特許第6595593号(P6595593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595593
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】タービンエンジン部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20191010BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20191010BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20191010BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20191010BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20191010BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20191010BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20191010BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20191010BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20191010BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   F02C7/00 D
   B22F1/00 M
   B22F3/105
   B22F3/16
   B22F1/00 J
   B23K35/30 310D
   C22C19/03 G
   B23K1/00 330P
   B23K1/00 J
   B23K26/34
   F01D25/00 X
   F01D25/00 L
   F02C7/00 C
   F01D5/28
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-525954(P2017-525954)
(86)(22)【出願日】2015年11月16日
(65)【公表番号】特表2018-505334(P2018-505334A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】FR2015053091
(87)【国際公開番号】WO2016075423
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2018年10月22日
(31)【優先権主張番号】1461035
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モタン,ジャン−バティスト
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02978070(FR,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0038412(US,A1)
【文献】 特開昭59−016905(JP,A)
【文献】 特開2005−214197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 5/28
F01D 25/00
B22F 1/00− 8/00
B23K 1/00− 3/08
B23K 26/00−26/70
B23K 31/02、33/00
B23K 35/14、35/22−35/40
C22C 1/04− 1/05
C22C 5/00−25/00、27/00−28/00
C22C 30/00−30/06、33/02、35/00−45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジン部品(17)を修復する方法であって、
部品(17)のものと同一または類似の基材を含む粉末(3)を選択的に溶融することによってプリフォーム(1)を層状に製造するステップであって、プリフォームは、修復される部品(17)にろう付けされることが意図される組付面を有し、この目的のために基材と混合されるろう付け材を含み、ろう付け材は、全て重量%でコバルト:18〜22%、ケイ素:4〜5%、ホウ素:2.7〜3.15%、および炭素:0〜0.06%を含むニッケル系合金であり、前記粉末が、熱流束を発生する溶融加熱の際に、熱流束の最大振幅を有するろう付け材の主変態ピークと、より小さい熱流速の振幅を有するろう付け材の二次変態ピークとを有する混合物を含む、ステップと、
プリフォーム(1)をタービンエンジン部品(17)に拡散ろう付けによって組み付けるステップとを含むことを特徴とし、
プリフォームを作製するために使用されるろう付け材の前記主変態ピークの熱流速の振幅が、ろう付け材の二次変態ピークのそれぞれの熱流束の振幅の少なくとも2倍であり、
ろう付け材が、部品が冷却されたときに部品の割れを制限するためにさらにクロムを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
クロム添加量が9重量%〜19重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロム添加量が14重量%に等しいことを特徴とする請求項1、2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
基材の化学組成がNi、Co、TiまたはFe系超合金に対応し、ろう付け材の化学組成がNiおよび/またはCoおよび/またはFe系超合金に対応し、溶融元素がSiおよび/またはBである、請求項1に記載の補修方法。
【請求項5】
プリフォーム(1)が、基材粉末と、ろう付け粉末とを選択的に溶融して製造され、その溶融温度は基材粉末の溶融温度未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の補修方法。
【請求項6】
ろう付け材の溶融温度が1,210℃以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
基材が、全て重量パーセントでコバルト16.9%、クロム14.8%、アルミニウム3.87%、チタン3.45%、モリブデン5.1%、および炭素0.015%を含むニッケルベースの化学組成を有するAstroloy(NK17CDATとしても知られている)であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実施することによって製造されたタービンエンジン部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジン部品の修復方法に関し、その製造を排除するものではない。
【背景技術】
【0002】
特にタービンブレードなどの一部のタービンエンジン部品は、所定の回数のサイクル後に修復されなければならない大きな損傷を引き起こす侵食または摩耗を受ける。
【0003】
損傷は、特に材料が欠如している形態にある可能性がある。修復は、そのとき、摩耗した部品の元の(または非常に近い)形状および寸法に戻すことにある。
【0004】
これを達成するために、超合金粉末およびろう付け粉末(その融点が超合金粉末の融点よりも低い)を焼結させることによってプリフォームを製造すること、次に拡散ろう付けによって修復される部品にプリフォームを結合することを含むいくつかの技術が従来技術で使用されている(以下、用語「金属」は合金を含むものとする)。
【0005】
ろう付けは、例えば、融点が部品の材料の融点よりかなり低い金属フィラーによって同一または異なる材料の2つの金属部品を組み付けることからなるプロセスであることを思い出すべきである。金属フィラーに含まれるはんだは、液状で供給され、部品は金属フィラーによって加熱されるが、固体のままである。
【0006】
拡散ろう付け(または一時的液相結合)は、ろう付けと同様の2つの金属部品の組付作業であるが、金属フィラーと組付部品との組成差は拡散熱処理によって徐々に再吸収される。この処理により、準化学的に均一な結合が形成され、その特性は組み付けられる部品の特性に近い。したがって、拡散ろう付けは、拡散処理が加えられた従来のろう付けとして考えることができる。
【0007】
2つの部品を組み付けるとき、使用される金属フィラーは、組み付けられる部品の化学組成に近い化学組成を有するが、その溶融温度は、はんだにより低い。拡散ろう付けの間、はんだは溶融し、組み付けられる表面を濡らし、次いで、その組成が変化し、形成されたろう付け継ぎ目の組成と均質になる部品の材料への金属フィラー中の合金元素の拡散によって等温的に凝固する。拡散ろう付けプロセスの最終段階では、金属フィラーは部品の材料の一部を形成し、それと区別できない。
【0008】
このような方法は、前述の通り、元の部品と同等の機械的および冶金的特性を有する組付部品およびその結合をもたらしながら、いくつかの部品を組み付けることを可能にする。さらに、このような方法で使用される温度は、特に航空分野において、これらの部品を製造するために一般的に使用される超合金に適合する。
【0009】
しかしながら、実質的に平坦なプリフォームを使用して部品を修復することは、この方法の適用を制限する。したがって、補修される領域が、添加される材料の量が全領域にわたって一定でない可能性がある(例えば、可変厚さ)三次元プロファイルを有することができるタービン羽根の場合、例えば、仏国特許出願公開第2978070号明細書は、以下を提案する:
・部品と同一または類似の基材を含む粉末を選択的に溶融する(DMLS、ダイレクトメタルレーザー焼結とも称する)ことによって、プリフォームを層状に製造し、プリフォームは、修復されるタービンエンジン部品にろう付けされることを目的とし、この目的のために、基材と混合されるろう付け材を含む(少なくとも)1つの組付面を有し、前記粉末は、熱流束を発生する溶融加熱の際に、熱流速の最大振幅を有するろう付け材の主変態ピークと、より小さい熱流速の振幅を有するろう付け材の二次変態ピークとを有する混合物を含むこと、
・拡散ろう付けによってプリフォームをタービンエンジン部品に組み付けること。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2978070号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、補修される領域が、したがって、三次元外形を有する可能性があるこのような部品は、添加される材料の量が全領域にわたって一定でない可能性があり、期待される品質は実現可能ではない。直接製造(プリフォームを層状に、選択的溶融によって製造すること)において、溶融材料は冷却時にひどく割れやすく、したがって製品を変えてしまうことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、これらの状況を回避することである。このため、材料の収縮を制御することが考えられてきた。より具体的には、はんだは、加熱(および/または冷却)の間に1つの主変態ピークのみを有するべきであると考えられてきた。さらに具体的には、添付の図に示されるように、プリフォームの製造に使用されるろう付け材の主変態ピークの熱流束の振幅は、このろう付け材の二次変態ピークの熱流束の振幅の少なくとも2倍(20%以内)であることが提案されている。
【0013】
したがって、ろう付けおよび超合金粉末(予め合金化された粉末、すなわち予め混合された場合を含む)を混合した後、この化合物は2つの主変態ピーク(一方ははんだを溶融するもの、他方は超合金を溶融するもの)を含むのみならず、はんだを溶融するための二次変態ピークの振幅は、主ピークの振幅よりもずっと小さい。
【0014】
したがって、本発明による方法は、様々なタービンエンジン部品の製造、特にタービンブレードの修復に適用することができる。
【0015】
プリフォームは、制御された粗さで製造することができる。プリフォームは、それがある程度の粗さを有する場合、より容易にろう付け可能であり、はんだは、そのとき、組み付けられる表面をより効果的に濡らすことができるからである。
【0016】
基材は、補修される部品と同一または類似であり、拡散ろう付けによるプリフォームの組み付けを容易にする。2つの「類似の」材料は、少なくとも同じベース(例えば、ニッケル、コバルト、チタンなど)を有する。
【0017】
本発明の用途は、成形部品の粉末の冶金的製造に関し、成形部品はそれらを受けることが可能な金属部品に自己ろう付けにより組み付けられることを目的とし、レセプタと呼ばれる。自己ろう付けは、成形部品を、受け金属部品に自己ろう付けすることであり、ろう付け元素は成形部品に含まれる(したがって、それは三次元であることが好ましい)。
【0018】
この形状部品の金属部品上での自己ろう付けは、固体拡散熱処理を含む、または後に固体拡散熱処理を含み、それによって、ろう付け/拡散操作、成形部品および自己ろう付け接合部(接合領域)の組成物および構造の均質化を目的とする処理と一般に称するものを構成する。
【0019】
特にこの状況において、(選択溶融によってプリフォームを製造するために使用される)上述の基材の化学組成は、Ni、Co、TiまたはFe系超合金に対応し、ろう付け材の組成は、溶融元素がSiおよび/またはBであるNiおよび/またはCoおよび/またはFe系合金に対応する(それ自体が公知のように、溶融元素、例えばシリコンまたはホウ素は、それが導入される合金の(固相線)溶融温度を実質的に低下する元素である)ことが望ましい。
【0020】
したがって、ろう付け材の主変態ピークの熱流束の前記振幅が、このろう付けの二次変態ピークの熱流束の振幅の少なくとも2倍に等しくなるように、ろう付け材に供給される化合物に関して、Cr、Co、Mo、Feから選択することが望ましい。この化合物の望ましい重量%は7〜23%の範囲である。
【0021】
これらの選択は、タービン部品、特にタービンブレードの製造に特に適している。
【0022】
これに関して、名目上の組成および重量パーセントで、ろう付け材は、Co、Si、Bの9〜19%を有するがCrも含むNi系合金であることがさらに望ましい(本記載中の全ての割合は、重量パーセントで提供されることが特定される)。
【0023】
NiおよびCo20、Si4.5、B3をベースとするいわゆるNiCoSiB1060ろう付け粉末を使用することにより、亀裂の低い危険性、耐高温腐食性、および特に高温クリープに対する耐性に関する基材/ろう付け材対の最終的な品質の間でバランスの取れた結果が得られる。
【0024】
有利には、ろう付け材中のクロムの量は14%である。この特定の量は、亀裂の限界と部品の強度との間に良好な妥協をもたらす。
【0025】
実際、クロムを少量すぎる量、すなわち9%未満で添加すると、部品上の亀裂の発生を適切に制限することができないが、一方、あまりにも多い量、すなわち19%を超えると、ろう付け材の溶融温度が上昇し、基材の溶融温度に近づきすぎて、部品が脆くなる。
【0026】
本発明の他の特徴によれば、プリフォームは、基材粉末と、基材粉末の溶融温度未満の溶融温度を有するろう付け粉末とを選択的に溶融することによって製造される。したがって、プリフォームの寸法公差は大幅に低減され、最終アセンブリが最適化される。
【0027】
既にろう付け材を含むプリフォームは、ろう付け材の量に応じて、修復される部品に直接ろう付けされることができる。
【0028】
好ましくは、プリフォームは、プリフォームに適切な機械的特性を付与するために、少なくとも60%の基材を含む。
【0029】
本発明の変形では、プリフォームは、基材のみを含む粉末を選択的に溶融することによって製造される。
【0030】
次いで、プリフォームの組付面にろう付け材が堆積されることができる。
【0031】
この堆積は、例えば、ろう付け粉末をレーザー溶射またはプラズマ溶射することによって、または水性溶媒中に共堆積(電着)することによって行われる。
【0032】
そのような堆積物の厚さは、例えば、20〜200μmの範囲である。
【0033】
また、本発明は、上記の方法を実施して製造されたタービンエンジン部品に関する。
【0034】
本発明は、より良く理解され、本発明の他の詳細、特性、および利点は、非限定的な例として与えられる以下の説明を添付の図面を参照して読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】タービンエンジンブレードを修復するために使用されるプリフォームの斜視図である。
図2】タービンエンジンブレードを修復するために使用されるプリフォームの斜視図である。
図3】タービンエンジンブレードを修復するために使用されるプリフォームの斜視図である。
図4】粉末用選択的溶解プラントの概略図である。
図5】本発明による修復方法の異なる段階を示す概略図である。
図6】本発明による修復方法の異なる段階を示す概略図である。
図7】本発明による修復方法の異なる段階を示す概略図である。
図8】レーザー溶射システムの概略図である。
図9】プラズマ溶射システムの概略図である。
図10】従来技術の解決策に従って、公知の組成物が使用される場合の溶融材料の亀裂の重大な危険がある状況をグラフ上に示す。
図11】本発明が提案するものに従って、この危険を緩和することを目指す解決策を同様のグラフ上に示す。
図12】冷却中に、この場合(下の曲線、番号1〜3)においてCr添加なし、および添加あり(上の曲線)の場合のはんだに関連する変態ピークを上記と同様のグラフ上で比較する。
図13図10の曲線に重ね合わされた3つの平滑化された曲線が、9%、14%または19%のクロム含有量を含むろう付け材の異なる構成を概略的に表す図10と同様のグラフを示す。
図14】ろう付け材がクロムを含まない場合の亀裂の一例を示す。
図15】ろう付け材が19%未満のクロム含有量を含む場合の基材の挙動を示す概略図である。
図16】ろう付け材が19%を超えるクロム含有量を含む場合の基材の挙動を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1および図2は、航空機のターボジェットエンジンまたはターボプロップエンジンなどのタービンエンジンにおけるタービンブレードの前縁または後縁を修復する方法に使用されるプリフォーム1を示す。図3は、この種のブレードのプラットフォームを修復する方法で使用されるプリフォーム1を示す。両方の場合において、プリフォーム1は複雑な三次元形状を有する。
【0037】
第1の実施形態では、まず、本発明による修復方法は、基材粉末およびろう付け材粉末を含む粉末の混合物を、これらの材料が予混合されているかどうかにかかわらず、選択的に溶融することによって、焼結プリフォーム1を層状に製造することからなる。
【0038】
ろう付け材の融点は基材の融点よりも低い。一例として、ろう付け材の溶融温度は1,000〜1,300℃の範囲にあり、一方、基材の溶融温度は1,200〜1,600℃の範囲にある。
【0039】
基材は、好ましくは超合金、例えば、ニッケル系超合金である。この場合、ろう付け材は、また、ニッケル系であり、シリコンおよび/またはホウ素などの溶融元素も含む。
【0040】
選択的溶融は、図4に示すものなどのプラントを用いて行われる。このプラントは、金属粉末3の混合物を収容するタンク2を備え、その底部4は、アクチュエータロッド5によって移動可能かつ平行状態で変位可能であり、底部が可動プレート7からなる隣接容器6もアクチュエータロッド8によって平行状態で変位可能である。
【0041】
プラントは、さらに、水平面Aに沿って移動することによってタンク2から容器6に粉末を供給するスクレーパ9と、コンピュータ制御装置11に結合されるレーザービームまたは電子ビームを生成して、ビーム12を向け、移動するための手段10とを含む。容器6に隣接して、過剰の粉末14を回収するために槽13を設けてもよい。
【0042】
このプラントは、以下のように動作する。まず、タンク3の底部4を上方に移動させて、ある量の粉末3が水平面A上に位置するようにする。スクレーパ9を左から右に移動させて、前記粉末3の層を容器6内に導入し、金属粉末の薄い層をプレート7の水平平面上に堆積する。粉末の量およびプレート7の位置は、選択された一定の厚さの粉末の層を形成するように決定される。平面Aに垂直なレーザービーム12または電子ビームが、次いで、容器内に形成された層の特定領域を走査してろう付け粉末(基材粉末ではない)を局所的に溶融する。溶融した領域は、次いで、基材粉末の粒子を凝集させ、例えば、10〜150μmのオーダーの厚さを有する焼結プリフォーム1の第1の層15を形成することによって固化する。
【0043】
より具体的には、レーザービームによって、または電子ビームによって粉末を溶融する場合、層15の厚さは、それぞれ10〜45μmの範囲、45〜150μmの範囲にある。
【0044】
次いで、プレート7を下降させ、粉末の第2の層を、これまでと同じ方法で、粉末の第1の層上に供給する。ビームの変位が制御されて、第1の層15上での焼結によって第2の層16が形成される。
【0045】
これらの工程は、プリフォーム1が完全に形成されるまで繰り返される。層15、16は実質的に同じ厚さを有する。
【0046】
レーザービームを用いて粉末を選択的に溶融させてプリフォーム1を層状に形成する場合、粉末の平均粒径は10〜45μmである。2つの粉末の粒径分布は必ずしも同一ではない。粉末の混合を容易にするために、近い平均値、すなわち2つの粉末がそれぞれ10〜45μmの平均粒径を有する場合が好ましい。
【0047】
電子線を用いて粉末を選択的に溶融することによってプリフォーム1が層状に形成される場合、粉末の平均粒子径は50〜100μmである。
【0048】
このプリフォーム1は適切な量のろう付け材を含み、修復される部品17に直接ろう付けされることができる(図5)。
【0049】
これを達成するために、ろう付けされるプリフォーム1の表面および修復される部品17の表面は脱脂および/または酸洗された後、修復される部品の表面上にプリフォーム1がセットされる(図6)。
【0050】
プリフォーム1は、次いで、それを修復される部品17上の所定の位置に保持するために、修復される部品に取り付けられる(レーザータッキング、コンデンサ放電など)。
【0051】
プリフォーム1および修復される部品17は、その後、オーブン内にセットされて、それらは拡散ろう付けサイクルを受ける。
【0052】
Astroloyとしても知られているタイプNK17CDATの基材、およびNiCrBろう付け材について、拡散ろう付けは、温度上昇を1,205℃まで約2時間30分続けること、1,205℃で15分間続ける第1の段階、その後の1,160℃で2時間続ける第2段階、その後の1,160℃から20℃への温度低下を約1時間続けることを含み得る。
【0053】
ろう付け拡散中に、ろう付け材が最初に溶解する。それが生じる液相は、毛管現象によって保持され、修復される部品17およびプリフォーム1の表面を湿らせる。
【0054】
冷却後、プリフォーム1と修復される部品17との間に固体の中間層が形成され、これらの部品の表面に拡散接合された均質な金属組織を有する。
【0055】
このように修復された部品は、新しい部品のものと同一または類似の機械的特性を有する。
【0056】
修復された部品は最終的に仕上げ工程を受け、修復された表面は、部品が新しい部品の寸法を回復するように調整または機械加工される(図7)。
【0057】
プリフォーム1、ひいては修復された部品の機械的特性をさらに高めるために、前記プリフォーム1は、その中心部での減少したまたはゼロの割合のろう付け材を含み得、それによって、ろう付け材に富む粉末は、ろう付けされる表面に堆積されることができる。
【0058】
このようにして、基材粉末の重量割合が90%より大きい基材粉末とろう付け粉末との混合物を選択的に溶融することによって、プリフォーム1が製造されることができる。基材粉末のみを選択的に溶融することによってプリフォーム1は製造されることもできる。
【0059】
この場合、ろう付け材で強化された粉末の層がプリフォームの表面上に形成されなければならない。この層は、レーザー溶射またはプラズマ溶射、電着によって製造されることができる。
【0060】
この層を形成するために使用される粉末は、60〜90重量%の基材粉末および10〜40重量%のろう付け粉末を含み得る。
【0061】
レーザー溶射堆積の原理を図8に示す。この堆積方法は、表面18に粉末19を噴射し、表面18に向けられたレーザービーム20によって、噴射された粉末を加熱して、前記粉末19が溶融し、次いで前記表面18上で凝固することからなる。
【0062】
これを達成するために、プリフォーム1は、例えば、アルゴンを含む筺体21内にセットされる。YAGレーザービームを生成する手段22は、この表面18に垂直に向けられたノズル23を介して、プリフォーム1の表面18に向けられたレーザービーム20を生成する。ノズル23およびレーザービーム20は、制御システムおよび適切な手段24によって表面に対して(またはその逆に)移動させることができる。
【0063】
ろう付け材で強化された1つまたは複数の連続層31は、このようにして、プリフォーム1の対応する表面18上に形成されることができる。
【0064】
プラズマ溶射堆積の原理が図9に示される。この堆積方法は、粉末19をプラズマジェット32中に注入することからなり、そこで粉末19は溶融され、被覆される表面18に向けて高速で発射される。プラズマジェット32は、冷却回路35によって冷却される2つの電極33、34間に生成される電気アークによってトーチ内部に生成される。2つの電極33、34間の電位差は、発電機36によって確立される。
【0065】
粉末粒子19の溶融は、プラズマ内での非常に高い温度に起因し、高い融点を有する材料を堆積させることを可能にする。
【0066】
それが凝固するにつれて、粉末の材料がプリフォーム1の表面18上に堆積物を形成する。
【0067】
気体および粒子の高速度は、堆積物の強い付着性、低い気孔率、および低レベルの化学変換を得ることを可能にする。
【0068】
基材の化学組成の典型的な例が以下に示される。基準および対応する化学組成(重量%)は、各材料について示される:
・Astroloy(NK17CDAT):ニッケルベース、コバルト:16.9%、クロム:14.8%、アルミニウム:3.87%、チタン:3.45%、モリブデン:5.1%、炭素:0.015%。
・SYP3:ニッケルベース、コバルト:17%、クロム:15%、モリブデン:5%、チタン:3.5%、アルミニウム:4%。
【0069】
Astroloyは、テスト中に最良の結果をもたらす材料であることに留意されたい。
【0070】
同様に、ろう付け材の化学組成が以下に示される。
【0071】
・NiCoSiB1060=TY134b;
・TY134b:ニッケルベース、コバルト:18〜22%、シリコン:4〜5%、ホウ素:2.7〜3.15%、炭素:0〜0.06%。
【0072】
例として、粉末(基材/ろう付け材)の混合物は、SYP3またはAstroloy粉末(基材)75重量%およびTY134b粉末(ろう付け材)25重量%を含み得る。あるいは、この混合物は、70重量%の基材粉末と30重量%のろう付け材とを含み得る。
【0073】
図10図16は、基材が上述のようにAstroloyであり、ろう付け材がTY134bである状況に対応する。
【0074】
図10は、AstroloyおよびTY134bが混合されたタイプの組成物では、依然として溶融材料が割れるというかなりの危険があることを示している。
【0075】
実際、部品の熱流束の進展、すなわち時間の関数としての電圧Uを示す、上記粉末の混合物の図示された示差熱分析グラフでは、混合物が1時間より多い加熱後に1,300℃より高い温度に達する場合、以下のことが識別されることができる。
【0076】
・ろう付け材の変態におけるより大きな熱振幅の主ピーク37、
・分かるように、どちらか一方の側で、主ピークよりも小さい熱振幅の、この同じろう付け材の変態における2つの二次ピーク39、41。
【0077】
その後、同等の温度範囲(900℃〜1,140℃)で、基材、この場合、超合金の変態のピーク(全体42と称する)の発生。
【0078】
それらが起こる正確な温度および時間値は、図10において読み取ることができ、図10では、℃での温度がグラフ上に直接示されている。ピークの振幅(A1/A2/A3、図11)は、熱流れに関連する。横座標に表される時間は、発明者らの場合には重要ではない。図11および図12では、縦軸に熱流束がプロットされ、横軸に温度がプロットされる。
【0079】
関連する材料の熱流束の測定は、「RDFMicro−Foil」(商標)センサを使用して達成されることができる。このセンサは、マイクロ電圧計(電圧U)に接続されている。そのとき、全体が、センサと取付面の両方を介した加熱または冷却の伝達率の直接的な測定をもたらす。マイクロ電圧計の出力と熱流れとの間には直接の関係がある。図11および図12において、負の電圧値は、これが発熱反応であることを示し、持ち越された値は、空のるつぼを用いて行われる標準的な測定との比較によって得られる。
【0080】
この性質のグラフでは、図11の曲線43aおよび43bを有する2つの例は、上記導入された技術の1つによる、直接製造を介した部品の実際の生産を可能にすることを目的とする本発明による解決策をそれぞれ示しているが、例えば、曲線43bについて以下を有するCrが添加された(この場合、9〜19%、例えば14%)はんだを「RBD61」(すなわち、Astroloy+TY134b混合物)として知られているベース上に置く。
・加熱の間(これは冷却中は同一である)にプリフォームを製造するために使用されるろう付け材の変態における単一の主ピーク44だけでなく、
・この同じろう付け材の変態における二次ピーク45、47の熱振幅、それぞれA2およびA3の少なくとも2倍であるこの主ピーク44の熱(すなわち熱流束)振幅A1も。
【0081】
さらに、より高い温度(1,200℃を超える温度)では、ベース超合金の変態ピーク(全体49と称する)が見い出される。
【0082】
図12は、冷却中に、「ドープされた」ろう付け(したがって、選択された好ましい実施例で添加されたクロム)に関連された変態ピーク51が、それらが検討中に合金にクロムを添加することないもの(例えば、曲線No.3の参照番号53参照)対して減衰されることをさらに示す。
【0083】
図13は、ろう付け材中の異なるクロム含有量を有する図10の材料の挙動を示す。実線の曲線は、クロムを含まないろう付け材の挙動を示す。このようなろう付け材の加熱後の結果が、図14に示されており、得られた部品が冷却された後に現れた亀裂56を示す。
【0084】
3つの破線の曲線(それぞれを識別するために図の凡例参照)は、ろう付け材がそれぞれ9%、14%、および19%のクロムを含む場合の基材とろう付け材との混合物の挙動を示す。
【0085】
クロムの濃度が高くなればなるほど、変態ピークの熱振幅は1,185℃未満の温度でより低く示されることが観察される。したがって、部品が割れる危険は実際には限定されるであろう。
【0086】
参照番号55は、基材、すなわち選択された超合金の変化を示す曲線を識別する。
【0087】
分かりやすくするために、発明者らは次のように定義することとする:
・ろう付け材(ろう付け材のそれぞれの)の溶融開始温度(または温度範囲)などの、ろう付け材の「変態ピーク」(実際には、これは、基材、この場合は超合金にも当てはまる);
・2つの熱流束値の差としての、50℃未満の互いに非常に近接した2つの温度値での同じサンプルについての、「熱流束の振幅」(または熱振幅)(Ai)。
【0088】
したがって、はんだと超合金粉末を混合した後、この化合物は、2つの変態ピーク(一方ははんだの溶融について、他方は超合金の溶融について)を含む。加熱中および冷却中の変態ピークの数の減少は、冷却中に部品が受ける応力を制限し、いかなる亀裂を回避することを可能にする。
【0089】
しかしながら、図13において、クロムの割合の増加は、ろう付け材の溶融温度を上昇させる効果を有することも留意されたい。したがって、19%クロムの濃度を有するろう付け材の使用に対応する曲線では、クロムを含まないろう付け材の融点に対する融点の差は、約25℃(1,210℃−1,185℃)であり、これは1,200℃から大幅に上昇する。9%または14%のクロム濃度を有するろう付け材の使用に対応する曲線は、それぞれ、1,185℃〜1,195℃および1,195℃〜1,205℃の範囲でクロムを含まないろう付け材の溶融温度に近い溶融温度を有することにも留意すべきである。
【0090】
ろう付け材へのクロムの添加は、ろう付け材の溶融温度を上昇させ、修復される部品を構成する材料の溶融温度により近くなる。
【0091】
好ましくは、ろう付け材は、その溶融温度がせいぜい1,210℃、好ましくは1,210℃未満となるように決定される。
【0092】
それは、冷却中の亀裂の発生を制限することができるであろうが、19%を超えるクロムのいずれの量も、部品を構成する材料の挙動に問題を生じる。実際、ろう付け材の溶融温度は、そのとき、部品が加熱された場合に、部品を構成する材料がろう付け材を溶融するのに必要な熱に反応するように、部品を構成する材料の溶融温度に近いであろう。
【0093】
図15は、ろう付け材が9%〜19%の範囲のクロム量を含む場合に、修復される部品を構成する材料の挙動を概略的に示す。修復される部品1を構成する材料の粒子57は準均質に分布しているので、部品に良好な機械的強度を与えることが可能であることが分かる。
【0094】
ろう付け材が含むクロムの量が19%を超える場合、修復される部品を構成する材料の挙動が、図16に概略的に示されるようになるであろう。修復される部品1を構成する材料の粒子57のサイズの増加が観察されることができる。このサイズの増加は、そのとき、部品1の脆性、および図15の部品1のものよりも明らかに低い、機械的応力に対する耐性を生じる。
【0095】
好ましい実施形態に基づく例として、所定の部品が、特に、基材粉末Aおよびろう付け粉末Bを使用する粉末冶金法を使用して、ニッケル系超合金から製造され得る。基材粉末Aは、商品名Astroloy(AFNOR指定によるNK17CDAT)で公知ものであってもよい。この材料は、特に固相線温度および機械的特性に関する限り、ブレードを製造するために使用されるRene77と称する超合金と完全に適合する。
【0096】
基材粉末Aの固相線温度は1,240℃である。その液相線温度は1,280℃である。Astroloy粉末の焼結およびブレードとの自己ろうを行うために使用されるろう付け粉末Bは、17重量%のCo、4重量%のSi、および2.7重量%のBを含む1060Ni−CO−Si−B合金粉末である。ろう付け粉末Bの固相線温度は965℃である。その液相線温度は1,065℃であり、基材粉体Aおよびブレードの固相線温度よりも低い。これらのデータは、ろう付け粉末の液相線温度よりも高い1,200℃の自己ろう付け温度を定めるために使用されることができるが、Rene77製のブレードおよびAstroloy粉末Aの固相線温度よりも低い。
【0097】
したがって、自己ろう付け温度は、ろう付け粉末の液相線温度よりも高く、基材粉末と受け部品(上記部品17など)の固相線温度よりも低く、一方、ブランクの(上記プリフォーム1などの)焼結は、ろう付け粉末の液相線温度よりも高いが、その後の自己ろう付け処理温度よりも低い温度で行われる。このように、相対密度が少なくとも95%に等しい自己ろう付けに適した形状の部品を得ることが可能となるであろう。
【0098】
仏国特許公開第2785559号明細書に教示されているように、実際には、航空機タービンエンジン、特にタービン要素、より具体的には低圧タービン用の羽根および/または分配器を対象とする用途において、組み合わされていてもいなくても、公知の一般的な技術水準を考慮して、生産の品質を最適化するために、以下のことが観察されることが望ましい。
【0099】
・ろう付け材は、4〜5重量%のSiを含む合金でなければならない。
【0100】
・ろう付け材は、2.7〜3.15重量%のBを含む合金でなければならない。
【0101】
・基材と混合されるろう付け材を含む粉末中のろう付け材の重量パーセントは5〜40%でなければならない。
【0102】
・プリフォーム(1)は、少なくとも60%の基材を含む。
【0103】
本発明による方法は、様々なタービンエンジン部品を修復することを可能にする。実際、粉末を選択的に溶融することによってプリフォームが層状に形成されるので、プリフォームは三次元形状を有し、必要に応じて可変厚さを有し得る。
図1
図2
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図11
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図16