(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態による電線束の束径算出装置(束径算出装置)10は、入力装置、制御装置及び出力装置の間を接続するハーネスで構成される配線システムの電線束の束径を算出するシステムであり、算出の対象となるハーネスを特定することで、当該ハーネスの電線束の束径を算出するものである。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る束径算出装置10は、入力部1と、処理部3と、記憶部5と、表示部7と、を備えている。束径算出装置10は、パーソナルコンピュータ、その他のコンピュータ装置により構成することができる。
また、束径算出装置10は、配線描画システム20と接続されている。配線描画システム20もまた、コンピュータ装置により構成される。
ここで、ハーネスは、コネクタと電線束(バンドル)で構成されるアセンブリである。各電線はコネクタのピン(又は端子)とそれぞれ電気的に接続されている。
【0012】
[束径算出装置10の構成概要]
入力部1は、束径算出装置10にて束径の算出を行うのに必要な指示を入力する部位である。入力部1は、コンピュータの入力装置としてのキーボードにより構成することができる。
処理部3は、入力部1からの指示に従って記憶部5に記憶された情報を読み出して、電線束の束径算出を行うために必要な処理を行うとともに、算出結果を表示部7に表示させる。
【0013】
記憶部5は、電線束の束径算出を行うのに必要な種々の情報を記憶する複数のデータベースを備えている。これらのデータベースは、
図1(b)に示すように、接続情報データベース51と、部品情報データベース52と、バンドル接続情報データベース53と、算出結果データベース54と、を備えている。なお、記憶部5をこれらのデータベースに区分しているが、これは説明の理解を容易にするためであり、必要な情報が含まれている限り区分は任意であるとともに、記憶部5が物理的に区分されることを示すものではない。また、記憶部5は、これらのデータベースの他に種々の情報を記憶する部分を備えていてもよい。例えば、処理部3が電線束の束径算出を行うために必要なアルゴリズムを記憶する部位が該当する。
表示部7は、処理部3により処理された結果を表示する。表示部7は、コンピュータの表示装置としてのディスプレイにより構成される。
【0014】
[配線描画システム20の概要]
配線描画システム20は、CAD(Computer Aided Design)21を備える。CAD21は、配線設計作業にともなうシステム構成要素に関する接続・位置情報を取得して、配線接続図(Wire Harness Diagrams、WHD)、及び、結線図(Wiring Diagrams、WD)を作成する。ここで、WHDはコネクタとバンドル(バンドルセクション、ノードを含む)との接続関係が図示されたものであり、WDはハーネスに含まれる電線とコネクタとの接続関係が図示されたものである。
CAD21は、取得したWHD、WDから電線−コネクタ接続情報を生成して束径算出装置10の接続情報データベース51に提供する。接続情報データベース51は、CAD21から提供される電線−コネクタ接続情報を記憶する。
【0015】
[配線例]
本実施形態において電線束の束径算出を行うハーネスの一例を
図2に示す。この配線例は、上述した配線接続図(WHD)に該当する。なお、ここでは、理解を容易にするために、配線例を構成する要素であるコネクタ及びバンドルを最小限に留めているが、本実施形態を大規模な配線システムに適用することができる。
図2のハーネスWH1は、コネクタC1、コネクタC2、コネクタC3及びコネクタC4の4つのコネクタの相互間がバンドルB1、バンドルB2、バンドルB3、バンドルB4及びバンドルB5並びに中継点A1及び中継点A2を介して接続されている。なお、ここでは、末端部分が全てコネクタだけを示しているが、これらのコネクタC1〜C4は、通常、入力装置、制御装置及び出力装置などの機器に付随、或いは、複数のハーネスをお互いに接続する中継コネクタに付随している。また、中継点A1〜A2は、複数バンドルが分岐、合流する位置の識別情報である。
【0016】
ハーネスWH1において、コネクタC1とコネクタC2は、それぞれがバンドルB1とバンドルB2により接続されている。バンドルB1は中継点A1のピン3に繋がれ、また、バンドルB2は中継点A1のピン2に繋がれることで、中継点A1がバンドルB1とバンドルB2の経由地又は接点となる。
同様に、中継点A1と中継点A2は、バンドルB3により接続され、バンドルB3は、一端が中継点A1のピン1に繋がれ、他端が中継点A2のピン1に繋がれている。
コネクタC3は、バンドルB4に接続される。バンドルB4は、一端が中継点A2のピン3に繋がれ、他端がコネクタC3に繋がれている。
コネクタC4は、バンドルB5に接続される。バンドルB5は、一端が中継点A2のピン2に繋がれ、他端がコネクタC4に繋がれている。
バンドルB1〜バンドルB5は、それぞれが複数の電線を含んでいるが、これについては後述する。
【0017】
[電線束の束径算出]
以下、ハーネスWH1に関する電線束の束径算出について、
図3〜
図8を参照して説明する。
はじめに、
図8を参照して、電線束の束径算出の処理手順の概要を説明する。
一連の手順は、電線束の束径の算出を行うハーネスの識別情報(以下、ハーネスID)を入力部1から入力することで処理が開始される(
図8 S101)。ハーネスIDは、それぞれのハーネスを識別するために付与された情報であり、ここでは、
図2の配線例にしたがって「WH1」というハーネスIDが入力される。入力されたハーネスIDは、処理部3に送られる。
処理部3は、ハーネスIDを取得すると、記憶部5の接続情報データベース51から当該ハーネスID(WH1)に対応する電線−コネクタ接続情報を読み出す(
図8 S103,
図3)。また、処理部3は、読み出した電線−コネクタ接続情報と照合することにより、記憶部5の部品情報データベース52から、ハーネスWH1に属するコネクタC1〜C4及び電線W1〜W13のそれぞれの部品情報を読み出す(
図8 S105,
図4)。
【0018】
次に処理部3は、記憶部5のバンドル接続情報データベース53からハーネスWH1のバンドル接続情報を読み出す(
図8 S107,
図5)。
図5に示すように、バンドル接続情報は、それぞれのバンドルB1〜B5の単位で、その両端に接続されるコネクタ及び中継点がバンドルと対応付けられたものであり、バンドル単位の長さも得られるものである。
【0019】
処理部3は、以上の情報を読み出すと、バンドル接続情報(
図5)と電線−コネクタ接続情報(
図3)とを照合して、それぞれのバンドルに含まれる電線種別ごとの本数をカウントする(
図6)。そして、処理部3は、バンドルB1〜B5のそれぞれに属する電線の種別ごとの本数が判明すると、
図4に示す部品データにおける電線♯W1〜♯W4の線径d1〜d4を参照して、バンドルB1〜B5のそれぞれの直径(Bundle Size)、所謂、束径を算出する(
図8 S109,
図7)。
【0020】
束径Dの算出は、例えば、以下のように、線径の異なる複数種の電線を含む場合と、線径の等しい同一種類の電線を含む(6本以下の場合)場合とに区分して計算できる。
複数種:D=1.154×(d
2AN
A+d
2BN
B+d
2CN
C…)
1/2
D;バンドルの束径
d
A,d
B,d
C…;電線A,B,C…のそれぞれの線径(直径)
N
A,N
B,N
C…;電線A,B,C…のそれぞれの本数
同一種:D=1.154×(d
2AN
A+d
2BN
B+d
2CN
C…)
1/2
D=2d(2本の場合),D=2.155d(3本の場合)
D=2.414d(4本の場合),D=3d(5本,6本の場合)
d;電線の線径(直径)
【0021】
以下、
図8のS103以降の各ステップの具体的な内容を、以下順に説明する。
[電線−コネクタ接続情報の読み出し(
図8 S103,
図3)]
電線束の束径算出を行う際に、処理部3が接続情報データベース51から読み出す電線−コネクタ接続情報は、それぞれのハーネスに属する電線と、それぞれの電線の両端に直接接続されるコネクタと、それぞれの電線が他の電線及びコネクタを介して最終的に接続されるコネクタと、が対応付けられた情報である。
図3は、ハーネスWH1に関する電線−コネクタ接続情報を示している。
図3の例は、ハーネスWH1に13本の電線が属している。その中で、「W1」というWIRE IDが付与された電線の両端に接続される一対のコネクタには、それぞれ、「C1」、「C2」というコネクタIDが付与されている。
電線−コネクタ接続情報は、それぞれの電線W1〜W13が、コネクタC1〜C4のいずれのピン(端子)に接続されるのかの情報(PIN−1,2の欄)を含んでいる。
また、電線−コネクタ接続情報は、それぞれの電線W1〜W13の長さ(Lengの欄)、電線の種別(WIRE CODE)及びコネクタの種別(CON. CODE)を含んでいる。
【0022】
図3に示す電線−コネクタ接続情報において、電線W1は、コネクタC1とコネクタC2を接続し、その長さがL1、電線の種別が♯W1、それぞれのコネクタの種別が♯C1,♯C2であることが示されている。また、電線W9は、コネクタC2とコネクタC3を接続し、その長さがL4、電線の種別が♯W9、それぞれのコネクタの種別が♯C2,♯C3であることが示されている。
【0023】
[部品情報の読み出し(
図8 S105,
図4)]
図4に示すように、記憶部5から読み出される部品情報は、電線の種別と線径dが対応付けられたものと、コネクタの種別と使用ピン番号が対応付けられたものである。
図4は、例えば、種別が♯W1の電線は線径dがd1であること、種別が♯C1のコネクタは使用ピンが、1ピン〜8ピンであることを示している。
【0024】
[バンドルB1〜B4の束径算出(
図8 S109,
図5〜
図7)]
前述したように、ワイヤハーネスを艤装設計する場合には、電線については電線の束であるバンドルの直径(束径)を考慮する必要があり、束径の算出は、ハーネスの引き回しが実際にできるかを判断する上で、有効である。そこで、電線−コネクタ接続情報(
図3)とバンドル接続情報(
図5)とを照合し、各バンドルを形成する電線の種別と本数を求めた後に、バンドルB1〜B5の束径を算出する。
バンドル接続情報は、
図5に示すように、それぞれのバンドルB1〜B5の単位で、その両端に接続されるコネクタ及び中継点がバンドルと対応付けられたものである。
図5において、例えばバンドルB1は、コネクタC1と中継点A1の間に配置されることが示されている。
【0025】
そして、本数のカウントは以下のようにして行う。まず、対をなすコネクタ(END1,END2)を
図6のように列挙する。ここで、コネクタC1とコネクタC2の関係を示しているNo.1を例にすると、
図3に示すようにコネクタC1とコネクタC2を接続するのは電線W1、W2及びW3であり、一方、
図5に示すようにコネクタC1とコネクタC2の間には、中継点A1を介して、バンドルB1とバンドルB2が介在している。したがって、電線W1、W2及びW3のいずれもバンドルB1とバンドルB2に属するので、バンドルB1には3本の電線が属し、また、バンドルB2にも3本の電線が属する。そして、
図3に示すように、電線W1、W2及びW3のいずれもWIRE CODEが♯W1であるから、バンドルB1において、♯W1で識別される電線の本数は3本、バンドルB2において、♯W1で識別される電線の本数は3本である。
同様に、コネクタC1とコネクタC3の関係のNo.2を例にすると、コネクタC1とコネクタC3を接続するのは電線W4、W5であり、コネクタC1とコネクタC3の間には、中継点A1、A2を介して、バンドルB1、バンドルB3及びバンドルB4が介在している。したがって、電線W4、W5のいずれもバンドルB1、バンドルB3及びバンドルB4に属するので、バンドルB1、バンドルB3及びバンドルB4のいずれにも2本の電線が属する。そして、
図3に示すように、電線W4はWIRE CODEが♯W1であり、電線W5はWIRE CODEが♯W2であるから、バンドルB3及びバンドルB4のそれぞれにおいて、♯W1で識別される電線の本数が1本、♯W2で識別される電線の本数が1本である。以上のようにして求めた、対をなすコネクタとのそこに介在するバンドルごとの電線の本数を
図6に示す。
【0026】
処理部3は、バンドルB1〜B5のそれぞれに属する電線の種別ごとの本数が判明すると、その電線の本数を種別ごとに集計し、
図4に示す部品データにおける電線♯W1〜♯W4の線径d1〜d4を参照して、バンドルB1〜B5のそれぞれの直径(Bundle Size)を算出する。その結果を
図7に示すが、バンドルB1〜B5のそれぞれと当該直径(Bundle Size)とが対応付けて示されている。
【0027】
最終的な算出結果は、表示部7に表示され、ワイヤハーネスの設計者は、この算出結果を参照して、現時点での設計が適切か否かの判断を行うことができる。仮に算出された束径が、必要とされる基準を満たしていなければ、設計を見直し、その結果を電線−コネクタ接続情報に反映させる。つまり、用いる電線の種別を替えるといった設計変更を行い、電線−コネクタ接続情報を書き換える。その後、以上と同様に、束径の算出を行って、設計の適否を評価する。
【0028】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態によると、電線−コネクタ接続情報が種別情報を含み、種別情報をもとに部品データベースに記述される部品情報を紐付けることで、当該ハーネスにおける全てのバンドル部位の束径を容易に算出できる。この算出結果を解析対象のシステムに含まれる全てのハーネスについて行うことで、当該システムの配線の設計の妥当性を確認できる。
また、設計変更を行ったとしても、電線−コネクタ接続情報に設計の変更を反映させておけば、以後も、同様に当該ハーネスにおける束径を算出できる。
【0029】
また、本実施形態によると、接続情報データベース51が電線−コネクタ接続情報が電線とコネクタのそれぞれの種別情報を備え、部品情報データベース52が電線とコネクタのそれぞれの部品情報を備えているので、束径を容易に算出することができる。
【0030】
図5に示したバンドル接続情報を備えておくことにより、それぞれのバンドルに属する電線の本数を数えることができるようになり、その結果として束径の算出を可能とした。
また、電線−コネクタ接続情報が電線の種別情報を備え、かつ、部品情報データベース52が電線の線径dに関する情報を備えているので、電線種別ごとの本数をカウントできるとともに、複数種の電線が属するバンドルの束径を算出することができる。
【0031】
以上、本発明を本実施形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
以上の例では、最終的な算出結果を表示の対象としたが、処理部3の処理手順により生成される情報を、表示部7に逐次表示させることもできる。
また、本実施形態の説明に用いた配線例はあくまで一例であり、他の配線例についても本発明を適用できることは言うまでもない。
また、本発明に適用される装置、機器類に制限はなく、末端装置及び中継装置がケーブルにより接続された種々の装置、機器に本発明を適用することができる。