【実施例】
【0050】
図1によると、ピペット1が、ロッド状のハウジング2を有し、中にはシリンジ3が下部に保持されている。引抜きレバー5が、ハウジング2から、直線状のスロット4を超えてハウジング2の側壁から突出している。歯付ラックおよび爪を制御する操作ノブ8が、2つのさらなるスロット6、7を超えてハウジング2の同じ側壁から突出している。その上方に、ディスプレイ9の形での表示装置が、ハウジング2の同じ側壁にはめ込まれている。選択歯車10の一部が、隣接する側壁の開口部から突出している。
【0051】
図2によると、シリンジ3が、シリンダ11と、中で可動式に配置されているプランジャ12とを有する。シリンダ11は、下部に、液体の通過させるための孔14を有する円すい部13と、それより上に、プランジャ12が中で移動可能である円筒部15を有する。シリンダ11は、上部に、周縁フランジ17を備えた第1の締結部16を有する。プランジャ・ロッド18が、プランジャ12から上方へ突出し、いくつかの周縁ビードを備えた第2の締結部19を有する。
【0052】
シリンジ3は、ハウジング2の底端部の第1の受け器20にフランジ17を備えて配置されている。第1の受け器20は、シリンジ3を挿入除去するための軸方向に向く第1の開口部21を、ハウジング2の下端部に有する。シリンジ3は、その頂部側で、フランジ17の頂縁部にある突起を検出する感圧性リング・センサ22を押圧する。フランジ17に示される記号は、それぞれのシリンジ3のサイズを示している。フランジ17は、この位置で、着脱可能に保持することによって、第1の把持レバー23としての第1の手段をハウジング2内に保持されている。
【0053】
プランジャ12の第2の締結部19が、中空の円筒状受容本体25の第2の受け器24に配置されている。第2の受け器24は、第2の締結部19を挿入するための軸方向に向く第2の開口部26を有する。第2の締結部19のビード間を係合するかまたはこれらを圧締する、第2の把持レバー27としての第2の手段を着脱可能に保持することによって、この第2の締結部19は保持されている。
【0054】
受容本体25が、ハウジング2の長手方向のスロット4の下に延びる歯29を備えた歯付ラック28に堅固に接続されている。
【0055】
引抜きレバー・ホルダ30が、受容本体25および歯付ラック28の下部に固定されている。
【0056】
さらに、スロット4の縁部の下側に当たっている、摺動プレート32を備えた引抜きレバー支持体31がある。引抜きレバー支持体31は、上方に突出しスロット4を貫通する柱33を有する。引抜きレバー5は、ハウジング2の外側で柱33に固定されている。
【0057】
第1の受け器20に向って受容本体25が移動し終わると、プレート32は、下部止め具を含むスロット4の底縁と接触する。
【0058】
ハウジング2の上半分では、計量レバー36の形状をした駆動要素が、スロット4の反対側で、ハウジング2の側壁のバルジ35にあるピボット軸受34に回動可能に取り付けられている。
図3から
図6によると、計量レバー36は、互いにある距離だけ離れている2つの脚部37、38を有する。この脚部37、38は、ハウジング2の反対側の側壁で2つのスロット6、7から延びる。その位置で、操作ノブ8が脚部37、38の突出端部上に固定されている。
【0059】
受容本体25が第1の受け器20から上方に離れて移動し終わると、引抜きレバー支持体31は、ハウジング2に堅固に配置されている軸受本体と接触する。軸受本体内には、ピボット軸受34が計量レバー36のために形成される。これは、受容本体25の移動のための上部止め具を含む。
【0060】
爪39は、計量レバー36の2つの脚部37、38間に回動可能に取り付けられている。爪39は、歯付ラック28の歯29の上に、いくつかの(たとえば3つの)爪歯40で構成されている。計量レバー36は、ばね装置によって、
図2の位置まで押圧される。計量レバー36は、操作ノブ8をばね装置の効果と反対の方向に作動させることによって、下方に揺動可能である。爪39は、別のばね装置によって、歯付ラック28の歯29に押圧される。このことによって、歯付ラック28が下方に進む。
【0061】
可動カバー41が、爪39と歯付ラック28との間に配置されている。カバー41は、ハウジング2の側面から突出する選択歯車10を回転させることによって、移動可能であるので、歯付ラック28の歯29がある程度覆われる。操作ノブ8を作動させている間、爪はまずカバー41に押圧され、ついで、下方に落下して歯29に入る。したがって、計量レバー36を下方へ揺動させつつ歯付ラック28が移動する範囲は、歯29に対するカバー41の位置によって決まる。
【0062】
図7によると、カバー41は、プラスチック製の第1のカバー部42と、薄いシート状金属製の第2のカバー部43とからなり、第2のカバー部43は、オーバーモールドされることによって、第1のカバー部42のプラスチックに部分的に埋め込まれている。
【0063】
図8によると、第2のカバー部43は、実施例では幅広の帯状の頭部44を有する。頭部44は、2つの長手方向の両側面にある下部に、対向する切欠き部45、46を有し、プラスチック製の第1のカバー部42を係止する役目をする。この下に、頭部44はテーパ部47を有する。
【0064】
テーパ部47の下端部は、第1の帯状部48に接続されている。第1の帯状部48は、逆屈曲部49によって、第2の帯状部50に接続されている。頭部44、第1の帯状部48および第2の帯状部50は、共通の長手方向軸を有する。
【0065】
上部では、第2の帯状部50は、長手方向側で、第2の帯状部50に対して垂直に突出する帯状接続部51に接続されている。接続部51は、偏向部52によって、板ばね53に接続されている。
【0066】
第2のカバー部43は、シート状金属の薄片から単一部として製造される。シート状金属は、好ましくは弾性材料であり、特にばね鋼である。
【0067】
図7によると、第1のカバー部42は、概して、U字断面の細長い中空体の形状を有する。第1のカバー部42は、2つの平行の帯状の側部54、55と、これらをつなぐ基部56を有する。側部54、55および基部56は、内側に、歯付ラック28を案内するための平坦な接触面を有する。
【0068】
この側部54、55および基部56が、溝57の範囲を決める。
【0069】
上部基部58は、基部56の下部基部59よりも壁厚が大きい。上部基部および下部基部58、59は、ランプ60によって、互いに接続されているので、外側側面間が平滑に移行する。
【0070】
長手方向のスロット61が、基部56の中央で延びている。長手方向のスロット61は、上部基部57にわたって延び、下部基部59の下端部のすぐ前方で終端する。
【0071】
上部基部58の領域では、長手方向のスロット61の上部スロット部62が、頭部44によって、側面を覆われている。
【0072】
長手方向のスロット61の下部スロット部63が、下部基部59で延びており、中に配置されている第1および第2の帯状部48、50、および屈曲部49よりも幅が広く、または、それぞれスロット部63のわずか前方にある。したがって、隙間は、第1および第2の帯状部48、50、ならびに屈曲部49および下部スロット部63の両側にある。
【0073】
頭部44は、縁部で、第1のカバー部42のプラスチックによって、上部基部内でオーバーモールドされている。歯付ラック28から間隔をおいて対向する側では、プラスチックの縁側の縁取りの幅は、歯付ラック28に対向する頭部44の側よりも狭く、ここでは、縁側の縁取りは、上部スロット部62を画定する。切欠き部45、46が、上部基部58で係止される。これによって、第2のカバー部43が第1のカバー部42に固定される。
【0074】
頭部44の下の第2のカバー部43の部分は、オーバーモールドされておらず、したがって、第1のカバー部42に対して弾性的に延長可能である。このために、テーパ部47または第1の帯状部48のそれぞれは、ランプ60から延びる。
【0075】
頭部は、頭部44に垂直に延びるウェブ64〜67によって、外側でつながれている。
【0076】
ピン形状の連結要素68がウェブ65から延びており、第1のカバー部42を有する単一部として射出成形される。
【0077】
第1のカバー部42は、下部スロット部63から側部54の側縁部まで延びる凹部69を外側に有する。接続部51がこの凹部69を通って側面まで延びるので、板ばね53が第1のカバー部42から短い距離で続いている。
【0078】
第1のカバー部42は、下端部に係合縁部70を有する。これは、下部基部59の下端部上に形成されている。その位置で、下部基部59の最大壁厚は、5mm、および好ましくは4mm以下である。
【0079】
下部基部59の外表面は、爪39のための保持表面71である。下部基部は、外側の下部に斜面72を有する。斜面72の上端部では、下部基部59の壁厚は、5mm以上である。
【0080】
係合縁部70は、軸方向にスロット状に延びる短い空間73により遮断されている。
【0081】
帯状の羽根74、75が、側部54、55の外側から垂直に延びる。
【0082】
カバー41は、第2のカバー部43を射出金型に挿入することにより製造されるので、屈曲部49が特定の接触面に当接している。ついで、金型が閉止され、第1のカバー部42は、射出成形される。この完成したカバーは、屈曲部49、ピン68、および係合縁部70が、十分な公差で特定の位置を占めることにおいて、区別される。
【0083】
図2から
図7によると、歯付ラック28は、第1のカバー部42の流路57を通って延びている。爪39は、下端部の案内スロット76を通って、第2のカバー部43の板ばね53にねじ込まれる。カバー41は、長手方向の羽根74、75に沿って、ハウジング2内で可動に案内される。
【0084】
選択歯車10を回転させることによって、カバー41は長手方向に移動可能である。このために、
図9による選択歯車10は、中央の軸受孔77と、ら線状の案内曲線78とを有する。選択歯車10は、軸受孔77によって、ハウジング2の軸上に回転可能に取り付けられ、カバー41のピン68は案内曲線78に係合する。したがって、歯車10が回転すると、カバー41はハウジング2内でその案内に沿って移動する。
【0085】
選択歯車10は、選択歯車10の回転式の位置を検出する別のセンサ79により指定される。
【0086】
図5によると、カム80が、特定の位置で歯付ラック28の上端部に恒久的に成形される。
【0087】
歯付ラック28が下方に移動すると、カム80は、カバー41の長手方向のスロット61を通って移動し、上部スロット部62から下部スロット部63まで延びる。最終的に、カム80は、突出屈曲部49と接触し、板ばね53と共に突出屈曲部49を前方に(
図5における上方に)押圧する。それによって、板ばね53上で案内される爪39は、歯29から持ち上げられ、残りの進行ブロックが実現する。
【0088】
歯付ラック28に加えて、逆の進行を制御するために、伝達要素81がピペット・ハウジングに配置されている。伝達要素81は、ストリップ状の伝達部82を有する。ストリップ状の伝達部82は、ピペットのハウジング2内で歯付ラック28に対して平行に案内され移動可能である。
【0089】
ストリップ状の伝達部82は、下部伝達要素端部83を有する。下部伝達要素端部83は、伝達要素82が下方に移動する場合、歯付ラック28の側面から突出する下部止め具84の移動領域に配置されている。
【0090】
2つの制御アーム85、86が、ストリップ状の伝達部82の上端部に接続されている。制御アーム85、86は、図面の紙面に対して垂直な平面において、互い平行に配置されている。
【0091】
伝達要素81は、制御アーム85、86の上端部が脚部37、38の傾斜止め具の縁部の移動領域に到達するように移動可能である(
図2を参照)。
【0092】
伝達要素81およびそれと相互に作用する構成要素は、好ましくは、欧州特許出願第12002849.3−2113号および米国特許第13/867,800号に説明したように設計され、その内容は本願によって組み込まれている。
【0093】
さらに、電子機器88を備えたプリント回路基部87が、ハウジング2の上半分に配置されている。少なくとも1つのバッテリ89(たとえばボタン電池)の形での電圧源、あるいは、充電式電池89もまた、ここに配置されている。選択歯車10およびディスプレイ9の回転位置を検出するために、リング・センサ22を備えた電子機器88が他のセンサ79に配線される。さらに、電子機器88は、バッテリ89に接続されている。
【0094】
電子機器88は、リング・センサ22により出力される測定信号からそれぞれのシリンジのサイズを測定し、選択歯車10の設定からインクリメントを測定する。このことから、電子機器88は、設定された計量容量を計算し、それをディスプレイ9に表示する。
【0095】
ピペット1を使用するときに、まず、ユーザにより選択されたシリンジ・サイズを有するシリンジ3を、第1の締結部16で受け器20に挿入し、第2の締結部19で受け器24に挿入することによって、ピペット1に着脱自在に接続するので、フランジ17を第1の把持レバー23によって把持し、締結部19を第2の把持レバー27によって把持する。
この状況を
図2に示す。
【0096】
リング・センサ22は、シリンジ3のフランジ17上の記号を検出する。リング・センサ22により提示された信号によって、電子機器88は、シリンジ3が挿入されたことを認識し、ディスプレイ9のスイッチを入れる。リング・センサ22および他のセンサ79により提示された信号によって、電子機器88は、設定された計量容量を決定し、それをディスプレイ9に表示する。ユーザは、選択歯車10を使用して計量容量の設定を変更してもよく、変更された計量容量は、ディスプレイ9に表示される。
【0097】
シリンジ3の孔14を通して液体を抽出するために、引抜きレバー5を
図2の位置から上方に押圧する。
【0098】
引抜き移動終了後、下部止め具84は伝達要素81を引き込む。
【0099】
設定された計量容量が段階的に排出可能となる前に、逆進行が生じなければならない。このことは、操作ノブ8を作動させることによって実行される。そのように行う際、脚部37、38が制御アーム85、86に接触し、伝達要素81を下方へ移動させる。伝達要素81は、下部止め具84によって歯付ラック28を引き込む。このような逆進行によって、たるみをシステムから除去する。
【0100】
ついで、液体の抽出量を、ばね装置の効果に反して操作ノブ8を繰り返し下方へ押圧することによって小さなステップで排出可能である。そのように行う際、爪歯40が保持面71の下端部に到達するまで、他のばね装置がカバー41の保持面71に対して爪歯40を備えた爪39を押圧する。この状況は、
図10および
図11に示されている。
【0101】
係合縁部70を通過した後、計量レバー36が下方へ揺動し続けるために、爪歯40を備えた爪39が歯付ラック28の歯29に落下し、歯付ラック28をいくぶんか下方へ引き込む。この状況は、
図12および
図13に示されている。ピン68および係合縁部70が正確に位置決めされるので、爪歯40は正確に歯29に落下する。計量レバー36が揺動する度の、下部止め具に達するまでの歯付ラック28の移動は、選択歯車10によって設定されるカバー41の位置に依存する。操作ノブ8が解除されると、ばね装置によって上方へ押圧され、別の計量ステップを実行することができる。
【0102】
シリンジ3内の液体の残量が設定された測定量よりも少なくなるまで、シリンジ3を補充することなく計量分配を行うことができる。ついで、残りの進行ブロックによって、確実に爪歯40が歯29に落下することが不可能になり、ここでは、カム80が爪39を歯付ラック28から離して揺動させる板ばね53を作動させる。
【0103】
カム80を歯付ラック28に正確に配置するので、完全な計量ステップが不可能となる場合には、爪39は歯付ラック28に係合することによって保持される。
【0104】
シリンジ3内の残りの液体は、引抜きレバー5を移動させることによって下方に排出可能である。ついで、シリンジ3がピペット1から分離可能となる。これを実行するために、欧州特許第0656229B1号および米国特許第5,620,660A号に記載されているように、ユーザは、第2の把持レバー27の内側にある突起によって作用する第1の把持レバー23を作動させる。
【0105】
好ましくは、手動で直接作動可能な把持レバー23、27の代わりに、本発明によるピペットは、シリンジを着脱自在に保持するための第1および第2の手段を有する。これらは欧州特許第2033712A1号および米国特許出願第2009/139351A1号に記載されているように設計され、その内容はこれによって本願に組み込まれている。上述の文献によるピペットでは、シリンジは、計量レバーをさらに駆動することによって排出した後で、ピペットから分離される。この目的のために、ピペットは、計量レバーによって制御され、シリンジを保持するための第1および第2の手段に作用してピペットからシリンジを分離する伝動装置を有する。このピペットの一実施形態によると、着脱自在に保持する第1および第2の手段が、ハウジング内で一体化され、外側から直接に作動することのできない把持レバーとして設計されている。
【0106】
図12および
図13によると、爪39が歯に最適に落下する、すなわち、各爪歯40が歯29の2つの歯間にある1つの谷部に正確に係合する。
【0107】
図14は、代替として設計された歯付ラック28を備えたピペットを示す。
【0108】
この歯付ラック28では、カム80が、歯付ラック28内のさらなる長手方向のスロット90から外側に突出している。カム80は、さらなる長手方向のスロット90の下に軸方向の孔91を有する。調整ねじ92が、歯付ラック28の上端部で軸方向の孔91を通り調整ねじ93にネジ止めされる。らせん状のばね94が、調整ねじ92に案内され、カム80をねじ頭に対して保持するために、一端は調整ねじ92のねじ頭に当接し、他端は歯付ラック28の上端部に当接する。
【0109】
調整ねじ92を回転させることによって、カム80の位置を歯付ラック28の長手方向に変更可能である。このことによって、残りの進行ブロックを調整することができ、このことはいかなる理由であっても必要である。