特許第6595770号(P6595770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595770
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】水硬性組成物用分散剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20191010BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20191010BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20191010BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20191010BHJP
   C04B 24/18 20060101ALI20191010BHJP
   C08F 116/12 20060101ALI20191010BHJP
   C08F 122/02 20060101ALI20191010BHJP
   C08F 122/10 20060101ALI20191010BHJP
   C04B 103/40 20060101ALN20191010BHJP
   C04B 103/67 20060101ALN20191010BHJP
【FI】
   C04B24/26 B
   C04B24/06 Z
   C04B24/12 A
   C04B24/16
   C04B24/18 B
   C04B24/26 F
   C04B24/26 H
   C04B24/26 E
   C08F116/12
   C08F122/02
   C08F122/10
   C04B103:40
   C04B103:67
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-13612(P2015-13612)
(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公開番号】特開2016-138013(P2016-138013A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂輝
(72)【発明者】
【氏名】保坂 英生
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】田村 純夫
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−519406(JP,A)
【文献】 特開2002−338412(JP,A)
【文献】 特開2007−092062(JP,A)
【文献】 特開2008−115238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分および(B)成分を含有する、水硬性組成物用分散剤。
(A)成分:下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(I)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(II)、および下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位(III)からなる群より選ばれる少なくとも2種以上の構成単位を含有する共重合体
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。pは、0〜2の整数を表し、qは0〜1の整数を表す。A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数を表す。R4は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)
【化2】
(式中、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、−CH3または−(CH2rCOOM2を表し、−CH3または−(CH2rCOOM2は互いに他の−COOM1または−(CH2rCOOM2と無水物を形成していてもよい。無水物を形成している場合、それらの基のM1、M2は存在しない。M1およびM2は同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基または置換アルキルアンモニウム基を表す。rは0〜2の整数を表す。)
【化3】
(式中、R8、R9およびR10は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。R11は炭素原子数1〜4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。sは、0〜2の整数を表す)
(B)成分:チアゾリン系化合物、ならびに、3−アミノ−1−プロパノール、1,2−ジアミノプロパン、N−エチルアミノエチルアミン、および3−エトキシプロピルアミンからなる群より選ばれるアミン化合物を含む、防腐および/または防カビ剤
【請求項2】
(B)成分を(A)成分の重量に対して50ppm〜5000ppm含有する、請求項に記載の分散剤。
【請求項3】
水硬性組成物用分散剤が、(S)成分:スルホン酸系分散剤および/または(G)成分:遅延剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載の分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの施工性ならびに耐久性を向上させるためには、コンクリート中の単位水量を減らすことが有効である。しかしながら、単位水量を減少させると、コンクリートの流動性が低下し、作業性を損なうことが知られている。そのため、単位水量を減少した際にも、コンクリートの効率的な作業性を確保するためには、セメント粒子を分散させる働きを持つ様々な分散剤が使用されている。
【0003】
水硬性組成物用分散剤としては、特定の不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と特定の不飽和カルボン酸系単量体とを有する共重合体、例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルと(メタ)アクリル酸系単量体の共重合体(特許文献1)、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む共重合体(特許文献2)およびオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される単位と、エチレン性不飽和モノ又はジカルボン酸のエステル単量体から誘導される単位を有する共重合体(特許文献3)が挙げられる。また、複数の水硬性組成物用分散剤を用いたセメント混和剤として、例えば特許文献4には、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和モノカルボン酸系単量体のそれぞれに由来する構成単位をそれぞれ特定量含む重合体と、オキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する重合体が挙げられる。
【0004】
水硬性組成物用分散剤の原料の貯蔵方法としては、例えば、アルコキシポリアルキレングリコールを不活性ガスで置換されるかラジカル補足剤が添加された容器中で貯蔵する方法(特許文献5)、ポリアルキレングリコール系単量体を水溶液として貯蔵する方法(特許文献6及び7)、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコールを含むセメント添加剤用重合体原料を凝固点以下の温度として容器に充填し貯蔵する方法(特許文献8)が挙げられる。また特許文献5〜8には、これらの方法で貯蔵したそれぞれ特定の不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と特定の不飽和カルボン酸系単量体との共重合体を製造する方法も例示されており、原料において生成するゲルなどの不純物の生成を抑制することによって、分散剤の各種性能を向上させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−81320号公報
【特許文献2】特開昭58−74552号公報
【特許文献3】特開平10−81549号公報
【特許文献4】国際公開第2002/096823号
【特許文献5】特開2000−154049号公報
【特許文献6】特開2002−173593号公報
【特許文献7】特開2006−117946号公報
【特許文献8】特開2002−234762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献5〜8には原料の貯蔵方法が記載されてはいるものの、水硬性組成物用分散剤の製造後の保存方法については記載されていない。水硬性組成物用分散剤を貯蔵すると、カビ、菌などの生物が繁殖し、水硬性組成物用分散剤の各種性能(例えば、スランプ保持性、連行空気量安定性)低下の原因となっており、このような問題は分散剤が水分を含む場合に顕著であった。
【0007】
そこで、本発明では上記の課題を解決し、貯蔵中の生物の繁殖が抑制され、各種性能低下が抑制され、かつ分散性に優れた水硬性組成物用分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔4〕である。
〔1〕下記の(A)成分および(B)成分を含有する、水硬性組成物用分散剤。
(A)成分:下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(I)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(II)、および下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位(III)からなる群より選ばれる少なくとも2種以上の構成単位を含有する共重合体
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。pは、0〜2の整数を表し、qは0〜1の整数を表す。A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数を表す。R4は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)
【化2】
(式中、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、−CH3または−(CH2rCOOM2を表し、−CH3または−(CH2rCOOM2は互いに他の−COOM1または−(CH2rCOOM2と無水物を形成していてもよい。無水物を形成している場合、それらの基のM1、M2は存在しない。M1およびM2は同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基または置換アルキルアンモニウム基を表す。rは0〜2の整数を表す。)
【化3】
(式中、R8、R9およびR10は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。R11は炭素原子数1〜4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。sは、0〜2の整数を表す)
(B)成分:防腐および/または防カビ剤
〔2〕(B)成分が、少なくともチアゾリン系化合物を含有する、〔1〕に記載の分散剤。
〔3〕(B)成分を(A)成分の重量に対して50ppm〜5000ppm含有する、〔1〕又は〔2〕に記載の分散剤。
〔4〕水硬性組成物用分散剤が、(S)成分:スルホン酸系分散剤および/または(G)成分:遅延剤をさらに含有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の分散剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水硬性組成物用分散剤は、貯蔵後にもカビ、菌などの生物が蓄積しにくく、分解及び汚染なども抑制され、水硬性組成物用分散剤としての各種性能の低下が抑制されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について以下に説明する。これらの実施形態は、本発明の好ましい実施形態の例示であり、本発明ではこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の水硬性組成物用分散剤は、(A)成分および(B)成分を含有する。
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、共重合体(A)である。共重合体(A)は、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(I)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(II)、および下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位(III)からなる群より選ばれる少なくとも2種以上の構成単位を含有する共重合体である。
【0013】
(構成単位(I))
構成単位(I)は、一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位である。
【0014】
【化4】
【0015】
一般式(1)中のR1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。炭素原子数1〜3のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R3は、水素原子であることが好ましい。炭素原子数1〜3のアルキル基は、置換基を有していてもよい(ただし、置換基の炭素原子数はアルキル基の炭素原子数には含まれない。)。R1は、水素原子であることが好ましい。R2は、水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基であることがより好ましい。
【0016】
一般式(1)中のpは、0〜2の整数を表す。
【0017】
一般式(1)中のqは、0〜1の整数を表す。
【0018】
一般式(1)中のA1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基(アルキレングリコール単位)としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられ、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。
【0019】
上記「同一若しくは異なって」とは、一般式(1)中にA1Oが複数含まれる場合(nが2以上の場合)、それぞれのA1Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、互いに異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。一般式(1)中にA1Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在する態様、またはオキシエチレン基とオキシブチレン基とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0020】
一般式(1)中のnは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜300の整数を表す。nは、1〜100であることが好ましく、5〜100であることがより好ましく、5〜50であることがさらに好ましく、さらにより好ましくは7〜45である。平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0021】
一般式(1)中のR4は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。R4は水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基であることがさらに好ましく、水素またはメチル基であることが最も好ましい。この範囲であれば、炭素原子数が大きくなりすぎないため、水硬性組成物用分散剤の分散性が良好に発揮される。
【0022】
一般式(1)で表される単量体の製造方法としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1〜80モル付加する方法が挙げられる。この方法で製造され得る単量体としては、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテルが例示される。これらの中では、親水性および疎水性のバランスから、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテルが好ましい。
【0023】
本明細書において、「(ポリ)」は、これに続いて記載される構成要素または原料が、複数個結合している場合および/または1個のみ存在する場合を意味する。「(メタ)アリル」という場合、メタリルおよび/またはアリルを意味し、「(メタ)アクリレート」という場合、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」という場合、メタクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。
【0024】
また、一般式(1)で表される単量体の他の製造方法としては、(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタアクリレート」を意味する)などの不飽和モノカルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールとをエステル化する方法が挙げられる。この方法で製造され得る単量体としては、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレートなどの、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが例示される。これらの中では、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0025】
共重合体(A)は、構成単位(I)を1種含んでいてもよいし、互いに異なる単量体に由来する2種以上の構成単位(I)を含んでいてもよい。
【0026】
(構成単位(II))
構成単位(II)は、一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位である。
【化5】
【0027】
一般式(2)中のR5、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、−CH3または−(CH2rCOOM2を表し、−CH3または(CH2rCOOM2は、互いに他の−COOM1または−(CH2rCOOM2と無水物を形成していてもよく、無水物を形成している場合、それらの基のM、Mは存在しない。R5は、水素原子であることが好ましい。R6は、水素原子、メチル基または(CH2rCOOM2であることが好ましい。R7は、水素原子であることが好ましい。
【0028】
一般式(2)中、M1およびM2は同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基または置換アルキルアンモニウム基、である。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属であることが好ましい。
【0029】
一般式(2)中、rは0〜2の整数を表す。rは、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0030】
一般式(2)で表される単量体としては例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等およびこれらの一価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等およびこれらの一価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩等、または、それらの無水物が挙げられる。単量体(II)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
【0031】
共重合体(A)は、構成単位(II)を1種含んでいてもよいし、互いに異なる単量体に由来する2種以上の構成単位(II)を含んでいてもよい。
【0032】
(構成単位(III))
構成単位(III)は、一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位である。
【化6】
【0033】
一般式(3)中、R8、R9およびR10は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。炭素原子数1〜3のアルキル基の例は、R1、R2およびR3における例と同様である。R8は、水素原子であることが好ましい。R9は、水素原子であることが好ましい。R4は、水素原子であることが好ましい。
【0034】
一般式(3)中、R11は炭素原子数1〜4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。炭素原子数は、1〜3であることが好ましく、2〜3であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、窒素原子、リン原子、ケイ素原子が挙げられ、酸素原子が好ましい。炭素原子数1〜4の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、およびグリセリル基が挙げられる。R11が含むヘテロ原子の数は、1つであってもよいし2つ以上であってもよい。2つ以上のヘテロ原子を含む場合、それぞれのヘテロ原子は同一であってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0035】
11は、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜4の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子を含む炭素原子数1〜4の炭化水素基であることがより好ましい。該基としてはたとえば、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、およびグリセリル基が挙げられ、このうち、2−ヒドロキシプロピル基が好ましい。
【0036】
一般式(3)中、sは、0〜2の整数を表す。sは、0であることが好ましい。
【0037】
一般式(3)で表される単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸のモノエステル体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸モノエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
共重合体(A)は、構成単位(III)を1種含んでいてもよいし、互いに異なる単量体に由来する2種以上の構成単位(III)を含んでいてもよい。
【0039】
(構成単位(IV))
共重合体(A)は、構成単位(I)〜(III)とは別に、構成単位(IV)を含んでいてもよい。構成単位(IV)は、一般式(1)〜(3)で表される単量体に共重合可能な単量体に由来する構成単位である。一般式(1)〜(3)で表される単量体に共重合可能な単量体は、一般式(1)〜(3)により表される単量体とは構造上区別される。構成単位(IV)を構成する単量体は特に限定されないが、例えば、下記の各単量体を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることが可能である。
【0040】
一般式(IV−1):
【化7】
で示されるジアリルビスフェノール類、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの3および3’位アリル置換物;
【0041】
一般式(IV−2):
【化8】
で示されるモノアリルビスフェノール類、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの3位アリル置換物;
【0042】
一般式(IV−3):
【化9】
で示されるアリルフェノール;
【0043】
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;
【0044】
上記アルコールまたはアミンに、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、上記不飽和ジカルボン酸類との、ハーフエステル、ジエステル類;
【0045】
上記不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;
【0046】
マレアミド酸と、炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500とのポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
【0047】
炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;
【0048】
(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類(ただし、一般式(1)〜(3)で表される単量体を除く);
【0049】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
【0050】
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
【0051】
トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;
【0052】
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩;
【0053】
メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;
【0054】
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;
【0055】
1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類(ただし、一般式(3)で表される単量体を除く。);
【0056】
ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;
【0057】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;
【0058】
(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;
【0059】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;
【0060】
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類(ただし、一般式(3)で表される単量体を除く。);
【0061】
ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;
【0062】
(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;
【0063】
メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテルあるいはアリルエーテル類(ただし、一般式(1)で表される単量体を除く。);および、
【0064】
ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体(ただし、一般式(3)で表される単量体を除く。)。
【0065】
共重合体(A)は、構成単位(IV)を1種含んでいてもよいし、互いに異なる単量体に由来する2種以上の構成単位(IV)を含んでいてもよい。
【0066】
(共重合体A−1〜A−4)
以下に、A成分が含み得る共重合体の例を示す。以下の共重合体A−1〜A−4において、構成単位(I)〜(IV)はそれぞれ、1種類であってもよいし、少なくとも1つの構成単位が2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0067】
(共重合体A−1)
共重合体A−1は、構成単位(I)および構成単位(II)を有する。各構成単位の含有比は、好ましくは、構成単位(I)/構成単位(II)=1モル%〜99モル%/1モル%〜99モル%であり、より好ましくは、10モル%〜90モル%/10モル%〜90モル%であり、さらに好ましくは、20モル%〜80モル%/20モル%〜80モル%である。
【0068】
(共重合体A−2)
共重合体A−2は、構成単位(I)および構成単位(III)を有する。各構成単位の含有比は、好ましくは、構成単位(I)/構成単位(III)=1モル%〜99モル%/1モル%〜99モル%であり、より好ましくは、10モル%〜90モル%/10モル%〜99モル%であり、さらに好ましくは、10モル%〜80モル%/20モル%〜99モル%である。
【0069】
(共重合体A−3)
共重合体A−3は、構成単位(II)および構成単位(III)を有する。各構成単位の含有比は、好ましくは、構成単位(II)/構成単位(III)=1モル%〜99モル%/1モル%〜99モル%であり、より好ましくは、1モル%〜90モル%/10モル%〜99モル%であり、さらに好ましくは、1モル%〜80モル%/20モル%〜99モル%である。
【0070】
(共重合体A−4)
共重合体A−4は、構成単位(I)、構成単位(II)および構成単位(III)を有する。各構成単位の含有比は、好ましくは、構成単位(I)/構成単位(II)/構成単位(III)=1モル%〜99モル%/1モル%〜99モル%/1モル%〜99モル%であり、より好ましくは、10モル%〜90モル%/1モル%〜90モル%/10モル%〜90モル%であり、さらに好ましくは、15モル%〜90モル%/1モル%〜80モル%/20モル%〜90モル%である。
【0071】
(共重合体A−1〜A−4の最適な組み合わせ)
共重合体A−1〜A−4は、それぞれ1種類をA成分として用いてもよいし2種類以上をA成分として用いてもよいが、2種類以上を組み合わせてA成分として用いることが好ましい。2種類の好ましい組み合わせとその含有比は、例えば以下のとおりである:共重合体A−1/共重合体A−2=1〜99重量%/1〜99重量%、より好ましくは10〜90重量%/10〜90重量%、更に好ましくは20〜80重量%/20〜80重量%;共重合体A−1/共重合体A−3=1〜99重量%/1〜99重量%、より好ましくは1〜99重量%/1〜90重量%、更に好ましくは1〜99重量%/1〜80重量%;共重合体A−1/共重合体A−4=1〜99重量%/1〜99重量%、より好ましくは10〜90重量%/10〜90重量%、更に好ましくは20〜80重量%/20〜80重量%。3種類の好ましい組み合わせとその含有比は、例えば以下のとおりである:共重合体A−1/共重合体A−2/共重合体A−3=1〜99重量%/1〜99重量%/1〜99重量%、より好ましくは10〜90重量%/10〜90重量%/1〜80重量%、更に好ましくは20〜80重量%/20〜80重量%/1〜70重量%;共重合体A−1/共重合体A−2/共重合体A−4=1〜99重量%/1〜99重量%/1〜99重量%、より好ましくは10〜90重量%/10〜90重量%/10〜90重量%、更に好ましくは20〜80重量%/20〜80重量%/20〜80重量%;共重合体A−2/共重合体A−3/共重合体A−4=1〜99重量%/1〜99重量%/1〜99重量%、より好ましくは10〜90重量%/1〜80重量%/10〜90重量%、更に好ましくは20〜80重量%/1〜70重量%/20〜80重量%。4種類の好ましい組み合わせとその含有比は、例えば以下のとおりである:共重合体A−1/共重合体A−2/共重合体A−3/共重合体A−4=1〜99重量%/1〜99重量%/1〜99重量%/1〜99重量%、より好ましくは10〜90重量%/10〜90重量%/1〜80重量%/10〜90重量%、更に好ましくは20〜80重量%/20〜80重量%/1〜70重量%/20〜80重量%。
【0072】
<共重合体の製造方法>
共重合体(A)は、それぞれの所定の単量体を、公知の方法によって共重合させて製造することができる。該方法としては、例えば、溶媒中での重合、塊状重合などの重合方法が挙げられる。
【0073】
(反応溶媒)
溶媒中での重合において使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。原料単量体および得られる共重合体の溶解性の面から、水および低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、その中でも水を用いることがより好ましい。
【0074】
溶媒中で共重合を行う場合は、各単量体と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよいし、各単量体の混合物と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体と溶媒の混合物と、重合開始剤溶液を各々反応容器に連続滴下してもよいし、単量体の一部または全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
【0075】
(開始剤)
共重合に使用し得る重合開始剤は、特に限定されない。水溶媒中で共重合を行う際に使用し得る重合開始剤としては例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの水溶性過酸化物が挙げられる。この際、L−アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩などの促進剤を併用してもよい。低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類あるいはケトン類等の溶媒中で共重合を行う際に使用し得る重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどのパーオキサイド;クメンパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリルなどの芳香族アゾ化合物などが挙げられる。この際、アミン化合物などの促進剤を併用してもよい。水−低級アルコール混合溶剤中で共重合を行う場合に使用し得る重合開始剤は、前述の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択すればよい。重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類等重合条件によって適宜異なるが、通常50〜120℃である。
【0076】
(連鎖移動剤)
共重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整することができる。使用される連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、および、2−メルカプトエタンスルホン酸などの既知のチオール系化合物;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。共重合体の分子量調整のためには、一般式(1)〜(3)で表される単量体および構成単位(VI)を構成する単量体以外の、連鎖移動性の高い単量体(V)を用いてもよい。連鎖移動性の高い単量体(V)としては、例えば(メタ)アリルスルホン酸(塩)系単量体が挙げられる。単量体(V)の配合率は、共重合体において、通常は20重量%以下であり、10重量%以下であることが好ましい。なお、上記配合率は、共重合体を製造する際の、一般式(1)で表される単量体の配合率+一般式(2)で表される単量体由来の配合率+一般式(3)で表される単量体の配合率+構成単位(IV)を構成する単量体の配合率=100重量%としたときの配合率である。
【0077】
(中和)
共重合体(A)を得る際に水溶媒中で共重合する場合、重合時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となるが、これを適当なpHに調整してもよい。重合の際にpHの調整が必要な場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いてpHの調整を行えばよい。これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等から、リン酸を用いることが好ましい。しかし、エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するためには、pH2〜7で重合を行うことが好ましい。また、pHの調整に用い得るアルカリ性物質に特に限定はないが、NaOH、Ca(OH)2などのアルカリ性物質が一般的である。pH調整は、重合前の単量体に対して行ってもよいし、重合後の共重合体溶液に対して行ってもよい。また、これらは重合前に一部のアルカリ性物質を添加して重合を行った後、さらに共重合体に対してpH調整(例えば、pH3〜7となるように調整)を行ってもよい。
【0078】
(濃度)
(A)成分における固形分濃度には限定がないが、5重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。上限は、70重量%以下であることが好ましく、65重量%以下であることがより好ましい。したがって、(A)成分における固形分濃度は、水硬性組成物用分散剤の全重量に対して、5重量%〜70重量%であることが好ましく、15重量%〜65重量%であることが好ましい。
【0079】
共重合体(A)は、液状であってもよい。液状の場合の溶媒としては、水性溶媒が例示される。水性溶媒としては、水、炭素数1〜6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1〜6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)等が挙げられ、これらは単独又は混合して用いられてもよい。水性溶媒としては、水が好ましい。
【0080】
(A)成分は、共重合体(A)の原料である一般式(1)〜(3)のいずれかで表される単量体、及び該単量体から選ばれる1つ以上を含んでいてもよい。
【0081】
共重合体(A)を得る際には、必要に応じて反応溶媒の除去、濃縮、精製などの処理を行ってもよい。これらの処理方法は、従来公知の方法であってもよい。
【0082】
(分子量)
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、6,500以上であることが更に好ましい。これにより、水硬性組成物用添加剤を添加した際に水硬性組成物の分散性が十分発揮され、リグニンスルホン酸系またはオキシカルボン酸系などのAE減水剤を上回る減水率を得ることができ、流動性または作業性を改善することができる。重量平均分子量の上限は、60,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることが更に好ましい。これにより、水硬性組成物中の粒子の凝集作用が抑制され、作業性を良好にすることができる。重量平均分子量は、5,000〜60,000であることが好ましく、6,000〜50,000であることがより好ましく、6,500〜30,000であることがより好ましい。
【0083】
共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0以上であることが好ましく、1.20以上であることがより好ましい。上限は、3.0以下であることが好ましく、2.50以下であることがより好ましい。分子量分布は、1.2〜3.0の範囲であることが好ましい。
【0084】
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてポリエチレングリコール換算する公知の方法にて測定できる。
【0085】
GPCの測定条件として特に限定はないが、例として以下の条件を挙げることができる。後段の実施例における重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH−pak SB−806HQ、SB−804HQ、SB−802.5HQ
溶離液;0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
検量線;ポリエチレングリコール基準
【0086】
<(B)成分>
(B)成分は、防腐および/または防カビ剤(B)である。
【0087】
本明細書において、防腐とは、微生物の繁殖を抑制して腐敗を防ぐ作用を意味する。該作用は、殺菌作用であってもよく、そうでなくてもよい。防カビとは、物体の表面に菌類および/またはその菌糸の集合が発生することを防ぐ作用を意味する。(B)成分として、防腐作用のみを有する薬剤、防カビ作用のみを有する薬剤、防腐作用および防カビ作用の両方を有する薬剤のいずれも使用することができる。
【0088】
防腐および/または防カビ剤は、防腐作用および/または防カビ作用を有する成分であればよく、特に限定はない。例えば、以下の化合物が挙げられる:
ホルムアルデヒド、メチレンビスチオシアネート、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−ブチルベンゾイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどの有機窒素硫黄系化合物;
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−プロパン、ビス(トリブロモメチル)スルホンなどの有機ブロム系化合物;
4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどの有機硫黄系化合物;及び
2−クロロ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジクロロ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドなどのハロシアノアセトアミド系化合物の化合物。
【0089】
このうち、有機窒素硫黄系化合物が好ましく、チアゾリン系化合物がより好ましく、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−ブチルベンゾイソチアゾリン−3−オンがさらに好ましく、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを含有することがさらにより好ましい。
【0090】
(B)成分は、1種の防腐および/または防カビ剤成分であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。(B)成分が2種以上の防腐および/または防カビ剤成分の組み合わせである場合、該組み合わせ中に少なくとも一種のチアゾリン系化合物を含むことが好ましい。組み合わせられる他の成分として、例えば、アミン化合物(例えば、3−アミノ−1−プロパノール、1,2−ジアミノプロパン、N−エチルアミノエチルアミン、および3−エトキシプロピルアミン)、第4級アンモニウム塩(例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドおよびジデシルメチルポリオキシエチルアンモニウムプロピオネート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド、およびオルトフタルアルデヒド)、有機ブロモ化合物(例えば、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−プロパン)などのハロゲン化酢酸エステルが挙げられる。このうち、アミン化合物が好ましく、3−アミノ−1−プロパノール、1,2−ジアミノプロパンがより好ましい。
【0091】
第四級アンモニウム塩としては、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジエチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩などのジ高級アルキルジ低級アルキルアンモニウム塩、例えば、ジデシルメチルポリオキシエチルアンモニウム塩などのジ高級アルキル低級アルキルオキシアルキレン含有アルキルアンモニウム塩、例えば、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、ドデシルジエチルベンジルアンモニウム塩、ドデシルジメチル(3,4−ジクロロベンジル)アンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(C12〜C16)ジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩などの高級アルキルジ低級アルキルベンジルアンモニウム塩、例えば、ベンジルジメチル{2−[2−(p−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノキシ)−エトキシ]エチル}アンモニウム塩、ベンジルジメチル[(p−ジイソブチルフェノキシ)−エトキシエチル]アンモニウム塩などのベンジルジ低級アルキルオキシアルキレン含有アルキルアンモニウム塩、例えば、デシルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリエチルアンモニウム塩、アルキル(C12〜C18)ジメチルエチルアンモニウム塩などの高級アルキルトリ低級アルキルアンモニウム塩、例えば、N−トリエチル−N−クロロ−N’−ベンジル−N’−ドデシルグリシンアミド、セチルピリジニウム塩、2−トリデシルピリジニウム塩、1−ヘキサデシル−ピリジニウム塩、2−ドデシルイソキノリニウム塩、2−オクチル−1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウム塩、6−ドデシルオキシベンジルキノリニウム塩、ベンジルデシルピペリジニウム塩などのN−高級アルキル複素環化合物などが挙げられる。
【0092】
2種以上の防腐および/または防カビ剤成分の組み合わせとしては、特開2005−314324号公報、特開2005−314342号公報、特開2005−314343号公報及び特開2005−314344号公報に記載のチアゾリン系化合物と各アミン化合物との組み合わせ、特開平11−71211に記載のチアゾリン系化合物と第四級アンモニウム塩との組み合わせ、特開平06−65006号公報に記載のメチレンビスチオシアネートとハロゲン化酢酸エステルの組み合わせが例示される。
【0093】
(B)成分の含有量は、特に限定はないが、(A)成分の重量に対して、10ppm以上であることが好ましく、50ppm以上であることがより好ましく、100ppm以上であることがさらに好ましく、200ppm以上であることがさらにより好ましい。上限は、5000ppm以下であることが好ましく、4000ppm以下であることがより好ましく、3000ppm以下であることがさらに好ましい。したがって、本発明の水硬性組成物用分散剤は、(B)成分を(A)成分の重量に対して、10ppm〜5000ppmの範囲で含有することが好ましく、50〜5000ppmの範囲で含有することがより好ましく、100ppm〜4000ppmの範囲で含有することがさらに好ましく、200ppm〜3000ppmの範囲で含有することがさらにより好ましい。
【0094】
(B)成分がチアゾリン系化合物とアミン化合物を含む場合、チアゾリン系化合物の含有割合は6〜40重量%であることが好ましく、10〜33重量%であることが好ましい。アミン化合物の含有割合は、7〜47重量%であることが好ましく、11〜36重量%であることがより好ましい。
【0095】
(B)成分がチアゾリン系化合物とアミン化合物を含む場合、水硬性組成物分散剤はさらに、エチレングリコール又はプロピレングリコールを含むことが好ましい。これにより、(B)成分を安定化させることができる。エチレングリコール又はプロピレングリコールの含有量は、チアゾリン系化合物及びアミン化合物に対し1〜10重量%であることが好ましい。
【0096】
(A)成分と(B)成分の含有形態は、(A)成分の濃度が75重量%以下の水溶液に(B)成分を混合することが好ましい。(A)成分の濃度が5〜70重量%である水溶液に(B)成分を混合することがより好ましい。(A)成分としては、共重合体A−1〜A−4のそれぞれ1種類をA成分として用いてもよいし2種類以上をA成分として用いてもよい
【0097】
<(S)成分>
本発明の水硬性組成物用分散剤は、(S)成分:スルホン酸系分散剤を含有してもよい。(S)成分としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、およびリグニンスルホン酸塩が挙げられる。(S)成分は、1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。(S)成分の含有量は、(A)成分に対して0.01重量%〜50重量%であることが好ましい。
【0098】
<(G)成分>
本発明の水硬性組成物用分散剤は、(G)成分:遅延剤を含有してもよい。これにより、水硬性組成物の水和反応を遅らせ、凝結に要する時間を延長することができる。
【0099】
遅延剤としては、例えば、グルコン酸、グルコン酸塩、クエン酸、クエン酸塩等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類が挙げられる。(G)成分は、1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。(G)成分の含有量は、(A)成分に対して0.01重量%〜50重量%であることが好ましい。
【0100】
<任意成分>
本発明の水硬性組成物用分散剤は、本発明の効果を妨げない範囲において、上記の(A)、(B)、(S)および(G)成分以外の任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、水溶性高分子、硬化促進剤、増粘剤、高分子エマルジョン、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、消泡剤、AE剤、界面活性剤などの公知のコンクリート用添加剤が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。
【0101】
水溶性高分子としてはポリアルキレングリコール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリブチレングリコール等が挙げられる。水溶性高分子の含有量は、(A)成分に対して、0.01重量%〜50重量%であることが好ましい。
【0102】
硬化促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類が挙げられる。硬化促進剤は、1種であってもよく2種以上の組み合わせであってもよい。硬化促進剤の含有量は、(A)成分に対して、0.01重量%〜50重量%であることが好ましい。
【0103】
増粘剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、公知のセルロースナノファイバー、公知のセルロースナノクリスタルが挙げられる。増粘剤は、1種であってもよく2種以上の組み合わせであってもよい。増粘剤の含有量は、(A)成分に対して、0.01重量%〜50重量%であることが好ましい。
【0104】
本発明の水硬性組成物用分散剤は、生物の繁殖が抑えられており、細菌、微生物等の含有量が少ないか、実質的に含有していない。剤中の生菌数を一律に特定することは困難であるが、培養は36℃、相対湿度80%の条件で、培養期間それぞれ10日、20日、30日間保管した後、JIS K 0350−10−10に記載の方法で測定された一般細菌の生菌数が、水硬性組成物用分散剤1mL中103個以下であることが好ましい。一般細菌とは、JIS K 0350−10−10に記載された定義された細菌と同一であり、標準寒天培地を用いて36±1℃で24±2時間培養したとき、培地に集落を形成するすべての細菌である。
【0105】
<水硬性組成物用分散剤の使用形態>
本発明の水硬性組成物用分散剤は、水溶液の形態、あるいは乾燥させて粉体化した形態で使用することが可能である。また、セメント粉末、ドライモルタルのような、セメント組成物を構成する水以外の成分に、粉体化した形態の本発明の水硬性組成物用分散剤を予め混合しておいて、左官、床仕上げ、グラウト等の際に水を添加して用いるプレミックス製品として用いることもできる。
【0106】
本発明の水硬性組成物用分散剤は、セメント等の水硬性材料に添加してセメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等の水硬性組成物として利用することができる。
【0107】
本発明の水硬性組成物は、上記水硬性組成物用分散剤を含有すればよく、組み合わせる水硬性材料は特に限定されない。水硬性材料としては、例えば、セメント、石膏(半水石膏、二水石膏など)、ドロマイトが例示される。最も一般的な水硬性材料はセメントである。
【0108】
セメントとしては、特に限定はない。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩およびそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられる。セメントには、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体、石膏などが添加されていてもよい。
【0109】
また、水硬性組成物は骨材を含んでいてもよい。骨材は、細骨材および粗骨材のいずれであってもよい。骨材としては、例えば、砂、砂利、砕石;水砕スラグ;再生骨材等;珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が挙げられる。
【0110】
上記水硬性組成物における上記水硬性組成物用分散剤の配合割合については、特に限定はない。例えば、水硬性組成物が、モルタルまたはコンクリートである場合には、水硬性組成物用分散剤に含まれる共重合体(A)の添加量(配合量)が、水硬性材料(セメント)の全重量に対して、0.01〜5.0重量%、であることが好ましく、0.02〜2.0重量%であることがより好ましく、0.05〜1.0重量%であることがさらに好ましい。これにより、得られるセメント組成物には、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01重量%以上であると、得られる水硬性組成物(セメント組成物)が性能的に充分なものとなり得る。5.0重量%以下であることにより、添加量に見合った効果を得ることができ、経済的である。
【0111】
上記の水硬性組成物は、例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等のコンクリートとして有効である。さらに、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルまたはコンクリート、としても有効である。
【実施例】
【0112】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中特に断りの無い限り%は重量%を、また、部は重量部を示す。
【0113】
<製造例A1−1>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水5,010kg、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数30)(3MBO)5,000kg(21モル%)を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、アクリル酸(AA)1,000kg(79モル%)および水5,010kgを混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム120kgおよび水1880kgの攪拌混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させた。その後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、80℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH6に中和すると同時に加水することで、濃度30%の共重合体(重量平均分子量Mw20,200、Mw/Mn1.7)の水溶液(A1−1)を得た。
【0114】
<製造例A1−2>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水7,000kg部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。その後、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(MPEG−MA)(エチレンオキサイドの平均付加モル数18)6,300kg(30モル%)、メタクリル酸(MA)1,400kg(70モル%)、水1,470kg、および3−メルカプトプロピオン酸56kgを混合したモノマー水溶液と、過硫酸ナトリウム70kgおよび水2,030kgの攪拌混合液を各々2時間で、75℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を75℃に保持した状態で1時間反応させた。その後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、65℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH6に中和すると同時に加水することで、濃度30%の共重合体(重量平均分子量Mw26,000、Mw/Mn2.0)の水溶液(A1−2)を得た。
【0115】
<製造例A2−1>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水5,010kg、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物(3MBO)(エチレンオキサイドの平均付加モル数30)5,000kg(26モル%)を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)1,350kg(74モル%)および水5,010kgを混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム120kgおよび水1,880kgの攪拌混合液とを、各々2時間で、90℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させた。その後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、80℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH4に中和すると同時に加水することで、濃度30%の共重合体(重量平均分子量Mw22,200、Mw/Mn1.7)の水溶液(A2−1)を得た。
【0116】
<製造例A3−1>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水5,010kgを仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、アクリル酸(AA)1,300kg(63モル%)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)1,350kg(37モル%)および水5,010kgを混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム120kgおよび水1,880kgの攪拌混合液とを、各々4時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を80℃に保持した状態で1時間反応させた。その後、反応容器の後段に位置する追加装置にて濃縮を行い、水酸化ナトリウムでpH4に中和することで、濃度40%の共重合体(重量平均分子量Mw12,200、Mw/Mn1.4)の水溶液(A3−1)を得た。
【0117】
<製造例A4−1>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水4,440kg、および、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数37、プロピレンオキサイドの平均付加モル数3、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加)(PEG−AL)2,820kg(5モル%)を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸(MA)1,050kg(40モル%)、アクリル酸(AA)150kg(7モル%)、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25)(MPEG−MA)1,890kg(5モル%)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)1,800kg(43モル%)、3−メルカプトプロピオン酸240kg、水4,950kgを混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム90kgおよび水1,410kgの攪拌混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させた。その後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、80℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH4に中和すると同時に加水することで、濃度40%の共重合体(重量平均分子量Mw11,100、Mw/Mn1.5)の水溶液(A4−1)を得た。
【0118】
【表1】
【0119】
(表1の脚注)
3MBO:3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物
PEG−AL:ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル
MPEG−MA:メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート
AA:アクリル酸
MA:メタクリル酸
HPA:2−ヒドロキシプロピルアクリレート
【0120】
<製造例B1>
特開2005−314324号公報の配合例1に従い、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:33%;3−アミノ−1−プロパノール:30%;及び蒸留水:37%、を配合し、防腐および/または防カビ剤(B1)を得た。
【0121】
<製造例B2>
特開2005−314342号公報の配合例2に従い、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:10%;1,2−ジアミノプロパン:40%;プロピレングリコール:10%;及び、蒸留水:40%を配合し、防腐および/または防カビ剤(B2)を得た。
【0122】
<製造例B3>
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:100%を防腐および/または防カビ剤(B3)として。
【0123】
<実施例1〜10、比較例1〜5>
(培養後生菌数の測定)
JIS K 0350−10−10に記載の方法にて表2のA及びB成分の各組み合わせを添加した培地における一般細菌の生菌数を測定した。培養は36℃、相対湿度80%にて、培養期間は10日、20日、30日とした。B成分はA成分に対して500ppm添加した。A成分培養初期(培養開始時)及び各培養期間経過後の試験結果を表2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
(コンクリート試験)
環境温度(20℃)において、表3のように配合した粗骨材、細骨材、セメント、水および表3に示すセメント混和剤を投入して強制二軸ミキサによる機械練りにより90秒間練混ぜた(セメント混和剤は水に混合させて投入した)。その後、コンクリートの排出直後にフレッシュコンクリート試験(スランプ試験JISA1101(フレッシュコンクリートの広がりをフロー値として測定)、空気量JISA1128)を行った。試験結果を表4に示す。
【0126】
【表3】
【0127】
C:以下のセメント3種を等量混合
普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(株式会社トクヤマ製、比重3.16)
W:水道水
S1:大分県津久見産石灰砕砂(細骨材、比重2.66)
S2:山口県周南産砕石砕砂(細骨材、比重2.66)
G1、G2山口県岩国産砕石(粗骨材、比重2.73、2.66)
セメント混和剤(固形分換算):表2の培養30日経過後サンプルを使用
【0128】
【表4】
【0129】
表4中、セメント混和剤の「添加量」は、セメントに対する(A)成分の固形分濃度を示す。また、SLFはスランプフローをそれぞれ示す。
【0130】
(S)成分および(G)成分として下記のものを使用した
(S)成分:リグニンスルホン酸ナトリウム(日本製紙株式会社製、商品名: サンフローRH)
(G)成分:グルコン酸ナトリウム(扶桑化学工業株式会社製、商品名:C−PARN)
【0131】
【表5】
【0132】
表5中、セメント混和剤の「添加量」は、セメントに対する(A)成分の固形分濃度を示す。また、SLFはスランプフローをそれぞれ示す。
【0133】
表2から明らかなように、(A)及び(B)成分を含む実施例1〜10の分散剤の生菌数は、(A)成分のみを含む比較例1、3、5、7及び9と比較して低く、30日経過後も初期を下回っていた。また、比較例1、3、5、7及び9の分散剤では20日後に腐敗臭が確認されたのに対し、実施例1〜10の分散剤では30日経過後も腐敗臭が確認されなかった。表から明らかなように、(A)及び(B)成分を含む実施例1〜10の分散剤を添加して得られるコンクリートは、それぞれに対応する(A)成分のみを含む比較例と比較して、SLF及びフロー残存率が高く、60分経過後も変動が少なかった。また、比較例における空気量が時間経過後に増加する傾向にあったが、実施例における空気量は変動がほとんどなかった。これらの結果は、本発明の水硬性組成物用分散剤が、カビ、菌などの生物の繁殖が抑制され、これによりスランプ保持性及び連衡空気量安定性などの性能が良好であることを示している。