(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595722
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】薬物送達装置の状態認識
(51)【国際特許分類】
A61M 5/50 20060101AFI20191010BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
A61M5/50 530
A61M5/31 520
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-544118(P2018-544118)
(86)(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公表番号】特表2019-505333(P2019-505333A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】US2017018974
(87)【国際公開番号】WO2017147202
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】62/327,127
(32)【優先日】2016年4月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/298,229
(32)【優先日】2016年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/306,411
(32)【優先日】2016年3月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】ホッパー、ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】フォート、ステイシー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】コステロ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】プロタシエヴィチ、レイモンド
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0209510(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0209114(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0243088(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第2708253(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置の使用を検出および/または追跡する方法であって、前記薬物送達装置は、機械可読コードおよび視覚的インジケータを含み、前記薬物送達装置は、前記薬物送達装置の使用により使用前状態から使用済み状態へと移行するように、前記使用前状態と前記使用済み状態とを有し、前記機械可読コードは、前記薬物送達装置内の薬物および/または前記薬物送達装置を識別するための情報を含み、前記視覚的インジケータは、前記薬物送達装置の少なくとも1つの構成要素上に設けられた色または形態であり、前記薬物送達装置が前記使用前状態にあるときに第1の状態を有し、前記薬物送達装置が前記使用済み状態にあるときに異なる第2の状態を有する、前記方法であって、
画像センサを有するユーザ装置が前記薬物送達装置の1つ以上の画像を取り込むことを可能にするステップと、
前記1つ以上の取り込み画像のうちの少なくとも1つから前記ユーザ装置のプロセッサによって、前記色または形態が前記1つ以上の取り込み画像のうちの前記少なくとも1つに存在するかどうかを判定することによって前記薬物送達装置の前記視覚的インジケータが前記第2の状態にあるかどうかを判定するステップと、
前記視覚的インジケータが前記第2の状態にあるとの判定に応じて、前記ユーザ装置のプロセッサによって、前記機械可読コードから情報を取得するステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記色または形態が前記第2の状態にあるとき、前記色または形態は、前記薬物送達装置の1つ以上の追加の構成要素によって隠され、前記機械可読コードから情報を取得するステップは、前記色または形態が前記1つ以上の取り込み画像のうちの前記少なくとも1つに隠されている場合にのみ行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記色または形態が前記第1の状態にあるとき、前記色または形態は、前記薬物送達装置の1つ以上の追加の構成要素によって隠され、前記機械可読コードから情報を取得するステップは、前記色または形態が前記1つ以上の取り込み画像のうちの前記少なくとも1つの中で見えるときにのみ行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記機械可読コードは、前記薬物送達装置の外面に配置されたバーコードであり、前記機械可読コードから情報を取得するステップは、前記ユーザ装置のプロセッサによって、前記1つ以上の取り込み画像のうちの少なくとも1つから前記バーコートを読み取るステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記機械可読コードは、前記薬物送達装置の外面に配置されたバーコードであり、前記機械可読コードから情報を取得するステップは、前記薬物送達装置の別の画像を少なくとも1つ取り込むステップと、前記別の画像から前記バーコードを読み取るステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザ装置のプロセッサによって前記視覚的インジケータが前記第1の状態にあると判定された場合に、前記機械可読コードから情報を取得することができないとの警告を前記ユーザ装置のプロセッサによって前記ユーザに提示するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ユーザ装置のプロセッサによって、前記ユーザ装置のディスプレイ上に、前記使用済み状態の前記薬物送達装置の形状に対応する視覚的装置輪郭線であって、前記薬物送達装置の前記1つ以上の画像を取り込む際に前記ユーザを支援するように構成された視覚的装置輪郭線を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
薬物送達装置の使用を検出および/または追跡する方法であって、前記薬物送達装置は、機械可読コードを含み、前記機械可読コードは、前記薬物送達装置内の薬物および/または前記薬物送達装置を識別するための情報を含み、前記薬物送達装置は、前記薬物送達装置の使用により使用前状態から使用済み状態へと移行するように、前記使用前状態の第1の形状と前記使用済み状態の異なる第2の形状を有する、前記方法であって、
画像センサを有するユーザ装置が前記薬物送達装置の1つ以上の画像を取り込むことを可能にするステップと、
前記1つ以上の取り込み画像のうちの少なくとも1つから前記ユーザ装置のプロセッサによって、前記薬物送達装置が前記第2の形状を有するかどうかを判定するステップと、
前記薬物送達装置が前記第2の形状を有するとの判定に応じて、前記ユーザ装置のプロセッサによって、前記機械可読コードから情報を取得するステップと
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記機械可読コードは、前記薬物送達装置の外面に配置されたバーコードであり、前記機械可読コードから情報を取得するステップは、前記ユーザ装置のプロセッサによって、前記1つ以上の取り込み画像のうちの少なくとも1つから前記バーコードを読み取るステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記機械可読コードは、前記薬物送達装置の外面に配置されたバーコードであり、前記機械可読コードから情報を取得するステップは、前記薬物送達装置の別の画像を少なくとも1つ取り込むステップと、前記別の画像から前記バーコードを読み取るステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ユーザ装置のプロセッサによって前記薬物送達装置が前記第1の形状を有すると判定された場合に、前記機械可読コードから情報を取得することができないとの警告を前記ユーザ装置のプロセッサによって前記ユーザに提示するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ユーザ装置のプロセッサによって、前記ユーザ装置のディスプレイ上に、前記薬物送達装置の前記第2の形状に対応する視覚的装置輪郭線であって、前記薬物送達装置の前記1つ以上の画像を取り込む際に前記ユーザを支援するように構成された視覚的装置輪郭線を提供するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薬物送達装置に関し、より詳細には、薬物送達装置の自己投与を正確に検出し報告する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの患者は、例えば、自己注射装置、吸入器、または他の薬物送達装置を使用して、薬剤を自己投与する必要がある。治療を効果的なものにするためには、患者が特定の投薬スケジュールを順守することが重要である場合が多い。スマートフォンの普及により、患者は医師または他の同様の医療機関に、個々の用法・用量を記録し、さらに報告することもできる。多くの場合、患者は、投薬量が投与される時間を記録し、報告するだけでなく、薬剤の名称、投薬量、および他の同様の関連データを報告することもできる。このことにより、医療従事者は患者の順守状況をより正確に追跡することができる。一部の企業はさらに、スマートフォンで用法・用量を追跡することによって、患者が投薬計画を順守しようとする動機を提供する報酬プログラムを確立している。
【0003】
しかしながら、その薬剤が実際に患者によって服用されたかどうかを判定することは困難であり得る。例えば、一部のアプリケーションでは、患者がスマートフォンを使用して手動で情報を入力する必要があり、誤った報告の機会を生み出してしまう。同様に、一部の薬物送達装置には、スマートフォンによって走査されて記録および報告を可能にするバーコードまたは他の機械可読タグが設けられている。手動データ入力よりも便利であるが、機械可読コードは、一般に、薬物送達装置が実際に使用されたかどうかに関して、より高い確実性を提供しない。薬物送達装置の使用時に作動されるRFIDタグを使用するなど、この問題に対処する試みがなされてきた。それでも、このような方法は、典型的には、製造業者による薬物送達装置のコスト高で面倒な改良を必要とする。
【0004】
したがって、実際の薬物送達装置を大幅に改良する必要なく、報告されている薬物送達装置が実際に使用されたことを確実に確認しながら、患者が投薬スケジュール順守を記録し報告することを可能にする方法を提供することが望ましい。医師、看護師等による患者への薬剤の投与を追跡する方法を医療施設にも提供することがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一実施形態は、薬物送達装置の使用を検出および/または追跡する方法を含む。薬物送達装置は、機械可読コードおよび視覚的インジケータを含み、薬物送達装置の使用により使用前状態から使用済み状態へと移行するように、使用前状態および使用済み状態を有する。視覚的インジケータは、薬物送達装置が使用前状態にあるときに第1の状態、そして薬物送達装置が使用済み状態にあるときに異なる第2の状態を有する。該方法は、画像センサを有するユーザ装置が薬物送達装置の1つ以上の画像を取り込むことを可能にするステップと、1つ以上の取り込み画像のうちの少なくとも1つからユーザ装置のプロセッサによって、薬物送達装置の視覚的インジケータが前記第2の状態にあるかどうかを判定するステップと、視覚的インジケータが第2の状態にあると判定された場合に、ユーザ装置のプロセッサによって機械可読コードから情報を取得するステップとを含む。
【0006】
本発明の別の実施形態は、薬物送達装置の使用を検出および/または追跡する方法を含む。薬物送達装置は、機械可読コードを含み、薬物送達装置の使用により使用前状態から使用済み状態へと移行するように、使用前状態の第1の形状および使用済み状態の異なる第2の形状を有する。該方法は、画像センサを有するユーザ装置が薬物送達装置の1つ以上の画像を取り込むことを可能にするステップと、1つ以上の取り込み画像のうちの少なくとも1つからユーザ装置のプロセッサによって、薬物送達装置が前記第2の形状を有するかどうかを判定するステップと、薬物送達装置が第2の形状を有すると判定された場合に、ユーザ装置のプロセッサによって機械可読コードから情報を取得するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
前述の概要、ならびに本発明の好適な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばより良く理解されるであろう。本発明を例示する目的で、図面には現在のところ好適な実施形態が示されている。しかしながら、本発明は、図示されている正確な構成および手段に限定されないことを理解されたい。
【0008】
【
図1A】本発明の第1の好適な実施形態に係る未使用状態の薬物送達装置の正面図である。
【0009】
【
図1B】使用済み状態の
図1Aの薬物送達装置の正面図である。
【0010】
【
図2A】
図1Bの装置の画像の取り込みを試みているユーザ装置の概略図である。
【0011】
【
図2B】
図1Bの薬物送達装置上の機械可読コードからのデータ取得の成功を示す
図2Bのユーザ装置の概略図である。
【0012】
【
図2C】
図1Aの薬物送達装置上の機械可読コードからのデータ取得の不成功に終わった試みの後の
図2Aのユーザ装置の概略図である。
【0013】
【
図3A】本発明の第2の好適な実施形態に係る未使用状態の薬物送達装置の正面図である。
【0014】
【
図3B】使用済み状態の
図3Aの薬物送達装置の正面図である。
【0015】
【
図4A】本発明の第3の好適な実施形態に係る未使用状態の薬物送達装置の正面図である。
【0016】
【
図4B】使用済み状態の
図4Aの薬物送達装置の正面図である。
【0017】
【
図5A】本発明の第4の好適な実施形態に係る未使用状態の薬物送達装置の正面図である。
【0018】
【
図5B】使用済み状態の
図5Aの薬物送達装置の正面図である。
【0019】
【
図6A】本発明の第5の好適な実施形態に係る未使用状態の薬物送達装置の走査の不成功に終わった試みの後のユーザ装置の概略図である。
【0020】
【
図6B】使用済み状態の
図6Aの薬物送達装置の走査の成功した試みの後の
図6Aのユーザ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ある特定の用語が単に便宜上以下の説明で使用されているが、限定するものではない。「右」、「左」、「下」および「上」という単語は、参照される図面の方向を示す。「内側に」および「外側に」という単語は、装置の幾何学的中心およびその指定された部分に向かう方向および離れる方向をそれぞれ指す。この用語には、具体的に上述した単語、その派生語、同様の意味の単語が含まれる。
【0022】
ここで
図1Aおよび
図1Bを参照すると、本発明の第1の好適な実施形態に係る、未使用状態および使用済み状態の薬物送達装置100がそれぞれ示されている。
図1Aおよび
図1Bの薬物送達装置100は、手のひら作動式注射器として示されているが、これは単なる例に過ぎず、ペン型注射器、自動注射器、シリンジ、吸入器などの他のタイプの薬物送達装置も本発明に関連して使用され得る。
【0023】
薬物送達装置100は、上部ハウジング102と、中間ハウジング104と、下部ハウジング106とを含む。
図1Aに示されている未使用状態では、上部ハウジング102は部分的に中間ハウジング104の近位部分を覆い、中間ハウジング104の最遠位部分は下部ハウジング106に固定的に着座する。シリンジ(図示せず)は薬物送達装置100内に収容され、好ましくはシリンジは下部ハウジング106内に固定保持され、上部ハウジング102はシリンジのプランジャを作動させて注射を施すために利用される。針ガード108は、下部ハウジング106の遠位端から露出され、下部ハウジング106に対して可動である。使用者が針ガード108を皮膚に押し付けると、針ガード108は下部ハウジング106内に後退し、シリンジの針(図示せず)を露出させる。針ガード108は、好ましくはバネ(図示せず)によって付勢されて、注射および皮膚からの除去の後に元の位置に戻る。また、好ましくは、ロック機構(図示せず)が、針ガード108が使用後に再び後退するのを防止する。使用済み状態(
図1B)では、上部ハウジング102は、好ましくは中間ハウジング104を完全に覆い、好ましくは下部ハウジング106に対して近位に移動するのが防止される。したがって、薬物送達装置100の使用により、使用前状態(
図1A)から使用済み状態(
図1B)へと移行する。
【0024】
ユーザは患者であり得、この場合、薬物は自己投与される。他の実施形態では、ユーザは、薬物を患者に投与する医者、看護師などの医療従事者であり得る。
【0025】
薬物送達装置100は、好ましくは、機械可読コード110をさらに含む。機械可読コード110は、好ましくは、光学的に読み取り可能なコード(例えば、1次元バーコード、スタックバーコード、PDF417コード、QRコード(登録商標)、または他の2次元バーコードもしくは3次元バーコードなど)であるが、パッシブ電磁タグもしくはアクティブ電磁タグ(例えば、RFIDタグ、NFCタグなど)、これらの組み合わせなどの他のタイプの機械可読コードも使用され得る。機械可読コード110は、好ましくは、薬物送達装置100内の薬物の識別、薬物送達装置100の型またはタイプの識別、薬物および/または薬物送達装置100の製造日(もしくは使用期限)などのうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、機械可読コード110は、ユーザが複数の注射を報告するために同じ薬物送達装置100を再走査することができないように一意の識別子を有する。
【0026】
図1Aおよび
図1Bの機械可読コード110は、薬物送達装置110の外面、特に上部ハウジング102に配置されるが、他の適切な位置も同様に使用され得る。このように、機械可読コード110は、走査を可能にするために薬物送達装置100が使用済み状態にあるときに見える状態で維持される。機械可読コード110は、薬物送達装置100上に直接印刷され得るか、または薬物送達装置100に接着された、成形された、もしくはその他の方法で固定されたラベルの一部であり得る。RFIDタグなどのような可視性を必要としない機械可読コード110の場合、機械可読コード110は、薬物送達装置110の1つ以上の構成要素に埋め込まれるか、または構成要素によって隠され得る。
【0027】
薬物送達装置100は、薬物送達装置100が未使用状態にあるときの第1の状態と、薬物送達装置100が使用済み状態にあるときの第2の状態とを有する視覚的インジケータ112をさらに含む。
図1A〜
図1Bに示されるものを含むいくつかの実施形態では、視覚的インジケータ112は、薬物送達装置100の少なくとも1つの構成要素上に設けられる色または画像である。例えば、
図1Aでは、視覚的インジケータ112は中間ハウジング104の色であり、好ましくは薬物送達装置100の残りの部分とは明確に異なる色である。例えば、主に白色および灰色である薬物送達装置100は、青色で着色された中間ハウジング104を有し得る。
図1Aの未使用状態では、視覚的インジケータ112は、中間ハウジング104の色が見えることを意味する第1の状態を有する。使用済み状態では、視覚的インジケータ112は第2の状態を有する、すなわち中間ハウジング104の色が上部ハウジング102によって覆い隠されている。したがって、薬物送達装置100は、以下でより詳細に説明するように、使用済み状態と未使用状態とが容易に区別され得る。
【0028】
視覚的インジケータ112は、中間ハウジング104全体が異なる色を含む必要はなく、薬物送達装置100全体の使用済み状態と未使用状態とを区別するのに一部のみが必要である。さらに、中間ハウジング104以外の構成要素、または中間ハウジング104に加えて他の構成要素が、視覚的インジケータ112を含み得る。さらに、視覚的インジケータ112は、単純な色ではなく、任意のタイプの認識可能かつ区別可能な画像であり得る。さらに、薬物送達装置100が使用済み状態にあるときに、
図1Bの視覚的インジケータ112は隠されるが、その逆の場合もあり得る。例えば、薬物送達装置100が未使用状態にあるときに視覚的インジケータ112が隠され、薬物送達装置100が使用済み状態に移行したときに可視状態になり得る。
【0029】
ここで
図2A〜
図2Cを参照しながら、薬物送達装置100の使用を検出および/または追跡するための方法の動作を説明する。好ましくは、ユーザは、アプリケーションを実行するためのプロセッサ(図示せず)を有するユーザ装置120を使用してネットワークを介してアプリケーションをダウンロードする、またはアプリケーションにアクセスする。ユーザ装置120は、好ましくは薬物送達装置100の1つ以上の画像を取り込むための画像センサ(図示せず)を備えたスマートフォンまたは他のモバイルもしくはパーソナルコンピューティングデバイスであるのが好ましい。例えば、機械可読コード110が電磁タグである場合、ユーザ装置120には、好ましくは、RFIDもしくはNFCリーダ回路(図示せず)のような適切な回路が装備されている。さらに、アプリケーションが光学コード(例えば、バーコード)読み取り機能を可能にし得る、またはユーザ装置120が光学コード(例えば、バーコード)読み取り機能を既に含み得る。
【0030】
このアプリケーションにより、好ましくは、ユーザが分析のために薬物送達装置100の1つ以上の画像を取り込むことができる。例えば、ユーザは、ファインダとしてユーザ装置120のディスプレイ122を使用して、薬物送達装置100の画像を取り込むために画像センサを調整することができる。ユーザを支援するために、好ましくは、使用済み状態の薬物送達装置100の形状に対応する視覚的装置輪郭線124がディスプレイ122上に設けられ得る。したがって、ユーザは、画像取り込みの前に、視覚的装置輪郭線124を薬物送達装置100と合わせる。画像取り込みは、視覚的装置輪郭線124と薬物送達装置100の適切な位置合わせの際に自動で行われ得る。あるいは、ユーザは、ボタンを押したり、ディスプレイ122に触れたりするなどして、手動で画像取り込みを開始するように促されてもよい。他の例では、ユーザは、アプリケーションの外部で画像を取り込み、メモリから画像を取り込むことができる場合もある。
【0031】
薬物送達装置100の1つ以上の画像が取り込まれると、アプリケーションは、画像の少なくとも1つを分析して、視覚的インジケータ112が第2の状態にあるかどうかを判定する。画像分析は、色、形状、テキスト、コードなどを含む特定の特徴を見つけて、識別するための従来の技術を用いて行われ得る。
図2A〜
図2Cの例では、中間ハウジング104の色が画像内に存在するかどうかが判定される。視覚的インジケータ112が第2の状態にあると判定された場合、アプリケーションは、続けて機械可読コード110から情報を取得する。一実施形態では、アプリケーションは、薬物送達装置100の以前に取り込まれた画像の1つを分析して、機械可読コード110を見つけて読み取る。他の実施形態では、アプリケーションは、機械可読コード110から情報を取得するために、ユーザ装置120で第2の画像を取得するようにユーザに促すことができる。機械可読コード110が電磁タグである実施形態では、アプリケーションは自動的に読み取りを開始することができる。いくつかの実施形態では、ユーザ装置120は、画像取り込み中に機械可読コード110からの情報を実質的に同時に読み取ることができ(例えば、バーコードは薬物送達装置の画像の取り込みの直後にデコードされ得る)、取得ステップは、視覚的インジケータ112が第2の状態にあることが確認された後に、読み取られた情報の検証を構成する。
【0032】
中間ハウジング104の色が上部ハウジング102によって覆い隠されている場合の
図2Bのように、視覚的インジケータ112が第2の状態にあると判定すると、アプリケーションは、走査が成功したというアラート130を提示することができる。アラート130は、テキスト、記号(例えば、チェックマーク)、視覚的装置輪郭線124の色の変化、これらの組み合わせなどを含み得る。走査が成功すると、アプリケーションは、自動的にデータを保存し、および/またはローカルにまたは無線もしくは有線ネットワークを介して医師または他の医療提供者のような必要な受信者に送信することができる。あるいは、アプリケーションは、ユーザが手動で必要なデータの送信を開始する別のステップを提示してもよい。
【0033】
色付き中間ハウジング104が見える状態のままである
図2Cのように、視覚的インジケータ112が第2の状態にないことを示した場合、アプリケーションは、機械可読コード110からの情報を取得することができないことをユーザに警告し、走査の前にユーザに装置の使用を指示することができる。
図2Cにおいて、視覚的装置輪郭線124は、走査が失敗したことを示すために色を赤に変える。しかしながら、テキスト、記号、これらの組み合わせなどのような他のタイプのアラートも同様に使用され得る。
【0034】
図3Aおよび3Bは、本発明の第2の好適な実施形態に係る薬物送達装置200を示す。図示されている薬物送達装置200は、上側ハウジング202と針ガード208とを有する自動注射器である。視覚的インジケータ212は、薬物送達装置200内に収容されたシリンジ(図示せず)のプランジャロッド214である。使用前状態(
図3A)では、プランジャロッド214は見えないが、使用後(
図3B)は、針ガード208の窓215を通してプランジャロッド214を見ることができる。したがって、薬物送達装置200の画像は、薬物送達装置200の使用を確認するために、視覚的インジケータ212としてのプランジャロッド214が第2の状態(すなわち、見える状態)にあるかどうかを判定するために分析される。
【0035】
図4Aおよび4Bは、本発明の第3の好適な実施形態に係る薬物送達装置300を示す。図示されている薬物送達装置300は、バレル340と、針342と、プランジャロッド344とを有する標準的な注射器である。
図4Aおよび
図4Bの視覚的インジケータ312は、2つの部分からなる構成要素である。第1の状態(
図4A)では、第1の半透明の着色リング312aがバレル340上に見え、第2の半透明の着色リング312bがプランジャロッド344の周りに見え、第1および第2のプランジャロッド312a、312bは軸方向に互いに分離されている。薬物送達装置300が使用済み状態(
図4B)へと作動された後、すなわち注射が完了した後、第1および第2の着色リング312a、312bは互いに同軸であるので、2つの色が混合される。例えば、視覚的インジケータ312が第2の状態にあるとき、2つのリング312a、312bが結合して緑色になるように、第1のリング312aは青色であり、第2のリング312bは黄色であり得る。したがって、ユーザ装置上のアプリケーションは、薬物送達装置300の画像に緑色が現れるかどうかを判定する。
【0036】
図5Aおよび5Bは、本発明の第4の好適な実施形態に係る薬物送達装置400を示す。薬物送達装置400は、ここでも手のひら作動式注射器として示されている。この実施形態は、薬物送達装置400の使用前に機械可読コード410の読み取りを防止するための追加の手段が追加されているという点で、先の実施形態とはわずかに異なる。特に、機械可読コード410は、薬物送達装置400の使用前に少なくとも2つの部分410a、410bに分割されるバーコードまたは他のタイプの光学コードである。
図5Aにおいて、機械可読コード410aの1つの部分は上部ハウジング402に配置され、機械可読コード410bの他の部分は下部ハウジング406上に配置される。薬物送達装置400が使用済み状態になると、機械可読コード410a、410bの2つの部分がまとめられて、その後、読み取られ得る。この技法は、上述の視覚的インジケータ方法の代わりに、またはそれと組み合わせて使用され得る。
【0037】
図6Aおよび6Bは、本発明の第5の好適な実施形態に係る別の方法を示す。上述した視覚的インジケータに加えて、またはその代わりに、薬物送達装置500の形状を使用して、その状態を検出することができる。例えば、
図6Aに示されている薬物送達装置500は、未使用状態のシリンジである。プランジャロッド544は、薬物送達装置500の全体の外観が引き伸ばされた形になるように、近位に完全に伸びている。
図6Bにおいて、使用済み状態では、プランジャロッド544が完全に押し下げられ、薬物送達装置500の長さが著しく短くなる。形状認識では、ユーザ装置520上で動作するアプリケーションは、使用された形状が画像から認識された場合にのみ薬物送達装置500からの情報を取得し、承認することになる。この方法は、ユーザ装置520のディスプレイ522上に視覚的装置輪郭線524を使用して支援され得る。
【0038】
例えば、
図6Aにおいて、薬物送達装置500が未使用状態である場合、薬物送達装置500のフォームファクタは視覚的装置輪郭線524と一致せず、したがって、ユーザ装置520によって取り込まれた画像の走査は不成功に終わる。しかしながら、
図6Bでは、プランジャロッド544が押し下げられ、薬物送達装置500の形状が視覚的装置輪郭線524と一致する。前述のように、その後、機械可読コード(
図6A、6Bには示されていない)からの情報を取得し、適切に記録/中継することができる。
【0039】
全ての実施形態において、機械可読コードは、情報を提供するためだけでなく、薬物送達装置全体の画像化を支援するためにも使用され得る。例えば、機械可読コードは、好ましくは、薬物送達装置が画像化のために適切に配向されていることをユーザおよび/またはユーザ装置が判定できるように配置される。機械可読コードはさらに、その寸法が一般に既知であるので、アプリケーションの較正のために使用され得、その後、薬物送達装置が使用済み状態にあるかどうかを判定するために薬物送達装置の形状を参照するのに使用され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、アプリケーションは、使用前と使用後の両方で走査を許可することができる。例えば、機械可読コードは、薬物もしくは装置情報、使用説明書などを取得するために、薬物投与前にユーザ装置によって読み取られてもよい。使用後、アプリケーションは、好ましくは、視覚的インジケータの必須の結果または形状変化のような他の使用表示によってゲートされる成功確認のために、機械可読コードを再走査することができる。いくつかの実施形態では、追加の機械可読コードまたは他のインジケータ(図示せず)を使用前の走査のために使用することができる。いくつかの実施形態では、機械読み取り可能なコードは、使用前および使用後の走査に対して異なる結果を提供するために薬物送達装置の使用によって変更されてもよい。例えば、
図5Aおよび
図5Bに示す実施形態では、機械可読コード410a、410bの片方または両方の部分は、薬物情報を取得するために使用前に走査可能であり得るが、組み合わせた機械可読コード410のみが使用を確認するために走査され得る。使用前の走査を可能にするための他の変形形態も使用され得る。
【0041】
当業者であれば、本発明の広範な発明概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更を加えることができることが理解されよう。したがって、本発明は開示されている特定の実施形態に限定されず、本発明の精神および範囲内の修正を網羅することが意図されていることが理解される。