特許第6595623号(P6595623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595623
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/04 20060101AFI20191010BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C08F6/04
   C08F2/18
【請求項の数】12
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-559244(P2017-559244)
(86)(22)【出願日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2016089156
(87)【国際公開番号】WO2017115861
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-256603(P2015-256603)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 登喜雄
(72)【発明者】
【氏名】井村 元洋
(72)【発明者】
【氏名】藤野 眞一
(72)【発明者】
【氏名】本田 耕士
(72)【発明者】
【氏名】若林 亮太
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−269593(JP,A)
【文献】 特開2012−012482(JP,A)
【文献】 特開2001−200062(JP,A)
【文献】 特開平11−188727(JP,A)
【文献】 特開平02−123102(JP,A)
【文献】 特開2015−134845(JP,A)
【文献】 特開平07−133312(JP,A)
【文献】 特表2008−526502(JP,A)
【文献】 特表平11−500763(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/159144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08F 6/00− 8/50
C08L 1/00−101/14
C08J 3/00− 3/28
B01J20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂の原料である単量体を重合させ、有機溶媒中に分散した含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、
上記有機溶媒と上記含水ゲル状架橋重合体とを分離する分離工程とを含み、
上記分離工程が、上記含水ゲル状架橋重合体の移送、圧縮及び排出を含み、
上記含水ゲル状架橋重合体の移送の進行に伴って、この含水ゲル状架橋重合体の圧縮度が高まる、吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
上記分離工程で、上記含水ゲル状架橋重合体が移送されつつ圧搾される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記分離工程で、上記有機溶媒を上記含水ゲル状架橋重合体の移送方向とは逆方向に移送させる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記分離工程における圧縮が、上記含水ゲル状架橋重合体に0.1MPa以上の圧力を作用させることである、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記分離工程で、スクリューの圧縮比が1.5以上のスクリュー押出機を用いる、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記分離工程において排出された上記含水ゲル状架橋重合体の残液率が、10質量%以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記有機溶媒に界面活性剤及び/又は高分子分散剤が含まれる、請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記分離工程において分離された有機溶媒が、上記重合工程で再使用される、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
逆相懸濁重合によって吸水性樹脂の原料である単量体を重合させ、含水ゲル状架橋重合体を生成させる反応装置であって、
上記含水ゲル状架橋重合体を移送、圧縮及び排出しうる排出装置を含み、
上記排出装置が、上記含水ゲル状架橋重合体の移送の進行に伴って含水ゲルの圧縮度を高めるゲル圧縮機構を有する反応装置。
【請求項10】
上記排出装置の排出口に、上記含水ゲル状架橋重合体に作用する圧力を調整しうる圧力調整機構が設けられている請求項9に記載の反応装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の反応装置を用いて吸水性樹脂を製造する方法。
【請求項12】
含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程、及び有機溶媒と含水ゲル状架橋重合体とを分離する分離工程において、請求項9又は10に記載の反応装置を用いる、請求項1から8のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、重合によって得られる含水ゲル状架橋重合体を効率的に重合装置から抜き出し、有機溶媒と分離する吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、水性液を多量に吸収しゲル化する水膨潤性水不溶性の架橋重合体であり、その一般的な形状は粒子状である。当該吸水性樹脂の工業的な製造方法として、水を溶媒とする水溶液重合と、有機溶媒を分散媒に使用する逆相懸濁重合の2種類に大別される(非特許文献1)。
【0003】
上記逆相懸濁重合では、単量体水溶液の液滴を分散させるために多量の有機溶媒を必要とする。そのため、重合で得られる含水ゲル状架橋重合体と有機溶媒との分離が煩雑であり、コスト的なデメリットや吸水性樹脂に有機溶媒が残存することによる臭気や安全性の問題があった。そこで、有機溶媒の分離方法として、吸水性樹脂やその含水ゲルが分散している有機溶媒を蒸発させて吸水性樹脂やその含水ゲルを単離(乾固)させる方法(特許文献1〜3)や、吸水性樹脂やその含水ゲルを有機溶媒から濾過する方法が知られている。
【0004】
上記濾過する方法として具体的には、デカンテーションやシックナー等による分離が知られているが、溶媒の除去が十分ではない。そこで、固液分離機として、重力式濾過型、真空式濾過型、加圧式濾過型、遠心式濾過型、及び、遠心式沈降型が提案されている(特許文献4及び5)。また、遠心分離機を用いた分離方法が提案されている(特許文献6)。
【0005】
更に逆相懸濁重合では単量体水溶液を分散させるために、高価な界面活性剤や分散剤が一般的に使用される。上述したように、従来の逆相懸濁重合では含水ゲル状架橋重合体と有機溶媒との分離が煩雑であり、上記界面活性剤や分散剤についても同様である。そのため、コスト的なデメリットや吸水性樹脂に界面活性剤や分散剤が残存することによる表面張力の低下や吸水速度の低下といった問題があった。そこで、逆相懸濁重合で得られる吸水性樹脂の界面活性剤を洗浄する技術(特許文献7、8)が提案されているが、洗浄コストが膨大であり、また界面活性剤の回収も不十分であった。
【0006】
また、上記残存有機溶媒に起因する臭気問題の解決策(特許文献9)も提案されているが、新たな工程の付加となりコスト的に不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4340706号明細書
【特許文献2】米国特許第4683274号明細書
【特許文献3】米国特許第5180798号明細書
【特許文献4】特開2001−2713号公報
【特許文献5】特開2001−2726号公報
【特許文献6】特開平8−85709号公報
【特許文献7】特開平11−080248号公報
【特許文献8】特開平11−071425号公報
【特許文献9】国際公開2006/014031号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Modern Superabsorbent Polymer Technology、第3章(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の逆相懸濁重合では使用される有機溶媒と吸水性樹脂との分離に、蒸発乾固や濾過が採用されていたが、これらの分離技術は非効率な分離であった。上述したような従来の濾過装置では、有機溶媒を含む全量を濾過する必要があり非効率的であった。更に、濾材の詰まりによる濾過効率の低下も見られた。そこで濾過効率を向上させるため、定量的に搬送装置からスラリーを抜き出し、連続濾過装置へ供給することが必要となる。しかしながら、特に反応装置が大型である場合、排出口に対して有機溶媒の液面が高くなるため、液圧(背圧)が高くなり却って抜き出しが困難となり、更に大掛かりな制御装置が必要となる。また、上記デカンテーションやシックナーの場合は、有機溶媒全量を濾過する必要がない分、効率的であるものの、有機溶媒の除去が不完全であったり、反応装置の大型化による高液圧(高背圧)化の影響で、沈降した含水ゲルを抜き出す際に有機溶媒も一緒に流出したりするという問題が生じていた。何れにせよ、大きな反応装置から含水ゲルを抜き出し、有機溶媒を従来技術である蒸発乾固や濾過で十分に除去することが困難であった。更に、吸水性樹脂に残存する有機溶媒や界面活性剤は、臭気や安全性のみならず、コスト面や物性面でも悪影響を及ぼしていた。
【0010】
そこで、本発明者は、含水ゲル状架橋重合体と有機溶媒との分離工程において新たな固液分離の方法を鋭意検討し、より効率的な分離を可能とする新たな方法を見い出すに至った。
【0011】
本発明の課題は、吸水性樹脂、特に球状や略球状の吸水性樹脂粒子を効率よく製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、以下の発明を完成するに至った。つまり、本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂の原料である単量体を重合させ、有機溶媒中に分散した含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、上記有機溶媒と上記含水ゲル状架橋重合体とを分離する分離工程とを含み、上記分離工程が、上記含水ゲル状架橋重合体の移送、圧縮及び排出を含む吸水性樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法によれば、含水ゲル状架橋重合体と有機溶媒の分離工程において、上記含水ゲル状架橋重合体を移送及び排出しうる排出装置を用いることにより、含水ゲル状架橋重合体が効率的に圧搾され、高い生産効率と低い残液率とが同時に達成される。また、残液率を低くすることで、乾燥工程の簡略化や吸水性樹脂に残存する有機溶媒量を低減することができる。その結果、有機溶媒に起因する臭気が低減した吸水性樹脂が得られる。更に、吸水性樹脂に残存する界面活性剤及び/又は分散剤も低減するので、表面張力の高い吸水性樹脂が得られる。しかも、従来の濾過による分離のような目詰まりや、従来の蒸発乾固による分離のように、使用した全量の界面活性剤や分散剤が吸水性樹脂に残存したり、溶剤の蒸発に要する高エネルギー問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造プロセスの一部を示した概略図である。
図2図2は、本発明の他の実施形態に係る吸水性樹脂の製造プロセスの一部を示した概略図である。
図3図3は、進行方向に進むにしたがって、ピッチが狭くなり且つ多孔板を有する、排出装置を示す概略図である。
図4図4は、進行方向に進むにしたがって、スクリューの軸部の径が大きくなり且つ多孔板を有する、排出装置を示す概略図である。
図5図5は、進行方向に進むにしたがって、スクリューの軸部の径が大きくなり且つピッチが狭まる排出装置であって、多孔板を有する、排出装置を示す概略図である。
図6図6は、進行方向に進むにしたがって、ピッチが狭くなり且つ背圧板を有する、排出装置を示す概略図である。
図7図7は、進行方向に進むにしたがって、ケーシングの内径が小さくなり且つ多孔板を有する、排出装置を示す概略図である。
図8図8は、進行方向に進むにしたがって、ケーシングの内径及び軸部の径が小さくなり且つ多孔板を有する、排出装置を示す概略図である。
図9図9は、進行方向に進むにしたがって、ケーシングの内径及び軸部の径が小さくなり且つ2軸のスクリューを有する排出装置であって、多孔板を有する、排出装置を示す概略図である。
図10図10は、2軸1軸構造を有する、排出装置を示す概略図である。
図11図11は、ケーシングの内径及び軸部の径が一定であり、ピッチが等間隔であり、更に排出口に圧力調整機構が無い排出装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下に例示する以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲内で適宜変更して、実施することが可能である。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。複数の実施形態についてそれぞれ開示された技術的手段を、適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0016】
〔1〕用語の定義
〔1−1〕「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、下記の物性を満たすものをいう。即ち、水膨潤性としてERT441.2−02で規定されるCRC(遠心分離機保持容量)が5g/g以上であり、かつ、水不溶性としてERT470.2−02で規定されるExt(水可溶分)が50質量%以下である高分子ゲル化剤を指す。
【0017】
上記吸水性樹脂は、その用途・目的に応じた設計が可能であり、好ましくは、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体である。また、全量が架橋重合体である形態に限定されず、上記の各物性(CRC、Ext)が上記数値範囲を満たす限り、添加剤等を含んだ組成物であってもよい。
【0018】
本発明における「吸水性樹脂」は、出荷前の最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もある。これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。
【0019】
〔1−2〕「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分としてアクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む架橋重合体を意味する。
【0020】
上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体全体に対して、好ましくは50モル%〜100モル%、より好ましくは70モル%〜100モル%、更に好ましくは90モル%〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%であることを意味する。
【0021】
架橋重合体としての「ポリアクリル酸塩」は、ポリアクリル酸の水溶性塩を含み、好ましくは一価の塩、より好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、更に好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩を含む。
【0022】
〔1−3〕「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0023】
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
【0024】
(b)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm、0.3psi)の荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。また、荷重条件を4.83kPa(49g/cm、0.7psi)に変更して測定する場合もある。なお、ERT442.2−02には、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的には同一内容である。
【0025】
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、吸水性樹脂の水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで16時間攪拌した後、水溶液に溶解した物質の量(単位;質量%)のことをいう。水可溶分の測定には、pH滴定が用いられる。
【0026】
(d)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」は、吸水性樹脂中に残存する単量体(モノマー)の量を意味する。以下、吸水性樹脂中に残存する単量体を「残存モノマー」と称する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで1時間攪拌した後、水溶液に溶解したモノマー量(単位;ppm)のことをいう。残存モノマー量の測定には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられる。
【0027】
(e)「Moisture Content」(ERT430.2−02)
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂4.0gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;質量%)のことをいう。なお、吸水性樹脂の量を1.0gに、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更して測定する場合もある。
【0028】
(f)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される吸水性樹脂の粒度分布を意味する。なお、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号に記載された「(3)Mass−Average Particle Diameter(D50) and Logarithmic Standard Deviation(σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で測定される。
【0029】
〔1−4〕その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「質量ppm」又は「重量ppm」を意味する。更に、「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」はそれぞれ同義語として扱う。また、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
【0030】
〔2〕吸水性樹脂の製造方法
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂の原料である単量体を含む単量体水溶液と重合開始剤とを混合して単量体組成物を作製する混合工程、上記単量体組成物を有機溶媒が収容された反応器に供給する供給工程、上記反応器において、重合反応を開始させて含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程、上記含水ゲル状架橋重合体と上記有機溶媒とを分離する分離工程及びその他の後工程を有している。
【0031】
以下、各工程(混合工程、供給工程、重合工程、分離工程、その他の後工程)について、詳細に説明する。
【0032】
〔2−1〕混合工程
本工程は、吸水性樹脂の原料である下記単量体を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)と、重合開始剤とを混合して、単量体組成物を作製する工程である。なお、本明細書では、便宜上、「単量体水溶液」と「単量体組成物」とは、重合開始剤の有無で区別される。即ち、重合開始剤を含む単量体水溶液を「単量体組成物」という。
【0033】
(単量体)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、使用される単量体は、重合して吸水性樹脂となり得る化合物であればよい。例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等の酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;N−ビニルピロリドン等のラクタム基含有不飽和単量体等が挙げられる。
【0034】
上記単量体の中で、カルボキシル基等の酸基を有する酸基含有不飽和単量体を用いる場合、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、該単量体は、該酸基の一部が中和された部分中和塩であることが好ましい。この場合、該塩は、好ましくはアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種の一価塩であり、より好ましくはアルカリ金属塩であり、更に好ましくはナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種の塩であり、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0035】
これらの中でも、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、単量体は、好ましくは酸基含有不飽和単量体及び/又はその塩であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、(無水)マレイン酸(塩)、イタコン酸(塩)又はケイ皮酸(塩)であり、更に好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0036】
本発明に係る製造方法において、単量体として酸基含有不飽和単量体を用いる場合、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、当該酸基含有不飽和単量体の中和塩と併用することが好ましい。また、上記酸基含有不飽和単量体とその中和塩の合計モル数に対する、中和塩のモル数(以下、「中和率」と称する)は、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、酸基含有不飽和単量体の酸基に対して、好ましくは40モル%以上、より好ましくは40モル%〜80モル%、更に好ましくは45モル%〜78モル%、特に好ましくは50モル%〜75モル%である。なお、本発明における単量体とは、特に断りのない限り、上記中和塩を含む概念である。
【0037】
上記中和率を調整する方法として、上記酸基含有不飽和単量体とその中和塩とを混合する方法、上記酸基含有不飽和単量体に公知の中和剤を添加する方法、予め所定の中和率に調整された酸基含有不飽和単量体の部分中和塩(即ち、酸基含有不飽和単量体とその中和塩との混合物)を用いる方法等が挙げられる。これらの方法を適宜組み合わせることもできる。
【0038】
上記酸基含有不飽和単量体を中和するのに使用される中和剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、アミノ基やイミノ基を有するアミン系有機化合物等の塩基性物質が挙げられる。当該中和剤は、2種以上を適宜組み合わせることもできる。
【0039】
上記中和率の調整は、酸基含有不飽和単量体の重合反応開始前に行ってもよいし、酸基含有不飽和単量体の重合反応中で行ってもよいし、酸基含有不飽和単量体の重合反応終了後に得られる含水ゲル状架橋重合体に対して行ってもよい。また、重合反応開始前、重合反応中又は重合反応終了後のいずれか一つの段階を選択して中和率を調整してもよいし、複数の段階で中和率を調整してもよい。なお、紙オムツ等の吸収性物品等、人体に直接接触する可能性のある用途では、重合反応開始前及び/又は重合反応中が好ましく、重合反応開始前がより好ましい。
【0040】
本発明に係る製造方法では、上記例示した単量体のいずれかを単独で使用してもよく、任意の2種以上の単量体を適宜混合して使用してもよい。また、本発明の目的が達成される限り、更に他の単量体を混合することもできる。
【0041】
2種以上の単量体を併用する場合、主成分として、アクリル酸(塩)を含むことが好ましい。この場合、単量体全体に対するアクリル酸(塩)の割合は、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、通常は50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。なお、上限値は100モル%である。
【0042】
(内部架橋剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、好ましくは内部架橋剤が用いられる。該内部架橋剤によって、得られる吸水性樹脂の吸水性能や吸水時のゲル強度等が調整される。
【0043】
上記内部架橋剤は、1分子内に2以上の不飽和結合又は反応性官能基を有していればよい。例えば、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリアリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体及び内部架橋剤の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、得られる吸水性樹脂のゲル強度の観点から、単量体に対して、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上である。また、吸水性樹脂の吸水性能向上の観点から、好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。なお、単量体の自己架橋反応が有効な重合条件においては、上記内部架橋剤を使用しなくともよい。
【0045】
(添加剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、以下に例示する物質(以下、「添加剤」と称する)を添加することもできる。
【0046】
上記添加剤として、具体的には、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜リン酸塩類等の連鎖移動剤;炭酸塩、重炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤;エチレンジアミン4酢酸の金属塩、ジエチレントリアミン5酢酸の金属塩等のキレート剤;ポリアクリル酸(塩)及びこれらの架橋体、澱粉、セルロース、澱粉−セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
上記添加剤の使用量は、単量体水溶液に対する全添加剤の濃度として好ましくは10質量%以下である。
【0048】
(重合開始剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において使用される重合開始剤として、好ましくは、熱分解型重合開始剤が用いられる。該熱分解型重合開始剤は、熱によって分解しラジカルを発生する化合物を指すが、貯蔵安定性や生産効率の観点から、10時間半減期温度(以下、「T10」と称する)が、好ましくは0℃〜120℃、より好ましくは30℃〜100℃、更に好ましくは50℃〜80℃である、水溶性の化合物が用いられる。
【0049】
上記熱分解型重合開始剤として、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等のアゾ化合物;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
【0050】
中でも、熱分解型重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過硫酸塩、より好ましくは過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、更に好ましくは過硫酸ナトリウムが使用される。
【0051】
上記熱分解型重合開始剤の使用量は、単量体及び重合開始剤の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、生産効率の観点から、単量体に対して、好ましくは0.001g/モル以上、より好ましくは0.005g/モル以上、更に好ましくは0.01g/モル以上である。また、吸水性樹脂の吸水性能向上の観点から、好ましくは2g/モル以下、より好ましくは1g/モル以下である。
【0052】
また、必要に応じて、光分解型重合開始剤等、他の重合開始剤と併用することもできる。該光分解型重合開始剤として、具体的には、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体等が挙げられる。
【0053】
上記熱分解型重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合、全重合開始剤に占める熱分解型重合開始剤の割合は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。
【0054】
また、上記熱分解型重合開始剤と還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤とすることもできる。上記レドックス系重合開始剤では、熱分解型重合開始剤が酸化剤として機能する。用いられる還元剤として、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸塩;第一鉄塩等の還元性金属塩;L−アスコルビン酸(塩)、アミン類等が挙げられる。
【0055】
(単量体組成物の作製方法)
本工程において、単量体水溶液と重合開始剤とを含む単量体組成物が作製される。該単量体組成物を作製する方法は、例えば、(1)単量体水溶液、及び重合開始剤を含む水溶液(以下、「重合開始剤水溶液」と称する)を予め用意しておき、それぞれ別の配管から同時に混合装置に供給して混合する方法、(2)予め用意した単量体水溶液を混合装置に供給した後に、重合開始剤を該混合装置に供給して混合する方法、(3)予め用意した単量体水溶液を混合装置に供給した後に、予め用意した重合開始剤水溶液を該混合装置に供給して混合する方法等が挙げられる。
【0056】
また、上記混合装置は、例えば、ラインミキサーやタンク等が挙げられる。重合開始剤の貯蔵安定性や安全性の観点から、混合装置としてラインミキサーを用いた上記(1)の混合方法が好ましい。
【0057】
なお、上記単量体水溶液と上記重合開始剤(重合開始剤水溶液を含む)とをそれぞれ別の配管を用いて、供給装置を介さずに直接、反応器に供給する方法を採用することもできる。つまりこの場合、単量体組成物が作製されることなく、上記単量体水溶液と上記重合開始剤(重合開始剤水溶液を含む)とがそれぞれ別個に反応器に供給される。
【0058】
(単量体成分の濃度)
本工程において単量体組成物を作製する際に、上記各物質が混合される。なお、単量体組成物中の単量体のことを、「単量体成分」と称する。該単量体組成物中の単量体成分の濃度は、具体的には、吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、好ましくは10質量%〜90質量%、より好ましくは20質量%〜80質量%、更に好ましくは30質量%〜70質量%である。以下、単量体成分の濃度を「モノマー濃度」と称する場合がある。
【0059】
なお、上記「単量体成分の濃度」は、次の(式1)により求められる。(式1)中、Mc(単位:質量%)が「単量体成分の濃度」、M1(単位:kg)が「単量体の質量」、M2(単位:kg)が「単量体組成物の質量」である。単量体組成物の質量M2には、グラフト成分、吸水性樹脂、後述する有機溶媒等の質量は含まれない。
Mc = (M1/M2)×100 ・・・ (式1)
【0060】
(単量体組成物の温度)
上記一連の操作で得られる単量体組成物の温度(以下、「Tm」と称する)は、反応器中の有機溶媒に投入されるまでの間、該単量体組成物に含まれる熱分解型重合開始剤の10時間半減期温度T10よりも低い温度に保持されることが好ましい。
【0061】
単量体組成物の貯蔵安定性及び製造トラブルの回避という観点から、温度Tmと温度T10との差ΔT1(=T10−Tm)は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上である。コストの観点から、上限値は好ましくは50℃である。
【0062】
(単量体組成物の溶存酸素量)
上記単量体組成物は、重合反応を促進するため、重合前にその溶存酸素量を低減させておくことが好ましい。溶存酸素量として好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。なお、単量体組成物中の溶存酸素の低減方法は、溶存酸素が少ない原料を用いる方法、窒素等の不活性ガスを導入する方法や、単量体水溶液や単量体組成物の加熱による昇温等が挙げられる。
【0063】
〔2−2〕供給工程
本工程は、上記混合工程で得られた単量体組成物を、反応器に供給する工程である。
【0064】
(供給装置)
上記混合工程で得られた単量体組成物は、供給装置を介して、有機溶媒が収容された反応器に供給される。なお、下記重合工程がバッチ式である場合、所定量の有機溶媒と単量体組成物とが供給できればよく、該供給装置は特に限定されない。例えば、該供給装置として配管等が使用される。一方、下記重合工程が連続式である場合、該単量体組成物を液滴状で供給できる供給装置が好ましい。
【0065】
上記供給装置は、例えば、1又は2以上のオリフィス又はノズルから、該単量体組成物の液柱や液膜を吐出し、有機溶媒中又は気相中で分裂させ液滴を発生させる装置が使用できる。具体的には、ニードル等の円筒ノズル;プレートに多数の孔を設けたオリフィスプレート;渦巻き噴射弁、ファインスプレーノズル、衝突型噴射弁等の1流体スプレー;2流体スプレー;3流体以上の多流体スプレー;回転ホイール等の遠心アトマイザー等が挙げられる。該供給装置の使用によって、上記単量体組成物は有機溶媒中又は気相中に投入される。
【0066】
上記操作で生成される液滴の体積平均粒子径は、この液滴の分散状態や懸濁状態の安定性や有機溶媒からの熱移動効率の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは800μm以下である。また、生産効率の観点から、生成される液滴の体積平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは50μm以上である。
【0067】
なお、上記液滴の「体積平均粒子径」は、JIS Z 8825で規定される「粒子径解析−レーザ回析・散乱法」及びJIS Z 8819−2で規定される「粒子径測定結果の表現−第2部:粒子径分布からの平均粒子径又は平均粒子直径及びモーメントの計算」に準拠して算出する方法や、分散状態を撮影した写真の画像解析により算出する方法等で、測定される。
【0068】
(滞留時間)
配管の閉塞等の製造トラブルを回避するという観点から、上記混合工程で作製された単量体組成物が反応器に投入されるまでの時間(以下、「滞留時間」と称する)は、好ましくは20分以下、より好ましくは5分以下、更に好ましくは1分以下である。なお、単量体組成物の作製後、直ちに反応器に投入されることが理想的である。
【0069】
(投入方法)
下記重合方法が連続式の場合、上記反応器中の有機溶媒は、循環しているのが好ましい。この場合、上記有機溶媒の循環する方向と並流となるように、上記単量体組成物を投入するのが好ましい。この観点から、単量体組成物の投入方向と有機溶媒の循環方向とのなす角度は、好ましくは90度以下、より好ましくは70度以下、更に好ましくは50度以下、特に好ましくは30度以下である。理想的には、単量体組成物の投入方向と、有機溶媒の循環方向とが平行である。例えば、上記供給装置によって単量体組成物が円錐形に噴霧される場合、上記投入方向とは、この円錐の中心軸の方向を意味する。なお、下記重合方法がバッチ式の場合、静置又は攪拌状態の有機溶媒中に単量体組成物を投入するため、上記角度は適用されない。
【0070】
〔2−3〕重合工程
本工程は、上記供給工程によって反応器に供給された単量体組成物を重合して、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」とも称される。)を得る工程である。重合で得られた含水ゲルは、有機溶媒中に分散した粒子の形態で得られる。
【0071】
本発明における重合は、単量体組成物を有機溶媒に分散させて重合する液相重合であってもよいし、単量体組成物を気相に分散させて重合する気相重合であってもよい。気相重合の場合でも、最終的に得られる含水ゲルが有機溶媒中に分散した状態となる場合がある。例えば、気相重合で得られた含水ゲルが有機溶媒中に落下する形態では、含水ゲルが有機溶媒中に分散するため、含水ゲルと有機溶媒との分離が必要となる。よってこの場合も、本発明が適用されうる。
【0072】
上記液相重合のように、重合と分散とは同時に進行してもよい。一方、気相重合の上記形態のように、分散は重合の後であってもよい。
【0073】
(有機溶媒)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において用いられる有機溶媒は、単量体組成物と相互に溶解しない、つまり、単量体組成物との相溶性が小さく、本質的に疎水性である有機化合物を指す。また、該有機溶媒は、本発明の吸水性樹脂の原料である単量体の重合反応に対して、本質的に不活性である。この有機溶媒は、分散媒として用いられる。
【0074】
本発明における上記有機溶媒(分散媒)として、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒又はこれらの混合溶媒が挙げられるが、好ましくは疎水性有機溶媒が主成分として使用される。なお、「主成分」とは、有機溶媒全量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは98質量%以上のことをいう。また、「疎水性有機溶媒」とは、常圧で25℃の水100gへの溶解度が、好ましくは1g以下、より好ましくは0.1g以下である有機溶媒を指す。
【0075】
具体的には、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂環状炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロルベンゼン、ブロムベンゼン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。なお、有機溶媒の入手容易性や品質安定性等の観点から、好ましくはn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンが使用される。
【0076】
(比重調整剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、好ましくは比重調整剤が、上記有機溶媒に配合される。該比重調整剤によって、本工程の重合時間を調整することができる。
【0077】
上記比重調整剤としては、上記有機溶媒との相溶性が高く、重合反応を阻害しないものであればよい。例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、アルコール類のフッ化物等の塩素系又はフッ素系の化合物が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。以下、これらの化合物が比重調整剤として配合された有機溶媒を「混合溶媒」と称する場合がある。なお、本発明における有機溶媒とは、特に断りのない限り、上記比重調整剤が配合された混合溶媒をも含む概念とする。
【0078】
上記比重調整剤の使用量は、後述する単量体組成物と有機溶媒との比重差が得られるように、有機溶媒の種類等に応じて適宜設定される。
【0079】
(分散助剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、以下に例示する分散助剤を、上記有機溶媒に添加することもできる。該分散助剤は、好ましくは界面活性剤や高分子分散剤が挙げられる。
【0080】
上記界面活性剤として、具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N−アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記高分子分散剤として、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。中でも、単量体組成物の分散安定性の観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び酸化型エチレン・プロピレン共重合体が好ましい。これらのうち、2種以上を併用してもよい。また、これらの高分子分散剤と上記界面活性剤とを併用してもよい。
【0082】
上記分散助剤の使用量は、重合形態、単量体組成物及び有機溶媒の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、有機溶媒中の分散助剤の濃度は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。なお、本発明では分散助剤を必須としないが、使用する場合の下限は0質量%超が好ましく、0.0001質量%以上がより好ましい。
【0083】
本発明に係る製造方法においては、上記有機溶媒に、上記界面活性剤及び/又は高分子分散剤が含まれる。かような場合、分離工程において分離された有機溶媒に含まれる界面活性剤及び/又は高分子分散剤は、当該有機溶媒と共にそのまま再使用される。
【0084】
(W/O比)
本発明において、上記有機溶媒の使用量は、反応器の形状や容量等に応じて適宜設定されるものの、重合反応熱の除去及び生産効率の観点から、上記反応器中に存在する単量体組成物の容積Wと有機溶媒の容積Oとの比(以下、「W/O比」と称する)は、好ましくは1容積%〜40容積%、より好ましくは2容積%〜30容積%、更に好ましくは3容積%〜20容積%である。
【0085】
上記W/O比が40容積%を超える場合、重合熱の除熱が不十分となり、得られる吸水性樹脂の性能が悪化したり、突沸や液滴生成不良等の操作上のトラブルが発生しやすくなったりするため、好ましくない。一方、上記W/O比が1容積%未満の場合、有機溶媒の使用量の増加や反応器の大型化の原因になり、原料的にも設備的にもコストが増大するため、好ましくない。なお、特に断りのない限り、単量体組成物及び有機溶媒の容積は、25℃、1気圧における容積である。
【0086】
(重合温度)
本発明に係る製造方法では、反応器内の上記有機溶媒の温度(以下、「Td」と称する)を「重合温度」とする。
【0087】
上記単量体組成物が液滴状で所定温度の有機溶媒に分散される場合や、上記単量体組成物が液滴状で有機溶媒に分散された後に所定温度まで加熱される場合、単量体組成物の温度は、有機溶媒からの熱移動や重合熱によって速やかに有機溶媒の温度又はそれ以上に上昇する。該液滴に含まれる熱分解型重合開始剤は、上記昇温に伴って、分解しラジカルを発生する。発生したラジカルによって重合反応が開始し、重合反応の進行に伴って含水ゲルが形成される。形成された含水ゲルは、連続重合の場合、循環する有機溶媒によって反応器の内部を移動し、有機溶媒と共に反応器から排出される。反応器は、生成物排出口を有している。この生成物排出口から、含水ゲルが排出される。また、バッチ重合の場合、重合反応が終了した後、含水ゲルは有機溶媒と共に反応器から排出される。
【0088】
上記重合温度Tdは、重合率の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上である。重合温度Tdの上限値は、安全性の観点から、用いられる有機溶媒の沸点を超えない範囲内で、適宜選択される。
【0089】
上記重合温度Tdが70℃未満の場合、重合速度が遅くなり、得られる含水ゲルの重合率が低くなったり、得られる含水ゲルの粒子径が大きくバラついたりする場合がある。更に、重合率の低い含水ゲルを乾燥させると、乾燥中に含水ゲル同士が付着して一体化するという現象が発生することがある。
【0090】
また、上記重合温度Tdは、重合効率の観点から、使用されている熱分解型重合開始剤の10時間半減期温度T10と同じか、または温度T10よりも高くすることが好ましい。なお、複数の重合開始剤を併用する場合は、少なくとも1の重合開始剤が上記範囲を満たすことが好ましい。具体的には、温度Tdと温度T10との差ΔT2(=Td−T10)は、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは7℃以上、特に好ましくは10℃以上である。差ΔT2の上限は、エネルギー効率の観点から、好ましくは20℃以下である。
【0091】
上記ΔT2を上記範囲内とすることで、温度T10よりも低温に維持された単量体組成物が有機溶媒に投入された場合でも、速やかに重合反応が開始され、大きな重合速度が達成される。
【0092】
なお、反応器内の有機溶媒の温度は、単量体組成物が反応器に投入されることにより変動する。特に、単量体組成物が投入される領域での温度変化が大きい。そのため、好ましくは、当該領域で所望する重合温度Tdが得られるように、熱交換器で加熱した有機溶媒をこの領域に再供給するか、或いは、反応器に設置されたジャケット等の温度調整手段によって反応器内部の有機溶媒を加熱する。これにより、重合反応の開始や進行に寄与する反応器内の有機溶媒の温度変化を抑制し、より精密に重合温度Tdを制御することができる。
【0093】
(重合率)
本発明に係る製造方法において、重合率は、得られる含水ゲルの乾燥時の凝集抑制や、得られる吸水性樹脂中の残存モノマー低減の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。重合率の上限値は、100質量%が理想的である。該重合率が70質量%未満の場合、乾燥中に含水ゲル同士が強く凝集し、塊状化する虞があるため、好ましくない。
【0094】
(反応器)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、重合反応が行われる反応器の形状は、重合工程がバッチ式の場合、図2に示される従来公知の反応器を使用することができる。一方、重合工程が連続式の場合は、図1に示される反応器が好ましく使用される。具体的には、この反応器の形状は、該反応器内に満たされた有機溶媒中を上記単量体組成物が液滴状で移動しながら重合反応しうる形状である。このような反応器として、例えば、管状の反応管を、縦型、横型又は螺旋型に配置した反応器が挙げられる。この場合、該反応管の内径D(mm)と長さL(mm)との比(L/D)は、好ましくは2〜100,000、より好ましくは3〜50,000、更に好ましくは4〜20,000である。
【0095】
上記比(L/D)を上記範囲内とすることで、上記単量体組成物の液滴が反応器の内部を良好に移動するため、該液滴の滞留時間のバラつきが減少する。また、最終的に得られる含水ゲルの粒子径についてもバラつきが少ないものとなるため、得られる吸水性樹脂の性能も向上する。
【0096】
また、上記反応器には、必要に応じて、外部から反応器内部の有機溶媒を加熱又は冷却できるように、温度調整手段が備えられていてもよい。該温度調整手段によって、反応器内部の有機溶媒が所定の温度範囲に維持される。該温度調整手段は、例えば、反応器へのジャケットの設置、ヒーターの設置、保温材や断熱材の設置、熱風や冷風の供給等が挙げられる。なお、該反応器に再供給される有機溶媒は、熱交換器によって加熱されている。
【0097】
また、上記反応器の材質として、銅、チタン合金、SUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼、PTEE、PFA、FEP等のフッ素樹脂等を使用することができる。中でも、得られる含水ゲルの付着性の観点から、好ましくはフッ素樹脂、より好ましくは反応器の内壁面に、フッ素樹脂加工等の表面加工が施されたものが使用される。
【0098】
本発明の重合工程で生成した含水ゲルは、有機溶媒中で部分乾燥した後に分離工程で有機溶媒から分離してもよく、当該部分乾燥を経ずに重合後に分離工程で有機溶媒と分離してもよい。好ましくは、重合工程から部分乾燥を経ずに直接分離工程へ移行する形態がよい。
【0099】
(接合部)
本発明において、上記反応器は、例えば接合部を介して、下記排出装置に接続される。当該接合部を設けることで、反応器への排出装置の取り付けが容易となり、且つ、排出装置の配置の自由度が高まる。例えば、排出装置の位置を、反応器の真下以外の位置に配置することができる。例えば、含水ゲルの流れ方向が下から上の場合には、排出装置を反応器の上部に配置することもできる。また、接合部の長さを調整することで、排出装置と反応器とを離して設置することもできる。また、例えば、接合部の上流側の端部を反応器の下端部に対応した形状とし、接合部の下流側の端部を排出装置の投入口に対応した形状にすればよい。このように、接合部は、反応器と排出装置との直結状態を維持しながら、反応器と排出装置との間の配置の自由度を高めることが出来る。なお、本明細書における「反応器と排出装置との直結状態」とは、反応器から排出された少なくとも含水ゲルを含む有機溶媒を接合部のみを介して排出装置へ供給する形態のことをいう。また、生産性の観点から、接合部は、反応器で得られた含水ゲルが重力と浮力のバランスによって、反応器下部又は上部に配置される排出装置に到達するように構成されているのが好ましく、反応器下部に配置される排出装置に到達するように構成されているのがより好ましい。具体的には、上記反応器、上記接合部及び上記排出装置を含む反応装置におけるそれぞれの配置が、重力によって含水ゲルが反応器から接合部を通過し、排出装置に到達するように構成されているのが好ましい。
【0100】
〔2−4〕分離工程
本工程は、上記重合工程で生成した含水ゲルを有機溶媒中から取り出す工程である。好ましくは、本工程では、上記含水ゲルと有機溶媒を含むスラリー状混合物(スラリー液)を圧縮しながら押し出すことによって、含水ゲルと有機溶媒とに分離される。この分離工程は、含水ゲルの移送、圧縮及び排出を含む。含水ゲルは、移送されつつ圧縮されてもよい。すなわち、移送と圧縮とが同時に進行してもよい。移送と圧縮とは別個であってもよく、例えば、移送後に圧縮されてもよいし、圧縮後に移送されてもよい。移送後に圧縮される場合の一形態として、含水ゲルが圧縮されずに排出口にまで移送され、排出の際に圧縮される形態が採用されうる。好ましくは、含水ゲルは、移送されつつ圧縮される。この圧縮により、有機溶媒と含水ゲルが分離される。
【0101】
好ましくは、分離工程では、上記有機溶媒を含水ゲルの移送方向とは逆方向に移送させる。この点の詳細は、後述される。
【0102】
(移送・排出装置(排出装置))
本工程で使用される移送・排出装置(本明細書において「排出装置」と称する)は、該排出装置の投入口から排出口に向かって含水ゲルを移動させるゲル移送機構を有する。加えて、この排出装置は、含水ゲルを圧縮するゲル圧縮機構、及び/又は、排出口に存在する含水ゲルに作用する圧力を調整する圧力調整機構を有するのが好ましい。残液率の低下及び液面維持性の向上の観点から、ゲル圧縮機構又は圧力調整機構を有する排出装置が好ましく、ゲル圧縮機構及び圧力調整機構を有する排出装置がより好ましい。なお、上記排出装置は、上記の機構のうち、何れか1つの機構が他の機構を兼ね備えていてもよいし、それぞれ独立した機構を備えていてもよい。
【0103】
なお、排出装置の上記投入口は、スラリー液供給口とも称される。排出装置の上記排出口は、含水ゲル排出口とも称される。排出装置は、少なくとも一つの上記投入口(スラリー液供給口)と、少なくとも一つの上記排出口(含水ゲル排出口)とを有する。
【0104】
(ゲル移送機構)
上記ゲル移送機構は、含水ゲルを所望する方向、例えば、上記排出装置の投入口から排出口に向かって含水ゲルを移動させることができる構造を有していればよい。該ゲル移送機構として、具体的には、スクリュー、ベルト、ピストン、プランジャー等が挙げられる。これらの中でも、連続定量性を有し、ゲル圧縮機構を付与することができるスクリューが好ましい。また、該スクリューを用いた機器を「スクリュー押出機」と称する。なお、上記スクリュー押出機の主要な構成体として、スクリューを構成する軸(以下、「軸部」と称する)、該軸の外周部に設置される螺旋状の羽根(以下、「フライト部」と称する)及びこれらを覆うケーシングが挙げられる。上記フライト部によって螺旋状の溝部が上記軸部上に形成される。該溝部の幅を「ピッチ」と称する。また、上記フライト部とケーシングとの隙間を「クリアランス」と称する。また、排出装置にスクリュー押出機を用いた場合、内容物(スラリー状混合物)はスクリューに沿って搾られる状態となる。更にゲル圧縮機構によって、内容物に圧がかかっている状態を「圧搾」という場合がある。
【0105】
(ゲル圧縮機構)
上記ゲル圧縮機構は、含水ゲルを圧縮できる構造を有していればよい。特に、上記ゲル圧縮機構は、含水ゲルを上記ゲル移送機構によって移動させながら、含水ゲルに掛かる圧力を高めることができる構造を有していることが好ましい。該ゲル圧縮機構は、圧縮比を1超とすることができればよい。
【0106】
上記「圧縮比」とは、上記排出装置が吸入する単位時間あたりのスラリー体積を排出装置から排出できる単位時間あたりの溶剤を含む含水ゲルの体積で割った値のことをいう。言い換えると、上記排出装置として、スクリュー押出機を使用する場合、スクリューの供給部における1ピッチ当りの体積(V1)と、スクリューの排出部における1ピッチ当りの体積(V2)との比(V1/V2)のことをいう。なお、上記「スクリューの供給部」とは、該スクリューにおける最も上流側(投入口側)の部分を意味し、上記「スクリューの排出部」とは、該スクリューにおける最も下流側(排出口側)の部分を意味する。
【0107】
ゲル粒子間に存在する有機溶媒の搾り出しを促進し、得られる吸水性樹脂中の残液率を低下させるという観点から、上記圧縮比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは5以上である。また、含水ゲルのダメージを考慮すると、上記圧縮比は、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは50以下である。
【0108】
本発明におけるゲル圧縮機構は、上記圧縮比とすることができる機構であればよい。具体的には、スクリューが好ましい。該スクリューを本発明の排出装置に使用する場合、該スクリューは、上記ゲル移送機構と上記ゲル圧縮機構とを兼ね備えることになる。該スクリューにおいて、上述した軸部の径、フライトの高さ、ピッチ、軸部とケーシングとの間隔のそれぞれについて、含水ゲルの進行方向にしたがって適宜変更することによって、上記圧縮比を調整することができる。該ゲル圧縮機構の一例として、以下のスクリュータイプが例示される。
・(タイプ1);下流側に進むにしたがってピッチが狭まる形態のスクリュー
・(タイプ2);下流側に進むにしたがって軸部の径が大きくなる形態(逆テーパー型)のスクリュー
・(タイプ3);フライト部の高さ及び/又は軸部の径が下流側に進むにしたがって小さくなり、且つ、軸部とケーシングとの間隔が下流側に進むにしたがって狭まる形態のスクリュー
・(タイプ4);軸部の数が排出装置内で変化し、上流側の軸部の数がより多い形態のスクリュー
・(タイプ5);上記(タイプ1)から(タイプ4)からなる群から選ばれる2以上の組み合わせ
【0109】
具体的には、上記タイプ1として、軸部及びケーシングの径は一定であるが、ピッチが下流側に進むにしたがって狭まるスクリュー(図3)が例示される。上記タイプ2として、ケーシングの内径及びピッチは一定であるが、軸部の径が下流側に進むにしたがって大きくなる逆テーパー型のスクリュー(図4)が例示される。上記タイプ3として、フライト部の高さ(ケーシングの内径)が下流側に進むにしたがって小さくなる1軸スクリュー(図7)、軸部の径及びケーシングの内径が下流側に進むにしたがって小さくなる1軸スクリュー(図8)、及び、軸部の径及びケーシングの内径が下流側に進むにしたがって小さくなる2軸スクリュー(図9)が例示される。上記タイプ4として、2軸1軸テーパースクリュー(図10)が例示される。上記タイプ5として、軸部が逆テーパーであり、かつ、ピッチが下流側に進むにしたがって狭まるスクリュー(図5)が例示される。
【0110】
上記ゲル圧縮機構は、上述したスクリュー以外の形態により構成されていてもよい。例えば、投入口から排出口に向かって一定間隔ごとに含水ゲルを押し出すプランジャーや、ケーシングとの間隔が徐々に狭くなるベルト等が挙げられる。
【0111】
(圧力調整機構)
上記圧力調整機構として、排出装置の排出口での含水ゲルに作用する圧力を調整できる構造を有していればよい。
【0112】
上記圧力調整機構の一例として、背圧板が挙げられる。該背圧板は、所定の圧力で排出口に押し付けられることによって、排出口の開口面積を制限しつつ、含水ゲルに作用する圧力の調整を行う。該背圧板には、エアーシリンダーや油圧シリンダー等の圧力付与装置によって、一定の圧力が付与されることが好ましい。該背圧板は公知のものが使用される。
【0113】
他の圧力調整機構として、圧力調整孔を有する多孔板又は単孔板が例示される。口金(ダイ)も他の圧力調整機構の一例である。なお、圧力調整孔の数は限定されず、少なくとも1つの圧力調整孔があればよい。該圧力調整孔を有する多孔板又は単孔板を排出口とし、かつ、該圧力調整孔の孔径、孔数、開孔率等を変化させることで、含水ゲルに作用する圧力が調整される。なお、本願の図面では、図6のみ背圧板を設置したものとしているが、他の形態(図4図5図7図10)についても、多孔板を背圧板に変更することが可能である。上記圧力調整孔を有する多孔板又は単孔板を用いる場合、その開孔率((孔面積の合計/排出口全断面積)×100)は10%〜80%であることが好ましい。また、孔径は1mm〜20mmであることが好ましい。圧力調整孔の開孔率、孔径を上記範囲内とすることで、含水ゲルと有機溶媒の効率よく分離ができるため、好ましい。
【0114】
ゲル粒子間に存在する有機溶媒の搾り出しを促進し、得られる吸水性樹脂中の残液率を低下させるという観点から、含水ゲルに作用する圧力は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上、更に好ましくは0.3MPa以上である。また、含水ゲルのダメージを考慮すると、上記含水ゲルに作用する圧力は、好ましくは2MPa以下、より好ましくは1.5MPa以下、更に好ましくは1MPa以下である。好ましくは、該圧力は、上記排出口における圧力である。ゲル圧縮機構及び圧力調整機構が設けられている場合、好ましくは、該圧力は、ゲル圧縮機構の最下流側の先端部と圧力調整機構との間に存在する含水ゲル中で測定される。また、含水ゲルに作用する圧力は、排出装置への含水ゲルの単位時間当たりの供給量、ゲル移送機構の運転条件(例えば、スクリュー回転数)等によっても、調整することができる。
【0115】
(その他の構造・機構)
本発明の排出装置としてスクリュー押出機を用いる場合の一例として、上記タイプ1〜タイプ5を例示したが、何れのタイプでもフライト部とケーシングとの隙間(クリアランス)は一定であることが好ましい。該クリアランスは、好ましくは0.1mm〜3mm、より好ましくは0.2mm〜2mm、更に好ましくは0.5mm〜1.5mmである。該クリアランスが3mm超の場合、含水ゲルも逆戻りしてしまい、有機溶媒との分離性能が低下する虞がある。一方、該クリアランスが0.1mm未満の場合、スクリューの回転による軸部の振動によってフライト部とケーシングが接触してしまい、装置の故障等のトラブルが発生する虞がある。
【0116】
また、上記ケーシングの材質は、金属製であっても、樹脂製であってもよい。更に、図示していないが、ケーシングは、多数の濾過孔を有する円筒状部材(以下、「濾過筒」と称する場合もある)であってもよい。該濾過筒の一例は、パンチングプレートが円筒形状に形成された部材である。また、上記濾過孔と同等の効果を有する部材や、上記圧力に耐えうる機械的強度を有し、含水ゲルを通過させずに有機溶媒のみを通過させる機能を備えた部材も、ケーシングとして用いられうる。例えば、ケーシングは、ウェッジワイヤー(くさび形の断面をもつ針金)やスクリーン、メッシュ、フィルター等を使用してスクリーン状円筒に形成されていてもよい。このように、本発明の移送・排出装置として、公知のスクリュープレスが用いられてもよい。
【0117】
(移送・排出方法)
本発明の分離工程における排出装置として、上記スクリュー押出機を用いる場合、該スクリュー押出機には、連続的に含水ゲル及び有機溶媒が取り込まれる。このスクリューの回転によって、含水ゲルが上記スクリュー押出機の投入口から排出口まで連続的に移送される。順次移送されてきた含水ゲルは、最終的には、排出口から排出される。
【0118】
この分離工程は、含水ゲルの移送、圧縮及び排出を含む。好ましくは、この移送に伴い、含水ゲルは圧縮される。含水ゲルの圧縮に伴い、有機溶媒は、含水ゲルから搾り出される。すなわち、含水ゲルは圧搾される。搾り出された有機溶媒は、上記スクリューに拘束されることなく、低圧側、即ち上記投入口側に流れる。一方、上記スクリューに拘束されている含水ゲルは、当該スクリューの回転により、上記排出口側に移送される。このように、排出装置内において、有機溶媒は、含水ゲルの移送方向とは逆方向に流れる。換言すれば、有機溶媒は、排出装置内を逆流する。移送された含水ゲルは、上記排出口から排出される。圧縮された含水ゲルは、上記排出口から連続的に排出される。圧縮により有機溶媒が絞り出されているため、排出された含水ゲルの残液率は低い。排出された含水ゲルは、次の工程(例えば、乾燥工程)に供給される。この供給は連続的である。含水ゲルから絞り出された有機溶媒は、逆流して上記投入口から排出され、再利用される。
【0119】
すなわち、含水ゲルを含むスラリー液が、上記スラリー液供給口(投入口)から上記含水ゲル排出口(排出口)に移動する際、上記スラリー液に対する圧力が上昇するとともに上記含水ゲルと分散媒(有機溶媒)との分離が進行する。上記分離された分散媒は、上記スラリー液供給口の方向へ移動し、上記含水ゲルは上記含水ゲル排出口から排出される。
【0120】
上記圧縮に起因して、排出装置の排出口側において、含水ゲルには背圧が作用している。一方、排出装置の投入口には、反応器(及び接合部)内の液体の質量に起因して、液圧が作用している。例えば、反応器が縦型反応塔で排出装置が反応器の下部にある場合、反応器内の液面の位置が高いため、上記液圧は高い。排出装置が反応器に直結されている場合、当該液圧により、有機溶媒が排出装置の排出口から流出することが考えられる。しかし、上記背圧が液圧より大きくなるため、排出口への溶媒の流れは阻止される。また、排出口から含水ゲルが排出されるため、当該排出口付近は、圧縮された含水ゲルが層を形成した状態にある。よって、排出口からの溶媒の流出は実質的に生じない。したがって、排出装置が反応器に直結されても、反応器内の液面の維持は容易である。
【0121】
スクリューにより、含水ゲルは、排出口に向かって連続的に移送される。その結果、含水ゲルは、排出口に向かって圧縮されながら層を形成し、排出口から排出される。この圧縮された含水ゲルの層により、排出口における背圧は維持される。特に連続式の重合工程の場合、排出口における背圧の維持が、反応器内の液面高の変動抑制に寄与している。
【0122】
このように、スクリューで含水ゲルの圧縮を伴う排出装置では、分離工程に係る装置(排出装置)を反応器に接続することができ、更には直結することができる。上述の通り、この接続は、分離工程への含水ゲルの供給を容易とし、生産性の向上に寄与する。
【0123】
好ましい排出装置における開口は、投入口と排出口のみである。この場合、排出口に向けて圧縮された含水ゲルの層が形成されているため、排出口からの有機溶媒の流出は最小限に抑えられる。つまり、この好ましい排出装置を有する反応装置は、有機溶媒と含水ゲルとの分離において有機溶媒が反応装置外へ流出しにくいため、有機溶媒の損失が少ない。換言すれば、本発明における実施形態は、反応器、接合部及び排出装置がこの順で接続されており、これらの装置間に配管等を設置しない限り、外部と内容物について出入りできない構造であることが好ましい。
【0124】
スクリューを有する排出装置は、バッチ式製造方法にも用いられるし、連続式製造方法にも用いられる。特に、スクリューを有する排出装置は、連続式製造方法に好ましく用いられる。スクリューにより、含水ゲルの連続取り込み及び連続排出が可能となるため、連続的な含水ゲルの分離が可能となる。しかも、上記直結に起因して、反応器で生成された含水ゲルが連続的に排出装置に到達しうる。反応工程が連続的である場合、分離工程での連続性との相乗効果が奏され、反応装置の生産効率が向上する。
【0125】
排出装置として、公知のスクリュー押出機が用いられ得る。スクリュー押出機は、樹脂の成型用途や混練用途で用いられている。本発明者は、この押出機が、全く別の用途、つまり、吸水性樹脂の製造において溶媒と含水ゲルとを分離する分離工程で利用可能であることを見いだした。スクリュー押出機の利用により、圧縮による残液率の低下、有機溶媒の少ない損失、分離の連続性といった利点が得られることがわかった。
【0126】
なお、押出機(排出装置)による圧力及びせん断応力が含水ゲルにダメージを与えることも考えられる。しかしながら、実際には、最終的に得られる吸水性樹脂の吸水物性は、重合条件などの運転条件に加え、本発明の分離方法の条件により、適切に調整されうることがわかった。
【0127】
(排出装置の具体的な実施形態)
下記実施例1で使用される排出装置を、図3を用いて説明する。図3は、実施例1で用いられたスクリュー押出機50の内部を側方から見た概略図である。スクリュー押出機50は、ケーシング52と、スクリュー54と、投入口56と、排出口58とを有する。排出口58には、多孔板60が設けられている。多孔板60には、複数の貫通孔(圧力調整孔)が設けられている。排出口58が、この多孔板60で塞がれている。スクリュー54は、フライト部62と軸部64とを有する。軸部64の外径は一定(ストレート)である。フライト部62は軸部64の外周面に設けられ、螺旋状に延びている。フライト部62と軸部64とにより、フライト部62を側面とし且つ軸部64を底面とする溝部53が形成されている。フライト部62のピッチ51は、排出口58に近づくにつれて小さくなっている。なお、ピッチ51は、軸方向に沿って測定される。軸方向とは、軸部64の中心線の方向である。ケーシング52とフライト部62との間には、クリアランス(隙間)55が設けられている。クリアランス55は一定である。ケーシング52は、有機溶媒を透過させない。
【0128】
下記実施例2で使用される排出装置を、図4を用いて説明する。図4は、実施例2で用いられたスクリュー押出機70の内部を側方から見た概略図である。スクリュー押出機70は、ケーシング72と、スクリュー74と、投入口76と、排出口78とを有する。排出口78には、多孔板80が設けられている。多孔板80には、複数の貫通孔(圧力調整孔)が設けられている。排出口78が、この多孔板80で塞がれている。スクリュー74は、フライト部82と軸部84とを有する。軸部84は、逆テーパーである。即ち、軸部84の外径は、排出口78に近づくにつれて大きくなっている。フライト部82は軸部84の外周面に設けられ、螺旋状に延びている。フライト部82と軸部84とにより、フライト部82を側面とし且つ軸部84を底面とする溝部73が形成されている。フライト部82のピッチ71は、一定である。ケーシング72とフライト部82との間には、クリアランス(隙間)75が設けられている。クリアランス75は一定である。ケーシング72は、有機溶媒を透過させない。
【0129】
下記実施例3で使用される排出装置を、図5を用いて説明する。図5は、実施例3で用いられたスクリュー押出機90の内部を側方から見た概略図である。スクリュー押出機90は、ケーシング92と、スクリュー94と、投入口96と、排出口98とを有する。排出口98には、多孔板100が設けられている。多孔板100には、複数の貫通孔(圧力調整孔)が設けられている。排出口98が、この多孔板100で塞がれている。スクリュー94は、フライト部102と軸部104とを有する。軸部104は、逆テーパーである。即ち、軸部104の外径は、排出口98に近づくにつれて大きくなっている。フライト部102は軸部104の外周面に設けられ、螺旋状に延びている。フライト部102と軸部104とにより、フライト部102を側面とし且つ軸部104を底面とする溝部93が形成されている。フライト部102のピッチ91は、排出口98に近づくにつれて小さくなっている。ケーシング92とフライト部102との間には、クリアランス(隙間)95が設けられている。クリアランス95は一定である。ケーシング92は、有機溶媒を透過させない。
【0130】
下記実施例4で使用される排出装置を、図10を用いて説明する。図10は、実施例4で用いられたスクリュー押出機200の内部を上方から見た概略図である。スクリュー押出機200は、第1のスクリュー202と、第2のスクリュー204と、投入口206と、排出口208と、多孔板210と、ケーシング212とを有している。第1のスクリュー202は、投入口206から排出口208にまで延在している。第2のスクリュー204は、投入口206に位置しており、排出口208に至ることなく終端している。第2のスクリュー204において、その軸部はテーパー(先細り)形状を有している。第2のスクリュー204は第1のスクリュー202に沿って配置されている。ケーシング212は、有機溶媒を透過させない。
【0131】
以下、実施例で使用することができる排出装置を変形例として、図6図9を用いて説明する。
【0132】
図6は、変形例に係るスクリュー押出機110の内部を側方から見た概略図である。スクリュー押出機110は、ケーシング112と、スクリュー114と、投入口116と、排出口118とを有する。排出口118には、背圧板120が設けられている。図示されないが、この背圧板120は、圧力付与装置(エアーシリンダー)を有する。この背圧板120は、エアーシリンダー式背圧板とも称される。圧力付与装置によってこの背圧板120を排出口118に押し付けられることによって、排出口118の開口面積を制限しつつ、含水ゲルに作用する圧力が調整される。スクリュー114は、フライト部122と軸部124とを有する。軸部124の外径は、一定である。フライト部122は軸部124の外周面に設けられ、螺旋状に延びている。フライト部122と軸部124とにより、フライト部122を側面とし且つ軸部124を底面とする溝部113が形成されている。フライト部122のピッチは、排出口118に近づくにつれて小さくなっている。ケーシング112とフライト部122との間には、クリアランス(隙間)115が設けられている。クリアランス115は一定である。ケーシング112は、有機溶媒を透過させない。
【0133】
図7は、他の変形例に係るスクリュー押出機130の内部を側方から見た概略図である。スクリュー押出機130は、ケーシング132と、スクリュー134と、投入口136と、排出口138とを有する。排出口138には、多孔板140が設けられている。ケーシング132の内径は、排出口138に近づくにつれて小さくなっている。多孔板140には、複数の貫通孔(圧力調整孔)が設けられている。排出口138が、この多孔板140で塞がれている。スクリュー134は、フライト部142と軸部144とを有する。軸部144の外径は、一定である。フライト部142は軸部144の外周面に設けられ、螺旋状に延びている。フライト部142の高さは、排出口138に近づくにつれて低くなっている。フライト部142と軸部144とにより、フライト部142を側面とし且つ軸部144を底面とする溝部133が形成されている。フライト部142のピッチ131は、一定である。ケーシング132とフライト部142との間には、クリアランス(隙間)135が設けられている。クリアランス135は一定である。ケーシング132は、有機溶媒を透過させない。
【0134】
図8は、更に他の変形例に係るスクリュー押出機150の内部を側方から見た概略図である。スクリュー押出機150は、ケーシング152と、スクリュー154と、投入口156と、排出口158とを有する。排出口158には、多孔板160が設けられている。ケーシング152の内径は、排出口158に近づくにつれて小さくなっている。多孔板160には、複数の貫通孔(圧力調整孔)が設けられている。排出口158が、この多孔板160で塞がれている。スクリュー154は、フライト部162と軸部164とを有する。軸部164の外径は、排出口158に近づくにつれて小さくなっている。フライト部162は軸部164の外周面に設けられ、螺旋状に延びている。フライト部162の高さは、一定である。フライト部162と軸部164とにより、フライト部162を側面とし且つ軸部164を底面とする溝部153が形成されている。フライト部162のピッチ151は、一定である。ケーシング152とフライト部162との間には、クリアランス155(隙間)が設けられている。クリアランス155は一定である。ケーシング152は、有機溶媒を透過させない。
【0135】
図9は、更に他の変形例に係るスクリュー押出機170の内部を側方から見た概略図である。このスクリュー押出機170は、2軸のスクリューを有する。スクリュー押出機170は、ケーシング172と、第1のスクリュー174と、第2のスクリュー175と、投入口176と、排出口178とを有する。排出口178には、多孔板180が設けられている。ケーシング172の内径は、排出口178に近づくにつれて小さくなっている。ケーシング172は、有機溶媒を透過させない。多孔板180には、複数の貫通孔(圧力調整孔)が設けられている。排出口178が、この多孔板180で塞がれている。第1のスクリュー174は、フライト部182と軸部184とを有する。軸部184の外径は、排出口178に近づくにつれて小さくなっている。フライト部182は軸部184の外周面に設けられ、螺旋状に延びている。フライト部182の高さは、一定である。フライト部182と軸部184とにより、フライト部182を側面とし且つ軸部184を底面とする溝部173が形成されている。フライト部182のピッチは、一定である。ケーシング172とフライト部182との間には、クリアランス(隙間)177が設けられている。クリアランス177は一定である。フライト部の螺旋の向きが逆であることを除き、第2のスクリュー175の構成は、第1のスクリュー174のそれと同じである。第1のスクリュー174の中心軸線と、第2のスクリュー175の中心軸線との間隔は、排出口178に近づくにつれて小さくなっている。
【0136】
(比較例の移送・分離装置)
図11は、比較例1で用いられたスクリューフィーダー220の内部を側方から見た概略図である。スクリューフィーダー220は、ケーシング222と、スクリュー224と、投入口226と、排出口228とを有する。排出口228は、その全体が開口している。ケーシング222の内径は、一定である。スクリュー224は、フライト部232と軸部234とを有する。軸部234の外径は、一定である。フライト部232は軸部234の外周面に設けられ、螺旋状に延びている。フライト232の高さは、一定である。フライト部232と軸部234とにより、フライト部232を側面とし且つ軸部234を底面とする溝部223が形成されている。フライト部232のピッチ221は、一定である。なお、図11に示したスクリューフィーダーは、内容物を移送させる装置であり、圧縮機構が備わっておらず、その点で本発明に用いられるスクリュー押出機とは異なる装置である。
【0137】
(具体的な実施形態)
図1には、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造プロセスの一部(混合工程〜分離工程)が示されている。図示されている通り、該製造プロセスには、混合装置10、供給装置12、反応装置14、熱交換器16、送液ポンプ18、並びにこれらの装置間を連結する配管20及び配管30が含まれている。また、混合装置10には、配管1及び2を介して、単量体水溶液及び重合開始剤がそれぞれ供給されている。反応装置14は、反応器32、排出装置34及び接合部36を有する。接合部36は、反応器32と排出装置34とを繋いでいる。反応器32、接合部36、熱交換器16及び配管30は有機溶媒で満たされている。
【0138】
反応装置14は、上記単量体組成物の重合反応を行う反応装置であって、反応器32、接合部36及び排出装置34を含んでいる。つまり、この反応装置14で、重合工程及び分離工程がなされる。該重合工程で得られた含水ゲルが、排出装置34から排出される。即ち、本発明は、反応装置14を用いて吸水性樹脂を製造する方法を含む。反応装置14は、連続式逆相懸濁重合反応装置の一例である。
【0139】
排出装置(移送・排出装置)34は、含水ゲルを有機溶媒から分離する分離装置である。
【0140】
排出装置34は、反応装置14に含まれている。排出装置34は、反応器32に接続されている。更に、排出装置34は、反応器32に直結されている。実施形態では接合部36が存在しているが、このような場合であっても、本願では、反応器32と排出装置34とは直結していると解釈される。この直結についての詳細は、後述される。
【0141】
本発明の吸水性樹脂の製造方法の概略を、図1にしたがって説明する。
【0142】
先ず、排出装置34の排出口を閉じた状態で、反応装置14、熱交換器16並びにこれらを連結する配管30の内部を有機溶媒で満たし、送液ポンプ18を稼働させて、この有機溶媒を循環させる。各装置及び配管中の有機溶媒は、熱交換器16で、所定温度に加熱される。熱交換器16で加熱された有機溶媒の一部は、供給装置12へも供給される。
【0143】
次に、別途用意した単量体水溶液及び熱分解型重合開始剤を、それぞれ別個に混合装置10に連続供給して混合し、単量体組成物を作製する。その後、該単量体組成物を、配管20を介して供給装置12に連続供給する。この単量体組成物は、供給装置12によって液滴状で反応器32の有機溶媒中に連続投入され、反応器32において重合反応が開始される。反応器32では、循環する有機溶媒の移動によって、単量体組成物からなる液滴が移動する。この液滴は、移動しながら、重合反応によって、含水ゲルに変化する。この液滴及び含水ゲルの移動方向は、該有機溶媒の移動方向と同じ(並流)である。なお、本願において、有機溶媒からなる液相に、単量体を含む液滴が分散又は懸濁した状態で、重合反応を開始して含水ゲルを得る重合方法を、液相液滴重合と称する。この液相液滴重合は、逆相懸濁重合の一例である。上記実施形態の如く、この液相液滴重合が連続的に実施される場合、この重合方法を、液相液滴連続重合と称する。この液相液滴連続重合は、連続的逆相懸濁重合の一例である。逆相懸濁重合は、非連続的であってもよい。液相液滴重合は、非連続的であってもよい。
【0144】
上記重合によって生成した含水ゲルは、循環する有機溶媒の流れに沿って移動し、重力及び浮力のバランスによって沈降したり浮遊したりする。なお、沈降する場合、含水ゲルは、反応器32から、接合部36を通過して、自然に(自動的に)排出装置34に供給される。上記排出装置34の投入口に到達した含水ゲルは、有機溶媒とともに、連続的に、排出装置34に取り込まれる。
【0145】
上記排出装置34に取り込まれた含水ゲル及び有機溶媒は、排出装置内のスクリューの回転によって上記排出口に向かって移送される。スクリューを用いることで、含水ゲルは連続的に移送される。排出装置34は、移送が進行するにつれて含水ゲルの圧縮度を高めるゲル圧縮機構を有している。このため、この移送と共に、含水ゲルは圧縮される。移送されるにつれて、含水ゲルは圧縮され、含水ゲルに作用する圧力は高まる。圧縮された含水ゲルは、排出口3から排出される。連続的に移送されてきた含水ゲルは、連続的に排出される。
【0146】
上述の通り、排出装置34は、反応器32に接続されている。すなわち、排出装置34のスラリー液供給口(投入口)と、連続式逆相懸濁重合がなされる反応器の生成物排出口とが接続されている。この「接続」は、「直結」を含む広い概念である。反応器32と排出装置34との間に、含水ゲルの移動を妨げる装置が介在している場合であっても、反応器32と排出装置34とが繋がっていれば、「接続」に該当する。例えば、反応器32と排出装置34との間に、ポンプが介在していてもよい。この接続により、生成した含水ゲルを排出装置に供給するのが容易となる。
【0147】
上述の通り、排出装置34は、反応器32に直結されている。この「直結」は、次のように定義される。反応器32で生成された含水ゲルが、有機溶媒中を移動して排出装置34の投入口に到達できる状態が、「排出装置34が反応器32に直結されている」状態である。よって例えば接合部36が管である場合、この管が傾斜していても「直結」に該当しうるし、この管が曲がっていても「直結」に該当しうる。排出装置34が反応器32の鉛直方向下側に位置していなくても、「直結」に該当しうる。例えば、排出装置34の投入口が反応器32の生成物排出口よりも鉛直方向上側に位置する場合であっても、「直結」に該当しうる。例えば、反応器32の内圧が高い場合、鉛直方向上側に位置する排出装置34に含水ゲルが自然に到達しうる。好ましくは、反応器32で生成された含水ゲルが、重力沈降により、排出装置34の投入口に到達しうる。この直結により、排出装置34への含水ゲルの供給が容易となり、生産性が向上する。例えば、反応器32で生成した含水ゲルが、重力により自動的に排出装置34に供給されうる。よって、分離工程への含水ゲルの供給作業が不要とされうる。加えて、連続式の場合、分離された有機溶媒は、排出装置34を逆流して投入口から自然に放出され、循環系に戻り、再利用される。
【0148】
本発明の他の実施形態として、単量体組成物を、反応装置の有機溶媒中に、断続的に供給するバッチ式製造とすることもできる。この場合、反応装置として、バッチ式の攪拌型反応装置が使用される。例えば、バッチ式の攪拌型反応装置における反応槽の下部に、排出装置34が直結されてもよい。上記液相液滴重合は、上記バッチ式製造を含む。
【0149】
図2では、他の実施形態に係る吸水性樹脂の製造プロセスの一部(供給工程〜分離工程)が示されている。この図2の実施形態では、バッチ式の反応装置40が用いられている。図示されている通り、該製造プロセスは、反応装置40及び配管20を含む。反応装置40は、反応器42、排出装置34及び接合部36を有する。接合部36は、反応器32と排出装置34とを繋いでいる。反応装置40には、有機溶媒が収容されている。接合部36は、有機溶媒で満たされている。
【0150】
配管20は、前述の供給装置の一例である。この配管20から、反応器42に、単量体組成物が供給される。なお、単量体水溶液と重合開始剤とがそれぞれ別々に反応器42に供給されてもよい。例えば、図2に示されるように、第1の配管20から単量体水溶液が供給され、第2の配管22(破線で表示)から重合開始剤が供給されてもよい。上述した連続式の場合と同様に、単量体組成物が液滴状で供給されてもよい。また、単量体組成物と有機溶媒とが予め混合された混合液が供給されてもよい。
【0151】
反応装置40は、上記単量体組成物の重合反応を行う反応装置であって、排出装置34を含んでいる。この反応装置40で、重合工程及び分離工程がなされる。前述の通り、排出装置34は、含水ゲルを有機溶媒から分離する分離装置である。排出装置34は、バッチ式の反応装置40に含まれている。排出装置34は、反応器42に直結されている。
【0152】
好ましくは、反応装置40は、反応器42の内部の有機溶媒を攪拌しうる攪拌機構を有する(図2参照)。単量体組成物(或いは、単量体水溶液及び重合開始剤)は、攪拌状態の有機溶媒に投入されてもよい。単量体組成物(或いは、単量体水溶液及び重合開始剤)は、静置された有機溶媒に投入されてもよい。
【0153】
このバッチ式の反応装置40においても、上記重合によって生成した含水ゲルは、重力によって沈降する。重力により、含水ゲルは、反応器32から、接合部36を通過して、自然に(自動的に)排出装置34に供給される。上記排出装置34の投入口に到達した含水ゲルは、有機溶媒とともに、排出装置34に取り込まれる。排出装置34の機能は、反応装置14と同じである。圧縮された含水ゲルは、排出口3から排出される。
【0154】
排出装置34により、有機溶媒を反応器42内から移動させずに含水ゲルを抜き出すことができる。排出装置34から含水ゲルを排出した後、次の原料液が供給されてもよい。また例えば、反応器42の深さ及び有機溶媒の温度等の条件を適切に設定することで、排出装置34から含水ゲルを排出しながら、次の単量体水溶液や有機溶媒といった原料液を供給することも可能である。つまり、有機溶媒を反応器42内に収容したまま、原料液を、逐次的に又は連続的に投入することができる。このように、排出装置34の機能に基づき、バッチ式の反応装置40においても、高い生産性が達成される。なお、原料液とは、単量体を含む液体を意味し、上記単量体水溶液、上記単量体組成物、及び、それらと有機溶媒との混合液を含む概念である。なお、図2に示したプロセスであっても、連続式で運転することもできる。
【0155】
本発明に係る製造方法では、有機溶媒の蒸発乾固や有機溶媒の濾過といった従来の分離方法とは異なり、エネルギー的に有利であり、更には有機溶媒や必要に応じて使用される界面活性剤や高分子分散剤の再利用が効率的に行われる。そのため、低コストであり、吸水性樹脂への有機溶媒や必要に応じて使用される界面活性剤や高分子分散剤の残存量を低減できるという利点を有する。
【0156】
(含水ゲルの形状)
本発明において、得られる含水ゲルの形状は球形である。上記含水ゲルの粒子径(以下「ゲル粒子径」と称する)は、得られる吸水性樹脂の用途等に応じて適宜調整される。
【0157】
上記「球形」とは、真球状以外の形状(例えば、略球状)を含む概念であって、粒子の平均長径と平均短径との比(「真球度」とも称する)が好ましくは1.0〜3.0である粒子を意味する。該粒子の平均長径と平均短径は、顕微鏡で撮影された画像に基づいて測定される。なお、上記粒子は、多少のへこみや凹凸、気泡を有していてもよい。本発明において、上記含水ゲルは、微小な球形ゲルの凝集体として形成されてもよく、微小な球形ゲルと該球形ゲルの凝集体との混合物として得られでもよい。
【0158】
また、上記含水ゲルが球形ゲルの凝集体である場合、この凝集体を構成する各球形ゲルの粒子径を、1次粒子径と称する。本発明において、1次粒子径は、乾燥工程において微粉発生を抑制できるという観点から、好ましくは1μm〜2000μm、より好ましくは10μm〜1000μm、更に好ましくは50μm〜800μmである。1次粒子径は、単量体組成物の有機溶媒への分散時の液滴径や重合条件(流量、温度、攪拌速度、界面活性剤等)で制御することができる。
【0159】
(含水ゲルの固形分率)
後述する乾燥工程に供される含水ゲルの固形分率は、乾燥コストの観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上である。本発明の分離方法では、残液率を低く出来るため、含水ゲルの固形分率を高めることができる。該含水ゲルの固形分率の上限値は、90質量%以下、好ましくは80質量%以下である。含水ゲルの固形分率は、単量体成分の濃度(単量体水溶液の固形分)や重合時の温度、重合後に必要に応じて行われる部分乾燥等で制御することができる。含水ゲルの固形分率の算出方法は、後述される。
【0160】
(含水ゲルの残液率)
上述の通り、圧縮を伴う押し出しにより、排出装置から排出された含水ゲルの残液率を低下させることができる。排出装置から排出された含水ゲル状架橋重合体の残液率は、乾燥時の負荷や有機溶媒のコストの観点から、10質量%以下が好ましく、9質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。但し、圧縮による含水ゲルへのダメージを考慮すると、この残液率は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。なお、この残液率(質量%)は、以下の方法で算出される。
【0161】
上記残液率は、有機溶媒と分離された含水ゲルについて、含水ゲルの粒子間に存在する有機溶媒量を表す指標であり、吸水性樹脂の重合時に使用され、排出された含水ゲルのゲル粒子間に存在する有機溶媒の量に基づいて、以下の要領で算出される。
【0162】
具体的には、有機溶媒と分離された含水ゲルを酢酸エチルに浸漬させることで、ゲル粒子間に存在する有機溶媒を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル中の有機溶媒濃度を、ガスクロマトグラフを用いて測定した。該酢酸エチル中の有機溶媒濃度をs(g/L)としたときに、下記(式2)にしたがって、残液率R(質量%)を求めた。
R = 100 × s × A / M ・・・(式2)
ただし、(式2)中、Mは含水ゲルの質量(g)、Aは抽出に用いた酢酸エチルの容量(L)を意味する。
【0163】
(分離後の有機溶媒等の再使用(循環))
本発明において、当該分離工程で分離された有機溶媒は廃棄しても、蒸留等で精製して再使用してもよいが、そのまま上記重合工程に一部又は全部を再使用することが好ましい。なお、当該再使用する場合、上述したように連続式反応装置では循環させることが好ましい。また、再使用量としては、分離後の有機溶媒量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは100質量%以上である。また、蒸発等で有機溶媒量が減少した場合には、適宜補充することもできる。
【0164】
本発明において、分離工程で分離された有機溶媒は、連続重合では循環、再使用させればよく、バッチ重合ではそのまま有機溶媒を次のバッチに再使用させればよい。
【0165】
〔2−5〕その他の後工程
上記分離工程において有機溶媒と分離された含水ゲルは、分離工程以降の必要な工程に供される。具体的には、乾燥工程に供給することで吸水性樹脂とされてもよいし、更に粉砕、分級、表面架橋、造粒、整粒等の各工程を経ることで吸水性樹脂とされてもよい。
【0166】
したがって、本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、上述した各工程以外に、必要に応じて、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、整粒工程、微粉除去工程、造粒工程及び微粉再利用工程を含むことができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等を更に含んでもよい。
【0167】
(乾燥工程)
本工程は、上記分離工程で分離された含水ゲルを、所望する固形分率まで乾燥して、粒子状の乾燥重合体を得る工程である。該含水ゲルを解砕又は造粒することで所望する粒子径又は粒度分布に調整した後に乾燥工程に供してもよい。
【0168】
なお、上記含水ゲルを乾燥する公知の方法としては、例えば、伝導伝熱乾燥、対流伝熱乾燥(熱風乾燥)、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、静置型乾燥、高温の水蒸気を用いた過熱水蒸気乾燥等が挙げられる。乾燥効率等を考慮して、乾燥方法がこれらの中から適宜選択されうる。
【0169】
乾燥温度及び乾燥時間は、得られる吸水性樹脂の固形分率を指標として適宜調整される。該固形分率は、吸水性樹脂の吸水性能の観点から、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%〜98質量%である。なお、吸水性樹脂の固形分率は、試料(吸水性樹脂)を180℃で3時間乾燥させた際の、乾燥減量に基づいて算出される値である。なお、本発明においては、後述する表面架橋工程に供される乾燥重合体を、便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する。
【0170】
(粉砕工程、分級工程)
上記乾燥工程で得られた粒子状の乾燥重合体は、必要に応じて、粉砕工程及び分級工程を経ることによって、粒子径又は粒度分布が制御された吸水性樹脂粉末とされる。
【0171】
上記粉砕工程では、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が適宜選択されて用いられる。
【0172】
上記分級工程では、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が適宜選択されて用いられる。
【0173】
(表面架橋工程)
上記乾燥工程を経て得られる粒子状の乾燥重合体、即ち、吸水性樹脂粉末は、必要に応じて表面架橋工程に供される。この表面架橋工程は、吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に架橋密度の高い部分を設ける工程である。なお、本発明においては、公知の表面架橋技術が適宜適用される。
【0174】
(整粒工程)
本願において「整粒工程」とは、表面架橋工程を経て緩く凝集した吸水性樹脂粉末を解して粒子径を整える工程を意味する。なお、この整粒工程は、表面架橋工程以降の微粉除去工程、含水ゲルの解砕工程及び分級工程を含むものとする。
【0175】
(微粉再利用工程)
本願において「微粉再利用工程」とは、微粉をそのまま、又は微粉を造粒した後に何れかの工程に供給する工程を意味する。
【0176】
〔3〕吸水性樹脂の物性
本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂は、該吸水性樹脂を吸収性物品、特に紙オムツに使用する場合には、下記の(3−1)〜(3−7)に掲げた物性のうち、少なくとも1つ以上、好ましくはAAPを含めた2つ以上、より好ましくはAAPを含めた3つ以上、更に好ましくはAAPを含めた4つ以上、特に好ましくはAAPを含めた5つ以上、最も好ましくは全ての物性が、所望する範囲に制御されることが望まれる。以下の全ての物性が下記の範囲を満たさない場合、本発明の効果が十分に得られず、特に、紙オムツ一枚当たりの吸水性樹脂の使用量が多い、所謂、高濃度紙オムツにおいて十分な性能を発揮しないおそれがある。
【0177】
〔3−1〕CRC(遠心分離機保持容量)
本発明の吸水性樹脂のCRC(遠心分離機保持容量)は、通常5g/g以上であり、好ましくは15g/g以上、より好ましくは25g/g以上である。上限値は、より高いCRCが好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは70g/g以下、より好ましくは50g/g以下、更に好ましくは40g/g以下である。
【0178】
上記CRCが5g/g未満の場合、吸収量が少なく、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。また、上記CRCが70g/gを超える場合、尿や血液等の体液等を吸収する速度が低下するため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適さない。なお、CRCは、内部架橋剤や表面架橋剤等の種類や量を変更することで制御することができる。
【0179】
〔3−2〕AAP(加圧下吸水倍率)
本発明の吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)は、好ましくは20g/g以上、より好ましくは22g/g以上、更に好ましくは23g/g以上、特に好ましくは24g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。上限値は、好ましくは30g/g以下である。なお、これらのAAPは、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更して測定された値である。
【0180】
上記AAPが20g/g未満の場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り量(「Re−Wet(リウェット)」と称する場合がある)が多くなるので、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。なお、AAPは、粒度の調整や表面架橋剤の変更等により制御することができる。
【0181】
〔3−3〕Ext(水可溶分)
本発明の吸水性樹脂のExt(水可溶分)は、通常50質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。下限値は、好ましくは0質量%、より好ましくは0.1質量%程度である。なお、本発明において「〜程度」とは±5%の誤差を含むことを意味する。
【0182】
上記Extが50質量%を超える場合、ゲル強度が弱く、液透過性に劣った吸水性樹脂となるおそれがある。更に、リウェットが多くなるため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。なお、Extは、内部架橋剤等の種類や量の変更により制御することができる。
【0183】
〔3−4〕残存モノマー量
本発明の吸水性樹脂に含まれる残存モノマー量は、安全性の観点から、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下である。下限値は、好ましくは0ppm、より好ましくは10ppm程度である。
【0184】
上記残存モノマー量を上記範囲内とすることで、人体の皮膚等への刺激が軽減された吸水性樹脂が得られる。
【0185】
〔3−5〕含水率
本発明の吸水性樹脂の含水率は、好ましくは0質量%を超えて20質量%以下、より好ましくは1質量%〜15質量%、更に好ましくは2質量%〜13質量%、特に好ましくは2質量%〜10質量%の範囲である。
【0186】
上記含水率を上記範囲内とすることで、粉体特性(例えば、流動性、搬送性、耐ダメージ性等)に優れた吸水性樹脂が得られる。
【0187】
〔3−6〕粒度
本発明の吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200μm〜700μm、より好ましくは250μm〜600μm、更に好ましくは250μm〜500μm、特に好ましくは300μm〜450μmの範囲である。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。また、粒子径850μm以上の粒子の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。換言すれば、この吸水性樹脂は、粒子径850μm未満の粒子を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含む。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.40、更に好ましくは0.27〜0.35の範囲である。
【0188】
〔3−7〕表面張力
本発明の吸水性樹脂の表面張力は、好ましくは60mN/m以上、より好ましくは65mN/m以上、更に好ましくは70mN/m以上である。上限は、通常73mN/mである。
【0189】
上記表面張力が上記範囲を満たさない場合、紙オムツの吸収体に使用した際の戻り量(Re−wet)が増加する傾向にあるため、好ましくない。なお、表面張力は、上述した界面活性剤や分散剤の種類やそれらの使用量の選択により制御することができる。また、上記表面張力の好ましい範囲は、有機溶媒と分離した後の含水ゲルにも適用される。
【0190】
〔4〕吸水性樹脂の用途
本発明の吸水性樹脂の用途は、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体用途が挙げられる。特に、原料由来の臭気、着色等が問題となっていた高濃度紙オムツの吸収体として使用することができる。更に、本発明に係る吸収性樹脂は、吸水時間に優れ、かつ粒度分布が制御されているので、上記吸収体の上層部に使用する場合に、顕著な効果が期待できる。
【0191】
また、上記吸収体の原料として、上記吸水性樹脂と共にパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30質量%〜100質量%、より好ましくは40質量%〜100質量%、更に好ましくは50質量%〜100質量%、更により好ましくは60質量%〜100質量%、特に好ましくは70質量%〜100質量%、最も好ましくは75質量%〜95質量%の範囲である。
【0192】
上記コア濃度を上記範囲とすることで、該吸収体を吸収性物品の上層部に使用した場合に、この吸収性物品を清浄感のある白色状態に保つことができる。更に、該吸収体は尿や血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配がなされることにより、吸収量の向上が見込める。
【0193】
本発明には、以下の項目に示される実施形態も含まれている。
【0194】
[項目1]
吸水性樹脂の原料である単量体を反応器内で重合させ、溶媒中に含水ゲル状架橋重合体を生成させる重合工程と、
上記溶媒中から分離して上記含水ゲル状架橋重合体を取り出す分離工程とを含み、
上記分離工程では、上記含水ゲル状架橋重合体を移送及び排出しうる移送・排出装置が用いられ、上記含水ゲル状架橋重合体が圧縮されながら上記溶媒から抜き出される吸水性樹脂の製造方法。
【0195】
[項目2]
上記移送・排出装置が上記反応器に直結されている項目1に記載の製造方法。
【0196】
[項目3]
上記移送・排出装置の内部における背圧が、0.1MPa以上である項目1又は2に記載の製造方法。
【0197】
[項目4]
上記分離工程において取り出された上記含水ゲル状架橋重合体の残液率が、10質量%以下である項目1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【0198】
[項目5]
上記移送・排出装置がスクリューを有しており、
上記スクリューの圧縮比が1.5以上である項目1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【0199】
[項目6]
液相液滴重合によって吸水性樹脂の原料である単量体を重合させ、含水ゲル状架橋重合体を生成させる反応装置であって、
上記含水ゲル状架橋重合体を移送及び排出しうる移送・排出装置を含む反応装置。
【0200】
[項目7]
上記移送・排出装置が、移送の進行に伴い上記含水ゲル状架橋重合体の圧縮度を高めるゲル圧縮機構を有している項目6に記載の反応装置。
【0201】
[項目8]
上記移送・排出装置の排出口に、上記含水ゲル状架橋重合体に作用する圧力を調整しうる圧力調整機構が設けられている項目6又は7に記載の反応装置。
【0202】
[項目9]
項目6から8のいずれか1項に記載の反応装置を用いて吸水性樹脂を製造する方法。
【0203】
[項目10]
逆相懸濁重合によって得られる含水ゲル状架橋重合体を含むスラリー液から、該含水ゲル状架橋重合体を排出するための排出装置であって、
上記排出装置が、少なくとも一つのスラリー液供給口と少なくとも一つの含水ゲル状架橋重合体排出口とを有し、
上記スラリー液が、上記スラリー液供給口から上記含水ゲル状架橋重合体排出口に移動する際、上記スラリー液に対する圧力が上昇するとともに上記含水ゲル状架橋重合体と分散媒との分離が進行し、上記分離された分散媒は上記スラリー液供給口の方向へ移動し、上記含水ゲル状架橋重合体は上記含水ゲル状架橋重合体排出口から排出される、排出装置。
【0204】
[項目11]
上記排出装置の含水ゲル状架橋重合体排出口に、含水ゲル状架橋重合体に作用する圧力を調整しうる圧力調整機構が設けられている、項目10に記載の排出装置。
【0205】
[項目12]
上記排出装置のスラリー液供給口と、連続式逆相懸濁重合がなされる反応器の生成物排出口とが接続されている、項目10又は11に記載の排出装置。
【0206】
[項目13]
項目10から12のいずれか1項に記載の排出装置を用いて吸水性樹脂を製造する方法。
【実施例】
【0207】
以下の実施例・比較例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの説明に限定解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0208】
なお、実施例及び比較例で使用する電気機器(含水ゲルの物性測定用機器も含む)には、特に注釈のない限り、200V又は100Vの電源を使用した。また、含水ゲルの諸物性は、特に注釈のない限り、室温(20〜25℃)、相対湿度50%RH±10%の条件下で測定された。
【0209】
また、便宜上、「リットル」を「l」又は「L」、「質量%」又は「重量%」を「wt%」と表記することがある。
【0210】
[物性測定方法]
【0211】
(a)残液率
本発明における残液率は、有機溶媒と分離された含水ゲルについて、含水ゲルの粒子間に存在する有機溶媒量を表す指標であり、吸水性樹脂の重合時に使用され、排出された含水ゲルのゲル粒子間に存在する有機溶媒の量に基づいて、以下の要領で算出される。
【0212】
すなわち、有機溶媒と分離された含水ゲルを酢酸エチルに浸漬させることで、ゲル粒子間に存在する有機溶媒を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル中の有機溶媒濃度を、ガスクロマトグラフを用いて測定した。該酢酸エチル中の有機溶媒濃度をs(g/L)としたときに、下記(式3)にしたがって、残液率R(質量%)を求めた。
R = 100 × s × A / M ・・・(式3)
ただし、(式3)中、Mは含水ゲルの質量(g)、Aは抽出に用いた酢酸エチルの容量(L)を意味する。
【0213】
残液率の具体的な測定手順を以下に示す。
(検量線の作成)
酢酸エチルに、実施例及び比較例で使用した有機溶媒を加え、40g/L、10g/L、5g/L、2g/L、0.5g/L、0.1g/Lの標準溶液を作成した。これら標準溶液を用いて、下記の条件でガスクロマトグラフ分析を行い、得られたクロマトグラムのピーク面積と有機溶媒濃度sとの検量線を作成した。
(残液率の算出)
内容量100mlのバイアル瓶に、実施例及び比較例で得られた含水ゲル5.0gを精秤した後、酢酸エチル50mlを加え、スターラーチップを加え、速やかに密栓した。その後、スターラーを用いて300rpmで1時間攪拌した。攪拌後、上澄み液を0.45μmのフィルターに通過させ、有機溶剤抽出液を得た。該抽出液を下記の条件でガスクロマトグラフ分析を行い、得られたクロマトグラムのピーク面積及び上記で得た検量線から、抽出液中の有機溶剤濃度s(g/L)を求め、さらに(式3)にしたがって、残液率R(質量%)を求めた。
(ガスクロ分析条件)
装置:GC−2010 Plus, Auto Injector AOC−20i(島津製作所製)
カラム:SPB−5TM(微極性キャピラリーカラム);長さ30m×内径0.53mmφ,膜厚0.5μm
カラム温度:50℃→150℃(10℃/min,Hold;5min),total 15min
気化室:200℃,スプリット比;20
検出器温度:200℃
検出器:FID
キャリアガス:He,36.2cm/sec
サンプル注入量:1μL
【0214】
(b)重合率
イオン交換水1000gに含水ゲル1.00gを投入し、300rpmで2時間攪拌した後に、ろ過することにより、不溶分を除去した。上記操作で得られたろ液中に抽出された単量体の量を、液体クロマトグラフを用いて測定した。該単量体の量を残存モノマー量m(g)としたときに、下記(式4)にしたがって、重合率C(質量%)を求めた。
C = 100 ×[1−m/{(α/100)×(1−R/100)×M}] ・・・(式4)
【0215】
ただし、(式4)中、Mは含水ゲルの質量(g)、Rは含水ゲルの残液率(質量%)、αは含水ゲルの固形分率(質量%)を意味する。なお、固形分率は以下の手法によって求められる。
【0216】
(c)含水ゲルの固形分率
底面の直径が50mmのアルミカップに含水ゲル2.00gを投入した後、試料(含水ゲル及びアルミカップ)の総質量W1(g)を正確に秤量した。次に、上記試料を、雰囲気温度180℃に設定されたオーブン内に静置した。24時間経過後、該試料を上記オーブンから取り出し、総質量W2(g)を正確に秤量した。本測定に供された含水ゲルの質量をM(g)としたときに、下記(式5)にしたがって、含水ゲルの固形分率α(質量%)を求めた。
α = 100 − [{(W1−W2)− M×(R/100)}/{(1−R/100)×M}]× 100 ・・・(式5)
【0217】
ただし、(式5)中、Mは含水ゲルの質量(g)、Rは含水ゲルの残液率(質量%)を意味する。
【0218】
(d)表面張力
十分に洗浄された100mlのビーカーに23℃±2℃に調温した生理食塩水50mlを入れ、生理食塩水の表面張力を表面張力計(K11自動表面張力計、KRUSS社)により測定した。この測定において表面張力の値は71〜75mN/mの範囲でなくてはならない。
【0219】
次に、23℃±2℃に調温した表面張力測定後の生理食塩水が入ったビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂コーティングされた回転子及び吸水性樹脂0.5gを入れ、回転数500rpmで4分間攪拌した。その後、攪拌を停止し、含水した吸水性樹脂が沈降した後の上澄み液について、その表面張力(単位;mN/m)を測定した。なお、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水で洗浄し、かつガスバーナーで加熱洗浄して使用した。
【0220】
[実施例1]
図1に示した製造プロセスに従って含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(1)を作製した後、得られた含水ゲル(1)を乾燥し、更に表面架橋することで、球状の吸水性樹脂(1)を製造した。
【0221】
なお、混合装置としてスタティックミキサー(形式:T3−15、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)、供給装置として2流体スプレー(外部混合型、ノズル内径:1.0mm、補助流体:有機溶媒、形式:SETO07510PTFE、株式会社いけうち製)、反応器としてPFA製チューブ(内径:25mm、全長:10m)を縦に配置したもの、排出装置として、スクリューのピッチが排出口に近づくにつれて小さくなるスクリュー押出機(圧力調整機構:多孔板、孔径φ:5.0mm、開孔率:26%)(図3参照)を、それぞれ使用した。なお、上記排出装置は、上記反応器の下部に直結され、重力沈降による粗分離が可能な構造とした(図1の接合部36及び排出装置34参照)。
【0222】
重合反応の準備段階として、有機溶媒としてn−ヘプタンを、上記2流体スプレーの補助流体用流路、上記反応器、上記排出装置及びこれらを接続する配管(接合部を含む)内に投入した。上記2流体スプレーの位置を、2流体スプレーのノズルの先端が、反応器に収容された有機溶媒に浸るように調整した。
【0223】
続いて、送液ポンプを稼働させて、流量1000ml/分で、有機溶媒の循環を開始した。この製造方法では、循環させた有機溶媒の経路を、2流体スプレーを介して反応器に投入する経路と、直接反応器に投入する経路とに分岐させた。2流体スプレーを介して反応器に投入される有機溶媒の流量を800ml/分とし、直接反応器に投入される有機溶媒の流量を200ml/分とした。また、熱交換器を稼働させて、設定温度が85℃となるように、上記有機溶媒を加熱した。
【0224】
次に、アクリル酸、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を混合し、更に、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均重合度:9)及びジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムを配合することで、単量体水溶液(1)を作製した。該単量体水溶液(1)に、液温を25℃に保ちながら窒素ガスを吹き込むことで溶存酸素量を1ppm以下にした。また、別途、過硫酸ナトリウム及びイオン交換水を混合することで、10質量%の過硫酸ナトリウム水溶液(1)を作製した。該過硫酸ナトリウム水溶液(1)に窒素ガスを吹き込むことで窒素置換を行った。
【0225】
続いて、上記操作で得られた単量体水溶液(1)と過硫酸ナトリウム水溶液(1)とを、それぞれ別個に上記混合装置に供給して混合することで、単量体組成物(1)を作製した。該単量体組成物(1)のモノマー濃度は43質量%、中和率は70モル%であった。また、内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレートは単量体に対して0.02モル%、キレート剤であるジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムは単量体に対して100ppm、重合開始剤である過硫酸ナトリウムは単量体に対して0.1g/モルであった。
【0226】
次に、上記混合工程で作製した単量体組成物(1)を、速やかに上記2流体スプレーの単量体組成物用流路に送液した。その後、上記2流体スプレーを用いて、流量40ml/分(47.2g/分)で、単量体組成物(1)を上記反応器内を満たしている有機溶媒中に投入した。該単量体組成物(1)は、該有機溶媒の循環方向と同じ方向(並流)となるように投入した。なお、該有機溶媒に投入される前の単量体組成物(1)の液温を25℃に保持した。
【0227】
上記2流体スプレーによって投入された上記単量体組成物(1)は、上記有機溶媒中で液滴状(液滴径;100μm〜200μm)に分散した。上記単量体組成物(1)と上記有機溶媒との比(W/O比)は、4.0容積%であった。
【0228】
上記単量体組成物(1)からなる液滴は、上記有機溶媒が満たされた反応器内を落下しながら、重合反応の進行に伴って微小な球形ゲルに変化した。これらの微小な球形ゲルは、落下するに従って相互に付着して凝集体を形成した。そして、該反応器の排出口付近において、直径1cm〜2cmの微小な球形ゲルの凝集体からなる含水ゲル(1)を確認した。
【0229】
上記一連の操作で得られた含水ゲル(1)は、上記有機溶媒と共に連続的に反応器から接合部を介して排出装置に供給された。
【0230】
上記反応器の下部(接合部)において、上記含水ゲル(1)と有機溶媒とが重力沈降によって粗分離された。この重力沈降により、上記含水ゲル(1)が上記排出装置の投入口に到達した。続いて粗分離された含水ゲル(1)が排出装置のスクリュー及び多孔板によって移送されつつ圧搾され、連続的に該排出装置から排出された。なお、該排出装置で分離された有機溶媒は、設定温度が85℃となるように熱交換器で調温された後、再度、反応装置に供給された。
【0231】
上記操作で得られた含水ゲル(1)は、微小な球形の含水ゲルが付着凝集した形状をしており、その一次粒子径は210μmであった。上記排出装置での条件及び含水ゲル(1)の物性を表1に示した。
【0232】
[実施例2]
実施例1において、排出装置として軸部形状が逆テーパーであるスクリュー押出機(圧力調整機構:多孔板、孔径φ:5.0mm、開孔率:26%)(図4参照)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行って含水ゲル(2)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(2)の物性を表1に示した。
【0233】
[実施例3]
実施例1において、排出装置として、軸部形状が逆テーパーであり、且つ、スクリューのピッチが排出口に近づくにつれて小さいスクリュー押出機(圧力調整機構:多孔板、孔径φ:5.0mm、開孔率:26%)(図5参照)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行って含水ゲル(3)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(3)の物性を表1に示した。
【0234】
[実施例4]
実施例1において、排出装置として、スクリュー押出機(スクリュー形状:2軸1軸テーパー、圧力調整機構:多孔板(φ9.5mm孔、開孔率:48%))(図10参照)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って含水ゲル(4)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(4)の物性を表1に示した。
【0235】
[実施例5]
実施例4において、φ9.5mm孔の多孔板を使用し、その開孔率を41%に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行って含水ゲル(5)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(5)の物性を表1に示した。
【0236】
[実施例6]
実施例4において、φ5.0mm孔の多孔板を使用し、その開孔率を26%に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行って含水ゲル(6)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(6)の物性を表1に示した。
【0237】
[実施例7]
実施例4において、φ3.1mm孔の多孔板を使用し、その開孔率を37%に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行って含水ゲル(7)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(7)の物性を表1に示した。
【0238】
[実施例8]
実施例1において、排出装置として、スクリュー押出機(スクリュー形状:2軸1軸テーパー、圧力調整機構:エアーシリンダー式背圧板)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って含水ゲル(8)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(8)の物性を表1に示した。
【0239】
[実施例9]
実施例8において、背圧板による押圧力を調整し、排出装置の排出口での背圧(スクリュー先端とエアーシリンダー式背圧板との間での圧力)を1.0MPaに変更した以外は実施例8と同様の操作を行って含水ゲル(9)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(9)の物性を表1に示した。
【0240】
[実施例10]
実施例8において、圧力調整機構を設置しなかった以外は実施例8と同様の操作を行って含水ゲル(10)を得た。上記排出装置での条件及び含水ゲル(10)の物性を表1に示した。
【0241】
[実施例11]
実施例7において、n−ヘプタンに、分散助剤としてショ糖脂肪酸エステル(商品名:DKエステルF−50、第一工業製薬株式会社)を0.005質量%添加した以外は、実施例7と同様の操作を行って含水ゲル(11)を得た。
【0242】
上記操作で得られた含水ゲル(11)は、微小な球形の含水ゲルが付着凝集した形状をしており、その一次粒子径は100μmであった。上記排出装置での条件及び含水ゲル(11)の物性を表1に示した。
【0243】
[比較例1]
実施例1において、排出装置として、スクリューフィーダー(圧力調整機構なし)(図11参照)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って比較含水ゲル(1)を得た。上記排出装置での条件及び比較含水ゲル(1)の物性を表1に示した。
【0244】
[比較例2]
実施例1における排出装置に代えて、二重バルブを用いて反応装置から有機溶媒と含水ゲルを抜出し、その後、重力式フィルターを用いて濾過することで、含水ゲルと有機溶媒を分離した以外は、実施例1と同様の操作を行って比較含水ゲル(2)を得た。上記排出装置での条件及び比較含水ゲル(2)の物性を表1に示した。
【0245】
なお、表1には記載していないが、実施例1〜11で得られる含水ゲル(1)〜(11)について、乾燥後に得られる吸水性樹脂の表面張力を測定したところ、実施例1〜10は約72mN/m、実施例11は71mN/mであった。
【0246】
【表1】
【0247】
以上、表1に示される通り、実施例1〜11における含水ゲルの残液率が1.5質量%〜7.9質量%に対して、比較例1、2では含水ゲルの残液率が28質量%、100質量%と非常に多く、本発明の優位性は明らかである。本発明では、残液率が低い含水ゲルを効率的に取り出すことができる。この吸水性樹脂の製造方法によれば、有機溶媒や必要に応じて使用する高価な界面活性剤を効率よく吸水性樹脂と分離することができ、更に再使用することができるため、効率よく高物性の吸水性樹脂を低コストで製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明によって得られる吸水性樹脂は、紙オムツ等の衛生用品の吸収体用途に適している。
【符号の説明】
【0249】
10・・・混合装置
12・・・供給装置
14・・・反応装置
16・・・熱交換器
18・・・送液ポンプ
1、2、20、22、30・・・配管
3・・・排出口
32、42・・・反応器
34、50、70、90、110、130、150、170、200、220・・・排出装置(移送・排出装置)
36・・・接合部
51、71、91、111、131、151、221・・・ピッチ
53,73、93、113、133、153、173、223・・・溝部
54、74、94、114、134、154、174、175、202、204、224・・・スクリュー
55、75、95、115、135、155、177・・・クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11