(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主軸と、送り軸と、前記送り軸に取り付けられ前記主軸の位置を決めるための位置決め用サーボモータと、を備える工作機械の前記主軸の故障を検出するサーボ制御装置であって、
前記位置決め用サーボモータのフィードバック信号を取得するフィードバック取得部と、
取得した前記フィードバック信号を解析し、前記主軸の故障を検出する解析・検出部と、を備え、
前記解析・検出部は、前記フィードバック信号をフーリエ変換して所定の周波数範囲のスペクトルのみを得て、前記所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度が、所定の第1のしきい値を超えた場合に、前記主軸に故障が生じたと判断するものであり、
前記所定の周波数範囲は、前記工作機械、前記工作機械により行われる作業の内容、前記サーボモータの特性、及び、前記主軸の故障の場合に生じる振動の周波数に応じて調整され、
前記所定の第1しきい値は、前記工作機械、前記工作機械により行われる作業の内容、及び、前記サーボモータの特性に応じて調整され、
前記解析・検出部は、前記位置決め用サーボモータの動作状態に基づいて前記フィードバック信号を解析し、前記主軸の故障を検出するタイミングを決定するサーボ制御装置。
コンピュータを、主軸と、送り軸と、前記送り軸に取り付けられ前記主軸の位置を決めるための位置決め用サーボモータと、を備える工作機械の前記主軸の故障を検出するサーボ制御装置として動作させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、
前記位置決め用サーボモータのフィードバック信号を取得するフィードバック取得手順と、
取得した前記フィードバック信号を解析し、前記主軸の故障を検出する解析・検出手順と、を実行させ、
前記解析・検出手順では、前記フィードバック信号をフーリエ変換して所定の周波数範囲のスペクトルのみを得て、前記所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度が、所定の第1のしきい値を超えた場合に、前記主軸に故障が生じたと判断し、
前記所定の周波数範囲は、前記工作機械、前記工作機械により行われる作業の内容、前記サーボモータの特性、及び、前記主軸の故障の場合に生じる振動の周波数に応じて調整され、
前記所定の第1しきい値は、前記工作機械、前記工作機械により行われる作業の内容、及び、前記サーボモータの特性に応じて調整され、
前記解析・検出手順では、前記位置決め用サーボモータの動作状態に基づいて前記フィードバック信号を解析し、前記主軸の故障を検出するタイミングを決定するコンピュータプログラム。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械が稼働中に、その主軸故障が発生すると、加工対象であるワークに対する加工精度が低下し、不良ワークを発生させる可能性がある。
ここで、「主軸故障」とは、主軸の各部の破損・摩耗・変形、及び、主軸の各部がその本来の機能を発揮できない状態になることを言い、例えば、主軸のベアリング等が破損する場合等が挙げられる。「主軸故障」には、主軸に付随する(取り付けられている)部品等の破損・摩耗・変形、及び、当該部品がその機能を発揮できない状態になること等も含めてよい。
【0003】
このように、主軸故障に起因するワークの加工精度の低下等を回避する一手法として、主軸故障を検出する装置を採用することが考えられる。
例えば主軸のベアリング(bearing)等が破損した場合、主軸のスラスト(thrust)方向とラジアル(radial)方向に、ベアリングを構成する球(鋼球)等に応じた特定の周波数の振動が発生することが知られている。そこで、AE(Acoustic Emission)センサや加速度センサを主軸に取り付けて、それらのセンサ出力を解析して異常を検出する装置を構成することが考えられる。
【0004】
このように、センサを主軸に取り付けて、そのセンサ出力を解析する装置を利用する場合の工作機械において、異常を検出する構成の構成図が
図4に示されている。
まず、
図4に示すように、主軸10に、センサ12a、12bが取り付けられる。ここで、センサ12aは、例えばAEセンサであり、センサ12bは、例えば加速度センサとしてよい。これらセンサ12a、12bの出力信号は増幅器14で増幅されて解析装置16に供給される。解析装置16は、例えばコンピュータであり、センサ12a、12bの出力信号を解析して、異常が発生していると判断する場合は、故障検出信号を外部に出力する。解析装置16であるコンピュータのプログラムが、所定のアルゴリズムで、センサ12a、12bの出力信号の解析を実行し、異常が発生しているか否か判断する。また、このような解析装置16の原理や、解析装置16等の装置を用いて主軸故障を検出する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
一方、主軸モータの電流値等から負荷変動を検出して、工作機械の各部の故障を検出する方法が特許文献2に開示されている。同文献に開示されている方法は、負荷変動、特に工具の破損検出を、負荷変動に基づき行うことを主たる目的としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、新たなセンサ12を利用する特許文献1の技術では、新たなセンサ12や解析装置16を追加する必要があり、装置構成が複雑化する。さらに、これらセンサ12や解析装置16のための設置スペースが必要となる。
【0008】
また、モータの電流値から負荷変動を検出する特許文献2の技術では、負荷に関連する現象を検出することはできるが、ベアリングの破損等の主軸故障を検出することは困難である。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、別途外部センサや故障解析装置等を設けることなく既存のサーボ制御装置を利用して、工作機械の主軸故障を検出することが可能な仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るサーボ制御装置(例えば、後述のサーボ制御装置22)は、主軸と、送り軸と、前記送り軸に取り付けられ前記主軸の位置を決めるための位置決め用サーボモータ(例えば、後述のサーボモータ20)と、を備える工作機械の前記主軸の故障を検出するサーボ制御装置であって、前記位置決め用サーボモータのフィードバック信号を取得するフィードバック取得部(例えば、後述のフィードバック取得部222)と、取得した前記フィードバック信号を解析し、前記主軸の故障を検出する解析・検出部(例えば、後述の解析・検出部226)と、を備える。
【0011】
(1)の前記フィードバック信号は、前記位置決め用サーボモータの電流、速度、及び、位置のうち、いずれか1種以上の信号でもよい。
【0012】
(1)の前記解析・検出部は、前記位置決め用サーボモータの動作状態、前記主軸の動作状態、及び、上位の制御装置からの開始信号のうち、いずれかに基づいて検出開始のタイミングを決定してもよい。
【0013】
(1)の前記解析・検出部は、前記フィードバック信号をフーリエ変換して所定の周波数範囲のスペクトルを得、前記所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度が、所定の第1のしきい値を超えた場合に、前記主軸に故障が生じたと判断してもよい。
【0014】
(1)の前記解析・検出部は、前記フィードバック信号をフーリエ変換して所定の周波数範囲のスペクトルを得るものであり、且つ、前記所定の周波数範囲のスペクトルの初期の信号強度を記憶する記憶部(例えば、後述する記憶部)、を備え、前記所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度と、前記記憶部に記憶された所定の周波数範囲のスペクトルの初期の信号強度との差が、所定の第2のしきい値を超えた場合に、前記主軸に故障が生じたと判断してもよい。
【0015】
(1)の前記解析・検出部が検出した前記主軸の故障を外部に通知する通知部(例えば、後述の通知部)をさらに備えてもよい。
【0016】
(1)の前記解析・検出部が前記主軸の故障を検出した場合に、故障検出信号(例えば、後述の故障検出信号)を外部に出力する通知部をさらに備えてもよい。
【0017】
(1)の前記解析・検出部が前記主軸の故障を検出した場合に、前記主軸をワークから退避させる指令を出力する退避部(例えば、後述する退避部)をさらに備えてもよい。
【0018】
(2)本発明に係る主軸故障検出方法は、主軸と、送り軸と、前記送り軸に取り付けられ前記主軸の位置を決めるための位置決め用サーボモータと、を備える工作機械の前記主軸の故障を検出する方法であって、前記位置決め用サーボモータのフィードバック信号を取得するフィードバック取得工程と、取得した前記フィードバック信号を解析し、前記主軸の故障を検出する解析・検出工程と、を含む。
【0019】
(3)本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、主軸と、送り軸と、前記送り軸に取り付けられ前記主軸の位置を決めるための位置決め用サーボモータと、を備える工作機械の前記主軸の故障を検出するサーボ制御装置として動作させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、前記位置決め用サーボモータのフィードバック信号を取得するフィードバック取得手順と、取得した前記フィードバック信号を解析し、前記主軸の故障を検出する解析・検出手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、別途外部センサや故障解析装置等を設けることなく既存のサーボ制御装置を利用して、工作機械の主軸障を検出することが可能な仕組みを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
[第1.本実施形態におけるモータ制御装置の位置づけ]
図1には、本実施形態に係るサーボ制御装置22を用いて工作機械の主軸故障を検出する場合の構成図が示されている。
工作機械の主軸10は、ベアリング11によって軸支されており、主軸10の軸を中心として回転可能である。さらに、本実施形態に係る工作機械は、主軸10の位置決め用のサーボモータ20を備えており、このサーボモータ20を回転させることによって、送り軸21を駆動し、主軸10の位置を決めることができる。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る工作機械は、このサーボ制御装置22を用いてサーボモータ20を制御する。また、サーボ制御装置22が出力する制御出力は、増幅器24によって増幅されてから、サーボモータ20に対して出力される。また、サーボモータ20から、フィードバック信号が、サーボ制御装置22に対して出力されている(
図1参照)。
【0024】
本実施形態において特徴的なことは、サーボ制御装置22が、サーボモータ20から得られるフィードバック信号を解析することによって、主軸故障を検出していることである。このような構成によって、従来技術のように、別途センサや解析装置を備えさせる必要がなく、より簡易な構成で、主軸故障を検出することができる。
例えば、このような構成によって、サーボ制御装置22は、主軸故障時に生じるスラスト方向の振動を、同方向の位置決め用サーボモータ20のフィードバック信号を解析することができる。そして、係る解析の結果、サーボ制御装置22は、スラスト方向の振動の信号強度が所定のしきい値より大きい場合に、主軸故障が発生したと判断し、外部に故障検出信号を出力することができる。
【0025】
また、サーボ制御装置22には、主軸状態の情報や、解析開始を示す信号等が外部から供給されているが、これらを利用する動作は、主軸故障の解析・検出動作の説明において後に詳述する。
なお、サーボ制御装置22は、請求の範囲のサーボ制御装置の好適な一例に相当する。また、サーボモータ20は、請求の範囲の位置決め用サーボモータの好適な一例に相当する。
【0026】
[第2.サーボ制御装置22の構成・動作]
図2には、本実施形態において特徴的な構成であるサーボ制御装置22の構成図が示されている。サーボ制御装置22は、例えばコンピュータで構成することが好ましく、
図2に示す各部も、コンピュータのハードウェア(CPUや、外部とのインターフェース)やプログラム(サーボ制御装置22の各機能を実現するプログラム)から構成することが好ましい。
【0027】
図2に示すように、サーボ制御装置22は、フィードバック取得部222と、サーボモータ制御部224と、解析・検出部226と、退避部228とを備えている。また、フィードバック取得部222と、解析・検出部226との動作を表すフローチャートが
図3に示されている。以下、
図2、
図3に基づき、サーボ制御装置22の各部の構成・動作を説明する。
【0028】
[2−1.フィードバック取得部]
フィードバック取得部222は、サーボモータ20から供給されるフィードバック信号を受信するインターフェースであり、コンピュータのI/Oインターフェースを利用することも好適である。また、フィードバック取得部222は、サーボモータ20から出力されるフィードバック信号がアナログ信号である場合、これをデジタル信号に変換するAD変換機能を備えさせてもよい。フィードバック取得部222はこのようにして取得したフィードバック信号を,解析・検出部226に供給する。
サーボモータ20が出力するフィードバック信号は、サーボモータ20の電流値、速度、又は、位置のいずれか1種以上の信号を利用することができる。これらの信号が、サーボモータ20の動作を表す信号であるので、いずれかの信号を解析すれば、主軸故障をより正確に検出することができると考えられる。フィードバック取得部222は、これらの信号を、必要に応じてデジタル信号に変換してから解析・検出部226に供給する。このフィードバック取得部222によるフィードバック信号の取得動作は、
図3の工程S3−1に該当する。
【0029】
フィードバック取得部222は、上述したようにI/Oインターフェースや、AD変換手段等のハードウェアにより構成されるが、これらI/OインターフェースやAD変換手段等を制御するプログラムと、このプログラムを実行するコンピュータのCPUとから構成されてもよい。
なお、フィードバック取得部222は、請求の範囲のフィードバック取得部の好適な一例に相当する。
【0030】
[2−2.サーボモータ制御部]
サーボモータ制御部224は、図示しない外部の上位制御装置からの指令に従ってサーボモータ20の制御信号を出力する。
図1の増幅器24は、制御信号をサーボモータ20を駆動できる電力にまで増幅し、増幅した制御信号をサーボモータ20に印加する。このサーボモータ制御部224は、外部に制御信号を出力するインターフェースと、上位制御装置からの指令に基づき制御信号を作るプログラムと、このプログラムを実行するコンピュータのCPUと、から構成される。
【0031】
[2−3.解析・検出部]
解析・検出部226は、フィードバック取得部222が取得したフィードバック信号を解析し、主軸故障を検出する。本文では、この処理を解析・検出処理と呼ぶ。
この解析・検出部226は、まず、解析・検出処理を開始する条件が成立しているか否かを判断する。この判断処理は、
図3の工程S3−2に該当する。
この工程S3−2における判断処理においては、解析・検出部226は、次のいずれかの状態に基づき、処理を開始する条件が成立しているか否かを判断する。
【0032】
(a)サーボモータ20の動作状態
サーボモータ20が動作状態となった場合に解析・検出の処理を開始しようとするものである。サーボモータ20が動作状態であるか否かは、フィードバック信号を調べれば知ることができる。
(b)主軸の動作状態(
図2中、「主軸状態」で表されている)
主軸10が動作状態になった場合に解析・検出の処理を開始しようとするものである。主軸10が動作状態であるか否かは、種々の方法で知ることができる。例えば、上位の制御装置(数値制御装置等)からの信号で、主軸10が動作状態か否かを知ることも好適である。
(c)上位制御装置からの解析開始を表す信号の状態(
図2中、「解析開始」で表されている)
外部からの解析開始の信号によって、解析・検出の処理の開始を行おうとするものである。上位制御装置は、数値制御装置等であることが好ましいが、操作者が操作する種々のコンピュータや端末であってもよい。
【0033】
本実施形態においては、これら3種の条件(a)(b)(c)のうち、いずれかの条件が成立した場合に、解析・検出処理を開始する。すなわち、これらの条件に基づき、フィードバック信号を解析し、主軸の故障を検出するタイミングを決定している。しかし、工作機械の用途や加工対象によっては、3種ではなく、いずれか1個の条件(例えば、(a)サーボモータ20の動作状態)のみを調べて判断してもよい。また例えば、3種以外の他の条件を参照して解析・検出の処理を開始してもよい。
このような判断の結果、処理を開始するいずれか1個以上の条件が成立していると判断される場合は、工程S3−3に移行し、解析を開始する。一方、どの条件も成立していない場合は、解析処理は開始せずに処理を終了する。
解析・検出処理を開始するいずれかの条件が成立している場合は、工程S3−3において、解析・検出部226は、フィードバック信号をフーリエ変換して、周波数領域の信号に変換する。
【0034】
次に、
図3の工程S3−4において、解析・検出部226は、周波数領域に変換した後の信号から、所定の周波数範囲のスペクトルを取り出し、その信号強度を検査する。
主軸故障が生じた場合には、上述したように、主軸10の振動等が生じる場合があるので、サーボモータ20の電流値等のフィードバック信号から、この振動の成分を取り出して検査すれば、主軸10の故障を効率的に検出することができる。この振動はある特定の周波数である場合が多いことが知られている。したがって、周波数領域の信号に変換された信号から、所定の周波数範囲のスペクトルを取り出して、その信号強度を検査すれば、当該特定の周波数の振動が生じているか否かを知ることができる。
例えば、所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度が所定の第1のしきい値を超えている場合は、特定の周波数の振動が発生していると判断して、工程S3−5に移行する。すなわち、解析・検出部226は、主軸故障が検出されたと判断し、故障検出信号を出力するために工程S3−5に移行する。
【0035】
工程S3−5においては、この故障検出信号が出力される。この故障検出信号は、後述する退避部228に供給されるとともに、外部の上位制御装置や各種の検査装置に供給されてよい。これによって、主軸故障に対する処理を迅速に行うことができる。一般的には、主軸故障が発生した旨の警告を発し、操作者に知らせること等が好適である。また、工作機械を停止させて、部品の交換等を促すメッセージを出力することや、警告ランプを点灯させること等の処理を行うことも好ましい。
一方、工程S3−4における検査の結果、信号強度が所定の第1のしきい値を超えていない場合は、故障検出信号を出力せずにそのまま処理が終了する。
【0036】
上述したように、ベアリングの故障のような主軸故障の場合、フィードバック信号中に通常のサーボモータ20の動作とは別の特定の周波数の信号(振動)が表れる。本実施形態においては、この信号を検出するために、フーリエ変換して、特定の周波数の信号を検知しやすいように、所定の周波数範囲のスペクトルのみを取り出したものである。そのスペクトルの信号強度を調べれば、上記特定の周波数の信号(振動)が発生しているか否かを容易に判断することができ、以て、効率的に主軸故障の検出を行うことができる。
どのような周波数範囲を取り出すかは、各工作機械や、用いるサーボモータ20によって異なるので、実際の工作機械及び作業の内容、サーボモータ20の特性、故障の場合に生じる振動の周波数等に合わせて調整することが好ましい。また、上述した所定の第1のしきい値も、実際の工作機械及び作業の内容、サーボモータ20の特性等に合わせて調整することが好ましい。なお、解析・検出部226は、請求の範囲の解析・検出部の好適な一例に相当する。
【0037】
[故障検出判断の他の例(工程S3−4の他の処理の例)]
上記実施形態では、所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度が、所定のしきい値より大きい場合に主軸故障と判断した(上記工程S3−4)。
しかし、信号強度の値に大きな変化が生じた場合に、主軸故障と判断することも好適である。このような処理を実行するためには、例えば、現在の信号強度を、初期の信号強度と比較して、その差が所定の第2のしきい値より大きい場合に主軸故障と判断することも好適である。このような処理を実行するためには、初期の信号強度を所定の記憶部に記憶しておき、検出された信号強度を逐次その初期の信号強度と比較すればよい。
【0038】
したがって、このような処理を実行する場合は、上記説明した工程S3−4は、以下のような処理となる。
・最初に本工程S3−4を処理する場合は、所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度を所定の記憶部に記憶する。ここで記憶した信号強度が、上で説明した「初期の信号強度」となる。ここで、最初とは、本サーボ制御装置22の電源投入後(又はリセット後)の最初という意味であるが、操作者が適宜リセット等を行い、サーボ制御装置22を任意に「最初」の状態に設定してもよい。
・2回目以降に本工程S3−4を処理する場合は、所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度を、所定の記憶部に記憶されている「初期の信号強度」と比較し、その差を求める。この差が所定の第2のしきい値より大きい場合、すなわち、現在の信号強度が、初期の信号強度に第2の所定のしきい値を加算した値より大きい場合は、工程S3−5に移行し、故障検出信号を出力する処理を実行する。一方、この差が所定の第2のしきい値より大きくない場合は、故障検出信号を出力せずに処理を終了する。
このような処理によれば、「初期の信号強度」と比べた「現在の信号強度」の変化量に応じて主軸故障を検出しているので、突発的に生じた主軸故障でも効率的に検出することができる。
【0039】
解析・検出部226は、これまで説明したような処理を司るプログラムと、このプログラムを実行するCPUと、から構成される。また、上述したような初期の信号強度を記憶する処理を実行する場合は、解析・検出部226は当該初期の信号強度を記憶する記憶部も備えている。当該記憶部は、プログラムを格納しておく記憶部と共用してもよいし、個別の記憶部を備えさせてもよい。なお、本実施形態において、各種プログラムや「初期の信号強度」を記憶するために用いられる記憶部としては、半導体記憶装置や、磁気的・光学的記憶装置等が利用可能である。
また、解析・検出部226は、外部に故障検出信号を出力するための所定のインターフェース(ハードウェア)を備えているが、当該インターフェースは、コンピュータの一般的なI/Oインターフェースを利用してよい。このインターフェースは、特許請求の範囲の通知部の好適な一例に相当し、例えば上位制御装置へ当該インターフェースから故障検出信号を出力してよい。
【0040】
また、サーボ制御装置22は、故障検出信号に応じて、主軸故障を外部(操作者を含む)に知らせるためのアラーム出力手段や、警告ランプを備えていてもよい。これらアラーム出力手段や、警告ランプも、特許請求の範囲の通知部の好適な一例に相当する。
【0041】
[2−4.退避部]
解析・検出部226が出力する故障検出信号は、退避部228にも供給されている。退避部228は、故障検出信号によって、主軸故障が生じたことが知らされると、主軸10をワークから退避させるような指令を出力する。この指令は、サーボモータ制御部224に供給され、サーボモータ制御部224はこの指令に基づき、サーボモータ20等を制御して主軸10をワークから退避させる。
【0042】
このような動作によって、主軸故障が検出された場合に、迅速に主軸10をワークから退避させることができるので、主軸故障のさらなる悪化を食い止めることが期待される。
この退避部は、退避の指令を発するためのプログラムと、そのプログラムを実行するコンピュータのCPUと、から構成される。なお、退避部228は、請求の範囲の退避部の好適な一例に相当する。
【0043】
[上位制御装置による主軸10の退避処理]
上の説明では、退避部228が、主軸10をワークから退避させるための指令を発するように構成したが、外部の上位制御装置から退避の指令を出すように構成してもよい。この場合、外部の上位制御装置は、サーボ制御装置22からの故障検出信号を受信すると、それに対応して主軸10をワークから退避させるための指令を発する退避部を備える構成とすることが好適である。この指令を受信したサーボモータ制御部224が、指令にしたがって主軸10をワークから退避させる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、サーボ制御装置22がフィードバック信号に基づき主軸故障を検知したので、外部センサや、別体の故障解析装置を必要とせずに主軸故障を効率的に検知することができる。
なお、本実施形態のサーボ制御装置22は、コンピュータで構成してよい。サーボ制御装置22の各部は、上記各部の機能を実現するプログラムと、これらプログラムを実行するCPUと、必要なハードウェアから構成することができる。この場合、これらプログラムは、請求の範囲のコンピュータプログラムの好適な一例に相当する。
【0045】
[第3.変形例]
(1)上記実施形態では、フィードバック信号として、サーボモータ20の電流、速度、又は位置を表す信号を利用したが、サーボモータ20の動作を表す信号であれば他の信号をフィードバック信号として利用してもよい。また、「速度」は、角速度でもよいし、回転数(rpm等)でもよい。また、「位置」は、回転角度でもよいし、回転量(角度)であってもよい。
また、電流、速度、又は位置のうち、いずれか1種の信号だけでもよいし、2種以上の信号を利用してもよい。2種以上の信号をフィードバック信号として利用する場合は、少なくとも1種の信号についてその信号強度が所定の第1のしきい値より大きい場合は、主軸故障が検出されたと判断してよい。
【0046】
(2)上記実施形態では、例えば、所定の周波数範囲のスペクトルの信号強度が、所定の第1のしきい値より大きいか否か検査する例を説明した。ここで、信号強度とは、例えば、当該スペクトルの振幅値でもよいし、実効値でもよい。さらに、この信号強度とは、当該スペクトルの平均値でもよいし、ピーク値でもよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、前述した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。