特許第6595547号(P6595547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595547
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】石炭燃焼による環境汚染及び汚損の低減
(51)【国際特許分類】
   F23L 7/00 20060101AFI20191010BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20191010BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20191010BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20191010BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20191010BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20191010BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20191010BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20191010BHJP
   F23K 1/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   F23C99/00 302
   B01D53/50 100
   B01D53/56 100
   B01D53/64 100
   B01D53/81ZAB
   B01J20/02 B
   B01J20/04 C
   B01J20/12 C
   F23K1/00 B
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-173159(P2017-173159)
(22)【出願日】2017年9月8日
(62)【分割の表示】特願2016-503359(P2016-503359)の分割
【原出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-9785(P2018-9785A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】61/788,442
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/210,909
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515254622
【氏名又は名称】ノックス・ツー・インターナショナル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOx II International, Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・エム・コッチ
(72)【発明者】
【氏名】マレイ・アボット
(72)【発明者】
【氏名】サリー・バタニアン
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−533432(JP,A)
【文献】 特開2002−053352(JP,A)
【文献】 特開2002−362960(JP,A)
【文献】 特開2008−170107(JP,A)
【文献】 特表2009−523998(JP,A)
【文献】 特表2009−526198(JP,A)
【文献】 特表2008−537587(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0048231(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0285352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F23K 1/00
B01D 53/34−53/73
B01D 53/74−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01J 20/00−20/28
B01J 20/30−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉中で石炭を燃焼させ、NOx及び少なくとも1つのSOx及び水銀の放出を低減する方法であって、炉中で精製炭を燃焼させることを含んでなり、前記精製炭は亜瀝青炭又は褐炭、0.001〜1.0重量%の臭素化合物及び0.1〜10重量%の粉末吸着剤の混合物を含んでなり、前記粉末吸着剤はセメントキルンダスト(CKD)を含んでなり、さらに前記粉末吸着剤の重量に基づいて0.1重量%未満のNaO、0.1重量%未満のKO、及び0.5重量%未満の塩素を含んでなり、前記臭素化合物及び前記粉末吸着剤を使用しない石炭燃焼と比較し、石炭燃焼施設からの水銀排出を40%以上低減させ、及び、前記臭素化合物及び前記粉末吸着剤を使用しない石炭燃焼と比較し、石炭燃焼施設からのNOx放出を20%以上低減させる、方法。
【請求項2】
精製炭は、0.002〜1.0重量%の臭素化合物及び0.1〜2.0重量%の粉末吸着剤を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉末吸着剤は、CKD、並びに粉砕CKD、キルン供給物、変換セメント、乾燥クリンカー、貯蔵CKD及び石灰石の1つ以上を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
粉末吸着剤は、CKD及び粉砕CKDを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
粉末吸着剤は、CKD及びアルミノケイ酸塩粘土を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
粉末吸着剤は、CKD及びカオリンを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
石炭燃焼施設の炉において水銀を含む亜瀝青炭の燃焼により、エネルギーを発生させる方法であって;
第1吸着剤組成物を石炭に投与すること;
投与した第1吸着剤を含む石炭を炉に輸送すること;
前記石炭を輸送すると同時に、前記炉に第2吸着剤を加えること;及び
前記第1及び第2吸着剤の存在下、炉中で前記石炭を燃焼させ、熱エネルギー及び灰を発生させることを含んでなり、
ここで前記第1吸着剤は臭素化合物を含んでなり、前記第2吸着剤はセメントキルンダスト、0.1%未満のNaO、0.1%未満のKO、及び0.5%未満の塩素を含んでなり、ここで前記割合は前記第2吸着剤の総重量を基準とする重量であり、前記第1及び第2吸着剤を使用しない石炭燃焼と比較し、石炭燃焼施設からの水銀排出を40%以上低減させ、及び、前記第1及び第2の吸着剤を使用しない石炭燃焼と比較し、石炭燃焼施設からのNOx放出を20%以上低減させる、前記方法。
【請求項8】
第1吸着剤は臭化カルシウム水溶液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
燃焼させる石炭量を基準として、0.001〜0.5%の割合で臭化カルシウムを加えることを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第2吸着剤は、CKD及び粉砕CKDを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
第2吸着剤は、粉砕CKD、キルン供給物、変換セメント、乾燥クリンカー、貯蔵CKD及び石灰石の1つ以上を含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
消費する石炭重量を基準として、0.1〜10重量%の割合で第2吸着剤を加えることを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2014年3月14日に出願された有効な米国出願No.14/210,909の優先権及び2013年3月15日に出願された仮の米国出願No.61/788,442の利益を主張し、その全体の開示は参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は石炭などの水銀含有燃料の燃焼に際して大気中に排出される水銀、窒素酸化物及び/又は硫黄酸化物のレベルを低減する組成物及び方法を提供する。特に本発明は燃焼中に石炭燃焼系へ様々なハロゲン及び他の吸着剤を添加することを提供する。吸着剤の使用により汚染物質放出を低減し、炉の汚染を防止する。
【背景技術】
【0003】
次の二世紀に必要とされる世界のエネルギーの大部分を満たすことができるかなりの石炭源が世界中に存在する。高硫黄石炭は豊富にあるが、燃焼に際して過剰の硫黄が大気中に放出されることを防止するための浄化工程を必要とする。米国において、低硫黄石炭は、ワイオミング州及びモンタナ州のパウダーリバーベイスンに、ノース及びサウスダコタ州の中北部の褐炭鉱床に、及びテキサス州の褐炭鉱床に、低BTU値石炭の形態として存在している。しかし、石炭が硫黄を低く含有する場合でさえも、それらは、なお、無視できないレベルの元素水銀及び酸化水銀及び/又は他の重金属を含有する。
【0004】
残念なことに、水銀は石炭燃焼に際して少なくとも部分的に揮発する。結果として水銀は灰中に留まる傾向がなく、むしろ、燃焼排ガスの成分になる。浄化をしない場合、水銀は石炭燃焼施設から大気へ放出される傾向にある。現在、水銀のいくらかは設備によって、例えばウェットスクラバー及びSCR制御系において捕捉される。しかし、大部分の水銀は捕捉されず、従って、排気筒を通じて放出される。
【0005】
米国における大気中への水銀放出は、年間約50トンである。放出のかなりの画分は、石炭燃焼施設(例えば電気事業施設)からの放出である。水銀は既知の環境公害であり、ヒト及びヒト以外の動物の両方の健康問題を導く。公衆衛生を守るため、及び環境を保護するため、ユーティリティ業界は、その工場からの水銀放出レベルを低減するための系を開発し、試験し、及び実行し続けている。炭素質材料の燃焼において、水銀及び他の所望されない化合物が燃焼相の後に捕捉及び保持され、その結果、それらが大気中に放出されない方法が望まれている。
【0006】
窒素酸化物(NOx)及び硫黄酸化物(SOx)などの他の汚染物質は石炭燃焼に際して放出される。これらはスモッグ及び酸性雨などの環境問題を悪化させる。その上、産業界はこれらの汚染物質を低減する方法を積極的に追求し続けている。
【0007】
特定の石炭施設の経営者は、IRS規制45節の下、これらの汚染物質の放出を低減する努力に対して税控除の資格を得る。特定の状況下、これらの経営者は所望としない炉の汚損を見てきた。例えば、低硫黄亜瀝青炭を燃料として燃焼する場合、付着物がボイラー管表面に形成される傾向にあり、これは熱交換効率の低下及び運用費の増大をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、経営者は熱効率を低下させることなく、所望とする大気汚染の低減を達成可能である吸着剤組成物及び使用方法を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特に亜瀝青炭及び褐炭と共に使用する吸着剤は低レベルのアルカリを含むことを条件とする。アルカリレベルの高い従来技術の吸着剤はそれらを燃焼する炉の汚損をもたらし得る。吸着剤のアルカリ性を低下させることにより、経営者はボイラー表面や他の部分への付着物形成につながる気相中の不必要な反応に利用されるナトリウム及びカリウムを最小限にすることができる。
【0010】
1つ以上の水銀、窒素(NOxとして)及び硫黄(SOxとして)放出を低減するために燃焼され得る精製炭を調整するために吸着剤を使用できる。精製炭の製造方法は亜瀝青炭(又は褐炭)と吸着剤組成物を混合することを含む。一実施態様において、吸着剤は0.001〜1重量%の液体吸着剤、及び0.1〜10重量%の粉末吸着剤であり、ここで、前記割合は精製炭の総重量を基準とする重量である。液体吸着剤は臭素化合物を含み、粉末吸着剤はカルシウム、シリカ、アルミナを含み、さらに1重量%未満NaO及び1重量%未満のKOを含んでなり、ここで粉末吸着剤は0.1重量%未満の塩素をさらに含んでなる。
【0011】
一態様において、粉末吸着剤はセメントキルンダスト(CKD)を含み、該CKDはNOx放出低減に有用であり、CKDが高濃度のアルカリを含む場合、これの改善と共に、いくつかのCKDはアルカリ総量が2%未満又は1%未満の仕様を達成するため、より低いアルカリ物質により代用される。種々の実施態様において、粉末吸着剤はまた、亜瀝青炭及び褐炭における汚損を低減するために、低塩素の仕様を満たす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
種々の実施態様において、本発明は石炭などの水銀含有燃料の燃焼により生じる水銀、窒素酸化物(NOx)及び硫黄酸化物(SOx)の放出を低減する組成物及び方法を提供する。商業的に貴重な実施態様は環境の保護並びに政府規制及び条約義務に従うため、石炭燃焼施設からの窒素、硫黄及び/又は水銀の放出を低減するための本発明の使用である。粉末吸着剤の改良は、石炭燃焼炉の汚損を低減することにより優れた実施を提供すると同時に、NOx及びSOxなどの環境汚染物質の除去により有害な影響を及ぼさない。
【0013】
種々の実施態様において、本発明の方法は灰中の水銀の捕捉により石炭燃料施設などの点源から大気中への水銀放出を防止すると同時に、炉の効率を低下させ得る炉汚損を最小限にする。さらに、該方法は水銀含有石炭の燃焼により生成される石炭灰などの固体廃棄物からの浸出により、水銀及び他の重金属が自然環境に放出されることを防止する。これらのいずれの方法においても、水銀が水域に入るのを阻止する。従って、石炭燃焼施設のような施設からの水銀放出の防止又は低減は、より少ない空気汚染、より少ない水汚染、及びより少ない有害廃棄物の生成、及び結果として生じるより少ない土壌汚染を含む様々な環境的利益を導く。限定されないが便宜上、本発明の有利な特徴は水銀又は他の重金属によって、空気、水、及び土壌汚染を防止することであると説明される。
【0014】
一実施態様において、NOx及び少なくとも1つのSOx及び水銀の放出を低減するために炉中で石炭を燃焼する方法を提供する。該方法は炉中で精製炭を燃焼することを含む。該精製炭は順に亜瀝青炭、臭素化合物及び粉末吸着剤の混合物である。該粉末吸着剤はカルシウム、シリカ、アルミナを含み、及び前記粉末吸着剤の重量を基準として、1重量%未満のNaO及び1重量%未満のKOの低アルカリ値により、及び好ましくはまた0.5%未満、0.3%未満、又は0.1%未満の低塩素値によりさらに特徴づけられる。種々の実施態様において、臭素化合物の処理レベルは0.001〜1.0重量%であるが、通常の粉末吸着剤の処理レベルは石炭の重量を基準として0.1〜10重量%である。種々の実施態様において、該粉末吸着剤は本明細書に記載されるCKD又はCKDと他の低アルカリ粉末との混合物を含む。また該粉末吸着剤は、カオリン又はメタカオリンなどのアルミノケイ酸塩粘土を含み得る。
【0015】
別の実施態様において、石炭燃焼施設の炉において亜瀝青炭を含む水銀燃焼によりエネルギーを発生させる方法を提供する。該方法はまず石炭へ第1吸着剤組成物を投与すること、及び投与した第1吸着剤を含む石炭を炉に輸送することを含む。添加した第1吸着剤を含む石炭を輸送すると同時に、炉に第2吸着剤を加える。次いで、第1及び第2吸着剤の存在下、炉中で石炭を燃やし、熱エネルギー及び灰を発生させる。第1吸着剤は臭素化合物を含み、第2吸着剤は40重量%より多くのCaO、10重量%より多くのSiO、2〜10%のAl、1〜5%のFe、及び1〜5%のMgO、1重量%未満のNaO、及び1%未満のKaOの成分を有する。実施態様において第2吸着剤は0.5%未満の塩素を有する。
【0016】
別の実施態様において、精製炭を製造する方法を提供する。該精製炭は亜瀝青炭を含み、添加した吸着剤成分を含む。該方法は石炭、液体吸着剤(例えば石炭を基準として0.001〜1重量%)及び粉末吸着剤(例えば石炭を基準として0.1〜10重量%)を付加混合することを含み、ここで前記液体吸着剤は臭素化合物及び粉末吸着剤を含んでなり、ここで前記粉末吸着剤は40%より多くのCaO、10%より多くのSiO、2〜10%のAl、1〜5%のFe、1〜5%のMgO、1%未満のNaO、1%未満のKOを含んでなる。種々の実施態様において、該粉末吸着剤はさらに0.5%未満の塩素又は0.1%未満の塩素を有するとして特徴づけられる。
【0017】
有利なことに言及した粉末吸着剤、特に総アルカリ分が低い、塩素が低い又はいずれもが低い組成物の使用が、パウダーリバーベイスン(PRB)の石炭などの亜瀝青炭又は褐炭を燃焼する炉において汚損低減に効果的であることが見出された。本明細書に記載される改良吸着剤の使用により炉の運用者が環境規制に従い、米国IRS規制の下、特定の税控除の資格を得ることができ、同時に炉及び関連施設の所望としない汚損を回避することができる。
【0018】
それぞれ限定された実施態様のさらなる実施例を以下に記述する。文字通り記載され又は例示されていない他の実施態様を提供するために、本明細書に記載される種々の成分及び方法工程を組み合わせ、適合させ得ると理解すべきである。実施例は当業者が発明を実行すること、及び注目すべき環境的利益及び運用上の利益をもたらすことを可能とする。
【0019】
燃焼前に石炭を処理するために、及び/又は炎又は炎の下流に添加するために、好ましくは最低温度で該方法における種々の利点を生じる耐火性構造の完成形を確保するために種々の吸着剤成分を組み合わせて使用する。該成分を燃焼前に石炭に添加する場合、生成物は精製炭であり、この精製炭の使用が環境汚染を低減し、及び米国における特定の税控除の資格を与え得る。
【0020】
吸着剤組成物はカルシウム、アルミナ、シリカ及びハロゲンを含む。パウダーリバーベイスン石炭などの亜瀝青炭又は褐炭を燃焼する場合、汚染低減のために吸着剤のKOを最大1%に維持し、及び吸着剤のNaOを最大1%に維持し、ここで%はカルシウム、アルミナ、シリカ及び他の成分を含む粉末吸着剤の重量を基準とする。実施態様において、NaO及びKOはそれぞれ0.5%未満又はそれぞれ0.1%未満である。さらに、種々の実施態様において、また低塩素値(例えば<0.5%、<0.3%又は<0.1%)を有する粉末吸着剤を供給することが有利であることを見出した。
【0021】
粉末吸着剤混合物又は無視できない量のカルシウムを有する組成物に添加することによりカルシウムを供給する。例えば多くのアルカリ粉末は、CaOを基準に20%以上のカルシウムを含む。実施例は石灰石、石灰、酸化カルシウム、水酸化カルシウム(消石灰)、ポルトランドセメント及び他の工業生成物又は工業過程の副生成物、及びカルシウム含有アルミノケイ酸塩鉱物である。シリカ及びアルミナの内容は、シリカ及びアルミナがより複雑な化学又は分子形態で度々存在すると理解されていても、SiO及びAlの同等物に基づく。
【0022】
種々の実施態様において粉末吸着剤が、石炭燃焼施設からのNOx低減をもたらすと考えられるセメントキルンダスト(CKD)の効果的な量を含むことが有利である。いくつかのCKDは相対的に高い(10%に相当するぐらい高い)塩素含量を有する。CKDを用いる場合、CKD源及びそのアルカリ及び塩素の元々の含量により、亜瀝青炭又は褐炭を燃焼する場合得られる粉末は、最善の結果のためにはアルカリ及び/又は塩素において高すぎる結果となり得る。そうであるならば、ナトリウム及びカリウム量が低い他の原料と共にいくつかのCKDを混合すること、好ましくは<1%のNaO及び<1%のKOの仕様、又は<0.5%のNaO及び<0.5%のKOの仕様を達成することが有利である。このようなアルカリ分の少ない材料は、粉砕CKD(セメント生成物の仕様を満たし得る又は満たし得ないセメントキルンクリンカー、及びその後CKDと混合するために粉砕されるセメントキルンクリンカー);キルン供給物(例えばCa、Mg、Si、Al、Feなどのセメントを製造する全ての成分を含む、セメントキルンに導入される供給流);変換セメント(特定の新しいセメント生成物を導入する空間を作るために空にしたサイロにおけるセメント生成物);乾燥クリンカー(CKDの添加前に回収され粉砕された場所に貯蔵されたクリンカー);貯蔵CKD(貯蔵された場所又は廃棄物貯蔵庫からのCKD);及び石灰石を含む。任意のこれらの材料が廃棄される或いは埋め立てねばならない廃棄生成物を表す程度まで、さらなる環境的利益が、本明細書に記載される吸着剤のそれらの使用により達成される。
【0023】
種々の実施態様において、前記成分は共に
・水銀、窒素酸化物、及び硫黄酸化物の放出を低減し;
・水銀元素及び酸化水銀の放出を低減し;
・ボイラー管の脱スラッギングを通じて石炭燃焼工程の効率を
向上させ;
・所望としない付着物による炉の汚染を防止し;
・石炭灰中のHg、As、Pb、及び/又はClの水準を
増大させ;
・灰中の浸出性の重金属(例えばHg)のレベルを、好ましくは検出限界未満のレベルまで低減し;及び
・高度なセメント質灰生成物を生成させる。
【0024】
本明細書に用いられるように特に指示のない限り、全ての%は重量に基づく。本明細書に記載される化学組成物の種々の材料は、通常X線蛍光技術により決定される元素分析から算出されたサンプルにより表されたものであることを留意すべきである。種々の単純酸化物が材料中、より複雑な化合物中に存在し得る及び存在するが、酸化物分析は個々の組成物に関する化合物濃度を表すために有用な方法である。
【0025】
典型的な石炭燃焼施設において石炭はレールカーに至る。吸着剤が既に投与されている場合石炭は精製炭である。吸着剤がまだ投与されていない場合、石炭は原炭である。典型的な例示した実施態様において、石炭をベルト受けに輸送し、ベルト受けが該石炭を混合機に導く。該混合機の後に石炭は供給ベルトに下ろされ、石炭貯蔵区域に置かれる。石炭貯蔵区域に通常、火格子及び容器があり;そこから時々バンカーと呼ばれる開口備蓄区域にベルトによって石炭が輸送される。バンカー又はクラッシャーからの石炭がストーカ炉に供給され得る。微粉炭を燃焼させる炉において、石炭はベルト又は他の手段によりクラッシャーのような破砕装置及び最終的に微粉砕機に輸送される。貯蔵システムにおいて石炭は微粉砕され、空気又はガスにより集塵機に輸送され、該微粉砕石炭は貯蔵容器に輸送され、必要に応じて炉に供給される。直接的な燃料システムにおいて、石炭は微粉砕され炉に直接輸送される。半直接的なシステムにおいて、石炭は微粉砕機からサイクロン集塵機に導入される。石炭は該サイクロン集塵機から直接炉に供給される。
【0026】
稼動の間石炭は炉中に供給され、酸素の存在下に燃焼される。高いbtu燃料では、典型的な炎の温度が燃焼室において2700゜F(約1480℃)〜約3000゜F(約1640℃)又はそれ以上[例えば3300゜F(約1815℃)〜3600゜F(約1982℃)のオーダーである。
【0027】
燃焼前に石炭に吸着剤を添加することにより精製炭を生成する。石炭生産者により吸着剤を添加することができ、運用者により炉に輸送することができ、若しくは運用者の所有地又はその近くにある別の施設で精製炭を生成することができる。精製炭の場合には、燃焼のために全ての吸着剤組成物を炉に供給する。
【0028】
他の種々の実施態様において本発明による吸着剤組成物は、燃焼中、原炭又は炉の様々な部分に添加される。限定されない方法において微粉砕前又は微粉砕の間、及び/又は燃焼のために微粉砕機から炉に輸送される間、混合機で、ベルト受け又は供給ベルトで、石炭貯蔵区域で、集塵機で、貯蔵容器で、サイクロン集塵機で、粉砕機で、吸着剤を石炭に添加する。便利なことに種々の実施態様において混合機又は微粉砕機などで石炭を混合する工程の間に、吸着剤を石炭に加える。
【0029】
あるいは又は加えて、吸着剤組成物は燃料燃焼の間に、該組成物を炉へ噴射することにより石炭燃焼システムに加えられる。好ましい実施態様において、該組成物は火玉又は火玉近傍(例えば、該温度は2000゜F超、2300゜F超又は2700゜F超である)に噴射される。バーナー及び炉の運転パラメータ設計に従って、燃料と共に、主な燃焼空気と共に、炎上に、オーバーファイア空気と共に又はオーバーファイア空気上などに、効率的に吸着剤を添加する。また、炉の設計及び運転に応じて吸着剤は炉の1つ以上の面から、及び/又は炉の1つ以上の角から噴射される。吸着剤組成物及び吸着剤成分の添加は、噴射温度が十分に高く、及び/又は設定されたバーナー及び炉の空気力学が、粉末吸着剤と燃料及び/又は燃焼生成物との十分な混合を導く場合に最も効率的な傾向にある。あるいは又は加えて、吸着剤は、炎及び炉の下流の対流経路に添加される。種々の実施態様において、吸着剤の最適な噴射又は投与点は、炉を形成すること並びに吸着剤、石炭の最良な混合及び所望の結果得られる燃焼生成物をもたらすパラメータ(噴射速度、噴射位置、炎上側の距離、壁の距離、粉末噴射の方法など)を選択することにより見出される。
【0030】
石炭燃焼系において、熱くなった燃焼ガス及び空気は下流方向の対流経路(すなわち、火球に関連する下流)を通じて炎から離れた対流により移動する。施設の対流経路は各領域におけるガス及び燃焼生成物の温度により特徴づけられる複数の領域を含む。通常、燃焼ガスの温度は火球から下流方向に移動すると同時に低下する。飛灰及び燃焼ガスは、1つの実施例における石炭が約2700゜F〜3600゜F(約1480℃〜1650℃)の温度で燃焼される炉から対流経路の下流を通じて、常に温度低下する領域に移動する。例えば火球の下流は、2700゜F未満の温度領域である。さらに下流、温度が約1500゜Fに冷却される位置に到達する。該2つの位置の間は約1500゜F〜約2700゜Fの温度を有する領域である。さらに下流、1500゜F未満の領域などに到達する。さらに対流流路に沿ってガス及び飛灰は、ガスが排気筒から放出される前に通常約300゜Fの温度を有するバグハウス又は電気集塵装置に到達するまでに低温度領域を通過する。
【0031】
燃焼ガスは硫黄、窒素及び水銀を含む所望とされない様々なガスだけでなく、二酸化炭素を含む。対流流路はまた、高温ガスと共に運ばれる様々な灰で満たされる。大気中への放出前に灰を除去するため、微粒子除去システムを使用する。電気集塵装置及びバグハウスなどのこのような種々の除去システムは通常対流流路に配置する。さらに、化学的な洗浄装置は対流流路に配置することができる。さらに、硫黄(SOxとして)、窒素 ( NOxとして)及び水銀などのガス成分を監視するための様々な装置を備えてもよい。
【0032】
従って、種々の実施態様において、本発明の方法は吸着剤を
燃焼の間、炉に直接(「混焼」添加);
燃焼前に石炭などの燃料に直接(精製炭の製造のための「予燃焼」添加);
500℃より高い温度領域及び好ましくは800℃より高い好ましい温度領域で燃料後、ガス流に直接(「後燃焼」添加);又は
予燃焼、混焼、及び後燃焼の添加を組み合わせて
投与することを必要とする。
【0033】
吸着剤の投与は、予燃焼、混焼又は後燃焼のいずれかの方法或は任意の組み合わせで「石炭燃焼系に」行われる。吸着剤を石炭燃焼系に添加する場合、石炭又は他の燃料は種々の吸着剤、吸着剤組成物又は吸着剤成分の「存在下」燃焼されると考えられる。
【0034】
好ましい実施態様において、下流への添加は、温度が約1500゜F(815.5℃)〜約2700゜F(1482.2℃)で実行される。いくつかの態様において、炉の設計の詳細及び対流流路の配置に応じて、「炉へ」、「火球へ」及び「対流流路へ」の間のカットオフ点又は区分はむしろ恣意的であり得る。ある時点で、燃焼ガスは明らかに燃焼室又は炉であるものから離れ、明らかに燃料又は炉における下流ガスの対流流路に流入する。しかし、炉の多くは非常に大きく、そのため、火球を形成するために燃料及び空気を供給するかなりの距離で、炉へ吸着剤を添加することが可能である。例えば、いくつかの炉は、特により多くの完全燃焼及び/又は窒素酸化物などの放出制御を達成するため、火球の上部位置にさらなる酸素を供給するために設計されたオーバファイア空気注入口などを有する。オーバファイア空気口は燃料注入よりも上に20フィート又はそれ以上高くできる。種々の実施態様において、石炭供給よりも上部に、オーバファイア空気口よりも上部又は下部に、又は燃焼室内のより高い位置(炉口又は炉口の丁度下部に)に供給される石炭と共に火玉中へ吸着剤成分又は組成物を直接注入する。これらの各位置は吸着剤と、燃料及び/又は燃焼生成物(例えば飛灰)との混合をもたらす温度及び乱流条件により特徴づけられる。実施態様において、炉又は炉の下流に吸着剤組成物を投与することに関して、投与は温度が1500゜F超、好ましくは2000゜F超、より好ましくは温度が2300゜F超、及びさらに好ましくは温度が2700゜F超で好ましくは行われる。
【0035】
本明細書に記載される種々の実施態様において、石炭燃焼施設からの水銀、窒素及び/又は硫黄の放出を低減又は修正する傾向にある吸着剤組成物はまた、高濃度のセメント質燃料の燃焼により生成される灰を与える利益的効果がある。結果として、該灰は様々なセメント製品及びコンクリート製品においてポルトランドセメントの部分的又は完全な代用品として商業的に使用できる。
【0036】
種々の実施態様において、本発明に記載される吸着剤組成物と共に石炭を燃焼させることは、吸着剤を用いずに燃焼させる石炭と比較し重金属のレベルが上昇する灰を生じるが、しかし、それにもかかわらず、吸着剤を用いずに生成する灰よりも低レベルの浸出性の重金属を含む。結果として、その灰は取り扱うのに安全であり、また、例えばセメント混合物として商業的に販売するのに安全である。
【0037】
灰生成物を得るために、炭素質原料の燃焼から熱エネルギーを発生させるために炭素質燃料を燃焼させる。不燃性原料及び粒子燃焼生成物が灰を形成し、いくつかの灰は炉底に集められるが、大部分の灰は集塵機又はフィルタ(例えば石炭燃焼施設のバグハウス)により燃料からの飛灰として集められる。炉底灰及び飛灰の中身は、石炭の化学的組成及び燃焼中石炭燃焼施設に添加される吸着剤成分の量及び組成による。
【0038】
種々の実施態様において、石炭燃焼施設からの水銀放出を監視する。水銀元素、酸化水銀又は両方の放出を監視する。水銀元素は基底状態又はゼロ酸化状態の水銀を意味し、一方酸化水銀は+1又は+2の酸化状態の水銀を意味する。プラントからの排出前の燃料ガスにおける水銀レベルに応じて、予燃焼、混焼、及び/又は後燃焼で添加される吸着剤組成物量が増加され、減少され又は変化せずに維持される。一般に、実用的なレベルと同程度の高レベルな水銀を除去することが望ましい。実施態様においては、石炭中の水銀総量を基準として、少なくとも40%〜90%以下及びそれ以上の水銀除去を達成することができる。この量は燃料ガスから除去される水銀を示すため、水銀は大気中へ排気筒を通じて放出されない。この態様では、該量は吸着剤を用いない石炭燃焼と比較して、施設からの水銀放出を低減させた量の百分率に相当する。通常、燃料ガスからの水銀除去は灰中の水銀レベルの上昇につながる。炉中で生成する灰の総量を低減するため、石炭燃焼工程に添加する吸着剤の量を最小限にする。このため、多くの実施態様では、吸着剤組成物の添加速度を調整するために水銀放出量を測定し、系に過剰な材料を添加せずに所望とする水銀低減を達成することが望ましい。
【0039】
添加する吸着剤成分と共に、石炭又は他の燃料を燃焼させる種々の実施態様において、水銀並びにヒ素、アンチモン、鉛及び他金属などの石炭中の他の重金属は、バグハウス又は電気集塵装置に記録され、石炭燃焼プラントにおける灰含量全体の一部となる;あるいは又は加えて、水銀及び重金属は灰底にみられる。このようにして、施設からの水銀及び他の重金属の放出は減少される。
【0040】
本明細書に記載される吸着剤成分なしに、石炭を燃焼することにより生成する灰と比較して高レベルで灰に存在する傾向にあるとしても、一般に、灰中の水銀及び他の重金属は酸性条件下での浸出に耐久性がある。有利なことに、灰中の重金属は規制レベルを超える浸出がない;事実、灰が通常、吸着剤と共に燃焼されることにより生成されることで、より高い絶対値の重金属を含有するとしても、浸出性の重金属の濃度低減がppm基準で灰に観測される。なぜなら、燃焼による灰(石炭灰)は、灰のセメント質特性に加え、例えば、ポルトランドセメント並びにコンクリート生成物及びレディミックスを製造するためのセメント質材料として市販する及び使用する価値があるからである。
【0041】
好ましい実施態様において、重金属の浸出は監視され、又は燃焼中周期的又は連続的に監視される。米国環境保護庁のTCLP法は一般的に使用される方法である。吸着剤の量、特にSi(SiO又は同等物)及び/又はAl(Al又は同等物)を有する吸着剤成分の量が、所望の範囲での浸出を維持するために分析結果に基づいて調整される。
【0042】
一実施態様において、大気中への水銀放出量を低減するための石炭燃焼方法を提供する。該方法は石炭を燃焼する系へのハロゲン化合物を含んでなる吸着剤組成物を投与することを含む。ハロゲン化合物は好ましくは臭素化合物であり;好ましい実施態様において、吸着剤はボイラー管又は他の炉成分による腐食を回避するためにアルカリ金属化合物を含まない。石炭は炉で燃焼され、灰及び燃焼ガスを生じる。燃焼ガスは水銀、硫黄及び他の成分を含む。大気中への放出を制限するため、燃焼ガス中の所望とする水銀低減を達成するために、燃焼ガス中の水銀レベルを好ましくは、例えば濃度分析測定により監視する。好ましい実施態様において、燃焼ガスで測定される水銀レベル値に応じて、投与される吸着剤組成物の量を調整する(すなわち、それを増加させる、それを低減させる、又はいくつかの場合それを変化させず維持することに決めることにより調整する)。好ましい実施態様では、石炭の予燃焼に吸着剤を投与することにより系中に添加し、その後、燃焼のため炉中へ吸着剤を含む石炭を輸送する。
【0043】
別の実施態様において、ハロゲン(好ましくは臭素又はヨウ素、及びより好ましくは臭素)化合物及び少なくとも1つのアルミノケイ酸塩材料を含む吸着剤成分を石炭燃焼系へ投与される。該成分は吸着剤組成物単独で又は該組成物と別々に添加し、及び必要により、石炭の予燃焼での、燃焼中炉へ、又は適当な温度で炉の下流の燃焼ガスへ添加する。好ましい実施態様において、該成分を、石炭の予燃焼に添加し、及びその後吸着剤を含む石炭は燃焼のために炉へ輸送する。すでに述べた通り、好ましくは水銀を燃料ガス中で監視し、吸着剤投与速度を、測定される水銀レベル値に応じて調整する。ハロゲンは水銀放出レベルの低下をもたらすが、一方、アルミノケイ酸塩は灰に捕捉される水銀の非浸出をもたらす。
【0044】
関連する実施態様では、石炭燃焼系又は焼却炉において、石炭又は他燃料の燃焼により生成する灰からの、水銀及び/又は他の重金属の浸出を低減する方法は、燃焼中焼却炉又は石炭燃焼系にシリカ及びアルミナを含む吸着剤を導入すること、得られる灰からの水銀及び/又は他の重金属の浸出量を測定すること、重金属の測定された浸出に従って添加するシリカ及びアルミナレベルを調整することを含む。浸出量が所望とする量よりも多い場合、浸出量を所望の範囲に低減させるために吸着剤の投与速度を上げることができる。好ましい実施態様において、さらに吸着剤は灰中の水銀捕捉量を増大させるためにハロゲン(例えば臭素)化合物を含む。有利なことに、シリカ及びアルミナを含む吸着剤は汚損を低減又は除去するために、<1%のNaO及び<1%のKOを含む粉末組成物に添加される。
【0045】
一実施態様において、本発明は石炭などの水銀含有炭素質燃料の燃焼により生じる燃料ガス中の酸化水銀量を低減すると同時に、セメント系灰生成物を生成する方法を提供する。該方法は粉末吸着剤がカルシウム、シリカ及びアルミナを含んでなるアルカリ粉末吸着剤の存在下で燃料を燃焼させることを含んでなる。アルカリ粉末は石炭の予燃焼に添加され、燃焼中炉へ注入され、炉の下流の燃料ガスへ投与され(好ましくは温度が1500゜F又はこれ以上)、又は任意の組み合わせで適用される。該粉末は水との混合である場合、PHが約7、好ましくは約8及び好ましくは約9を特徴とするアルカリである。有利なことに、吸着剤はそれぞれ1重量%未満、それぞれ0.5重量%未満、又はそれぞれ0.1重量%未満のアルカリ(例えばNaO及びKO)を含む。種々の実施態様において、さらに吸着剤は鉄及びマグネシウムを含む。種々の実施態様において、吸着剤におけるアルミナ含量は、ポルトランドセメントのアルミナ含量よりも多く、好ましくは約5%よりも多い、又は約7%よりも多いアルミナを含有する。
【0046】
燃料燃焼中、放出を監視するために、炉からの下流燃料ガス中の水銀(酸化水銀、水銀元素又はその両方)の濃度が測定される。測定された水銀濃度は目標濃度と比較され、測定濃度が目標濃度を超えている場合、燃焼させる燃料の量に対して、添加する粉末吸着剤の量を増加させる。あるいは、測定された濃度が目標濃度又はそれ未満である場合、吸着剤の添加速度を低下させる、又は変化させずに維持することができる。
【0047】
別の実施態様において、粉末組成物はアルカリカルシウム成分並びに有意な量のシリカ及びアルミナを含む吸着剤組成物である。非浸出の実施態様において、粉末組成物は、2〜50重量%のアルミノケイ酸塩材料及び50〜98重量%のカルシウムを含んでなるアルカリ粉末を含んでなる。好ましい実施態様において、アルカリ粉末は1つ以上の石灰、酸化カルシウム、ポルトランドセメント、セメントキルンダスト、石灰キルンダスト、及びシュガービート石灰を含んでなり、一方、アルミノケイ酸塩材料はカルシウムモンモリロナイト、ナトリウムモンモリロナイト、及びカオリンからなる群より選択される1つ以上を含む。特定の実施態様において、粉末吸着剤は低アルカリ仕様及び/又は低塩素仕様を満たすために、CKD及び他の材料を含んでなる。
【0048】
粉末組成物は回分式工程で吸着剤と共に処理される石炭量、又は連続工程で燃焼により消費される石炭の割合を基準として、約0.1〜約10%の割合で石炭に添加される。実施態様において、該割合は実施態様において、0.1〜5重量%、0.1〜2重量%、0.1〜1.5重量%、0.1〜1重量%、1〜8重量%、2〜8重量%、4〜8重量%、4〜6重量%、又は約6重量%である。特定の実施態様において、粉末組成物を燃焼中、火玉又は炉に注入し、及び/又は石炭燃焼前に周囲条件下、石炭に投与する。注入箇所の温度は、好ましくは少なくとも約1000゜F又はそれ以上である。いくつかの低価格燃料では、これは火玉中への注入又は火玉近傍への注入に相当する。
【0049】
さらなる実施態様において、石炭燃焼系における石炭の燃焼中、自然環境に放出される水銀及び/又は硫黄を低減する方法は、石炭燃焼系に臭素、カルシウム、シリカ及びアルミナを含んでなる吸着剤成分を添加すること、並びに燃焼ガス及び飛灰を発生させるために吸着剤成分の存在下、石炭を燃焼することを含んでなる。燃焼ガス中の水銀量を測定し、系に添加される臭素を含む成分濃度を、燃焼ガス中で測定される水銀値に応じて調整する。
【0050】
種々の実施態様において、4つの成分(カルシウム、シリカ、アルミナ及び臭素)を、共に又は別々に、石炭の予燃焼に、炉に、及び/又は本明細書に記載されるような適当な温度で燃焼ガスに添加する。該成分を含む吸着剤は好ましくは、最大1重量%未満のNaO及び最大1重量%未満のKOを含む。好ましくは臭素は、石炭中の少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも80%又は少なくとも90%の水銀を灰中で効率的に捕捉するためのレベルで存在し、並びにシリカ及びアルミナは、0.2ppm(200ppb)未満の水銀、好ましくは100ppb未満の水銀、50ppb未満、及びさらに好ましくは2ppb未満の水銀の浸出値を有する飛灰を発生させるために効率的なレベルで存在する。2ppbの濃度は水銀浸出のTCLP試験における現在の検出制限よりも低い濃度を示す。
【0051】
特定の実施態様では、該方法は、燃焼前の石炭において元々少なくとも40%又は少なくとも90%の水銀を含む灰の捕捉に対応する濃度の水銀を含む、石炭灰及び/又は飛灰を供給する。いくつかの実施態様において、水銀濃度は、大気中への水銀放出よりもむしろ灰中の水銀を捕捉するために、既知の飛灰よりも高い。該方法により発生する飛灰は200ppm以下の水銀又はさらに高い濃度の水銀を含み、いくつかの実施態様において、飛灰中の水銀含量は約250ppmである。灰の体積は通常、吸着剤の使用により増大する(通常の実施態様では、約2倍の灰の体積)ので、増大され、測定された水銀濃度は、吸着剤の存在なく自然環境へ放出される水銀を含む灰より大幅な捕捉を表す。水銀並びに鉛、クロム、ヒ素及びカドミウムなどの他の重金属の飛灰中の含量は通常、吸着剤又は吸着剤成分の添加なしに、石炭を燃焼させることから生じる飛灰中よりも大きい。
【0052】
好ましくは石炭灰の水銀は、毒性指標浸出法(TCLP)、40CFR260.11.章で参照により組み込まれる通り、「固体廃棄物を評価する方法、物理的/化学的方法」EPA出版SW-846-第3出版、試験方法1311を用いて試験する場合、それは抽出物において0.2ppm未満の水銀濃度を示す。石炭を処理する吸着剤から発生する灰の総水銀含量は、吸着剤を用いない燃焼により発生する灰における含量よりも2因子以上多いが、石炭と本明細書に記載される吸着剤との燃焼による飛灰は、吸着剤を用いない石炭燃焼から発生する灰よりも、浸出性の水銀が少ないことが通常観測される。例えば、PRB石炭の燃焼による通常の灰は、約100〜125ppmの水銀を含み;種々の実施態様において、PRB石炭と本明細書に記載される約6重量%の吸着剤との燃焼により発生する灰は、約200〜250ppmの水銀又はそれ以上の水銀を有する。
【0053】
別の実施態様において、本発明は、石炭灰又は上記記載される灰のセメント生成物の総量を基準として、0.1重量%〜99重量%のポルトランドセメントを含有する水硬性セメント生成物を提供する。さらなる実施態様において、本発明は上記記載される灰のポゾラン生成物の総量を基準として、0.01重量%〜99重量%のポゾランを含んでなるポゾラン生成物を提供する。
【0054】
さらなる実施態様において、本発明は上記記載される灰のポゾラン生成物の総量を基準として、0.01重量%〜99重量%のポゾランを含んでなるポゾラン生成物を提供する。
【0055】
本発明はまた、水硬性セメント生成物を含むセメント混合物を提供する。
【0056】
さらに本発明は、骨材セメント生成物及び水硬性セメント生成物を含む成分調合済コンクリート(concrete ready mix)生成物を提供する。
【0057】
別の実施態様において、セメント混合物は、唯一のセメント組成物として本明細書に記載される石炭灰を含む;これらの実施態様において、該灰はポルトランドセメントなどの通常のセメントの全てを代用できる。該セメント混合物は、セメント及び必要により骨材、充填材及び/又は他の混合物を含む。セメント混合物は通常、水と混合され、コンクリート、モルタル、グラウト、流動性充填材、安定剤及び他の用途として使用される。
【0058】
従って、本発明の方法は、石炭灰及び発熱又は発電エネルギーを発生させるために、石炭と添加される吸着剤とを燃焼することを包含する。そして、該灰を回収し、セメント、モルタル及びグラウトを含むセメント混合物を形成するために使用する。
【0059】
好ましい実施態様において、本明細書に記載される粉末吸着剤組成物は、より低レベルの1つ以上のアルミノケイ酸塩材料と共に、カルシウムを含有する1つ以上のアルカリ粉末を含む。ハロゲン成分は、必要に応じて、さらなるアルカリ粉末成分として添加され、若しくは液体又は粉末組成物の一部として別々に添加される。有利なことに、吸着剤の使用は、石炭燃焼系からの硫黄、窒素、水銀、他の重金属(例えば鉛及びヒ素)及び/又は塩素の放出又は排出の低減につながる。
【0060】
上記及び本明細書に記載される発明の種々の実施態様で使用される吸着剤組成物は、カルシウム、シリカ及び/又はアルミナをもたらす成分を、好ましくはアルカリ粉末剤の形態で含む。種々の実施態様において、該組成物はまた、酸化鉄を含み、限定されない実施態様において、粉末組成物は約2〜10重量%のAl、40%より多く(例えば、約40〜70%)のCaO、>10重量%のSiO、約1〜5%のFe、並びに酸化ナトリウム及び酸化カリウムなどの<2%、好ましくは1%未満の総アルカリ分を含む。カルシウム、シリカ及びアルミナ及び存在する場合には他の元素を含んでなる成分が、燃料燃焼系に成分として単独組成物で共に混合され、又は別々に若しくは任意の組み合わせで添加される。好ましい実施態様において、吸着剤の使用は、大気中へ放出されるNOx、SOx、及び/又は水銀量の低減につながる。
【0061】
有利なことに、吸着剤成分は適切な高レベルのアルミナ及びシリカを含む。アルミナ及び/又はシリカの存在は、吸着剤の使用に見られるいくつかの利点を導く。例えば、アルミナ及び/又はシリカの存在、及び/又はカルシウム、鉄及び他の成分とシリカ/アルミナとのバランスは、吸着剤の存在下で水銀を含む石炭又は他の燃料により発生する灰で観測される水銀及び/又は他の重金属の低酸性度の浸出をもたらす。
【0062】
上記のように、カルシウム、シリカ及び/又はアルミナを与える成分は、好ましくはアルカリ粉末として供給される。理論により限定されず、吸着剤成分のアルカリ性は、上記に記載される所望の特性を少なくとも部分的に導くと考えられる。例えば、粉末のアルカリ性は硫黄孔食の低減を導くと考えられる。中和後ジオポリマー灰が、吸着剤の存在下に形成され、吸着剤中に存在するシリカ及びアルミナと結合して、安定化灰として報告されるマトリックスのようなセラミックを形成すると考えられる。安定化灰は水銀及び他の重金属の浸出を大幅に低減することを特徴とする。いくつかの実施態様において、水銀の浸出は検出限界未満である。しかし、いくつかの灰に関して、吸着剤成分における高アルカリ分は所望でない汚損をもたらす傾向にある。従って、本発明の教示は、特に亜瀝青炭と褐炭との使用に際して、(NaO及びKOの含量により測定されるような)より低アルカリ性及び/又はより低塩素の吸着剤を使用することによる欠点を克服する方法を記述する。
【0063】
本発明の吸着剤組成物のためのカルシウム源は、限定されないが、炭酸カルシウム、石灰石、白雲石、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム及び他のカルシウム塩などのカルシウム粉末を含む。石灰石、石灰、消石灰などの工業用製品はこのようなカルシウム塩の大部分を与える。このように、それらは本発明の吸着剤組成物に適当な成分である。
【0064】
他のカルシウム源は様々な工業製品を含む。このような製品は市販され、及びそのいくつかは他の工業的方法の廃棄物又は副生成物として販売されている。好ましい実施態様において、該製品は本発明の組成物にシリカ、アルミナ、又はその両方を与える。カルシウムに加えてシリカ及び/又はアルミナを含有する工業用製品の限定されない例は、ポルトランドセメント、セメントキルンダスト、石灰キルンダスト、シュガービート石灰、スラグ(例えば鋼鉄スラグ、ステンレス鋼スラグ及び高炉スラグ)、紙の脱インクスラッジ灰、キュポラアレステル濾過ケーキ、及びキュポラ炉ダストを含む。
【0065】
これらの材料及び必要に応じて他の材料を組み合わせて、カルシウムを含有する、及び好ましくはシリカ及びアルミナも含有するアルカリ粉末又はアルカリ粉末の混合物を与える。カルシウム、シリカ及びアルミナを含有する他のアルカリ粉末は、ポゾラン材料、木材灰、もみ殻灰、クラスC飛灰、及びクラスF飛灰を含む。種々の実施態様において、これらの材料及び類似材料は、特に得られる組成物が、2〜10重量%のAl、40重量%より多くのCaO、10重量%より多くのSiO、約1〜5%のFe及び約2重量%未満の総アルカリの好ましい範囲内になる成分としてそれらを含有する場合、吸着剤組成物の適当な成分である。材料の混合物も使用される。限定されない例は、ポルトランドセメント及び石灰の混合物、及びセメントキルンダスト(例えばセメントキルンダスト及び石灰キルンダスト)を含有する混合物を含む。
【0066】
シュガービート石灰は、シュガービートからの砂糖の製造から得られる固体廃棄物材料である。それは、カルシウム含量が多く、及びシュガービートに関して行われるライミング手順において沈澱する種々の不純物を含む。それは、市販品であり、通常、造園家、農家などに対して土壌改良剤として販売される。
【0067】
セメントキルンダスト(CKD)は、通常、ポルトランドセメントの製造の間に、セメントキルン又は関連した加工装置内に生成される副生成物を示す。
【0068】
通常、CKDは、キルン、予備処理装置、及び/又は材料取扱系の異なる領域において生成される異なる粒子の組合せを含んでなり、例えば、クリンカーダスト、部分的に完全に焼成された材料ダスト、及び原料(水和物及び脱水物)ダストを含む。CKDの組成は、使用する原料及び燃料、製造及び加工条件、及びセメント製造法におけるCKDの収集地点の位置に応じて変化する。CKDは、キルン流出物(すなわち、排出物)流、クリンカー冷却器流出物、予備焼炉流出物、大気汚染制御デバイスなどから収集されるダスト又は粒状物質を含み得る。市販のCKDはその源によるが、アルカリ性の範囲がある。いくつかの実施態様において、低アルカリ性CKDの使用により、本明細書に記載される低アルカリ仕様の粉末吸着剤を満たすことが可能である。高アルカリCKDのみが利用される場合、上記記載される低アルカリ材料と混合又は該アルカリ材料で高アルカリCKD製品の一部を代用することが必要となり得る。
【0069】
CKD組成物は異なるキルンに関して変化するが、CKDは、通常、クリンカー及び焼成材料のダストの存在のため、少なくともいくらかのセメント質及び/又はポゾラン特性を有する。典型的なCKD組成物は、ケイ素含有化合物、例えばケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウムを含むケイ酸塩;アルミニウム含有化合物、例えばアルミン酸三カルシウムを含むアルミン酸塩;及び鉄含有化合物、例えばアルミノフェライト四カルシウムを含むフェライトを含んでなる。CKDは、通常、酸化カルシウム(CaO)を含んでなる。例示的なCKD組成物は、約10〜約60重量%、必要に応じて約25〜約50重量%、及び必要に応じて約30〜約45重量%の酸化カルシウムを含んでなる。いくつかの実施態様において、CKDは、(水による水和反応に利用可能である)遊離石灰を約1〜約10%、必要に応じて約1〜約5%、及びいくつかの実施態様において、約3〜約5%の濃度で含んでなる。さらに、特定の実施態様において、CKDは、特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び硫黄を含有する化合物を含んでなる。
【0070】
カルシウムを含んでなり、及び好ましくはシリカ及びアルミナをさらに含んでなるアルカリ粉末の他の例示的な源は、(上記に記載されるポルトランドセメント及びCKDに加えて)種々のセメント関連副生成物を含む。混合セメント生成物は、このような源の適当な一例である。これらの混合セメント生成物は、一般にスラグ及び/又はポゾラン(例えば、飛灰、シリカフューム、焼成頁岩)と組み合わせたポルトランドセメント及び/又はそのクリンカーの混合物を含む。ポゾランは、通常、それ自身セメント質ではないが、遊離石灰(遊離CaO)及び水と反応させた場合、水硬性セメント特性を発揮するケイ素質材料である。他の供給源は、メーソンリーセメント及び/又は水硬性石灰であり、これらは、ポルトランドセメント及び/又はそのクリンカーと石灰又は石灰石との混合物を含む。他の適当な供給源は、アルミナセメントであり、これらは、石灰石及びボーキサイト(1つ以上の水酸化アルミニウム鉱物、及びシリカ、酸化鉄、チタニア、アルミニウムケイ酸塩、及び少量又はわずかな量の他の不純物の種々の混合物を含んでなる、天然に存在する不均一材料)の混合物を燃焼させることにより製造される水硬性セメントである。さらに別の例は、ポゾランセメントであり、これは、実質的な濃度のポゾランを含有する混合セメントである。通常、ポゾランセメントは、酸化カルシウム含んでなるが、ポルトランドセメントを実質的に含有しない。広く用いられるポゾランの一般例としては、天然ポゾラン(例えば特定の火山灰又は凝灰岩、特定の珪藻土、焼成粘土及び頁岩)及び合成ポゾラン(例えばシリカフューム及び飛灰)が挙げられる。
【0071】
石灰キルンダスト(LKD)は、石灰の製造からの副生成物である。LKDは、石灰キルン又は関連加工装置から収集されるダスト又は粒状物質である。製造される石灰は、カルシウム高含有石灰又はドロマイト石灰として分類することができ、及びLKDはそれを形成する方法に応じて変化する。石灰は、度々カルサイト原料、例えば炭酸カルシウム(CaCO)を加熱して、遊離石灰CaO及び二酸化炭素(CO)を形成することにより行われる焼成反応により製造される。カルシウム高含有石灰は、高濃度の酸化カルシウム及び通常アルミニウム含有及び鉄含有化合物を含むいくつかの不純物を有する。カルシウム高含有石灰は、高純度炭酸カルシウム(約95%以上の純度)から通常形成される。カルシウム高含有石灰加工から得られるLKD生成物中の典型的な酸化カルシウム含量は、約75重量%以上、必要に応じて約85重量%以上、及びいくらかの場合、約90重量%以上である。いくつかの石灰製造法において、白雲石(CaCO−MgCO)を、加熱により分解して主に酸化カルシウム(CaO)及び酸化マグネシウム(MgO)を生成させる。これにより形成されるものは、ドロマイト石灰として既知である。ドロマイト石灰加工により生成されるLKDにおいて、酸化カルシウムは、約45重量%以上、必要に応じて約50重量%より多く、及び特定の実施態様において、約55重量%より多く存在し得る。LKDは、用いる石灰方法の種類に基づいて変化するが、通常、比較的高濃度の遊離石灰を有する。LKD中の遊離石灰の典型的な量は、生成される石灰生成物中に存在する酸化カルシウムの相対濃度に応じて、約10〜約50%、必要に応じて約20〜約40%である。
【0072】
スラグは、通常、金属製造及び加工によって生成される副生成物化合物である。用語「スラグ」は、多種多様の副生成物化合物を包含し、典型的に鉄類及び/又は鋼鉄の製造及び加工の大部分の非金属副生成物を含んでなる。通常、スラグは、種々の金属酸化物の混合物であると考えられているが、しかし、それらは、度々金属硫化物及び元素形態の金属原子を含有する。
【0073】
本発明の特定の実施態様に有用なスラグ副生成物の種々の例は、鉄スラグ、例えば高炉(キュポラ炉としても既知)中で生成されるものを含み、その例としては、空冷高炉スラグ(ACBFS)、膨張又は発泡高炉スラグ、ペレット状高炉スラグ、粒状高炉スラグ(GBFS)などが挙げられる。鋼鉄スラグは、塩基性酸素製鋼炉(BOS/BOF)又は電気アーク炉(EAF)から製造することができる。多くのスラグは、セメント質及び/又はポゾラン特性を有することが認識されているが、しかし、当業者に認識されるように、スラグがこれらの特性を有する程度は、それらの各々の組成物及びそれらが誘導される方法に依存する。典型的なスラグは、カルシウム含有化合物、ケイ素含有化合物、アルミニウム含有化合物、マグネシウム含有化合物、鉄含有化合物、マンガン含有化合物及び/又は硫黄含有化合物を含んでなる。特定の実施態様において、スラグは酸化カルシウムを約25〜約60重量%、必要に応じて約30〜約50重量%、及び必要に応じて約30〜約45重量%で含んでなる。通常セメント質特性を有する適当なスラグの一例は、粉砕粒状高炉スラグ(GGBFS)である。
【0074】
上記のように、他の適当な例としては、高炉に取り付けられた大気汚染制御デバイスから収集された高炉(キュポラ)炉ダスト(例えばキュポラアレスターフィルターケーキ)が挙げられる。別の適当な工業用副生成物供給源は、紙の脱インクスラッジ灰である。当業者に認識されるように、本発明の吸着剤組成物を形成するアルカリ粉末のためのカルシウム源として適切である、多くの異なる製造/工業的方法副生成物が存在する。同様に、多くのこれらのよく知られた副生成物は、アルミナ及び/又はシリカを含んでなる。幾つかのもの、例えば石灰キルンダストは、多量のCaO及び比較的少量のシリカ及びアルミナを含有する。また、任意の典型的な工業製品及び/又は工業用副生成物の組合せも、本発明の特定の実施態様のアルカリ粉末としての使用が意図されている。
【0075】
種々の実施態様において、所望の処理レベルのシリカ及び/又はアルミナは、材料(例えばポルトランドセメント、セメントキルンダスト、石灰キルンダスト、及び/又はシュガービート石灰)を添加することにより得られるものである。したがって、好ましいシリカ及びアルミナレベルを与えるのに必要な場合、このような材料を、アルミノケイ酸塩材料、例えば、限定されないが、粘土(例えばモンモリロナイト、カオリンなど)で補うことができる。種々の実施態様において、補足のアルミノケイ酸塩材料は、石炭燃焼系に添加する種々の吸着剤成分の少なくとも約2重量%、及び好ましくは少なくとも約5重量%を構成する。概して、適切なレベルのカルシウムが維持される限り、技術的観点からの上限は存在しない。しかし、費用の観点から、通常、より高価なアルミノケイ酸塩材料の割合を制限することが望ましい。従って、吸着剤成分は、好ましくは約2〜50重量%、好ましくは2〜20重量%、及びより好ましくは、約2〜10重量%のアルミノケイ酸塩材料(例えば典型的な粘土)を含んでなる。吸着剤の限定されない例は、約93重量%のCKDとLKDとのブレンド(例えば、50:50のブレンド又は混合物)及び約7重量%のアルミノケイ酸塩粘土である。
【0076】
種々の実施態様において、アルカリ粉末吸着剤組成物は、1つ以上のカルシウム含有粉末(例えばポルトランドセメント、セメントキルンダスト、石灰キルンダスト、種々のスラグ、及びシュガービート石灰)を、アルミノケイ酸塩粘土(例えば、限定されないが、モンモリロナイト又はカオリン)と共に含有する。吸着剤組成物は、好ましくは硫酸カルシウムが粒子制御系によって取り扱われるように、CaO吸着剤成分の存在下での硫黄含有石炭の燃焼により生成される硫酸カルシウムと共に耐火性混合物を形成するのに;及び、水銀及び他の重金属が酸性条件下に灰から浸出しないように、水銀及び他の重金属と共に耐火性混合物を形成するのに、十分なSiO及びAlを含有する。好ましい実施態様において、カルシウム含有粉末吸着剤は、最低10重量%のシリカ及び最低2〜10重量%のアルミナを含有する。好ましくは、アルミナ濃度は、ポルトランドセメントにおいて見出されるものよりも高く、これは、Alに基づいて約5重量%よりも高く、好ましくは約6重量%よりも高い。
【0077】
種々の実施態様において、アルカリ粉末吸着剤組成物の吸着剤成分は、任意に添加したハロゲン(例えば臭素)化合物又は化合物と共に働き、灰中の塩化物並びに水銀、鉛、ヒ素、及び他の重金属を捕捉し、酸性条件下、重金属を非浸出性にし、及び生成される灰のセメント質特性を改善する。結果として、有害元素の放出を緩和し、低減し、又は排除し、及び価値あるセメント質材料を石炭燃焼の副生成物として生成させる。
【0078】
適当なアルミノケイ酸塩材料は、多種多様の無機鉱物及び材料を含む。例えば、多くの鉱物、天然材料、及び合成材料は、任意の他の陽イオン(例えば、限定されないが、Na、K、Be、Mg、Ca、Zr、V、Zn、Fe、Mn)及び/又は他の陰イオン(例えば水酸化物イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、炭酸イオン)と共に、任意の水和水と共に、オキシ環境と結びついたケイ素及びアルミニウムを含有する。本明細書において、このような天然及び合成材料は、アルミノケイ酸塩材料を指し、及び限定されない例は、上記に示される粘土である。
【0079】
アルミノケイ酸塩材料において、ケイ素は四面体として存在する傾向があるが、一方、アルミニウムは、四面体、八面体、又はその両方の組合せとして存在する。鎖状又は網状のアルミノケイ酸塩は、このような材料において、ケイ素及びアルミニウム四面体又は八面体の間の1、2又は3つの酸素原子を共有することによって組み立てられる。このような鉱物は、種々の名称、例えばシリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、ゲオポリマー、ケイ酸塩、及びアルミン酸塩に従う。しかし、提示したアルミニウム及び/又はケイ素を含有する化合物は、酸素の存在下での燃焼の高温に曝される際に、シリカ及びアルミナを生成する傾向がある。
【0080】
一実施態様において、アルミノケイ酸塩材料は、多形体のSiO−Alを含む。例えば、シリミネートは、シリカ八面体及び四面体と八面体との間に最終的に分割されるアルミナを含有する。カイヤナイトは、シリカ四面体及びアルミナ八面体に基づく。アンダルサイトは、別の多形体のSiO・Alである。
【0081】
他の実施態様において、ケイ酸塩鎖は、ケイ素(シリカとして)及び/又はアルミニウム(アルミナとして)を本発明の組成物に与える。ケイ酸塩鎖は、限定されないが、酸素原子を共有することにより結合したSiO四面体の無限鎖から構成される輝石及び準輝石ケイ酸塩を含む。
【0082】
他の適当なアルミノケイ酸塩材料としては、シート状材料、例えば、限定されないが、雲母、粘土、クリソタイル(例えばアスベスト)、タルク、石鹸石、パイロフィライト、及びカオリライトが挙げられる。このような材料は、シリカ及びアルミナ八面体及び四面体が2つの酸素原子を共有する層構造を有することを特徴とする。層状アルミノケイ酸塩としては、粘土、例えば緑泥石、海緑石、イライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ソーコン石、バーミキュライト、カオリライト、カルシウムモンモリロナイト、ナトリウムモンモリロナイト、及びベントナイトが挙げられる。他の例としては、雲母及びタルクが挙げられる。
【0083】
また、適当なアルミノケイ酸塩材料としては、合成及び天然ゼオライト、例えば、限定されないが、方沸石、方ソーダ石、菱沸石、ソーダフッ石、フィリップサイト、及びモルデナイト群が挙げられる。他のゼオライト鉱物としては、輝沸石、ブリュースター沸石、剥沸石、束沸石、ヤガワラライト(yagawaralite)、濁沸石、苦土沸石、ポーリング沸石、及びクリノプチロライトが挙げられる。該ゼオライトは、アルミノケイ酸塩四面体骨格、イオン交換性「巨大陽イオン」(例えばNa、K、Ca、Ba、及びSr)及びゆるく保持された水分子を特徴とする鉱物又は合成材料である。
【0084】
他の実施態様において、骨格又は3Dケイ酸塩、アルミン酸塩、及びアルミノケイ酸塩を使用する。骨格アルミノケイ酸塩は、SiO四面体、AlO四面体、及び/又はAlO八面体が三次元で結合している構造を特徴とする。シリカ及びアルミナの両方を含有する骨格ケイ酸塩の限定されない例としては、斜長石、例えば曹長石、灰長石、中性長石、亜灰長石、曹灰長石、微斜長石、サニディン及び正長石が挙げられる。
【0085】
一態様において、吸着剤粉末組成物は、それらが多量のカルシウム、好ましくは酸化カルシウムに基づいて20重量%より多くの又は40重量%より多くのカルシウムを含有すること、及びさらに、それらが市販品(例えばポルトランドセメント)において見出されるものよりも高いレベルのシリカ及び/又はアルミナを含有することを特徴とする。好ましい実施態様において、吸着剤組成物は、5重量%より多くのアルミナ、好ましくは6重量%より多くのアルミナ、好ましくは7重量%より多くのアルミナ、及び好ましくは約8重量%より多くのアルミナを含んでなる。
【0086】
石炭又は他の燃料は、燃焼に際して大気中に放出される窒素、硫黄及び/又は水銀の量を制御するのに有効な比率の吸着剤成分によって処理される。種々の実施態様において、吸着剤成分の全処理レベルは、吸着剤がカルシウム、シリカ及びアルミナを含有する粉末吸着剤である場合、処理される石炭の重量又は燃焼により消費される石炭の比率に基づいて約0.1重量%〜約20重量%の範囲である。吸着剤成分を単独の組成物に組み合わせる場合、成分処理レベルは、吸着剤処理レベルに対応する。このように単独の吸着剤組成物を、石炭燃焼系への添加に関して、提供及び計量し、又はそうでなければ測定できる。概して、硫黄及び/又は水銀放出について所望の効果を十分に与えつつも、過剰の灰によって系が過負荷にならないように、最低量の吸着剤を使用することが望ましい。従って、種々の実施態様において、吸着剤の処理レベルは約0.1重量%〜約10重量%、いくつかの実施態様において、約1又は2重量%〜約10重量%の範囲である。多くの石炭について、6重量%の粉末吸着剤の添加率は、許容可能であることが見出された。
【0087】
ハロゲン化合物を含んでなる吸着剤組成物は、ハロゲンを含有する1つ以上の有機又は無機化合物を含有する。ハロゲンは、塩素、臭素、及びヨウ素を含む。好ましいハロゲンは、臭素及びヨウ素である。ハロゲン化合物は、ハロゲン(特に臭素及びヨウ素)源である。臭素についてのハロゲン源は、臭化物、臭素酸塩及び次亜臭素酸塩を含む、種々の臭素の無機塩を含む。種々の実施態様において、有機臭素化合物は、それらの費用又は利用可能性のため、あまり好ましくない。しかし、高レベルの臭素を適当に含有する臭素有機源は、本発明の範囲内であると考えられる。有機臭素化合物の限定されない例としては、臭化メチレン、臭化エチル、ブロモホルム、及び四臭化炭素が挙げられる。限定されないヨウ素無機源としては、次亜ヨウ素酸塩、ヨウ素酸塩、及びヨウ化物が挙げられ、ヨウ化物が好ましい。有機ヨウ素化合物も使用することができる。
【0088】
ハロゲン化合物が無機置換体である場合、それは、好ましくは臭素又はヨウ素含有アルカリ土類元素の塩である。典型的なアルカリ土類元素は、ベリリウム、マグネシウム、及びカルシウムを含む。ハロゲン化合物のなかでも、アルカリ土類金属(例えばカルシウム)の臭化物及びヨウ化物が特に好ましい。アルカリ金属の臭素及びヨウ素化合物、例えば臭化物及びヨウ化物は、水銀放出の低減に有効である。しかし、幾つかの実施態様において、それらは、ボイラー管及び他の鋼鉄表面の腐食をもたらし、及び/又は管の劣化及び/又は耐火れんがの劣化に寄与する傾向があるため、余り好ましくない。種々の実施態様において、炉の問題を避けるために、ハロゲンのカリウム塩を避けることが望ましいことが判明した。
【0089】
種々の実施態様において、アルカリ土類塩(例えばカルシウム)の使用は、ナトリウム及び/又はカリウムによるこのような問題を回避する傾向があることが判明した。従って、種々の実施態様において、石炭燃焼系中に添加する吸着剤は、アルカリ金属含有臭素又はヨウ素化合物を本質的に含有しない、又はより詳細にはナトリウム含有又はカリウム含有臭素又はヨウ素化合物を本質的に含有しない。
【0090】
種々の実施態様において、ハロゲンを含有する吸着剤組成物を、液体又は固体組成物の形態で提供する。種々の実施態様において、ハロゲン含有組成物を、燃焼前に石炭に投与し、燃焼の間に炉に添加し、及び/又は炉の下流の燃料ガス中に投与する。ハロゲン組成物が固体である場合、それは、粉末吸着剤として本明細書に記載のカルシウム、シリカ及びアルミナ成分をさらに含有することができる。あるいは、固体ハロゲン組成物を、石炭上に投与し、及び/又は他の場合、カルシウム、シリカ及びアルミナを含んでなる吸着剤成分から別々に燃焼系中に投与する。該組成物が液体組成物である場合、それを通常別々に投与する。
【0091】
種々の実施態様において、液体水銀吸着剤は、5〜60重量%の臭素又はヨウ素含有可溶性塩を含有する溶液を含んでなる。好ましい臭素及びヨウ素塩の限定されない例としては、臭化カルシウム及びヨウ化カルシウムが挙げられる。種々の実施態様において、液体吸着剤は、5〜60重量%の臭化カルシウム及び/又はヨウ化カルシウムを含有する。燃焼前の石炭の添加の効率性のため、種々の実施態様において、できるだけ高レベルの臭素又はヨウ素化合物を有する水銀吸着剤を添加することが好ましい。限定されない実施態様において、液体吸着剤は、50重量%以上のハロゲン化合物、例えば臭化カルシウム又はヨウ化カルシウムを含有する。
【0092】
種々の実施態様において、ハロゲン化合物を含有する吸着剤組成物は、硝酸塩化合物、亜硝酸塩化合物、又は硝酸塩化合物と亜硝酸塩化合物との組合せをさらに含有する。好ましい硝酸塩及び亜硝酸塩化合物は、マグネシウム及びカルシウム、好ましくはカルシウムのものを含む。
【0093】
さらなる例として、本発明の一実施態様は、液体水銀吸着剤を、燃焼前に生石炭又は粉砕石炭に直接添加することを含む。例えば、水銀吸着剤を、石炭供給機中の石炭に添加する。液体水銀吸着剤の添加は、0.01〜5%の範囲である。種々の実施態様において、処理は、5%未満、4%未満、3%未満、又は2%未満、1%未満、0.5%未満及び0.2%未満であり、ここで全ての%は、処理される石炭の量又は燃焼による石炭の消費率に基づく。より高い処理レベルが可能であるが、材料を浪費する傾向があり、さらなる利益は達成されない。好ましい処理レベルは、湿ベースで0.025〜2.5重量%である。液体吸着剤によって添加する固体臭化物又はヨウ化物塩の量は、もちろん、吸着剤中のその重量分率によって低減される。典型的な実施態様において、臭化物又はヨウ化物化合物の添加は、低レベル、例えば固体に基づいて0.01重量%〜1重量%である。従って、50重量%の溶液を使用する場合、低レベルの添加を達成するために、吸着剤を0.02%〜2%の比率で添加する。例えば、好ましい実施態様において、石炭を、臭化カルシウムが約50重量%の吸着剤と仮定して計算された0.02〜1重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%の比率の液体吸着剤によって処理する。典型的な実施態様において、50%の臭化カルシウムを含有する液体吸着剤を、約1%、0.5%、又は0.25%(ここで%は石炭の重量に基づく)で燃焼前に石炭上に添加する。好ましい実施態様において、初期処理を、低レベル(例えば0.01%〜0.1%)にて開始し、及び放出の監視に基づいて所望の(低)レベルの水銀放出が達成されるまで徐々に増大させる。ハロゲンを固体として、又は他の成分(例えばカルシウム、シリカ、アルミナ、酸化鉄など)を有する多成分組成物として添加する場合、ハロゲンの類似処理レベルを使用する。
【0094】
使用する場合、液体吸着剤を、石炭上に又はそうでなければ石炭燃焼系中に、噴霧し、滴下し、又はそうでなければ供給する。種々の実施態様において、添加を、炉中への燃料/吸着剤組成物の投入前に、周囲条件にて石炭又は他の燃料に対して行う。例えば、吸着剤を、炉中へのその注入前に、粉末状石炭上に添加する。あるいは又は加えて、液体吸着剤を、燃焼の間に炉中に及び/又は炉の下流の燃料ガス中に添加する。水銀吸着剤組成物を含有するハロゲンの添加は、しばしば1分間又は数分間の燃料ガス中の測定される水銀レベルの低下を伴う。種々の実施態様において、水銀の低減が、カルシウム、シリカ及びアルミナに基づくアルカリ粉末吸着剤の使用により達成される低減に加えて起こる。
【0095】
別の実施態様において、本発明は、燃焼の間に炉中にハロゲン成分(例えば臭化カルシウム溶液)を直接添加することを含む。別の実施態様において、本発明は、2700°F〜1500°F、好ましくは2200°F〜1500°Fの範囲の温度を特徴とする領域中の炉の下流のガス流中への、上記で議論したような臭化カルシウム溶液の添加を提供する。種々の実施態様において、処理レベルの臭素化合物(例えば臭化カルシウム)を、混焼、予燃焼及び後燃焼の間で、任意の割合の添加に分割する。
【0096】
一実施態様において、いわゆる精製炭を製造するために、種々の吸着剤成分を、その燃焼前に石炭上に添加する。吸着剤が投与される石炭は好ましくは粒状石炭であり、及び必要に応じて従来の手順にしたがって粉砕又は粉末化される。限定されない例において、石炭を、75重量%の粒子が200メッシュスクリーン(200メッシュスクリーンは75μmの孔径を有する)を通過するように粉砕する。種々の実施態様において、吸着剤成分を、固体として、又は液体及び固体の組合せとして石炭上に添加する。通常、固体吸着剤組成物は、粉末の形態である。吸着剤を液体(例えば水中の1つ以上の臭素又はヨウ素塩溶液)として添加する場合、一実施態様において、石炭は、バーナー中に供給されるときに湿ったままである。種々の実施態様において、吸着剤組成物を、石炭燃焼施設にて、コンベア、スクリュー押し出し、又は他の供給装置上にある石炭上に噴霧又は混合することによって、石炭上に連続的に添加する。加えて又はあるいは、吸着剤組成物を、石炭燃焼施設にて又は石炭産地にて、石炭に別々に混合する。好ましい実施態様において、吸着剤組成物を、バーナー中に供給されるときに、液体又は粉末として石炭に添加する。例えば、好ましい商業的実施態様において、吸着剤を、注入前に石炭を粉砕する粉砕器中に投与する。所望であれば、吸着剤組成物の添加率を、所望の水銀放出レベルを達成するために変化させる。一実施態様において、燃焼排ガス中の水銀レベルを、監視し、及び所望の水銀レベルを維持するために必要とされるように、吸着剤添加レベルを上昇させるか、又は低下させるように調整する。
【0097】
好ましい実施態様において、窒素、水銀及び硫黄を、工業的標準方法、例えば米国材料試験協会(ASTM)により公表されるもの、又は国際標準化機構(ISO)により公表される国際規格を使用して監視する。分析機器を含む装置は、好ましくは水銀及び硫黄吸着剤の添加地点の下流の対流経路に配置される。好ましい実施態様において、水銀監視装置を、粒子制御系のきれいな側上に配置する。代わりに又は加えて、装置又は監視デバイスを取り付けることなく、燃料ガスを、対流流路の適切な位置にサンプリングする。種々の実施態様において、測定される水銀又は硫黄のレベルを使用して、石炭燃焼系中への吸着剤組成物の添加率を調整するために作動又は制御されるポンプ、ソレノイド、噴霧器、及び他のデバイスにフィードバックシグナルを与える。あるいは又は加えて、吸着剤添加率を、観察された水銀及び/又は硫黄のレベルに基づいて、人間オペレータによって調整することができる。
【0098】
種々の実施態様において、本明細書に記載される吸着剤の存在下、石炭を燃焼させることにより生成される灰は、水と組み合わせた場合、硬化し、及び強度を発揮するセメント質である。灰は、その比較的高カルシウムレベルのために自己硬化する傾向がある。灰は、単独又はポルトランドセメントとの組合せで、種々のセメント質混合物(例えばモルタル、コンクリート、及びグラウト)中への処方に適当な水硬性セメントとして有用である。
【0099】
本明細書に記載の生成される灰のセメント質特性は、例えば灰又はより正確には、灰を含有するセメント質混合物の強度活動指数を考慮して示される。ASTM C311−05に記載されているように、強度活動指数の測定は、100%のポルトランドセメントコンクリートと、20%のポルトランドセメントを当量の試験セメントで置換した試験コンクリートとの硬化挙動及び特性発現を比較することによりなされる。標準試験において、強度を7日及び28日にて比較する。試験コンクリートの強度がポルトランドセメントコンクリートの強度の75%以上である場合、「合格」と考えられる。種々の実施態様において、本発明の灰は、ASTM試験における100%〜150%の強度活動を示し、これは強く「合格」を示す。類似した高い値は、試験を、ポルトランドセメントと灰との80:20のブレンド以外を有する試験混合物で行う場合に観察される。種々の実施態様において、100%〜150%の強度活動指数は、85:15〜50:50のブレンドで達成され、ここで比率の第一の数値は、ポルトランドセメントであり、及び比率の第二の数値は本発明にしたがって製造される灰である。特定の実施態様において、全て灰の試験セメント質混合物(すなわち、灰が試験混合物中のセメントの100%を示すもの)の強度発現は、全てポルトランドセメントのコントロールの強度の50%を超え、及び好ましくは75%を超え、及びより好ましくは100%以上、例えば100〜150%である。このような結果は、本明細書に記載される吸着剤成分の存在下、石炭又は他の燃料を燃焼させることにより生成される灰の高度のセメント質特性を示す。
【0100】
本発明による石炭の燃焼から得られる灰は、非浸出形態の水銀を含有するため、上市することができる。使用済み又は廃棄物飛灰又は底部灰の限定されない使用は、セメント生成物(例えばポルトランドセメント)における成分としての使用を含む。種々の実施態様において、セメント生成物は、約0.1%から約99重量%までの本発明の組成物を燃焼させることにより生成される石炭灰を含有する。一態様において、石炭灰中の水銀及び他の重金属の非浸出特性は、石炭灰を全ての既知の石炭灰の工業用途に適当なものにする。
【0101】
本発明による石炭灰、特に粒子制御系(バグハウス、電気集塵装置など)により収集される飛灰は、ポルトランドセメントコンクリート(PCC)において、ポルトランドセメントの部分又は完全な置換物として使用される。種々の実施態様において、灰は、鉱物混合剤として、又は混合セメントの成分として使用される。混合剤として、灰は、ポルトランドセメントの全置換物又は部分置換物であり得、及び回分式プラントにてレディミックスコンクリート中に直接添加することができる。あるいは、又は加えて、灰を、セメントクリンカーに埋設して、又はポルトランドセメントとブレンドして混合セメントを製造する。
【0102】
クラスF及びクラスC飛灰は、例えば、米国標準ASTM C 618中に定義されている。ASTM標準は、飛灰をポルトランドセメントの部分置換物として使用する場合、飛灰の仕様書として役立つ。本明細書に記載される方法により生成される石炭灰は、ASTM C 618におけるクラスF及びクラスC飛灰の仕様書に記載されているものよりも高いカルシウム含量及び低いシリカ及びアルミナ含量である傾向があることに留意すべきである。本発明の飛灰について典型的な値は、>50重量%のCaO、及び<25重量%のSiO/Al/Feである。種々の実施態様において、灰は、51〜80重量%のCaO及び約2〜約25%のシリカ、アルミナ及び酸化鉄の合計である。本発明による飛灰は、高度にセメント質であり、このようなセメント質材料及びセメント質材料において使用されるポルトランドセメントを50%以上置換し、又は削減することを可能にすることが観察されている。種々の用途において、本明細書に記載される吸着剤と共に石炭を燃焼させることから得られる石炭灰は、このような組成物において、ポルトランドセメントの完全な(100%)置換物であるのに十分にセメント質である。
【0103】
さらなる例として、米国コンクリート学会(ACI)は、クラスF飛灰は15〜25%のポルトランドセメントを置換すること、及びクラスC飛灰は20〜35%のポルトランドセメントを置換することを推奨している。本明細書に記載される方法に従って生成される石炭灰は、100%のポルトランドセメントを使用する生成物において発現したものと等しい28日強度発現を維持しながら、50%までのポルトランドセメントを置換するのに十分にセメント質であることが判明した。すなわち、種々の実施態様において、該灰はASTM C 618によるクラスC又はクラスF灰としての化学組成による適格ではないが、それにも関わらず、それは、高強度コンクリート生成物に処方するのに有用である。
【0104】
また、本発明に従って製造される石炭灰は、流動性フィル(これは制御された低強度材料又はCLSMとも呼ばれる)の製造における成分として使用することができる。CLSMは、圧縮盛土又は他のフィルの代わりに、自己平滑化自己圧縮バックフィル材料として使用される。本明細書に記載される灰は、種々の実施態様において、このようなCLSM材料におけるポルトランドセメントの100%の置換物として使用される。このような組成物は、水、セメント、及び凝集体と共に処方され、所望の流動性及び終局強度の発現を与える。例えば、流動性フィルの終局強度は、硬化材料の除去性が必要とされる場合、1035kPa(150ポンド/平方インチ)を超えるべきではない。より高い終局強度を達成するために処方する場合、ジャックハンマーが除去に必要とされ得る。しかし、より高い耐荷重性の用途において使用される流動性フィル混合物を処方することが望ましい場合、硬化に際してより高い範囲の圧縮強度を含有する混合物を設計することができる
【0105】
また、本明細書に記載の方法にしたがって生成される石炭灰は、安定化ベース及びサブベース混合物の成分として有用である。1950年代以来、塩基性石灰/飛灰/凝集体処方物の多数の変形が、安定化ベース混合物として使用されてきている。安定化ベースの使用例は、安定化道路基盤として使用されるものである。例えば、砂利道は、該組成物による灰を使用して、その代わりに再使用することができる。既存の道路表面を、粉砕し、及びその元の位置に配置する。例えば本明細書に記載の方法により生成される灰を、粉砕された道路材料中に広げ、及び混合する。圧縮後、シールコート表面を道路上に配置する。本発明による灰は、このような用途に有用である。なぜなら、灰は規制要件を超えて浸出する重金属を含有しないからである。むしろ、本発明の方法により生成される灰は、本明細書に記載の吸着剤を用いずに石炭を燃焼させることにより生成される石炭灰よりも少ない浸出性水銀及び少ない浸出性の他の重金属(例えばヒ素及び鉛)を含有する。
【0106】
したがって、本発明は、高レベルの水銀を含有する石炭の燃焼から得られる石炭灰又は飛灰を埋め立てする必要性を排除する種々の方法を提供する。費用がかかる廃棄の代わりに、材料を販売でき、又はそうでなければ原料として使用することができる。
【0107】
好ましい実施態様において、吸着剤の使用は、種々の用途において、ポルトランドセメントを全体的又は部分的に置換することができるセメント質灰をもたらす。セメント質生成物の再使用のため、少なくともいくつかのポルトランドセメントの製造が避けられ、セメントを製造するのに必要とされるエネルギーが節約され、及びセメント製造から生じる相当量の二酸化炭素の放出が避けられる。二酸化炭素放出における他の節約は、脱硫スクラバーにおける石灰又は炭酸カルシウムの必要性が低減されることからもたらされる。したがって、本発明は、種々の実施態様において、エネルギーを節約し、及び温室効果ガス(例えば二酸化炭素)の放出を低減する方法を提供する。本発明のこの態様の種々の実施態様のさらなる詳細を以下に記載する。
【実施例】
【0108】
実施例1
亜瀝青炭を用いる精製炭生成物の使用に関して、粉末吸着剤及びハロゲン系吸着剤の必要な仕様を以下に示す。
【0109】
【表1】



1.ハード限界7%のSOに加えて、CaOとSOの割合は6:1以下に低下させず、好ましくは8:1よりも大きく維持すべきである。これにより添加する硫黄を吸収するために十分なCaOを確保する。
2.実際に、粉末吸着剤のHg含量は処理される石炭含量と同じ又はより少なく維持すべきである。
酸化分析の許容試験方法は以下である:
ASTM D3682 石炭利用工程からの燃焼残留物中での多量及び微量元素に関す
る標準試験方法
ASTM C114 水硬性セメントの化学的分析に関する標準試験方法
水銀含量に関する許容試験方法
ASTM D6414 酸抽出又は湿式酸化/冷蒸気原子吸光による石炭及び石炭燃焼
残留物中の水銀総量に関する標準試験方法
ASTM D6722 直接燃焼分析による石炭及び石炭燃焼残留物中の総水銀に関す
る標準試験方法
EPA 7473 固体又は半固体廃棄物中の水銀(冷蒸気技術の手引き)
【0110】
【表2】
【0111】
実施例2
一連の試験は、パウダーリバーベイスン(PRB)亜瀝青炭の燃焼の間、NOx及びHgの放出における吸着剤の効果を測定するためにエネルギー及び環境研究センター(EERC)の燃焼試験施設(CTF)で行われた。試験は、使用方法が、内国歳入法45条に定義されるように、「精製炭」が生成することを確認するための試みを支持するために行われた。45条(c)(7)(A)は燃料を含む精製炭を定義し、これは、1)石炭から生成される固体燃料であり、2)それを蒸気生成目的で使用するという合理的な予測をもった納税者により販売され、及び3)(蒸気生成に使われた場合)「放出低減の認定」を受けて、納税者に資格が与えられる。
45条(c)(7)(B)には、用語「放出低減の認定」は供給石炭原料を燃焼させる場合に放出される放出量と比べて、精製炭を燃焼させる場合に放出されるNOx放出の少なくとも20%及びSO放出又はHg放出のいずれかの少なくとも40%の低減を意味すると定義している。
【0112】
設備及び手順の記述
CTFは、SOx及びNOx放出、並びに石炭及び他燃料又は廃棄物材料の燃焼中、有毒微量金属(Hg、As及びPb)の転移を広く調査するために使用される。CTFは工業的及び現寸の微粉炭(pc)燃焼ボイラーで生成されるサンプルの典型であるガス及び粒子サンプルを生成することが可能である。試験設備は、電気集塵装置(ESP)又は粒子制御のための繊維質フィルターバグハウス、NOx制御のための選択接触還元(SCR)カラム、及び硫黄放出を制御するためのウェットスクラバーを含む放出を低減するために使用され得るいくつかの汚染制御装置を有する。CTFは、蒸気から電気を発生させるために、米国基準の施設により使用される実物大の米国PC燃焼ボイラーの型及び形状を殆ど全て再現して設計された。例えば、該CTFは所望の運転条件によるが、550,000〜750,000のBtu/hrの速度でpcを燃焼できる。該CTFは実物大のpc燃焼ボイラーの条件で模擬実験をするために調整されるが、市販のボイラーでは燃焼効果に影響を与え得る多数の変化があるため、通常の実機操業で観測されるものを正確に再現することができない。燃焼速度は典型的に、範囲の最低レベルで燃焼した低石炭化度及び指示範囲の中間又は最大レベルで燃焼した高石炭化度を有する石炭化度の指標がある。CTF炉は耐火物で内張りにされ、燃焼速度は石炭燃焼出力プラントで使用される特定のボイラーを再現するために所望とされる燃焼室出口温度(FEGT)に基づいて設定される。亜瀝青炭に関して、一般に550,000〜600,000BTU/hrの燃焼速度では2100゜F〜2200゜FのFEGTを生じ、これは本発明で試験する石炭のような亜瀝青炭を燃焼する多くの石炭燃焼プラントにおいて典型的なものである。
【0113】
CTFの燃焼空気を、この平衡通風系で押込通風機により供給する。系の後方に導入された通風機は燃焼領域で僅かに真空を維持し、燃焼燃料ガスを排気筒に放出する。燃焼空気は一般に電気式ヒータを使用して予熱され、1次空気、2次空気、及びオーバファイア空気(OFA)に分割される。
【0114】
燃焼ガス分析は2つの位置;試験の間ずっと、特定の過剰な空気レベルを監視し、維持するために使用される炉出口、及び系後段で検出される排出が、漏洩により生じる希釈を修正できるように、生じ得るいかなる空気漏洩にもアクセスするために用いる粒子制御装置の排出口、で連続排出モニター(CEM)により提供される。この一連の試験について、燃焼ガス分析はESP排出口の導管から得られた。それぞれのCEMラックはO、CO、CO、SO、及びNOx測定のために5つのモジュールを含む。SOを除いて、各モジュールはAmetek製であった。各分析装置は分析前にガス流から水分を除去するために燃焼ガス調節装置を使用する。本明細書で報告された全てのデータは、乾性ガス基準である。全てのガス分析を連続的に監視し、CTFのデータ習得システムにより記録する。National Instrumentは、本明細書に存在する全てのデータを収集するために使用されるハードウェア及びソフトウェア(LabView)の両方を提供した。
【0115】
CEM分析では、CTFで行われる試験ごとに、前もって個々に較正される。窒素はゼロガスとして使用されるが、いくつかのスパンガスは、試験の間使用される範囲に渡り各装置を較正するために使用される。一般に、Oを0%〜10%の範囲で測定し、COを0%〜20%の範囲で測定し、COを0〜500ppmの範囲で測定し、及びNOxを0〜1000ppmの範囲で測定する。SO測定は、試験する石炭の硫黄含量に応じて様々な範囲で行う。この一連の試験の間、SO測定装置は0〜1000ppmの範囲で較正され、これは本明細書で試験されるPRB亜瀝青炭における硫黄含量にとっては適切である。
【0116】
燃料ガス水銀(Hg)測定は、Tekran(登録商標) Instruments Corporation製の連続式Hgモニター(CMM)により別々に得られた。該システムは粒子制御装置の出口における燃料ガスの導管からガスサンプルを抜き出す。水分は分析前にガス流から除去される。システム状態を調整する燃料ガスは、燃料ガスのHg濃度を正確に測定するために、分析装置の性能による弊害を防止するために、CO及びSOを除去するための10%NaOH溶液を使用する。全ての水銀分析装置は、水銀元素(Hg)のみを測定し得るので、全体の水銀(Hg(T))濃度は塩化スズ(II)を含有する10%NaOH溶液により、酸化水銀のHg2+部分を還元することで得られる。Tekran製装置は、超高純度金吸着剤を含有するカートリッジ上の検査済サンプルからHgを採取する。次いで、併合されたHgを熱的に脱着し、及び原子蛍光分光法を用いて検査する。次いで、デュアルカートリッジの設計により、サンプル流の連続測定により生じる別のサンプリング及びデスポーションを可能とする。上記に記載されるCEM目盛補正と同様に、該CMMをまた、試験前にゼロに設定し、スパン測定し、及び試験終了時に点検する。本明細書で実行され、報告された試験の間、ドリフトは見られなかった。これらの試験中利用されるCTFの構成はESP排出口の導管から得られるHg及びNOx測定の両方と共に、粒子制御のためのESPのみを含んだ。供給原料及び精製炭の試験期間終了時に、燃料及び飛灰サンプルを集め、分析のために提出された。試験中集められたサンプルは以下の議論の中で記述される。
【0117】
燃料の準備及び分析
試験用亜瀝青炭は石炭パイルから得られたサンプルであった。該石炭は含水量によるが、約8500〜10,000Btu/Ibの範囲の総発熱量を有するPRB亜瀝青炭であり、これはワイオミング州にあるいくつかの鉱山から採取される。
【0118】
該許容石炭を必要に応じて入荷し、床乾燥の上表面水分を調べた。風乾サンプルを1/4インチの最大寸法に破砕し、及びハンマーミル粉砕機に供給し、試験中使用するために約70%が200メッシュを通過する粒度分布に作成した(多くの石炭燃焼出力プラントで達成される典型的な石炭処理)。この粒度分布は最大でも、実規模事業用ボイラーの微粉砕により達成される粒度分布の典型である。この一連の試験中に使用される精製炭サンプルはEERC製であり、45区域の施設で生産される精製炭に匹敵すると考えられる。精製炭を調製するために使用される吸着剤は以下に示すような微粉砕燃料に投与された。これは、実規模での応用とは異なり、該吸着剤を、貯炭所での貯蔵品から回収し、混合し、破砕し、次いで微粉砕機に送る。パイロット規模試験で利用されるpcに、吸着剤を投与する主な理由は、燃料サンプルの微粉砕中に利用される集塵ダクト装置における材料の潜在的損失である。全てのパイロット規模燃料サンプルは利用前に、少しでも破砕され、微粉砕化される。pcサンプルからの精製燃料を調製することにより、集塵システムにおける吸着剤の潜在的損失が回避され、及び結果的に実規模で起こることの最善の模擬実験となる。
【0119】
微粉砕燃料を2つの部分;供給原料サンプル及び精製炭へ加工される第2石炭サンプル、に分けた。選炭設備の床上で、計量した量(約500lb)ごとに配置することにより精製炭を準備した。計量されたハロゲン系吸着剤及び粉末吸着剤を注意深く石炭に投与し、吸着剤を投与している間、周期的に石炭を混合した。粉末吸着剤を手で分配し、石炭パイルの量にわたり、各経路後、燃料の混合を行ういくつかの経路を作った。スプレー管口がそのパイルの露出面に付与されるミストを生じるように、わずかに圧縮した金属スプレー缶にハロゲン系吸着剤を入れた。吸着剤を完全に配分するためにいくつかの経路で処理が必要とされた。各経路後、パイルを入れ替えるためにレーキを使用し、次の処理経路のために新たな表面を露出する。各場合に、それぞれわずかな量の吸着剤を石炭パイル上に配分し、特定の処理比率が0.008重量%のハロゲン系吸着剤及び0.25重量%の粉末吸着剤に到達するまで混合した。
【0120】
各サンプル(石炭供給原料及び精製炭)を、以下に記載されるパイロット規模試験で用いる貯蔵ホッパーに輸送した。試験の間、これらの貯蔵ホッパーを石炭供給ホッパー上に直接配置する。貯蔵ホッパーから供給ホッパーに石炭及び精製炭をそれぞれ移動させるために、回転バルブを用いる。微量の処理済燃料を除去するために各試験後、貯蔵ホッパー及び供給ホッパーを希釈酸溶液で洗浄する。
【0121】
燃料分析
各試験期間中、石炭サンプルは、貯蔵ホッパー及び供給ホッパー間の回転バルブのすぐ下に位置する開口部を備える、70%のアングルで供給装置の側壁を貫通する小管を通じて貯蔵ホッパーから輸送する。このルーベは、供給ホッパーが満たされるたびに、わずかな量の燃料を途中で捕らえる。この方法では、燃料の正確な燃焼サンプルが得られる。石炭サンプルは重量により、サンプル管端に取り付けたサンプル袋の中に落下する。供給原料及び精製炭試験期を表す燃料サンプルと別々に、それぞれ次の試験期に先だって新しい袋をサンプル管に取り付ける。
【0122】
燃焼石炭を連続的に採取し、石炭供給原料の燃焼からの放出ベースライン及び、同様に精製炭の燃焼からの放出を測定する。近似分析及び元素分析、発熱量、無機元素酸化物分析(蛍光X線により)、及び塩素含量及び水銀含量の測定のため、石炭供給原料及び精製炭を別々に供した。この分析結果を表1に示す。燃料サンプルは、わずかな量の許容水分含量の蒸発を可能とする傾向にあるいくつかの処理工程を経た。最大の低減は燃料の粉砕の間に起こる。ハンマーミル微粉砕機は、粉砕から生じる粉炭粒子の露出面をわずかに乾燥する傾向にある誘引通風を発生させる。生じる乾燥度は主に、燃料調製時における周囲大気条件(温度及び相対湿度)の作用である。結果として、石炭供給原料及び精製炭の間で容易に比較できるように、燃焼組成物を分析する。
【0123】
石炭供給原料(試験AF−CTS−1461)を、20.03重量%の含水量で9621 Btu/lbの燃焼熱量をもって測定した。水分を含まない発熱量及び灰含量はを、12,031 Btu/lb及び4.91重量%でそれぞれ測定した。石炭供給原料の硫黄含量を、無水ベースで0.37重量%(0.624 lbSO/MMBtu)により測定した。粉末吸着剤及び液体ハロゲン系吸着剤は発熱量がなく、及び液体ハロゲン系吸着剤は、該液体の水分含量のため、さらなる水分を精製炭に導入する。このため、精製炭の発熱量(Btu/lb)の低減を、石炭供給原料のBtu/lbと比較して、通常予想する。各燃料に含有される無機物の灰分析は、石炭供給原料に対して、精製炭がCaO及びSOを豊富に含み、SiO、A、及びFeを激減させることを示す。それぞれ供給原料及び精製炭サンプルにおいて、0.0570μg/g(5.924 lkb/TBtu、無水ベース)及び0.0556μg/g(5.908 lkb/TBtu、無水ベース)で水銀含量を測定した。供給原料及び精製炭サンプルの塩素含量をそれぞれ19.4及び30.0μg/gで測定した。
【0124】
各試験の間集められた供給原料及び精製炭サンプルの乾燥ふるい分析を、実施例2の表に示す。石炭供給原料に関する結果は84.3重量%が200メッシュを通過し、69.2重量%が325メッシュを通過するが、精製炭サンプルに関しては87.1重量%が200メッシュを通過し、73.1重量%が325メッシュを通過する。
【0125】
実施例2
石炭供給原料はPRB石炭である。精製炭はPRB石炭供給原料に、0.008重量%のハロゲン系吸着剤及び0.25%の粉末吸着剤を加えたものである。粉末吸着剤はCKDが15%及び粉砕CKDが85%である。ハロゲン系吸着剤は実施例1由来のものである。供給原料及び精製炭についてNOx及びHg放出を測定した。
【0126】
【表3】
適用不可
【0127】
水銀濃度は石炭供給原料の灰中で0.558μg/gであり、精製炭の灰中で0.833μg/gであった。
【0128】
実施例3−アメリカ中部の亜瀝青炭
石炭供給原料はPRB石炭である。精製炭はPRB石炭供給原料に0.005重量%のハロゲン系吸着剤及び0.25%の粉末吸着剤を加えたものである。該粉末吸着剤はCKDが15%及び粉砕CKDが85%である。ハロゲン系吸着剤は実施例1由来のものである。供給原料及び精製炭についてNOx及びHg放出を測定した。
【0129】
午前中を使用し、約2139゜FのFEGTに到達させるために60.28 lb/hrの平均速度で燃焼される石炭供給原料の燃焼による放出ベースラインを確立した。炉出口でNOx制御をシミュレーションする15.13%で利用されるOFAと共に、炉出口で3.05%に過剰酸素を制御した(約16.98%の過剰な空気)。
【0130】
精製炭を58.91 lb/hrの速度で燃焼させ、15.18%に維持されるOFAと共に、炉出口で2139゜FatのFEGT、過剰酸素3.1%(過剰空気約17.33%)を達成した。得られた排出低減を以下の表に示す。
【0131】
【表4】
* 適用不可