(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成例を示す断面図である。人物Pは、
図1の基板100に垂直な方向から発光装置10の光射出面を見ている。
図2は発光装置10の発光部140を拡大した図である。なお、本図において、接着層210および封止部材200は省略して描かれている。実施形態に係る発光装置10は、照明装置または表示装置である。
図1及び
図2は、発光装置10が照明装置である場合を示している。
【0013】
発光装置10は、透光性の基板100、複数の発光部140、透光性領域、および絶縁膜150を備える。発光部140は、基板100に形成され、透光性の第1電極110、光反射性の第2電極130および、第1電極110と第2電極130との間に位置する有機層120を有する。透光性領域は、複数の発光部140の間に位置する。絶縁膜150は、発光部140の端部142を画定する。封止部材200は、直接、又は接着層210を介して発光部140に固定されている。そして、基板100の厚さをdとし、第2電極130のうち端部142よりも発光部140の外側の部分の幅をWとしたとき、d/2≦Wが成り立つ。以下、詳細に説明する。
【0014】
なお、以下では、発光部140を基準に基板100が設けられた側を発光装置10のおもて面、封止部材200が設けられた側を発光装置10の裏面と呼ぶ。
【0015】
本実施形態において、発光装置10は照明装置であり、基板100、複数の発光部140、及び絶縁膜150を備えている。基板100は透光性の材料が用いられている。複数の発光部140は互いに離間しており、いずれも、第1電極110、有機層120、及び第2電極130を有している。第1電極110は透光性の電極であり、第2電極130は遮光性あるいは光反射性を有する電極である。第1電極110と第2電極130の少なくとも一部が重なっている。ただし第2電極130の形成される領域の一部は透光性の電極であってもよい。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。絶縁膜150は第1電極110の縁を覆っている。また、絶縁膜150の少なくとも一部は第2電極130で覆われていない。なお、第2電極130は、絶縁膜150の全体を覆っていても良い。
【0016】
そして、基板100に垂直な方向から見た場合において、発光装置10は、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106(透光性領域)を有している。第1領域102は第2電極130と重なる領域である。つまり、第1領域102は基板100に垂直な方向から見た場合において、第2電極130に覆われている領域である。第2電極130が反射性を有している場合、第1領域102は、発光装置10または基板100の表面から裏面、及び裏面から表面のそれぞれにおいて光を通さない領域である。第2領域104は、第2電極130に覆われていないが、絶縁膜150と重なる領域である。第3領域106は、第2電極130に覆われておらず、絶縁膜150とも重ならない領域であり、透光性領域である。そして、第2領域104の幅は第3領域106の幅よりも狭いため、発光装置10は、十分な光透過性を有している。なお、第2領域104及び第3領域106によって透光性領域が形成されていてもよい。
【0017】
基板100は、例えば矩形などの多角形や円形である。基板100が樹脂基板である場合、基板100は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを用いて形成されている。基板100の屈折率nは特に限定されないが、たとえば1.5以上である。また、基板100が樹脂基板である場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも一面(好ましくは両面)に、SiN
xやSiONなどの無機バリア膜が形成されているのが好ましい。また、基板100の少なくとも一面に反射防止膜等の光学フィルムを設けても良い。この場合、後述するように、無機バリア膜や光学フィルムを含んだ厚さを基板100の厚さdと定義することができる。
【0018】
基板100の一面には、発光部140が形成されている。発光部140は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。発光装置10が照明装置の場合、複数の発光部140はライン状に延在している。一方、発光装置10が表示装置の場合、複数の発光部140はマトリクスを構成するように配置されているか、セグメントを構成したり所定の形状を表示したりするように(例えばアイコンを表示するように)なっていてもよい。そして複数の発光部140は、画素別に形成されている。
【0019】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極の材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。本図において、基板100の上には、複数の線状の第1電極110が互いに平行に形成されている。このため、第2領域104及び第3領域106には第1電極110は位置していない。なお、第1電極110は光透過性を有する透明電極であるため、第2領域104及び第3領域106に位置しても良い。
【0020】
また、第1電極110には補助電極(不図示)が設けられていても良い。この場合、補助電極は、第1電極110よりも抵抗値が低い材料によって、第1電極110に接触して形成される。補助電極は例えば少なくとも一つの金属層を用いて形成される。また、補助電極は、絶縁膜150によって覆われている。このため、補助電極は有機層120及び第2電極130のいずれにも直接接続しない。補助電極を設けることにより第1電極110の見かけ上の抵抗値を低くすることができる。
【0021】
有機層120は発光層を有している。有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極110と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。なお、この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。
【0022】
第2電極130は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。この場合、第2電極130は遮光性を有している。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。ただし、第2電極130は、第1電極110の材料として例示した材料を用いて形成されていてもよい。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。本図に示す例において、発光装置10は複数の線状の第2電極130を有している。第2電極130は、第1電極110のそれぞれに対して設けられており、かつ第1電極110よりも幅が広くなっている。このため、基板100に垂直な方向から見た場合において、幅方向において第1電極110の全体が第2電極130によって重なっており、また覆われている。また、第1電極110は、第2電極130よりも幅が広く、基板100に垂直な方向から見た場合、幅方向において第2電極130の全体が第1電極110によって覆われていてもよい。さらに、第2電極130は、絶縁膜150の全体を覆っていても良いし、第2電極130は、第1電極110も絶縁膜150も形成されていない領域まで広がって設けられていても良い。
【0023】
第1電極110の縁は、絶縁膜150によって覆われている。絶縁膜150は例えばポリイミドなどの感光性の樹脂材料によって形成されており、第1電極110のうち発光部140となる部分を囲んでいる。第2電極130の幅方向の縁は、絶縁膜150上に位置している。言い換えると、基板100に垂直な方向から見た場合において、絶縁膜150の一部は第2電極130からはみ出ている。また本図に示す例において、有機層120は絶縁膜150の上及び側面にも形成されている。ただし、有機層120は隣り合う発光部140の間で分断されている。また、有機層120が透光性を有する場合は、隣り合う発光部140の間で分断されていなくても良い。
【0024】
そして上記したように、発光装置10は第1領域102、第2領域104、及び第3領域106を有している。第1領域102は第2電極130と重なる領域である。第2領域104は、第2電極130に覆われていないが、絶縁膜150と重なる領域である。本図に示す例において、有機層120は第2領域104にも形成されている。第3領域106は、第2電極130に覆われておらず、絶縁膜150とも重ならない領域である。本図に示す例において、有機層120は第3領域106の少なくとも一部には形成されていない。そして第2領域104の幅は、第3領域106の幅よりも狭い。また第3領域106の幅は第1領域102の幅よりも広くてもよいし、狭くてもよい。第1領域102の幅を1とした場合、第2領域104の幅は例えば0以上(又は0超)0.2以下であり、第3領域106の幅は例えば0.3以上2以下である。また第1領域102の幅は、例えば50μm以上500μm以下であり、第2領域104の幅は例えば0μm以上(又は0μm超)100μm以下であり、第3領域106の幅は例えば15μm以上1000μm以下である。
【0025】
また、発光装置10は、発光部140と、絶縁膜150と、透光性領域の基板100とを直接被覆する被覆膜を備えていても良い。被覆膜はたとえば接着層210または後述する封止膜である。
【0026】
封止部材200は、発光部140および絶縁膜150を覆い、直接、又は接着層210を介して発光部140に固定されている。発光部140と封止部材200との間には、空間(固体以外の層)は介在しない。封止部材200および接着層210は光透過性を有する。本図では、封止部材200が接着層210を介して発光部140に固定されている例を示している。封止部材200が接着層210を介して発光部140に固定されている場合、封止部材200は、例えば、ガラス、又はバリアフィルムなどの光透過性の薄い板(又は箔)によって形成されている。そして封止部材200の縁は接着剤等で基板100に固定されている。これにより、封止部材200と基板100の間には、発光部140を収容する空間が形成される。そして、この空間がエポキシなどの接着剤で充填されている。この場合、接着剤により接着層210が構成される。本図の例では、接着層210は第2電極130に接しており、また、封止部材200に接している。
【0027】
一方、封止部材200が直接、発光部140に固定されている場合、封止部材200はたとえば樹脂で基板100上を直接封止することで形成される。そして封止部材200は第2電極130に接する。この場合、封止部材200の厚さは特に限定されないが、例えば20μm以上300μm以下である。
【0028】
図3は、発光装置10の他の構成例を示す断面図である。本図は、上述した
図1に相当する。本図の例において、発光部140と接着層210の間には被覆膜として封止膜190が形成されている。また、基板100と第1電極110の間、発光部140と封止部材200の間、および、封止部材200の、発光部140と反対の側には、さらにバリア膜160が形成されている。そして発光部140は封止膜190およびバリア膜160によって覆われている。本図の例では、封止部材200は、バリア膜160、封止膜190、および接着層210を介して発光部140に固定されている。
【0029】
封止膜190は、基板100のうち、少なくとも発光部140が形成されている面に形成されており、発光部140を覆っている。本図の例において、封止膜190は第2電極130に接している。封止膜190は、例えば絶縁材料、さらに具体的には酸化アルミニウムや酸化チタンなどの無機材料によって形成される。また、封止膜190の厚さは、好ましくは300nm以下である。また封止膜190の厚さは、例えば50nm以上である。
【0030】
封止膜190は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成される。この場合、封止膜190の段差被覆性は高くなる。またこの場合、封止膜190は、複数の層を積層した多層構造を有していてもよい。この場合、第1の材料(例えば酸化アルミニウム)からなる第1封止層と、第2の材料(例えば酸化チタン)からなる第2封止層とを繰り返し積層した構造を有していてもよい。最下層は第1封止層及び第2封止層のいずれであってもよい。また、最上層も第1封止層及び第2封止層のいずれであってもよい。また、封止膜190は第1の材料と第2の材料の混在する単層であってもよい。
【0031】
ただし、封止膜190は、他の成膜法、例えばCVD法やスパッタリング法を用いて形成されていてもよい。この場合、封止膜190は、SiO
2、SiNなど絶縁膜によって形成されており、その膜厚は、例えば10nm以上1000nm以下である。
【0032】
バリア膜160は、たとえばALD法、CVD法やスパッタリング法を用いて形成される。バリア膜160は、Al
2O
3、SiO
2、SiN、Si
3N
4など絶縁膜によって形成されており、その膜厚は、例えば50nm以上5000nm以下である。また、バリア膜160は、複数の層を積層した多層構造を有していてもよい。多層構造にはたとえば有機平坦化層が含まれて良い。
【0033】
なお、本図の例において、複数のバリア膜160および封止膜190のうち一つ以上を省略しても良い。また、封止膜190上に接して封止部材200が形成される場合、封止膜190と封止部材200を合わせて封止部材とみなすことができる。この場合、封止部材は、直接、発光部140に固定されているといえる。
【0034】
図4は発光装置10の平面図である。なお、
図1は
図4のA−A断面に対応している。本図に示す例において、複数の発光部140は、基板100に垂直な方向から見て同一方向に延在している。また、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106は、いずれも線状かつ同一方向に延在している。そして本図及び
図1に示すように、第2領域104、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106が、この順に繰り返し並んでいる。なお、基板100に垂直な方向とは、基板100の主面に垂直な方向をいう。
【0035】
図5は、
図1の破線αで囲んだ領域を拡大した図である。基板100の裏面109は第2領域104に対向する側の面であり、基板100のおもて面108は第2領域104に対向する側と反対側の面である。本図中L
1の矢印は、発光部140から発せられた光が基板100のおもて面108に向かってとる光路の例を示す。また、L
2の矢印は、基板100のおもて面108に至った光のうち、屈折して発光装置10の外部に放出される光の経路を示す。そして、L
3の破線矢印は、基板100と空気の界面で反射されて発光装置10の裏面側に向かう光の経路を示す。
【0036】
ここで、基板100の屈折率をnとしたとき、入射角が臨界角θ
cよりも大きい場合、光は全反射する。なお、基板100の屈折率をnとして、臨界角θ
c=arcsin(1/n)が成り立つ。このように全反射した光は、基板100の表面が平坦で散乱が無ければ、おもて面と裏面のどちらにも取り出されずに端部から出射する。したがって、裏面の漏れ光にはならない。一方で、臨界角θ
cより小さい入射角の光は一部が出射光として取り出され、一部は同じ角度で正反射する。この正反射した光L
3が封止部材200または接着層210に到達すると、その一部が発光装置10の外に出射して、裏面漏れ光となってしまう。
【0037】
基板100の表面に対して正面から入射するとき、すなわち入射角θが0°のとき、入射光の強度に対する正反射の強度の比率Rはスネル則よりR=((n−1)/(n+1))
2である。たとえば基板100が屈折率n=1.5のガラスの場合、比率Rは約4%となる。この比率Rは、入射角θが大きくなるにつれフレネル則に従い大きくなる。このように、正反射する比率Rが数%であったとしても、裏面漏れ光への影響を考える必要がある。裏面109での正反射も同じく数%しかなく、おもて面108での正反射光の大部分はそのまま裏面漏れ光となるからである。
【0038】
本実施形態に係る発光装置10では、上述のとおり、基板100の厚さdと、第2電極130のうち端部142よりも発光部140の外側の部分(以下、「オーバーラップ領域」と呼ぶ)の幅Wとの間にd/2≦Wの関係が成り立つ。したがって、おもて面108での正反射光のおよそ30%以上が、オーバーラップ領域で再度おもて面108側に反射されることとなり、裏面漏れ光を低減することができる。
【0039】
ここでWは、基板100の表面に垂直かつ発光部140の延在方向に垂直な断面(
図4のA−A断面に相当)における、第2電極130のうち端部142よりも発光部140の外側の部分の幅である。また、幅Wは、発光部140の端部と第2電極130の端部との最短距離であるともいえる。一方、基板100の厚さdは、第1電極110の基板100に対向する面と、基板100または基板100と積層される層の気相に露出される面との距離と定義できる。すなわち、基板100の少なくとも一方の面にバリア層や光学フィルム等が積層されている場合には、そのバリア層や光学フィルムを含めた厚さを厚さdとみなすことができる。
【0040】
また、発光装置10においては、d×tan(arcsin(1/n))≦W<3d×tan(arcsin(1/n))が満たされることがより好ましい。
【0041】
図6は、発光部140から発せられた光の、基板100内での光路の例を示す図である。本図において、発光部140は簡略化して描いている。また、本図中、点線の矢印は基板100と空気との界面で全反射する光の光路を示している。そして、本図においてW
1で示す長さがd×tan(arcsin(1/n))である。すなわち、W
1=d×tanθ
cが成り立ち、臨界角θ
c=arcsin(1/n)であるため、W
1=d×tan(arcsin(1/n))が成り立つ。なお、W
1は、臨界角で基板100と空気の界面に入射する光が基板100を裏面109からおもて面108まで進む間に基板100の面内方向に進む距離であると言える。そして本図の様に、発光部140からの光は発光部140の端部から2×W
1、すなわち2d×tan(arcsin(1/n))の距離の範囲まで到達することが分かる。したがって、d×tan(arcsin(1/n))≦Wとすることで、正反射光のおよそ50%以上が、オーバーラップ領域で再度おもて面108側に反射されることとなり、裏面漏れ光をより低減することができる。一方で、W<3d×tan(arcsin(1/n))とすることにより、発光装置10の光透過性を損なうことがない。なおここでは、第1電極110や絶縁膜150の厚さは基板100の厚さdに対して十分小さいので無視できる。
【0042】
発光装置10においては、2d×tan(arcsin(1/n))≦W<3d×tan(arcsin(1/n))を満たすことがさらに好ましい。そうであれば、臨界角以下の正反射光のほぼ全てが、オーバーラップ領域で再度おもて面108側に反射されることとなり、裏面漏れ光をさらに低減することができる。一方で、発光装置10の光透過性を損なうことがない。
【0043】
なお、基板100の少なくとも一方の面にバリア層等が一層以上積層されている場合、それらを合わせて複数の層からなる基板ということができる。この場合、複数の層のうち最も厚い層の屈折率を、基板の屈折率nとすることができる。また、複数の層の平均値を基板の屈折率nとしても良い。複数の層のうち最も厚い層の屈折率をnとした場合と、複数の層の平均値をnとした場合のうち、少なくとも一方において、d×tan(arcsin(1/n))≦W<3d×tan(arcsin(1/n))を満たすことがさらに好ましく、2d×tan(arcsin(1/n))≦W<3d×tan(arcsin(1/n))を満たすことがより好ましい。
【0044】
なお、
図1および
図2では、一つの発光部140に対する左右のオーバーラップ領域の幅Wが同じ場合の例を示したが、一つの発光部140に対する複数のオーバーラップ領域の幅Wは少なくとも一部が異なる大きさであっても良い。また、
図1および
図2では、複数の発光部140について、オーバーラップ領域の幅Wが全て同じ場合の例を示したが、複数の発光部140のオーバーラップ領域の幅Wは少なくとも一部が異なる大きさであっても良い。幅Wが異なる複数のオーバーラップがある場合、最も大きな幅Wがd/2≦Wの関係を満たせばよい。また、最も小さな幅Wがd/2≦Wの関係を満たすことがより好ましい。
【0045】
基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの透光性を有する基板である。基板100は可撓性を有していてもよい。可撓性を有している場合、基板100の厚さdは、特に限定されないが、例えば10μm以上1000μm以下である。特に、基板100の厚さdは、100μm以下であることが好ましい。基板100の厚さdが100μm以下であれば、d/2≦Wを満たす場合でもオーバーラップ領域が大きくなりすぎず、発光装置10の良好な光透過性を確保することができる。
【0046】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100に第1電極110を、例えばスパッタリング法を用いて形成する。次いで、第1電極110を例えばフォトリソグラフィー法を利用して所定のパターンにする。なお、第1電極110を形成する前に、無機バリア膜をスパッタ法等により基板100の表面に形成しても良い。
【0047】
次いで、第1電極110の縁の上に絶縁膜150を形成する。例えば絶縁膜150が感光性の樹脂で形成されている場合、絶縁膜150は、露光及び現像工程を経ることにより、所定のパターンに形成される。次いで、有機層120及び第2電極130をこの順に形成する。有機層120が蒸着法で形成される層を含む場合、この層は、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。第2電極130も、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。その後、封止部材200を用いて発光部140を封止する。
【0048】
本実施形態によれば、基板100の厚さdと、第2電極130のうち端部142よりも発光部140の外側の部分の幅Wとの間に、d/2≦Wが成り立つ。したがって、基板100表面からの反射光を第2電極130でさらに基板100側に反射させ、裏面漏れ光を低減することができる。
【0049】
(変形例1)
図7は、変形例1に係る発光システムについての構成例を示す断面図である。この発光システムは、上述した発光装置10及び仕切部材20を有している。具体的には、発光システムは、透光性の仕切部材20、透光性の基板100、複数の発光部140、透光性領域、絶縁膜150、および被覆膜を備える。仕切部材20は、空間を外部から仕切る。基板100は、仕切部材20に配置されている。発光部140は、基板100の一方の面に形成されている。また、発光部140は、透光性の第1電極110、光反射性の第2電極130および、第1電極110と第2電極130との間に位置する有機層120を有する。透光性領域は、複数の発光部140の間に位置する。絶縁膜150は、発光部140の端部142を画定する。被覆膜は、発光部140と、絶縁膜150と、透光性領域の基板100とを直接被覆する。そして、基板100の厚さをdとし、第2電極130のうち端部142よりも発光部140の外側の部分の幅をWとしたとき、d/2≦Wが成り立つ。以下に詳しく説明する。
【0050】
仕切部材20は透光性を有しており、空間を外部から仕切っている。この空間は、例えば人が滞在する空間、又は商品等のものが配置されている空間である。発光装置10は、上記した実施形態と同様の構成を有している。本図に示す例において、基板100のうち発光部140が設けられている側の面(第1面100a)は、人が滞在する空間を向いている。
【0051】
仕切部材20は、例えば人が移動するための移動体30の窓、又はショーケースの窓であり、ガラス又は透光性の樹脂を用いて形成されている。移動体30は、例えば自動車、列車、又は飛行機である。移動体30が自動車の場合、仕切部材20はフロントガラス、リアガラス、又は座席の横に取り付けられた窓ガラス(例えばドアガラス)である。仕切部材20がリアガラスの場合、複数の発光部140は例えばブレーキランプとして機能する。また、仕切部材20がフロントガラス又はリアガラスの場合、複数の発光部140はターンランプであってもよい。また、仕切部材20は、会議室などの部屋の内部と外部を仕切る窓であってもよい。発光部140の点灯/非点灯により、会議室を利用しているか否かを識別できる発光システムでも良い。
【0052】
そして、発光装置10の第2面100bは、接着層300を介して仕切部材20の内面(第1面22)に固定されている。ここで、第2面100bは、第1面100aとは反対側の面であり、光取出側の面である。このため、発光装置10の発光部140から放射された光は、仕切部材20を介して上記した空間(例えば移動体30)の外部に放射される。一方、発光装置10は光透過性を有している。このため、人は、仕切部材20を介して空間の外部や内部を視認することができる。例えば移動体30の内側に位置する人は、仕切部材20を介して移動体30の外部を視認することができる。
【0053】
接着層300は発光装置10を仕切部材20に固定している。このような機能を果たす材料であれば、接着層300の材料はとくに限定はされない。本変形例において、基板100の第2面100bの一部(例えば互いに対向する2辺)が、接着層300を介して仕切部材20の第1面22に固定されている。したがって、基板100と第1面22との間にはエアギャップが形成されている。この様な場合でも、発光装置10において、基板100の厚さdと、オーバーラップ領域の幅Wとの間に、d/2≦Wが成り立つことにより、基板100表面からの反射光を第2電極130でさらに基板100側に反射させることができる。よって、裏面漏れ光を低減することができる。
【0054】
(変形例2)
図8は、変形例2に係る発光システムの構成例を示す断面図である。本変形例に係る発光システムは、発光装置10が仕切部材20のうち移動体30の外側の面(第2面24)に取り付けられている点を除いて、変形例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0055】
本変形例に係る発光装置10は、上記した実施形態と同じ構成を有している。ただし、発光装置10は、仕切部材20とは逆側の面が光取出面となっている。このようにするためには、発光装置10の第1面100a側の面を仕切部材20に対向させればよい。
【0056】
本変形例によっても、実施形態と同様に、裏面漏れ光を低減することができる。
【0057】
また、発光装置10からの光は仕切部材20を介さずに直接移動体30の外部に放射される。このため、変形例1と比較して、移動体30の外部にいる人は発光装置10からの光を認識しやすい。また、移動体30の外部すなわち仕切部材の20の第2面24側に発光装置10を取り付けているので、発光装置10の発光が仕切部材20で反射して移動体30の内部へ入ることを抑制できる。
【0058】
(変形例3)
図9は、変形例3に係る発光システムの構成例を示す断面図である。本変形例に係る発光システムは、固定部材310を用いて発光装置10を仕切部材20に固定している点を除いて、変形例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0059】
固定部材310は枠状の部材であり、下面が接着層300を用いて仕切部材20に固定されている。固定部材310の上部は固定部材310の内側に向けて折れ曲がっており、この折れ曲がっている部分で発光装置10の縁を押さえている。ただし、固定部材310の形状は本図に示す例に限定されない。
【0060】
本変形例において、発光装置10の第2面100bには、基板100に垂直な方向から見て発光部140を囲むように凸部101が設けられている。したがって、基板に垂直な方向から見て140と重なる領域において、基板100と第1面22との間にはエアギャップが形成されている。凸部101はたとえば樹脂材料により形成される。この様な場合でも、発光装置10において、基板100の厚さdと、オーバーラップ領域の幅Wとの間に、d/2≦Wが成り立つことにより、基板100表面からの反射光を第2電極130でさらに基板100側に反射させることができる。よって、裏面漏れ光を低減することができる。
【0061】
図10は、変形例3に係る発光システムの他の構成例を示す断面図である。本図に示すように、移動体30の外側に向けて凸になる方向に仕切部材20が湾曲している場合がある。このような場合において、平板上の発光装置10を仕切部材20の内面(第1面22)に直接固定することは難しい。しかし、固定部材310を用いると、このような場合でも発光装置10を仕切部材20の第1面22に固定することができる。なお、基板100には、
図9に示した凸部101が設けられていても良いし、設けられていなくても良い。
【0062】
このような方法で湾曲する仕切部材20と平板上の発光装置10とを固定した場合、基板100と第1面22との間にはエアギャップが形成される。この様な場合でも、発光装置10において、基板100の厚さdと、オーバーラップ領域の幅Wとの間に、d/2≦Wが成り立つことにより、基板100表面からの反射光を第2電極130でさらに基板100側に反射させることができる。よって、裏面漏れ光を低減することができる。
【0063】
(変形例4)
図11は、変形例4に係る発光システムの構成例を示す断面図である。本変形例に係る発光システムは、仕切部材20に複数の発光装置10が取り付けられている点を除いて、上記した変形例1〜3のいずれかと同様の構成である。なお、
図11では、
図9に対応する例を簡略化して示している。複数の発光装置10は、互いに同一の制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよいし、互いに異なる制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよい。
【0064】
本変形例によっても、実施形態と同様に、裏面漏れ光を低減することができる。
【0065】
(変形例5)
図12は、変形例5に係る発光システムの構成例を示す断面図である。本変形例に係る発光システムは、仕切部材20の構成及び発光装置10の位置を除いて、変形例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0066】
本変形例において、仕切部材20は、複数枚の透光部材21(例えばガラス板や樹脂板)を重ねた構成を有している。そして、発光装置10は、隣り合う透光部材21の間に挟まれることにより、仕切部材20に取り付けられている。
【0067】
本変形例において、発光装置10の第2面100bには、基板100に垂直な方向から見て発光部140を囲むように凸部101が設けられている。したがって、基板に垂直な方向から見て発光部140と重なる領域において、基板100と透光部材21の基板100に対向する面211との間にはエアギャップが形成されている。この様な場合でも、発光装置10において、基板100の厚さdと、オーバーラップ領域の幅Wとの間に、d/2≦Wが成り立つことにより、基板100表面からの反射光を第2電極130でさらに基板100側に反射させることができる。よって、裏面漏れ光を低減することができる。
【実施例】
【0068】
(実施例)
以下の通り
図3の様な発光装置を作製した。具体的にはまず、バリア膜を設けたポリイミドシートを基板として準備した。ここで、ポリイミドシートの屈折率は1.6、バリア膜を含む基板の厚さは20μmであった。次いで、基板上に発光部を形成した。オーバーラップ領域の幅Wは20μmとした。形成した発光部を封止膜で覆い、さらにバリア膜を形成した封止部材を接着剤で発光部に固定した。
【0069】
(比較例)
屈折率1.5、厚さ700μmのガラスを基板として用いた以外は実施例と同様にして発光装置を作製した。
【0070】
図13は、上記の実施例、及び比較例の発光装置について、観察角度と裏面漏れ光強度の関係を測定した結果を示す図である。本図において、裏面側で基板に垂直な方向から直視した場合を観察角度0°とし、その方向からの傾き角を観察角度として示している。なお、測定において、表面側の発光強度を実施例と比較例とで同一とした。
【0071】
本図の結果によれば、全ての観察角度において、比較例よりも実施例で裏面漏れ光の強度の低下が認められた。
【0072】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。