(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の衝撃吸収用樹脂組成物は、ガラス転移点が30℃以上の重合体成分A
1とガラス転移点が0℃以下の重合体成分A
2とを含むブロック共重合体Aと、該重合体成分A
1と相溶性がある重合体Bと、該重合体Bと相溶性がある、または該重合体Bに分散するフィラーCとを含んでなることを特徴とするものである。
【0014】
(ブロック共重合体A)
本発明に用いるブロック共重合体Aは、ガラス転移点が30℃以上の重合体成分A
1(ハードセグメント)とガラス転移点が0℃以下の重合体成分A
2(ソフトセグメント)とを含むものである。重合体成分A
1と重合体成分A
2の配列は特に限定されるものではなく、任意の配列をとることができる。例えば、(A
1―A
2)p、(A
1―A
2―A
1)q、(A
2―A
1―A
2)rで表すことができる。ここで、p、q、rは任意の整数である。
【0015】
重合体成分A
1を構成する重合体は、ガラス転移点が30℃以上の重合体である、スチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリクロルスチレン、ポリα−メチルスチレン等を挙げることができるが、ポリスチレン(Tg=80〜100℃)が好ましい。また、ポリ(メタ)アクリレート樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(Tg=72〜105℃)、ポリエチルメタクリレート(Tg=65℃)、ポリt-ブチルメタクリレート(Tg=107℃)を挙げることができる。また、ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6(Tg=50℃)やポリアミド66(Tg=50℃)、ポリアミド610(Tg=50℃)を挙げることができる。また、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(Tg=80℃)やポリブチレンテレフタレート(Tg=37〜53℃)、ポリエチレンナレフタレート(Tg=113℃)を挙げることができる。
【0016】
また、重合体成分A
2は、ガラス転移点が0℃以下の重合体であり、重合体成分A
1に応じて選択することができる。例えば、ポリスチレンに対してはポリイソプレン、ポリビニルイソプレン、ポリブタジエン、およびこれらの水添物であるポリ(エチレン−プロピレン)、ポリ(エチレン−ブチレン)を挙げることができる。また、ポリメチルメタクリレートに対しては、ポリブチルアクリレートを挙げることができる。また、ポリアミドに対してはポリエステルまたはポリエーテルを挙げることができる。また、芳香族ポリエステルに対しては脂肪族ポリエステルまたはポリエーテルを挙げることができる。
【0017】
ブロック共重合体Aの具体例としては、特に限定されるものではないが、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ビニルイソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ブロック共重合体およびこれらの水添物、並びにメチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルアクリレート樹脂を挙げることができる。
【0018】
本発明においては、例えば以下の市販のブロック共重合体を用いることができる。
(1)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)
クレイトン社製のクレイトンD、JSR社製のJSR SIS、日本ゼオン社製のクインタック
(2)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)
クレイトン社製のクレイトンD、旭化成社製のタフプレン、旭化成社製のアサプレンT
(3)スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEPS)(SISの水添物)
クレイトン社製のクレイトンG、クラレ社製のセプトン
(4)スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレンブロック共重合体(SEBS)(SBSの水添物)
クレイトン社製のクレイトンG、旭化成社製のタフテックH、クラレ社製のセプトン
(5)スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)
旭化成社製のタフテックP
(6)スチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)
クラレ社製のセプトン
(8)スチレン−ビニルポリイソプレン−スチレンブロック共重合体
クラレ社製のハイブラー
(9)メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチルブロック共重合体
クラレ社製のクラリティ、アルケマ社製のナノストレングス
また、上記(1)〜(6)の共重合体のカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、無水マレイン酸基等の変性物も用いることができる。
【0019】
(重合体B)
重合体Bは重合体成分A
1と相溶性を有する。ここで、本発明において重合体Bが重合体成分A
1と相溶性を有するとは、重合体成分A
1の単独重合体と重合体Bとを混合してフィルムを作製でき、そのフィルムが室温での目視で透明であることをいう。
【0020】
重合体Bは重合体成分A
1の種類に応じて選択することができる。例えば、重合体成分A
1に上記のスチレン系樹脂を用いる場合、重合体Bには芳香族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、およびそれらの共重合樹脂を用いることができる。あるいは芳香族炭化水素オリゴマー、脂肪族環状炭化水素オリゴマー、およびそれらの共重合オリゴマーでもよい。ここで、本発明においては、オリゴマーとは、重合度が10以下のものをいう。芳香族炭化水素樹脂とは、ベンゼン環及び複数の縮合環から構成される化合物であり、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン等の置換スチレンの単独重合体またはその変性物を挙げることができる。また、脂環式炭化水素樹脂としては、芳香族樹脂の水添物やシクロヘキシルメタクリレート樹脂を挙げることができる。共重合樹脂とは、芳香族樹脂または脂環式樹脂と、脂肪族樹脂との共重合物である。好ましくは芳香族炭化水素樹脂、より好ましくはスチレンの単独重合体またはその変性物である。また、変性物としてはオキサゾリン基含有ポリスチレンが好ましい。
【0021】
また、重合体成分A
1に上記のポリ(メタ)アクリレート樹脂を用いる場合、重合体Bには、脂肪族炭化水素樹脂を用いることができる。脂肪族炭化水素樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、およびそれらの変性物を用いることができる。好ましくはポリ(メタ)アクリレート樹脂またはその変性物である。ここで、変性物はカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、無水マレイン酸基等の変性物である。
【0022】
また、重合体成分A
1に上記のポリアミド樹脂を用いる場合、重合体Bには、エポキシ基やオキサゾリン基を含有した、芳香族または脂環式樹脂を用いることができる。
【0023】
また、重合体成分A
1に上記のポリエステル樹脂を用いる場合、重合体Bには、エポキシ基やオキサゾリン基を含有した、芳香族または脂環式樹脂を用いることができる。
【0024】
本発明においては、重合体Bとして、例えば以下の市販の樹脂を用いることができる。
(芳香族炭化水素樹脂)
(1)スチレン系樹脂
三井化学社製のFTR、ヤスハラケミカル社製のYSレジンSX、東亜合成社製のアルフォンUP−1150
(2)芳香族系石油樹脂
JX日鉱日石エネルギー社製の芳香族系石油樹脂ネオポリマー、東ソー社製の石油樹脂ペトコール、東ソー社製の石油樹脂ペトコール、フドー社製のキシレン樹脂ニカノール
(3)芳香族変性樹脂
東ソー社製の石油樹脂ペトロタック、日本触媒社製のオキサゾリン基含有反応性ポリスチレンであるエポクロスRPS−1005
(4)芳香族系オイル
JX日鉱日石エネルギー社製の日石ハイゾールSAS、出光興産社製のダイアナプロセスオイルAC
(ポリ(メタ)アクリレート樹脂)
(1)ポリメタアクリレート樹脂
三菱レーヨン製のアクリペット、クラレ社製のパラペレット
(2)ポリアクリレート変性樹脂
東亜合成社製のカルボキシル基含有アクリル系ポリマーであるアルフォンUC−3000
【0025】
また、重合体Bとして、フィラーと反応する重合体を用いることができる。フィラーと反応させることにより、重合体Bと一体的に、ハードセグメントの存在する領域、いわゆるハードセグメントドメインに、重合体BとフィラーCがより存在し易くなり、ハードセグメントドメインにおける制振性能をより向上させることが可能となる。フィラーと反応する重合体Bの例としては、上記のオキサゾリン基含有反応性ポリスチレンを挙げることができる。オキサゾリン基はフィラーのカルボン酸基、水酸基、チオール基と反応する。また、重合体Bの別の例としては、エポキシ基やカルボン酸基、水酸基等で変性した重合体を挙げることができる。
【0026】
(フィラー)
本発明に用いるフィラーは、芳香族炭化水素、脂肪族環状炭化水素、およびヘテロ芳香族炭化水素からなる群から選択される2個以上の環状構造を有する化合物またはその化合物の金属塩である。ここで、2個以上の環状構造とは、2個以上の単環化合物が直接結合または連結基を介して結合したものや、2個以上の単環が縮合した縮合多環化合物や、架橋環式化合物や、スピロ多環化合物をいう。以下、特に断らない限り、縮合多環化合物、架橋環式化合物、およびスピロ多環化合物を多環化合物という。
【0027】
また、2個以上の環状構造を有する化合物には、低分子のみならず高分子も含まれる。例えば、該高分子が単独重合体の場合、繰り返し単位が2個以上の単環化合物が直接結合または連結基を介して結合した重合体、および繰り返し単位が1個以上の単環化合物と1個の多環化合物とが直接結合または連結基を介して結合した重合体を含む。また、該高分子が共重合体の場合、該共重合体の各成分の繰り返し単位が、1個の単環化合物、2個以上の単環化合物が直接結合または連結基を介して結合した化合物、および1個の多環化合物からなる群から選択されるいずれか1種の化合物を含む。
【0028】
ここで、2個以上の単環化合物を連結する連結基としては、−O−、−S−、−P−、−NH−、−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)、−Si−、−COO―、―CONH−、−(CH
2)
n−(nは1〜12の整数)、−CH=CH−、および−C≡C−から成る群から選択される1種を用いることができる。なお、−(CH
2)
n−は、nが2以上の場合、メチレン基の少なくとも1つが−O−、−S−、−P−、−NH−、−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)、−Si−、−COO―、―CONH−、−CH=CH−、および−C≡C−で置換されてもよい。
【0029】
芳香族炭化水素から選択される2個以上の環状構造を有する化合物としては、単環化合物であるベンゼンが直接結合または連結基を介して結合したものとして、置換基を有してもよい、ビフェニル、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、メチレンビスフェノールを挙げることができる。また、多環化合物としては、置換基を有してもよい、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラフィドロナフタレン、9,10−ジヒドロアントラセン、およびアセトナフタレンを挙げることができる。
【0030】
脂肪族環状炭化水素から選択される2個以上の環状構造を有する化合物としては、単環化合物である、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロプロパン、シクロブタン、イソボルニル、または環内に二重結合を有するシクロヘキセン、シクロペンテン、シクロプロペンおよびシクロブテンが直接結合または連結基を介して結合したものを挙げることができる。また、多環化合物としては、置換基を有してもよい、炭素数5以上のモノシクロ体、ジシクロ体、トリシクロ体、テトラシクロ体、ペンタシクロ体、具体的にはジシクロペンテニル、ノルボルネニル等を挙げることができる。また、脂肪族環状炭化水素は、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、カフェイン、アビエチン酸基、テルピノレン、テルピネン、フェランドレン、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン等の脂環式テルペン類も含む。これらの成分が主である植物の精油成分から得られるテルペン油や松脂を精製して得られるロジン及びその誘導体(不均化ロジンを含む)も含む。
【0031】
ヘテロ芳香族炭化水素から選択される2個以上の環状構造を有する化合物としては、単環化合物である、置換基を有してもよい、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、マレイミド、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンを挙げることができる。また、多環化合物としては、置換基を有してもよい、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾトリアゾール、イソベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、キナゾール、ナフチリジン等を挙げることができる。
【0032】
ここで、2個以上の単環化合物は、同種の単環化合物のみからなる場合に限らず、異種の単環化合物を含んでもよい。また、上記の置換基には、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等を挙げることができる。
【0033】
また、2個以上の環状構造を有する化合物の金属塩としては、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等を挙げることができる。
【0034】
また、2個以上の環状構造を有する高分子またはオリゴマーとしては、以下の例を挙げることができる。繰り返し単位が2個以上の単環化合物が直接結合または連結基を介して結合した単独重合体としては、テルペンフェノール樹脂を挙げることができる。また、共重合体の場合、例えば、クマロン・インデン樹脂を挙げることができる。
【0035】
また、フィラーとして、重合体Bと反応する低分子または高分子を用いることもできる。重合体Bと反応させることにより、重合体Bと一体的に、ハードセグメントの存在する領域、いわゆるハードセグメントドメインに、重合体BとフィラーCがより存在し易くなり、ハードセグメントドメインにおける制振性能をより向上させることが可能となる。重合体Bと反応するフィラーの例としては、重合体Bがオキサゾリン基含有反応性ポリスチレンの場合、カルボキシル基、芳香族チオール基、フェノール基またはアルコール基を含有する有機フィラーを挙げることができる。オキサゾリン基はフィラーのカルボキシル基、芳香族チオール基、フェノール基、アルコール基と反応する。カルボキシル基を含むフィラーとしては、4−フェニル安息香酸及びその誘導体、1−ナフトエ酸及びその誘導体、アビエチン酸基を含むロジン及びその誘導体等が挙げられる。芳香族チオール基を含むフィラーとしては、ビフェニル−4−チオール及びその誘導体、2−ナフタレンチオール及びその誘導体等が挙げられる。フェノール基を含むフィラーとしては、ビフェニル−4−オール等が、アルコール基を含むフィラーとしては、4−ヒドロキシメチルビフェニルが挙げられる。また、重合体Bの別の例としては、エポキシ基や水酸基等の官能基を導入したエポキシ基変性アクリル樹脂や水酸基変性アクリル樹脂を挙げることができる。
【0036】
フィラーとしては、好ましくは、芳香族炭化水素から選択される2個以上の環状構造を有する化合物または高分子である。より好ましくは、置換基を有してもよい、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、メチレンビスフェノールを挙げることができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物においては、ブロック共重合体Aは樹脂組成物全体の1〜99重量%、好ましくは5〜90重量%である。1重量%より少ないと製膜性が低下し、99重量%より多いと、制振性能が低下するからである。また、重合体Bは0.5〜90重量%、好ましくは1〜50重量%である。重合体Bが0.5重量%より少ないと曇点が高くなり、90重量%より多いとシートが脆くなり好ましくない。また、フィラーCは0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜50重量%である。フィラーCが0.1重量%より少ないと後述の衝撃吸収率が減少し、90重量%より多いとシートが脆くなり好ましくない。
【0038】
また、本発明の樹脂組成物には、衝撃吸収性を低下させない範囲で、添加剤を配合させてもよい。その添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を挙げることができる。
【0039】
(製造方法)
本発明の樹脂組成物は、ブロック共重合体Aに重合体BとフィラーCを、加熱による溶融混合や、溶媒を用いる溶解混合により混合して製造することができる。例えば、フィラーCを重合体Bと相溶させるため、あるいはフィラーCを重合体Bに分散させるため、重合体BとフィラーCを予め混合し、その混合物にブロック共重合体Aを混合する方法を用いてもよい。また、その際、重合体BとフィラーCを混合した温度よりも低い温度でブロック共重合体Aを混合してもよい。重合体BとフィラーCが分離しにくくなるからである。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、重合体Bに相溶するまたは重合体Bに分散するフィラーCを含んでいるので、ハードセグメントの存在する領域、いわゆるハードセグメントドメインに、重合体BとフィラーCが存在して、ハードセグメントドメインにおいても制振性能を発現させる。ここで、フィラーCがハードセグメントドメインに存在することの確認には以下の方法を用いることができる。すなわち、ブロック共重合体Aと重合体BとフィラーCを混合して成型した成型体I、重合体BとフィラーCを混合して成型した成型体II、およびブロック共重合体AとフィラーCを混合して成型した成型体IIIの3種の成型体の曇点をそれぞれ測定する。曇点は、所定温度に加熱して成型体を透明状態とした後、徐々に温度を下げ、不透明になった温度である。曇点が低い程、相溶性が高い。したがって、成型体I(A+B+C)の曇点が、成型体III(A+C)の曇点に比べて成型体II(B+C)の曇点に近ければ、フィラーCがハードセグメントドメインに存在すると判断できる。
【0041】
なお、本発明の樹脂組成物は、種々の形状に成形して衝撃吸収材料として用いることができる。例えば、樹脂組成物をホットプレス等により単体でシート状に成形して非拘束型衝撃吸収材料として用いたり、変形しにくい拘束層の間に積層して拘束型衝撃吸収材料として用いることもできる。また、塗料タイプの樹脂組成物として用い、種々の形状の基材に塗布して塗膜を形成し、基材と複合化して用いることもできる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1.
重合体BとしてMMA樹脂(三菱レイヨン製アクリベットVH)60gに、フィラーとしてオクチル化ジフェニルアミン(精工化学製ノンフレックスOD−3)30gを東洋精機製ラボプラストミルにて、230℃、30rpmで10分間混練し、均一な組成物を得た。冷却後、この組成物を乳鉢で粉砕し、微粉末とした。ブロック共重合体Aとしてリビングアニオン重合で製造されたアクリル系熱可塑性エラストマーであるMMA−BAブロック共重合体(クラレ社製クラリティ2140e)60gを東洋精機製ラボプラストミルにて、180℃、30rpmで5分間溶融混練した後で、上記の微粉末30gを投入し、180℃、30rpmで5分間混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃で加熱プレスして厚さ0.2mmの試験シートを作製した。
【0044】
実施例2.
重合体Bとしてカルボキシル基含有アクリル系ポリマー(東亜合成製アルフォンUS−3000)30gに、フィラーとして水添テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル製YSポリスターUH)を60g添加し、東洋精機製ラボプラストミルにて、180℃、30rpmで5分間溶融混練した。さらに、塩化鉄(III)六水和物を0.1g加え、180℃、30rpmで5分間溶融混練し、樹脂組成物を得た。ブロック共重合体Aとしてクラレ社製クラリティ2140e 10gを酢酸エチル80gに常温で溶解し、これに上記の組成物を10g添加し、撹拌混合して塗液を調製した。この塗液を用いて塗膜を作製し、溶剤を蒸発させて厚さ0.2mmの試験シートを得た。
【0045】
実施例3.
フィラーに、水添テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル製YSポリスターUH)に代えて2,2‘−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(大内新興化学工業製ノクラックNS−5)を用いた以外は、実施例2と同様の方法を用いて試験シートを得た。
【0046】
実施例4.
200mlのセパラブルフラスコに復水器を取り付け、トルエン80gを入れ、60℃の湯浴の中に入れ、増田理化工業製のスターラーHS−40を用いて撹拌を開始した。重合体Bとしてオキサゾリン基含有反応性ポリスチレン(日本触媒製エポクロスRPS−1005)10gを投入後、フィラーとして不均化ロジン(荒川化学工業製ロンジスR)10gを投入し、1時間混合し、淡黄色透明な溶液を得た。この溶液を室温まで冷却後、ブロック共重合体Aとしてスチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ製ハイブラー5127)20gを溶解し、塗液を調製した。この塗液を用いて塗膜を作製し、溶剤を蒸発させて厚さ0.2mmの試験シートを得た。
【0047】
実施例5.
重合体BとしてMMA樹脂(三菱レイヨン製アクリベットVH)60gに、フィラーとしてオクチル化ジフェニルアミン(精工化学製ノンフレックスOD−3)30gを東洋精機製ラボプラストミルにて、230℃、30rpmで10分間混練し、均一な組成物を得た。冷却後、この組成物を乳鉢で粉砕し、微粉末とした。ブロック共重合体Aとしてリビングアニオン重合で製造されたアクリル系熱可塑性エラストマーであるMMA−BAブロック共重合体(クラレ社製クラリティ2140e)60gを東洋精機製ラボプラストミルにて、230℃、30rpmで5分間溶融混練した後で、上記の微粉末30gを投入し、230℃、30rpmで5分間混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃で加熱プレスして厚さ0.2mmの試験シートを作製した。
【0048】
実施例6.
重合体BとしてMMA樹脂(三菱レイヨン製アクリベットVH)20gと、ブロック共重合体AとしてMMA−BAブロック共重合体(クラレ社製クラリティ2140e)60gとフィラーとしてオクチル化ジフェニルアミン(精工化学製ノンフレックスOD−3)10gを加え、室温で岩谷産業株式会社製ミルサーを使用し混合した。その混合物を東洋精機製ラボプラストミルにて、230℃、30rpmで10分間混練した。この樹脂組成物を180℃で加熱プレスして厚さ0.2mmの試験シートを作製した。
【0049】
実施例7.
酢酸エチル80gを増田理化工業製のスターラーHS−40を用いて撹拌しながら、ブロック共重合体AとしてMMA−BAブロック共重合体(クラレ社製クラリティ2140e)10g、重合体Bとしてカルボキシル基含有アクリル系ポリマー(東亜合成製ARUFON US−3000)3.3g、フィラーとして水添テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル製YSポリスターUH)6.7gを添加し、混合して塗液を調製した。この塗液を用いて塗膜を作製し、溶剤を蒸発させて厚さ0.2mmの試験シートを得た。
【0050】
実施例8.
酢酸エチル80gを増田理化工業製のスターラーHS−40を用いて撹拌しながら、ブロック共重合体AとしてMMA−BAブロック共重合体(クラレ社製クラリティ2140e)10gと、重合体Bとしてカルボキシル基含有アクリル系ポリマー(東亜合成製ARUFON US−3000)3.3g、フィラーとして2,2‘−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(大内新興化学工業製ノクラックNS−5)6.7gを添加し、混合して塗液を調製した。この塗液を用いて塗膜を作製し、溶剤を蒸発させて厚さ0.2mmの試験シートを得た。
【0051】
実施例9.
200mlのセパラブルフラスコにトルエン80gを入れ、室温にて、増田理化工業製のスターラーHS−40を用いて撹拌を開始した。ブロック共重合体Aとしてスチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ製ハイブラー5127)20gをトルエンに溶解後、重合体Bとしてオキサゾリン基含有反応性ポリスチレン(日本触媒製エポクロスRPS−1005)10gを投入した。フィラーとして不均化ロジン(荒川化学工業製ロンジスR)10gを投入し溶解させて、塗液を調製した。この塗液を用いて塗膜を作製し、溶剤を蒸発させて厚さ0.2mmの試験シートを得た。
【0052】
実施例10.
試験シートの厚さを1mmとした以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0053】
実施例11.
試験シートの厚さを2mmとした以外は、実施例1の方法と同様の方法で行った。
【0054】
比較例1.
ブロック共重合体Aとしてクラレ社製クラリティ2140e 60gと、フィラーとしてオクチル化ジフェニルアミン(精工化学製ノンフレックスOD−3)10gを東洋精機製ラボプラストミルにて230℃、30rpmで10分間混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃で加熱プレスして厚さ0.2mmの試験シートを作製した。
【0055】
比較例2.
酢酸エチル80gを増田理化工業製のスターラーHS−40を用いて撹拌しながら、ブロック共重合体Aとしてクラレ社製クラリティ2140e 10gと、フィラーとして水添テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル製YSポリスターUH)6.7gを添加し、混合して塗液を調製した。この塗液を用いて塗膜を作製し、溶剤を蒸発させて厚さ0.2mmの試験シートを得た。
【0056】
比較例3.
フィラーに、水添テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル製YSポリスターUH)に代えて2,2‘−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(大内新興化学工業製ノクラックNS−5)を用いた以外は、比較例2と同様の方法を用いて試験シートを得た。
【0057】
比較例4.
200mlのセパラブルフラスコにトルエン80gを入れ、室温にて、増田理化工業製のスターラーHS−40を用いて撹拌を開始した。ブロック共重合体Aとしてクラレ製ハイブラー5127の20gをトルエンに溶解後、フィラーとして不均化ロジン(荒川化学工業製ロンジスR)10gを投入し溶解させて、塗液を調製した。この塗液を用いて塗膜を作製し、溶剤を蒸発させて厚さ0.2mmの試験シートを得た。
【0058】
比較例5.
試験シートの厚さを1mmとした以外は、比較例1と同様の方法で行った。
【0059】
比較例6.
試験シートの厚さを2mmとした以外は、比較例1と同様の方法で行った。
【0060】
以下の表1に実施例および比較例の樹脂組成物の組成を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(衝撃吸収性評価)
100×100mm、厚さ30mmのアクリル板上に所定の直径のステンレス球(直径10mm、4.1kg)を100mmの高さから落下させた時の衝撃加速度を測定した。測定は、アクリル板の裏面に加速度センサーを接着剤で貼り付け、ブルュケル・ケアー製の騒音計2250で測定した。衝撃吸収性能は、衝撃吸収率(%)で評価した。ここで、衝撃吸収率は、次式で定義され、衝撃伝達率(%)は、シート上に所定の直径のステンレス球を落下させたときの加速度をシート無しのときの加速度で除して算出した。
衝撃吸収率(%)=100(%)−衝撃伝達率(%)
【0063】
(tanδ評価)
セイコー電子工業製の動的粘弾性測定装置SDM−5500を用いて23℃、周波数1Hzで測定した。
【0064】
(曇点評価)
溶剤を含む樹脂組成物からシート状の塗膜を形成し、その塗膜を1日放置して溶剤を揮発させたシートを試料として用いた。試料50gをステンレス製ビーカーに入れ、マントルヒーターで200℃まで加熱した後、ヒーターの電源を切り、自然放冷した。シートを冷却すると、相分離によりシートは透明状態から不透明状態へと変化する。その変化を目視で観察し、不透明状態が発生した温度を曇点とした。試験は30℃まで冷却した時点で終了させた。
【0065】
30℃より低温での曇点の測定は以下の方法で行った。試料が入ったステンレスビーカを楠本化成株式会社製恒温槽HIFLEX FX2050内に所定温度で放置する。8時間経過後、試料の状態を目視観察し、不透明状態が発生した温度を曇点とした。測定は20℃、10℃、0℃、−10℃、−20℃で行い、−20℃でも透明な試料は−20℃以下と表示した。
【0066】
(結果)
実施例1、3、10、11は、重合体BとフィラーCとを溶融混合し、その後でブロック共重合体Aと溶融混合した例を示す。実施例2は、重合体BとフィラーCとを溶融混合し、その後でブロック共重合体Aと溶剤混合して例を示す。実施例4は、重合体BとフィラーCとを溶剤混合し、その後でブロック共重合体Aと溶剤混合して例を示す。実施例5は、重合体BとフィラーCとを溶融混合し、その後でブロック共重合体Aと溶融混合した例で、重合体BとフィラーCとを溶融混合した時の温度と、後でブロック共重合体Aを溶融混合した時の温度が同じ温度の例を示す。実施例6は、ブロック共重合体Aと重合体BとフィラーCとを一度に溶融混合した例を示す。実施例7〜9は、ブロック共重合体Aと重合体BとフィラーCとを溶剤混合した例を示す。
【0067】
表2〜5に、曇点、衝撃吸収率、tanδの結果を示す。また、
図1は、実施例と比較例について、試験シートの厚さと衝撃吸収率の関係を示す。なお、表中の「B+C」は、BとCの混合物から得られた試験シートを指し、「A+C」はAとCの混合物から得られた試験シートを指し、「B+C+A」は、B、CおよびAの混合物から得られた試験シートを指す。
【0068】
実施例1〜4と比較例1〜4から、(B+C+A)の曇点が、(A+C)の曇点に比べて(B+C)の曇点に近いので、フィラーCがハードセグメントドメインに存在していることを確認できた。
【0069】
表2〜4から明らかなように、実施例1〜9は、比較例1〜4に比べ、高い衝撃吸収率を与えた。また、実施例1と実施例5とを比較すると、「B+C+A」の混合温度を「B+C」の混合温度より低くすると衝撃吸収率が増加した。また、実施例1と実施例6とを比較すると、「B+C」を先に作り、後で「A」を混合する方法の方が、「B+C+A」を一度に混合して製造した方法よりも衝撃吸収率が増加した。
【0070】
図1は、表5の結果をグラフ化したものであり、実施例と比較例について、試験シートの厚さと衝撃吸収率の関係を示す。厚さが2mmの場合には差は認められないが、2mmよりも薄くしても実施例では衝撃吸収率の低下が抑制され、優れた衝撃吸収性を示した。0.2mmでも、比較例の4%に対し、18%という非常に優れた値が得られた。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】