【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成を備える。
(第1の発明)
本発明のうち第1の発明は、軸筒10と、この軸筒10の内部に収容され、毛細管力によってインクを誘導可能なサインペン又はマーキングペン等のインク供給芯50と、インク供給芯50の外周を覆う芯周囲部材20とを備え、インク供給芯50及び芯周囲部材20の一部を軸筒10の先端から露出させた筆記具1において、インク供給芯50と芯周囲部材20との軸方向の位置関係を相対的に変えることができる変位手段30を備え、この変位手段30により、インク供給芯50を芯周囲部材20に対し相対的に後方へ移動させることで、インク供給芯50の先端と芯周囲部材20の先端とを筆記面に同時に接触させることができるように形成されていることを特徴とする。
【0006】
軸筒10とは、筆記具1の外部構造であり、後端は閉塞していて、先端は先細り形状を呈し、その先端面が開口している。また、軸筒10の内部にはインクが収容される。その方法は特に限定されるものではなく、軸筒10の内部に直接インクを収容するものであってもよいし、インクが充填されたインクリフィルを軸筒10の内部に収容するものであってもよい。
インク供給芯50は、ポリアセタール等の樹脂素材を押出成形することにより形成される。なお、押出成形時には、毛細管現象によりインク供給芯50の先端までインクを誘導するための通路が形成されている。なお、インク供給芯50は繊維芯や焼結芯等でもよい。
【0007】
芯周囲部材20は、少なくとも、軸筒10から露出するインク供給芯50を覆う略円錐形状を呈した部材であり、ポリアセタール等の樹脂素材により形成されることが望ましい。
変位手段30は、インク供給芯50と芯周囲部材20との位置関係を相対的に変化させることを可能とする手段である。また、変位手段30には、インク供給芯50を芯周囲部材20に対して移動可能に形成してインク供給芯50が変位する場合と、芯周囲部材20をインク供給芯50に対し移動可能に形成して芯周囲部材20が変位する場合の双方を含む。
本発明に係る筆記具は、変位手段30によりインク供給芯50と芯周囲部材20との相対的な位置関係を変化させて、芯周囲部材20の先端からインク供給芯50が突出している場合には、インク供給芯50の先端のみが筆記面と接触し、インク供給芯50の表面で筆記できる幅の線を描くことができる。
【0008】
一方、変位手段30によりインク供給芯50と芯周囲部材20との相対的な位置関係を変位させ、インク供給芯50が芯周囲部材20に対し相対的に後方へ移動し、インク供給芯50の先端と芯周囲部材20の先端とが同時に筆記面と接触した状態で筆記を開始すると、筆記に伴ってインク供給芯50が保持するインクが流出する。その流出したインクは、筆記面と接触するインク供給芯50の先端と芯周囲部材20の先端との間に毛細管現象により拡散する。その結果、インク供給芯50の先端のみが筆記面と接触している状態で筆記する場合よりも、太い幅の線を描くことができる。
【0009】
さらに、変位手段30により、インク供給芯50の先端と芯周囲部材20の先端とを同時に筆記面と接触させて筆記をする場合には、筆記時にかかる筆圧を主に芯周囲部材20が受けることとなり、インクを保持するインク供給芯50にかかる筆圧を減らすことができるため、インク供給芯50のペン先としての消耗を減らすことができる。
(第2の発明)
本発明のうち第2の発明は、前記した第1の発明の特徴に加え、変位手段30は、インク供給芯50の後方に配置される弾性部材30であって、この弾性部材30が圧縮されることで、インク供給芯50と芯周囲部材20との位置関係を相対的に変えることができるものであり、インク供給芯50の芯周囲部材20からの露出部分を初期位置として、インク供給芯50の先端に荷重を加え弾性部材30が圧縮されることで、インク供給芯50が芯周囲部材20に対して相対的に後方へ移動することができるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記第1の発明における変位手段30を特定したものである。
この変位手段30は、インク供給芯50と芯周囲部材20との相対的な位置関係を、インク供給芯50を芯周囲部材20に対し相対的に後方へ移動させた位置(以下、没入位置とする。)と、芯周囲部材20の先端からインク供給芯50を突出させた位置(以下、突出位置とする。)とで変化させることができるものである。
変位手段30としての弾性部材30は、ゴムやスプリング等の弾性を有する素材から形成されているため、圧縮した形状を弾性部材30が有する弾性作用によって初期の形状に復元することができる。
【0011】
本発明では、軸筒10及び芯周囲部材20に対し、インク供給芯50が変位可能に形成されている。ここで、インク供給芯50に対して先端方向から筆記荷重がかかると、インク供給芯50が芯周囲部材20に対して相対的に後方へ移動する。なお、弾性部材30はインク供給芯50にかかっていた筆記荷重がなくなると弾性作用により初期の形状に戻り、それに応じてインク供給芯50も突出位置に戻る。
本発明は、上記のように構成されているため、筆記荷重を変えることで太さの違う線を描くことができる。また、弾性部材30を低い弾性率を有する軟質な部材とすると、力の弱い老人や幼児でも筆記荷重によらず、どの角度で描いても太い線を描くこともできる。
【0012】
さらに、突出位置から没入位置に移動する荷重が、筆記荷重と比べてごく小さい場合は、筆記時に違和感を持つことなく、インク供給芯50が没入位置へ変位し、常に太い幅の線を描くことができる。また、「トメ」や「ハライ」などの動作によって、筆記面から筆記部分が離れるために筆記荷重が弱くなるときは、インク供給芯50が没入位置から突出位置に連続的に変位し、太い幅の線から細い幅の線へ連続的かつ滑らかに筆記幅が変化していく。
また、弾性部材30の形状により、弾性部材30の変形に伴う内容積の変化を利用して、筆記荷重によりインク流路を加圧状態とすることで初筆時のインク流出量を良好にすることもできる。
【0013】
(第3の発明)
本発明のうち第3の発明は、前記した第1、第2の発明の特徴に加え、インク供給芯50の内部には、毛細管力が発生する間隙を有したインク供給空間が形成され、インク供給空間の毛細管力によりインクを誘導することを特徴とする。
本発明は、前記第1、第2の発明におけるインク供給芯50において、毛細管力の発生箇所を特定したものである。
第3の発明におけるインク供給空間は、インク供給芯50を押出成形によって形成する際に、内部に微細に管理された通路を残すことで、その通路を用いてインクを誘導するというものである。
【0014】
(第4の発明)
本発明のうち第4の発明は、前記した第1、第2の発明の特徴に加え、インク供給芯50の外部には、毛細管力が発生する間隙を有したインク供給空間が形成され、インク供給空間の毛細管力によりインクを誘導することを特徴とする。
本発明は、前記第1、第2の発明におけるインク供給芯50において、毛細管力の発生箇所を特定したものである。
第4の発明におけるインク供給空間は、インク供給芯50を押出成形によって形成する際に、外部に微細に管理された通路を残すことで、その通路を用いてインクを誘導するというものである。