(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イソシアネート構成成分及び前記イソシアネート反応性構成成分の前記反応生成物が、2重量%〜23重量%のイソシアネート部分含有量を有するイソシアネート末端プレポリマーである、請求項1または2に記載の噴霧可能なポリウレタンコーティング組成物。
前記イソシアネート構成成分が、少なくとも1つのポリイソシアネート、及び、プロピレンオキシド−グリセリン系ポリオール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール系ポリオール、ポリプロピレングリコール系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、及び少なくとも50重量%のポリオキシブチレン含有量を有するブチレンオキシド−プロピレンオキシドポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリオールの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の噴霧可能なポリウレタンコーティング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0005】
エポキシ及びポリウレタンの化学的性質が組み合わさった噴霧可能なポリウレタンコーティングが、提案された。例えば、噴霧可能なポリウレタンコーティングは、高い機械的強度、高い温度性能、及び/または高い防錆性能などの特性の組み合わせの相乗作用を示す。実施形態によると、コーティング組成物は、カルダノール変性エポキシポリオールを形成するためにエポキシ系化学的性質を使用し、カルダノール変性エポキシポリオールをポリイソシアネートと反応させることによりポリウレタン系化学的性質を使用する。特に、噴霧可能なポリウレタンコーティングは、イソシアネートを含むイソシアネート構成成分(例えば、1つ以上のポリイソシアネートが含まれ得、かつ/または1つ以上のイソシアネート末端プレポリマーが含まれ得る)と、カルダノール変性エポキシポリオールを含むイソシアネート反応性構成成分(例えば、1つ以上のカルダノール変性エポキシポリオール及び/または1つ以上の他のポリオール、例えばプロピレンオキシド、エチレンオキシド、及び/もしくはブチレンオキシド系ポリオール、ならびに/または異なる天然油由来ポリオールなどが含まれ得る)との反応生成物を含む。
【0006】
カルダノール変性エポキシポリオールは、1:0.95〜1:5のエポキシ基のエポキシ反応性基に対する比率でのエポキシ構成成分及びエポキシ反応性構成成分の反応生成物であり、エポキシ反応性構成成分は、カルダノール構成成分を含む。カルダノール変性エポキシポリオールに関して、カルダノール構成成分は、例えばカシューナッツ殻液(CNSL)中の構成成分であってもよく、そこから、CNSL中のカルダノール由来のポリオールの存在下でカルダノール変性ポリオールが形成される。例えば、カルダノール由来のポリオールは、コーティングされる基材とコーティングそのものとの間の適合性を改善し得る。変化形態はこれに限定されず、例えば別のカルダノール変性ポリオールが使用されてもよい。例えば、カルダノール由来ノボラックポリオールなどの、例えば公開番号第WO2011/003446号で考察されるような非エポキシ由来ポリオールが、使用され得る(これは、さらにアルコキシル化されて、ヒドロキシルポリオールが形成され得る)。カルダノール変性ポリオールの別の例は、ホルムアルデヒド及びエタノールアミンとのマンニッヒ反応に基づいて、ポリオールでもあるマンニッヒ塩基を形成する(これは、さらにアルコキシル化されて、ヒドロキシルポリオールが形成され得る)。
【0007】
実施形態による噴霧可能なポリウレタンコーティングは、次の特徴のうちの少なくとも1つを示し得る。
(1)組成物の粘度が噴霧可能になるほど十分に低減されるが、なおも効果的な保護コーティングを形成するための硬化性があるような、噴霧可能及び硬化性組成物。
(2)エポキシ由来カルダノール変性エポキシポリオールは、例えば架橋ネットワークを形成することにより、硬化された生成物に良好な機械的性能及び熱抵抗性を付与し得る。良好な機械的性能により、得られたコーティング/層が、酸性溶液中への一週間の水浸後、100%超であるである引張り強度の保持力及び5%超である伸長率の保持力を有する(例えば、典型的な実施形態において90%超)ことを意味し得る。典型的な実施形態において、伸長率の保持力は低い場合があるが、初期の引張り強度(例えば、4000psi超)及び水浸後の引張り強度(例えば、5500psi超)は、コーティングが良好な機械的性能に関して著しい利点をなおも提供するのに十分に高い場合がある。
【0008】
噴霧可能なポリウレタンコーティング
噴霧可能なポリウレタンコーティングの形成に関して(例えば、熱硬化性及び/または熱可塑性システムが使用され得る)、噴霧可能なポリウレタンシステムは、イソシアネート部分(NCO)とヒドロキシル部分(OH)などのイソシアネート反応性基との反応により形成されたポリウレタン基を含む。ポリウレタンシステムは、イソシアネート構成成分及びイソシアネート反応性構成成分を有する混合物、ならびに/またはイソシアネート末端プレポリマーの形態であるこれらの反応生成物を含む。噴霧可能なポリウレタンシステムは、ポリウレタンシステムを形成する個別の構成成分が構成成分を噴霧する直前、構成成分を噴霧する間、1つの構成成分が噴霧された後で、かつ別の構成成分を噴霧する間、及び/またはこれらの組み合わせで、コーティングを形成するための組成物中に組み込まれ得るようにコーティングを形成するための組成物中に組み込まれる事前に作製される反応生成物であり得る。
【0009】
例えば、イソシアネート構成成分は、イソシアネート反応性構成成分と少なくとも部分的に(または全体的に)事前に反応し、イソシアネート末端プレポリマーの形態になり得、次いでこのプレポリマーは、(大きな容器などの)表面上に噴霧されて、コーティングを形成するためのプレポリマー系の1つの構成成分システムを有するように保護コーティングを形成する。プレポリマーが使用されるとき、追加の量の分離ポリオールは、コーティングを形成するためのプレポリマー系の2つの構成成分システムを有するようにコーティングを形成するための本組成物に直接的に添加され得る。プレポリマーが使用されないとき、ポリウレタン樹脂システムのイソシアネート構成成分及びイソシアネート反応性構成成分は直接的に混合されて、コーティングを形成するための2つの構成成分システムを有するようにこれらの反応生成物としてコーティングを形成し得る。典型的な実施形態において、プレポリマー系の2つの構成成分システムは、噴霧可能な保護コーティングを形成するために使用され、ここで、イソシアネート構成成分は、事前に作製され、次いでカルダノール変性エポキシポリオールを含むイソシアネート反応性構成成分と反応するイソシアネート末端プレポリマーである。
【0010】
噴霧可能なポリウレタンコーティングを形成することに関して、イソシアネート構成成分は、ポリイソシアネート(例えば、少なくとも1つのポリイソシアネート)及び/または少なくとも1つのポリイソシアネート由来のイソシアネート末端プレポリマー(例えば、少なくとも1つのイソシアネート末端ポリウレタン系プレポリマー)を含む。典型的なポリイソシアネートには、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ならびにこれらの多様な異性体及び/または誘導体が含まれる。その2,4′異性体、2,2′異性体、及び4,4′異性体のうちの少なくとも1つを使用して、MDIは、ポリマー、コポリマー、混合物、または変性ポリマーの形態を有し得る。典型的なMDI生成物は、The Dow Chemical CompanyからISONATE、PAPI、及びVORANATEの商品名で入手可能である。その2,4異性体及び2,6異性体のうちの少なくとも1つを使用して、TDIは、ポリマー、コポリマー、混合物、または変性ポリマーの形態を有し得る。典型的なTDI生成物は、The Dow Chemical CompanyからVORANATEの商品名で入手可能である。典型的な実施形態によると、少なくとも1つのイソシアネートは、2.8〜3.2(例えば、2.2〜2.9など)の平均官能価及び25重量%〜35重量%(例えば、30重量%〜32重量%)の遊離イソシアネート基含有量(すなわち、NCO含有量)を有する。
【0011】
コーティングを形成するための噴霧可能なポリウレタンシステムを形成することに関して、イソシアネート反応性構成成分は、少なくとも1つのカルダノール変性ポリオール(少なくとも2つのヒドロキシル基、ならびにカルダノール及び/またはCNSL由来の少なくとも1つの部分を含有する)を含み、それは、実施形態によると、カルダノール変性エポキシ(CME)ポリオールである。CMEポリオールは、カルダノール含有構成成分(CNSLなど)をエポキシ構成成分と反応させることにより形成され得る。CMEポリオールは、噴霧可能なポリウレタンコーティングを形成するための組成物の総重量に基づいて、5重量%〜75重量%(例えば、20重量%〜60重量%、30重量%〜55重量%、35重量%〜65重量%、35重量%〜50重量%など)を占め得る。例えば、コーティングがプレポリマー系の1つの構成成分システムを使用して形成されるとき、CMEポリオールは、1つの構成成分システムの総重量の5重量%〜75重量%(例えば、30重量%〜75重量%、55重量%〜70重量%、60重量%〜65重量%など)を占め得る。コーティングがプレポリマー系の2つの構成成分システムを使用して形成されるとき、CMEポリオールは、2つの構成成分システムのイソシアネート反応性構成成分の総重量の5重量%〜75重量%(例えば、20重量%〜65重量%、25重量%〜55重量%、35重量%〜50重量%、40重量%〜45重量%など)を占め得る。CMEポリオールは、プレポリマーを形成するためのイソシアネート反応性構成成分中に含まれ得る。
【0012】
噴霧可能なポリウレタンコーティングを形成する(またはプレポリマーを形成する)ためのイソシアネート反応性構成成分は、ポリエーテルまたはポリエステルポリオールなどの追加のポリオール(または任意にアミン)を任意に含み得る。例えば、追加のポリオールは、CMEポリオールの相対的により高い粘度を平衡させるための低粘度ポリオールであり得る。追加のポリオール及び/またはアミンのうちの少なくとも1つが含まれる場合、CMEポリオールと同じ時かまたは異なる時に添加され得る。例えば、プレポリマーが噴霧可能なポリウレタンコーティングを形成するためのシステム中で使用されるとき、少なくとも1つの追加のポリオールが(CMEポリオールに加えて)、プレポリマーを形成するためのポリオール構成成分中に含まれ得るか、またはコーティングを形成するための噴霧可能な組成物に別個に添加され得る。プレポリマーが使用されないとき、少なくとも1つの追加のポリオールが、CMEポリオールと同じ時に噴霧可能な組成物の構成成分と混合され得るか、または追加のポリオールの使用が回避され得る。少なくとも1つの他のポリオールは、石油系建築用ブロック(例えば、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、及び/またはブチレンオキシド)または天然油由来建築用ブロックを有し得る。
【0013】
典型的な実施形態によると、プロピレンオキシド−グリセリン系ポリオール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール系ポリオール、ポリプロピレングリコール系ポリオール、及び/またはポリブタジエン系ポリオールは、イソシアネート反応性構成成分中で使用され得る。別の典型的なポリオールは、少なくとも50重量%のポリオキシブチレン含有量を有する(例えば、ブチレンオキシド−プロピレンオキシドポリオール)。例えば、プロピレンオキシド系ポリエーテル(The Dow Chemical CompanyからVORANOL(商標)の商品名で入手可能なものなど)、天然油由来ポリオール(ヒマシ油など)、及び/またはThe Dow Chemical CompanyからVORAPEL(商標)の商品名で入手可能なものなどの疎水性ポリオールが、プレポリマーを形成するためにイソシアネート反応性構成成分及び/またはイソシアネート構成成分中で使用され得る。
【0014】
例えば、疎水性ポリオールがプレポリマーを形成するために(2つの構成成分システムの一部として)使用されるとき、疎水性ポリオールは、プレポリマーを形成するための組成物の総重量の20重量%〜65重量%(例えば、25重量%〜60重量%、30重量%〜55重量%、35重量%〜50重量%、40重量%〜45重量%など)を占め得る。疎水性ポリオールは、1重量%〜45重量%(例えば、5重量%〜40重量%、10重量%〜35重量%、20重量%〜35重量%、25重量%〜30重量%など)の量で(CMEポリオールとブレンドされるなどの)イソシアネート反応性構成成分中に含まれ得る。疎水性ポリオールは、500g/mol〜3,000g/mol(例えば、1,000g/mol〜2,500g/mol、1,500g/mol〜2,000g/molなど)の数平均分子量を有し得る。疎水性ポリオールは、25℃での600cP未満(例えば、25℃での550cP未満及び/または25℃での500cP未満)である粘度を有し得る。例えば、疎水性ポリオールの粘度は、25℃での200cPt〜25℃での550cP(例えば、25℃での300cP〜25℃での500cP、25℃での400cP〜25℃での500cP、25℃での450cP〜25℃での500cPなど)であり得る。疎水性ポリオールは、ジオールまたはトリオールであり得る。
【0015】
コーティングを形成するための2つの構成成分システムを使用する典型的な実施形態において、相対的により低い粘度の疎水性ポリオールが、第1の構成成分中でイソシアネート末端プレポリマーを形成するために使用され、相対的により高い粘度のCMEポリオールが、(硬化剤及び/または触媒などの他の添加剤と併せて)第2の構成成分中で使用される。コーティングを形成するための1つの構成成分システムを使用する典型的な実施形態において、相対的により低い粘度の疎水性ポリオール及び相対的により高い粘度のCMEポリオールの両方が、イソシアネート末端プレポリマーを形成するために使用され得る。
【0016】
噴霧可能なポリウレタンシステムに関して、イソシアネート反応性構成成分及びイソシアネート構成成分が、60〜300(例えば、60〜120、80〜150、90〜120、100〜115など)のイソシアネート指数で添加され得る。これは、イソシアネート構成成分のプレポリマーを形成するために、イソシアネート構成成分及びイソシアネート反応性構成成分の反応生成物を形成するために、ならびに/またはそれらの両方のために使用されるイソシアネート指数であり得る。イソシアネート指数は、反応混合物中のイソシアネート反応性水素含有材料の総当量により除算され、100を乗算される、ポリウレタン樹脂を形成するための反応混合物中のイソシアネートの当量として測定される。別の方式で考えると、イソシアネート指数は、反応混合物中に存在するイソシアネート基のイソシアネート反応性水素原子に対する比率であり、百分率で供される。プレポリマーの形態で使用されるとき、得られた反応生成物は、2重量%〜23重量%(例えば、3重量%〜15重量%、4重量%〜8重量%、4重量%〜6.5重量%など)のNCO(すなわち、イソシアネート部分)含有量を有し得る。イソシアネート指数は、90〜300(例えば、150〜250、175〜200など)であり得る。
【0017】
イソシアネート構成成分及び/またはイソシアネート反応性構成成分は、硬化剤、触媒、界面活性剤、可塑剤、充填剤、溶媒、硬膜剤、鎖延長剤、架橋剤などの添加剤、及び/または噴霧可能なポリウレタンもしくはエポキシコーティングで使用するための当技術分野で既知の添加剤が含まれる添加剤構成成分を含み得る。
【0018】
噴霧可能なポリウレタンシステムの粘度に基づいて、溶媒(例えば、トルエン)が、添加剤構成成分の一部として添加され得る。溶媒は、硬化プロセス中に蒸発し、かつ/または本質的に、最終の硬化された組成物の機械的特性に影響を与えないかもしくはそれを改善し得る低蒸気圧溶媒であり得る。例えば、相対的により低い粘度システムに関して、溶媒は、本組成物中に添加されない。典型的な実施形態によると、コーティングは、CMEポリオールを含み、一切の溶媒を排除する噴霧可能なポリウレタンシステムを使用して作製される。
【0019】
典型的な触媒には、触媒が含まれ、第三級アミン、第二級アミンから形成されたマンニッヒ塩基、窒素含有塩基、アルカリ金属水酸化物、アルカリフェノラート、アルカリ金属アルコレート、ヘキサヒドロチアジン、及び有機金属化合物が含まれる。触媒は、噴霧可能なポリウレタンシステムの総重量に基づいて、0.001重量%〜10重量%の量で添加され得る。触媒は、(おそらくイソシアネート構成成分中またはプレポリマー中で)イソシアネート部分及び活性水素(おそらくポリオール及び/または鎖延長剤)の硬化時間を促進して、機械的特性を提供し得る。染料及び/または顔料(二酸化チタン及び/またはカーボンブラックなど)は、ポリウレタンコーティングに色特性を付与するために添加剤構成成分中に含まれ得る。顔料は、樹脂担体中、固形または分散体の形態であり得る。補強剤(例えば、薄片ガラスもしくは粉砕ガラス、及び/またはフュームドシリカ)は、ある特定の特性を付与するために使用され得る。他の添加剤には、例えば、UV安定剤、抗酸化剤、空気放出剤、及び接着促進剤が含まれ、これらは独立して、ポリウレタンコーティングの所望の特徴に応じて使用され得る。
【0020】
噴霧可能なポリウレタンシステムは、ポリウレタンシステムに加えてまたはポリウレタンシステムの一部として硬化剤/硬膜剤構成成分を含む硬化性組成物であり得る。使用される硬膜剤構成成分の量は、硬膜剤構成成分が、ポリウレタンシステムに加えてまたはその一部として使用されるかどうかに応じて変化し得る。典型的な実施形態において、噴霧可能なポリウレタンシステムが、最小限度の残留エポキシ含有量に因り、ウレタン硬化化学的性質に依拠するため、アミン系硬膜剤(例えば、エポキシシステムを硬化するのに使用されるための、当技術分野で既知であるもの)は排除されてよい。
【0021】
ポリウレタンコーティングを形成するとき、組成物を硬化するための方法(例えば、当技術分野で既知の方法)が、熱硬化性または硬化される組成物を形成するために使用され得る。例えば、本組成物または本配合物は、フィルム、コーティング、または固形物を形成するための従来の処理条件下で硬化され得る。硬化性組成物を硬化することは、本組成物を硬化するのに十分な既定の温度及び既定の時間の間を含む硬化反応条件で行われ得る。硬化条件は、本配合物中で使用される硬膜剤などの、硬化性組成物中で使用される多様な構成成分に応じ得る。硬化反応条件は、例えば、概して、−5℃〜60℃(例えば、0℃〜50℃、5℃〜25℃など)の範囲の温度で反応を行うことを含む。噴霧可能な適用に関して、コーティングは、例えばエアレス噴霧器及びエアアシスト空圧式噴霧器などを使用して基材に適用され得る。適用された組成物は、前述の硬化温度で本組成物を加熱することにより硬化され得る。
【0022】
CMEポリオールの形成
CMEポリオールは、エポキシ構成成分及びエポキシ反応性構成成分を含む混合物の反応生成物である。エポキシ反応性構成成分は、カルダノール構成成分を含む(かつ、任意のフェノールまたはフェノール誘導体構成成分を含み得る)。エポキシ反応性構成成分は、エポキシ構成成分中のエポキシ基と反応性である水素原子を有するフェノールを含む。エポキシ反応性構成成分は、エポキシ反応性構成成分の総重量に基づいて、少なくとも50重量%(例えば、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、及び/または100重量%)のカルダノール構成成分を含み得る。残りのエポキシ反応性構成成分は、フェノールもしくはフェノール誘導体構成成分、及び/または添加剤構成成分であり得る。エポキシ構成成分及び/またはエポキシ反応性構成成分は、(例えば、硬化剤、触媒、界面活性剤、可塑剤、充填剤、溶媒、鎖延長剤、及び/または架橋剤などの添加剤を含み得る)添加剤構成成分を含み得る。エポキシ構成成分中のエポキシ基の、エポキシ反応性構成成分中のエポキシ反応性基に対する比率は、1:0.95〜1:5(例えば、1:0.95〜1:4、1:0.95〜1:3、1:0.95〜1:2、1:0.95〜1:1.5など)であり得る。典型的な実施形態によると、過剰なエポキシ反応性構成成分が使用され得、例えばその比率は、1:1.01〜1:5、1:1.05〜1:3、1:1.5〜1:2.5、1:2〜1:3など)であり得る。
【0023】
CMEポリオールを形成するためのエポキシ構成成分は、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。少なくとも1つのエポキシ樹脂は、エポキシ構成成分の90重量%〜100重量%を占め得、残りの一切の物質は任意に、添加剤構成成分の一部分または全部である。エポキシ樹脂の量は、噴霧可能なポリウレタンシステムの総重量に基づいて、0重量%〜約95重量%の範囲(例えば、10重量%〜75重量%、20重量%〜50重量%など)であり得る。実施形態によると、噴霧可能なポリウレタンシステムは、CNSL部分と反応するエポキシ樹脂化合物を含む。例えば、かかるエポキシ樹脂化合物には、エポキシ化CNSL、エポキシ樹脂変性CNSL、エポキシ樹脂及びCNSLの反応生成物、ならびにこれらの混合物が含まれ得る。例えば、エポキシ樹脂化合物は、CNSL変性エポキシ樹脂であり得る。CNSL変性エポキシ樹脂は、(i)エポキシ樹脂及び(ii)CNSL中のカルダノール構成成分などのCNSLの反応生成物を含む。CNSL変性エポキシ樹脂を調製するために使用されるエポキシ樹脂構成成分(i)は、例えばカシューナッツ殻液部分を有さない前述と同じエポキシ樹脂のうちの1つ以上であり得る。
【0024】
エポキシ構成成分は、幅広い種々のエポキシ化合物を含み得る。本組成物の機械的性能及び熱性能を改善する任意のエポキシ化合物が、使用され得る。例えば、エポキシ化合物またはポリエポキシドは、脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式、及びこれらの混合物であり得る。本明細書に記載される実施形態で有用なエポキシ樹脂は、例えば単官能エポキシ樹脂、複数または多官能エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせを含み得る。エポキシ構成成分のための典型的なエポキシ樹脂には、1分子当たり少なくとも2つのエポキシド部分を有するポリエポキシドが含まれる(例えば、エポキシ樹脂は、2〜10のエポキシド官能価、2〜6のエポキシド官能価、2〜4のエポキシド官能価などを有し得る)。エポキシ樹脂主鎖は、飽和もしくは不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であり得、かつ置換され得る(例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、及び/またはエーテル基などの少なくとも1つの置換基を含有する)。エポキシ樹脂は、単量体または重合体であり得る。エポキシ樹脂は、20g/eq〜1000g/eq(例えば、30g/eq〜800g/eq、50g/eq〜600g/eq、100g/eq〜500g/eqなど)のエポキシ当量(EEW)を有し得、EEWは、1化学当量のエポキシ基に対する樹脂のグラム数の測定単位である。
【0025】
典型的な実施形態によると、エポキシ樹脂の総重量に基づいて、60重量%〜95重量%(例えば、70重量%〜90重量%など)のビスフェノールA及びビスフェノールFなどのビスフェノールのジグリシジルエーテルである原料液体エポキシ樹脂が、使用され得る。原料液体エポキシ樹脂のエポキシ当量(EEW)は、150〜250(例えば、160〜220、170〜200など)であり得る。本明細書で使用される場合、用語「液体エポキシ樹脂」は、任意の溶媒を添加せずに液状である樹脂を指す。典型的なエポキシ樹脂には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、及びパラアミノフェノールのトリグリシジルエーテルが含まれる。CNSL部分を含有するエポキシ樹脂化合物は、例えばCNSLグリシジルエーテルであり得る。CNSLグリシジルエーテル化合物は、Kanehashi,S.,et al.,Preparation and Characterization of Cardanol−based Epoxy Resin for Coating at Room Temperature Curing,Journal of Applied Polymer Science,2013.130(4):p.2468−2478で調製及び記載される化合物のうちの1つ以上であり得る。上記の参考文献に記載されるいくつかのCNSLグリシジルエーテル化合物は、例えばカルダノールのモノグリシジルエーテル、カルドール(cardol)のジグリシジルエーテル、またはこれらの混合物を含む。
【0026】
典型的な原料液体エポキシ樹脂は、以下の式(I)を有し、
【0028】
式中、nは、0または1である(典型的な実施形態において、nは0である)。液体エポキシ樹脂(I)の平均n値は、0〜1(例えば、0〜0.5、0〜0.3など)である。Rは独立して、Hまたは−CH
3である。
【0029】
エポキシ樹脂構成成分は、例えばThe Dow Chemical CompanyからD.E.R.及びD.E.Nの商品名で市販されるエポキシ樹脂を含み得る。エポキシ樹脂の例には、The Dow Chemical Companyの商業用生成物であるD.E.R.(商標)331、The Dow Chemical CompanyのD.E.R.(商標)354、The Dow Chemical CompanyのD.E.R.(商標)332、The Dow Chemical CompanyのD.E.R.(商標)330、及びThe Dow Chemical CompanyのD.E.R.(商標)383が含まれるが、これらに限定されない。使用され得る典型的な市販されるエポキシ樹脂には、DER(商標)331、DER(商標)383、DER(商標)671、DER(商標)736、DER(商標)852、及びDEN(商標)438が含まれ、これらは、The Dow Chemical Companyから入手可能である。得られるCMEポリオールの粘度及びコストは、エポキシ構成成分中で使用されるエポキシ樹脂の選択により調節され得る。
【0030】
CMEポリオールを形成するためのエポキシ反応性構成成分中のカルダノール構成成分は、カシューナッツ処理の副産物(例えば、カシューナッツのナッツと殻との間の層から抽出され得る)であり得るカルダノール構成成分(例えば、CNSL)を含む。カルダノールは、メタ位に長い炭化水素鎖を有するモノヒドロキシルフェノールである。実施形態で有用なカルダノールは、CNSLの1つの構成成分である、カシューナッツの殻から単離された油である。
【0031】
CNSL中のカルダノールの濃度は、CNSLの総重量に基づいて、約10重量%、約50重量%、または約90重量%、及び同時に、約99重量%以下、約97重量%以下、または約95重量%以下であり得る。例えば、カルダノール構成成分は、第2のカルダノール構成成分の総重量に基づいて、少なくとも50重量%(例えば、60重量%〜100重量%、85重量%〜100重量%など)のカルダノール含有量を有する。カルダノールの典型的な構造は、以下の式(II)に示されるように、1つのヒドロキシル基を含有するフェノール、及びメタ位の脂肪族側鎖R
1であり、
【0033】
式中、R
1は、−C
15H
25、−C
15H
27、または−C
15H
29である。
【0034】
カルダノール構成成分は、
主構成成分としてカルダノールを含み、
副構成成分としてカルドール(cardol)、メチルカルドール(methylcardol)、及び/またはアナカルジン酸を追加で含み得る。カルダノール構成成分は、加熱処理(例えば、カシューナッツからの抽出時)、脱炭酸処理、及び/または蒸留処理にかけられ得る。カルドール(cardol)は、例えば次の一般化学式により例示され得る。
【0036】
CNSL中のカルドール(cardol)の濃度は、CNSLの総重量に基づいて、約0.1重量%以上、約1重量%以上、または約5重量%以上、及び同時に、約90重量%以下、約50重量%以下、または約10重量%以下であり得る。さらに、CNSLは、アナカルジン酸、カルダノールのオリゴマー、カルドール(cardol)のオリゴマー、及びこれらの混合物などの他の材料の微量濃度を含み得る。CNSL中に存在する他の材料の総濃度は、約10重量%未満であり得る。
【0037】
典型的な実施形態によると、カルダノール構成成分は、メチルカルドール(methylcardol)及び/またはアナカルジン酸であるカルダノール構成成分の合計100重量%に基づいて、20重量%〜50重量%(例えば、20重量%〜45重量%、20重量%〜40重量%、30重量%〜40重量%など)のカルドール(cardol)を残りの物質と共に含み得る。カルダノール構成成分のカシューナッツ殻液は、例えばHDSG Beijing TechnologyからF−120シリーズまたはF−180シリーズの商品名で入手可能である。この理論に束縛されることを意図するものではないが、第1のカルダノール構成成分は、疎水性を増加し得、粘度を低減し得、ポリウレタンシステムのゲル化時間を増加し得、かつ/または引張り強度を提供し得る。ゲル化時間に関して、コーティングを形成するための迅速な硬化時間に対する必要性と、コーティングを形成する構成成分を噴霧する過程における構成成分の適切な流動性に対する必要性と、構成成分の過剰に無駄な流動の低減及び/または防止の必要性との間の均衡が認識され得る。ゲル化時間(すなわち、ストリングゲル化時間)は、反応液体混合物が粘質になる(すなわち、材料が、液体から固体への移行に十分な分子量を構築する)まで反応性構成成分がまず混合されて、反応液体混合物を形成する時間の間隔として決定される。特に、ストリンギング(stringing)の判定は、反応混合物を棒と繰り返し触れさせることと、棒を液体から引き抜くことと、を含み得、反応混合物中の材料が単一または複数のフィラメントが棒の端上に残るポイントまで重合したときにストリンギングは起こる。
【0038】
エポキシ反応性構成成分は、エポキシ反応性構成成分の総重量に基づいて、少なくとも50重量%(例えば、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、及び/または100重量%)のカシューナッツ殻液を含み得る。残りのエポキシ反応性構成成分は、任意のフェノールもしくはフェノール誘導体構成成分、及び/または添加剤構成成分(例えば、少なくとも1つの触媒及び/または少なくとも1つの溶媒を含む)であり得る。
【0039】
任意のフェノールまたはフェノール誘導体構成成分は、少なくとも1つのフェノール及び/または少なくとも1つのフェノール誘導体を含む。反応混合物は、反応混合物中のフェノールまたはフェノール誘導体のモル対カルダノール構成成分のモルに関して、0.5:1.5〜1.5:0.5(例えば、0.8:1.2〜1.2:0.8、0.9:1.1〜1.1:0.9など)のモル比で任意のフェノールまたはフェノール誘導体構成成分を含み得る。例えば、使用されるカルダノール構成成分のモル量は、使用されるフェノールまたはフェノール誘導体のモル量に基づいて、低減され得る。典型的なフェノール誘導体には、ナフトール系化合物、フェニルフェノール系化合物、及びヘキサクロロフェン(hexachlorophene)系化合物が含まれる。
【0040】
例えば、エポキシ反応性構成成分は、エポキシ反応性構成成分の総重量に基づいて、0.1重量%〜20重量%(0.1重量%〜15重量%)の二価フェノールなどの別のフェノール系化合物を含み得る。用語、二価フェノールは、2つのヒドロキシル基を含有するフェノール化合物を指す。典型的な実施形態によると、二価フェノールは、(A)式(III)中、1つのベンゼン環上に2つのヒドロキシル基を有するフェノールであって、式中、R
2はHもしくはC
1−C
15脂肪族鎖である、フェノール、または(B)式(IV)中、1つのヒドロキシル基をそれぞれ上に有する2つのベンゼン環を含有する組成物であって、式中、RはHもしくは−CH
3であり、R
3〜R
10はHもしくはC
1−C
6脂肪族鎖である、組成物のいずれかを指す。
【0043】
2つのヒドロキシル基を含有するフェノールの別の例は、レゾルシノールである。
【0044】
CMEポリオールを形成するための典型的な触媒には、第三級アミン、第二級アミンから形成されたマンニッヒ塩基、窒素含有塩基、アルカリ金属水酸化物、金属アルコキシド、アルカリフェノラート、アルカリ金属アルコレート、ヘキサヒドロチアジン、有機金属化合物、第四級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、及びスルホニウム化合物が含まれる。典型的であることに関して、触媒構成成分には、NaOH、KOH、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、イミダゾール、及び/またはトリエチルアミンが含まれ得る。触媒構成成分は、CMEポリオールを形成するための反応混合物の総重量に基づいて、0.01重量%〜3重量%(例えば、0.03重量%〜1.5重量%、0.05重量%〜1.5重量%など)の量で存在し得る。エポキシ構成成分とエポキシ反応性構成成分との間の反応は、そのままで、または不活性有機溶媒の存在下で行われ得る。典型的な溶媒には、ケトン(メチルイソブチルケトン及び/またはメチルアミルケトンなど)、トルエン、キシレン、及びグリコールエーテル(ジエチレングリコールのジメチルエーテルなど)が含まれる。無機及び/もしくは有機充填剤、着色剤、結湿剤、表面活性物質、植物保護剤、増量剤、ならびに/または可塑剤などの充填剤が、添加剤構成成分中に含まれ得る。CMEポリオールを形成するための反応は、120℃〜180℃の温度で、例えば1時間〜48時間実施され得る。
【0045】
CMEポリオールは、イソシアネート構成成分中のイソシアネート基との反応のためのエポキシ由来主鎖及び少なくとも2つの第二級イソシアネート反応性基、すなわち第二級ヒドロキシル基を含む。CMEポリオールは、例えば第二級イソシアネート反応性基のより緩慢な反応性が第一級イソシアネート反応性基に関することに基づいて、硬化時間の調整を可能にし得る。エポキシ主鎖は、建築用ブロックとして作用し得、得られたCMEポリオールの官能価数及び化学構造を決定し得る。CMEポリオールの合成は、第2のカルダノール構成成分中のカルダノールと、エポキシ構成成分中のエポキシ樹脂の開環反応から生成された開放されたエポキシ樹脂との間の反応を含む。例えば、CMEポリオールは、開環エポキシ樹脂とのカルダノール連鎖部を含み、これは、開放されたエポキシ樹脂とカルダノールとの間のエーテル結合をもたらす。変性反応を完了させるのに必要とされる時間は、用いられる温度、用いられる1分子当たり1つ超の反応性水素原子を有する化合物の化学構造、及び用いられるエポキシ樹脂の化学構造などの要因に応じる。
【0046】
典型的な実施形態によると、CMEポリオールは、2つのエポキシド部分及び樹脂主鎖を有するエポキシ樹脂、ならびに少なくとも一価不飽和カルダノールを有する第2のカルダノール構成成分を使用して合成が行われるとき、次の式Vを有する化合物を含み得る。
【0048】
上の式Vにおいて、R基は独立して、C
15H
31−n(式中、n=0、2、4、または6である)またはC
17H
33−n(式中、n=0、2、または4である)に等しい。特に、R基は独立して、15個または17個の炭素原子を含む飽和または不飽和の直鎖アルキル鎖であり、CMEポリオールは、異なるR基を有するカルダノールを多様に含むカルダノール混合物由来であり得る。式V中のエポキシは、エポキシ樹脂由来主鎖である。
【0049】
典型的な実施形態によると、ビスフェノールA系ジエポキシド樹脂及び少なくとも一価不飽和カルダノールを有する第2のカルダノール構成成分を使用するCMEポリオールの合成は、次の反応段階を含む。
【0051】
別の典型的な実施形態によると、脂肪族ジエポキシドエポキシ樹脂及び少なくとも一価不飽和カルダノールを有する第2のカルダノール構成成分を使用するCMEポリオールの合成は、次の反応段階を含む。
【0053】
多様な芳香族エポキシ樹脂及び第2のカルダノール構成成分を使用して合成される他の典型的なCMEポリオール構造には、次が含まれる。
【0055】
上の第一級CMEポリオールは、芳香族ポリエポキシド系樹脂及び一価不飽和カルダノールを使用して合成される。上の第二級CMEポリオールは、フェニルジエポキシド樹脂及び一価不飽和カルダノールを使用して合成される。上の第三級CMEポリオールは、脂肪族ポリエポキシド系樹脂及び一価不飽和カルダノールを使用して合成される。上の第四級CMEポリオールは、ビスフェノールA系ジエポキシド樹脂、フェノール、及び一価不飽和カルダノールを使用して合成される。
【0056】
この理論に束縛されることを意図するものではないが、CMEポリオール中のカルダノールは、得られたポリウレタン樹脂中に疎水性を導入し得る。増加した疎水性は、湿潤条件における低い吸水率、例えば低吸水性として表され得る。さらに、加水分解及び発泡(例えば、水と反応混合物中のイソシアネート構成成分との間の反応による二酸化炭素の放出により発生する泡の効果)が、低減され得、かつ/または回避され得る。CMEポリオールのエポキシ樹脂由来主鎖は、ポリウレタン樹脂に機械的性能及び材料の適合性などの特性の改善を提供し得る。CMEポリオールの機械的性能及び/または他の所望の特性は、カルダノール構成成分中のカルダノール上のアルキル鎖部分を考慮して調整され得る。CMEポリオールを形成するための反応混合物中に添加されたフェノールまたはフェノール誘導体は、エポキシ基開環反応を初期化し得るが、一方でカルダノール構成成分は、疎水性特徴及び抗加水分解性能を提供し得る。
【0057】
CMEポリオールを形成するための反応混合物において、エポキシ構成成分中のエポキシ基の、エポキシ反応性構成成分中のエポキシ反応性基に対する比率は、1:0.95〜1:5(例えば、1:0.98〜1:4、1:0.99〜1:3、1:1〜1:2.5、1:1〜1:1.1など)である。例えば、カルダノール構成成分から提供された過剰なエポキシ反応性基は、エポキシ樹脂のCMEポリオールへの十分な転換を可能にし得、かつ/または反応混合物に低粘度を提供し得る(低粘度も、十分な転換を可能にする)。CMEポリオールを形成するための反応混合物の得られた反応生成物中に残されたエポキシ残渣は、得られた反応生成物の総重量に基づいて、0.2重量%未満であり得る。例えば、得られた反応生成物のエポキシド当量は、ASTM D1652に従って測定されるとき、少なくとも8,000グラム/当量(例えば、9,000g/eq〜100,000g/eq、20,000g/eq〜100,000g/eq、30,000g/eq〜100,000g/eqなど)であり得る。得られた反応混合物のヒドロキシル値は、ASTM D4274に従って測定されるとき、少なくとも40mgKOH/g(例えば、40mgKOH/g〜300mgKOH/g、60mgKOH/g〜200mgKOH/g、80mgKOH/g〜100mgKOH/gなど)であり得る。ヒドロキシル値は、エポキシ反応性構成成分中のCMEポリオール及び未反応ヒドロキシル基を占め得る。
【0058】
典型的な実施形態によると、CMEポリオールを形成するための反応混合物中のエポキシ基のヒドロキシル基への完全な転換(すなわち、少なくとも93%の転換率)が、認識され得る。典型的な実施形態によると、CMEポリオールを形成する反応混合物は、エポキシ基のヒドロキシル基への95%の転換率及び少なくとも9,000g/eqのEEW、またはエポキシ基のヒドロキシル基への98.5%の転換率及び少なくとも30,000g/eqのEEWを有し得る。例えば、完全な転換は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)スペクトル特徴付けにより表され得、これは、より低い分子量のエポキシ構成成分が本質的に反応し、より高い分子量のCMEポリオールへの完全な転換をもたらすことを示し得る。完全な転換は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法により表され得、これは、エポキシ構成成分に対応する赤外線パターンが、CMEポリオールに対応する赤外線パターン内に本質的に存在しないか、またはわずかな量で存在することを示し得る。完全な転換は、核磁気共鳴分光法により表され得、これは、エポキシ構成成分に対応する磁気的特性パターンが、CMEポリオールに対応する磁気的特性パターン内に本質的に存在しないか、またはわずかな量で存在することを示し得る。
【0059】
大型工業用容器のための保護コーティング
噴霧可能なポリウレタンコーティングは、大型工業用容器(例えば、10,000ガロン超を収容する工業用容器)のための保護コーティングとして、容器が保護コーティングで覆われるように使用され得、これは、研磨性及び/または腐食性材料を収容するためにしばしば使用される。例えば、油及びガス業界において、フラックタンクなどの大型工業用容器が、水圧破砕流体を保管し、井戸地に及び井戸地から輸送するのに有用である。水圧破砕流体はトルエン及びキシレンなどの塩酸及び毒性溶媒などの腐食性材料を含み得るため、漏出の可能性を低減及び/または最小限に抑えるために、フラックタンク(例えば、内部)は、保護コーティングで覆われる。容器の大きな表面領域に因り、大きな表面領域上に噴霧可能であり、かつ化学的抵抗性を付与する保護コーティングが、大型工業用容器の表面上で使用するために求められる。
【0060】
塩酸は、採鉱、精製、金属生成物の洗浄、電気メッキ、ならびに油及びガスの回収などの用途で一般的に使用される。しかし、その腐食性質により、HClを保管及び輸送することは、最終使用者に著しい困難を示す。鋼鉄タンク及び器(鉄道車両など)がHClを保管するために使用されるとき、それらは典型的に、腐食から保護するためにエラストマーゴム被覆でコーティングされる。しかし、これらのゴムの被覆は、高価であり、ゴムが乾燥すること及び脆化することを防止するために酸の一定した存在を必要とする。さらに、噴霧適用エポキシ樹脂は、腐食から保護するために使用され得るが、これらのコーティングは、冷たい表面に適用するのが難しい場合があり、硬化すると脆化し、亀裂したコーティングを形成し得る。エポキシコーティングと違って、ポリウレタン及びポリ尿素コーティングは、極端に低温度で適用され得、頑丈で柔軟性のあるコーティングを形成し得るが、ポリウレタン系コーティングは、体積に基づいて、28%を超えるHCLの濃縮液に対する抵抗性を生み出すことができない場合がある。
【0061】
保護コーティングは、噴霧器具を使用することにより形成され、かつ研磨性及び/または腐食環境において化学的抵抗性を示す。保護コーティングは、複数の構成要素の高圧噴霧機械により、フラックタンクなどの大型工業用容器の表面上に適用され得る。複数の構成要素の器具は組み合わさることができ、かつ/または例えば、1000psi〜3000psiなどの高圧下でイソシアネート構成成分及びイソシアネート反応性構成成分を混合し得る。この構成成分は、例えば噴霧器具内で、60℃〜80℃の範囲内の適用温度に加熱もされ得る。噴霧器具により噴霧される各構成成分は、(例えば、一切の溶媒及び/または希釈剤を添加することなしに)25℃での1500cP未満の粘度を有し得る。
【0062】
全てのパーセンテージは、別途示されない限り重量による。分子量の全ての値は、別途示されない限り数平均分子量に基づく。
【実施例】
【0063】
CMEポリオールの形成
【0064】
次の材料を使用する。
【0065】
[表]
【0066】
CMEポリオールを、D.E.R.(商標)383及びCNSL Aを混合することにより調製する。特に、およそ182グラムのD.E.R.(商標)383及びおよそ330グラムのCNSL Aを(温度計、機械撹拌器、及び窒素接続部が備え付けられた)4口丸底フラスコに添加して、CMEポリオールを形成するための反応混合物を形成する。反応混合物中、D.E.R(商標)383中のエポキシ基の、CNSL A中のエポキシ反応性ヒドロキシル基に対する比率は、およそ1:1.05である。次いで、フラスコを十分にパージし、窒素で10分間保護する。次に、フラスコ内での反応混合物の扇動を、室温(すなわち、およそ20℃〜23.5℃の範囲内)で開始し、およそ0.26グラムの触媒Aを、反応混合物中に添加し、その間、扇動を継続し、熱を反応混合物に適用する。160℃の温度に到達すると、その温度を4時間維持する。その後、CMEポリオールを形成するための反応混合物が40℃に冷却されるまで、窒素保護を継続する。得られたCMEポリオールは、およそ490g/mol当量の当量及びおよそ123mgKOH/gのヒドロキシル値を有する。
【0067】
さらに、得られたCMEポリオールは、次の分子構造1を有する構成成分を含む。
【0068】
【化10】
【0069】
CMEポリオールを使用したプレポリマーの形成(実施例1)
【0070】
次の材料を使用する。
【0071】
[表]
【0072】
プレポリマーを、以下の表1に示される配合物に従って、上で考察されるCMEポリオールを使用して調製する。プレポリマーを形成するために、CMEポリオールを、イソシアネート(ISONATE(商標)143L)と反応させて、プレポリマー構成成分の総重量に基づいて、4重量%〜5重量%の標的のNCO含有量(すなわち、イソシアネート基含有量を有する、エポキシ化学的性質由来であるポリウレタン系プレポリマーを合成する。プレポリマーを形成するためのイソシアネート指数は、およそ1.05である。
【0073】
【表1】
【0074】
適切な量のイソシアネートAを凝縮装置、温度計、機械撹拌器、及び滴下漏斗が備え付けられた1000mLの4口フラスコ中に添加することにより、プレポリマーを調製する。 フラスコを十分にパージし、窒素で保護する。扇動を室温(およそ25℃)で開始する。イソシアネートと混合する前に、CMEポリオール及びジオールを混合して、ポリマー混合物を形成する(ポリオール混合物を使用する前に、DEAN STARK器具下でトルエン逆流を用いて乾燥させる)。次いで、ポリオール混合物を次いで、イソシアネート中に滴下して添加し、かつ温度をゆっくりと60℃に高める。全体のシステム温度が安定した後、温度を70℃に2時間上げる。次いで、得られたプレポリマーを滴定して、NCO含有量を確認する。プレポリマーを、1つの構成成分システムまたは2つの構成成分システム中で使用してよい。
【0075】
CMEポリオールを使用した2つの構成成分システムの形成(実施例2)
【0076】
次の材料を使用する。
【0077】
[表]
【0078】
2つの構成成分の配合物を、以下の表2に示される第1の構成成分及び第2の構成成分を使用して調製する。表2の重量パーセンテージは、対応する第1の構成成分または第2の構成成分の総重量に基づく。
【0079】
【表2】
【0080】
第1の構成成分を、3口丸底フラスコを使用して調製し、そこにイソシアネートBを添加した後に、乾燥窒素を用いてパージを行いながら1滴の塩化ベンゾイルを添加する。次に、ポリオールAを3口丸底フラスコに添加し、300rpmで頭上式撹拌器を使用して、反応性混合物を攪拌する。混合物を、30分の間80℃の温度にゆっくりと加熱し、3時間その温度に維持する。第1の構成成分は、15重量%のNCO含有量を有するプレポリマーである。
【0081】
第2の構成成分を、CMEポリオール、ポリオールA、硬化剤、及び触媒B、及び触媒Cを混合することにより調製する。これらの構成成分を、FlackTek SpeedMixer(商標)内で1分間混合して均質性を得る。
【0082】
プラークの調製及び試験
プラークを、上で考察される実施例1及び2を使用して、ならびに以下で考察される比較配合物A及びBを使用して調製する。
【0083】
次の材料を使用する。
【0084】
[表]
【0085】
実施例1は、プレポリマーを使用する1つの構成成分システムである。実施例2は、2つの構成成分システムであり、ここで、事前に混合した第2の構成成分を第1の構成成分に添加する。次いで、第1及び第2の構成成分を、FlackTek SpeedMixer(商標)を使用して素早く混合する(10秒間)。実施例1及び2の両方に関して、エラストマーシートを、等温式PMを使用して調製する(または別の好適な複数の構成要素の高圧噴霧器具を使用してよい)。材料を、グラコフュージョンガンを使用して、2000psiの静圧で分配する(またはプロブラーAP−2ポリ尿素噴霧ガンを使用してよい)。試料を低エネルギーポリエチレン表面上に噴霧し、シートを噴霧の20〜30分以内に剥離してよい。
【0086】
比較配合物Aに関して、VORASTAR(登録商標)6490を、VORASTAR(登録商標)6582に添加する。次いで、構成成分を、FlackTek SpeedMixer(商標)を使用して素早く混合する(10秒間)。比較配合物Bに関して、VORASTAR(登録商標)6320を、VORASTAR(登録商標)6651に添加する。次いで、構成成分を、FlackTek SpeedMixer(商標)を使用して素早く混合する(10秒間)。比較配合物A及びBの両方に関して、エラストマーシートを、等温式PMを使用して調製する(または別の好適な複数の構成要素の高圧噴霧器具を使用してよい)。材料を、グラコフュージョンガンを使用して、2000psiの静圧で分配する(またはプロブラーAP−2ポリ尿素噴霧ガンを使用してよい)。試料を低エネルギーポリエチレン表面上に噴霧し、シートを噴霧の20〜30分以内に剥離してよい。
【0087】
次に、実施例1及び2ならびに比較例A及びBの各々に対するプラークを37重量%のHClを含む水溶液中に浸漬させることにより、化学暴露試験を行う。溶液を25℃の温度に7日間の間維持し、プラークを溶液中に水浸させる。特に、7日間の間、示された媒体中に各材料の2x2インチの切片を浸漬させることにより、化学暴露試験を行う。曝露期間の後、浸漬した試料をDI水ですすぎ、紙タオルで叩きながら乾燥させ、さらなる試験のためにジップロック袋内に保管する。試験に関して、複製された「犬の骨」を、各々の四角い試料から切り取る。引張り強度及び破断伸長率を、ASTM D−1708に従って決定する。
【0088】
【表3】
【0089】
上の表3に関して、引張り強度及び伸長率を、ASTM D−1708に従って測定する。引張り強度及び伸長率の保持力を、引張り強度の変化率に対して次の等式に基づいて算出する。
等式(A):引張り強度の変化率=100−[(初期の引張り強度−最終の引張り強度)/(初期の引張り強度)]*100であるが、
初期の引張り強度マイナス最終の引張り強度は、絶対値である。
等式(B):伸長度の変化率=100−[(初期の伸長度−最終の伸長度)/(初期の伸長度)]*100であるが、
初期の伸長度マイナス最終の伸長度は、絶対値である。
【0090】
増加が観察されると、保持力を、100+変化率(引張り強度または伸長度において)として算出する。さらに、減少が観察されると、保持力を、100−変化率(引張り強度または伸長度において)として算出する。
なお、本発明には、以下の実施態様が包含される。
[1]イソシアネート構成成分及びイソシアネート反応性構成成分の反応生成物を含む噴霧可能なポリウレタンコーティングであって、
前記イソシアネート構成成分は、イソシアネートを含み、
前記イソシアネート反応性構成成分は、カルダノール変性エポキシポリオールを含み、前記カルダノール変性エポキシポリオールは、1:0.95〜1:5のエポキシ基のエポキシ反応性基に対する比率でのエポキシ構成成分及びエポキシ反応性構成成分の反応生成物であり、前記エポキシ反応性構成成分は、カルダノール構成成分を含む、噴霧可能なポリウレタンコーティング。
[2]前記カルダノール構成成分が、前記カルダノール構成成分の総重量に基づいて、少なくとも50重量%のカルダノール含有量を有する、[1]に記載の噴霧可能なポリウレタンコーティング。
[3]前記カルダノール構成成分が、カシューナッツ殻液である、[2]に記載の噴霧可能なポリウレタンコーティング。
[4]前記イソシアネート構成成分及び前記イソシアネート反応性構成成分の前記反応生成物が、2重量%〜23重量%のイソシアネート部分含有量を有するイソシアネート末端プレポリマーである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の噴霧可能なポリウレタンコーティング。
[5]前記イソシアネート構成成分が、少なくとも1つのポリイソシアネート及び少なくとも1つの疎水性ポリオールの反応生成物であるイソシアネート末端プレポリマーを含む、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の噴霧可能なポリウレタンコーティング。
[6][1]〜[5]のいずれか一項に記載の反応システムを含む工業用容器内の保護コーティングを形成するための、噴霧可能なポリウレタン系反応システム。
[7]噴霧可能なポリウレタンコーティングを形成するための方法であって、
1:0.95〜1:5のエポキシ基のエポキシ反応性基に対する比率でのエポキシ構成成分及びエポキシ反応性構成成分の反応生成物であるカルダノール変性エポキシポリオールを提供することであり、前記エポキシ反応性構成成分が、カルダノール構成成分を含む、提供することと、
ポリイソシアネートを含むイソシアネート構成成分及び前記カルダノール変性エポキシポリオールを含むイソシアネート反応性構成成分を反応させることにより、ポリウレタン樹脂システムを調製することと、
表面上のコーティングとして前記ポリウレタン樹脂システムを噴霧することと、を含む、方法。
[8]ポリウレタン系コーティングを調製するための方法であって、
(A)ポリウレタン系組成物を調製することであり、前記調製が、
1:0.95〜1:5のエポキシ基のエポキシ反応性基に対する比率でのエポキシ構成成分及びエポキシ反応性構成成分の反応生成物であるカルダノール変性エポキシポリオールを提供することで、前記エポキシ反応性構成成分が、カルダノール構成成分を含む、提供すること、
ポリイソシアネートを含むイソシアネート構成成分及び前記カルダノール変性エポキシポリオールを含むイソシアネート反応性構成成分を混合することにより、ポリウレタン樹脂システムを調製すること、によって行われる、調製することと、
(A)前記ポリウレタン樹脂システムを硬化することと、を含む、方法。