特許第6595819号(P6595819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595819
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/02 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   B43K8/02 150
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-133353(P2015-133353)
(22)【出願日】2015年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-26930(P2016-26930A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-137523(P2014-137523)
(32)【優先日】2014年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
(72)【発明者】
【氏名】福本 剛生
(72)【発明者】
【氏名】古川 和彦
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−303896(JP,A)
【文献】 特表2004−520205(JP,A)
【文献】 特開平08−034195(JP,A)
【文献】 特開2013−252655(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00197281(EP,A2)
【文献】 特表2007−502729(JP,A)
【文献】 特表2007−510565(JP,A)
【文献】 実公昭48−044283(JP,Y1)
【文献】 米国特許第06155733(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00−1/12
B43K 5/00−8/02
B43K 21/00−21/26
B43K 24/00−24/18
B43K 27/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒の内部に収容され、毛細管力によってインクを誘導可能なインク供給芯と、
前記インク供給芯の外周を覆う芯周囲部材とを備え、前記インク供給芯及び前記芯周囲部材の一部を前記軸筒の先端から露出させた筆記具において、
前記インク供給芯と前記芯周囲部材との軸方向の位置関係を相対的に変えることができる変位手段を備え、
前記変位手段は、略筒状で前記インク供給芯が挿入される中心部材と、前記中心部材の後方の外周に空隙部を有するように位置する略筒状の周辺部材と、前記周辺部材と前記中心部材とを連結する介在部材とで構成され、
前記変位手段により、前記インク供給芯を前記芯周囲部材に対し相対的に後方へ移動させることで、前記インク供給芯の先端と前記芯周囲部材の先端とを筆記面に同時に接触させることができるように形成されていることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記変位手段は、前記インク供給芯の後方に配置される弾性部材であって、前記弾性部材が圧縮されることで、前記インク供給芯と前記芯周囲部材との位置関係を相対的に変えることができるものであり、
前記インク供給芯の前記芯周囲部材からの露出部分を初期位置として、前記インク供給芯の先端に荷重を加え前記弾性部材が圧縮されることで、前記インク供給芯が前記芯周囲部材に対して相対的に後方へ移動することができるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記インク供給芯の内部には、毛細管力が発生する間隙を有したインク供給空間が形成され、前記インク供給空間の毛細管力によりインクを誘導することを特徴とする請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記インク供給芯の外部には、毛細管力が発生する間隙を有したインク供給空間が形成され、前記インク供給空間の毛細管力によりインクを誘導することを特徴とする請求項2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記時に描線の幅を変更可能なサインペン又はマーキングペン等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる太さの描線を筆記可能とすべく、ボールペンチップの一部分であるホルダーとボールペンチップの外周を覆うアウターとの相対的位置を、ホルダーの先端を縮径変形させたカシメ部にアウターの先端が達するまでの部分を覆うホルダー没入位置へ、前後に変位可能に形成されたボールペンが存在する。ここで、アウターとホルダーとの相対的位置が、このようなホルダー没入位置となった場合には、筆記ボールとアウターの先端とが同時に筆記面に接触可能とされている。このような技術として、下記の特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−252655
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した特許文献1の発明は、ボールペンに関するものであり、筆記可能な描線の太さが限られてしまう。そこで本発明は、ボールペンでは対応できない太さの文字を筆記すべくサインペン又はマーキングペン等についても描線の幅を自在に変化させ、「トメ」「ハネ」「ハライ」といった特徴のある描線を容易に筆記可能とするとともに、既存のサインペン又はマーキングペン等のペン先と比べて、破損や消耗しにくいペン先を備えた筆記具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成を備える。
(第1の発明)
本発明のうち第1の発明は、軸筒10と、この軸筒10の内部に収容され、毛細管力によってインクを誘導可能なサインペン又はマーキングペン等のインク供給芯50と、インク供給芯50の外周を覆う芯周囲部材20とを備え、インク供給芯50及び芯周囲部材20の一部を軸筒10の先端から露出させた筆記具1において、インク供給芯50と芯周囲部材20との軸方向の位置関係を相対的に変えることができる変位手段30を備え、この変位手段30により、インク供給芯50を芯周囲部材20に対し相対的に後方へ移動させることで、インク供給芯50の先端と芯周囲部材20の先端とを筆記面に同時に接触させることができるように形成されていることを特徴とする。
【0006】
軸筒10とは、筆記具1の外部構造であり、後端は閉塞していて、先端は先細り形状を呈し、その先端面が開口している。また、軸筒10の内部にはインクが収容される。その方法は特に限定されるものではなく、軸筒10の内部に直接インクを収容するものであってもよいし、インクが充填されたインクリフィルを軸筒10の内部に収容するものであってもよい。
インク供給芯50は、ポリアセタール等の樹脂素材を押出成形することにより形成される。なお、押出成形時には、毛細管現象によりインク供給芯50の先端までインクを誘導するための通路が形成されている。なお、インク供給芯50は繊維芯や焼結芯等でもよい。
【0007】
芯周囲部材20は、少なくとも、軸筒10から露出するインク供給芯50を覆う略円錐形状を呈した部材であり、ポリアセタール等の樹脂素材により形成されることが望ましい。
変位手段30は、インク供給芯50と芯周囲部材20との位置関係を相対的に変化させることを可能とする手段である。また、変位手段30には、インク供給芯50を芯周囲部材20に対して移動可能に形成してインク供給芯50が変位する場合と、芯周囲部材20をインク供給芯50に対し移動可能に形成して芯周囲部材20が変位する場合の双方を含む。
本発明に係る筆記具は、変位手段30によりインク供給芯50と芯周囲部材20との相対的な位置関係を変化させて、芯周囲部材20の先端からインク供給芯50が突出している場合には、インク供給芯50の先端のみが筆記面と接触し、インク供給芯50の表面で筆記できる幅の線を描くことができる。
【0008】
一方、変位手段30によりインク供給芯50と芯周囲部材20との相対的な位置関係を変位させ、インク供給芯50が芯周囲部材20に対し相対的に後方へ移動し、インク供給芯50の先端と芯周囲部材20の先端とが同時に筆記面と接触した状態で筆記を開始すると、筆記に伴ってインク供給芯50が保持するインクが流出する。その流出したインクは、筆記面と接触するインク供給芯50の先端と芯周囲部材20の先端との間に毛細管現象により拡散する。その結果、インク供給芯50の先端のみが筆記面と接触している状態で筆記する場合よりも、太い幅の線を描くことができる。
【0009】
さらに、変位手段30により、インク供給芯50の先端と芯周囲部材20の先端とを同時に筆記面と接触させて筆記をする場合には、筆記時にかかる筆圧を主に芯周囲部材20が受けることとなり、インクを保持するインク供給芯50にかかる筆圧を減らすことができるため、インク供給芯50のペン先としての消耗を減らすことができる。
(第2の発明)
本発明のうち第2の発明は、前記した第1の発明の特徴に加え、変位手段30は、インク供給芯50の後方に配置される弾性部材30であって、この弾性部材30が圧縮されることで、インク供給芯50と芯周囲部材20との位置関係を相対的に変えることができるものであり、インク供給芯50の芯周囲部材20からの露出部分を初期位置として、インク供給芯50の先端に荷重を加え弾性部材30が圧縮されることで、インク供給芯50が芯周囲部材20に対して相対的に後方へ移動することができるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記第1の発明における変位手段30を特定したものである。
この変位手段30は、インク供給芯50と芯周囲部材20との相対的な位置関係を、インク供給芯50を芯周囲部材20に対し相対的に後方へ移動させた位置(以下、没入位置とする。)と、芯周囲部材20の先端からインク供給芯50を突出させた位置(以下、突出位置とする。)とで変化させることができるものである。
変位手段30としての弾性部材30は、ゴムやスプリング等の弾性を有する素材から形成されているため、圧縮した形状を弾性部材30が有する弾性作用によって初期の形状に復元することができる。
【0011】
本発明では、軸筒10及び芯周囲部材20に対し、インク供給芯50が変位可能に形成されている。ここで、インク供給芯50に対して先端方向から筆記荷重がかかると、インク供給芯50が芯周囲部材20に対して相対的に後方へ移動する。なお、弾性部材30はインク供給芯50にかかっていた筆記荷重がなくなると弾性作用により初期の形状に戻り、それに応じてインク供給芯50も突出位置に戻る。
本発明は、上記のように構成されているため、筆記荷重を変えることで太さの違う線を描くことができる。また、弾性部材30を低い弾性率を有する軟質な部材とすると、力の弱い老人や幼児でも筆記荷重によらず、どの角度で描いても太い線を描くこともできる。
【0012】
さらに、突出位置から没入位置に移動する荷重が、筆記荷重と比べてごく小さい場合は、筆記時に違和感を持つことなく、インク供給芯50が没入位置へ変位し、常に太い幅の線を描くことができる。また、「トメ」や「ハライ」などの動作によって、筆記面から筆記部分が離れるために筆記荷重が弱くなるときは、インク供給芯50が没入位置から突出位置に連続的に変位し、太い幅の線から細い幅の線へ連続的かつ滑らかに筆記幅が変化していく。
また、弾性部材30の形状により、弾性部材30の変形に伴う内容積の変化を利用して、筆記荷重によりインク流路を加圧状態とすることで初筆時のインク流出量を良好にすることもできる。
【0013】
(第3の発明)
本発明のうち第3の発明は、前記した第1、第2の発明の特徴に加え、インク供給芯50の内部には、毛細管力が発生する間隙を有したインク供給空間が形成され、インク供給空間の毛細管力によりインクを誘導することを特徴とする。
本発明は、前記第1、第2の発明におけるインク供給芯50において、毛細管力の発生箇所を特定したものである。
第3の発明におけるインク供給空間は、インク供給芯50を押出成形によって形成する際に、内部に微細に管理された通路を残すことで、その通路を用いてインクを誘導するというものである。
【0014】
(第4の発明)
本発明のうち第4の発明は、前記した第1、第2の発明の特徴に加え、インク供給芯50の外部には、毛細管力が発生する間隙を有したインク供給空間が形成され、インク供給空間の毛細管力によりインクを誘導することを特徴とする。
本発明は、前記第1、第2の発明におけるインク供給芯50において、毛細管力の発生箇所を特定したものである。
第4の発明におけるインク供給空間は、インク供給芯50を押出成形によって形成する際に、外部に微細に管理された通路を残すことで、その通路を用いてインクを誘導するというものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上述のように構成されているので、変位手段を用いて異なる太さの描線を自在に描くことができ、「トメ」「ハネ」「ハライ」といった動作をサインペン又はマーキングペン等でも容易かつ高品位に再現することができる。また、筆記時の筆圧を主に、芯周囲部材が受けることで、ペン先としてのインク供給芯の破損を防いだり、消耗を減らしたりすることができる。また、芯周囲部材はインク供給芯と違い表面に孔がなく、紙面との引っ掛かりが低減されるため、書き味が滑らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る筆記具の正面図(A)及び正面断面図(B)である。
図2】本発明の実施形態に係る筆記具の前方側の突出位置における拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る筆記具の継手の斜視図(A)、正面図(B)及び縦断面図(C)である。
図4】本発明の実施形態に係る筆記具の前方側の没入位置における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る筆記具1として、軸筒10の先端に筆記部を備えたサインペン又はマーキングペンを例に説明する。なお、本発明において、筆記具1及びその構成部品についての「前方」とは筆記部を備えた方向を示し、「後方」とはその反対側の方向を示すものとする。
(全体構成)
本発明の実施形態に係る筆記具1は、図1(A)に示すように、先軸11及び後軸12を備えた軸筒10と、筆記部として先軸11の前方側に固定された芯周囲部材20としてのアウター20とを備えた外観を呈している。また、軸筒10の内部には、図1(B)に示すように先軸11の前方側からアウター20の先端にかけて筆記部としてインク供給芯50が収容されている。
【0018】
(軸筒10の構造)
本発明の実施形態に係る筆記具1の構造は、図1(B)に示すように、後端が閉鎖された筒形状のインクタンク13と、先端が先細り形状を呈し、インクタンク13の先端がその後端の内周に嵌入している筒形状の先軸11と、後端を閉鎖させ、その先端の内周には先軸11の後端が嵌入している筒形状の後軸12とからなる。
図1(B)に示すように、先軸11は、略筒状でその先端は先細り形状を呈している。先軸11の外周には、先軸11の後端から約1/3の位置に、その外径が後軸12の外径と略同径であり、後軸12の先端が当接する先軸鍔部15が設けられている。また、先軸11は、先軸鍔部15を境にして、略円筒状を呈した後方側の先軸後部14と、先細り形状を呈した前方側の先軸前部16とを備える。
【0019】
図2に示すように、先軸前部16の先端部分には、継手30の先端を挿入すべく縮径された先軸前部縮径孔16aと、先軸前部縮径孔16aの前方に連設しているアウター20が挿入されるアウター挿入孔16bとが設けられている。なお、先軸前部16の先端近傍の外周には、他部材が装着できるような溝が設けられており、滑り止めとなるようなグリップ部材17が装着されている。
(先軸11の内部構造)
図1(B)に示すように、先軸前部16の内部には、ABS樹脂製のコレクター40が圧入されている。コレクター40においては、複数枚の板状部材が軸方向に平行に配され、この板状部材間に図示しないインクが保留可能となっている。さらに、そのコレクター40の軸心には、繊維束体により形成されたコレクター芯41が貫装されている。また、先軸11の前方側、すなわち、コレクター40の前方には継手30が装着される。
【0020】
(継手30の全体構造)
図3(A)に示すように、継手30は、略筒状の中心部材31と、中心部材31の後方の外周にコレクター40の先端の厚さ分の空隙部34を有するように、中心部材31の後端から約1/4から約1/3あたりまでに成形された略筒状の周辺部材32と、周辺部材32の先端から中心部材31の先端から約1/3の位置までを覆うように形成された介在部材33とからなる。
(中心部材31)
図2に示すように、中心部材31の内部には、後方からコレクター芯41が挿入され、前方からインク供給芯50が挿入される。
【0021】
図3(C)に示すように、中心部材31の内周には、コレクター芯41と略同径の後方挿入孔31aが中心部材31の後端に、インク供給芯50と略同径の中央挿入孔31b及び前方挿入孔31cとが中心部材31の中央から先端にかけて設けられている。
また、中心部材31の外周には、中心部材31の中央挿入孔31bの後端付近、かつ周辺部材32の先端よりも前方に位置する円環状の中心部材鍔部31eが形成されている。さらに、中心部材31の外周は、その後端から中心部材鍔部31eまでに位置する後方円柱部後部31dと、中心部材鍔部31eから中央挿入孔31bの先端付近に位置する後方円柱部前部31fと、後方円柱部前部31fの先端から中央挿入孔31bの先端のやや前方までに位置する中央円柱部31gと、中央円柱部31gの先端から中心部材31の先端までに位置する前方円柱部31hとからなる。
【0022】
ここで、後方円柱部後部31d及び後方円柱部前部31fの外径は、コレクター40の先端部の内径と略同径であり、中央円柱部31gの外径は、先軸前部縮径孔16aの径と略同径である。さらに、前方円柱部31hの外径は、図2に示すアウター20の後方に設けられた後部挿入孔24の径と略同径である。
(周辺部材32)
図3に示す、周辺部材32の内径は、コレクター40の先端部の外径と略同径である。また、図3(C)に示すように、周辺部材32の内周には、その後端に位置するとともに、僅かに拡径させた周辺部材拡径部32aと、周辺部材32の後端から約1/2に位置するとともに、円環状に形成された周辺部材内方突起32bとが設けられている。なお、周辺部材内方突起32bは、コレクター40の先端部を周辺部材32と中心部材31とで挟持すべく設けられている。
【0023】
また、周辺部材32の外周は、その後端から周辺部材内方突起32bの間に位置する周辺部材後方外周部32cと、周辺部材後方外周部32cに連設している周辺部材中央外周部32dと、周辺部材中央外周部32dに連設し、周辺部材32の先端までに位置する周辺部材前方外周部32eとからなる。
周辺部材前方外周部32eの先端から約1/2の位置には、円環状の周辺部材外方突部32fが設けられている。周辺部材外方突部32fには、円周方向に少なくとも一カ所以上の図示しない欠部が設けられている。この欠部の外径は、周辺部材前方外周部32eの外径と同一である。
【0024】
(介在部材33)
図3(C)に示すように、介在部材33は、周辺部材32を覆い、その外径が周辺部材外方突部32fの径と略同径であって略円筒状を呈する介在部材後方円柱部33aと、介在部材後方円柱部33aに連設し、中心部材鍔部31eまでを覆い、略円錐形状を呈する連結部33bと、連結部33bに連設し、中央円柱部31gの先端付近までを覆い、なだらかな円錐形状を呈する介在部材前方円錐部33cとからなる。
介在部材後方円柱部33aは、周辺部材前方外周部32eの後端から周辺部材32の欠部を介して、周辺部材前方外周部32eの先端までを覆い、その結果として周辺部材外方突部32fと係合している。
【0025】
ここで、介在部材33の内周は、中心部材31及び周辺部材32の外周に沿うように形成され、連結部33bの後端側の内径は、周辺部材32の内径と同一である。また、連結部33bの前方側の内径は、介在部材33の内径から中心部材鍔部31eの外径へと適合させるべく、除々に縮径していくテーパー状を呈している。
(二色成形)
継手30は、二色成形により成形された部品であり、中心部材31及び周辺部材32を一次成形で成形し、これら中心部材31及び周辺部材32に対し介在部材33を二次成形により一体成形している。介在部材33は、連結部33bにおいて、撓りをもたせるため、弾性樹脂材料によって形成される。
【0026】
また、弾性樹脂材料としては、成型工程において、金型を用いて、高温下で行うため熱可塑性のエラストマーが望ましい。なお、一次成形体である中心部材31及び周辺部材32の材質はPBT樹脂等の硬質樹脂が望ましい。
(アウター20)
図2に示すように、アウター20は、円筒状のアウター固定部21と、アウター固定部21に連設する略円錐形状のアウターテーパー部22とからなる。アウターテーパー部22の先端には、面取りされたアウター先端部23が設けられている。
【0027】
また、アウター20には、その後端から先端に向けて孔が形成されている。具体的には、アウター固定部21の内周に沿って、後部挿入孔24が設けられ、アウターテーパー部22の先端付近の内周に沿って、後部挿入孔24より小径の前部挿入孔25が設けられている。
ここで、アウター固定部21は、アウター挿入孔16bに装着されることで、先軸11に固定される。そして、アウター20はインク供給芯50を被覆する。この際、後部挿入孔24に継手30の前方円柱部31h(図3(B)、(C)参照)が挿入され、前部挿入孔25には、継手30から突出しているインク供給芯50が挿入される。
【0028】
(インク供給芯50)
図2に示すインク供給芯50は、ポリアセタール等の樹脂素材を押出成形することにより形成され、押出成形時には、毛細管現象によりインク供給芯50の先端までインクを誘導するための通路が形成されている。
なお、上記のインクを誘導するための通路は、押出成形時に、インク供給芯50の内部に毛細管力が発生する間隙を形成することも、インク供給芯50の外部に毛細管力が発生する間隙を形成することも可能である。また、インク供給芯50は繊維芯や焼結芯等でもよい。
【0029】
(筆記具1の特性)
本発明の実施形態に係る筆記具1は、継手30が3部材からなっており、その特性として周辺部材32と中心部材31とが、同一の一次成形体でありながら、互いに一次成形体としては連続していないため、介在部材33の連結部33b付近が変形し、継手30が撓りやすい構造となっている。
そのため、図4に示すように、筆記圧によって継手30を撓ませることでインク供給芯50とアウター20との相対的な位置関係が変位し、インク供給芯50を没入位置へと移動させることができる。
【0030】
一方、図2に示すように、筆記荷重を減らしてインク供給芯50にかかる筆記圧が弱まった場合には、継手30の弾性作用により撓んだ形状が初期の形状に戻り、それに応じてインク供給芯50も突出位置に戻ることとなる。
ここで、筆記圧によってインク供給芯50を没入位置に移動させ、インク供給芯50の先端とアウター20の先端とを同時に筆記面に接触させて筆記を開始すると、筆記に伴ってインク供給芯50が保持するインクが流出する。すると、その流出したインクは、筆記面と接触するインク供給芯50の先端とアウター20の先端との間に毛細管現象により拡散する。その結果、インク供給芯50の先端のみが筆記面と接触している状態で筆記する場合よりも、太い幅の線を描くことができる。
【0031】
また、筆記圧によってインク供給芯50を没入位置に移動させ、インク供給芯50の先端とアウター20の先端とを同時に筆記面と接触させて筆記をする場合には、筆記時にかかる筆圧を主にアウター20が受けることとなり、インクを保持するインク供給芯50にかかる筆圧を減らすことができるため、インク供給芯50のペン先としての消耗を減らすことができる。また、インク供給芯50はアウター20で覆われているため、ペン先をぶつけてしまったり、落下により衝撃が加わったりしても破損して筆記不能になることがない。また、芯周囲部材はインク供給芯と違い表面に孔がなく、紙面との引っ掛かりが低減されるため、書き味が滑らかになる。
さらに、継手30の弾性作用を利用すると、「トメ」や「ハライ」などの動作によって、筆記面から筆記部分が離れるために筆記荷重が弱くなるときには、インク供給芯50が没入位置から突出位置に向かって前方へ連続的に移動するため、太い幅の線から細い幅の線へ連続的かつ滑らかに筆記幅を変化させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 筆記具(サインペン又はマーキングペン)
10 軸筒 11 先軸
12 後軸 13 インクタンク
14 先軸後部 15 先軸鍔部
16 先軸前部 16a 先軸前部縮径孔
16b アウター挿入孔 17 グリップ部材
20 アウター(芯周囲部材) 21 アウター固定部
22 アウターテーパー部 23 アウター先端部
24 後部挿入孔 25 前部挿入孔
30 継手(変位手段、弾性部材) 31 中心部材
31a 後方挿入孔 31b 中央挿入孔
31c 前方挿入孔 31d 後方円柱部後部
31e 中心部材鍔部 31f 後方円柱部前部
31g 中央円柱部 31h 前方円柱部
32 周辺部材 32a 周辺部材拡径部
32b 周辺部材内方突起 32c 周辺部材後方外周部
32d 周辺部材中央外周部 32e 周辺部材前方外周部
32f 周辺部材外方突部 33 介在部材
33a 介在部材後方円柱部 33b 連結部
33c 介在部材前方円錐部 34 空隙部
40 コレクター 41 コレクター芯
50 インク供給芯
図1
図2
図3
図4