特許第6595034号(P6595034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595034
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】インバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20191010BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-81548(P2018-81548)
(22)【出願日】2018年4月20日
(65)【公開番号】特開2019-134657(P2019-134657A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2018年4月20日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0012683
(32)【優先日】2018年2月1日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】ウン−ウ・リー
(72)【発明者】
【氏名】チュン−ハン・キム
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−262300(JP,A)
【文献】 特開2014−54174(JP,A)
【文献】 特開2016−163380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を整流することによってDCリンクキャパシターに貯蔵されたDCリンク電圧の大きさをスケーリングするスケール部;
前記スケール部の出力とインバータの出力電圧との誤差を比例積分(PI)制御するPI制御部;
前記インバータの指令周波数と前記PI制御部の出力値とを合算する第1の演算部;及び、
前記第1の演算部の出力周波数から前記インバータの出力電圧を決定する電圧決定部を含むインバータ。
【請求項2】
前記スケール部は、
前記DCリンク電圧に
を掛けて出力する第1の掛け算部を含む、請求項1に記載のインバータ。
【請求項3】
前記スケール部は、
前記第1の掛け算部の出力に1より小さいゲインKを掛けて出力する第2の掛け算部をさらに含む、請求項2に記載のインバータ。
【請求項4】
前記電圧決定部の出力である同期座標系のQ軸電圧を静止座標系のQ軸電圧に変換する第1の変換部;及び、
前記静止座標系のQ軸電圧を3相電圧に変換する第2の変換部をさらに含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインバータ。
【請求項5】
前記インバータの出力電流の大きさによってトルクを補償する補償電圧を決定するトルクブースター;及び、
前記インバータの出力電流の大きさによってスリップを補償する補償周波数を決定するスリップ補償部をさらに含む、請求項4に記載のインバータ。
【請求項6】
前記インバータの3相出力電流を静止座標系のQ軸電流に変換する第3の変換部;及び、
前記静止座標系のQ軸電流を同期座標系のQ軸電流に変換する第4の変換部をさらに含む、請求項5に記載のインバータ。
【請求項7】
前記トルクブースターから出力される前記補償電圧を前記電圧決定部の出力と合算する第2の演算部をさらに含む、請求項5又は請求項6に記載のインバータ。
【請求項8】
前記スリップ補償部から出力される前記補償周波数を前記インバータの指令周波数と合算する第3の演算部をさらに含む、請求項5〜請求項7のいずれかに記載のインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータに関する。
【背景技術】
【0002】
普通、ホイスト(hoist)とは、電動機を用いて重い物を持ち上げる機能を有する機械装置を意味する。普通、ホイストには、系統電源を直接入力として使用できる誘導電動機が用いられる。
【0003】
かかるホイスト装置に搭載された誘導電動機を商用電源で直接駆動する場合、大きい突入電流を引き起こして、誘導電動機の寿命を短縮し、単一速度でのみ制御可能であるため、普通、誘導電動機の駆動にはインバータが用いられる。
【0004】
インバータは、商用電源から供給される電力を提供されて、電圧と周波数を可変して電動機に供給することで、電動機の速度を高効率で利用するように制御する一連の装置を言う。
【0005】
かかるインバータをホイスト装置に用いる場合、インバータの可変電圧可変周波数(Variable Voltage Variable Frequency,VVVF)機能を利用して、誘導電動機を所望の速度に駆動することができ、これによって、突入電流を防止することができる。
【0006】
普通、インバータをホイスト装置に搭載して、誘導電動機を多段速で駆動する場合、低速と高速に分けて駆動する方式と2段階/3段階の運転方式を用いて使用者が所望するだけ速度を調節して駆動する方式を用いてもよい。
【0007】
誘導電動機は、速度が増加するほど、逆起電力が上昇するため、さらに高い駆動電圧を必要とする。しかし、ホイスト装置を高速駆動する場合、系統の異常などによってインバータの入力電圧が低くなると、インバータから出力可能な電圧も低くなるため、誘導電動機を所望の速度で運転できなくなる問題点がある。
【0008】
また、ホイストに物が持ち上げられている状態で、インバータの入力電圧が低くなると、インバータのトリップが発生して、持ち上げられていた物が墜落する事故が発生する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、ホイスト装置においてインバータの入力電圧が低くなる場合も、物が墜落するか停止せずに、所望の速度より多少低い速度で物を持ち上げるようにして、使用者の便宜性を増大して事故を防止するインバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような技術的課題を解決するため、本発明の一実施形態のインバータは、インバータのDCリンク電圧の大きさを調節するスケール部;前記スケール部の出力とインバータの出力電圧との誤差を比例積分(PI)制御して制御信号を出力するPI制御部;前記インバータの指令周波数と前記制御信号を合算する第1の演算部;及び前記第1の演算部の出力周波数からインバータの出力電圧を決定する電圧決定部を含む。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記スケール部は、DCリンク電圧に
を掛けて出力する第1の掛け算部を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記スケール部は、前記第1の掛け算部の出力に1より小さいゲインKを掛けて出力する第2の掛け算部をさらに含んでいてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態のインバータは、前記電圧決定部の出力である同期座標系のQ軸電圧を静止座標系のQ軸電圧に変換する第1の変換部;及び静止座標系のQ軸電圧を3相電圧に変換する第2の変換部をさらに含んでいてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態のインバータは、前記インバータの出力電流の大きさによってトルクを補償する補償電圧を決定するトルクブースター;及び前記インバータの出力電流の大きさによってスリップを補償する補償周波数を決定するスリップ補償部をさらに含んでいてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態のインバータは、前記インバータの3相出力電流を静止座標系のQ軸電流に変換する第3の変換部;及び静止座標系のQ軸電流を同期座標系のQ軸電流に変換する第4の変換部をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態のインバータは、前記トルクブースターから出力される補償電圧を前記電圧決定部の出力と合算する第2の演算部をさらに含んでいてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態のインバータは、前記スリップ補償部から出力される補償周波数を前記インバータの指令周波数と合算する第3の演算部をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記のような本発明は、インバータの入力電圧が非正常に低くなる状況においても、ホイストシステムで物を持ち上げるように出力周波数を自動調整することによって、システムの安全性を確保して、使用者に便宜を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態のインバータが適用されるホイストシステムを説明するための一例示図である。
図2】本発明の一実施形態のインバータの詳細構成を説明するための構成図である。
図3図2の電圧決定部が入力周波数に対応して電圧を決定することを説明するための一例示図である。
図4図2のスケール部の一実施形態の詳細構造図である。
図5】本発明の一実施形態のインバータの動作を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の構成及び効果を十分に理解するため、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明は、以下に開示する実施形態に限定されるものではなく、様々な形態に具現することができ、多様な変更を加えることができる。但し、本実施形態に対する説明は、本発明の開示を完全にして、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。添付の図面における構成要素は、説明の便宜のためその大きさを実際より拡大して示したものであり、各構成要素の割合は、誇張するか縮小してもよい。
【0021】
「第1」、「第2」などの用語は、多様な構成要素を説明するに使われるが、前記構成要素は、上記用語によって限定されてはならない。上記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使われる。例えば、本発明の権利範囲を脱しないながら、「第1の構成要素」は「第2の構成要素」に命名されてもよいし、同様、「第2の構成要素」も「第1の構成要素」に命名されてもよい。また、単数の表現は、文脈上明白に別に表現しない限り、複数の表現を含む。本発明の実施形態において使われる用語は、別に定義されない限り、当該技術分野における通常の知識を有する者に通常知られた意味に解釈される。
【0022】
以下では、図1図5を参照して、本発明の一実施形態によるインバータを説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態のインバータが適用されるホイストシステムを説明するための一例示図である。
【0024】
図面に示されているように、ホイストシステム1は、制御箱6の内部の巻上用誘導電動機2の駆動によって、ワイヤロープ4が解放されるか巻き取られてフック5が昇降または下降し、これによって、フック5に吊り下げられた物が昇降または下降するようになる。
【0025】
ホイストシステム1に搭載される誘導電動機2を商用電源で直接駆動する場合、商用電源を印加する時に大きい突入電流を引き起こして、電動機2の寿命を短縮し、単一速度でのみ制御できるようになる。このため、ホイストシステム1にインバータ3が提供されて、電源供給がインバータ3によって行われるようになる。インバータ3によって電動機2に電源を供給する場合、インバータ3の可変電圧可変周波数(Variable Voltage Variable Frequency,VVVF)制御方式によって、電動機2を所望の速度に駆動することができ、突入電流も防止することができる。
【0026】
ホイストシステム1でインバータ3によって電動機2を多段速で駆動することは、低速と高速に分けて駆動してもよいし、又は、2段階/3段階の運転方式を用いて使用者が所望するだけ速度を調節して駆動してもよく、これは、使用者の設定によって決定することができる。このため、インバータ3とネットワークを介して繋がれる人間−機械インターフェース(HMI)がホイストシステム1にさらに備えてもよい。
【0027】
普通、電動機2は、速度が増加するほど、逆起電力が上昇するため、さらに大きい駆動電圧が要求される。もし電動機が高速駆動される場合、系統の異常などによってインバータ3の入力電圧が小さくなると、インバータ3から出力可能な電圧も低くなるため、電動機2を所望の速度に運転することができなくなる。また、インバータ3の入力電圧が低くなった場合も、同一の周波数が電動機2に印加されるため、電動機2に過負荷が発生して、フック5によって持ち上げられた物が墜落するか、又は昇下降が停止することが発生し得る。
【0028】
従って、本発明は、インバータ3の入力電圧が小さくなる場合も、物が墜落するか昇下降が停止することなく、所望の速度より多少低い速度で物を昇下降させる方法を提供して、これによって、使用者の便宜性及びシステムの安全性を高めることができる。
【0029】
一方、本発明の一実施形態において、電動機2とインバータ3は、簡略化して示されており、本発明は、かかる電動機2とインバータ3の配置及び形状に限定されるものではなく、ホイストシステム1の構造によって多様に構成されてもよい。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態のインバータの詳細構成を説明するための構成図である。
【0031】
図面に示されているように、本発明の一実施形態のインバータ3は、周波数生成部31、電圧決定部32、第1〜第4の変換部33〜36、トルクブースター37、スリップ補償部38、比例積分(PI)制御部40、スケール部41、第1〜第4の演算部42〜45及びセンサー部46を含んでいてもよい。
【0032】
周波数生成部31は、使用者が設定した電動機2の速度である指令周波数を生成する。電圧決定部32は、入力される周波数に対応する電圧を決定する。
【0033】
図3は、図2の電圧決定部32が入力周波数に対応して電圧を決定することを説明するための一例示図である。
【0034】
図面に示されているように、本発明の一実施形態の電圧決定部32は、VVVF制御によって入力周波数に対する出力電圧を決定する。
【0035】
図2において、第1の変換部33は、第3の演算部44の出力である同期座標系のQ軸電圧VqseREFを静止座標系に変換して、第2の変換部34は、静止座標系のQ軸電圧を3相電圧に変換する。第2の変換部34から出力される3相電圧は、インバータ3の出力として電動機2に入力される。
【0036】
センサー部46は、例えばCT(current transformer)としてインバータ3から電動機2に出力される電流を検出することができる。
【0037】
第3の変換部35は、インバータ3から電動機2に出力されて、センサー部46によって検出される3相電流を静止座標系のQ軸電流に変換して、第4の変換部36は、静止座標系のQ軸電流を同期座標系のQ軸電流に変換する。
【0038】
第1の変換部33が同期座標系のQ軸電圧を静止座標系に変換する場合と、第4の変換部36が静止座標系のQ軸電流を同期座標系に変換する場合、第1の変換部33及び第4の変換部26は、電圧決定部32の入力である入力周波数を積分部39の積分した値(角)を利用してそれぞれ座標系の変換を行う。静止座標系の物理量である
及び
を同期座標系の物理量である
及び
に変換する数式は、次のとおりである。
【0039】
【数1】

【0040】
このとき、
であり、
は、電圧決定部32に印加される入力周波数を表す。
【0041】
トルクブースター37は、周波数が低い場合、電動機2の固定子抵抗による電圧降下によって、電動機2の磁化インダクタンスに電圧が小さく印加されて、これによって、回転子にも小さい電流が流れるようになり、大きいトルクを出せない問題点を解決するための構成であり、トルクブースター37は、Q軸電流の大きさによって補償電圧を決定して、これを第3の演算部44に提供する。この補償電圧によってトルクが増加する。
【0042】
トルクブースター37が決定する補償電圧Vboostは、次の式によって決定される。
【0043】
【数2】
【0044】
このとき、Vratedは定格電圧、Iratedは定格電流、Fratedは定格周波数、Fsl,ratedは定格スリップ周波数であり、Iqsは第4の変換部36から提供されるQ軸電流である。
【0045】
スリップ補償部38は、第4の変換部36からQ軸電流を受信して、Q軸電流の大きさによって補償周波数を決定する。普通、電動機2に負荷が印加されると、電動機2の回転子の周波数が低くなるが、この低くなった周波数をスリップ周波数と言う。スリップ周波数の大きさは、負荷の大きさに比例して、負荷の大きさは、電流の大きさにおよそ比例する。従って、スリップ補償部38は、下記の数式2のように、補償周波数を決定して、周波数生成部31から出力される周波数を補償する。
【0046】
【数3】
【0047】
このとき、Fcompは補償周波数である。
【0048】
スケール部41は、インバータ3のDCリンク電圧を受信して、インバータ3から出力可能な最大電圧に大きさを変換することができる。インバータ3は、商用電源7を受信して整流部48がこれを整流し、整流した電圧をDCリンクキャパシター(未図示)に貯蔵するが、本発明の一実施形態のDCリンク電圧測定部47は、このようなDCリンクキャパシターに貯蔵されるDCリンク電圧を測定して、スケール部41に提供する。
【0049】
図4は、図2のスケール部の一実施形態の詳細構造図である。
【0050】
図面に示されているように、本発明の一実施形態のスケール部41は、第1の掛け算部411及び第2の掛け算部412を含んでいてもよい。
【0051】
インバータ3の線形変調の最大値は
である。従って、第1の掛け算部411は、入力されるDCリンク電圧に
を掛けて
を出力することができる。
【0052】
第2の掛け算部412は、第1の掛け算部411の出力に微細調整のためのゲインKを掛けて出力する。Kは、インバータ3の内部素子の電圧降下などによるマージンを考慮して使用者が設定できる値であり、1より小さい値である。
【0053】
第4の演算部45は、スケール部41の出力とQ軸電圧指令を受信して、スケール部41の出力からQ軸電圧指令を差し引くことができる。V/F制御でD軸電圧指令は0であるため、Q軸電圧指令は、インバータ3の出力電圧と同様である。
【0054】
PI制御部40は、第4の演算部45の出力を受信して、制御信号を出力することができる。具体的には、PI制御部40は、第4の演算部45から出力されるDCリンク電圧とQ軸電圧指令の誤差信号(すなわち、第4の演算部45の出力)を積分して、誤差に対する比例積分制御値を出力する。
【0055】
本発明の一実施形態のインバータ3の動作を説明する。
【0056】
第4の演算部45は、DCリンク電圧測定部47により測定されたDCリンク電圧をスケーリングした値(スケール部41の出力)からQ軸電圧指令(インバータの出力電圧)を差し引いた値を出力してPI制御部40に提供する。
【0057】
このとき、商用電源7の非正常動作によってインバータ3の入力電圧が低くなった場合、DCリンク電圧測定部47により測定されるDCリンク電圧が低くなる。これによって、スケール部41の出力がインバータの出力電圧であるQ軸電圧指令より小さくなる場合、PI制御部40の出力制御信号は負となる。
【0058】
周波数生成部31の出力である指令周波数とスリップ補償部38の出力である補償スリップ周波数との和が、第1の演算部42によって決定されて、PI制御部40の出力制御信号が、第2の演算部43によって第1の演算部42の出力と合算されて出力周波数が決定されると、電圧決定部32は、当該第2の演算部43の出力周波数に対応する出力電圧を決定してもよい。このように、決定した出力電圧が、第1及び第2の変換部33、34によって3相電圧に変換されて電動機2に印加される。
【0059】
すなわち、PI制御部40の負の制御信号によって電圧決定部32に印加される出力周波数が小さくなり、これによって、出力電圧が小さくなると、図3のようなV/fパターンによって電動機2に印加される電圧も小さくなる。
【0060】
従って、本発明の一実施形態によれば、インバータ3の出力電圧を
以内に制御することができる。
【0061】
図5は、本発明の一実施形態のインバータの動作を説明するためのグラフであって、チャンネル1(5A)は、インバータの入力電圧、チャンネル2(5B)は、周波数生成部31の出力、チャンネル3(5C)は、第2の演算部43の出力、チャンネル4(5D)は、インバータ3の出力のQ軸電流を表すものである。
【0062】
チャンネル1を確認すると、インバータ3の入力電圧が定格電圧(220V)より小さい電圧(187V)に低くなった場合も(5A)、周波数生成部31の出力は、一定して維持することが分かる(5B)。
【0063】
本発明のPI制御部40の出力制御信号によって第2の演算部43の出力周波数が小さくなり(5C)、これは、周波数生成部31によって生成された指令周波数より出力周波数が小さくなることが分かる。
【0064】
チャンネル4のQ軸電流指令を確認すると、インバータ3の入力電圧が小さくなると、電動機2の過負荷によってインバータ3のQ軸電流が大きくなるが、本発明の一実施形態によれば、Q軸電流が一定水準を維持することが分かる。
【0065】
すなわち、本発明のインバータ3によれば、高速でも電圧不足によるQ軸電流の増加なしに、出力周波数を減少して、インバータ3の入力電圧に合わせて出力周波数を調整することで、円滑な運転が可能であることが分かる。
【0066】
このように、本発明の一実施形態によれば、インバータ3の入力電圧が非正常に低くなる状況においても、ホイストシステム1で物を持ち上げるように出力周波数を自動調整することによって、システムの安全性を確保して、使用者に便宜を提供する。
【0067】
以上にて、本発明による実施形態を説明したが、これは、例示的なものに過ぎず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、これより多様な変形及び均等な範囲の実施形態が可能である点を理解することができる。従って、本発明の真の技術的な保護範囲は、次の請求範囲によって定めるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5