(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリープ制御部は、前記周辺ノードのそれぞれについて、前記配信情報を最後に受信してからの経過時間を求め、該経過時間が予め設定された時間閾値を超えた周辺ノードを、前記スリープ状態にあるものと認識することを特徴とする請求項4に記載の情報提供装置。
前記スリープ制御部は、スリープ状態に遷移する場合に、前記周辺ノードにスリープ通知パケットを送信し、前記周辺ノードから前記スリープ通知パケットを受信した場合に、該パケットの送信元の周辺ノードを、前記スリープ状態にあるものと認識することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の情報提供装置。
前記配信情報生成部は、前記利用端末に対する前記配信情報の配信に使用可能な通信路容量を推定し、推定された通信路容量の下で前記共有情報を復元可能となるように設定された符号化率によって、前記誤り訂正符号化を実施することを特徴とする請求項7に記載の情報提供装置。
前記配信情報生成部および前記スリープ制御部は、通信路で生じる受信誤りへの耐性を付与するための補正項を用いて、前記通信路容量および前記スリープ遷移確率を補正することを特徴とする請求項14に記載の情報提供装置。
前記配信情報生成部および前記スリープ制御部は、前記誤り訂正符号の訂正能力を考慮した補正項を用いて、前記通信路容量および前記スリープ遷移確率を補正することを特徴とする請求項14または請求項15に記載の情報提供装置。
前記スリープ制御部は、前記配信情報の配信を実行するウェイクアップ状態の継続時間が、予め設定された時間閾値を超えることを前記スリープ条件の一つとすることを特徴とする請求項4から請求項23までのいずれか1項に記載の情報提供装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1.1.全体構成]
図1に示す通信システムは、道路に沿って配置される複数の情報提供装置1と、車両に搭載され。情報提供装置1との無線通信により各種情報を取得する利用端末10とを備える。以下では情報提供装置1をノード、特に着目する情報提供装置1を自ノード、自ノードの通信範囲内に存在する他の情報提供装置1を自ノードも含めて周辺ノードともよぶ。
【0013】
通信システムでは、ノード間で送受信するパケットとして、情報を共有する際に使用する共有パケットPc、および自ノードがスリープ状態に入ることを他ノードに通知する際に使用するスリープ通知パケットPsがある。また、各ノードが利用端末10に対して情報を配信する際に使用する配信パケットP(Pij、Pjとも記載し、iは送信元ノードを識別する識別子、jは一連の情報を識別する識別子である)が存在する。なお、いずれのパケットPc,Ps,Pijも、送信元ノードを識別する情報が少なくとも含まれている。
【0014】
[1.2.利用端末]
利用端末10は、
図2に示すように、アンテナ11、無線通信部12、パケット格納部13、復号部14、処理部15を備える。
【0015】
アンテナ11は、情報提供装置1との通信に使用する所定周波数帯の電波を送受信する。
無線通信部12は、アンテナ11を介して情報提供装置1との間で、所定の通信規格に従った通信を実行する。ここでは、例えば、センサネットワークを主目的とする近距離無線通信規格の一つであるZigbee(登録商標)を用いる。
【0016】
パケット格納部13は、無線通信部12が受信したパケットを一時的に格納する。
復号部14は、パケットが誤り訂正符号によって符号化されている場合に、これを復号して、情報提供装置1から提供される配信情報を抽出する。
【0017】
処理部15は、復号部14により抽出された配信情報に基づいて各種処理を実行する。
なお、このような利用端末10は周知のものであるため、これ以上の詳細な説明については省略する。
【0018】
[1.3.情報提供装置]
情報提供装置1は、
図2に示すように、バッテリ監視部2、観測情報取得部3、スリープ制御部4、情報格納部5、誤り訂正符号化部6、無線通信部7、アンテナ8を備える。このうち、スリープ制御部4,情報格納部5,誤り訂正符号化部6,無線通信部7は、公知のコンピュータが所定のプログラムに従って実行する処理により実現される。
【0019】
[1.3.1.バッテリ監視部]
バッテリ監視部2は、当該情報提供装置1を駆動する図示しないバッテリの充電状態を表す電池残量Ebを検出してスリープ制御部4に出力する。なお、バッテリは、ソーラパネル等の充電装置によって適宜充電されるように構成されている。
【0020】
[1.3.2.観測情報取得部]
観測情報取得部3は、予め指定された各種情報を図示しないセンサ等を介して取得し、これを観測情報DKsとして情報格納部5や無線通信部7に出力する。
【0021】
[1.3.3.スリープ制御部]
スリープ制御部4は、無線通信部7からの要求RQに従い、バッテリ監視部2からの充電状態Eb、情報格納部5からのスリープノード数Ns等に基づいて自ノードをスリープ状態にすべきであるか否かを判断し、その判断結果を表すスリープフラグFsleep を設定し、必要に応じてスリープ通知パケットPsの送信を無線通信部7に指示する。
【0022】
スリープ制御部4が実行する処理の詳細を、
図3に示すフローチャートを用いて説明する。
無線通信部7からの要求RQに従って、本処理が起動すると、スリープ制御部4として機能するコンピュータは、S110にて、スリープフラグFsleep を、スリープ状態ではないことを示すオフ(OFF)に初期化する。
【0023】
続くS120では、乱数発生器を用いて所定範囲内(ここでは0〜99)の値を有する乱数Nrを生成する。
続くS130では、予め設定されたスリープ状態への遷移確率をPrs(0≦Prs<1)として、乱数Nrがスリープ遷移確率Prsを100倍した値より小さいか否かを判断する。乱数Nrがスリープ遷移確率Prsを100倍した値より小さい場合(Nr<Prs×100)、スリープ状態にすべきと判断してS160に移行する。一方、乱数Nrがスリープ遷移確率Prsを100倍した値以上である場合(Nr≧Prs×100)、S140に進む。
【0024】
S140では、バッテリ監視部2から電池残量Ebを取得する。
続くS150では、電池残量Ebが予め設定された電圧閾値Ethより小さいか否かを判断する。電池残量Ebが電圧閾値Ethより小さい場合(Eb<Eth)、スリープ状態に遷移すべきと判断してS160に進む。一方、電池残量Ebが電圧閾値Eth以上である場合(Eb≧Eth)、S170に進む。
【0025】
S160では、スリープフラグFsleep をスリープ状態であることを示すオン(ON)に設定して、本処理を終了する。
S170では、情報格納部5からスリープノード数Nsを取得する。
【0026】
続くS180では、スリープノード数Nsが予め設定された閾値Nthより小さいか否かを判断する。スリープノード数Nsが閾値Nthより小さい場合(Ns<Nth)、スリープ状態にすべきと判断し、S190にてスリープ時間TS1を設定して、S230に進む。一方、スリープノード数Nsが閾値Nth以上である場合(Ns≧Nth)、S200に進む。
【0027】
S200では、スリープ状態以外の状態、即ちウェイクアップ状態の継続時間の計時値である駆動時間Tonを取得する。
続くS210では、駆動時間Tonが予め設定された時間閾値Tthより大きいか否かを判断する。駆動時間Tonが時間閾値Tthより大きい場合(Ton>Tth)、スリープ状態にすべきと判断し、S220にてスリープ時間TS2を設定して、S230に進む。一方、駆動時間Tonが時間閾値Tth以下である場合(Ton≦Tth)、スリープ状態にする必要はないものとして、本処理を終了する。
【0028】
S230では、スリープフラグFsleep をスリープ状態であることを示すオンに設定する。
続くS240では、無線通信部7にスリープ通知パケットPsの送信を指示する。
【0029】
続くS250では、無線通信部7がスリープ通知パケットPsを送信した後に、先のS190またはS220で設定されたスリープ時間TS1またはTS2の間、無線通信部7を含む自ノードの機能を停止させて省電力化を図るスリープ処理を起動して、本処理を終了する。
【0030】
つまり、本処理では、スリープ遷移確率PrsでスリープフラグFsleep をオンに設定する他、電池残量Ebが少ない場合(Eb<Eth)、スリープノード数Nsが少ない場合(Ns<Nth)、駆動時間(ウェイクアップ状態の継続時間)Tonが長い場合(Ton>Tth)にもスリープフラグFsleep をオンに設定する。特に、スリープノード数Nsが少ない場合および駆動時間Tonが長い場合には、スリープ通知パケットPsを出力して、連続的なスリープ状態に遷移する。
【0031】
[1.3.4.情報格納部]
情報格納部5は、
図4に示すように、観測情報格納部51、格納処理部52、スリープノード数推定部53、更新処理部54を備える。
【0032】
観測情報格納部51は、読み書き自在な周知のメモリからなり、周辺ノード毎に、スリープ状況Fsl、最新パケット受信時刻Trs、観測情報DMを記憶する領域が少なくとも確保されている。ここでは、周辺ノードの数をM個として、周辺ノードを#1〜#Mで識別するものとする。スリープ状況Fsl
i(i=1〜M)は、周辺ノード#iがスリープ状態にあるか否かを表すフラグであり、最新パケット受信時刻Trs
i は、周辺ノード#iを送信元とする配信パケットPijを最後に受信した時刻を表す。但し、自ノードについては、スリープ状況Fslおよび最新パケット受信時刻Trsの領域は使用されないものとする。
【0033】
格納処理部52は、観測情報取得部3から取得した観測情報DKsおよび無線通信部7を介して自ノード以外の周辺ノードから取得した観測情報を、観測情報格納部51に格納する。
【0034】
格納処理部52が実行する処理の詳細を、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。本処理は、予め設定された一定期間毎に、他のノードと同時に起動する。
本処理が起動すると格納処理部52として機能するコンピュータは、S310にて、観測情報取得部3から自ノードの観測情報DKsを取得し、観測情報格納部51の自ノードの情報を格納するエリアに保存する。
【0035】
続くS320では、自ノードの観測情報DKsを載せた共有パケットPcの送信を指示することにより、自ノードの観測情報DKsを他ノード(自ノードを除く全ての周辺ノード)に配信する。
【0036】
続くS330では、本処理が起動してから予め設定された待機時間内に、無線通信部7を介して他ノードから受信した共有パケットPcに基づき、共有パケットPcに示された観測情報を、観測情報格納部51の送信元となった他ノードの情報を格納するエリアに保存する。
【0037】
続くS340では、誤り訂正符号化部6を起動して、本処理を終了する。
これにより、各ノードで取得された観測情報が、周辺ノード間で互いに共有されることになる。
【0038】
更新処理部54は、無線通信部7が受信するスリープ通知パケットPsおよび配信パケットPijを監視し、スリープ通知パケットPsの受信が確認された時には、そのスリープ通知パケットPsの送信元となった他ノードのスリープ状況Fsl
i を、スリープ状態であることを示すオンに設定する。また、配信パケットPijの受信が確認された時には、その配信パケットPijの送信元となった他ノードの最新パケット受信時刻Trs
i を更新すると共に、スリープ状況Fsl
i を、スリープ状態ではないことを示すオフに設定する。
【0039】
スリープノード数推定部53は、観測情報格納部51に格納された各周辺ノードのスリープ状況Fslおよび最新パケット受信時刻Trsに基づいて、スリープノード数Nsおよびスリープ率Csを算出する。
【0040】
スリープノード数推定部53が実行する処理の詳細を、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。本処理は、予め設定された一定周期または観測情報格納部51の内容が更新される毎に起動する。
【0041】
本処理が起動すると、スリープノード数推定部53として機能するコンピュータは、S410にて、周辺ノードを識別するパラメータiを1に、スリープノード数Nsを0に初期化する。
【0042】
続くS420では、周辺ノード#iの最新パケット受信時刻Tsr
i およびスリープ状況Fsl
i を観測情報格納部51から取得する。
続くS430では、スリープ状況Fsl
i がオンであるか否かを判断する。スリープ状況Fsl
i がオン(Fsl
i =ON)、即ち周辺ノード#iがスリープ状態にあれば、S460に移行し、スリープノード数Nsをインクリメント(Ns←Ns+1)してS470に進む。一方、スリープ状況Fsl
i がオフ(Fsl
i =OFF)であれば、S440に移行する。
【0043】
S440では、周辺ノード#iから配信パケットPijを最後に受信してからの経過時間Tintを算出する。具体的には、現在時刻から、最新パケット受信時刻Tsr
i を減算した結果を経過時間Tintとする。
【0044】
続くS450では、経過時間Tintが予め設定された時間閾値Ts以上であるか否かを判断する。経過時間Tintが時間閾値Ts以上であれば、周辺ノード#iはスリープ状態にあるものと認識してS460に進み、スリープノード数NsをインクリメントしてS470に進む。一方、経過時間Tintが時間閾値Ts未満であれば、S460をスキップしてS470に進む。
【0045】
S470では、パラメータiをインクリメント(i←i+1)する。
続くS480では、パラメータiが周辺ノード総数Mを超えているか否かを判断する。パラメータiが周辺ノード総数Mを超えていなければ、S420に戻って上述の処理を繰り返す。一方、パラメータiが周辺ノード総数Mを超えていれば、S490に進む。
【0046】
S490では、スリープノード数Nsを、周辺ノード総数Mで除算することでスリープ率Csを求め、スリープノード数Nsをスリープ制御部4に、スリープ率Csを誤り訂正符号化部6に出力して、本処理を終了する。
【0047】
なお、S420〜S460の処理は、パラメータiが自ノードを示す値の場合には実行されないものとする。
[1.3.5.誤り訂正符号化部]
誤り訂正符号化部6は、
図7に示すように、パラメータ格納部61、符号化率算出部62、符号化処理部63を備える。
【0048】
パラメータ格納部61は、不揮発性メモリからなり、通信路で生じる受信誤りへの耐性を付与するための補正項であるCεと、符号化処理部63で使用する符号化方式の誤り訂正能力を考慮して設定される補正項であるCcを記憶する。補正項Cε,Ccは、いずれも0より大きく1より小さい値に設定される。
【0049】
具体的には、補正項Cεは、補償したい通信路でのパケットロス確率を設定値とする。例えば、Cε=0.1(=10%)と設定すると、10%のパケットロスに耐え得る符号化が実現されることになる。また、補正項Ccは、システムで使用する符号と、理想的な符号との性能差を基に設定値を定める。例えば、10%のパケットが欠損する通信路で、受信失敗率10
-2を達成するための符号を構成することを考える。このとき、理想的な符号化率はR=0.9であるが、実運用で使用する符号化率はR=0.8として符号化する必要があると判明しているものとする。この場合、Cc=0.9−0.8=0.1とすることで、適切な符号化率を設定することができる。
【0050】
符号化率算出部62は、パラメータ格納部61に格納された補正項Cε,Cc、スリープ制御部4で使用されるパラメータであるスリープ遷移確率Prs、情報格納部5で生成されるスリープ率Csに基づいて、符号化処理部63での符号化に使用するパラメータである符号化率Rを算出する。
【0051】
符号化率算出部62が実行する処理の詳細を、
図8に示すフローチャートを用いて説明する。本処理は、スリープ制御部4から起動指令に従って起動する。
本処理が起動すると、符号化率算出部62として機能するコンピュータは、S510にて、情報格納部5からスリープ率Csを取得する。
【0052】
続くS520では、パラメータ格納部61から補正項Cε,Ccを取得する。
続くS530では、スリープ制御部4からスリープ遷移確率Prsを取得する。
続くS540では、周辺ノード全体の通信路容量Cを(1)式を用いて算出する。但し、Crs=Prsである。
【0053】
C=1−Crs−Cs−Cε−Cc (1)
続くS540では、通信路容量Cに基づいて符号化率Rを設定して、本処理を終了する。具体的には、符号化率Rの値は、配信パケットPijの構造(ヘッダ長やデータ長等)によって取り得る値が決まっているため、その取り得る値の中からR≦Cを満たす最大の値を選択する。なお、符号化率Rが低いほど誤り訂正能力は大きい。つまり、全ての周辺ノードがフル稼働し、かつ通信路での誤りが発生しない場合の通信路容量Cが1であり、自ノードはスリープ遷移確率Prs(=Crs)の割合でスリープ状態となること、稼働していない周辺ノードがスリープ率Csの割合で存在することを考慮し、更に、補正項Cε,Ccの分だけマージンをとると、通信路容量Cは(1)式で表されることになる。
【0054】
符号化処理部63は、情報格納部5から読み出した自ノードを含む全ての周辺ノード#1〜#Mの観測情報DMを連結した共有情報を生成し、この共有情報を、符号化率算出部62で設定された符号化率Rで誤り訂正符号化し、その結果を符号化情報Icdとして無線通信部7に提供する。
【0055】
[1.3.6.無線通信部]
無線通信部7は、情報共有処理、パケット監視処理、パケット配信処理を実行する。
情報共有処理では、情報格納部5の格納処理部52からの指示に従って、自ノードの観測情報DKsを共有パケットPcによって他ノードに配信すると共に、他ノードから共有パケットPcを受信すると、これを情報格納部5の格納処理部52に転送する処理を行う。
【0056】
パケット監視処理では、他ノードからスリープ通知パケットPsまたは配信パケットPijを受信すると、これを情報格納部5の更新処理部54に転送する。
パケット配信処理では、誤り訂正符号化部6で生成された符号化情報Icdを複数に分割して、分割した情報をパケット化することで配信パケットPijを生成し、これらを利用端末10に順次配信する。
【0057】
ここで、パケット配信処理の詳細を、
図9に示すフローチャートを用いて説明する。本処理は、無線通信部7が機能している期間に、繰り返し実行される。
本処理が起動すると、無線通信部7として機能するコンピュータは、S610にて、誤り訂正符号化部6から提供される符号化情報IcdをN(Nは1以上の整数)分割する。なお、N=1の場合は、符号化情報Icdを、そのまま一つのパケットとして扱うことを意味する。
【0058】
続くS620では、分割された情報(パケット)の識別に用いるパラメータjを1に初期化する。
続くS630では、スリープ制御部4を動作させスリープフラグFsleep を取得する。
【0059】
続くS640では、取得したスリープフラグFsleep がオンであるか否かを判断する。スリープフラグFsleep がオフであればS650に進み、先のS610にて分割されたj番目の分割情報にヘッダ等を付加した配信パケットPjを生成し、利用端末10に向けて送信してS660に進む。一方、スリープフラグFsleep がオンであれば、S650をスキップし、即ち配信パケットPjを送信することなくS660に進む。
【0060】
S660では、パラメータjをインクリメント(j←j+1)する。
続くS670では、パラメータjが分割数Nより大きいか否かを判断する。パラメータjが分割数N以下であればS530に戻って、上述の処理を繰り返す。一方、パラメータjが分割数Nより大きければ、本処理を一旦終了する。
【0061】
[1.4.動作]
このように構成された通信システムの動作概要を、
図10〜
図12を用いて説明する。
各ノードは、周期的に同じタイミングで起動し、観測情報を共有する処理を実行する。
【0062】
具体的には、各ノードは、起動して観測情報(
図11(a)参照)を取得すると、その観測情報を観測情報格納部51に記憶すると共に、その観測情報を共有パケットPcによって他ノードに配信する(
図10参照)。他ノードからの共有パケットPcを受信した各ノードは、共有パケットPcに含まれる観測情報を観測情報格納部51に記憶する。これにより、周辺ノード間で、互いの観測情報が共有されることになる(
図11(b)参照)。
【0063】
共有された観測情報(共有情報)は、その時々の周辺ノード全体の通信路容量Cに応じた符号化率Rにより誤り訂正符号化され、更にN分割されたものが配信パケットPijによって利用端末10に順次配信される(
図10、
図11(c)参照)。
【0064】
ノードがスリープ状態の時には、配信パケットPijが送信されず欠落する。また、各ノードは、スリープ状態への遷移を、それぞれ独立に判断し自律分散的な動作をするため、ノード毎に異なったパターンで配信パケットPijが欠落することになる(
図12(a)参照)。
【0065】
利用端末は、各ノードから一部欠落した情報を順次受信することになるが、それらを総合すると、一部重複する配信パケットPijも存在するが、通信路符号化定理に従い、R≦Cを満たすように設定されていることから、ほとんどの場合、全ての配信パケットを受信することになる(
図12(b)参照)。その結果、利用端末では、全ての共有情報、即ち各ノードで取得された全ての観測情報が取得されることになる。
【0066】
[1.5.効果]
以上説明したように、本実施形態の通信システムによれば、全てのノードが、情報配信を停止するスリープ状態に自律分散的に遷移するため、いずれかのノードに偏ることなく通信システム全体として消費電力を低減することができる。
【0067】
本実施形態では、周辺ノードが互いに共有した共有情報に基づき、利用端末10への配信情報を冗長化し、しかも、利用端末10への配信を特定のノードだけが実施するのではなく全ノードが実施している。このため、利用端末10は、あるノードとの通信環境が劣悪な場合でも、別のノードとの通信によって必要な情報を取得することができる。
【0068】
本実施形態では、配信情報の冗長化に誤り訂正符号を用い、その際に用いる符号化率Rを、その時々の周辺ノードの状態を考慮して推定した通信路容量Cを用いて、通信路符号化定理を満たすように設定している。このため、スリープ状態に遷移したノードによる未配信情報が発生しても、その影響を誤り訂正可能な範囲内に抑えることができ、信頼性の高い通信を実現することができる。
【0069】
本実施形態では、通信路容量Cを推定する際に、データ配信の未実施に関わるスリープ遷移確率Prs(=Crs)、周辺端末のスリープ率Csだけでなく、通信路で生ずる誤りや、使用する誤り訂正符号の訂正能力を加味した補正項Cε,Ccも用いている。このため通信システムの特徴や設置環境を反映した的確な通信路容量Cの推定、ひいては的確な符号化率Rを設定することができる。
【0070】
本実施形態では、自ノードをスリープ状態にすべきか否かを判断する際に、電池残量Eb、スリープノード数Ns、連続駆動時間Tonを考慮しているため、周辺ノード間で電池残量Ebが大きくばらつくこと、必要以上に多くのノードが配信情報の送信を実施すること等を抑制することができ、消費電力の削減および所望の通信品質の確保を効率良く実現することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、通信路容量Cを推定する際に、スリープ率Cs、補正項Cε,Ccを用いているが、これらの任意の一つまたは二つ、或いは全部を省略してもよい。
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0072】
前述した第1実施形態では、スリープ遷移確率Prsとして予め設定された固定値を用いている。これに対し、第2実施形態では、スリープ遷移確率Prsをその都度算出する点で第1実施形態とは相違する。
【0073】
[2.1.構成]
本実施形態の情報配信装置1aは、
図13に示すように、スリープ制御部4a、および誤り訂正符号化部6aが、第1実施形態におけるスリープ制御部4よび誤り訂正符号化部6とは異なっている。
【0074】
誤り訂正符号化部6aは、
図14に示すように、パラメータ格納部61に格納されている補正項Cε,Ccおよび符号化率算出部62aで設定した符号化率Rをスリープ制御部4aに提供するように構成されている。
【0075】
なお、符号化率算出部62aは、既出の(1)式からCrs(=Prs)を取り除いた(2)式を用いて通信路容量Cを算出し、この通信路容量Cを用いてR≦Cとなる符号化率Rを設定する。
【0076】
C=1−Cs−Cε−Cc (2)
スリープ制御部4aは、誤り訂正符号化部6aから提供される補正項Cε,Ccおよび符号化率Rに加え、情報格納部5からスリープ率Csを取得し、スリープ遷移確率Prsを(3)式に従って算出する以外は、第1実施形態のスリープ制御部4と同様に構成されている。
【0077】
Prs=1−R−Cs−Cε−Cc (3)
つまり、この算出されたスリープ遷移確率Prsは、
図3に示したフローチャートのS130の処理で使用されることになる。
【0078】
[2.2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0079】
即ち、本実施形態では、スリープ遷移確率Prsが固定値ではなく、その場の状況に応じた値に設定されるため、通信路容量Cの推定精度を向上させることができ、より的確な符号化率Rの設定を実現することができる。
【0080】
なお、本実施形態では、通信路容量Cおよびスリープ遷移確率Prsを算出する際に、スリープ率Cs、補正項Cε,Ccを用いているが、これらの任意の一つまたは二つ、或いは全部を省略してもよい。
【0081】
[3.第3実施形態]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0082】
前述した第1実施形態では、状況に応じて符号化率Rを可変設定している。これに対し、第3実施形態では、符号化率Rとして固定値を用い、その代わりにスリープ遷移確率Prsを可変設定する点で第1実施形態とは相違する。
【0083】
[3.1.構成]
本実施形態の情報配信装置1bは、
図15に示すように、スリープ制御部4b、および誤り訂正符号化部6bが、第1実施形態におけるスリープ制御部4よび誤り訂正符号化部6とは異なっている。
【0084】
誤り訂正符号化部6bは、
図16に示すように、符号化率算出部62の代わりに符号化率格納部64を備えている。符号化率格納部64は、不揮発性メモリからなり、符号化率Rが記憶されている。そして、パラメータ格納部61に格納されている補正項Cε,Ccおよび符号化率格納部64に格納されている符号化率Rをスリープ制御部4bに提供するように構成されている。
【0085】
スリープ制御部4bは、誤り訂正符号化部6bから提供される補正項Cε,Ccおよび符号化率Rに加え、情報格納部5からスリープ率Csを取得し、スリープ遷移確率Prsを第2実施形態と同様に上述の(3)式に従って算出する点、誤り訂正符号化部6bへのスリープ遷移確率Prsの提供を行わない点以外は、第1実施形態のスリープ制御部4と同様に構成されている。つまり、この算出されたスリープ遷移確率Prsは、
図3に示したフローチャートのS130の処理で使用されることになる。
【0086】
[3.2.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0087】
即ち、本実施形態では、符号化率Rが固定されている場合でも、各ノードのスリープ遷移確率Prsが、符号化率Rに見合った通信路容量Cが得られるように設定されるため、所望の通信品質を確保することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、スリープ遷移確率Prsを算出する際にスリープ率Cs、補正項Cε,Ccを用いているが、これらの任意の一つまたは二つ、或いは全部を省略してもよい。
【0089】
[4.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
【0090】
(1)上記実施形態では、情報提供装置1のスリープ制御部4、情報格納部5、誤り訂正符号化部6、無線通信部7の機能が、コンピュータが実行する処理によって実現されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。これら処理の一部または全部を、例えばロジック回路等のハードウェアにて実現してもよい。
【0091】
(2)上記実施形態では、自ノードをスリープ状態にすべきか否かの判断に、スリープ遷移確率Prs、電池残量Eb、スリープノード数Ns、駆動時間Tonを用いているが、いずれか一つまたはいずれか二つか三つを任意に組み合わせたものを用いてもよい。
【0092】
(3)上記実施形態における一つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を一つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【0093】
(4)上述した通信システム、情報提供装置の他、当該情報提供装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、情報提供方法など、種々の形態で実現することもできる。