディスク半径方向内側に回動させることにより、前記キャリパボディを前記キャリパブラケットに組み付けた状態で、前記キャリパボディから取り外し可能となると好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ディスクブレーキによれば、摩擦パッドは、ディスク回入側で、且つ、ディスク半径方向外側に形成したパッド吊下げ部を、キャリパボディの内側で1本のハンガーピンに吊持させることから、キャリパボディの小型化を図りながら、キャリパボディ及び摩擦パッドをキャリパブラケットに組み付けた状態からでも、ハンガーピンを取り外して摩擦パッドを交換することができる。
【0010】
また、摩擦パッドのディスク回入側の外面に、キャリパボディよりも外方に突出する摘まみ片を備えていることから、摘まみ片を摘まんで摩擦パッドの交換作業を良好に行うことができる。さらに、摩擦パッドは、ハンガーピンをキャリパボディから取り外し、摩擦パッドのディスク回入側をディスク半径方向内側に回動させることにより、キャリパボディをキャリパブラケットに組み付けた状態で、キャリパボディから取り外し可能となることから、キャリパブラケットが配置される作用部側の摩擦パッドも容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図3のI−I断面図である。
図2図3のII−II断面図である。
図3】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの側面図である。
図4図6のIV−IV断面図である。
図5】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの平面図である。
図6】同じく車両用ディスクブレーキの正面図である。
図7】作用部側の摩擦パッドを取り外す際にスライドピンを抜いて摩擦パッドを回 動させた状態の説明図である。
図8】作用部側の摩擦パッドを抜き出す際の説明図である。
図9】反作用部側の摩擦パッドを取り外す際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図9は本発明の車両用ディスクブレーキの一形態例を示す図で、矢印Aは、車両前進時に車輪と一体に回転するディスクロータの回転方向であり、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0013】
本形態例の車両用ディスクブレーキ1は、車両走行時に図示しない車輪と一体に回転するディスクロータ2と、該ディスクロータ2の一側部で車体に取り付けられたキャリパブラケット3と、該キャリパブラケット3に一対のスライドピン4,5を介してディスク軸方向へスライド可能に支持されるピンスライド型のキャリパボディ6と、該キャリパボディ6の作用部6a及び反作用部6bの間に架け渡されるハンガーピン7と、該ハンガーピン7に吊持され、ディスクロータ2を挟んで対向配置される一対の摩擦パッド8,9とを備えている。
【0014】
キャリパボディ6は、ディスクロータ2の両側部に配置される上述の作用部6a及び反作用部6bと、これらをディスクロータ2の外周を跨いで連結するブリッジ部6cとからなっており、ブリッジ部6cと摩擦パッド8,9との間にはパッドスプリング10が縮設されている。作用部6aには、ディスクロータ2側を開口して有底の3つのシリンダ孔6dが設けられ、反作用部6bには4つの反力爪6eが一体に形成されている。各シリンダ孔6dには、ピストン11が液密に内挿され、ピストン11とシリンダ孔6dの底部との間に液圧室12が画成されている。
【0015】
作用部6aのディスク回入側には、ハンガーピン7を取り付ける雌ねじ部6fが、反作用部のディスク回入側には、ハンガーピン7を挿通させるピン挿通部6gがそれぞれ同軸に形成されている。雌ねじ部6fは、反ディスクロータ側に形成された大径の雌ねじ孔6hと、ディスクロータ側に形成され、雌ねじ孔6hよりも小径でハンガーピン7の軸部を挿通する第1軸部挿通孔6iとを備え、雌ねじ孔6hと第1軸部挿通孔6iとの間には、円錐状の段部が形成されている。ピン挿通部6gは、ディスクロータ側に形成され、ハンガーピン7の軸部7aを挿通させる第2軸部挿通孔6jと、該第2軸部挿通孔6jに連通するとともに、該第2軸部挿通孔6jよりも小径に形成される小径孔6kと、該小径孔6kに連続するとともに反ディスクロータ側に開口する大径孔6mとを備え、大径孔6mは小径孔6kから開口部に向けて漸次大径となるすり鉢状に形成されている。
【0016】
作用部6aは、ディスク回出側に第1車体取付腕6nが、ディスク半径方向内側に第2車体取付腕6pがそれぞれ突設され、第1車体取付腕6nに前記一方のスライドピン4が挿通されている。一方のスライドピン4は、ねじ部をキャリパブラケット3の第1スライドピン取付腕3aに嵌着し、スライドピン4のフランジ部4aをキャリパブラケット3の一側面に当接させ、キャリパブラケット3の他側面側に突出するねじ部4bに、円筒状のトルク受ピン13(本発明のトルク受部)を螺合している。これにより、ブリッジ部6cのディスク回出側に、トルク受ピン13がディスクロータ2の外周をディスク軸方向に跨いで反作用部方向に配置される。他方のスライドピン5は、キャリパブラケット3の第2スライドピン取付腕3bに、反ディスクロータ方向へ向けて突出させて装着され、先端側が前記第2車体取付腕6pに挿入される。また、ブリッジ部6cのディスクロータ側面のディスク回入側には、摩擦パッド8,9に設けられたパッド吊下げ部8a,9aをディスク軸方向に移動可能に収容する収容凹部6qが形成されている。
【0017】
摩擦パッド8,9は、ディスクロータ2の側面と摺接するライニング8b,9bを、金属製の裏板8c,9cに固着して構成されており、裏板8c,9cのディスク回入側で、且つ、ディスク半径方向外側に前記パッド吊下げ部8a,9aが突設され、該パッド吊下げ部8a,9aには、ハンガーピン挿通孔8d,9dがそれぞれ穿設されている。さらに、裏板8c,9cのディスク回入側の外面には、摩擦パッド8,9をキャリパボディ6に組み付けた際に、キャリパボディ6よりも外方に突出する摘まみ片8e,9eがそれぞれ形成されている。
【0018】
作用部側の摩擦パッド8の裏板8cのディスク回出側には、キャリパブラケット3に支持させる耳片8fが突設され、裏板8cのディスク回出側には、制動時に制動トルクをキャリパブラケット3に伝達させるトルク伝達面8g(本発明のトルク伝達部)が形成されている。また、作用部側の摩擦パッド8は、図7に示されるように、ディスク回入側をディスク半径方向内側に回動させた際に、収容凹部6qのディスク回入側の開口端部P1から、第2スライドピン取付腕3bの先端部P2の間に形成される空間部E1を通過可能な形状に形成されている。
【0019】
反作用部側の摩擦パッド9の裏板9cのディスク回出側には、ディスク回出側を開口させた二股状のトルク伝達腕9f(本発明のトルク伝達部)が形成され、該トルク伝達腕9fがトルク受ピン13に当接している。
【0020】
キャリパブラケット3は、一枚の板材をプレス加工することによって形成され、ディスク回出側のディスク半径方向外側に突出する前記第1スライドピン取付腕3aと、ディスク回入側のディスク半径方向内側に突出する前記第2スライドピン取付腕3bとを備ている。第1スライドピン取付腕3aは、ディスク外周側に、スライドピン4を嵌着するスライドピン嵌着孔が形成されるとともに、該スライドピン嵌着孔よりもディスク回出側に一方の車体取付ボルトが装着されるボルト孔3c(本発明の取付部)が形成されている。さらに、第1スライドピン取付腕3aのディスク内周側には、制動時に作用部側の摩擦パッド8からトルクを受けるトルク受面3d(本発明のトルク受部)と、作用部側の摩擦パッド8に形成された耳片8fを支持する支持部3eとが直交して形成されている。第2スライドピン取付腕3bは、他方のスライドピン5を固着させるスライドピン装着孔3fが形成されるとともに、該スライドピン装着孔3fよりもディスク内周側に、他方の車体取付ボルトが装着されるボルト孔3g(本発明の取付部)が形成されている。
【0021】
ハンガーピン7は、軸部7aの一端側に軸部よりも大径の雄ねじ部7bを、他端側に、軸部7aよりも小径の小径軸部7cをそれぞれ備え、雄ねじ部7bと軸部7aとの間には、雄ねじ部7bから軸部に向けて漸次小径となる円錐部が形成されている。小径軸部7cは、他端側に、抜止め部材14を嵌着する周溝7dが周設され、該周溝7dよりも他端側には、端部に向けて漸次小径となる円錐状の頭部7eが形成されている。抜止め部材14は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂でC字状に形成されたもので、小径孔6kの内径よりも僅かに大径と成る外径を有している。
【0022】
このように形成されたキャリパブラケット3とキャリパボディ6とに、摩擦パッド8,9を組み付ける際には、作用部の摩擦パッド8の耳片8fを支持部3eに支持させ、キャリパブラケット3のトルク受面3dと、摩擦パッド8のトルク伝達面8gとを当接させる。また、反作用部側の摩擦パッド9のトルク伝達腕9fをトルク受ピン13に当接させて摩擦パッド9を支持させる。この状態で、摩擦パッド8,9のパッド吊下げ部8a,9aは、ブリッジ部6cの収容凹部6qに収容されており、ハンガーピン挿通孔8d,9dとキャリパボディ6の雌ねじ部6fとピン挿通部6gとは、軸線が合致した位置に配置されている。
【0023】
次いで、周溝7dに抜止め部材14を嵌着した状態のハンガーピン7を、雌ねじ孔6h、第1軸部挿通孔6i、ハンガーピン挿通孔8d,9d、第2軸部挿通孔6j、小径孔6kに順に挿通し、雄ねじ部7bを雌ねじ孔6hに螺合させ、雌ねじ孔6hと第1軸部挿通孔6iとの間に形成された段部を、雄ねじ部7bと軸部7aとの間に形成された円錐部に当接させる。抜止め部材14は、小径孔6kを圧縮された状態で通過して大径孔6mに配置され、頭部7eが大径孔6mから外方へ突出し、小径孔6kと、小径孔6kよりも僅かに大径に形成された抜止め部材14とによってハンガーピン7の抜止めが図られる。
【0024】
また、摩擦パッド8,9の交換時に、摩擦パッド8,9をキャリパボディ6から取り外す際には、ハンガーピン7の雄ねじ部7bを緩め、抜止め部材14を圧縮させながらハンガーピン7を、小径孔6k、第2軸部挿通孔6j、ハンガーピン挿通孔8d,9d、第1軸部挿通孔6i、雌ねじ孔6hから抜き出す。次いで、作用部側の摩擦パッド8は、図7に示されるように、摘まみ片8eを持って、摩擦パッド8のディスク回入側をディスク半径方向内側に回動させ、図8に示されるようにディスク回入側に引っ張ることにより、耳片8fが支持部3eを離れ、裏板8cのディスク半径方向外側が前記開口端部P1を通過し、裏板8cのディスク半径方向内側が前記先端部P2を通過して、摩擦パッド8を空間部E1からキャリパボディ6の外部に取り出すことができる。また、交換する新品の摩擦パッド8も、空間部E1を介して所定の場所に容易に挿入することができる。
【0025】
一方、反作用部の摩擦パッド9は、図9に示されるように、摘まみ片9eを持って、摩擦パッド9のディスク回入側をディスク半径方向内側に回動させながらディスク回入側に引っ張ることにより、トルク伝達腕9fがトルク受ピン13から離れ、反力爪6eとディスクロータ2との隙間からキャリパボディ6の外部に取り出すことができる。また、交換する新品の摩擦パッド9も、反力爪6eとディスクロータ2との隙間を介して所定の場所に容易に挿入することができる。
【0026】
本形態例は上述のように、摩擦パッド8,9は、ディスク回入側で、且つ、ディスク半径方向外側に形成したパッド吊下げ部8a,9aを、キャリパボディ6の内側で1本のハンガーピン7に吊持させることから、キャリパボディ6の小型化を図りながら、キャリパボディ6及び摩擦パッド8,9をキャリパブラケット3に組み付けた状態からでも、ハンガーピン7を取り外して摩擦パッド8,9を交換することができる。また、摩擦パッド8,9のディスク回入側の外面に、キャリパボディ6よりも外方に突出する摘まみ片8e,9eを形成したことから、摘まみ片8e,9eを摘まんで摩擦パッド8,9の交換作業を良好に行うことができる。さらに、ハンガーピン7を外して摩擦パッド8を回動させることにより、空間部E1を介して摩擦パッド8を簡単に着脱することができることから、キャリパブラケット3が配置される作用部側の摩擦パッド8も容易に交換することができる。
【0027】
なお、本発明は上述の形態例に限るものではなく、摩擦パッドからの制動トルクをキャリパボディで受けるものでもよく、摩擦パッドに設けるトルク伝達部の形状や、キャリパブラケット又はキャリパボディに設けるトルク受部の形状は任意である。また、ハンガーピンも本形態例に限るものではなく、着脱が可能であれば抜止め構造は任意で、C字状の抜止め部材を用いるものに限らない。さらに、ピストンの数も本形態例に限るものではなく任意である。
【符号の説明】
【0028】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパブラケット、3a…第1スライドピン取付腕、3b…第2スライドピン取付腕、3c…ボルト孔、3d…トルク受面、3e…支持部、3f…スライドピン装着孔、3g…ボルト孔、4…スライドピン、4a…フランジ部、4b…ねじ部、5…スライドピン、6…キャリパボディ、6a…作用部、6b…反作用部、6c…ブリッジ部、6d…シリンダ孔、6e…反力爪、6f…雌ねじ部、6g…ピン挿通部、6h…雌ねじ孔、6i…第1軸部挿通孔、6j…第2軸部挿通孔、6k…小径孔、6m…大径孔、6n…第1車体取付腕、6p…第2車体取付腕、6q…収容凹部、6r…ディスクロータ側面、7…ハンガーピン、7a…軸部、7b…雄ねじ部、7c…小径軸部、7d…周溝、7e…頭部、8…摩擦パッド、8a…パッド吊下げ部、8b…ライニング、8c…裏板、8d…ハンガーピン挿通孔、8e…摘まみ片、8f…耳片、8g…トルク伝達面、9…摩擦パッド、9a…パッド吊下げ部、9b…ライニング、9c…裏板、9d…ハンガーピン挿通孔、9e…摘まみ片、9f…トルク伝達腕、10…パッドスプリング、11…ピストン、12…液圧室、13…トルク受ピン、14…抜止め部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9