特許第6595073号(P6595073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神鋼環境ソリューションの特許一覧

<>
  • 特許6595073-廃棄物処理方法及びシステム 図000002
  • 特許6595073-廃棄物処理方法及びシステム 図000003
  • 特許6595073-廃棄物処理方法及びシステム 図000004
  • 特許6595073-廃棄物処理方法及びシステム 図000005
  • 特許6595073-廃棄物処理方法及びシステム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6595073
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】廃棄物処理方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/00 20060101AFI20191010BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20191010BHJP
   C10K 3/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C10J3/00 KZAB
   B09B3/00 302G
   C10K3/00
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-210278(P2018-210278)
(22)【出願日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】皆川 公司
(72)【発明者】
【氏名】早川 諒
(72)【発明者】
【氏名】岸 勇佑
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−327183(JP,A)
【文献】 特開2004−155879(JP,A)
【文献】 特開2018−108540(JP,A)
【文献】 特開2003−268387(JP,A)
【文献】 特開2004−107429(JP,A)
【文献】 特開2002−004948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解・ガス化することにより処理するための方法であって、
前記廃棄物をガス化炉に導入して熱分解・ガス化することにより可燃性ガスを生成することと、
前記ガス化炉またはそれよりも後段に設けられる設備であって水蒸気の還元反応により水素ガスが生成されることが可能な高温運転設備に水蒸気を供給することと、
前記可燃性ガスに含まれる不純物を除去するガス処理を行うことと、
前記ガス処理が行われた後の可燃性ガスに空気を混合して混合ガスを生成しかつ当該混合ガスをガスエンジンに供給することにより当該ガスエンジンを稼働させることと、
当該ガスエンジンに供給される前記混合ガスにおける水素ガスの濃度を検出することと、
検出される水素ガスの濃度が前記ガスエンジン内での爆発を生じさせるために最低限必要な水素ガスの濃度である下限水素ガス濃度を上回るように前記高温運転設備に供給される水蒸気の量を調節することと、を含む、廃棄物処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の廃棄物処理方法であって、前記高温運転設備に供給される水蒸気の量は、検出された水素ガスの濃度と前記下限水素ガス濃度の値よりも大きな値に設定された目標水素ガス濃度との偏差を0に近づけるように調節される、廃棄物処理方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の廃棄物処理方法であって、前記ガス化炉は流動化ガスの供給を受けて流動する流動床を有する流動床式ガス化炉であり、前記水蒸気は前記流動化ガスとともに前記流動床に供給される、廃棄物処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物処理方法であって、前記高温運転設備が前記ガス化炉から排出される可燃性ガスをその改質反応が可能となる温度以上に加熱して改質を行う改質炉を含み、前記水蒸気は当該改質炉に供給される、廃棄物処理方法。
【請求項5】
廃棄物を熱分解・ガス化することにより処理するためのシステムであって、
前記廃棄物を受け入れて熱分解・ガス化することにより可燃性ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉またはそれよりも後段に設けられる設備であって水蒸気の還元反応により水素ガスが生成されることが可能な高温運転設備に水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記可燃性ガスに含まれる不純物を除去するガス処理を行うガス処理部と、
供給されるガスを爆発させて動力を生成するガスエンジンと、
前記ガス処理が行われた後の可燃性ガスに空気を混合して混合ガスを生成しかつ当該混合ガスを前記ガスエンジンに供給するミキサと、
当該ガスエンジンに供給される前記混合ガスにおける水素ガスの濃度を検出する水素ガス濃度検出部と、
検出される水素ガスの濃度が前記ガスエンジン内での爆発を生じさせるために最低限必要な水素ガスの濃度である下限水素ガス濃度を上回るように前記高温運転設備に供給される水蒸気の量を調節する水素ガス濃度制御部と、を備える、廃棄物処理システム。
【請求項6】
請求項記載の廃棄物処理システムであって、前記水素ガス濃度制御部は、検出された水素ガスの濃度と前記下限水素ガス濃度の値よりも大きな値に設定された目標水素ガス濃度との偏差を演算する偏差演算部と、演算された前記偏差を0に近づけるように前記高温運転設備に供給される水蒸気の量を調節する水蒸気供給量調節部と、を含む、廃棄物処理システム。
【請求項7】
請求項または記載の廃棄物処理システムであって、前記ガス化炉は流動化ガスの供給を受けて流動する流動床を有する流動床式ガス化炉であり、前記水蒸気供給部は前記水蒸気を前記流動化ガスとともに前記流動床に供給するように構成されている、廃棄物処理システム。
【請求項8】
請求項5〜のいずれかに記載の廃棄物処理システムであって、前記高温運転設備として前記ガス化炉から排出される可燃性ガスを加熱して改質を行う改質炉をさらに備え、前記水蒸気供給部は前記水蒸気を前記改質炉に供給するように構成されている、廃棄物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解・ガス化してこれにより生じた可燃性ガスのもつエネルギーをガスエンジンによって回収する廃棄物処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を熱分解・ガス化する廃棄物処理設備において、前記熱分解・ガス化により生じた可燃性ガスのもつエネルギーをガスエンジンにより回収する技術が知られている。前記ガスエンジンは、前記可燃性ガスのもつエネルギーを直接運動エネルギーに変換するものであるため、例えば前記可燃性ガスをボイラに導入して高圧蒸気を発生させた後に当該高圧蒸気のもつエネルギーによって蒸気タービンを回す方法に比べ、前記可燃性ガスのエネルギーの回収をより効率よく行うことが可能である。
【0003】
しかしながら、前記ガスエンジンにおいてその正常な稼働のために有効な爆発を生じさせるためには、当該ガスエンジンに導入されるガスに一定以上の単位体積当たり発熱量(ガスエンジン必要発熱量)が必要とされる一方、一般の廃棄物の熱分解・ガス化により生じる可燃性ガスが保有する単位体積当たりの発熱量は前記ガスエンジン必要発熱量を下回ることが多く、この場合には、前記可燃性ガスをそのままガスエンジンに導入しても当該ガスエンジンを正常に運転することができない。
【0004】
このように保有発熱量の低い可燃性ガスのエネルギーをガスエンジンにより回収するための方法として、特許文献1には、前記可燃性ガスにこれよりも保有発熱量の高い高発熱量ガス(例えばメタン発酵原料から発生したメタンガス)を混合し、これにより得られる混合ガスの保有発熱量を前記ガスエンジン必要発熱量よりも大きくした上で、当該混合ガスをガスエンジンに供給する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−108540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように可燃性ガスにこれよりも発熱量の高い高発熱量ガスを混合する方法では、本来の廃棄物処理のための設備に加え、高発熱量ガスを生成しかつこれを可燃性ガスに添加するための設備が必要である。しかも、前記発熱量の調整のために必要とされる高発熱量ガスの体積は、当該高発熱量ガスの保有発熱量が低いほど大きくなり、その体積分だけ設備は大型化される。換言すれば、必要とされる高発熱量ガスの体積を小さくするためには当該高発熱量ガスとして保有発熱量の高いものを用いなければならず、その分コストは増大する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべく、設備の大型化及びコストの増大を抑えながら、廃棄物の熱分解により生じる可燃性ガスのもつエネルギーをガスエンジンによって効率よく回収することができる方法及びシステムを提供することを目的とする。
【0008】
前記目的を達成するため、本発明者らは、前記ガスエンジンに導入されるガスに含まれる水素ガスの濃度に着目した。水素ガスは前記可燃性ガスに含まれる他の可燃成分(一酸化炭素やメタン)に比べて着火性、燃焼性が高いため、大きな体積をもつ高発熱量ガスを可燃性ガスに導入しなくても、当該可燃性ガスにおける水素ガスの濃度を管理することにより、ガスエンジンの正常な稼働を保証することが可能である。しかも、可燃性ガスにおける水素ガスの濃度は、廃棄物処理設備に供給される水蒸気の量の増加や小量の水素ガスの添加により十分に高めることが可能であり、著しい設備の大型化や大幅なコストの増大を伴わない。
【0009】
本発明により提供されるのは、廃棄物を熱分解・ガス化することにより処理するための方法であって、前記廃棄物をガス化炉に導入して熱分解・ガス化することにより可燃性ガスを生成することと、前記ガス化炉またはそれよりも後段に設けられる設備であって水蒸気の還元反応により水素ガスが生成されることが可能な高温運転設備に水蒸気を供給することと、前記可燃性ガスに含まれる不純物を除去するガス処理を行うことと、前記ガス処理が行われた後の可燃性ガスに空気を混合して混合ガスを生成しかつ当該混合ガスをガスエンジンに供給することにより当該ガスエンジンを稼働させることと、当該ガスエンジンに供給される前記混合ガスにおける水素ガスの濃度を検出することと、検出される水素ガスの濃度が前記ガスエンジン内での爆発を生じさせるために最低限必要な水素ガスの濃度である下限水素ガス濃度を上回るように前記水蒸気の供給量を調節することと、を含む。このような水蒸気の供給量の調節は、前記ガスエンジンに導入されるガス(可燃性ガスと空気の混合ガス)の水素ガス濃度を下限水素ガス濃度以上にして当該ガスエンジンの正常な運転を保証することを可能にする。
【0010】
前記水蒸気の供給量は、例えば、検出された水素ガスの濃度と前記下限水素ガス濃度よりも大きな範囲で設定された目標水素ガス濃度との偏差を0に近づけるように調節されることが好ましい。この調節により、水蒸気の過剰な供給による熱効率の低下を抑えながら前記ガスエンジンに導入されるガスの水素ガス濃度を前記下限水素ガス濃度よりも大きな濃度により確実に維持するための制御、つまり、ガスエンジンの正常な運転をより確実にかつ効率よく行うことを可能にするような水素ガス濃度の制御、が実現される。
【0011】
前記ガス化炉が流動化ガスの供給を受けて流動する流動床を有する流動床式ガス化炉である場合、前記水蒸気は前記流動化ガスとともに前記流動床に供給されるのが、好ましい。このように前記流動床に供給される水蒸気は、当該流動床内で廃棄物または当該廃棄物から生じた可燃性ガスと効率よく接触しかつ加熱されるので、当該水蒸気から生成される水素ガスをガスエンジンに供給される可燃性ガス中に高い効率で含ませることが可能である。
【0012】
前記高温運転設備が前記ガス化炉から排出される可燃性ガスをその改質反応が可能となる温度以上に加熱して改質を行う改質炉を含む場合、前記水蒸気は当該改質炉に供給されてもよい。このように改質炉に水蒸気を供給することにより、前記改質のための熱を有効に利用して前記水蒸気の還元反応を生じさせることが可能である。
【0013】
また、本発明により提供されるのは、廃棄物を熱分解・ガス化することにより処理するための方法であって、前記廃棄物をガス化炉に導入して熱分解・ガス化することにより可燃性ガスを生成することと、前記ガス化炉よりも下流側の位置に水素ガスを供給することと、前記可燃性ガスに含まれる不純物を除去するガス処理を行うことと、前記ガス処理が行われた後の可燃性ガスに空気を混合して混合ガスを生成しかつ当該混合ガスをガスエンジンに供給することにより当該ガスエンジンを稼働させることと、当該ガスエンジンに供給される前記混合ガスにおける水素ガスの濃度を検出することと、検出される水素ガスの濃度が前記ガスエンジン内での爆発を生じさせるために最低限必要な水素ガスの濃度である下限水素ガス濃度を上回るように前記水素ガスの供給量を調節することと、を含む。
【0014】
この方法においても、前記水素ガスの供給量は、検出された水素ガスの濃度と前記下限水素ガス濃度よりも大きな範囲で設定された目標水素ガス濃度との偏差を0に近づけるように調節されることが好ましい。この調節により、水素ガスの消費量を抑えながら前記ガスエンジンに導入されるガスの水素ガス濃度を前記下限水素ガス濃度よりも大きな濃度に確実に維持するための制御、つまり、ガスエンジンの正常な運転をより確実に可能にするような水素ガス濃度の制御、が実現される。
【0015】
前記水素ガスが供給される位置は特に限定されないが、好ましくは、前記ガス処理が行われた後の可燃性ガス、すなわち水素ガスの燃焼が生じない程度に温度が低くかつ不純物が除去された後の清浄な状態にある可燃性ガス、に水素ガスが供給されるのが、よい。
【0016】
前記方法のいずれにおいても、前記混合ガス中の水素ガス濃度の検出は、前記ガス処理がなされてから前記ミキサに導入される前の可燃性ガス中の水素ガス濃度を測定することと、測定された水素ガス濃度と前記ミキサに供給される空気の量とに基づいて前記混合ガス中の水素ガス濃度を算定することと、により行われるのが好ましい。前記ガス処理がなされた後の可燃性ガスは清浄であるためにその水素ガス濃度の測定は容易であり、しかもミキサよりも上流側で測定を行うためにその測定箇所の選定の自由度が高い。そして、このようにミキサの上流側で水素ガス濃度の測定を行いながら、その測定された水素ガス濃度とミキサに供給される空気の量とに基づいて前記混合ガス中の水素ガス濃度を適正に算定することが可能である。
【0017】
また、本発明により提供されるのは、廃棄物を熱分解・ガス化することにより処理するためのシステムであって、前記廃棄物を受け入れて熱分解・ガス化することにより可燃性ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉またはそれよりも後段に設けられる設備であって水蒸気の還元反応により水素ガスが生成されることが可能な高温運転設備に水蒸気を供給する水蒸気供給部と、前記可燃性ガスに含まれる不純物を除去するガス処理を行うガス処理部と、供給されるガスを爆発させて動力を生成するガスエンジンと、前記ガス処理が行われた後の可燃性ガスに空気を混合して混合ガスを生成しかつ当該混合ガスを前記ガスエンジンに供給するミキサと、当該ガスエンジンに供給される前記混合ガスにおける水素ガスの濃度を検出する水素ガス濃度検出部と、検出される水素ガスの濃度が前記ガスエンジン内での爆発を生じさせるために最低限必要な水素ガスの濃度である下限水素ガス濃度を上回るように水蒸気の供給量を調節する水素ガス濃度制御部と、を備える。
【0018】
前記水素ガス濃度制御部は、検出された水素ガスの濃度と前記下限水素ガス濃度よりも大きな範囲で設定された目標水素ガス濃度との偏差を演算する偏差演算部と、演算された前記偏差を0に近づけるように前記高温運転設備に供給される水蒸気の量を調節する水蒸気供給量調節部と、を含むのが、好ましい。
【0019】
前記ガス化炉が流動化ガスの供給を受けて流動する流動床を有する流動床式ガス化炉である場合、前記水蒸気供給部は前記水蒸気を前記流動化ガスとともに前記流動床に供給するように構成されているのが、好ましい。
【0020】
あるいは、前記システムが、前記高温運転設備として前記ガス化炉から排出される可燃性ガスを加熱して改質を行う改質炉をさらに備える場合、前記水蒸気供給部は前記水蒸気を前記改質炉に供給するように構成されていてもよい。
【0021】
また、本発明により提供されるのは、廃棄物を熱分解・ガス化することにより処理するためのシステムであって、前記廃棄物を受け入れて熱分解・ガス化することにより可燃性ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉またはそれよりも後段の設備に水素ガスを供給する水素ガス供給部と、前記可燃性ガスに含まれる不純物を除去するガス処理を行うガス処理部と、供給されるガスを爆発させて動力を生成するガスエンジンと、前記ガス処理が行われた後の可燃性ガスに空気を混合して混合ガスを生成しかつ当該混合ガスをガスエンジンに供給するミキサと、当該ガスエンジンに供給される前記混合ガスにおける水素ガスの濃度を検出する水素ガス濃度検出部と、検出される水素ガスの濃度が前記ガスエンジン内での爆発を生じさせるために最低限必要な水素ガスの濃度である下限水素ガス濃度を上回るように前記水素ガス供給部から供給される水素ガスの量を調節する水素ガス濃度制御部と、を備える。
【0022】
このシステムにおいても、前記水素ガス濃度制御部は、検出された水素ガスの濃度と前記下限水素ガス濃度よりも大きな範囲で設定された目標水素ガス濃度との偏差を演算する偏差演算部と、演算された前記偏差を0に近づけるように前記水素ガス供給部から供給される水素ガスの量を調節する水素ガス供給量調節部と、を含むのが、好ましい。
【0023】
前記水素ガス供給部は、例えば、前記ガス処理部から排出された可燃性ガス、すなわち不純物が除去された後の清浄な状態にある可燃性ガス、に前記水素ガスを供給するように構成されていることが、好ましい。
【0024】
前記システムのいずれにおいても、前記水素ガス濃度検出部は、前記ガス処理部から排出されて前記ミキサに導入される前の可燃性ガス中の水素ガス濃度を測定する水素ガス濃度測定器と、その測定された水素ガス濃度と前記ミキサに供給される空気の量とに基づいて前記混合ガス中の水素ガス濃度を算定する水素ガス濃度算定部と、を有することが、好ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、設備の大型化及びコストの増大を抑えながら廃棄物の熱分解により生じる可燃性ガスのもつエネルギーをガスエンジンによって効率よく回収することができる方法及びシステムが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る廃棄物処理システムを示すフローシートである。
図2】前記廃棄物処理システムにおいて検出される水素ガス濃度の時間変化の例を示すグラフである。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る廃棄物処理システムを示すフローシートである。
図4】本発明の第3の実施の形態に係る廃棄物処理システムを示すフローシートである。
図5】本発明の第4の実施の形態に係る廃棄物処理システムを示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る廃棄物処理システムを示すフローシートである。この廃棄物処理システムは、ガス化炉10と、改質炉12と、ガス処理部14と、ミキサ16と、ガスエンジン20と、を備える。
【0029】
前記ガス化炉10は、投入されたごみ等の廃棄物を熱分解・ガス化することにより可燃性ガスを生成する。当該可燃性ガスには一酸化炭素やメタンガス、水素ガス等の可燃成分が含まれる。
【0030】
この実施の形態に係るガス化炉10は、流動床式ガス化炉であり、その底部に形成された流動床18と、当該流動床18の上方に形成された燃焼空間であるフリーボード17と、を有する。当該ガス化炉10には流動化空気及び二次空気が供給される。前記流動化空気は流動化空気配管19及び前記ガス化炉10の底部の空気室を通じて前記流動床18にその下方から供給され、当該流動床18の流動化に寄与する。前記二次空気は前記フリーボード17に供給され、前記流動床18から上昇する可燃性ガスの二次燃焼に寄与する。
【0031】
前記改質炉12は、前記ガス化炉10の後段に設置された高温運転設備であり、当該ガス化炉10から排出される可燃性ガスに含まれるタールやチャーを合成ガスに熱分解することにより、当該可燃性ガスの改質を行う。具体的には、当該可燃性ガスを加熱するように前記改質炉12内が加熱されるとともに、当該改質炉12に改質用空気供給配管13を通じて改質用空気が供給され、これにより、前記可燃性ガスが改質される。前記改質炉12内の加熱温度は、改質反応が生じる温度以上の温度(例えば800°C〜1200°C)に設定される。
【0032】
なお、この実施の形態において前記改質炉12は必須のものではない。すなわち、当該改質炉12は省略されてもよい。
【0033】
前記ガス処理部14は、例えばバグフィルタやサイクロン、スクラバを含み、前記改質炉12から排出される可燃性ガスに含まれる不純物を除去する。当該不純物は、例えば粉塵や酸性ガス、アンモニアなどのアルカリ性ガスである。
【0034】
前記ミキサ16は、前記ガス処理部14から排出されるガス、すなわち前記不純物を除去するためのガス処理が行われた後の可燃性ガス、を受け入れ、これに空気を混合することにより混合ガスを生成して当該混合ガスを前記ガスエンジン20に供給する。前記ミキサ16に供給される空気量は、ガスエンジン20の仕様にもよるが、一般には理論空気量以上で当該理論空気量の2倍の空気量以下の範囲で設定されるのが、よい。前記理論空気量は、燃焼室22内において可燃成分が完全に燃焼するために必要な空気量である。例えば理論空気量を0.7mN−AIR/mN−可燃性ガス、設定される運転空気比を1.5としたとき、可燃性ガスに対する空気の比率が0.7×1.5=1.05となるような量の空気がミキサ16に供給される。
【0035】
前記ガスエンジン20は、前記ミキサ16から供給される混合ガスを受け入れてこれを燃焼室22内で爆発させることにより機械エネルギーを生成する。この実施の形態に係るガスエンジン20は、前記燃焼室22を形成するシリンダ24と、当該シリンダ24内で往復動することが可能なピストン26と、当該ピストン26に連結されるクランク機構28と、を有する。このガスエンジン20において、前記燃焼室22内での前記混合ガスの爆発及び燃焼により発生したエネルギーは、前記ピストン26及び前記クランク機構28により機械エネルギーすなわち前記クランク機構28の回転運動エネルギーに変換される。
【0036】
前記ガスエンジン20の正常な稼働のためには、前記燃焼室22内で確実に前記混合ガスの爆発が発生する必要がある。当該ガスエンジン20の稼働のために、従来は前記可燃性ガスの保有する発熱量が着目され、当該発熱量が所定の発熱量以上となるように当該可燃性ガスに高発熱量ガスを混合させることが行われていたのに対し、この廃棄物処理システムでは、可燃成分の中でも特に着火性及び燃焼性に優れた水素ガスの濃度に着目がなされ、当該水素ガス濃度が下限水素ガス濃度Dhminを上回るように前記ガス化炉10に対して水蒸気の供給が行われる。
【0037】
前記下限水素ガス濃度Dhminは、前記ガスエンジン20の燃焼室22内での爆発を確実に生じさせるために最低限必要な前記混合ガス中の水素ガス濃度である。当該下限水素ガス濃度Dhminの値は、前記ガスエンジン20の仕様にもよるが、一般には4%(容積%)前後である。
【0038】
具体的に、この廃棄物処理システムは、その特徴として、図1に示すような水蒸気供給部30、水蒸気供給調節弁32、水素ガス濃度測定器34、水素ガス濃度算定部35、偏差演算部36、水蒸気供給指令部38をさらに備える。
【0039】
前記水蒸気供給部30は、水蒸気供給配管31を通じて前記流動化空気配管19内に水蒸気を供給する。すなわち、当該水蒸気供給部30は、前記流動化空気配管19内を流れる流動化空気に前記水蒸気を混合し、当該水蒸気を当該流動化空気とともに前記ガス化炉10内の流動床18に供給する。当該水蒸気供給部30は、例えば、前記可燃性ガスの熱により水を沸騰させて水蒸気を生成するボイラや、当該ボイラその他により生成された水蒸気を貯留する蒸気溜めにより構成される。
【0040】
前記水蒸気供給調節弁32は、前記水蒸気供給管31の途中に設けられ、当該水蒸気供給管31を通じて前記流動化空気供給配管19に供給される水蒸気の流量を変化させるように開弁する。当該水蒸気供給調節弁32は、より具体的には、電磁弁により構成され、入力される流量指令信号に応じた開度で開弁することにより、前記水蒸気の流量が前記流量指令信号に対応した流量になるように当該流量を調節する。
【0041】
前記水素ガス濃度測定器34は、前記ガス処理部14と前記ミキサ16とを結ぶ配管15に接続され、当該ガス処理部14から排出されるガス、すなわち当該ガス処理部14により不純物が除去された後の清浄な可燃性ガス、における水素ガス濃度を測定する。具体的に、当該水素ガス濃度測定器34は、前記水素ガス濃度に対応した電気信号である水素ガス測定信号を生成し、前記水素ガス濃度算定部35に入力する。
【0042】
前記水素ガス濃度算定部35は、前記水素ガス濃度測定器34により測定される水素ガス濃度と、前記ミキサ16に供給される空気の量とに基づき、当該ミキサ16から前記ガスエンジンに供給される混合ガスにおける水素ガス濃度を検出水素ガス濃度Dhとして算定する。すなわち、当該水素ガス濃度算定部35は、前記水素ガス濃度測定器34とともに、前記混合ガスにおける水素ガス濃度を検出する水素ガス濃度検出部を構成する。
【0043】
前記偏差演算部36は、水素ガス濃度偏差ΔDhを演算する。この水素ガス濃度偏差ΔDhは、予め設定された目標水素ガス濃度Dhtに対する前記検出水素ガス濃度Dhの偏差である(ΔDh=Dh−Dht)。前記目標水素ガス濃度Dhtは、前記混合ガス中の水素ガス濃度が確実に前記下限水素ガス濃度Dhminを上回るように当該下限水素ガス濃度Dhminよりも大きな値に設定される。例えば、前記下限水素ガス濃度Dhminが4%(容積%)の場合、前記目標水素ガス濃度Dhtは5%またはそれよりも少し大きな値に設定されるのが好ましい。
【0044】
前記水蒸気供給指令部38は、前記流量指令信号を生成して前記水蒸気供給調節弁32に入力することにより、前記水蒸気供給部30から前記流動化空気に供給される水蒸気の流量を調節する。具体的に、当該水蒸気供給指令部38は、前記流量指令信号として、前記偏差演算部36により演算される前記水素ガス濃度偏差ΔDhを0に近づけるような流量指令信号を生成し、これを前記水蒸気供給調節弁32に入力する。従って、当該水蒸気供給指令部38は、前記偏差演算部36及び前記水蒸気供給調節弁32とともに、前記水素ガス濃度偏差ΔDhを0に近づけるように水蒸気供給量を調節する(つまり検出水素ガス濃度Dhを目標水素ガス濃度Dhtに近づけるような水素ガス濃度制御を行う)水素ガス濃度制御部を構成する。当該水素ガス供給指令部38は、例えば、前記水素ガス濃度算定部35及び偏差演算部36とともに、マイクロコンピュータをはじめとする演算制御装置により構成されることが可能である。
【0045】
次に、この廃棄物処理システムにおいて行われる廃棄物処理方法について説明する。
【0046】
処理対象となるごみ等の廃棄物は、ガス化炉10内の流動床18に投入され、ここで一次燃焼する。これにより、可燃成分を含む可燃性ガスが発生する。当該可燃性ガスは、前記流動床18からフリーボード17内に上昇し、ここで二次燃焼した後にガス化炉10から排出される。
【0047】
前記流動床18にはこれを流動化しかつ前記廃棄物を熱分解・ガス化するための流動化空気が供給されるが、当該流動化空気には前記水蒸気供給部30から供給される水蒸気が混合されているため、当該水蒸気は前記一次燃焼により発生した熱によって前記流動床18内で分解され、これにより水素ガスが生成される。当該水素ガスは当該流動床18内で廃棄物またはその可燃性ガスと効率よく接触しかつ加熱されるので、当該水蒸気から生成される水素ガスをガスエンジンに供給される可燃性ガス中に高い効率で含ませることが可能である。つまり、前記可燃性ガスは前記水素ガスが効率よく混合された状態で前記ガス化炉10から排出される。
【0048】
前記可燃性ガスは、改質炉12にて改質され、ガス処理部14にてガス処理された後、ミキサ16に導入される。当該ミキサ16は、前記可燃性ガスと空気とを混合して混合ガスを生成し、これをガスエンジン20に供給する。当該ガスエンジン20は、当該混合ガスを燃焼室22内で爆発させ、燃焼させることにより、前記可燃性ガスの保有するエネルギーを機械エネルギーに変換する。当該機械エネルギーは、例えば発電機により電気エネルギーに変換され、回収される。
【0049】
一方、前記水素ガス濃度測定器34は、前記ガス処理部14から排出される可燃性ガスの水素ガス濃度を測定する。前記水素ガス濃度算定部35は、その測定された水素ガス濃度と、前記ミキサ16に供給される空気の量と、に基づいて検出水素ガス濃度Dh、すなわち前記混合ガス中における水素ガス濃度、を算定する。前記偏差演算部36は、予め設定された前記目標水素ガス濃度Dhtと前記検出水素ガス濃度Dhとの偏差である前記水素ガス濃度偏差ΔDh(=Dh−Dht)を演算する。
【0050】
前記水蒸気供給指令部38は、前記水素ガス濃度偏差ΔDhを0に近づけるための流量指令信号を生成し、これを前記水蒸気供給調節弁32に入力する。これにより、前記検出水素ガス濃度Dhを前記目標水素ガス濃度Dhtに近づけるような水蒸気供給量の調節、換言すれば、当該水蒸気供給量の調節による水素ガス濃度の制御(この実施の形態ではフィードバック制御)、が実行される。当該制御は、例えば前記水素ガス濃度偏差ΔDhに基づくPID制御である。従って、前記検出水素ガス濃度Dhが前記目標水素ガス濃度Dhtよりもある程度以上大きい領域(図2に示される例では領域A1)にて水蒸気供給量を減少させる調節が行われ、逆に前記検出水素ガス濃度Dhが前記目標水素ガス濃度Dhtよりもある程度以上小さい領域(図2に示される例では領域A2)にて水蒸気供給量を増加させる調節が行われる。
【0051】
以上のような制御は、前記混合ガスにおける水素ガス濃度を確実に下限水素ガス濃度Dhminよりも上回らせるような水蒸気の供給を可能にする。しかも、求められる水素ガス濃度の確保のために必要な供給量を大幅に上回るような水蒸気の過剰供給を抑えることにより、当該供給に起因する熱効率の低下を抑制することが可能である。
【0052】
前記水素ガスを発生させるための水蒸気が供給される箇所は特に限定されない。当該箇所は、水蒸気の分解によって水素ガスが生成されることが可能な箇所、つまり当該水蒸気の分解反応が生じる程度の高温条件下で運転が行われる箇所であればよい。具体的には、前記ガス化炉10に供給される二次空気に水蒸気が混合されてもよいし、当該ガス化炉10の後段で高温運転が行われる高温運転設備、例えば、当該廃棄物処理システムが前記改質炉12を含む場合には当該改質炉12、に水蒸気が供給されてもよい。
【0053】
後者の例を第2の実施の形態として図3に示す。この第2の実施の形態では、前記第1の実施の形態に係るシステムにおける水蒸気供給部30が流動化空気配管19ではなく改質用空気供給配管13に水蒸気供給配管33を介して接続され、当該水蒸気供給配管33の途中に前記第1の実施の形態と同様に水蒸気供給調節弁32が設けられている。従って、この第2の実施の形態では、前記水蒸気供給部30から前記水蒸気供給調節弁32を経由して改質用空気供給配管13に水蒸気が供給され、当該水蒸気は前記改質用空気と混合された状態で前記改質炉12に供給される。
【0054】
この第2の実施の形態では、可燃性ガスの改質のために改質炉12内に与えられる熱を利用して前記水蒸気を分解して水素ガスを改質炉12内に生成することができ、かつ、当該水素ガスを確実に可燃性ガスに混合してガスエンジン20に送り込むことが可能である。従って、この第2の実施の形態においても、水素ガス濃度測定器34及び水素ガス濃度算定部35により検出される(混合ガス中の)水素ガス濃度に基づいて水蒸気供給量が調節されることにより、前記混合ガスにおける水素ガス濃度を確実に下限水素ガス濃度Dhminよりも大きくしてガスエンジン20の正常な稼働を確保することができる。
【0055】
前記混合ガスにおける水素ガス濃度の検出は、前記のようなガス処理部14の下流側での水素ガス濃度の測定と、その測定された水素ガス濃度に基づく混合ガス中の水素ガス濃度の算定と、の組合せによるものに限定されない。例えば、本発明の第3の実施の形態として図4に示すように、前記ミキサ16から前記ガスエンジン20に供給される混合ガス中の水素ガス濃度を直接検出するように前記水素ガス濃度測定器34が当該ミキサ16またはその下流側の配管部分に接続されてもよい。この場合、前記第1の実施の形態に係る水素ガス濃度算定部35は不要であり、前記水素ガス濃度測定器34のみによって水素ガス濃度検出部を構成する、つまり混合ガスにおける水素ガス濃度を直接計測する、ことが可能である。ただし、この第2の実施の形態に比べ、前記第1の実施の形態では前記水素ガス濃度測定器34の配置場所の自由度が高いという利点がある。
【0056】
逆に、前記水素ガス濃度測定器34は前記ガス処理部14に導入される前の可燃性ガスにおける水素ガス濃度を測定するように配置されてもよい。しかし、前記ガス処理部14の下流側での測定、つまりガス処理されて不純物が除去された状態での可燃性ガス中の水素ガス濃度の測定によれば、ガス処理部14の上流側での測定に比べてより高い精度で検出水素ガス濃度を特定することが可能である。
【0057】
前記第1〜第3の実施の形態は、いずれも、システムに対する水蒸気の供給量を調節することにより混合ガス中の水素ガス濃度を制御するものであるが、当該水素ガス濃度の制御は、ガス化炉よりも下流側の位置に水素ガスを供給することと、その水素ガスの供給量を調節することと、により行われることも可能である。その例を第4の実施の形態として図5に示す。
【0058】
この第4の実施の形態に係る廃棄物処理システムは、前記第1の実施の形態に係るシステムの水蒸気供給部30、水蒸気供給調節弁32及び水蒸気供給指令部38にそれぞれ代えて水素ガス供給部40、水素ガス供給調節弁42及び水素ガス供給指令部44を具備するものである。それ以外の第4の実施の形態に係るシステムの要素は第1の実施の形態に係るシステムの要素と全く同等である。
【0059】
前記水素ガス供給部40は、水素ガス供給配管41を介してシステム内の適当な配管、ここではガス処理部14とミキサ16とを結ぶ配管15、に接続され、水素ガスを生成するとともにその生成した水素ガスを前記配管15に供給する。つまり、当該水素ガスを前記ガス処理部14から排出される熱分解中に混合する。前記水素ガスの生成は、例えば水の電気分解により低コストで行われることが可能である。
【0060】
前記水素ガス供給調節弁42は、前記水素ガス供給管41の途中に設けられ、当該水素ガス供給管41を通じて前記配管15に供給される水素ガスの流量を変化させるように開弁する。当該水素ガス供給調節弁42は、前記第1の実施の形態に係る水蒸気供給調節弁32と同様、電磁弁により構成され、入力される流量指令信号に応じた開度で開弁することにより、前記水素ガスの流量が前記流量指令信号に対応した流量になるように当該流量を調節する。
【0061】
前記水素ガス供給指令部44は、前記流量指令信号を生成して前記水素ガス供給調節弁42に入力することにより、前記水素ガス供給部40から前記配管15内の可燃性ガスに供給される水素ガスの流量を調節する。具体的に、当該水素ガス供給指令部44は、前記流量指令信号として、前記偏差演算部36により演算される水素ガス濃度偏差ΔDh、すなわち、水素ガス濃度測定器34及び水素ガス濃度算定部35により検出される(混合ガス中の)水素ガス濃度である検出水素ガス濃度Dhの目標水素ガス濃度Dhtに対する偏差(ΔDh=Dh−Dht)、を0にするような流量指令信号を生成し、これを前記水素ガス供給調節弁42に入力する。従って、当該水素ガス供給指令部44は、前記偏差演算部36及び前記水素ガス供給調節弁42とともに、前記水素ガス濃度偏差ΔDhを0に近づけるように水素ガス供給量を調節する(つまり検出水素ガス濃度Dhを目標水素ガス濃度Dhtに近づけるような水素ガス濃度制御を行う)水素ガス濃度制御部を構成する。
【0062】
前記水素ガス供給指令部44は、前記第1の実施の形態に係る水蒸気供給指令部38と同様、水素ガス供給量の調節による水素ガス濃度の制御(この実施の形態ではフィードバック制御)、を例えば前記水素ガス濃度偏差ΔDhに基づくPID制御によって実現する。従って、前記検出水素ガス濃度Dhが前記目標水素ガス濃度Dhtよりもある程度以上大きい領域(図2に示される例では領域A1)にて水素ガス供給量を減少させる調節を行い、逆に前記検出水素ガス濃度Dhが前記目標水素ガス濃度Dhtよりもある程度以上小さい領域(図2に示される例では領域A2)にて水蒸気供給量を増加させる調節を行う。
【0063】
前記水素ガス供給指令部44は、前記第1の実施の形態に係る水蒸気供給指令部38と同様、例えば、前記水素ガス濃度算定部35及び偏差演算部36とともに、マイクロコンピュータをはじめとする演算制御装置により構成されることが可能である。
【0064】
この第4の実施の形態に係る廃棄物処理システムにおいても、ガスエンジン20に供給される混合ガスにおける水素ガス濃度を検出することと、その検出された水素ガス濃度Dhの目標水素ガス濃度Dhtに対する偏差である水素ガス濃度偏差ΔDhを0に近づけるように水素ガス供給量を調節することと、を含む廃棄物処理方法が実行されることにより、前記混合ガスにおける水素ガス濃度を確実に下限水素ガス濃度Dhminよりも高くしてガスエンジン20の正常な運転を確保することができる。しかも、前記のような水素ガス濃度の制御は、過剰な水素ガスの供給を防いでコストの増大を有効に抑制することを可能にする。
【0065】
前記第1〜第3の実施の形態と同様、水素ガス濃度の測定が行われる箇所及び水素ガスの供給箇所は特に限定されない。しかし、水素ガスの供給箇所は、その供給される水素ガスの燃焼が発生しない程度に低温である箇所、具体的には前記配管15のようにガス処理部14の下流側の箇所に選定されるのが好ましい。また、図5に示されるシステムでは、水素ガスが供給された後の可燃性ガスにおける水素ガス濃度を水素ガス濃度測定器34が測定するように当該水素ガス濃度測定器34が水素ガス供給位置よりも下流側に配置されているが、逆に水素ガス濃度測定器34の下流側に水素ガスが供給されてもよい。この場合、水素ガスが供給される前に測定された水素ガス濃度に対応する検出水素ガス濃度を目標水素ガス濃度に近づけるように、つまり水素ガスの不足分を補うように、水素ガス供給量が調節されることになる。水素ガスの供給位置は、あるいは、ミキサ16の下流側の位置に設定されてもよい。
【0066】
以上説明した廃棄物処理方法は、いずれも、可燃性ガスの保有発熱量ではなく混合ガスにおける水素ガス濃度を制御するものであるので、従来のように大きな体積の高発熱量ガスを扱うための大掛かりな設備を要することなく、水蒸気または水素ガスの供給量を調節するだけの簡単な設備で前記ガスエンジン20の確実な稼働を実現することができる。例えば、前記燃焼室22内の爆発を確実に発生させるために最低限必要な空気中の水素ガス濃度の下限値が4%(容量%)であるガスエンジンの場合、当該爆発に必要なメタンガスの下限値及び一酸化炭素ガス濃度の下限値はそれぞれ5.3%及び12.5%であり、水素ガスの下限値よりも著しく大きい。従って、高発熱量ガスの添加により混合ガスの単位体積当たりの発熱量を制御するのではなく、着火性及び可燃性に優れた水素ガスの濃度を水蒸気または水素ガスの供給量の調節によって制御することにより、設備の大型化及びコストの増大を効果的に抑制することができる。
【0067】
本発明は、水蒸気及び水素ガスの少なくとも一方の供給量を調節することにより水素ガス濃度を制御するものを広く包含する。従って、本発明では、水蒸気及び水素ガスの双方の供給及びその供給量の調節が同時に行われてもよい。例えば、検出水素ガス濃度Dhが目標水素ガス濃度Dhtに近づくようにガス化炉10に対する水蒸気供給量の調節とガス処理部14の下流側の位置に対する水素ガスの供給量の調節とが同時に実行されてもよい。
【0068】
また、本発明では検出される水素ガス濃度が下限水素ガス濃度を上回るように水蒸気または水素ガスの供給が行われればよく、水素ガス濃度偏差ΔDhを0に近づけるようなフィードバック制御が行われるものに限定されない。例えば、検出される水素ガス濃度(混合ガスにおける水素ガス濃度)が予め設定された許容水素ガス濃度であって下限水素ガス濃度よりも大きな範囲で設定された所定濃度に達するたびに一定期間だけ水蒸気または水素ガスの供給量を増やして一時的に水素ガス濃度を増加させるような制御が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 ガス化炉
12 改質炉
14 ガス処理装置
16 ミキサ
18 流動床
20 ガスエンジン
30 水蒸気供給部
32 水蒸気供給調節弁(水素ガス濃度制御部)
34 水素ガス濃度測定器(水素ガス濃度検出部)
35 水素ガス濃度算定部(水素ガス濃度検出部)
36 偏差演算部(水素ガス濃度制御部)
38 水蒸気供給指令部(水素ガス濃度制御部)
40 水素ガス供給部
42 水素ガス供給調節弁(水素ガス濃度制御部)
44 水素ガス供給指令部(水素ガス濃度制御部)
【要約】
【課題】設備の大型化及びコストの増大を抑えつつ可燃性ガスのもつエネルギーをガスエンジンによって効率よく回収することが可能な廃棄物処理方法が提供される。
【解決手段】廃棄物処理方法は、廃棄物をガス化炉10で熱分解・ガス化することにより可燃性ガスを生成することと、ガス化炉10またはそれよりも後段の高温運転設備に水蒸気を供給することと、可燃性ガスに含まれる不純物を除去するガス処理を行うことと、ガス処理が行われた後の可燃性ガスに空気を混合した混合ガスをガスエンジン20に供給することと、混合ガスにおける水素ガスの濃度を検出することと、検出される水素ガスの濃度が前記ガスエンジン内での爆発を生じさせるために最低限必要な水素ガスの濃度である下限水素ガス濃度を上回るように、供給される水蒸気の量を調節することと、を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5