特許第6595031号(P6595031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6595031固体電解質材料、リチウムイオン電池および固体電解質材料の製造方法
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  • 特許6595031-固体電解質材料、リチウムイオン電池および固体電解質材料の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595031
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】固体電解質材料、リチウムイオン電池および固体電解質材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20191010BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20191010BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20191010BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M10/052
   H01B1/06 A
   H01B13/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-50523(P2018-50523)
(22)【出願日】2018年3月19日
(62)【分割の表示】特願2014-18213(P2014-18213)の分割
【原出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-92954(P2018-92954A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2018年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】松山 敏也
(72)【発明者】
【氏名】田村 素志
(72)【発明者】
【氏名】山本 一富
【審査官】 式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−201110(JP,A)
【文献】 特開2005−228570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052−10/0587
H01B 1/06
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素として、Li、P、およびSを含み、かつ、ハロゲン元素を含まず
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、
少なくとも回折角2θ=17.7±0.3°の位置に回折ピークを有し、
前記回折角2θ=17.7±0.3°の位置に存在する前記回折ピークの回折強度をIとし、回折角2θ=26.9±0.3°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、
/Iの値が0.50以下である、固体電解質材料であって、
当該固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.15以上である、固体電解質材料。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解質材料において、
当該固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.45以下である、固体電解質材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固体電解質材料において、
当該固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.79以上である、固体電解質材料。
【請求項4】
請求項3に記載の固体電解質材料において、
当該固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が、4.00未満である、固体電解質材料。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、
回折角2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークをさらに有する、固体電解質材料。
【請求項6】
正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えた、リチウムイオン電池であって、
前記正極活物質層、前記電解質層および前記負極活物質層のうち少なくとも一つが、請求項1乃至5いずれか一項に記載の固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池。
【請求項7】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の固体電解質材料を製造するための製造方法であって、
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程を含み、
前記混合物A中の前記LiS、前記Pおよび前記LiNの合計を100モル%としたとき、
前記LiSの含有量が63.0モル%以上70.0モル%以下であり、
前記Pの含有量が23.0モル%以上26.0モル%以下であり、
前記LiNの含有量が6.5モル%以上12.0モル%以下である、固体電解質材料の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の固体電解質材料の製造方法において、
前記混合物Aをガラス化する工程により得られた混合物Bを加圧成型する工程と、
加圧成型した前記混合物Bを加熱することにより、前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程と、
をさらに含む、固体電解質材料の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の固体電解質材料の製造方法において、
ガラス状態の前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する前記工程では、
不活性ガス雰囲気下において、前記混合物Bを280℃以上500℃以下で加熱する、固体電解質材料の製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9いずれか一項に記載の固体電解質材料の製造方法において、
前記混合物Aをガラス化する前記工程では、
前記混合物Aをメカノケミカル処理することによりガラス化する、固体電解質材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質材料、リチウムイオン電池および固体電解質材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、一般的に、携帯電話やノートパソコンなどの小型携帯機器の電源として使用されている。また、最近では小型携帯機器以外に、電気自動車や電力貯蔵などの電源としてもリチウムイオン電池は使用され始めている。
【0003】
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されている。一方、電解液を固体電解質に変えて、電池を全固体化したリチウムイオン電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。このような固体電解質に用いられる固体電解質材料としては、硫化物系の材料が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
硫化物系の固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性が高いため、電池の高出力化を図る上で有用であり、従来から種々の研究がなされている。硫化物系の固体電解質としては、例えば、LiS−P系の固体電解質材料が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/119706号パンフレット
【特許文献2】特開2012−43654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した硫化物系の固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性に優れているものの、電解液に比べたらまだまだ低く、固体電解質材料としては十分に満足するものではなかった。また、このような固体電解質材料を用いた全固体型リチウムイオン電池は入出力特性が劣っていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン伝導性に優れ、かつ、入出力特性に優れた全固体型リチウムイオン電池を実現できる硫化物系の固体電解質材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、リチウムイオン伝導性に優れる、硫化物系の固体電解質材料を提供するため、固体電解質材料の製造に用いる原料の種類、それらの配合割合、製造条件などについて鋭意検討した。その結果、構成元素として、Li、P、およびSを含み、特定の回折ピークの回折強度が低い硫化物系の材料、あるいはLi、P、およびSを特定量含む硫化物系の材料がリチウムイオン伝導性に優れることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、
構成元素として、Li、P、およびSを含み、かつ、ハロゲン元素を含まず
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、
少なくとも回折角2θ=17.7±0.3°の位置に回折ピークを有し、
上記回折角2θ=17.7±0.3°の位置に存在する上記回折ピークの回折強度をIとし、回折角2θ=26.9±0.3°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、
/Iの値が0.50以下である、固体電解質材料であって、
当該固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する上記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.15以上である、固体電解質材料が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
構成元素として、Li、P、およびSを含み、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、
少なくとも回折角2θ=17.7±0.3°の位置に回折ピークを有し、
前記回折角2θ=17.7±0.3°の位置に存在する前記回折ピークの回折強度をIとし、回折角2θ=26.9±0.3°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、
/Iの値が0.50以下である、固体電解質材料であって、
当該固体電解質材料中の上記Pの含有量に対する上記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.79以上である、固体電解質材料が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、
正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えた、リチウムイオン電池であって、
上記正極活物質層、上記電解質層および上記負極活物質層のうち少なくとも一つが、上記固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程を含み、
上記混合物A中の上記LiS、上記Pおよび上記LiNの合計を100モル%としたとき、
上記LiSの含有量が63.0モル%以上70.0モル%以下であり、
上記Pの含有量が23.0モル%以上26.0モル%以下であり、
上記LiNの含有量が6.5モル%以上12.0モル%以下である、固体電解質材料の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リチウムイオン伝導性に優れ、かつ、入出力特性に優れた全固体型リチウムイオン電池を実現できる硫化物系の固体電解質材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池の構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。なお、「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0016】
1.第一実施形態
以下、本発明に係る第一実施形態について説明する。
【0017】
[固体電解質材料]
はじめに、本実施形態の固体電解質材料について説明する。
本実施形態の固体電解質材料は、構成元素として、Li、P、およびSを含んでいる。
本実施形態の固体電解質材料は、線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、少なくとも回折角2θ=17.7±0.3°の位置に回折ピークを有する。そして、回折角2θ=17.7±0.3°に存在する回折ピークの回折強度をIとし、回折角2θ=26.9±0.3°に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、I/Iの値が0.50以下であり、好ましくは0.35以下であり、より好ましくは0.20以下である。
/Iを上記上限値以下とすることにより、固体電解質材料のリチウムイオン伝導性を向上させることができる。さらに、このような固体電解質材料を用いると、入出力特性に優れた全固体型リチウムイオン電池を得ることができる。
ここで、回折角2θ=17.7±0.3°の位置に存在する回折ピークは、基準の回折ピークであり、回折角2θ=26.9±0.3°の位置に存在する回折ピークは硫化リチウム(以下、LiSとも呼ぶ。)由来の回折ピークである。
したがって、I/Iは、本実施形態の固体電解質材料中の硫化リチウムの含有量の指標を表している。I/Iが小さいほど、本実施形態の固体電解質材料に含まれる硫化リチウムの量が少ないことを意味する。
LiSはリチウムイオン伝導性が低いため、LiSの含有量が少ないほど固体電解質のリチウムイオン伝導性は向上するものと考えられる。
従来の固体電解質材料は、I/Iが上記上限値を超えており、固体電解質材料に含まれる硫化リチウムの量が多かった。そのため、従来の固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を十分に向上できなかったと考えられる。
これに対し、本実施形態の固体電解質材料は、I/Iが上記上限値以下であるため、優れたリチウムイオン伝導性を実現できる。この理由は、LiSの含有量が従来のものよりも少なく、リチウムイオン伝導性を阻害する成分の量が少ないからだと考えられる。
また、I/Iは小さければ小さいほど好ましいため下限値は特に限定されないが、例えば0.01以上である。
【0018】
また、本実施形態の固体電解質材料は、当該固体電解質材料中の上記Pの含有量に対する上記Liの含有量のモル比(Li/P)が好ましくは3.15以上3.45以下であり、より好ましくは3.15以上3.40以下であり、さらに好ましくは3.20以上3.35以下であり、特に好ましくは3.20以上3.33以下である。また、上記Pの含有量に対する上記Sの含有量のモル比(S/P)が、好ましくは3.79以上4.00未満であり、より好ましくは3.80以上4.00未満であり、さらに好ましくは3.81以上3.98以下であり、特に好ましくは3.81以上3.95以下である。
ここで、本実施形態の固体電解質材料中のLi、P、およびSの含有量は、例えば、ICP発光分光分析により求めることができる。
【0019】
Li/Pのモル比およびS/Pのモル比を上記範囲内とすることにより、より一層優れたリチウムイオン伝導性を得ることができる。この理由については必ずしも明らかではないが、以下の理由が推察される。
固体電解質材料のリチウムイオン伝導性を向上させるためには、化合物の安定性を維持しつつ、リチウムイオンが容易にホッピングするような構造に変化させることが重要である。例えば、安定なオルト組成化合物のLiPSのLi組成を増加または減少させることが重要な因子である。Li組成を増加または減少させる一般的な手法としては、原料の一つであるLiSの混合量を変化させる手法が挙げられる。しかし、この手法ではLi組成だけでなく、S組成も変化してしまうためP−Sの結合状態が変わってしまい目的の効果が得られにくい。
本実施形態では、後述するように、LiPSのLi組成を増加させる手法として、LiNを利用する手法を採用している。LiN中のNはNとして系内に排出されるため、LiNを利用することで、LiPSに対し、Li組成のみを増加させることが可能となる。本発明者らの検討によれば、LiNを利用して、LiPSのLi組成を増加させることにより、固体電解質のリチウムイオン伝導性を向上できることを見出した。
一方で、LiNの混合量を増やすと、LiNがPと反応しLiN由来のLiがLiSとなる。LiSはリチウムイオン伝導性が低いため、固体電解質材料のリチウムイオン伝導性を低下させる要因となる。
そこで、本発明者らは、得られる固体電解質材料中のLiSの含有量を低減させるために鋭意検討した。その結果、原料の一つであるPの混合割合を従来よりも高めることで、LiSの含有量を低減でき、その結果、得られる固体電解質のリチウムイオン伝導性をより一層向上できることを見出した。そのため、本実施形態では、後述するように、Pの混合割合を高め、LiSの含有量を抑制している。
以上のように、LiNを利用し、Li組成を増加させるとともに、Pの割合を高め、LiSの含有量を低減させることにより、Li/Pのモル比およびS/Pのモル比を今までにない上記範囲内にすることができる。Li/Pのモル比およびS/Pのモル比が上記範囲内であると、化合物の安定性とLi組成とLiSの量とが高度にバランスされ、その結果、高いリチウムイオン伝導性の発現につながったと考えられる。
【0020】
本実施形態の固体電解質材料は、線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、少なくとも回折角2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークを有する回折スペクトルを示すのが好ましい。
ここで、「回折角2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークを有する」とは、原料であるLiS、PおよびLiNとは異なる新たな結晶構造が生成していることを意味している。詳細は後述するが、原料であるLiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化し、得られたガラス状態の混合物Bを加圧成型した後で加熱することにより、回折角2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークが現れるからである。
したがって、これらの回折ピークは、LiS、PおよびLiNを原料としたガラス状態から新たな規則構造が構成されたために現れた新規の回折ピークであると推測される。なお、ガラス状態の混合物を加熱処理して結晶化させることにより得られる化合物は、一般的に、結晶化ガラスと呼ばれている。
本実施形態の固体電解質材料は、こうした結晶構造を有することにより、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
【0021】
本実施形態の固体電解質材料の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。本実施形態の粒子状の固体電解質材料は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50が、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。
固体電解質材料の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
【0022】
[固体電解質材料の製造方法]
つづいて、本実施形態の固体電解質材料の製造方法について説明する。
本実施形態の固体電解質材料は、例えば、原料であるLiS、PおよびLiNを特定の割合で含む混合物Aをガラス化することにより得ることができる。
また、得られたガラス状態の混合物Bを加圧成型した後、加熱(熱処理とも呼ぶ)することが好ましい。より具体的には、本実施形態の固体電解質材料は、以下の(1)の工程を含む製造方法により得ることができる。また、本実施形態の固体電解質材料の製造方法は、以下の(2)の工程をさらに含むことが好ましい。
【0023】
(1)LiS、PおよびLiNを特定の割合で含む混合物Aをガラス化する工程
(2)得られたガラス状態の混合物Bを加圧成型した後で加熱することにより、上記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程
以下、各工程について説明する。
【0024】
<混合物Aをガラス化する工程>
はじめに、LiS、PおよびLiNを特定の割合で含む混合物Aを調製する。ここで、混合物A中のLiSの含有量が好ましくは63.0モル%以上70.0モル%以下、より好ましくは64.0モル%以上69.0モル%以下、Pの含有量が好ましくは23.0モル%以上26.0モル%以下、より好ましくは23.5モル%以上25.0モル%以下、LiNの含有量が好ましくは6.5モル%以上12.0モル%以下、より好ましくは7.0モル%以上11.5モル%以下となるように、LiS、PおよびLiNを混合する。
ここで、LiNの混合量を上記範囲内とすることで、得られる固体電解質材料の安定性を維持しつつ、Li組成を増加させることができる。
また、Pの混合量を上記範囲内とすることで、得られる固体電解質材料の安定性を維持しつつ、LiSの含有量を低減することができる。
なお、得られた固体電解質材料から硫化リチウムだけを除去するのは難しい。そのため、I/Iの値が本実施形態の範囲内である固体電解質材料を得るためには、本実施形態の固体電解質材料の製造方法のように、Pの混合割合を従来の基準よりも高めることが重要となる。
このように各成分の混合割合を高度に制御することにより、構成元素として、Li、P、およびSを含み、かつ、I/Iが本実施形態の範囲内である固体電解質材料を得ることができる。
【0025】
また、上記混合モル比が、通常はそのまま反応モル比となる。また、本実施形態の混合モル比は、例えば、ICP発光分光分析またはX線光電子分光法により求めることができるが、通常は仕込みの重量比から算出できる。
【0026】
つぎに、LiS、PおよびLiNを上記割合で含む混合物Aをガラス化する。
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する方法としては、LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化できる方法であれば特に限定されないが、例えば、メカノケミカル処理、溶融急冷法などによりおこなうことができる。
これらの中でも、メカノケミカル処理によりおこなうことが好ましい。常温での処理が可能であり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。また、メカノケミカル処理は、乾式メカノケミカル処理であっても、湿式メカノケミカル処理であってもよい。
メカノケミカル処理を用いると、LiS、PおよびLiNを微粒子状に粉砕しながら混合することができるため、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。これにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
【0027】
ここで、メカノケミカル処理とは、混合対象に、せん断力、衝突力または遠心力のような機械的エネルギーを加えつつガラス化する方法である。メカノケミカル処理によるガラス化をおこなう装置としては、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミルなどの粉砕・分散機が挙げられる。これらの中でもボールミルが好ましく、遊星型ボールミルが特に好ましい。遊星型ボールミルでは、ポットが自転回転しながら、台盤が公転回転するので、非常に高い衝撃エネルギーを効率良く発生させることができる。そのため、所望の固体電解質材料を効率良く得ることができる。
【0028】
また、メカノケミカル処理は非活性雰囲気下でおこなうことが好ましい。これにより、LiS、PおよびLiNと、水蒸気や酸素などとの反応を抑制することができる。
また、上記非活性雰囲気下とは、1〜10−5Paの真空雰囲気下または不活性ガス雰囲気下のことである。上記非活性雰囲気下では、水分の接触を避けるために露点が−50℃以下であることが好ましく、−60℃以下であることがより好ましい。上記不活性ガス雰囲気下とは、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下のことである。これらの不活性ガスは、製品への不純物の混入を防止するために、高純度である程好ましい。混合系への不活性ガスの導入方法としては、混合系内が不活性ガス雰囲気で満たされる方法であれば特に限定されないが、不活性ガスをパージする方法、不活性ガスを一定量導入し続ける方法などが挙げられる。
【0029】
また、LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する時に、ヘキサン、トルエン、またはキシレンなどの非プロトン性有機溶媒を添加して、溶媒に各原料を分散させた状態でガラス化してもよい。こうすることにより、より効率良くガラス化することができる。
【0030】
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化するときの回転速度や処理時間、温度、反応圧力、混合物に加えられる重力加速度などの混合条件は、混合物Aの処理量によって適宜決定することができる。一般的には、回転速度が速いほど、ガラスの生成速度は速くなり、処理時間が長いほどガラスヘの転化率は高くなる。例えば、一般的な遊星型ボールミル機を使用した場合は、回転速度を数十〜数百rpmとし、0.5時間〜500時間処理すればよい。通常は、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析をしたとき、原料であるPおよびLiNの回折ピークが消失していたら、上記混合物Aはガラス化され、混合物Bが得られていると判断することができる。
【0031】
本実施形態の固体電解質材料は、リチウムイオンの伝導性をより一層向上できる観点から、非晶質性がより高いほど好ましい。
【0032】
(LiS)
本実施形態のLiSとしては特に限定されず、市販されているLiSを使用してもよいし、例えば、水酸化リチウムと硫化水素との反応により得られるLiSを使用してもよい。高純度な固体電解質材料を得る観点および副反応を抑制する観点から、不純物の少ないLiSを使用することが好ましい。
【0033】
本実施形態のLiSのレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50は、好ましくは平均粒子径d50が30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。平均粒子径d50を上記上限値以下とすることにより、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。これにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
また、LiSの平均粒子径d50の下限値は特に限定されないが、取り扱い性の観点から、例えば1μm以上である。
【0034】
(P
本実施形態のPとしては特に限定されず、市販されているPを使用することができる。高純度な固体電解質材料を得る観点および副反応を抑制する観点から、不純物の少ないPを使用することが好ましい。また、Pに代えて、相当するモル比の単体リン(P)および単体硫黄(S)を用いることもできる。単体リン(P)および単体硫黄(S)は、工業的に生産され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
【0035】
本実施形態のPのレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50は、好ましくは平均粒子径d50が30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。平均粒子径d50を上記上限値以下とすることにより、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。これにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
また、Pの平均粒子径d50の下限値は特に限定されないが、取り扱い性の観点から、例えば1μm以上である。
【0036】
(LiN)
本実施形態のLiNとしては特に限定されず、市販されているLiNを使用してもよいし、例えば、金属リチウム(例えば、Li箔)と窒素ガスとの反応により得られるLiNを使用してもよい。高純度な固体電解質材料を得る観点および副反応を抑制する観点から、不純物の少ないLiNを使用することが好ましい。
【0037】
本実施形態のLiNのレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50は、好ましくは平均粒子径d50が30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。平均粒子径d50を上記上限値以下とすることにより、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。それにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
また、LiNの平均粒子径d50の下限値は特に限定されないが、取り扱い性の観点から、例えば1μm以上である。
【0038】
<混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程>
つづいて、得られたガラス状態の混合物Bを加圧成型した後で加熱することにより、上記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程について説明する。
本実施形態の固体電解質材料の製造方法では、LiS、PおよびLiNを特定の割合で含むガラス状態の混合物Bを加圧成型した後で加熱することにより、混合物Bの少なくとも一部を結晶化させることが好ましい。こうすることにより、より一層リチウムイオン伝導性に優れた固体電解質材料を得ることができる。
【0039】
上記混合物Bを加圧成型する方法は特に限定されないが、例えば、市販のプレス装置を用いて、得られたガラス状態の混合物Bを10MPa以上300MPa以下の圧力で、1〜60分間程度プレスすることにより混合物Bを板状に成型する方法が挙げられる。
プレス成型した板状の混合物Bの厚みは、例えば、0.1mm以上3mm以下である。
【0040】
加圧成型した上記混合物Bを加熱する際の温度としては、280℃以上500℃以下の範囲内であることが好ましく、280℃以上350℃以下の範囲内であることがより好ましい。
上記混合物Bを加熱する際の温度が上記範囲内であると、より一層優れたリチウムイオン伝導性を得ることができる。
【0041】
上記混合物Bを加熱する時間は、所望の固体電解質材料が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば、1分間以上24時間以下の範囲内であり、好ましくは0.5時間以上3時間以下である。加熱の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。なお、このような加熱する際の温度、時間などの条件は、本実施形態の固体電解質材料の特性を最適なものにするため適宜調整することができる。
【0042】
また、上記混合物Bの加熱は、例えば、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、固体電解質材料の劣化(例えば、酸化)を防止することができる。
上記混合物Bを加熱する時の不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどが挙げられる。これらの不活性ガスは、製品への不純物の混入を防止するために、高純度である程好ましく、また、水分の接触を避けるために、露点が−50℃以下であることが好ましく、−60℃以下であることが特に好ましい。混合系への不活性ガスの導入方法としては、混合系内が不活性ガス雰囲気で満たされる方法であれば特に限定されないが、不活性ガスをパージする方法、不活性ガスを一定量導入し続ける方法などが挙げられる。
【0043】
このように混合物Bを加圧成型した後に加熱することにより、Li、PおよびSの組成が均一になり易く、加熱時にガラス粉末が結晶化する前に通過するガラス軟化点で微粒子同士の融着や密着が進むため、微粒子間の接触界面抵抗が低減され、得られる固体電解質材料のリチウムイオン伝導性をより一層向上できると考えられる。
【0044】
このような製造方法により、本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
【0045】
<粉砕、分級、または造粒する工程>
本実施形態の固体電解質材料の製造方法では、必要に応じて、得られた固体電解質材料を粉砕、分級、または造粒する工程をさらにおこなってもよい。例えば、粉砕により微粒子化し、その後、分級操作や造粒操作によって粒子径を調整することにより、所望の粒子径を有する固体電解質材料を得ることができる。上記粉砕方法としては特に限定されず、乳鉢、回転ミル、コーヒーミルなど公知の粉砕方法を用いることができる。また、上記分級方法としては特に限定されず、篩など公知の方法を用いることができる。
これらの粉砕または分級は、空気中の水分との接触を防ぐことができる点から、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下で行うことが好ましい。
また、粉砕、分級、または造粒する工程は、上記(1)の工程の前に、原料であるLiS、PおよびLiNに対しておこなってもよいし、上記(1)の工程の後に、上記混合物Bに対しておこなってもよい。
【0046】
本実施形態の固体電解質材料を得るためには、上記の各工程を適切に調整することが重要である。ただし、本実施形態の固体電解質材料の製造方法は、上記のような方法には限定されず、種々の条件を適切に調整することにより、本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
【0047】
本実施形態の固体電解質材料は、少なくとも5V〜−5Vの範囲で分解が起こらず、室温において1.6×10−3S・cm−1以上という、高いリチウムイオン伝導性を示す。
ここで、上記リチウムイオン伝導度は、27.0℃、印加電圧10mV、測定周波数域0.1Hz〜7MHzの測定条件における交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度である。
したがって、本実施形態の固体電解質材料は、リチウムイオン電池用固体電解質材料として極めて有用である。
また、上記の特性を有する本実施形態の固体電解質材料を使用したリチウムイオン電池は、安全性、入出力特性および充放電サイクル特性に優れている。
【0048】
本実施形態の固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を必要とする任意の用途に用いることができる。中でも、本実施形態の固体電解質材料は、リチウムイオン電池に用いられることが好ましい。本実施形態の固体電解質材料をリチウムイオン電池に用いる場合、正極に用いてもよいし、負極に用いてもよいし、電解質層に用いてもよい。
【0049】
[固体電解質]
つぎに、本実施形態の固体電解質について説明する。本実施形態の固体電解質は、本実施形態の固体電解質材料を主成分として含んでいる。
そして、本実施形態の固体電解質は特に限定されないが、本実施形態の固体電解質材料以外の成分として、例えば、本発明の目的を損なわない範囲内で、上述した本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料を含んでもよい。
【0050】
<上述した本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料>
本実施形態の固体電解質は本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料を含んでいてもよい。本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料としては、イオン伝導性および絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、一般的にリチウムイオン電池に用いられるものを用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料などを挙げることができる。これらの中でも、硫化物固体電解質材料が好ましい。これにより、入出力特性に優れた全固体リチウムイオン電池とすることができる。硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P材料、LiS−SiS材料、LiS-SiS-LiPO材料、LiS−GeS材料、LiS-P-GeS材料、LiS−Al材料などが挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン伝導性が優れている点から、LiS−P材料が好ましい。
【0051】
[リチウムイオン電池]
図1は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池100の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態のリチウムイオン電池100は、例えば、正極活物質層101を含む正極110と、電解質層120と、負極活物質層103を含む負極130とを備えている。そして、正極活物質層101、負極活物質層103および電解質層120の少なくとも一つが、本実施形態の固体電解質材料を含有する。また、正極活物質層101、負極活物質層103および電解質層120のすべてが、本実施形態の固体電解質材料を含有していることが好ましい。なお、本実施形態では特に断りがなければ、正極活物質を含む層を正極活物質層101と呼び、集電体105上に正極活物質層101を形成させたものを正極110と呼ぶ。また、負極活物質を含む層を負極活物質層103と呼び、集電体105上に負極活物質層103を形成させたものを負極130と呼ぶ。
本実施形態のリチウムイオン電池100は、一般的に公知の方法に準じて製造される。例えば、本実施形態の正極110、固体電解質層またはセパレーター、および負極130を重ねたものを、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成し、必要に応じて、非水電解液を封入することにより作製される。
【0052】
<正極>
正極110は特に限定されず、リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。正極110は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、正極活物質を含む正極活物質層101をアルミ箔などの集電体105の表面に形成することにより得ることができる。
【0053】
正極活物質層101の厚みや密度は、電池の使用用途などに応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0054】
本実施形態の正極活物質としては特に限定されず一般的に公知のものを使用することができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)などの複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子;LiS、CuS、Li-Cu-S化合物、MoS、Li-Mo-S化合物などの硫化物を用いることができる。
【0055】
正極活物質層101は特に限定されないが、本実施形態の正極活物質以外の成分として、例えば、バインダー、増粘剤、導電助剤、固体電解質材料などから選択される1種以上の材料を含んでもよい。以下、各材料について説明する。
【0056】
(バインダー)
正極活物質層101は、正極活物質同士および正極活物質と集電体105とを結着させる役割をもつバインダーを含んでもよい。
本実施形態のバインダーはリチウムイオン電池に使用可能な通常のバインダーであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリイミドなどが挙げられる。これらのバインダーは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(増粘剤)
正極活物質層101は、塗布に適したスラリーの流動性を確保する点から、増粘剤を含んでもよい。本実施形態の増粘剤としてはリチウムイオン電池に使用可能な通常の増粘剤であれば特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩、ポリカルボン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーなどが挙げられる。これらの増粘剤は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(導電助剤)
正極活物質層101は、正極110の導電性を向上させる観点から、導電助剤を含んでもよい。本実施形態の導電助剤としてはリチウムイオン電池に使用可能な通常の導電助剤であれば特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラックなどのカーボンブラック、気相法炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。
【0059】
(固体電解質材料)
本実施形態の正極は上述した本実施形態の固体電解質材料を含んでいてもよいし、本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料を含んでいてもよい。本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料としては、イオン伝導性および絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、一般的に全固体リチウムイオン電池に用いられるものを用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料などを挙げることができる。これらの中でも、硫化物固体電解質材料が好ましい。これにより、入出力特性に優れた全固体リチウムイオン電池とすることができる。硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P材料、LiS-P-GeS材料、LiS−SiS材料、LiS-SiS-LiPO材料、LiS−GeS材料、LiS−Al材料などが挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン伝導性が優れている点から、LiS−P材料が好ましい。
【0060】
正極活物質層101中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途などに応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0061】
<負極>
負極130は特に限定されず、リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。負極130は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、負極活物質を含む負極活物質層103を銅などの集電体105の表面に形成することにより得ることができる。
【0062】
負極活物質層103の厚みや密度は、電池の使用用途などに応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0063】
本実施形態の負極活物質としては、リチウムイオン電池の負極に使用可能な通常の負極活物質であれば特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料;リチウム金属、リチウム合金などのリチウム系金属;シリコン、スズなどの金属;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。
【0064】
負極130は特に限定されないが、本実施形態の負極活物質以外の成分として、例えば、バインダー、増粘剤、導電助剤、固体電解質材料などから選択される1種以上の材料を含んでもよい。これらの材料としては、とくに限定はされないが、例えば、上述した正極110に用いる材料と同様のものを挙げることができる。
【0065】
<電解質層>
次に、電解質層120について説明する。電解質層120は、正極活物質層101および負極活物質層103の間に形成される層である。
電解質層120とは、セパレーターに非水電解液を含浸させたものや、固体電解質を含む固体電解質層が挙げられる。
【0066】
(セパレーター)
本実施形態のセパレーターとしては正極110と負極130を電気的に絶縁させ、リチウムイオンを透過する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、多孔性膜を用いることができる。
【0067】
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステルなどが挙げられる。特に、多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
【0068】
(非水電解液)
本実施形態の非水電解液とは、電解質を溶媒に溶解させたものである。
上記電解質としては、公知のリチウム塩がいずれも使用でき、活物質の種類に応じて選択すればよい。例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CH SOLi、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどが挙げられる。
【0069】
上記電解質を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであれば特に限定されず、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどのオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどの含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホランなどのスルホラン類;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトンなどのスルトン類;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
(固体電解質層)
本実施形態の固体電解質層は、正極活物質層101および負極活物質層103の間に形成される層であり、固体電解質材料を含む固体電解質により形成される層である。固体電解質層に含まれる固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、本実施形態においては、本実施形態の固体電解質材料であることが好ましい。
本実施形態の固体電解質層における固体電解質材料の含有量は、所望の絶縁性が得られる割合であれば特に限定されるものではないが、例えば、10体積%以上100体積%以下の範囲内、中でも、50体積%以上100体積%以下の範囲内であることが好ましい。特に、本実施形態においては、固体電解質層が本実施形態の固体電解質材料のみから構成されていることが好ましい。
【0071】
また、本実施形態の固体電解質層は、バインダーを含有していてもよい。バインダーを含有することにより、可撓性を有する固体電解質層を得ることができる。バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有結着材を挙げることができる。
固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm以上1000μm以下の範囲内、中でも、0.1μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0072】
2.第二実施形態
以下、本発明に係る第二実施形態について説明する。
【0073】
[固体電解質材料]
はじめに、本実施形態の固体電解質材料について説明する。
本実施形態の固体電解質材料は、構成元素として、Li、P、およびSを含んでいる。
また、本実施形態の固体電解質材料は、当該固体電解質材料中の上記Pの含有量に対する上記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.15以上3.45以下であり、好ましくは3.15以上3.40以下であり、より好ましくは3.20以上3.35以下であり、特に好ましくは3.20以上3.33以下である。また、上記Pの含有量に対する上記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.79以上4.00未満であり、好ましくは3.80以上4.00未満であり、より好ましくは3.81以上3.98以下であり、特に好ましくは3.81以上3.95以下である。
【0074】
Li/Pのモル比およびS/Pのモル比を上記範囲内とすることにより、優れたリチウムイオン伝導性を得ることができる。この理由については第一実施形態で述べたとおりであるので、ここではその説明は省略する。
【0075】
本実施形態の固体電解質材料は、線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、少なくとも回折角2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークを有する回折スペクトルを示すのが好ましい。
ここで、「回折角2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークを有する」とは、原料であるLiS、PおよびLiNとは異なる新たな結晶構造が生成していることを意味している。第一実施形態において述べた通り、原料であるLiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化し、得られたガラス状態の混合物Bを加圧成型した後で加熱することにより、回折角2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークが現れるからである。
したがって、これらの回折ピークは、LiS、PおよびLiNを原料としたガラス状態から新たな規則構造が構成されたために現れた新規の回折ピークであると推測される。
本実施形態の固体電解質材料は、こうした結晶構造を有することにより、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
【0076】
本実施形態の固体電解質材料の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。本実施形態の粒子状の固体電解質材料は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50が、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。
固体電解質材料の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
【0077】
[固体電解質材料の製造方法]
つづいて、本実施形態の固体電解質材料の製造方法について説明する。
本実施形態の固体電解質材料は、第一実施形態に係る固体電解質材料の製造方法に準じて製造することができる。ここでは詳細は省略する。
【0078】
[固体電解質]
以下、本実施形態の固体電解質について説明する。本実施形態の固体電解質は、第一実施形態の固体電解質材料の代わりに、本実施形態の固体電解質材料を主成分として含む以外は、第一実施形態の固体電解質と同様である。よって、ここでは詳細は省略する。
【0079】
[リチウムイオン電池]
本実施形態のリチウムイオン電池は、第一実施形態の固体電解質材料の代わりに、本実施形態の固体電解質材料を使用した以外は第一実施形態のリチウムイオン電池100と同様である。よって、ここでは詳細は省略する。
【0080】
以上、本発明の各実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
(付記1)
構成元素として、Li、P、およびSを含み、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、
少なくとも回折角2θ=17.7±0.3°の位置に回折ピークを有し、
前記回折角2θ=17.7±0.3°の位置に存在する前記回折ピークの回折強度をIとし、回折角2θ=26.9±0.3°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、
/Iの値が0.50以下である、固体電解質材料。
(付記2)
付記1に記載の固体電解質材料において、
当該固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.15以上3.45以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.79以上4.00未満である、固体電解質材料。
(付記3)
付記1または2に記載の固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、
回折角2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークをさらに有する、固体電解質材料。
(付記4)
構成元素として、Li、P、およびSを含み、
当該固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.15以上3.45以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.79以上4.00未満である、固体電解質材料。
(付記5)
付記4に記載の固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、
少なくとも回折角2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークを有する、固体電解質材料。
(付記6)
正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えた、リチウムイオン電池であって、
前記正極活物質層、前記電解質層および前記負極活物質層のうち少なくとも一つが、付記1乃至5いずれか一つに記載の固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池。
(付記7)
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程を含み、
前記混合物A中の前記LiS、前記Pおよび前記LiNの合計を100モル%としたとき、
前記LiSの含有量が63.0モル%以上70.0モル%以下であり、
前記Pの含有量が23.0モル%以上26.0モル%以下であり、
前記LiNの含有量が6.5モル%以上12.0モル%以下である、固体電解質材料の製造方法。
(付記8)
付記7に記載の固体電解質材料の製造方法において、
前記混合物Aをガラス化する工程により得られた混合物Bを加圧成型する工程と、
加圧成型した前記混合物Bを加熱することにより、前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程と、
をさらに含む、固体電解質材料の製造方法。
(付記9)
付記8に記載の固体電解質材料の製造方法において、
ガラス状態の前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する前記工程では、
不活性ガス雰囲気下において、前記混合物Bを280℃以上500℃以下で加熱する、固体電解質材料の製造方法。
(付記10)
付記7乃至9いずれか一つに記載の固体電解質材料の製造方法において、
前記混合物Aをガラス化する前記工程では、
前記混合物Aをメカノケミカル処理することによりガラス化する、固体電解質材料の製造方法。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
[1]測定方法
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
【0083】
(1)粒度分布
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー3000)を用いて、レーザー回折法により、実施例および比較例で得られた固体電解質材料の粒度分布を測定した。測定結果から、各固体電解質材料について、重量基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒径)をそれぞれ求めた。
【0084】
(2)ICP発光分光分析
ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメント社製、SPS3000)を用いて、ICP発光分光分析法により測定し、実施例および比較例で得られた固体電解質材料中の各元素の質量%をそれぞれ求め、それに基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。
【0085】
(3)X線回折分析
X線回折装置(リガク社製、RINT2000)を用いて、X線回折分析法により、実施例および比較例で得られた固体電解質材料の回折スペクトルをそれぞれ求めた。なお、線源としてCuKα線を用いた。
【0086】
(4)リチウムイオン伝導度の測定
実施例および比較例で得られた固体電解質材料に対して、交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度の測定をおこなった。
リチウムイオン伝導度の測定は北斗電工社製、ポテンショスタット/ガルバノスタットSP−300を用いた。試料の大きさはφ9.5mm、厚さ約1.3mm、測定条件は、印加電圧10mV、測定温度27.0℃、測定周波数域0.1Hz〜7MHz、電極はLi箔とした。
【0087】
(5)充放電試験
(充放電サイクル特性)
正極活物質であるLiMoSを100mgと、導電助剤であるアセチレンブラックを100mgと、後述する実施例および比較例で得られた固体電解質材料を100mgとをφ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、アルミナ製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、120rpmで24時間混合し正極材料とした。
Li22Si合金を400mgと、導電助剤であるアセチレンブラックを200mgと、後述する実施例および比較例で得られた固体電解質材料を300mgとをφ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、アルミナ製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、120rpmで24時間混合し負極材料とした。
つづいて、φ=14mmのプレス治具を用いて、上記方法で得られた正極材料(30mg)を83MPaにてプレスを行った。この正極上に固体電解質材料1(150mg)を積層させ、83MPaにてプレスを行った。その後、上記方法で得られた負極材料(15mg)を固体電解質層側に積層させて270MPa、10分間プレス成型を行い、全固体型リチウムイオン電池を作製した。次いで、得られた全固体型リチウムイオン電池について、電流密度65μA/cmの条件で充電終止電位3.5Vまで充電した後、電流密度65μA/cmの条件で、放電終止電位0.9Vまで放電させる条件で充放電を10回行った。ここで、1回目の放電容量を100%としたときの10回目の放電容量を放電容量変化率[%]とした。正極材料、固体電解質材料および負極材料の合計重量に対する放電容量と放電容量変化率について得られた評価結果を表1に示す。
【0088】
(入出力特性)
上記方法で得られた全固体型リチウムイオン電池について、電流密度325μA/cmの条件で充電終止電位3.5Vまで充電した後、電流密度325μA/cmの条件で、放電終止電位0.9Vまで放電させる条件で、1回充放電を行った。ここで、正極材料、固体電解質材料および負極材料の合計重量に対する放電容量について得られた評価結果を表1に示す。
【0089】
[2]固体電解質材料の製造
<実施例1>
原料には、LiS(Alfa Aesar製、純度99.9%)、P(関東化学製試薬)を使用した。LiNは、以下の手順で作製した。
まず、窒素雰囲気のグローブボックス中で、Li箔(本城金属社製純度99.8%、厚さ0.5mm)にステンレス製の網(150メッシュ)を圧着した。Li箔は網の開口部から黒紫色に変化し始め、そのまま、常温で24時間放置することでLi箔すべてが黒紫色のLiNに変化した。LiNは、メノウ乳鉢で粉砕後、ステンレス製篩で篩い分けし、25μm以下の粉末を回収し固体電解質材料の原料とした。
つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLiS:P:LiN=65.9:24.4:9.8(モル%)になるように精秤し、これら粉末を20分間メノウ乳鉢で混合した。次いで、混合粉末2gを秤量し、φ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、アルミナ製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、120rpmで200時間混合粉砕した。混合粉砕後の粉末について、プレス装置を用いて、270MPa、10分間プレスし、厚さ1.3mmの板状の混合物を得た。得られた混合物はカーボンボートに入れアルゴン気流中で330℃、2時間加熱処理し、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料1を得た。
【0090】
(物性)
実施例1で得られた固体電解質材料1は、加熱処理することにより、回折角2θ=17.7±0.3°、2θ=25.9±0.3°、2θ=29.6±0.3°、および2θ=38.8±0.3°の位置に回折ピークを示した。そして、回折角2θ=17.7±0.3°に存在する回折ピークの回折強度(I)に対する回折角2θ=26.9±0.3°に存在する回折ピークの回折強度(I)の比(I/I)は0.16であった。
また、得られた固体電解質材料1のLi/Pのモル比は3.30であり、S/Pのモル比は3.87であった。
また、リチウムイオン伝導度は1.8×10−3S・cm−1であった。
【0091】
<実施例2>
各原料の割合をLiS:P:LiN=65.4:24.9:9.7(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料2を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0092】
<実施例3>
各原料の割合をLiS:P:LiN=66.3:23.8:9.8(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料3を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0093】
<実施例4>
各原料の割合をLiS:P:LiN=68.4:24.0:7.6(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料4を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0094】
<実施例5>
各原料の割合をLiS:P:LiN=64.2:24.7:11.1(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料5を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0095】
<比較例1>
各原料の割合をLiS:P:LiN=71.1:23.7:5.3(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料6を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0096】
<比較例2>
各原料の割合をLiS:P:LiN=67.5:22.5:10.0(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料7を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0097】
<比較例3>
各原料の割合をLiS:P:LiN=75.0:25.0:0(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料8を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0098】
<比較例4>
各原料の割合をLiS:P:LiN=68.4:25.3:6.3(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料9を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0099】
<比較例5>
各原料の割合をLiS:P:LiN=63.5:23.5:12.9(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料10を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0100】
<比較例6>
各原料の割合をLiS:P:LiN=63.0:24.7:12.3(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、粉末同士が融着し、固く焼結した固体電解質材料11を得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【符号の説明】
【0102】
100 リチウムイオン電池
101 正極活物質層
103 負極活物質層
105 集電体
110 正極
120 電解質層
130 負極
図1