(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
太陽光の照射によって減少する皮膚細胞内の抗菌性ペプチド(antimicrobial peptides,AMPs)の発現量およびS‐ニトロシル化(S‐Nitrosylation)されたタンパク質の生成量のうち1つ以上の、対象物質による変化を測定するステップを含む太陽光遮断機能測定方法であって、
前記方法は、前記変化を測定するステップの前に、
前記対象物質を太陽光透過性物質に塗布するステップと、
単離された皮膚細胞を前記太陽光透過性物質の下部に位置させた後、前記太陽光透過性物質の上部に太陽光を照射するステップとをさらに含み、
前記太陽光は、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)であり、
前記抗菌性ペプチドは、HBD(Human beta‐defensin)‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL(Cathelicidin)‐37、ソライアシン(Psoriasin)、ダームシジン(Dermcidin)およびリボ核酸加水分解酵素(RNase)7のうち一つ以上である、
太陽光遮断機能測定方法。
前記変化を測定した結果、対象物質によって皮膚細胞内抗菌性ペプチドの発現量およびS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量のうち1つ以上の減少が抑制されれば、太陽光遮断機能があるものと判定する太陽光遮断機能性物質スクリーニングステップをさらに含む、請求項1に記載の太陽光遮断機能測定方法。
前記変化を測定した結果、対象物質によって前記抗菌性ペプチドの発現量およびS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量のうち1つ以上の減少が抑制される程度が大きいほど、太陽光遮断機能が高いものと判定する太陽光遮断効能評価ステップをさらに含む、請求項1に記載の太陽光遮断機能測定方法。
前記太陽光透過性物質は、石英板(Quartz Plate)または帯域透過フィルタ(Band pass filter)である、請求項1に記載の太陽光遮断機能測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるHBD‐1の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)を比較したグラフを示したものである。
【
図1b】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるHBD‐2の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)を比較したグラフを示したものである。
【
図1c】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるHBD‐3の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)を比較したグラフを示したものである。
【
図1d】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるLL‐37の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)を比較したグラフを示したものである。
【
図1e】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるPsoriasinの遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)を比較したグラフを示したものである。
【
図1f】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるDermcidinの遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)を比較したグラフを示したものである。
【
図1g】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるRNase7の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)を比較したグラフを示したものである。
【
図2a】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるHBD‐1の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、UV(紫外線)照射前(cont.)と照射後(UV)、ならびに照射強度による変化を比較したグラフを示したものである。
【
図2b】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるHBD‐2の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、UV(紫外線)照射前(cont.)と照射後(UV)、ならびに照射強度による変化を比較したグラフを示したものである。
【
図2c】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるHBD‐3の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、UV(紫外線)照射前(cont.)と照射後(UV)、ならびに照射強度による変化を比較したグラフを示したものである。
【
図2d】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるPsoriasinの遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、UV(紫外線)照射前(cont.)と照射後(UV)、ならびに照射強度による変化を比較したグラフを示したものである。
【
図2e】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるDermcidinの遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、UV(紫外線)照射前(cont.)と照射後(UV)、ならびに照射強度による変化を比較したグラフを示したものである。
【
図2f】本発明の一具現例として使用される抗菌性ペプチドであるRNase7の遺伝子発現量(Relative mRNA Level)の、UV(紫外線)照射前(cont.)と照射後(UV)、ならびに照射強度による変化を比較したグラフを示したものである。
【
図3a】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cとフラジェリン(Flagellin)を処理した場合の、HBD‐1の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図3b】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cとフラジェリン(Flagellin)を処理した場合の、HBD‐2の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図3c】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cとフラジェリン(Flagellin)を処理した場合の、HBD‐3の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図3d】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cとフラジェリン(Flagellin)を処理した場合の、LL‐37の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図3e】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cとフラジェリン(Flagellin)を処理した場合の、Psoriasinの遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図3f】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cとフラジェリン(Flagellin)を処理した場合の、Dermcidin(
図3f)の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図3g】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cとフラジェリン(Flagellin)を処理した場合の、RNase7の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図4a】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cを処理し、これとともに酸化窒素スカベンジャー(Nitric Oxide scavenger)であるPTIOと活性酸素種スカベンジャー(ROS scavenger)であるNACをそれぞれ処理したときの、HBD‐1の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(−)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図4b】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cを処理し、これとともに酸化窒素スカベンジャー(Nitric Oxide scavenger)であるPTIOと活性酸素種スカベンジャー(ROS scavenger)であるNACをそれぞれ処理したときの、HBD‐2の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(−)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図4c】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cを処理し、これとともに酸化窒素スカベンジャー(Nitric Oxide scavenger)であるPTIOと活性酸素種スカベンジャー(ROS scavenger)であるNACをそれぞれ処理したときの、HBD‐3の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(−)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図4d】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cを処理し、これとともに酸化窒素スカベンジャー(Nitric Oxide scavenger)であるPTIOと活性酸素種スカベンジャー(ROS scavenger)であるNACをそれぞれ処理したときの、LL‐37の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(−)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図4e】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cを処理し、これとともに酸化窒素スカベンジャー(Nitric Oxide scavenger)であるPTIOと活性酸素種スカベンジャー(ROS scavenger)であるNACをそれぞれ処理したときの、Psoriasinの遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(−)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図4f】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cを処理し、これとともに酸化窒素スカベンジャー(Nitric Oxide scavenger)であるPTIOと活性酸素種スカベンジャー(ROS scavenger)であるNACをそれぞれ処理したときの、Dermcidinの遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(−)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図4g】ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cを処理し、これとともに酸化窒素スカベンジャー(Nitric Oxide scavenger)であるPTIOと活性酸素種スカベンジャー(ROS scavenger)であるNACをそれぞれ処理したときの、RNase7の遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(−)と照射後(Blue)で比較したグラフを示したものである。
【
図5】ヒト正常角質皮膚細胞にブルー/バイオレットライトを照射した場合の、S‐ニトロシル化されたタンパク質(SNO‐protiens)生成量の変化を比較した結果(SDS‐PAGEゲルの様子)を示したものである。
【
図6】ヒト正常角質皮膚細胞に紫外線を照射した場合の、S‐ニトロシル化されたタンパク質(SNO‐protiens)生成量の変化を比較した結果(SDS‐PAGEゲルの様子)を示したものである。
【
図7a】ブルー/バイオレットライトを照射した場合(Blue)の、実施例1〜3のHBD‐1の発現量を比較したグラフを示したものである。
【
図7b】ブルー/バイオレットライトを照射した場合(Blue)の、実施例1〜3のHBD‐2の発現量を比較したグラフを示したものである。
【
図7c】ブルー/バイオレットライトを照射した場合(Blue)の、実施例1〜3のHBD‐3の発現量を比較したグラフを示したものである。
【
図7d】ブルー/バイオレットライトを照射した場合(Blue)の、実施例1〜3のLL‐37の発現量を比較したグラフを示したものである。
【
図7e】ブルー/バイオレットライトを照射した場合(Blue)の、実施例1〜3のPsoriasinの各発現量を比較したグラフを示したものである。
【
図7f】ブルー/バイオレットライトを照射した場合(Blue)の、実施例1〜3のDermcidinの発現量を比較したグラフを示したものである。
【
図7g】ブルー/バイオレットライトを照射した場合(Blue)の、実施例1〜3のRNase7の発現量を比較したグラフを示したものである。
【
図8】ブルー/バイオレットライトを照射した場合の、実施例1および3のS‐ニトロシル化されたタンパク質(SNO‐protiens)生成量の変化を比較した結果(SDS‐PAGEゲルの様子)を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「太陽光(sunlight)」とは、紫外線だけでなく、ラジオ波、超短波、赤外線、可視光線、X線およびγ線など、太陽光のすべての波長を含む最広義の概念である。また、本明細書において「皮膚細胞」とは、動物の体表を覆う組織の細胞を意味するものであって、顔または体などの体表を覆う組織だけでなく、頭皮や毛髪に存在する細胞を含む最広義の概念である。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の一具現例は、太陽光の照射によって減少する皮膚細胞内の抗菌性ペプチド(antimicrobial peptides,AMPs)の発現量およびS‐ニトロシル化(S‐Nitrosylation)されたタンパク質の生成量のうち1つ以上の、対象物質による変化を測定するステップを含む、太陽光遮断機能測定方法を提供する。
【0018】
また、本発明の一具現例は、前記変化を測定した結果、対象物質により皮膚細胞内抗菌性ペプチドの発現量およびS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量のうち1つ以上の減少が抑制されれば、太陽光遮断機能があるものと判定する太陽光遮断機能性物質スクリーニングステップをさらに含む、太陽光遮断機能測定方法を提供する。
【0019】
また、本発明の他の一具現例は、前記変化を測定した結果、対象物質により前記抗菌性ペプチドの発現量およびS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量のうち1つ以上の減少が抑制される程度が大きいほど、太陽光遮断機能が高いものと判定する太陽光遮断効能評価ステップをさらに含む、太陽光遮断機能測定方法を提供する。
【0020】
一具現例による本発明の太陽光遮断機能測定方法において照射される前記太陽光は、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)を含む。また、前記太陽光は、290〜400nmの波長の紫外線をさらに含んでよい。
【0021】
一具現例によると、前記太陽光、具体的に、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライトは、前記抗菌性ペプチド(AMPs)の発現量を減少させる。また、前記ブルー/バイオレットライトは、各種サイトカイン(cytokine)およびそれと関連する遺伝子、タンパク質としてRANTES(Human CCL5)、CCL 2(Chemokine ligand 2)、IL‐6(Interleukin‐6)、IL‐8(Interleukin‐8)、TNF‐α(Tumor necrosis factor‐α)、COX‐2(Cyclooxygenase‐2)などの発現量を減少させ得る。
【0022】
具体的に、前記抗菌性ペプチドは、小さな分子量を持つタンパク質であって、バクテリア、ウイルスおよびカビといった病原菌による感染を予防する抗菌活性を有する。前記抗菌性ペプチドは、血管新生、創傷治癒および化学走性を誘導するものと報告されており、正電荷を帯び、親水性および疎水性部位を同時に持っている構造的な特徴がある。一具現例として、前記抗菌性ペプチド(AMPs)は、HBD‐1(Human beta‐defensin‐1,ACCESSION NP_005209、VERSION NP_005029.1 GI:4885181)、HBD‐2(Human beta‐defensin‐2,ACCESSION NP_004933、VERSION NP_004933.1 GI:4826692)、HBD‐3(Human beta‐defensin‐3,ACCESSION AAG02237,VERSION AAG02237.1 GI:49931627)、LL‐37(Cathelicidin‐37,ACCESSION NP_004336,VERSION NP_004336.3 GI:348041314)ソライアシン(Psoriasin,ACCESSION AAA60210,VERSION AAA60210.1 GI:190668)、ダームシジン(Dermcidin,ACCESSION NP_444513,VERSION NP_444513.1 GI:16751921)とリボ核酸加水分解酵素7(RNase 7,ACCESSION CAC84458,VERSION CAC84458.1 GI:40643235)のうち一つ以上を含んでよい。
【0023】
一具現例による本発明の太陽光遮断機能測定方法に使用される前記HBD(Human beta‐defensin)‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL(Cathelicidin)‐37、ソライアシン(Psoriasin)、ダームシジン(Dermcidin)、リボ核酸加水分解酵素(RNase)7は、先天免疫因子として皮膚、消化器、呼吸器、眼球結膜に存在し、グラム陽/陰性細菌や真菌、ウイルスを殺したり、成長を抑制したりする。これらは、角質形成細胞以外に、皮膚の汗腺や皮脂腺の分泌物に存在し、汗や皮脂を通じて皮膚表面に分泌され、沈着して抗菌バリアの形成に寄与する。また、前記抗菌性ペプチドは、紫外線照射時には、ブルー/バイオレットライト照射時とは反対に、発現量が増加する特性を持っている。前記紫外線に対する抗菌性ペプチドの発現特性は、Glaser R. et al.UV‐B radiation induces the expression of antimicrobial peptides in human keratinocytes in vitro and in vivo,J Allergy Clin Immunol.2009 May;123(5):1117‐23.に記載されており、前記文献は、その全体が本明細書に参考として統合される。
【0024】
S‐ニトロシル化(S‐Nitrosylation)されたタンパク質は、紫外線照射時に発現量が増加するが、本発明の他の一具現例よると、前記太陽光、具体的に、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライトは、前記S‐ニトロシル化(S‐Nitrosylation)されたタンパク質の生成量を減少させる。具体的に、生体内の多くの機能と関連付けられている窒素(nitric oxide)は、活性システイン残基と反応してタンパク質のS‐ニトロシル化を生成することができ、タンパク質のリン酸化過程のように、タンパク質のS‐ニトロシル化は、タンパク質活性等の細胞信号伝達を調節することができる。そして、前記ブルー/バイオレットライトは、生体内で正常的にニトロシル化、すなわち、前記のようにS‐ニトロシル化されているタンパク質から窒素酸化物(Nitric Oxide)を切り離す脱ニトロシル化(De‐Nitrosylation)を誘導することができる。そして、ブルー/バイオレットライトによって前記のようにS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量が減少すると、抗菌性ペプチド(AMPs)も減少し得る。
【0025】
前記抗菌性ペプチドの遺伝子またはS‐ニトロシル化のタンパク質の発現水準は、たとえば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT‐PCR)、ノーザンブロット(northern blot)分析、酵素結合免疫吸着分析法(enzyme‐linked immunosorbent assay;ELISA)、放射免疫測定法(radioimmunoassay;RIA)、サンドイッチ測定法、ウェスタンブロット(western blot)、免疫ブロット(immuneblot)、免疫組織化学染色(immunohistochemical staining)、ビオチン‐スイッチアッセイ(Biotin‐switch assay)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された方法によって測定されてよい。
【0026】
また、一具現例として、本発明による方法は、前記変化を測定するステップの前に、対象物質を太陽光透過性物質に塗布するステップ、および皮膚細胞を前記太陽光透過性物質の下部に位置させた後、太陽光透過性物質の上部に太陽光を照射するステップをさらに含んでよい。
【0027】
前記太陽光透過性物質は、太陽光、すなわち、前記紫外線またはブルー/バイオレットライトを透過させるとともに、測定対象物質の塗布が可能な物性を持つものであればすべて使用が可能であり、たとえば、石英板(Quartz Plate)または目標とする光線領域のみ透過させる帯域透過フィルタ(Band pass filter)などを使用してよいが、これらに限定されない。このとき、前記対象物質は、太陽光遮断効能を評価するための物質として、人間の皮膚に適用する物質であれば、化粧品、薬品、繊維などのように、これを含む製品や剤形に限定されず、すべて含む。
【0028】
一具現例による本発明の太陽光遮断機能測定方法において使用される前記皮膚細胞は、ヒトまたは動物由来の皮膚細胞をすべて使用してよく、たとえば、角質分化形成細胞(Keratinocytes)、線維芽細胞(fibroblast)およびメルケル細胞(Merkel cell)といったメラニン形成細胞(Melanocytes)のうち一つ以上を使用してよいが、これらに限定されない。
【0029】
前記のように、皮膚細胞内抗菌性ペプチドの発現量および/またはS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量が減少する場合、皮膚の免疫力が低下して、各種の皮膚トラブル、疾病などが発生するだけでなく、これにより、皮膚保湿能が低下して老化が促進されるため、皮膚の美容にも好ましくない。しかし、本発明の太陽光遮断機能測定方法によれば、ブルー/バイオレットライトを遮断することができる太陽光遮断機能性物質をスクリーニングし、これを開発することにより、前記のようなブルー/バイオレットライトによって誘導される皮膚の否定的な効果を防止することができる。本発明によれば、ブルー/バイオレットライトを遮断する効能の程度を客観的に評価することができるので、これを指数化することも可能である。さらに、前記のような本発明によるスクリーニングおよび効能評価方法を使用して、ブルー/バイオレットライトの遮断に有用な物質を発掘し、これを皮膚に適用する場合、抗菌性ペプチドの減少が遮断されるので、自然免疫の減少も遮断されて免疫力を増加させることができるだろう。
【0030】
また、本発明の他の一具現例は、ブルー/バイオレットライトによる抗菌性ペプチド量の減少を防止するために、太陽光のうち400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライトを遮断する有効成分、具体的に、ブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)による皮膚細胞内抗菌性ペプチドの発現量およびS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量のうち1つ以上の変化を抑制させる物質を有効成分として含む太陽光遮断用組成物を提供することができる。具体的に、前記抗菌性ペプチドは、HBD(Human beta‐defensin)‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL(Cathelicidin)‐37、ソライアシン(Psoriasin)、ダームシジン(Dermcidin)およびリボ核酸加水分解酵素(RNase)7のうち一つ以上を例として挙げることができる。前記組成物の有効成分は、上述された本発明の具現例による太陽光遮断機能測定方法により太陽光遮断機能が測定された対象物質であってよい。前記有効成分は、たとえば、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)およびチノソーブのうち1種以上を含んでよく、この他、サンスクリーン製品に含まれる太陽光を遮断する成分であれば、制限なく使用してよい。
【0031】
以下、試験例、実施例および比較例を挙げつつ、本発明の構成および効果についてより具体的に説明する。しかし、これらの試験例、実施例および比較例は、本発明の理解を助けるために例示の目的にのみ提供されたものであるだけで、本発明の範疇および範囲が下記の試験例、実施例および比較例により制限されるものではない。
【0032】
[試験例1]
本発明の一具現例として、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)を皮膚細胞に照射した時の、抗菌性ペプチドの発現量の変化を測定する実験を、下記のとおり実施した。
【0033】
まず、本発明において使用されるヒト正常角質皮膚細胞(Human epidermal neonatal keratinocyte cells)は、常用的に確保されて勧奨される方法で、ロンザ社(Lonza,Inc.、米国メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville)所在)から購入して継代培養した後、CO
2培養器(CO
2 incubator)において37℃、5%CO
2条件下で培養した。細胞培養液は、ロンザ社のマニュアルに従って培養した。500mlのKBM‐2(Clonetics CC‐3103)培地に、KGM‐2ブリットキット(Bullet kit:BPE(Bovine pituitary extract)2ml、hEGF(human epidermal growth factor)0.5ml、インスリン(Insulin)0.5ml、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)0.5ml、トランスフェリン(Transferrin)0.5ml、エピネフリン(Epinephrine)0.5ml、および硫酸ゲンタマイシン+アンホテリシン‐B(Gentamycin Suflate+Amphotericin‐B:GA‐1000)0.5mlを添加して使用した。
【0034】
その次に、前記ヒト正常角質皮膚細胞が培養された培地に、400〜500nmのブルー/バイオレットライト(10J/cm
2)を照射した後、ヒト正常角質皮膚細胞の培養液を除去し、2mlのリン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline,PBS)で細胞を洗浄してから、その後トリゾール試薬(Trizol reagent,Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を使用して、細胞内のRNAを分離した。
【0035】
分離されたRNAを、キアジェン社のRNAキット(QIAGEN RNeasy kt,QIAGEN,Valencia,CA)でもう一度精製した後、Agilent社のバイオアナライザー2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer,Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用して、RNAの質(quality)を確認した。インビトロジェン社の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)kit,Invitrogen,Carlsbad,CA)を利用して前記RNAからcDNAを合成し、これをリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Q‐RT‐PCR:real time‐reverse transcription polymerase chain reaction)を通じて定量的に分析した。
【0036】
HBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、ソライアシン、ダームシジン、RNase7の各発現パターンの変化を、アプライドバイオシステム社のタックマン遺伝子発現システム(TaqMan(登録商標) gene expression assay kit,Applied Biosystems,Foster City,CA)を利用して、ブルー/バイオレットライトが誘導する皮膚の遺伝子変化をリアルタイムPCRで評価し、その結果を
図1a〜
図1gに示した。このとき、各遺伝子増幅のために使用したプライマーは、下記表1のとおりである。
【0038】
その結果、
図1a〜
図1gに示されたところのように、先天免疫遺伝子、すなわち抗菌性ペプチドであるHBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、Psoriasin、Dermcidin、RNase7のすべてについて、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)よりも照射後(Blue)において各遺伝子発現量(Relative mRNA Level)が減少することが分かる。これは、ブルー/バイオレットライトの代わりに紫外線(10,30mJ)を照射したことを除き、前記実験と同一の条件および方法で実施した実験の結果、紫外線照射時には、生体内のHBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、Psoriasin、DermcidinおよびRNase7の発現量が照射強度の増加に伴って増加したことと対比される結果である(
図2a〜
図2fを参照)。これは、同じ太陽光であっても、その波長に応じて皮膚に対する作用が異なり、前記のような抗菌性ペプチドを、ブルー/バイオレットライト遮断機能を測定し、その有効性を評価するための指標として使用することができることを意味する。
【0039】
[試験例2]
本発明の一具現例として、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)を皮膚細胞に照射した時の、抗菌性ペプチドの発現量の変化を測定する実験を、下記のとおり実施した。
【0040】
まず、本発明において使用されるヒト正常角質皮膚細胞(Human epidermal neonatal keratinocyte cells)は、常用的に確保されて勧奨される方法で、ロンザ社(Lonza,Inc.、米国メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville)所在)から購入して継代培養した後、CO
2培養器(CO
2 incubator)において37℃、5%CO
2条件下で培養した。細胞培養液は、ロンザ社のマニュアルに従って培養した。500mlのKBM‐2(Clonetics CC‐3103)培地に、KGM‐2ブリットキット(Bullet kit:BPE(Bovine pituitary extract)2ml、hEGF(human epidermal growth factor)0.5ml、インスリン(Insulin)0.5ml、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)0.5ml、トランスフェリン(Transferrin)0.5ml、エピネフリン(Epinephrine)0.5ml、および硫酸ゲンタマイシン+アンホテリシン‐B(Gentamycin Suflate+Amphotericin‐B:GA‐1000)0.5mlを添加して使用した。
【0041】
その次に、前記ヒト正常角質皮膚細胞が培養された培地に、400〜500nmのブルー/バイオレットライト(10J/cm
2)を照射した後、ヒト正常角質皮膚細胞の培養液を除去し、2mlのリン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline,PBS)で細胞を洗浄してから、その後トリゾール試薬(Trizol reagent,Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を使用して、細胞内のRNAを分離した。
【0042】
このとき、前記ブルー/バイオレットライト(10J/cm
2)の照射前と後でウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するために、Poly I:Cとフラジェリン(Flagellin,invivogen,San Diego,California,USA)を処理した。
【0043】
その次に、分離されたRNAを、キアジェン社のRNAキット(QIAGEN RNeasy kt,QIAGEN,Valencia,CA)でもう一度精製した後、Agilent社のバイオアナライザー2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer,Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用して、RNAの質(quality)を確認した。インビトロジェン社の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)kit,Invitrogen,Carlsbad,CA)を利用して前記RNAからcDNAを合成し、これをリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Q‐RT‐PCR:real time‐reverse transcription polymerase chain reaction)を通じて定量的に分析した。
【0044】
HBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、ソライアシン、ダームシジン、RNase7の各発現パターンの変化を、アプライドバイオシステム社のタックマン遺伝子発現システム(TaqMan(登録商標) gene expression assay kit,Applied Biosystems,Foster City,CA)を利用して、ブルー/バイオレットライトが誘導する皮膚の遺伝子変化をリアルタイムPCRで評価し、その結果を
図3a〜
図3gに示した。このとき、各遺伝子増幅のために使用したプライマーは、前記表1のとおりである。
【0045】
図3a〜
図3gは、ヒト正常角質皮膚細胞にウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するためにPoly I:Cとフラジェリンを処理した場合の、HBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、ソライアシン、ダームシジン、RNase7の各遺伝子発現量の変化を、ブルー/バイオレットライト照射前(cont.)と照射後(Blue)で比較した結果を示したものである。
図3に示されたところのように、Poly I:Cとフラジェリンによって抗菌性ペプチドである前記HBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、ソライアシン、ダームシジン、RNase7が増加した場合、ブルー/バイオレットライトの照射により前記各遺伝子の発現量が減少することを確認することができる。このような増減は、統計的に有意であり、統計情報は、両側スチューデントt検定により検証し、p値が0.05以下であるとき有意な差があると表示した。これは、前記のような抗菌性ペプチドを、ブルー/バイオレットライト遮断機能を測定し、その有効性を評価するための指標として使用できることを意味する。
【0046】
[試験例3]
本発明の一具現例として、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)を皮膚細胞に照射した時の、抗菌性ペプチドの発現量の変化を測定する実験を、下記のとおり実施した。
【0047】
まず、本発明において使用されるヒト正常角質皮膚細胞(Human epidermal neonatal keratinocyte cells)は、常用的に確保されて勧奨される方法で、ロンザ社(Lonza,Inc.、米国メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville)所在)から購入して継代培養した後、CO
2培養器(CO
2 incubator)において37℃、5%CO
2条件下で培養した。細胞培養液は、ロンザ社のマニュアルに従って培養した。500mlのKBM‐2(Clonetics CC‐3103)培地に、KGM‐2ブリットキット(Bullet kit:BPE(Bovine pituitary extract)2ml、hEGF(human epidermal growth factor)0.5ml、インスリン(Insulin)0.5ml、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)0.5ml、トランスフェリン(Transferrin)0.5ml、エピネフリン(Epinephrine)0.5ml、および硫酸ゲンタマイシン+アンホテリシン‐B(Gentamycin Suflate+Amphotericin‐B:GA‐1000)0.5mlを添加して使用した。
【0048】
その次に、前記ヒト正常角質皮膚細胞が培養された培地に、400〜500nmのブルー/バイオレットライト(10J/cm
2)を照射した後、ヒト正常角質皮膚細胞の培養液を除去し、2mlのリン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline,PBS)で細胞を洗浄してから、その後トリゾール試薬(Trizol reagent,Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を使用して、細胞内のRNAを分離した。
【0049】
このとき、前記ブルー/バイオレットライト(10J/cm
2)の照射前と後でウイルス、バクテリアの感染状況を誘導するために、Poly I:Cを処理した。これに加え、酸化窒素スカベンジャー(Nitric oxide scavenger)であるPTIO(2‐(4‐Carboxyphenyl)‐4,4,5,5‐tetramethylimidazoline‐1‐oxyl‐3‐oxide potassium salt)と、活性酸素種スカベンジャーであるNAC(N‐Acetyl‐L‐cysteine)をそれぞれ処理した(Sigma,St.Louis,MO,USA)。
【0050】
その次に、分離されたRNAを、キアジェン社のRNAキット(QIAGEN RNeasy kt,QIAGEN,Valencia,CA)でもう一度精製した後、Agilent社のバイオアナライザー2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer,Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用して、RNAの質(quality)を確認した。インビトロジェン社の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)kit,Invitrogen,Carlsbad,CA)を利用して前記RNAからcDNAを合成し、これをリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Q‐RT‐PCR:real time‐reverse transcription polymerase chain reaction)を通じて定量的に分析した。
【0051】
HBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、ソライアシン、ダームシジン、RNase7の各発現パターンの変化を、アプライドバイオシステム社のタックマン遺伝子発現システム(TaqMan(登録商標) gene expression assay kit,Applied Biosystems,Foster City,CA)を利用して、ブルー/バイオレットライトが誘導する皮膚の遺伝子変化をリアルタイムPCRで評価し、その結果を
図4a〜
図4gに示した。このとき、各遺伝子増幅のために使用したプライマーは、前記表1のとおりである。
【0052】
その結果、
図4a〜
図4gに示されたところのように、前記HBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、ソライアシン、ダームシジン、RNase7の発現量がPoly I:Cによって増加した場合に、ブルー/バイオレットライト照射によって減少されることを、処理した2種類のスカベンジャーのうち酸化窒素スカベンジャーであるPTIOを処理した群では、ブルー/バイオレットライトの照射にもかかわらず抗菌性ペプチド(AMPs)の発現量が減少しなかった。これは、ブルー/バイオレットライトがS‐ニトロシル化の生成および抗菌性ペプチド(AMPs)の発現調節に関与することを意味する。
【0053】
[試験例4]
本発明の一具現例として、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)を皮膚細胞に照射した時の、S‐ニトロシル化(S‐Nitrosylation)されたタンパク質の生成量の変化を測定する実験を、下記のとおり実施した。
【0054】
まず、本発明において使用されるヒト正常角質皮膚細胞(Human epidermal neonatal keratinocyte cells)は、常用的に確保されて勧奨される方法で、ロンザ社(Lonza,Inc.、米国メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville)所在)から購入して継代培養した後、CO
2培養器(CO
2 incubator)において37℃、5%CO
2条件下で培養した。細胞培養液は、ロンザ社のマニュアルに従って培養した。500mlのKBM‐2(Clonetics CC‐3103)培地に、KGM‐2ブリットキット(Bullet kit:BPE(Bovine pituitary extract)2ml、hEGF(human epidermal growth factor)0.5ml、インスリン(Insulin)0.5ml、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)0.5ml、トランスフェリン(Transferrin)0.5ml、エピネフリン(Epinephrine)0.5ml、および硫酸ゲンタマイシン+アンホテリシン‐B(Gentamycin Suflate+Amphotericin‐B:GA‐1000)0.5mlを添加して使用した。
【0055】
前記培養細胞に、400〜500nmのブルー/バイオレットライトをそれぞれ10、30、60Jcm
2で照射した後、ヒト正常角質皮膚細胞の培養液を除去し、2mlのリン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline,PBS)で細胞を洗浄してから、タンパク質のS‐ニトロシル化を検出するためのビオチン‐スイッチアッセイ(Biotin‐switch assay)を遂行した。具体的に、前記洗浄された細胞を、HENTS溶液(HEPES,Triton X100,SDS,protease inhibitor,EDTA)で10分間溶解させて上澄液のみを取り出した。タンパク質の定量後、HEN(HEPES,protease inhibitor,EDTA)溶液を利用して、600ug/200ulに合わせた。S‐ニトロシル化されていないシステイン(cystein)の反応を防ぐために、MMTS(Sigma)を10mMになるように追加した後、50℃で15分間反応させた。アセトンによるタンパク質沈殿後、1mMのHPDP‐ビオチン(Pierce)が含まれている50mMのアスコルビン酸(Sigma)HENS溶液(HEPES,SDS,protease inhibitor,EDTA)に溶かして37℃で1時間反応させることにより、S‐ニトロシル化されたシステインにビオチンを結合させた。アセトンによるタンパク質沈殿後、HENS溶液に溶かし、補正のための投入(input)を5%減らしておいた後、アビジン‐アガロースビーズ(avidin‐agarose bead,Pierce)をそれぞれ20μlずつ加えて、4℃で12時間反応させた。ビーズをneutralization溶液(HEPES,EDTA,NaCl,Triton X100)で5回洗浄した後、サンプルバッファ(sample buffer)を入れ、沸騰させた後、投入(input)とともにSDS‐PAGEを遂行する。その後、銀染色(Silver staining)を通じて、ニトロシル化(S‐Nitrosylation)されたタンパク質をSDS‐PAGEゲルで確認し、これを
図5に示した。
【0056】
その結果、
図5に示されたところのように、ブルー/バイオレットライトを照射していない対照群(cont)と比較した場合、ブルー/バイオレットライトの照射強度が増加するほど、生体内のS‐ニトロシル化されたタンパク質(SNO‐proteins)が減少することを確認することができる。
【0057】
これは、ブルー/バイオレットライトの代わりに紫外線(20mJ)を照射したことを除き、前記実験と同一の条件および方法で実施した実験の結果、紫外線照射時には、生体内のS‐ニトロシル化されたタンパク質(SNO‐proteins)が増加したことと対比される結果である(
図6参照)。これは、同じ太陽光であっても、その波長に応じて皮膚に対する作用が異なり、前記のようなS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量を、ブルー/バイオレットライト遮断機能を測定し、その有効性を評価するための指標として使用できることを意味する。
【0058】
[試験例5]
本発明の一具現例により測定対象物質の皮膚細胞に対する太陽光遮断機能を測定するのに先立ち、対象物質の紫外線およびブルー/バイオレットライト透過の程度を、下記のとおり測定した。
【0059】
本実験に先立ち、対象物質として実施例1〜3の太陽光遮断剤形を、下記組成で通常的な方法に従って製造した(単位:質量%)。
【0061】
その次に、前記実施例1〜3の各SPFおよびPAの臨床指数、ならびにブルー/バイオレットライトの透過率をそれぞれ測定し、その結果を下記表3にそれぞれ示した。このとき、ブルー/バイオレットライトの透過率は、実施例1〜3の太陽光遮断剤形を、それぞれ帯域透過フィルタ上に2mg/cm
2の量で塗布した後、ブルー/バイオレットライト領域を含む光源を照射し、透過されるブルー/バイオレットライト波長領域(400〜500nm)を分光光度計(Spectrophotometer)であるSPF‐290S紫外線遮断剤分析システム(Sunscreen Analyzer System)で測定した。紫外線によるSPF(皮膚紅斑)およびPA(皮膚黒化)確認実験は、紫外線遮断剤実験法および食品医薬品安全処(KFDA)の方法どおりに実施した。
【0063】
前記表3の結果から、実施例1〜3の太陽光遮断剤形は、紫外線に対してほぼ同一のSPFおよびPAを示したのに対し、ブルー/バイオレットライトの透過率においては大きな差を有することが分かる。これは、同一の紫外線遮断効能を有する太陽光遮断製品の間でも、可視光線のうち400〜500nmの波長領域を有するブルー/バイオレットライトの遮断効能は、それぞれ異なり得るため、紫外線防止指数が、すなわち太陽光の全体的な遮断機能の保有または遮断効能の程度を包括的に意味し得るものではないことを意味する。
【0064】
[試験例6]
本発明の一具現例として、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)を皮膚細胞に照射した時の、太陽光遮断機能を有する物質による抗菌性ペプチドの発現量の変化を測定する実験を、下記のとおり実施した。
【0065】
まず、本発明において使用されるヒト正常角質皮膚細胞(Human epidermal neonatal keratinocyte cells)は、常用的に確保されて勧奨される方法で、ロンザ社(Lonza,Inc.、米国メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville)所在)から購入して継代培養した後、CO
2培養器(CO
2 incubator)において37℃、5%CO
2条件下で培養した。細胞培養液は、ロンザ社のマニュアルに従って培養した。500mlのKBM‐2(Clonetics CC‐3103)培地に、KGM‐2ブリットキット(Bullet kit:BPE(Bovine pituitary extract)2ml、hEGF(human epidermal growth factor)0.5ml、インスリン(Insulin)0.5ml、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)0.5ml、トランスフェリン(Transferrin)0.5ml、エピネフリン(Epinephrine)0.5ml、および硫酸ゲンタマイシン+アンホテリシン‐B(Gentamycin Suflate+Amphotericin‐B:GA‐1000)0.5mlを添加して使用した。
【0066】
その次に、前記試験例5で使用した実施例1〜3の太陽光遮断剤形を帯域透過フィルタ上に2mg/cm
2塗布した後、その下部にヒト正常角質皮膚細胞を位置させてから、太陽光遮断剤形が塗布された部位の上側から400〜500nmのブルー/バイオレットライトを0,30J/cm
2の強さでそれぞれ照射した。
【0067】
その次に、ヒト正常角質皮膚細胞の培養液を除去し、2mlのリン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline,PBS)で細胞を洗浄してから、その後トリゾール試薬(Trizol reagent,Invitrogen社,Carlsbad,CA,USA)を使用して、細胞内のRNAを分離した。
【0068】
分離されたRNAを、キアジェン社のRNAキット(QIAGEN RNeasy kt,QIAGEN,Valencia,CA)でもう一度精製した後、Agilent社のバイオアナライザー2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer,Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用して、RNAの質(quality)を確認した。インビトロジェン社の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)kit,Invitrogen,Carlsbad,CA)を利用して前記RNAからcDNAを合成し、これをリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Q‐RT‐PCR:real time‐reverse transcription polymerase chain reaction)を通じて定量的に分析した。
【0069】
HBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、ソライアシン、ダームシジン、RNase7の各発現パターンの変化を、アプライドバイオシステム社のタックマン遺伝子発現システム(TaqMan(登録商標) gene expression assay kit,Applied Biosystems,Foster City,CA)を利用して、ブルー/バイオレットライトが誘導する皮膚の遺伝子変化をリアルタイムPCRで評価し、その結果を
図7a〜
図7gに示した。このとき、各遺伝子増幅のために使用したプライマーは、前記表1のとおりである。
【0070】
その結果、
図7a〜
図7gに示されたところのように、ブルー/バイオレットライトを照射した場合(Blue)、実施例1〜3のHBD‐1、HBD‐2、HBD‐3、LL‐37、ソライアシン、ダームシジン、RNase7の各発現量が減少したが、実施例1〜3のブルー/バイオレットライト遮断効能に応じて、その減少の程度にそれぞれ差があった。これは、前記のような抗菌性ペプチドの発現量を、ブルー/バイオレットライト遮断効能を評価するための指標として使用することができることを意味する。
【0071】
[試験例7]
本発明の一具現例として、400〜500nmの波長のブルー/バイオレットライト(Blue/Violet light)を皮膚細胞に照射した時の、太陽光遮断機能を有する物質によるS‐ニトロシル化(S‐Nitrosylation)されたタンパク質の生成量の変化を測定する実験を、下記のとおり実施した。
【0072】
まず、本発明において使用されるヒト正常角質皮膚細胞(Human epidermal neonatal keratinocyte cells)は、常用的に確保されて勧奨される方法で、ロンザ社(Lonza,Inc.、米国メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville)所在)から購入して継代培養した後、CO
2培養器(CO
2 incubator)において37℃、5%CO
2条件下で培養した。細胞培養液は、ロンザ社のマニュアルに従って培養した。500mlのKBM‐2(Clonetics CC‐3103)培地に、KGM‐2ブリットキット(Bullet kit:BPE(Bovine pituitary extract)2ml、hEGF(human epidermal growth factor)0.5ml、インスリン(Insulin)0.5ml、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)0.5ml、トランスフェリン(Transferrin)0.5ml、エピネフリン(Epinephrine)0.5ml、および硫酸ゲンタマイシン+アンホテリシン‐B(Gentamycin Suflate+Amphotericin‐B:GA‐1000)0.5mlを添加して使用した。
【0073】
その次に、前記試験例4で使用した実施例1および3の太陽光遮断剤形を帯域透過フィルタ上に2mg/cm
2塗布した後、その下部にヒト正常角質皮膚細胞を位置させてから、太陽光遮断剤形が塗布された部位の上側から400〜500nmのブルー/バイオレットライトを30J/cm
2の強さでそれぞれ照射した。
【0074】
その次に、ヒト正常角質皮膚細胞の培養液を除去し、2mlのリン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline,PBS)で細胞を洗浄した後、タンパク質のS‐ニトロシル化を検出するためのビオチン‐スイッチアッセイ(Biotin‐switch assay)を遂行した。具体的に、前記洗浄された細胞を、HENTS溶液(HEPES,Triton X100,SDS,protease inhibitor,EDTA)で10分間溶解させて上澄液のみを取り出した。タンパク質の定量後、HEN(HEPES,protease inhibitor,EDTA)溶液を利用して、600μg/200μlに合わせた。S‐ニトロシル化されていないシステイン(cystein)の反応を防ぐために、MMTS(Sigma)を10mMになるように追加した後、50℃で15分間反応させた。アセトンによるタンパク質沈殿後、1mMのHPDP‐ビオチン(Pierce)が含まれている50mMのアスコルビン酸(Sigma)HENS溶液(HEPES,SDS,protease inhibitor,EDTA)に溶かして37℃で1時間反応させることにより、S‐ニトロシル化されたシステインにビオチンを結合させた。アセトンによるタンパク質沈殿後、HENS溶液に溶かし、補正のための投入(input)を5%減らしておいた後、アビジン‐アガロースビーズ(avidin‐agarose bead,Pierce)をそれぞれ20μlずつ加えて、4℃で12時間反応させた。ビーズをneutralization溶液(HEPES,EDTA,NaCl,Triton X100)で5回洗浄した後、サンプルバッファ(sample buffer)を入れ、沸騰させた後、投入(input)とともにSDS‐PAGEを遂行する。その後、銀染色(Silver staining)を通じて、ニトロシル化(S‐Nitrosylation)されたタンパク質をSDS‐PAGEゲルで確認し、これを
図8に示した。
【0075】
その結果、
図8に示されたところのように、ブルー/バイオレットライトを照射していない対照群(cont)と比較した場合、実施例1および3の太陽光遮断効能の差により、生体内のS‐ニトロシル化されたタンパク質(SNO‐proteins)の生成量も差が示されることが分かる。これは、前記のようなS‐ニトロシル化されたタンパク質の生成量を、ブルー/バイオレットライト遮断効能を評価するための指標として使用することができることを意味する。