特許第6595800号(P6595800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595800
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】欠損検査装置、及び欠損検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   G01N21/952
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-103003(P2015-103003)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-217877(P2016-217877A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋文
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂
(72)【発明者】
【氏名】菅原 努
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−047618(JP,A)
【文献】 特開2002−314982(JP,A)
【文献】 特開2006−214890(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0267887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向から照明された円柱状の検査対象を回転軸を軸にして回転させながら前記回転軸の方向に沿った側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力する撮像部と、
前記撮像部が撮像した前記検査対象の一周分の前記一次元画像の合成画像を示す側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成し、該側面展開画像と予め作成した正常な検査対象に対応した側面展開画像を示す基準画像の各画素の多値データを所定の計算式に適用して求めた相関値に基づき、前記検査対象の欠損を検出する制御部と、
を備えた欠損検査装置であって、
前記計算式は、前記各画素の座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を標準偏差で割った式において、前記標準偏差を、前記相関演算範囲毎に前記検査画像と前記基準画像のうちの大きい方の画素値を使用するように変形したものである、
ことを特徴とする欠損検査装置。
【請求項2】
前記計算式は、相関値F2(α、β)=
Σ((Xi'j'-X)*(Yi'j'-Y))/Σ(Max(Xi'j'-X、Yi'j'-Y))
ここで、
(α、β)は、前記検査画像と前記基準画像との相関を求める画素の座標位置、
相関値F2(α、β)は、座標位置(α、β)の画素に対する相関値、
Xは、前記検査画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、
Yは、基準画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、
Xi'j'は、検査画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルであって、ここで、i'=i+α、
j'=j+β、(i、j)は、検査画像の相関演算する範囲内の座標であり、
Yi'j'は、基準画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルであって、ここで、i'=i+α、
j'=j+β、(i、j)は、基準画像の相関演算する範囲内の座標であり、
Max()は、()内を比較してレベルの高い方を求める演算を示し、
Σは、相関演算する範囲内の総和である、
ことを特徴とする請求項1記載の欠損検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、円柱状の前記検査対象を前記回転軸を軸にして回転させながら前記撮像部に複数の前記一次元画像を撮像させ、これらの前記一次元画像に基づき前記側面展開画像を作成する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の欠損検査装置。
【請求項4】
所定の方向から照明された円柱状の検査対象を回転軸を軸にして回転させながら前記回転軸の方向に沿った側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力し、
前記撮像した前記検査対象の一周分の前記一次元画像の合成画像を示す側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成し、
該側面展開画像と予め作成した正常な検査対象に対応した側面展開画像を示す基準画像の各画素の多値データを所定の計算式に適用して求めた相関値に基づき、前記検査対象の欠損を検出する欠損検査方法であって、
前記計算式は、前記各画素の座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を標準偏差で割った式において、前記標準偏差を、前記相関演算範囲毎に前記検査画像と前記基準画像のうちの大きい方の画素値を使用するように変形したものである、
ことを特徴とする欠損検査方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠損検査装置、及び欠損検査方法に関し、円柱状の検査対象の欠損を検出することができる欠損検査装置、及び欠損検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工工具により加工対象物を加工する工作機械等の機械により、加工対象物に切削などの加工を行う際に、加工工具に摩耗や欠け落ちなどの欠損が発生することがある。加工工具に欠損が発生すると加工対象物の加工精度が悪化する等の悪影響を及ぼす。これを避けるため、欠損が発生しているか否かを検査し、欠損が発生していない加工工具を使用するようにする必要がある。
【0003】
加工工具に欠損が発生しているか否かを検査する技術が特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示の工具欠陥検査装置は、カメラと、画像処理装置とを有する。カメラは、ドリル刃、タップ等のスローアウェイチップ(ワーク)を二次元の多値画像(検査像)として撮像する。画像処理装置は、正常なワークを用いて予め作成しておいた基準となる画像(基準像)とカメラが撮像した検査像とを比較して欠陥部分を抽出し、欠陥の有無を判定する。
【0004】
まず、画像処理装置は、検査対象のワークの画像に対する照合用に、予め基準像を記憶しておく。そして、ワークを撮像したカメラからワークの輪郭及び表面像から成る検査像を取得する。そして、検査対象のワークの検査像に対して、照合用に予め用意された基準像の明度をネガポジ反転し、検査像を基準像と重ね合わせて差分をとり、画素毎に平均をとる。この処理により、基準像と検査像の共通の明度値の画素データは全て打ち消しあって中間濃度となる。そして、基準像と検査像で異なる明度値であった、明度が異常な画素値が差異成分として残り、この差異成分が中間濃度の部分との間のコントラストにより明瞭に分かる。そして、差異成分に基づく差分像を二値化して抽出二値化像を得る。抽出二値化像内の異常画素値を示す部分(欠陥候補)の面積または寸法が、規定範囲値を越えた場合欠陥があると判定する。これにより、面状の欠陥やスクラッチ傷等の線状の欠陥も検知するようにしている。
【0005】
このように、特許文献1に開示の技術はカメラで二次元画像を撮像し、この画像に基づき欠陥の有無を判定している。このため、特許文献1に開示の技術を、側面に加工刃等を有する円柱状のワークに適用した場合、二次元画像からワークの欠陥を検出するために、カメラの撮像方向を円柱状のワークの側面に合せる必要がある。このとき、通常、円柱状のワークの側面のカメラの最近部にピントを合わせて撮像するのでカメラの最近部以外はピントがボケる。このため、ワーク側面の全体をピントを合わせて撮像するためには、円柱状のワークを停止させて側面の一部にピントを合わせて撮像するといった処理をワークの一周分行う必要がある。このため、ワーク側面全体を撮像するために測定時間が長くなるという問題がある。
【0006】
この問題を回避することができる、円柱状の検査対象に欠陥が発生しているか否かを検査する技術が特許文献2に開示されている。特許文献2に開示のネジの外観不良の検査装置は、円柱状であるネジを回転させながら、ラインセンサでネジを軸方向に沿ってその側面を撮像して一次元の明暗図形を取得する。そして、ネジの側面を全域(一周分)にわたって撮像しこれを合成して二値化された二次元の側面展開画像を作成する。そして、この側面展開画像を正常なネジの側面展開画像と比較し、欠陥が発生しているか否かを判定する。
【0007】
このように、特許文献2に開示の技術は、ラインセンサを用いて、ネジを回転させながら連続的に撮像して二値化された二次元の側面展開画像を作成し、これに基づきネジの欠陥を検出する。このため、測定時間が長くならずにネジ(検査対象)の欠陥を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−278915号公報
【特許文献2】特開昭61−076941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に開示の工具欠陥検査装置は、二次元の多値画像を検査像とし、多値画像のままこの検査像と基準像との差分をとる。そして、その後二値化して抽出二値化像を作成し、この抽出二値化像内に規定範囲値以上の面積または寸法のものがあった場合に欠陥があると判定している。
【0010】
このため、例えば規定範囲値に近い規定範囲値以内の面積または寸法のもの(準欠陥)が、抽出二値化像内に多数あっても欠陥があると判定されないといった問題がある。このように場合には、このワークを使用すると加工対象物に対し加工精度が落ちる等の悪影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
また、上述した特許文献2に開示のネジの外観不良の検査装置は、ラインセンサを用いて、円柱状であるネジを回転させながらその側面を連続的に撮像して二値化された二次元の側面展開画像を作成し、これに基づきネジの欠陥を検出する。このため、測定時間が長くならずに円柱状のワーク(ネジ)の欠陥を検出できる。
【0012】
しかし、この装置は、二値化された側面展開画像により欠陥の発生を検出しているので、二値化閾値以下の微小な欠陥は検出できないという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、上記課題を解決して、円柱状のワークに対し、測定時間が長くならずに、微小欠陥(欠損)を検出でき、準欠陥が多数あっても欠陥がないと判定されるおそれのない欠損検査装置、及び欠損検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の欠損検査装置は、所定の方向から照明された円柱状の検査対象を回転軸を軸にして回転させながら前記回転軸の方向に沿った側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力する撮像部と、前記撮像部が撮像した前記検査対象の一周分の前記一次元画像の合成画像を示す側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成し、該側面展開画像と予め作成した正常な検査対象に対応した側面展開画像を示す基準画像との相関値に基づき、前記検査対象の欠損を検出する制御部と、を備えている。
【0015】
本発明の欠損検査方法は、所定の方向から照明された円柱状の検査対象を回転軸を軸にして回転させながら前記回転軸の方向に沿った側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力し、前記撮像した前記検査対象の一周分の前記一次元画像の合成画像を示す側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成し、該側面展開画像と予め作成した正常な検査対象に対応した側面展開画像を示す基準画像との相関値に基づき、前記検査対象の欠損を検出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、円柱状のワークに対し、測定時間が長くならずに、微小欠陥(欠損)を検出でき、準欠陥が多数あっても欠陥がないと判定されるおそれのない欠損検査装置、及び欠損検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る欠損検査装置の一例を示す図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る欠損検査装置の一例を示す図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る欠損検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】基準画像、及び位置合わせ画像パターンの一例を示すイメージ図である。
図5】一次元の明暗信号から位置合わせ前の側面展開画像を作成する一例を示すイメージ図である。
図6】位置合わせ前の側面展開画像の一部分をシフトする一例を示すイメージ図である。
図7】基準画像と検査画像との相関値を計算をする際の、基準画像及び検査画像の座標、計算範囲等の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る欠損検査装置の一例を示す図である。
【0019】
本実施の形態に係る欠損検査装置1は、撮像部2と、制御部3とにより構成される。
【0020】
撮像部2は、所定の方向から照明された円柱状の検査対象の回転軸方向に沿った側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力する。検査対象は回転軸を軸にして回転している。撮像部2は、一走査(一ライン)分の画像を繰り返して撮像して出力する、例えばラインセンサである。制御部3は、撮像部2が撮像した検査対象の一周分の一次元画像の合成画像を示す側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成する。そして、この側面展開画像と予め作成した正常な検査対象に対応した側面展開画像を示す基準画像との相関値に基づき、検査対象の欠損を検出する。
【0021】
最初に、欠損のない正常な検査対象と同一のものに対応した側面展開画像を示す基準画像を予め用意する。
【0022】
次に、所定の方向(例えば、側面)から円柱状の検査対象を照明する。そして、この検査対象を回転軸を軸にして所定の速度で回転させる。
【0023】
そして、撮像部2により、検査対象の回転軸の方向に沿った側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力する。
【0024】
制御部3は、撮像部2が撮像した検査対象の一次元画像を繰り返して受け、これらの一次元画像を合成して、検査対象の一周分の側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成する。
【0025】
そして、制御部3は、この作成した側面展開画像(検査画像)と予め用意した基準画像との相関値を計算する。相関値の計算は、通常、注目画素の周囲の画素値を含めて計算する。そして、計算した相関値に基づき検査対象に欠損が有るか否かを判定する。
【0026】
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、撮像部により、回転している円柱状の検査対象の側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力する。そして、制御部3により、撮像部が出力した一次元画像から検査対象の側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成する。そして、この検査画像と基準画像との相関値に基づき、検査対象の欠損を検出する。
【0027】
このため、円柱状の検査対象に関し、二値化せずに多値画像のままで欠損を検出しているので、二値化閾値以下の微小な欠損も検出できる。
【0028】
また、多値画像の側面展開画像(検査画像)と基準画像との相関値に基づき欠損を検出している。そして、準欠陥が多数あった場合の相関値と、準欠陥が少ない場合(あるいは、無い場合)とで相関値とに差異が発生するので、準欠陥が多数あっても欠陥がないと判定されるおそれがない。
【0029】
また、検査対象の欠損を検出するための多値画像を、回転している円柱状の検査対象の側面の一次元画像を撮像して取得している。このため、検査対象の欠損を検出するための多値画像の測定時間が長くならない。
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る欠損検査装置の一例を示す図である。
【0030】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態の欠損検査装置1の相関値を計算する計算式を提示して、第1の実施の形態をより具体化したものである。図2には、検査対象を回転軸を軸にして所定の速度で回転させる回転制御部4も記載してある。主に第1の実施の形態と相違する部分について説明する。
【0031】
本実施の形態に係る欠損検査装置1は、撮像部2と、制御部3とにより構成される。
【0032】
相関値は、検査画像と基準画像の各画素の多値データを所定の計算式に適用して求める。各画素の値は、例えば輝度を示す0から255の値(レベル)である。所定の計算式とは、多値データ間で行う一般的な正規相関計算式、あるいは、この正規相関計算式を基に変形した相関計算式である。
【0033】
計算式は、検査画像と基準画像との相関を求める画素の座標位置での正規相関値を求める式であり、座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を標準偏差で割った値である。この式は、多値データ間で行う一般的な正規相関計算式である。また、この正規相関計算式中の標準偏差を変形した計算式(相関計算式)を使用してもよい。
【0034】
次に、本実施の形態の欠損検査装置1の動作を、図3図4図5図6、及び図7を使用して説明する。
【0035】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る欠損検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0036】
図4は、基準画像、及び位置合わせ画像パターンの一例を示すイメージ図である。
基準画像は、検査対象の加工工具に対応する検査画像との間で相関値を計算するための画像であり、例えばm×nの画素値により構成される。白色と、灰色の部分が加工工具の部分である。白色の部分は刃先を示している。ここでは、輝度レベルが、30以下を黒色(Aの部分)、200以上を白色、他を灰色としている。位置合せ画像パターンは、加工工具に対応する検査画像を作成する際に使用する画像パターンであり、基準画像の一部である。その位置(α、β)と画像パターンの大きさ(範囲)を、基準画像とともに予め記憶部に格納しておく。
【0037】
図5は、一次元の明暗信号から側面展開画像(位置合わせ前の側面展開画像)を作成する一例を示すイメージ図である。この図では、加工工具の部分のデータ(輝度レベル)が白色と灰色で示され、加工工具以外の部分のデータが黒色(Aの部分)で示されており、黒色のデータの部分が右側になるようにしている。撮像部2にて繰り返して撮像された加工工具の一次元の明暗信号を時系列順に下側から並べ、二次元の画像に展開している。データ長mの明暗信号を、n個並べることでm×nの画素を有する二次元画像を作成する。
【0038】
図6は、図5で作成した位置合わせ前の側面展開画像の一部分をシフトする一例を示すイメージ図である。(a)は図5で作成した位置合せ前の側面展開画像である。(b)は位置合せ後の側面展開画像である。図5で作成した位置合せ前の側面展開画像から、図4で示す位置合せ画像パターンと一致する画像パターンを検出し、この画像パターンの位置と位置合せ画像パターンの位置との差分(位置ずれ量)をシフト量として求める。ここでは、β方向のみ位置ずれがあるものとしている。そして、位置合せ前の側面展開画像に対しシフト量分の画像をシフトして位置合せ後の側面展開画像(検査画像)を作成する。すなわち、検出した画像パターンを位置合せ画像パターン位置と一致するように画像全体を下側にシフトする。シフトして不足した上部には、シフトして余った下部の画像を入れる。
【0039】
図7は、基準画像と検査画像との相関値を計算をする際の、基準画像及び検査画像の座標、計算範囲等の一例を説明する図である。
(a)は、基準画像の座標(i'、j')と、検査画像との相関値を求める画素の座標位置(α、β)と、座標位置(α、β)の画素に対する検査画像との相関値を計算する範囲(斜線の部分)を示す。また、Yi'j'は、基準画像の画素の座標(i'、j')の輝度レベルであって、i'=i+α、j'=j+βであり、(i、j)は、基準画像の相関演算する範囲内の座標である。ここで、i及びjは、8,16,32,64等であるが、ワークの種別や状態、照明状況等により適宜決めてよい。
(b)は、検査画像の座標(i'、j')と、基準画像との相関値を求める画素の座標位置(α、β)と、座標位置(α、β)の画素に対する基準画像との相関値を計算する範囲(斜線の部分)を示す。また、Xi'j'は、検査画像の画素の座標位置(i'、j')の輝度レベルであって、i'=i+α、j'=j+βであり、(i、j)は、検査画像の相関演算する範囲内の座標である。
【0040】
予め、図4で示す、検査対象の加工工具に対応する基準画像と、この加工工具に対応する検査画像を作成する際に使用する位置合せ画像パターンを記憶部(不図示)に格納しておく。基準画像は、検査対象の加工工具と同種類の加工工具のうち、欠損のない正常な加工工具に対応した側面展開画像を示す。この基準画像は、例えば、本装置を使用して作成してもよい(後述する、図3のステップS1〜ステップS4)。また、位置合せ画像パターンは、基準画像中の特徴的な部分のパターンを示し、基準画像中の位置と共に記憶部に格納しておく。
【0041】
最初に、作業者の操作により、検査対象の加工工具を、撮像部2の正面に撮像部2の走査ラインと加工工具の回転軸とが平行になるように回転制御部4に設定する。加工工具の例えば刃の部分以外の保持部分をチャック等により保持して固定する。そして、照明を加工工具に照射する。
【0042】
図3のステップS1では、制御部3により、回転制御部4に加工工具を所定の速度で回転させる。この回転速度は、例えば、撮像部2が一ライン分撮影する一走査時間に回転する角度が非常に小さく、撮像した画像にピンボケ、ブレ、歪み等が発生しない程度の速度であり、適宜変更してよい。
【0043】
図3のステップS2では、制御部3は、撮像部2に対し撮像開始信号を出力し、撮像部2はこの信号を受け、一走査(一ライン)分の画像(一次元の多値の明暗信号)を繰り返して撮像して出力する。
【0044】
図3のステップS3では、制御部3は、加工工具の全周の画像の撮像が完了する所定の時間経過後に、回転制御部4に対し加工工具の回転を終了させ、撮像部2に対し撮像停止信号を出力する。
【0045】
このように、撮像中に加工工具を特定の位置で停止する必要がないので、高速に加工工具の一周分の画像を撮像することができる。
【0046】
図3のステップS4では、制御部3は、図5に示すように、撮像部2により繰り返して撮像された一次元の明暗信号を時系列順に並べ、加工工具の一周分を示す二次元の側面展開画像(位置合わせ前の側面展開画像)を多値画像のままで作成する。
【0047】
図3のステップS5では、制御部3は、基準画像中の同じ位置同士で相関値を求めるようにするため、図6で示すように、位置合わせ前の側面展開画像の一部分をシフトして検査画像(位置合わせ後の側面展開画像)を作成し、基準画像と位置を合わせる。
【0048】
図3のステップS6では、制御部3は、図7で示すように、基準画像と、ステップS5で作成した位置合わせ後の側面展開画像(検査画像)との間での相関値(一致度)を計算する。
【0049】
計算式は、検査画像と基準画像との相関を求める画素の座標位置での正規相関値を求める正規相関計算式(式1)であり、座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を標準偏差で割った値である。この式は、多値データ間で行う一般的な正規相関計算式である。
【0050】
正規相関値F1(α、β)=
Σ((Xi'j'-X)*(Yi'j'-Y))/√(Σ(Xi'j'-X))*√(Σ(Yi'j'-Y))
・・・・(式1)
ここで、(α、β)は、検査画像と基準画像との相関を求める画素の座標位置、正規相関値F1(α、β)は、座標位置(α、β)の画素に対する正規相関値である。Xは、検査画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、Yは、基準画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、Xi'j'は、検査画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルである。ここで、i'=i+α、j'=j+β、(i、j)は、検査画像の相関演算する範囲内の座標である。Yi'j'は、基準画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルであり、ここで、i'=i+α、j'=j+β、(i、j)は、基準画像の相関演算する範囲内の座標であり、Σは、相関演算する範囲内(図7の斜線の部分)の総和である。
【0051】
また、この式1の分母を示す標準偏差を変形し、検査画像と基準画像のうちの大きい方の画素値を使用するようにした標準偏差を使用してもよい。
【0052】
すなわち、この式1を変形した計算式は、検査画像と基準画像との相関を求める画素の座標位置での相関値を求める相関計算式(式2)である。この計算式は、座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を、相関演算範囲毎に検査画像と基準画像のうちの大きい方の画素値を使用するように変形した標準偏差で割った式である。
【0053】
相関値F2(α、β)=
Σ((Xi'j'-X)*(Yi'j'-Y))/Σ(Max(Xi'j'-X、Yi'j'-Y))・・・(式2)
ここで、(α、β)は、検査画像と基準画像との相関を求める画素の座標位置、相関値F2(α、β)は、座標位置(α、β)の画素に対する相関値である。Xは、検査画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、Yは、基準画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、Xi'j'は、検査画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルである。ここで、i'=i+α、j'=j+β、(i、j)は、検査画像の相関演算する範囲内の座標である。Yi'j'は、基準画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルであり、ここで、i'=i+α、j'=j+β、(i、j)は、基準画像の相関演算する範囲内の座標である。Max()は、()内を比較してレベルの高い方を求める演算を示し、Σは、相関演算する範囲内(図7の斜線の部分)の総和である。
【0054】
式2を使用する場合には、検査画像と基準画像のうちの大きい方の画素値を使用した標準偏差を使用しているので、一般的に、正規相関値を求める式1に比べ、欠損による変形の影響を受けやすい、すなわち、欠損を検出しやすい。
【0055】
これらの式により求めた正規相関値及び相関値は、1から0の範囲の値であり、1に近い程、検査画像と基準画像とが類似している、つまり一致度が高いことを示している。
【0056】
正規相関値又は相関値の計算は、式1又は式2を用いて、図7で示すように、基準画像及び検査画像上のすべての座標位置(α、β)に対して行う。
【0057】
図3のステップS7では、制御部3は、ステップS6で求めた正規相関値又は相関値(一致度)が、所定の値(例えば、0.9)以下の座標(α、β)があった場合、この座標の位置に欠損があるとし、このワークを欠損ワークと判定する。所定の値0.9は、この値に限定することなく、ワークの種類や状態、照明の状況等の影響を含め、実験等により適宜変更してよい。
【0058】
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で得られた効果に付加して、次の効果が得られる。すなわち、検査画像と基準画像との相関を求める計算式を正規相関計算式(式1)と相関計算式(式2)の二つ用意した。このため、ワークの種類や状態、照明の状況等の影響を含め、実験等により、これらの式のうち最適な式を選択することができる。このため、より適切・効果的に微小欠損を検出でき、準欠陥が多数あるものを欠陥があると判定することができる。
【0059】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
所定の方向から照明された円柱状の検査対象を回転軸を軸にして回転させながら前記回転軸の方向に沿った側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力する撮像部と、
前記撮像部が撮像した前記検査対象の一周分の前記一次元画像の合成画像を示す側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成し、該側面展開画像と予め作成した正常な検査対象に対応した側面展開画像を示す基準画像との相関値に基づき、前記検査対象の欠損を検出する制御部と、
を備えたことを特徴とする欠損検査装置。
(付記2)
前記相関値は、前記検査画像と前記基準画像の各画素の多値データを所定の計算式に適用して求める、ことを特徴とする付記1記載の欠損検査装置。
(付記3)
前記計算式は、前記座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を標準偏差で割った式である、
ことを特徴とする付記2記載の欠損検査装置。
(付記4)
前記計算式は、正規相関値F1(α、β)=
Σ((Xi'j'-X)*(Yi'j'-Y))/√(Σ(Xi'j'-X))*√(Σ(Yi'j'-Y))
ここで、
(α、β)は、前記検査画像と前記基準画像との相関を求める画素の座標位置、
正規相関値F1(α、β)は、座標位置(α、β)の画素に対する正規相関値、
Xは、前記検査画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、
Yは、基準画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、
Xi'j'は、検査画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルであって、ここで、i'=i+α、j'=j+β、(i、j)は、検査画像の相関演算する範囲内の座標であり、
Yi'j'は、基準画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルであって、ここで、i'=i+α、j'=j+β、(i、j)は、基準画像の相関演算する範囲内の座標であり、
Σは、相関演算する範囲内の総和である、
ことを特徴とする付記3記載の欠損検査装置。
(付記5)
前記計算式は、前記座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を、前記相関演算範囲毎に前記検査画像と前記基準画像のうちの大きい方の画素値を使用するように変形した標準偏差で割った式である、
ことを特徴とする付記3又は4記載の欠損検査装置。
(付記6)
前記計算式は、相関値F2(α、β)=
Σ((Xi'j'-X)*(Yi'j'-Y))/Σ(Max(Xi'j'-X、Yi'j'-Y))
ここで、
(α、β)は、前記検査画像と前記基準画像との相関を求める画素の座標位置、
相関値F2(α、β)は、座標位置(α、β)の画素に対する相関値、
Xは、前記検査画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、
Yは、基準画像の相関演算する範囲内の画素の平均レベル、
Xi'j'は、検査画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルであって、ここで、i'=i+α、j'=j+β、(i、j)は、検査画像の相関演算する範囲内の座標であり、
Yi'j'は、基準画像の画素の座標位置(i'、j')のレベルであって、ここで、i'=i+α、j'=j+β、(i、j)は、基準画像の相関演算する範囲内の座標であり、
Max()は、()内を比較してレベルの高い方を求める演算を示し、
Σは、相関演算する範囲内の総和である、
ことを特徴とする付記5記載の欠損検査装置。
(付記7)
前記制御部は、円柱状の前記検査対象を前記回転軸を軸にして回転させながら前記撮像部に複数の前記一次元画像を撮像させ、これらの前記一次元画像に基づき前記側面展開画像を作成する、
ことを特徴とする付記1、2、3、4、5又は6記載の欠損検査装置。
(付記8)
所定の方向から照明された円柱状の検査対象を回転軸を軸にして回転させながら前記回転軸の方向に沿った側面の一次元画像を撮像し多値画像として出力し、
前記撮像した前記検査対象の一周分の前記一次元画像の合成画像を示す側面展開画像(検査画像)を多値画像のままで作成し、
該側面展開画像と予め作成した正常な検査対象に対応した側面展開画像を示す基準画像との相関値に基づき、前記検査対象の欠損を検出する、
ことを特徴とする欠損検査方法。
(付記9)
前記相関値は、前記検査画像と前記基準画像の各画素の多値データを所定の計算式に適用して求める、ことを特徴とする付記8記載の欠損検査方法。
(付記10)
前記計算式は、前記座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を標準偏差で割った式である、
ことを特徴とする付記9記載の欠損検査方法。
(付記11)
前記計算式は、前記座標位置における所定の相関演算範囲での共分散を、前記相関演算範囲毎に前記検査画像と前記基準画像のうちの大きい方の画素値を使用するように変形した標準偏差で割った式である、
ことを特徴とする付記10記載の欠損検査方法。
【符号の説明】
【0060】
1 欠損検査装置
2 撮像部
3 制御部
4 回転制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7