特許第6595576号(P6595576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595576
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ズーム顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20191010BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20191010BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20191010BHJP
   G03B 9/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G02B21/00
   G02B21/36
   G02B13/00
   G03B9/02 D
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-505206(P2017-505206)
(86)(22)【出願日】2015年7月13日
(65)【公表番号】特表2017-521729(P2017-521729A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2015065921
(87)【国際公開番号】WO2016015978
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年5月23日
(31)【優先権主張番号】102014215100.7
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンテロット、ヨハネス
【審査官】 岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−070092(JP,A)
【文献】 特開2006−154230(JP,A)
【文献】 特開2004−361778(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0168763(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能な対物レンズ(03、13)と、
観察ビーム経路内で該対物レンズ(03、13)の後ろに配置されている少なくとも2つの可動レンズ群を備えたズームアセンブリ(04)と、
該ズームアセンブリ(04)の後ろに配置されている鏡筒アセンブリ(08)と、
対象物面内に配置された試料の像を捕捉するための、該鏡筒アセンブリ(08)の後ろに配置され、かつ像面内に位置付けされた画像センサー(09)を含む結像ユニットと、を備えるモジュール式ズーム顕微鏡において、
該対物レンズ(03、13)が、該対物レンズの像側焦点が該ズームアセンブリ内にあるような焦点距離を有すること、および該可動レンズ群の1つが絞り(07)を含むことを特徴とするモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項2】
前記ズームアセンブリ(04)の入射瞳が、前記可動レンズ群の少なくとも第1の位置では、前記対物レンズ(03、13)の前記像側焦点と実質的に一致していることを特徴とする請求項1に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項3】
前記ズームアセンブリ(04)の前記入射瞳の位置が、ズーム範囲全体にわたって、前記対物レンズ(03、13)の前記像側焦点の少なくとも近傍に存在することを特徴とする請求項2に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項4】
前記入射瞳の位置が、前記ズームアセンブリ(04)のズーム範囲にわたって、単調ではなく変化することを特徴とする請求項3に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項5】
前記ズームアセンブリ(04)の前記入射瞳の位置が、ズーム範囲にわたって、少なくとも2つの同じ値を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項6】
前記ズームアセンブリ(04)が、1つの固定レンズ群および正確に3つの可動レンズ群を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項7】
前記ズームアセンブリ(04)の前記レンズ群が、前記対物レンズ(03、13)を出発点として、固定の第1のレンズ群、可動の第2のレンズ群、可動の第3のレンズ群、可動の第4のレンズ群の順番で配置されていることを特徴とする請求項6に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項8】
前記絞り(07)が、前記第3のレンズ群に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項9】
前記絞り(07)の大きさが可変であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【請求項10】
前記対物レンズ(03、13)が、前記対象物面に対して一定の距離をあけて配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のモジュール式ズーム顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに基づくズーム顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
光学測定技術では、とりわけ特定の部分を検査する場合に、射影歪みがなく、かつ光軸方向でも規定の範囲内では結像倍率が一定に保たれる結像が必要である。これはつまり、設定された焦点深度範囲内でテレセントリック性が存在している限り、高さは異なるが同じ大きさの対象物は、結像でも同じ大きさに見えるということである。
【0003】
様々な大きさの対象物の測定に対し、結像領域ができるだけ完全に利用されるべきであり、したがって非常に小さな対象物の場合は、結像倍率を大きくしなければならない。これはズームシステムによって行われ、このズームシステムはテレセントリック性を維持しなければならない。このために、像側テレセントリック性も有益である。
【0004】
両側テレセントリック光学系は、理論的にはデフォーカスの際の倍率誤差がない。
現況技術から、中間像のあるかまたはない様々なテレセントリックズーム顕微鏡が知られている。
【0005】
中間像のないシステムは設置長さが比較的短く、したがってとりわけ、測定タスクと観察タスクと記録タスクとが入れ替わる場合に適用可能であることが有利である。
さらに対象物側テレセントリックズームシステムは、対象物側でビーム経路にフィルターまたは同軸落射光照明をカップリングすべき場合に適用可能であることが特に有利である。
【0006】
特許文献1からは、様々な交換レンズを使用する場合にズームの拡大範囲が広げられるズーム顕微鏡が知られており、このズーム顕微鏡は、交換レンズの像側焦点内に開口絞りを配置することにより、対象物側テレセントリック性を確立している。これに関しては、焦点距離が比較的大きな対物レンズの場合、より大きな設置スペースが必要とされることが問題である。
【0007】
特許文献2からは、像側テレセントリック性を有するズーム顕微鏡が知られている。このズームシステムは4つのレンズ群を含んでおり、そのうち真ん中の2つのレンズ群が、倍率調整のために移動する。このズームシステムは、第1のレンズ群の対象物側に入射瞳があり、この入射瞳は対物レンズの射出瞳と実質的に重なり合っている。したがって常に、ズームシステムと対物レンズの間に比較的大きな間隔が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0014154(A1)号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0246592(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、好ましくは測定のために、対象物を歪みなく拡大して結像することができるコンパクトな顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を有するモジュール式ズーム顕微鏡によって解決される。
このモジュール式ズーム顕微鏡は、観察すべき対象物を配置可能な対象物面と、対象物ステージに対して一定の距離をあけて配置されている交換可能な対物レンズと、ズームアセンブリと、結像レンズアセンブリと、対象物の像を捕捉するための結像ユニットとを含む。
【0011】
顕微鏡ではたいていの場合、対象物面内に、既知のやり方で対象物ステージが設けられている。対象物面は、対物レンズに対して一定の距離をあけて配置されるのが好ましい。
対物レンズと、ズームアセンブリと、結像レンズ群と、結像ユニットとは、対象物面を出発点として、光路または観察ビーム経路内にこの順番で配置されている。
【0012】
対物レンズは、対物レンズの像側焦点がズームアセンブリ内にあるような焦点距離を有している。
ズームアセンブリは少なくとも2つの可動レンズ群を含む。本発明によれば、可動レンズ群の1つは絞りを含む。
【0013】
これに関し有利な1実施形態では、可動レンズ群を、少なくとも第1の位置では、ズームアセンブリの入射瞳が対物レンズの像側焦点内にあるように調整することができる。さらなる実施形態では、可動レンズ群のそのような位置または調整に、第2以降がさらにある。
【0014】
この絞りにより、実質的に、ズーム顕微鏡の対象物側および像側のテレセントリック性が確立される。
ズームアセンブリは、アフォーカルなレンズシステムである。
【0015】
アフォーカルとは、集束性にも拡散性にも作用しないレンズシステムのことである。つまり、平行に到着するビーム束は、確かにシステム内で収束的または発散的に屈折されるが、ビーム経路内のさらなるレンズまたはミラーにより、光が再び平行に方向付けられて出ていく。言い換えれば、光軸に平行に到着するビームは、システムをまた再び軸に平行に出ていく。(出典:Wikipedia)
本発明によるズーム顕微鏡により、対物レンズを交換したり、比較的大きな対象物野の場合に所定の拡大範囲内でズームを作動したりすることで、約25倍までの倍率を達成できることが有利である。
【0016】
絞りは、好ましい1実施形態では大きさが固定されており、しかし代替的な実施形態では大きさが可変であってもよい。絞りの大きさが可変の場合、焦点深度範囲を変化させることができる。
【0017】
特に好ましい1実施形態では、ズームアセンブリが、1つの固定レンズ群と、正確に3つの可動レンズ群とを含み、これらのレンズ群は、対物レンズを出発点として、固定の第1のレンズ群(正の屈折力)、可動の第2のレンズ群(負の屈折力)、可動の第3のレンズ群(正の屈折力)、可動の第4のレンズ群(負の屈折力)の順番で配置されている。この実施形態では、絞りは第3のレンズ群に配置されている。3つの可動レンズ群の移動は、第1のレンズ群による絞りの(仮想)結像が一定の場所になるように互いに同調されることが有利である。移動全体は、一定の像位置に同調されている。
【0018】
テレセントリック性を守るため、像側焦点は、絞りの(仮想)像の場所に存在している。
結像レンズシステムは、像面内で結像を合焦するために、既知のやり方で好ましくは複数のレンズ群を含み、像面内では画像センサーが配置されている。
【0019】
像側テレセントリック性は、画像センサーの前に例えばマイクロレンズアレイが配置されている場合にとりわけ有利である。このようなマイクロレンズアレイを備えたセンサーは、前置された光学系に基づき、主ビーム傾斜に対して特に感度が良い。
【0020】
もちろんズーム移動はモータにより、場合によっては自動化して実施することができる。
スケーリングを確定するため、および/または画像内での測定を実施するために、レンズ群の位置を非常に様々なやり方で捕捉することができ、かつ結像ユニットまたは表示ユニット内で使用することができる。
【0021】
ズームアセンブリの前および後ろにはそれぞれ無限遠のビーム空間が存在しており、このビーム空間は、知られているように、部分ビーム経路、フィルター、またはその類似物のカップリングまたはデカップリングに特に適している。
【0022】
対象物側の無限遠空間内に、同軸落射照明がカップリングできることが好ましい。
以下に、本発明の特に好ましい1実施形態を図に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の対物レンズを備えたズーム顕微鏡の特に好ましい1実施形態の光学システムの原理図。
図2】第1の対物レンズが第2の対物レンズと交換されたズーム顕微鏡の光学システムの原理図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、5つのイラストにより、本発明によるモジュール式ズーム顕微鏡の特に好ましい1実施形態の光学システムのビーム経路を示している。
ズーム顕微鏡の光学システムは、図示されていない対象物ステージ上または対象物面内に存在する対象物野01を含む。この対象物野01上に対象物02が配置されており、この対象物野の観察される部分の大きさは、イラストa)〜e)で異なっている。これに関しイラストa)は非常に小さな対象物を示しており、イラストe)は、対象物野01を埋め尽くす対象物を示している。
【0025】
対象物野01に対して一定の距離をあけて、焦点距離f=80mmの対物レンズ03が配置されている。対物レンズ03は交換可能である。
対物レンズ03に、ズーム比Γ=0.5...5のズームアセンブリ04が接続されており、ズームアセンブリは4つのレンズ群を含む。正の屈折力を有する第1のレンズ群LG1は不動に配置されている。第2のレンズ群LG2は光軸06に沿って変位可能であり、負の屈折力を有している。第3のレンズ群LG3も光軸06に沿って変位可能であり、正の屈折力を有している。第4のレンズ群LG4も光軸06に沿って変位可能であり、負の屈折力を有している。
【0026】
絞り07は、第3のレンズ群LG3に設けられている。この絞り07は、好ましくは固定的にレンズ群LG3と結合しており、第3のレンズ群と共に光軸06に沿って変位可能である。絞りは、この実施形態では直径が12.7mmで固定されている。
【0027】
鏡筒アセンブリ08は、図示した実施形態では焦点距離fγ=200mmであり、正の屈折力を有するレンズ群LG5と、負の屈折力を有するレンズ群LG6と、正の屈折力を有するレンズ群LG7とを含む。鏡筒アセンブリ08のレンズ群LG5、LG6、およびLG7は固定的に配置されている。ズームアセンブリ04と鏡筒アセンブリ08の間には無限遠空間が存在している。
【0028】
画像センサー09は、鏡筒アセンブリ08の後ろで、像面内に配置されている。画像センサー09は、光学システムに適したサイズおよび解像能力を有するあらゆる既知の画像センサーであり得る。当業者は適切な画像センサーを選択することができる。
【0029】
画像センサーは結像ユニットの一部であり、結像ユニットは、それ自体で既知のやり方で、試料02の像を捕捉するために用いられる。
以下に、図示したシステムに関する光学的な特性データを表によって示している。
【0030】
これに関し半径のデータは、レンズの半径を意味している。Uは、半径=無限遠の平面と見なす。間隔は、それぞれ次の素子に対する間隔を規定している。レンズ群のレンズ材料は、屈折率nおよびアッベ数νによって規定されている。これに加え、それぞれのレンズ群の像側の焦点距離f’を示している。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
システム全体は、可変の倍率β=1.25...12.5を有している。対象物面と像面の間隔は、この実施形態では352mmである。
【0033】
ビーム経路として、例示的にビーム束11を示しており、このビーム束は、中心から離れた物点から出て、ズーム顕微鏡の光学システムによって何度か偏向され、最終的に画像センサー上で合焦される。
【0034】
イラストa)〜e)からビーム経路に基づいて明らかなように、様々な大ささの対象物02はそれぞれ、レンズ群LG2、LG3、およびLG4の軸方向の変位により、それぞれ画像センサー09の画像面いっぱいに結像されている。アフォーカルズームの可変の望遠倍率Γおよび結像レンズの焦点距離から、結果的に生じる焦点距離f’が明らかである。
【0035】
下表は、特定の焦点距離または拡大レベルを達成可能な、可変の間隔V1〜V4の調整を示している。
【0036】
【表3】
説明した実施形態では、正確に4つの拡大レベルに対し、対象物側および像側で十分なテレセントリック性をもたらす入射瞳の位置が提供されている。これらの位置は、テレセントリック性を絶対に守らなければならない場合に使用されるのが好ましい。このために、ズーム顕微鏡の制御ユニットには、固定的で「テレセントリックな」拡大レベルとして、レンズ群の対応する間隔または絶対的ポジションおよび帰属の倍率が記憶されており、必要の際には規定通りに始動する。
【0037】
この装備により、システム全体は、倍率β=1.25...12.5および最大開口数NAmax=0.15を有している。
図2は前述の光学システムを示しているが、ただし対物レンズ03が焦点距離f=40mmの対物レンズ13と交換されているという違いがある。これに関し同じ符号はもちろん同じコンポーネントを意味しており、したがってここではこれ以上の説明は省略する。
【0038】
ここでもイラストa)〜e)では、異なる大きさの対象物02が、画像センサー09上では全面に結像されており、これに関し、ズームアセンブリの可動レンズ群LG2、LG3、およびLG4のポジションは異なっている。この装備により、システム全体は、倍率b=2.5...25および最大開口数NAmax=0.3を有している。
【符号の説明】
【0039】
01 対象物面
02 対象物
03 対物レンズ
04 ズームアセンブリ
05 −
06 光軸
07 絞り
08 鏡筒アセンブリ
09 画像センサー
LG1...LG4 ズームアセンブリのレンズ群
LG5...LG7 鏡筒アセンブリのレンズ群
図1
図2