(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は一実施形態の掃除ロボットを示す斜視図である。掃除ロボット1はバッテリー14により駆動輪29(いずれも
図2参照)を駆動して自走する平面視円形の本体筐体2を有している。本体筐体2の上面には集塵部30(
図2参照)を出し入れする際に開閉する蓋部3が設けられる。
【0012】
図2、
図3は掃除ロボット1の側面断面図及び底面図を示している。本体筐体2には底面から突出して水平な回転軸29aで回転する一対の駆動輪29が配される。駆動輪29の回転軸29aは本体筐体2の中心線C上に配置される。駆動輪29の両輪が同一方向に回転すると本体筐体2が進退し、逆方向に回転すると本体筐体2が中心線Cの回りに回転する。
【0013】
掃除を行う際に進行方向の前方となる本体筐体2の前部には吸込口6が下面に設けられる。吸込口6は本体筐体2の底面に凹設した凹部8の開放面によって床面Fに面して形成される。凹部8内には水平な回転軸で回転する回転ブラシ9が配され、凹部8の両側方には垂直な回転軸で回転するサイドブラシ10が配される。
【0014】
凹部8の前方にはローラー形状の前輪27が設けられる。これにより、吸込口6は前輪27と駆動輪29との間に配される。本体筐体2の後端には自在車輪から成る後輪26が設けられる。後述するように、本体筐体2は中心に配した駆動輪29に対して前後方向に重量が配分され、前輪27が床面Fから離れて回転ブラシ9、駆動輪29及び後輪26が床面Fに接地して掃除が行われる。このため、進路前方の塵埃やゴミを前輪27により遮ることなく吸込口6に導くことができる。前輪27は進路上に現れた段差に接地し、本体筐体2が段差を容易に乗り越えられるようになっている。
【0015】
前輪27の前方には床面Fを検知する床面検知センサ18が設けられる。両駆動輪29の前方には同様の床面検知センサ19が設けられる。下り階段等の段差が進路上に現れると床面検知センサ18の検知によって駆動輪29が停止される。また、床面検知センサ18が誤作動した際に床面検知センサ19の検知によって駆動輪29が停止される。
【0016】
本体筐体2の周面の後端にはバッテリー14の充電を行う充電端子4が設けられる。本体筐体2は自走して室内に設置される充電台40に帰還し、充電台40に設けた端子部41に充電端子4が接してバッテリー14を充電する。商用電源に接続される充電台40は通常、室内の側壁Sに沿って設置される。
【0017】
本体筐体2内には塵埃を集塵する集塵部30が配される。集塵部30は駆動輪29の回転軸29a上に配され、本体筐体2に設けた集塵室39内に収納される。集塵室39は四方の周面及び底面が覆われた隔離室から成り、本体筐体2内を仕切るように左右方向に延びて形成される。集塵室39の各壁面は長手方向に延びた前壁を除いてそれぞれ閉塞されている。集塵室39の前壁には凹部8に連通する第1吸気路11及び凹部8の上方に配して後述するモータユニット20に連通する第2吸気路12が導出される。
【0018】
集塵部30は
図4に示すように本体筐体2の蓋部3を開いて出し入れすることができる。集塵部30は有底筒状の集塵容器31の上面にフィルタ33を有する上部カバー32が取り付けられる。上部カバー32は可動の係止部32aにより集塵容器31に係止され、係止部32aの操作によって集塵容器31の上面を開閉する。これにより、集塵容器31に堆積した塵埃を廃棄することができる。
【0019】
集塵容器31の周面には先端に流入口34aを開口して第1吸気路11に連通する流入路34が導出される。集塵容器31内には流入路34に連続して屈曲により下方に気流を導く流入部34bが設けられる。上部カバー32の周面には先端に流出口35aを開口して第2吸気路12に連通する流出路35が導出される。
【0020】
流入口34a及び流出口35aの周囲には集塵室39の前壁に密接するパッキン(不図示)が設けられる。これにより、集塵部30を収納した集塵室39内が密閉される。流入口34aの開口面、流出口35aの開口面及び集塵室39の前壁は傾斜面に形成され、集塵部30の出し入れ時の摺動によるパッキンの劣化を防止することができる。
【0021】
本体筐体2内の集塵室39の後方の上部には制御基板15が配される。集塵室39の後方の下部には着脱自在のバッテリー14が配される。これにより、制御基板15及びバッテリー14は駆動輪29と後輪26との間に配される。制御基板15は掃除ロボット1の各部を制御する制御回路が設けられる。バッテリー14は充電端子4を介して充電台40から充電され、制御基板15、駆動輪29、回転ブラシ9、サイドブラシ10及び電動送風機22等の各部に電力を供給する。
【0022】
本体筐体2の前部にはモータユニット20が配置される。
図5、
図6、
図7、
図8はモータユニット20の斜視図、上面図、正面図及び側面図をそれぞれ示している。モータユニット20は樹脂成形品のハウジング21とハウジング21内に収納される電動送風機22とを備えている。電動送風機22はモータケース22aで覆われたターボファンにより形成される。
【0023】
電動送風機22のモータケース22aには軸方向の一端に吸気口(不図示)が開口し、周面の2箇所に排気口(不図示)が開口する。ハウジング21の前面にはモータケース22aの吸気口に対向して開口部23が設けられる。ハウジング21の電動送風機22の両側方にはモータケース22aの各排気口にそれぞれ連通する第1排気路24a及び第2排気路24bが設けられる。第1、第2排気路24a、24bは本体筐体2の上面に設けた排気口7(
図2参照)に連通する。
【0024】
このため、第1、第2排気路24a、24b及び第2吸気路12(
図2参照)は集塵部30と排気口7とを連通させる気流路を構成する。また、第1吸気路11(
図2参照)は吸込口6と集塵部30とを連通させる気流路を構成する。
【0025】
これにより、電動送風機22を含む気流路が集塵室39の前方に集約して本体筐体2の前部に配置され、気流路を短縮することができる。また、制御基板15及びバッテリー14が集塵室39の後方に集約して本体筐体2の後部に配置され、配線等を削減することができる。従って、本体筐体2の小型化を図ることができる。また、気流の流路が制御基板15から離れるため、気流が漏れた際に制御基板15への塵埃の付着を低減して制御回路の故障を低減することができる。
【0026】
また、重量の大きい電動送風機22及びバッテリー14を駆動輪29の回転軸29aの前後に分散して配置するので、本体筐体2の中心線Cを通る回転軸29aに対して前後方向にバランスして重量が配分される。この時、電動送風機22の重量が大きいため、制御基板15及びバッテリー14を駆動輪29の回転軸29aの後方に配置することによってより良好な重量バランスにすることができる。
【0027】
第1排気路24aには一対の電極28aを有したイオン発生装置28が配される。電極28aには交流波形またはインパルス波形から成る電圧が印加され、電極28aのコロナ放電により生成されたイオンが第1排気路24aに放出される。
【0028】
一方の電極28aには正電圧が印加され、コロナ放電による水素イオンが空気中の水分と結合して主としてH+(H2O)mから成るプラスイオンを発生する。他方の電極28aには負電圧が印加され、コロナ放電による酸素イオンが空気中の水分と結合して主としてO2−(H2O)nから成るマイナスイオンを発生する。ここで、m、nは任意の自然数である。H+(H2O)m及びO2−(H2O)nは空気中の浮遊菌や臭い成分の表面で凝集してこれらを取り囲む。
【0029】
そして、式(1)〜(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH2O2(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝集生成して浮遊菌や臭い成分を破壊する。ここで、m’、n’は任意の自然数である。従って、プラスイオン及びマイナスイオンを発生して排気口7(
図2参照)から送出することにより室内の除菌及び脱臭を行うことができる。
【0030】
H+(H2O)m+O2−(H2O)n→・OH+1/2O2+(m+n)H2O ・・・(1)
H+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2−(H2O)n+O2−(H2O)n’
→ 2・OH+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(2)
H+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2−(H2O)n+O2−(H2O)n’
→ H2O2+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(3)
また、第1排気路24aの下部には前面を開口した戻り口25が設けられる。戻り口25はハウジング21の前面に突出する突出部25aにより上方を覆われ、開口面を凹部8(
図2参照)の壁面に沿った曲面に形成される。これにより、戻り口25は凹部8の壁面に設けた孔部(不図示)を介して凹部8内に臨み、第1排気路24aを流通するイオンを含む気流の一部が吸気側に導かれる。
【0031】
上記構成の掃除ロボット1において、掃除運転が指示されると、電動送風機22、イオン発生装置28、駆動輪29、回転ブラシ9及びサイドブラシ10が駆動される。これにより、本体筐体2は回転ブラシ9、駆動輪29及び後輪26が平坦な床面Fに接地して所定の掃除領域を自走する。
【0032】
本体筐体2の前進によって床面F上の塵埃やゴミは前輪27の下方を通過し、吸込口6から吸い込まれる。この時、回転ブラシ9の回転によって床面F上の塵埃が掻き上げられて凹部8内に導かれる。また、サイドブラシ10の回転によって吸込口6の側方の塵埃が吸込口6に導かれる。
【0033】
吸込口6から吸い込まれた気流は矢印A1に示すように第1吸気路11を後方に流通し、流入口34aを介して集塵部30に流入する。集塵部30に流入した気流はフィルタ33により塵埃を捕集され、流出口35aを介して集塵部30から流出する。これにより、集塵容器31内に塵埃やゴミが集塵して堆積する。集塵部30から流出した気流は矢印A2に示すように第2吸気路12を前方に流通し、開口部23を介してモータユニット20の電動送風機22に流入する。
【0034】
電動送風機22を通過した気流は第1排気路24a及び第2排気路24bを流通し、第1排気路24aを流通する気流にはイオンが含まれる。そして、本体筐体2の上面に設けた排気口7から矢印A3に示すように上方後方に向けて斜め方向にイオンを含む気流が排気される。これにより、室内の掃除が行われるとともに、自走する本体筐体2の排気に含まれるイオンが室内に行き渡って室内の除菌や脱臭が行われる。この時、排気口7から上方に向けて排気するので、床面Fの塵埃の巻き上げを防止して室内の清浄度を向上することができる。
【0035】
第1排気路24aを流通する気流の一部は矢印A4に示すように戻り口25を介して凹部8に導かれる。このため、吸込口6から第1吸気路11に導かれる気流内にイオンが含まれる。これにより、集塵部30の集塵容器31やフィルタ33の除菌及び脱臭を行うことができる。
【0036】
また、本体筐体2が掃除領域の周縁に到達した場合や進路上の障害物に衝突すると、駆動輪29が停止される。そして、駆動輪29の両輪を互いに逆方向に回転し、本体筐体2が中心線Cを中心に回転して向きを変える。これにより、掃除領域全体に本体筐体2を自走させるとともに障害物を避けて自走させることができる。尚、駆動輪29の両輪を前進時に対して反転して本体筐体2を後退させてもよい。
【0037】
掃除が終了すると、本体筐体2は自走して充電台40に帰還する。これにより、充電端子4が端子部41に接してバッテリー14が充電される。
【0038】
また、設定によって本体筐体2の帰還状態でバッテリー14の充電中や充電終了後に電動送風機22及びイオン発生装置28を駆動することができる。これにより、排気口7から上方後方にイオンを含む気流が送出される。充電端子4が本体筐体2の後端に設けられるため、イオンを含む気流は充電台40の方向に流通して側壁Sに沿って上昇する。該気流は室内の天井壁及び対向する側壁に沿って流通する。従って、イオンが室内全体に行き渡り、除菌効果や脱臭効果を向上させることができる。
【0039】
本実施形態によると、前輪27と駆動輪29との間に吸込口6が配され、平坦な床面Fを自走する際に前輪27が床面Fから離れて駆動輪29及び後輪26が接地する。これにより、床面F上のゴミが前輪27により遮られず、掃除ロボット1の集塵能力を向上することができる。また、繊維状のゴミが前輪27に絡みつかないため、本体筐体2の走行異常を防止することができる。
【0040】
また、駆動輪29の回転軸29aを本体筐体2の中心線C上からずれて配置してもよいが、本実施形態のように回転軸29aを中心線C上に配置するとより望ましい。これにより、駆動輪29の両輪を逆方向に回転し、本体筐体2の向きを同じ位置で容易に変えることができる。この時、本実施形態のように本体筐体2が平面視円形に形成されると、向きを変える際に本体筐体2と障害物との衝突を防止することができる。
【0041】
また、掃除を行う際に回転ブラシ9が接地するので、床面Fから前輪27が離れた本体筐体2を回転ブラシ9、駆動輪29及び後輪26により安定して接地することができる。
【0042】
また、駆動輪29と後輪26との間にバッテリー14及び制御基板15を配置したので、床面Fから前輪27が離れた本体筐体2をバッテリー14及び制御基板15の重量により駆動輪29及び後輪26で安定して接地することができる。
<付記>
本発明は、床面に対峙する吸込口を底面に開口する本体筐体と、水平な回転軸を有して前記本体筐体を自走させる一対の駆動輪と、前記駆動輪に対して掃除時の進行方向の前方に配される前輪と、前記駆動輪に対して掃除時の進行方向の後方に配される後輪とを備え、前記前輪と前記駆動輪との間に前記吸込口が配されるとともに、平坦な床面を自走する際に前記前輪が床面から離れて前記駆動輪及び前記後輪が接地することを特徴としている。
【0043】
この構成によると、平坦な床面から前輪が離れて駆動輪及び後輪が接地し、一対の駆動輪の駆動によって本体筐体が掃除領域内を自走する。本体筐体の前進によって床面上の塵埃やゴミは前輪の下方を通過し、吸込口から吸い込まれる。塵埃等を含む気流は本体筐体内で塵埃等を除去された後、排気される。本体筐体の進路上に段差が現れると、前輪が段差に接地して駆動輪の回転によって本体筐体が段差を乗り越える。
【0044】
また本発明は、上記構成の掃除ロボットにおいて、前記回転軸が前記本体筐体の中心線上に配されることを特徴としている。この構成によると、駆動輪の両輪が逆方向に回転すると本体筐体が鉛直な中心線の回りに回転する。
【0045】
また本発明は、上記構成の掃除ロボットにおいて、前記吸込口に配される回転ブラシを備え、掃除を行う際に前記回転ブラシが接地することを特徴としている。この構成によると、回転ブラシ、駆動輪及び後輪が接地して本体筐体が自走し、回転ブラシの回転によって床面の塵埃が掻き上げられて吸込口に導かれる。
【0046】
また本発明は、上記構成の掃除ロボットにおいて、前記駆動輪と前記後輪との間に、各部に電力を供給するバッテリー及び各部を制御する制御基板を配置したことを特徴としている。この構成によると、前輪が床面から離れる本体筐体がバッテリー及び制御基板の重量により安定して接地される。