(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも3つのトランスデューサ(20a〜20e)を有するアレイ(20)を備える音響再生システムのための計算ユニット(10)であって、前記計算ユニット(10)は、
前記アレイ(20)を用いて再生されるべきオーディオストリームを受信するための入力手段(12)と、
プロセッサ(16)と、
前記アレイ(20)の前記少なくとも3つのトランスデューサ(20a〜20e)を制御するための少なくとも3つの出力(14a〜14c)と、を備え、
前記プロセッサ(16)は、前記アレイ(20)を用いて二次またはより高次の音響差動が再生されるように、少なくとも3つの個々のオーディオ信号を計算するように構成される、計算ユニット(10)。
前記プロセッサ(16)は、前記個々のオーディオ信号を、前記二次またはより高次の音響差動が聴取領域に向かってゼロ応答を有するように計算するように構成される、請求項1に記載の計算ユニット(10)。
プロセッサ(16)は、受信される前記オーディオストリームを少なくとも2つの周波数帯域に分割し、かつ前記少なくとも2つの周波数帯域の前記個々のオーディオ信号を計算するように構成され、少なくとも2つの異なるラウドスピーカ部分集合は、前記少なくとも2つの周波数帯域の前記オーディオ信号を介して、前記少なくとも2つの周波数帯域内で二次またはより高次の音響差動が再生されるように制御される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の計算ユニット(10)。
プロセッサ(16)は、受信される前記オーディオストリームを少なくとも2つの周波数帯域に分割し、かつ前記2つの周波数帯域のうちの第1の周波数帯域について前記個々のオーディオ信号を計算し、かつ/または、前記少なくとも2つの周波数帯域のうちの第2の周波数帯域について前記オーディオ信号を計算するように構成され、受信される前記オーディオストリームの前記第2の周波数帯域または全周波数範囲のオーディオ信号は、1つまたは複数のトランスデューサへ直に与えられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の計算ユニット(10)。
プロセッサ(16)は、受信される前記オーディオストリームを少なくとも2つの周波数帯域に分割し、かつ前記2つの周波数帯域のうちの第1の周波数帯域について前記個々のオーディオ信号を、かつ/または、前記少なくとも2つの周波数帯域のうちの第2の周波数帯域についてオーディオ信号を計算するように構成され、前記第2の周波数帯域のオーディオ信号は、前記アレイにより一次音響差動を用いて、または前記一次音響差動を再生するためのスピーカ対によって再生される、請求項1〜6のいずれか一項に計算ユニット(10)。
前記少なくとも2つの周波数帯域の第1および第2の帯域間のロールオフ周波数は、50Hz〜400Hzまでの範囲内に存在し、かつ/または、前記第2の帯域およびさらなる帯域間のロールオフ周波数は、100Hz〜1000Hzまでの範囲内に存在する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の計算ユニット(10)。
前記オーディオストリームは、少なくとも2つの入力信号を含み、プロセッサ(16)は、前記2つの入力信号のうちの少なくとも第1の入力信号について、および前記2つの入力信号のうちの少なくとも第2の入力信号について個々のオーディオ信号を計算するように構成され、前記第1および第2の入力信号に関する前記個々のオーディオ信号は、使用されるスピーカまたは適用されるパラメータが互いに異なる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の計算ユニット(10)。
前記プロセッサ(16)は、個々のオーディオ信号を、前記個々のオーディオ信号の遅延特性、位相特性および/または振幅特性が互いに異なるように計算する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の計算ユニット(10)。
前記少なくとも3つの個々のオーディオ信号を、前記オーディオストリームの前記周波数範囲の第1の限定部分を含む第1の通過帯域特性を用いてフィルタリングするステップをさらに含み、かつ/または、
前記個々のオーディオ信号の個々の遅延特性を計算するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
コンピュータ上で実行されると、請求項16または17のいずれかに記載の方法を実行するためのプログラムコーダを有するコンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ読取り可能デジタル記憶媒体。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、音響再生システムの計算ユニット、対応する方法、および計算ユニットおよびアレイを含むシステムに関する。
【0002】
幾つかの音響再生システムは、いわゆる差音再生の手法に基づいている。差音再生に起因して、指向性パターンが再生(再現)されることがある。指向性パターンは、指向性マイクロフォンから分かる。指向性マイクロフォンは、通常、例えば「Mikrophone:Arbeitsweise und Ausfuhrungsbeispiele」と題するG.BoreおよびS.Peusによる文献、および「Gradient microphones」と題するH.Olsonによる文献に記述されているように、音圧勾配またはその近似値を測定することによって実現される。例えば、一次勾配は、8字形の指向性パターンを有する。1つのチャネルを遅らせることにより、音圧差を測定する場合に、カーディオイドまたはテールドカーディオイド等の指向性パターンを達成することができる。一次差動または勾配マイクロフォンは、指向性マイクロフォンにおける標準である。
【0003】
使用頻度は劣るものの、「Gradient loudspeakers」と題するH.Olsonによる文献から分かるように、同じ概念をスピーカにも当てはめることができる。しかしながら、寸法は、ほぼ1桁大きくなり、異なる特性/限界を生じさせる。
【0004】
差動スピーカアレイのこのような概念は、従来の遅延和ビームフォーマに比較すると、通常多くのスピーカを特徴とする遅延和アレイとは対照的に、少数のスピーカしか必要としないという優位点を有する。さらに、遅延和ビームフォーマより小さいアパーチャにより、低周波数で同じ指向性を実現することができる。
【0005】
国際公開第2011/161567号パンフレットは、3つ以上のトランスデューサを備えるスピーカ配置のダイポール関連処理を開示している。記載されている3つのドライバ設定のうち、最も外側の2つのドライバは、ダイポール構成で駆動される(非操作式)。これらの2つの間のドライバは、好ましくは聴取位置に向けて操作可能なノッチを生成するために使用される。これは、第2のドライバ信号の(周波数選択性の)相対オフセットによって達成される。この場合、好ましくは、等間隔のドライバ(即ち、第1のドライバから第2のドライバまでの距離は、第2のドライバから第3のドライバまでの距離に等しい)が使用される。真ん中のドライバのために生成される信号は、ダイポール構成に対して位相差および(周波数選択性の)利得を有し得る。
【0006】
米国特許第5,870,484号明細書は、傾斜スピーカを用いる音響再生システムを開示している。この公報は、ダイポールシステムが、例えば、ダイポール効果を得るために、2つまたは3つのスピーカ、または1つのスピーカ、および受動開口部を用いてどのように作成され得るかを詳細に記述している。この場合、一次勾配指向特性の使用が好ましい。この公報によれば、これには、一次勾配システムに比較すると、高次の傾斜スピーカは効率が低い傾向があり、多数のトランスデューサ、より多くの信号処理および追加の増幅チャネルを必要とする、という背景がある。
【0007】
差動スピーカアレイは、周波数が減少するにつれて指向性が減少しないことが分かっているが、遅延和ビームフォーマはそうでなく、そのレベルは、周波数がゼロになるとゼロに減少する。さらに、一次差動アレイの指向性は、例えば約6dBに制限される。したがって、改善された手法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、より広い動作帯域幅における音響再生の指向特性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。
【0012】
ある実施形態は、少なくとも3つのトランスデューサを有するアレイを備える音響再生システムのための計算ユニットを提供する。計算ユニットは、入力手段と、プロセッサと、少なくとも3つの出力とを備える。入力手段は、アレイを用いて再生すべきオーディオストリームを受信するという目的を有する。オーディオストリームは、例えば20Hz〜20kHzまたは50Hz〜40kHzである所定の周波数範囲を有する。このオーディオストリームを基に、アレイの少なくとも3つのトランスデューサのための少なくとも3つの個々のオーディオ信号は、少なくとも3つのトランスデューサがこれらの3つの個々のオーディオ信号を介して制御可能となるようにオーディオストリームを処理した後、少なくとも3つの出力を用いて出力される。プロセッサは、二次またはより高次の第1の音響差動が生成されるように(少なくとも)3つの個々のオーディオ信号を計算する。
【0013】
プロセッサは、3つの個々のオーディオ信号を、オーディオストリームの周波数範囲全体のうちの第1の限定部分、例えば、50Hz超または100Hz超、または100Hz〜200Hzまでの範囲内または100Hz〜2kHzまでの範囲内を含む第1の通過帯域特性を用いてさらにフィルタリングしてもよい。
【0014】
本明細書に開示される教示は、二次またはより高次の音響差動が、所定の周波数範囲においてより優れた音響再生、または特には、より優れた指向性パフォーマンスを可能にし、この所定の周波数範囲を外れた一部の周波数は再生不良となり得る、という知見に基づくものである。本明細書に開示される教示による実施形態は、(好ましくは、所定の周波数範囲は、周波数範囲全体の一部であり、または、概して)完全な周波数範囲は、二次またはより高次の音響差動を用いて再生される、という原理に基づいている。所定の周波数範囲の好ましい再生は、この周波数範囲における優れた音響再生を可能にし、一方で、他の周波数範囲において二次またはより高次の音響差動に基づいて音響再生を行う場合に典型的に生じる欠点を回避する。
【0015】
ある実施形態によれば、スピーカ集合は、再生されるべき周波数に関連して、即ち、スピーカ間の距離が、差動がうまく働く周波数領域に関連づけられるように選択される。典型的には、異なる周波数範囲をカバーするためには、異なるスピーカ/スピーカ集合が使用される。
【0016】
さらなる実施形態によれば、少なくとも3つの(異なる)出力のうちの2つを用いて出力されるべき少なくとも2つのさらなる個々のオーディオ信号は、2つの出力を介して制御される2つのトランスデューサを用いて一次の第2の音響差動が生成されるように計算される。プロセッサは、これらの2つのさらなる個々のオーディオ信号を、オーディオストリームの周波数範囲全体のうちの限定された第2の部分(例えば、100Hzまたは200Hzまで)を含む第2の通過帯域特性を用いてフィルタリングする。概して、限定される第2の部分は、限定される第1の部分とは異なる。即ち、音は、異なる音響差動を用いて異なる周波数範囲内で再生される。
【0017】
ある実施形態によれば、幾つかのスピーカ、即ち、各差動につきスピーカの1つの部分集合、を備えるアレイが使用される。これらの部分集合は、対応する差動が所望される周波数動作範囲を有するようなスピーカ距離であるように選択される。
【0018】
さらなる実施形態によれば、少なくとも4つのトランスデューサを含むアレイが使用される。したがって、計算ユニットは、少なくとも4つのトランスデューサのための少なくとも4つの出力を備える。この場合、第1の音響差動は、4つの出力のうち第1のグループに属する少なくとも3つを用いて生成され、プロセッサは、さらなる二次またはより高次の音響差動が生成されるように、少なくとも4つの出力のうちの第2のグループである3つを用いて出力されるべき3つのさらなる個々のオーディオ信号を計算する。プロセッサは、(第2のグループに属する)これらの3つのさらなる個々のオーディオ信号を、オーディオストリームの周波数範囲のうち限定された第2の部分を含む通過帯域特性を用いてフィルタリングする。この場合も、限定される第2の部分は、限定される第1の部分とは異なる。さらに、第2のグループの出力のうち少なくとも1つの出力は、第1のグループの出力とは異なること、即ち、第1の音響差動および第2の音響差動の再生に同じトランスデューサが使用されないことは、留意されるべきである。
【0019】
さらなる実施形態によれば、このプロセスは、第1の音響差動のゼロ応答および第2の音響差動のゼロ応答が略同じ領域内または同じ点に存在するように、個々のオーディオ信号を計算するように構成される。これは、第1の音響差動を用いて再生される消音と第2の音響差動を用いて再生される消音が、双方の音響差動が同じ位置または領域で同じ最小応答を生じるように実行されることを意味する。
【0020】
さらなる実施形態によれば、プロセッサは、次式、
s
1(t)=s
s
2(t)=−2s
s
3(t)=s(t−τ
3)
に基づいて計算する。ここで、τ
1、τ
2、τ
3は、3つの個々のオーディオ信号s
1、s
2、s
3に対応する遅延特性である。
【0021】
第1の音響差動の再生に関する上述の原理は、全周波数帯域のうちの別の帯域(部分)を再生する追加的な音響差動の再生に適用されてもよい。したがって、3つの異なる周波数範囲の再生には、3つの音響差動が使用される。例えば、第1の音響差動と第2の音響差動との間のロールオフ周波数は、300Hz(100Hz〜400Hzの範囲内)であってもよく、第2の音響差動と第3の音響差動との間のロールオフは、500Hz(300Hz〜1000Hzの範囲内)であってもよい。
【0022】
追加的な音響差動の再生には、アレイの他のトランスデューサを使用してもよい。好ましい実施形態によれば、アレイは、計算ユニットの5つの出力を介して制御される少なくとも5つのトランスデューサを含む。他の視点から見れば、これは、(異なる音響差動に属する)異なる周波数帯域の再生が、アレイの第1のトランスデューサ集合が第1の周波数帯域を再生するように実行され、同じアレイの第2のトランスデューサ集合が第2の周波数帯域を再生し、かつアレイの第3のトランスデューサ集合が第3の周波数帯域を再生することを意味する。したがって、3つの周波数帯域のための集合が互いに異なるため、各々の周波数帯域を再生するトランスデューサ間のスペーシングも異なる。例えば、より低い周波数帯域に使用されるトランスデューサ間のスペーシングは、より高い周波数帯域を再生するために使用されるトランスデューサ間のスペーシングより大きくてもよい。実施形態によれば、アレイのトランスデューサは、異なる集合に対して一部のトランスデューサが使用される場合でも、あるトランスデューサ集合のすべてのトランスデューサが等距離にあるという条件が当てはまるように構成される。
【0023】
さらなる実施形態によれば、上述の原理は、ステレオ・オーディオ・ストリームに適用されてもよい。
【0024】
さらなる実施形態は、上述の計算ユニットおよび対応するアレイを備えるシステムを提供する。
【0025】
さらなる実施形態によれば、音響再生を計算するための対応する方法が提供される。
【0026】
次に、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。ここで、同じ要素、または、同じまたは類似の機能を有する要素には、同じ参照番号を付している。したがって、これらの要素についての説明は互換的であって、相互に適用可能である。
【0029】
図1は、直列に配置される少なくとも3つのトランスデューサ20a、20bおよび20cを有するアレイ20を備える音響再生システム100の計算ユニット10を示す。
【0030】
計算ユニット10は、入力手段12と、少なくとも3つの出力14a、14bおよび14cと、プロセッサ16とを備える。入力手段12は、アレイ20を用いて再生されるべきオーディオストリームを受信するという目的を有する。再生の計算は、3つのトランスデューサ20a〜20cのための少なくとも3つの個々のオーディオ信号を得るために、プロセッサにより実行される。具体的には、アレイ20の3つのトランスデューサ20a〜20cが、出力14a〜14cを用いて制御される。
【0031】
この基本的な実装において、少なくとも二次の第1の音響差動が生成されるように3つの個々のオーディオ信号が計算され、この第1の音響差動の周波数帯域は、オーディオストリームの周波数範囲全体(20Hz〜20kHz)のうちの一部分(100Hz〜400Hz)に限定される。この部分は、二次の音響差動を用いて再生され得ない、または非効果的にしか再生され得ない「問題のある」周波数(例えば、100Hz未満の低周波数)が抑制されるように選択される。逆に、これは、第1の音響差動が、まさに、二次の音響差動を用いて適切に再生され得る周波数を含むことを意味する。より高次で再生することができ、かつこの次数で再生することができない個々の周波数帯域は、アレイ20に、例えばトランスデューサのサイズに、特にはトランスデューサ20a、20b、20c間のスペーシングに依存する。例えば、より高い周波数帯域の再生には、より低い周波数帯域の再生と比べると、より小さいスペーシングが必要である。第1の音響差動を用いて再生される周波数範囲部分を限定するために、プロセッサは、フィルタリングを実行してもよく、または、フィルタリングを実行するためにIIRのような(デジタル)フィルタエンティティを備えてもよい。したがって、第1の音響差動の再生は、オーディオストリーム全体の再生を可能にするが、オーディオストリームの周波数帯域は限定される。
【0032】
第1の音響差動を用いて再生されない周波数帯域部分は、他の音響差動を用いて再生されてもよい。ここでは、2つの原則を区別する。
【0033】
第1の原理によれば、第2の音響差動は、一次を有する(第1の次数に限定される)ように提供される。一次の音響差動の再生は、典型的には、2つだけのトランスデューサ(例えば、出力14aおよび14cにより制御される20aおよび20c)を用いて可能である。したがって、ある実施形態によれば、プロセッサ14は、別の周波数帯域(問題のある周波数帯域と前述されている帯域。問題のある周波数は、特有のトランスデューサ/アレイ構成の組合せに依存することに留意されたい。)について、一次だけの第2の音響差動の計算を実行する。第2の音響差動の周波数帯域は、第1の音響差動の周波数帯域に比較すると、より低い周波数を含み得る場合が多いが、必ずしもそうではない。より低い周波数は、大きいスペーシングを有するトランスデューサを用いてより良く再生されるという先の記述に戻ると、第2の音響差動は、外側の2つのトランスデューサ20aおよび20c、つまり、間に大きいスペーシングを有するトランスデューサ20aおよび20cを用いて再生されてもよい。
【0034】
別の原理によれば、オーディオストリームの周波数範囲の欠落した(問題のある)部分は、やはり二次またはより高次の第2の音響差動を用いて再生される。この場合、この概念は、破線で示すような少なくとも4つのトランスデューサ20a〜20dを有するアレイから始まる。この場合、第2の音響差動の再生は、他のトランスデューサ、例えば、トランスデューサ20a、20cおよび20d(即ち、第1の音響差動のトランスデューサ20a、20bおよび20cではない)が使用されるように実行される。このため、問題のある周波数範囲において二次以上の音響差動を再生する際に生じる限定は、別のトランスデューサ構成/集合の使用によって克服することができる。詳細には、第2の音響差動の再生に使用されるトランスデューサ構成は、単一のトランスデューサ間のスペーシング、または少なくとも、個々の集合のうちの2つのトランスデューサ間のスペーシングが、第1の音響差動の再生に使用されるトランスデューサ構成とは異なる。この原理の変形例については、
図3に関連してより詳細に説明する。
【0035】
単に完全を期すために、この第2の原理の場合、プロセッサ16が第2の音響差動の計算を実行し、かつフィルタリングを実行し、そのことで、第2の音響差動が、単に個々のトランスデューサ集合を用いて再生可能な周波数を含む点は、留意されるべきである。さらに、出力14a〜14cを備える、個々のオーディオ信号を出力するための手段は、少なくとも1つの追加出力14dによって強化される。
【0036】
周波数範囲全体の第2の部分を再生する上述の原理の双方は、第2の音響差動(一次、二次またはより高次)が、第1の音響差動の再生に使用されるトランスデューサ集合とは異なるトランスデューサ集合を用いて再生される点で共通している。
【0037】
さらなる実施形態によれば、周波数帯域全体の第2の部分を再生する2つの基本的な概念は、3つ以上の周波数帯域が3つ以上の音響差動を用いて再生されるように組み合わされてもよい。この場合、音響差動(第1の音響差を除く)は、使用される原理に依存して一次またはより高次を有してもよい。
【0038】
これらの2つの(帯域制限された)周波数範囲は、典型的には、互いから分離されているが、フィルタエッジによって引き起こされる遷移領域を有してもよいことに留意されたい。あるいは、2つの周波数部分をフィルタリングするためのフィルタは、重なり合った部分を有するように設計されてもよい。
【0039】
以下、上述の基本的な実施形態の背景を詳細に説明する。
【0040】
図2aは、位置x
1、x
2およびx
3における3つのスピーカ20a、20bおよび20cと、参照数字30によって示された好ましい聴点とを示す。ここで、音は、二次音響差動により、好ましい聴点30に向けたゼロ操作で再生される。
【0041】
二次音響差動は、それらのゼロを共通点に向ける2つの一次音響差動を減算することによって生成される。つまり、これは、二次音響差動が、2つの一次音響差動を組み合わせることによって生成されることを意味する。位置x
1およびx
2におけるスピーカ20aおよび20bによる一次音響差動は、次式によって生成される。
s
1(t)=s
s
2(t)=−s(t−τ
2)
(1)
【0042】
変数s
1およびs
2は、トランスデューサ20aおよび20bを駆動する信号を指す。差動の中心は、x位置において、m
1=(x
1+x
2)/2である。遅延τ
1およびτ
2は、ゼロがm
1から好ましい聴取位置30に向って操作される類のものである。位置x
2およびx
3におけるスピーカ20bおよび20cによる一次音響差動は、次式により生み出される。
s
2(t)=s
s
3(t)=−s(t−τ
3)
(2)
ここで、変数s
2およびs
3は、トランスデューサ20bおよび20cに関する信号を指す。差動の中心は、x位置において、m
2=(x
2+x
3)/2である。遅延τ’
2およびτ
3は、ゼロがm
2から好ましい聴取位置30に向かって操作される類のものであって、τ’
2=τ
2である。これらの2つの一次差動は、好ましい聴取位置30に向かうゼロ操作で二次差動を生成するために減算される。
s
1(t)=s
s
2(t)=−2s
s
3(t)=s(t−τ
3)
(3)
【0043】
一次差動のゼロの方向は、次式の通りである。
Φ
1=atan2
Φ
2=atan2(r,−m
2)
(4)
【0044】
操作遅れは、次式のように操作角に関係する。
【0045】
角度Φ
1およびΦ
2は、
図2a内に記されていることに留意されたい。3つの遅延は、最小の遅延がゼロになるという追加の条件によって計算される。
【0046】
この手順を換言すると、遅延(および/または反転)演算は、差動が特有の方向または点の領域においてゼロ応答を有するように適用され得る、と表現されてもよい(点30参照)。
【0047】
以下では、
図2bに示されるように、指向性パターンが、半径rの円上で測定する場合に発生することについて考察する。
【0048】
ここで、3つのスピーカ20a、20bおよび20cは、x
1=0.2m、x
2=−0.6m、およびx
3=−1.4mにある。音響差動を生成すれば、
図2aを参照して説明したように、距離rにおいてアレイの周りの円上、またはアレイの点32の周りの円上を歩く聴取者に関して考察される指向性パターンが生成され得る。
【0049】
結果的に生じる負のx方向(二次テールドカーディオイドの視線方向)の周波数応答を、
図2cに示す。動作範囲は、約100Hz〜200Hzである。より低い周波数では、振幅が低すぎて、低周波数ロールオフが延長される場合は強力なスピーカが必要になる。より高い周波数では、指向性パターンが不揃いになる。これらの周波数依存効果が、二次音響差動の指向性パターンを示す
図2dに示される。図から分かるように、動作範囲(100〜200Hz)内での指向性パターンは、かなり類似している。60Hzのように低い周波数では、振幅が低く、240Hz超のように高い周波数では、指向性パターンがエイリアスになる。この分析に従って、周波数範囲全体のうちの第1の部分(二次またはより高次の音響差動を用いて再生される)が選択される。結果的に、周波数範囲は、この選択部分より下および上に及ぶ。この選択部分(ここでは、100Hz未満および200Hz超)は、先に説明したように変更されたトランスデューサ集合について計算される第2(および第3)の音響差動を用いて再生されなければならない。
【0050】
説明したように、二次音響差動は、一貫した周波数応答および指向性パターンを提供する限定された周波数範囲を有する。従来、差動マイクロフォンおよびスピーカ信号処理では、(エイリアシングを防止する目的で)動作範囲をより高い周波数にシフトするために、相対的に小さいマイクロフォン/スピーカ間距離が使用される。次に、より低い周波数のロールオフが、ローシェルビング型フィルタによって補償される。この手順は、特にスピーカに関して、低い周波数が増幅され、低周波数再生に対するスピーカ要件が増大するが、これは、乏しいフォームファクタではしばしば非現実的である、という欠点を有する。さらに、二次の場合、低周波数ロールオフは1オクターブにつき12dBであって、低周波数ロールオフの補償は、完全に非現実的なものとなる。
【0051】
より広い動作帯域幅を達成するためには、異なる周波数に対して異なるスピーカ集合が使用されるべきである。先に述べた例(
図2参照)は、好ましくは、約100〜200Hzの周波数範囲内でのみ使用可能である。他のスピーカトリプル集合は、200〜400Hzおよび/または400〜800Hzなどの周波数範囲をカバーするために使用される。
【0052】
図3は、このようなスピーカ設定またはスピーカアレイを示す。
図3のアレイ20’は、5つのスピーカ20a〜20eを含み、これは、3帯域までの二次音響差動に対して用いることができる。
図2aの例に比較すると、2つのスピーカ(20dおよび20e参照)が追加され、全スピーカ20a〜20eのx軸に沿った位置合わせが変更されている。5つのスピーカに起因して、各々が3つのスピーカを用いる3つの異なる組合せが可能である。これらの組合せを、トリプルと呼ぶ。3つの帯域に使用されるスピーカトリプルを、参照数字26a、26bおよび26cで示す。第1のトリプル26aは、スピーカ20a、20dおよび20eを含み、第2のトリプル26bは、スピーカ20a、20bおよび20dを含み、第3のトリプル26cは、スピーカ20b、20cおよび20dを含む。
【0053】
図から分かるように、スピーカ20a〜20eは、スピーカ20aと20dがスピーカ20dと20eとの距離に等しい距離で互いに離間されるように配置されてもよい。スピーカ20bは、スピーカ20aと20dとの間に配置される。例えば、第1のスピーカ20aは、0.2mの位置に配置されてもよく、第2のスピーカ20bは、−0.2mの位置に、第3のスピーカ20cは、−0.4mの位置に、第4のスピーカ20dは、−0.6mの位置に配置されてもよく、第5のスピーカ20eは、−1.2mの位置に配置されてもよい。さらに、スピーカ20cは、スピーカ20bと20dの中心に配置される。この配置により、第1のトリプル26a、第2のトリプル26bおよび第3のトリプル26cの全てのスピーカは、一部のトランスデューサが異なる集合に使用される場合でも、等距離にあるという条件が成立する。
【0054】
図4aは、負のx方向(二次テールドカーディオイドの視線方向)で3つのダイポールをフィルタリングする前の、これらのダイポールの周波数応答を示す。周波数応答26a_fr1、26b_fr1および26c_fr1は、
図3のトリプル26a、26bおよび26cに属する。このデータは、妥当なサブバンド遷移周波数が200Hz〜500Hz、または概して100Hz〜300Hzの間、および350Hz〜800Hzの間であり得ることを含意する。例えば、3つのサブバンドは、3次IIRフルレートフィルタバンクで実装した。
【0055】
付加的なサブバンド処理によって結果的に生じるダイポールの周波数応答が、
図4bに示される。周波数応答26a_fr2、26b_fr2、および26c_fr2は、トリプル26a、26bおよび26cに属し、かつ周波数応答26a_fr1、26b_fr1および26c_fr1の処理から生じている。サブバンドの二次音響差動を再生するために使用される異なるスピーカトリプル26a−26cのスピーカ20a〜20eの異なる位置に起因して、遅延は、サブバンドの遷移周波数における望ましくない干渉を引き起こし得る。異なるサブバンド信号の音響再生の整合を遅延させるために、サブバンド毎の3つのスピーカについて、式(5)の遅延τ
1、τ
2およびτ
3に遅延オフセットが加えられてもよい。
【0056】
さらなる実施形態によれば、提案する技術は、より高次の音響差動に対しても実施可能である。この場合、少なくとも4つのスピーカを必要とする3対のスピーカについて考察する。4つのスピーカの場合、3つの一次差動を再現することができる:
s
1(t)=s
s
2(t)=−s(t−τ
2)
(6)
s
2(t)=s
s
3(t)=−s(t−τ
3)
(7)
s
3(t)=s
s
4(t)=−s(t−τ
4)
(8)
【0057】
スピーカ1〜3へ式(6)と同時に反転された式(7)とを与えると、二次差動(式(3)に類似する)が再生される。スピーカ2〜4へ式(7)と同時に反転された式(8)とを与えると、第2の二次差動が再生される。三次音響差動は、一方が反転された2つの二次差動を同時に再生することによって実装される。
s
1(t)=s
s
2(t)=−3s
s
3(t)=3s
s
4(t)=−s(t−τ
4)
(9)
【0058】
概して、k次の音響差動のスピーカ信号は、以下のように計算することができる。
または、
ここで、kは差動の次数であり、nはスピーカの数であり、n=(1,2,.,k+1)である。即ち、k次の音響差動の場合、k+1個(等距離)のスピーカが必要である。
【0059】
遅延は、二次差動について先に述べたものと同様の考案によって計算される。
【0060】
例えば、遅延を得るための簡単なアルゴリズムは、下記の通りである。
・τ
1=0を設定して、一次差動のゼロ方向が所望通りになるように、例えば、好ましい聴点を指すように、(負または正の)遅延τ
2を計算する。
・先に計算されたτ
2を所与として、第2の差動のτ
3を、そのゼロが所望の方向を指すように計算する。
・先に計算されたτ
3を所与として、第3の差動のτ
4を、そのゼロが所望の方向を指すように計算する。
・すべての遅延に、例えば下記のようなオフセットを加算して、これらを所望範囲に収める。
オフセット=−min{min{min{τ
1,τ
2},τ
3},τ
4}(10)
・異なるサブバンドを用いる場合、各サブバンドのスピーカ信号に加算される遅延オフセットは、式(10)と異なってもよく、即ち、サブバンド間の干渉を低減するように決定されてもよい。
【0061】
したがって、ある実施形態は、個々の音響差動によって特徴的な遅延を計算する方法を提供する。
【0062】
別の実施形態によれば、プロセッサは、反転演算を実行するように構成されてもよい。
【0063】
例えば、間隔が1mであるスピーカ対は、長さ2mのアレイ(第1と第2のスピーカ間のスペーシングが1m、第2と第3のスピーカ間のスペーシングが1m)を有する二次ダイポールに類似する周波数範囲を有する一次ダイポールの実行を可能にする。
【0064】
したがって、アレイのアパーチャは、所定のサイズに限定される。一次ダイポール(
図5aの26a)は、二次ダイポール(26b、26cおよび26d)よりも低い周波数範囲を扱うことができる。これは、より低い周波数に対する一次ダイポール(26a)の使用、およびより高い周波数に対する二次ダイポール(26b、26cおよび26d)の使用を促す。
図3の内容を用いる一例が、
図5aに示される。
【0065】
反対に、高い周波数では、極小スピーカを使用しない限り、スピーカのスペーシングが粗すぎて、精密な音響差動を再生することができない。これは、信号をスピーカへ直に(音響差動の実行を試行することなく)与えることによって、高周波数の再生を促す。また、高周波数において、スピーカは、通常、極めて指向的である。したがって、単一のスピーカであっても、目指す方向に向かって効果的なビームを放射する。このような設定は、
図3の内容を用いて
図5bに示されている。ここでは、二次ダイポール(26a’、26bおよび26c)および単一のスピーカ(26d)が使用されている。
【0066】
一般的に言えば、周波数帯域毎に、対応する周波数帯域において最良の所望パフォーマンスをもたらす音響差動次数が使用されてもよい。これにより、異なる周波数帯域で異なる次数が使用されることがある。
【0067】
さらなる実施形態によれば、低い周波数範囲は、サブウーファの追加出力を用いて再生またはサポートされてもよい。したがって、計算ユニットは、サブウーファ出力を備えてもよい。
【0068】
図5cは、マルチバンド2チャンネルの例を示す。この場合、設定例は、ステレオ再生のための7つのスピーカ(20a〜20g)を備える。3つの二次差動(26a’、26b、26c)は、左チャンネルに使用され、3つ(26d、26e、26f)は、右チャンネルに使用される。サブバンド毎に、左チャンネルのスピーカトリプルは、左向きに選択され、右チャンネルのスピーカトリプルは、右向きに選択される。この例において、帯域1では、スピーカが左右で共用されることに留意されたい。
【0069】
前述のように、音響差動は、スピーカのペア(一次)、トリプル(二次)またはそれ以上(高次)によって再生される。スピーカの位置が聴取位置に対して左右対称である場合、音響ダイポールが再生され、即ち、指向特性は、左右対称である。スピーカが聴取位置に対して左にあれば、音響差動は、左向きの指向特性を有する。右側についても同様である。2つの入力信号を再生する(ステレオ)ためには、左側のスピーカグループを選択して音響差動を再生し、左の信号を左側に投影させることができる。同様に、右の信号については、右側のスピーカを選択することができる。これにより、ステレオ再生が可能になり、左右の信号が左側および右側に投影され、ワイドなステレオ画像になる。
【0070】
ある実施形態は、先に述べたような計算ユニット10を提供していて、プロセッサ16は、加算される3つの出力14a〜14cのうちの2つを用いて出力されるべき2つのさらなる個々のオーディオ信号を、一次の第2の音響差動が、2つの出力14a〜14cを介して制御される2つのトランスデューサ20a〜20eを用いて生成されるように計算すべく構成され、かつプロセッサ16は、2つのさらなる個々のオーディオ信号を、オーディオストリームの周波数範囲の第1の限定部分とは異なる第2の限定部分を含む第2の通過帯域特性を用いてフィルタリングするように構成される。
【0071】
上記の実施形態に関しては、アレイ20/20’のトランスデューサ20a〜20eが(好ましくは)共通のエンクロージャ内に配置され得ることに留意すべきである。あるいは、アレイ20/20’は、複数のトランスデューサ20a〜20eによって形成されてもよく、各トランスデューサ20a〜20e(またはトランスデューサ20a〜20eのうちの少なくとも2つ)は、別個のエンクロージャを有する。
【0072】
計算ユニット10は、実施例によれば、5つのトランスデューサ20a〜20eに少なくとも5つの出力(14a〜14d、+1つの追加出力参照)を備えてもよく、第1の音響差動は、5つの出力14a〜14dのうちの第1のグループに属する少なくとも3つを用いて生成され、第2の音響差動は、5つの出力14a〜14dのうちの第2のグループに属する少なくとも2つを用いて生成され、かつ第3の音響差動は、5つの出力14a〜14dのうちの第3のグループに属する少なくとも2つを用いて生成され、かつ第1、第2および第3のグループは、少なくとも1つの出力14a〜14dに関して互いに相違する。
【0073】
音響再生は、実施形態によれば、二次またはより高次の第1の音響差動と、一次に限定される更なる音響差動とに基づくものであってもよい。
【0074】
さらなる実施形態によれば、計算ユニットは、サブウーファのための追加出力を備えてもよく、プロセッサ16は、オーディオストリームに基づいて計算し、かつサブウーファのオーディオ信号を、オーディオストリームの、第1の限定部分、第2の限定部分および/または第3の限定部分の周波数範囲より低い周波数範囲を含む帯域通過特性を用いてフィルタリングするように構成される。
【0075】
オーディオストリームは、ステレオストリームであってもよく、即ち、プロセッサ16は、ステレオストリームの左チャネルを再生する左側を指し示すローブの第1の音響差動と、ステレオストリームの右チャネルを再生する右側を指し示すローブを有する第2の音響差動とを計算するように構成されてもよい。
【0076】
場合により、オーディオストリームは、マルチチャネルストリーム(例えば、5.1ストリーム)であってもよい。この場合、プロセッサ16は、マルチチャネルストリームを、マルチチャネルストリームが上述のアレイを用いることにより再生可能であるようにレンダリングすべく構成されてもよい。
【0077】
さらなる実施形態は、上述の装置/計算ユニットと、少なくとも3つのトランスデューサを含むアレイとを備えるシステムを提供する。
【0078】
ある実施形態は、
−音響再生のための計算ユニット10と、
−少なくとも3つまたは4つのトランスデューサ20a〜20eを有するアレイ(アレイ20参照)と、を備えるシステムを提供し、一次の第2の音響差動を生成するために使用されるトランスデューサ20a〜20eは、第1の音響差動を生成するために使用されるトランスデューサ20a〜20e間の距離より大きい距離で互いから離隔され、または、第2のグループの出力14a〜14dを介して制御されるトランスデューサ20a〜20eは、第1のグループに属する出力14a〜14dを介して制御されるトランスデューサ20a〜20e間の距離より大きい距離で互いから離隔される。
【0079】
また、上述の実施形態は、単一の音響差動を計算するための装置について説明したものであり、さらなる実施形態は、それに対応する方法を指す。
【0080】
幾つかの態様を装置のコンテキストで説明してきたが、これらの態様が対応する方法の説明をも表すことは明らかであって、ブロックまたはデバイスは、方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法ステップのコンテキストで説明されている態様も、対応する装置の対応するブロックまたはアイテムまたは特徴の説明を表す。方法ステップの一部または全ては、例えばマイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路のようなハードウェア装置によって(または、これを用いて)実行されてもよい。実施形態によっては、最も重要な方法ステップのうちの何らかの1つまたはそれ以上がこのような装置によって実行されてもよい。
【0081】
本発明による処理された(符号化された)オーディオ信号は、デジタル記憶媒体に記憶されるか、無線伝送媒体等の伝送媒体またはインターネット等の有線伝送媒体上で伝送されることが可能である。
【0082】
所定の実施要件に依存して、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアに実装することができる。実装は、個々の方法が実行されるようにプログラム可能コンピュータシステムと共働する(または共働することができる)、電子読取り可能制御信号を記憶しているデジタル記憶媒体、例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリを用いて実行することができる。したがって、デジタル記憶媒体は、コンピュータ読取り可能であってもよい。
【0083】
本発明による幾つかの実施形態は、本明細書に記載の方法の1つが実行されるようにプログラム可能コンピュータシステムと共働できる、電子読取り可能制御信号を有するデータキャリアを含む。
【0084】
概して、本発明の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータ・プログラム・プロダクトとして実装することができ、プログラムコードは、コンピュータ・プログラム・プロダクトがコンピュータ上で実行されると前記方法のうちの1つを実行するように動作可能である。プログラムコードは、例えば、機械読取り可能キャリア上に記憶されてもよい。
【0085】
他の実施形態は、機械読取り可能キャリア上に記憶される、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを含む。
【0086】
したがって、言い換えれば、本発明方法の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0087】
上述のオーディオストリームが、マルチチャンネル・オーディオ・ストリームであっても、ステレオストリームであっても、アンビエンスストリームであってもよいことは、留意されるべきである。
【0088】
したがって、本発明方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを記録して含むデータキャリア(またはデジタル記憶媒体またはコンピュータ読取り可能媒体)である。データキャリア、デジタル記憶媒体または記録される媒体は、典型的には、有形かつ/または非移行型である。
【0089】
したがって、本発明方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは、例えば、データ通信接続を介して、例えばインターネットを介して転送されるように構成されてもよい。
【0090】
さらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するように構成または適応される処理手段、例えばコンピュータ、またはプログラマブル論理デバイスを含む。
【0091】
さらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムをインストールしているコンピュータを含む。
【0092】
本発明によるさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを受信機へ(例えば、電子的にまたは光学的に)転送するように構成される装置またはシステムを含む。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイルデバイス、メモリデバイスまたはこれらに類似するものであってもよい。前記装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機へ転送するためのファイルサーバを備えてもよい。
【0093】
幾つかの実施形態において、プログラマブル論理デバイス(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)は、本明細書に記載の方法の機能のうちの一部または全てを実行するために使用されてもよい。幾つかの実施形態において、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためにマイクロプロセッサと共働してもよい。概して、前記方法は、好ましくは、任意のハードウェア装置によって実行される。
【0094】
上述の実施形態は、本発明の原理を単に例示するものである。他の当業者には、本明細書に記載の配置および詳細の変更および変形が明らかとなることは理解されたい。したがって、本発明は、本明細書における実施形態の記述および説明として提示された特定の詳細ではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。